緊急避妊のための医薬組成物及び処置方法
本発明は、緊急避妊用の医薬組成物、前述の目的のための医薬組成物の製造のためのレボノルゲストレルとCOX阻害剤を組み合わせた使用、及びこれらの医薬組成物の製造方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急避妊のための医薬組成物(「事後服用経口避妊薬(day after pill)」としても公知である)、前述の目的のための医薬組成物の製造のためにCOX阻害剤と組み合わせたレボノルゲストレルの使用、及びこれらの医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な器具及び医薬組成物、例えばコンドーム、ペッサリー、子宮内ペッサリー、及び様々な一相性又は多相性経口避妊薬などが、望ましくない妊娠を阻止するために利用可能である。しかし多種多様な避妊法にもかかわらず、妊娠を望まない場合であっても、全く避妊手段をとらずに性交渉が行われることが多い。
【0003】
例えば、強姦事件において、又はコンドームなどの避妊器具が損傷した場合に、そのような状況が起こる。このような事例において排卵が阻止される場合、又は一旦排卵が生じた後受精が阻止される場合には、妊娠を避けることができる。この目的のためには、性交渉の直後に、遅くとも72時間以内に、緊急避妊が行われなければならない。
【0004】
この種の緊急避妊は、銅付加子宮内ペッサリー(例えばNova T(登録商標))による子宮内避妊のみではなく、特に下記のふたつの種類の間で区別されている緊急避妊薬(ECP)の使用によっても行なわれることができる:(a)エストロゲンと、更にはゲスターゲンの両方を含有する、EPC、及び(b)活性成分としてゲスターゲンのみを含有する、より新しい「プロゲスチン単独」ピル。
【0005】
より新しい「プロゲスチン単独」ECPは、より効果的でありかつより少ない副作用を生じるので、これらは今日までにより古い組み合わせのECPに大きく取って代わっている。しかしこれらの調製品の避妊の有効性も、経口避妊薬の定期的投与により達成される有効性をかなり下回る。従ってTrusselらの「避妊失敗の理解(Understanding Contraceptive Failure)」と題する論文[Best Practice & Research Clinical Obstetrics and Gynaecology 23 (2009) 199-209]は、様々な研究において、LNG−ベースのEPCの有効性は、わずかに59〜94%の間であることを報告している。
【0006】
エストロゲン及びゲスターゲンを含有するこれらの調製品の作用機序、並びに同じくゲスターゲンのみを含有する調製品の作用機序が、多数の研究において調べられている。これらの研究は、その作用機序は、阻害されたか若しくは遅れた排卵にあることを確認している1,2,3,4。
【0007】
この排卵の遅れは、ECPが周期の前半期(first half of the cycle)、すなわち排卵前に服用された場合の、ECPの有効性を説明している。
【0008】
研究は、EPCは、例え排卵後であっても妊娠の回避に作用があるかどうかの疑問点も検証している。この疑問点の包括的総説は、J. Trussell及びE. G. Raymondにより2009年3月に刊行された彼等の文献「緊急避妊:意図しない妊娠を阻止する最後のチャンス(Emergency Contraception: A Last Chance to Prevent Unintended Pregnancy)」により提供される。しかし、異なる視点でかつ場合によっては矛盾する(研究)結果において、著者らは、ECPは受精後であっても妊娠を阻止することができるかどうかという疑問点は、未だ解明されていないという結論に到達している。
【0009】
従っていくつかの研究は、ECPによる処置後の、子宮内膜における組織学的変化及び生化学的変化を示している。これらの研究は、ECPは、子宮内膜における受精卵の着床も妨害し得るという結論を可能にしている1,5,6,7。
【0010】
しかしより最近の研究は、ECPの投与は子宮内膜に作用を有するというこの仮説と矛盾している1,8,9。
【0011】
考察されている更なる作用は、黄体の機能の乱れ、精子の進入に影響を及ぼす子宮頸管粘膜の肥厚化、精子と卵の卵管輸送における変化、及び受精の直接の阻害を含む13,10,11,12。
【0012】
しかしECPの有効性に関する統計学的データは、様々な要因が、その有効性に寄与し、かつそれらの作用は、排卵の遅れ又は阻止にのみ起因し得ないことを指摘している14。
【0013】
いくつかの研究は、ゲスターゲン(レボノルゲストレル)のみを含有するECPによる初期処置は、排卵過程に対する作用に加え、黄体機能に対する作用も両方を有することを示した15,18,19,20,58。対照的に、別のふたつの研究は、子宮内膜に対し作用がないことを示している6,17。
【0014】
ゲスターゲン(レボノルゲストレル)がLH急上昇以前に投与された別の試験は、今度は、血清及び子宮内膜中のグリコデリンの分泌パターンに対する作用を示している21。しかし、その目的はまさに子宮内膜のグリコデリン発現を評価することである後者の研究においては、この結果は確認されていない22。
【0015】
30年以上前に実施されたレボノルゲストレルの研究は、精子の移動及び生殖管の機能に対する作用を確立した23。しかしより最近の研究は、レボノルゲストレル1.5mgは、子宮頸管粘膜に対し、又は精子の子宮腔への進入に対し作用を有さないことを示した22。
【0016】
EPC投与が避妊されない性交後に遅延される場合のEPCの有効性の低下は、EPCは、卵母細胞の着床に対し作用を有さないことを示唆し、その理由はそうでなければ本製品の有効性は、少なくともECPが着床以前に服用される限りは、恐らく投与される時間に左右されないからである24。
【0017】
ラット及びオマキザル(Cebus)における排卵−阻害投与量のレボノルゲストレルの研究は、受精率は、受精後に損なわれないことを示している12,25,26。しかしこの知見は、ヒトにあてはめることができるかどうかは不明である。
【0018】
ECPの作用の機序は完全に明らかではないが、例えば米食品医薬品局(FDA)/米国立衛生研究所(NIH)などの医学的管轄官庁により使用される定義の意味内であっても、ECPは流産作用を有さないことが明示されている27。
【0019】
作用機序を試験する研究に加え、多くの研究が、性交後避妊のための、様々な処置投薬計画、ゲスターゲン及び投与量の好適性を試験している。性交後避妊とは、避妊手段をとらない性交渉後、妊娠することを望まない女性が、排卵を阻止することを意図した適切な医薬品を服用することを意味する。
【0020】
これに関連した最初の研究は、1970年代初頭に行われた。このように、レボノルゲストレルを含む様々なゲスターゲンが、大規模試験において、定型的(routine)性交後避妊薬として試験された(The Journal of Reproductive Medicine, 13(2), (1974);Contraception, 7(5), 367-379, (1973);Reproduction, 2(1), 61-62, (1975);International Journal of Fertility, 20, 156-160, (1975))。その1日1回投与量は、150μg〜1,500μgの間であった。これらの研究の結果は、レボノルゲストレルの性交後避妊薬の有効性は、単独で使用された場合、投与量1mgであっても低いものであることを示した。
【0021】
A. A. Yuzpe及び同僚[The Journal of Reproductive Medicine, 13(2), (1974)]は、エチニルエストラジオール100μg及びノルゲストレル1.0mgを含有する医薬組成物を、性交後避妊薬として単回投与で使用した研究の結果を報告した。本組成物は、避妊手段をとらない性交渉後5日以内に服用された。この方法は、その後変更された。一方で、この組成物の可能な使用期間が、5日間から72時間に短縮され、かつ他方で、その投与量は、この組成物の投与は、初回投与後、12時間で繰り返されたという意味で、二倍にされた[Fertility and Sterility, 28, 932-936, (1977);同書、37, 508-513 (1982);International Journal of Gynaecology and Obstetrics, 15, 133-136, (1977)]。この変更は、この方法の成功を向上した。
【0022】
A. A. Yuzpe及び同僚による研究に続き、この組み合わせの有効性を明らかにするために、様々な他の治験が行われた。これらの研究において、ノルゲストレル2.0mg又はレボノルゲストレル1.0mgと組み合わせた、エチニルエストラジオールの総投与量は0.2mgであった。これらの研究の結果は、前記投与(Yuzpe投薬計画)は、より早期により高投与量で使用されたエストロゲンよりもより少ない副作用を引き起こしたが、悪心及び吐気の相対発生率は依然非常に高い(各々、50%及び20%)ことを示した。これらの副作用は、エストロゲン作用に起因し、かつ本方法の受け容れの低下につながる。更に、この処置の有効性は、吐気が生じる場合には、低下する。
【0023】
緊急避妊のためのレボノルゲストレルの使用は、1990年代に発見された。これらの研究の結果は、2つの詳しく文書化された刊行物において報告された[Lancet, 352, 428-433, (1998)、及びHuman Reproduction, 8(3), 389-392, (1993)]。2回目の投与量が初回投与後12時間で投与される、レボノルゲストレル0.75mgのみ含有する錠剤、並びにエチニルエストラジオール0.1mg及びレボノルゲストレル1.0mgを含有するYuzpe法の組み合わせ錠剤の有効性を、避妊手段をとらない性交渉後48時間以内、同じく72時間以内に調べた。これらの結果は、レボノルゲストレル0.75mgを含有する錠剤2個による防御は、Yuzpe投薬計画による防御よりも良好であり、かつ同じくレボノルゲストレルのみを受け取る女性は、より少ない副作用を経験したことを示し、この知見はエチニルエストラジオールの非存在に起因するであろう。
【0024】
これらの臨床試験の結果は、処置が性交後より早期に開始されると、その作用がより良いことも示した。しかし経験から、女性は、12時間後に服用されるべき2回目の投与量が、不適切な時点(例えば、女性が眠っている時点)にあたる(fall)状況を避けるために、初回の錠剤の服用が遅れることが示されている。しかしこれらの研究によると、これら2回の投与量の間の12時間間隔の正確な遵守は、所望の作用を低下しないために必須である。統計学的データによると、ほとんどの女性は、初回投与量後12〜16時間以内に、2回目の投与量を服用する[Lancet, 352, 428-433, (1998)]。
【0025】
指摘された欠点(2回目の錠剤の投与の遅れ)の観点から、欧州特許第1448207号は、わずか1個の錠剤で構成されるが、2倍量のレボノルゲストレル、すなわち活性物質1.5mgを含有する製品を開示している。この錠剤は、避妊手段をとらない性交渉後72時間以内に服用されなければならない。臨床試験が示すことができるように、この避妊作用は、投与量が2錠に分割され、各々0.75mgを含有する場合の避妊作用と同等か又はわずかに良好でさえある[E. Jonannsonら, Human Reproduction, vol. 17, no. 6, 1472-1476 (2002)]。しかしJohannsenは、1.5mgの高投与量製剤は、より忍容性が悪い(悪心、胃のむかつき、吐気、及び同じく月経周期の乱れ)と推定している。
【0026】
他の研究グループは、COX阻害剤の排卵に対する影響を調べた。例えばPallらは、ロフェコキシブの排卵に対する影響を調べた[Pallら; Human Reproduction, vol. 16, no.7, pp 1323-1328 (2001)]。この研究において、活性物質25mgが、連続9日間使用された。48時間を超える排卵の遅れが、患者6名中4名において得られた。
【0027】
M. S. Bataらによる研究は、Pallの結果と一致しているが、メロキシカムの排卵に対する影響を調べている[Bataら, J Clin Pharmacol, (2006) 46:925-932]。この研究は、患者1名につき1日に30mgの投与量(連続5日間)は、5日間の排卵の遅延を実現することが可能であることを示している。
【0028】
COX阻害剤は、原則として比較的忍容性が良好であることがわかっているが、欧州医薬品審査庁(EMEA)[EMEA/62838/2005;EMEA/62757/2005]は、このクラスの物質は、有害な心臓血管系事象のより高いリスクを有し、従って最小有効量が使用されることが推奨されることを指摘している。現在入手可能な試験データは、COX−2(2型シクロオキシゲナーゼ)の選択性が増大するにつれ、腎臓事象及び心臓血管系事象のリスクが増加する傾向を示している。従ってメロキシカムは、ピロキシカムなどの他のCOX阻害剤と比べ、慎重に処置されなければならない[Clin Pharmacol Ther. 2009 Feb; 85(2):190-7;Pharmacotherapy, 2006;26(7):919-938]。しかしCOX−2選択性の増大は、より少ない胃腸管の副作用に結びつけられ、これまでは有害な心臓血管系事象は長期使用の症例においてのみ認められている[Am. J. Med. 2004; 117:100-106]。
【0029】
Massaiらは、パイロット試験において、緊急避妊と結びつけた排卵時点に対するレボノルゲストレル(LNG)と組み合わせたメロキシカムの使用を調べた[Human Reproduction, vol. 22, no.2, pp 434-439 (2007)]。この試験において、2個の錠剤が使用され、各々1錠にLNG 0.75mgを含有する(例えば商標名Postinor-2で公知)。メロキシカムは、投与量15mgで使用された。メロキシカム及びLNGの組み合わせを受け取った患者群において、LNGによってのみ処置された群と比べ、排卵の低下した発生率の傾向が存在した。この作用は、排卵に対しより遅く錠剤が服用されると、次第により顕著になった。
【発明の概要】
【0030】
従って本発明の目的は、COX阻害剤及び同じくゲスターゲンの両方の低下した投与量で1回のみ投与されることができ、かつ同時に現在利用可能なゲスターゲン−ベースの避妊薬製品と比べ改善された避妊有効性を示す、緊急避妊のための利用可能な医薬組成物を製造することである。本発明の更なる目的は、軽減された副作用を伴い安全な1回限りの使用が可能であり、かつ加えてその中において心臓及び/又は腎臓への作用の最小のリスクを有するか又はそのリスクのないCOX阻害剤が使用される、利用可能な製品を製造することである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この目的は、本発明により実現される。COX阻害剤は、ゲスターゲンの作用を強化し、その結果排卵を避けるために必要なゲスターゲンの投与量は、驚くべきことにかなり減少され得ることがわかった。反対に、ゲスターゲンは、COX阻害剤の排卵−阻害作用を更に強化することができる。これらの相乗作用により、特にゲスターゲンが極めて低い用量であるにも関わらず、同等の又は増強されさえもした避妊作用が実現され、かつ同時に両方のクラスの物質の副作用が軽減されることが可能である。
【0032】
特にゲスターゲンに関連した副作用(悪心及び頭痛など)は、COX阻害剤の追加により軽減することができ、このことは本方法の忍容性及び受け容れを増大する。
【0033】
COX阻害剤の使用は、排卵された卵丘−卵母細胞複合体(卵丘細胞により取り囲まれている卵母細胞、卵母細胞を取り囲んでいる卵丘細胞は、受精において重要な機能を有する、Tamba S.ら、PNAS 2008)の受精率を低下することを示すことも可能であった。すなわち、例え排卵がCOX阻害剤により抑制されないとしても、低下した受精率の結果として、更なる避妊作用が存在する。これは恐らく、LHピーク後に生じ、かつそこではプロスタグランジンが役割を果たす、卵丘膨張の特徴に対する影響によるものであろう(実施例3参照)。これは、排卵阻害の機序のみを使用するLNG−ベースの市販品と比べ、避妊の信頼性の改善につながる。従って排卵にも関わらず、改善された避妊効率が達成される。受精に対するプロスタグランジンの作用に関して、Normann R. J.のTHE LANCET, 2001、及びSirois J.らのHuman Reproduction Update, 2004の文献が参照とされる。
【0034】
1回目投与量と2回目投与量の間の間隔が12時間を超えないことが確認される限り、及び両方のピルが、避妊手段をとらない性交渉後72時間以内に服用されることも確認される限りは、原則として、有効性を有意に損なうことなく、活性物質(ゲスターゲン及びCOX阻害剤)の投与量を、2個のピルに等分で分割することも可能である。しかし第24段落において言及された理由(2回目投与量の服用における服薬遵守、及び患者にとっての利便性)に関して、この投与の形態は好ましくない。
【0035】
ゲスターゲンとして、原則として、公知でありかつ経口避妊薬において使用されるゲスターゲン、及び同じく経口使用に適した他のゲスターゲン、例えば、酢酸クロルマジノン(CMA)、ノルゲスチメート(NGM)、ノルエルゲストロミン(NGMN)、ノルエチステロン(NET)/酢酸ノルエチステロン(NETA)、エトノゲストレル(3−ケト−デソゲストレル)、酢酸ノメゲストロール(NOMAc)、デメゲストン、プロメゲストン、ドロスピレノン(DRSP)、酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)、酢酸シプロテロン(CPA)、トリメゲストン(TMG)、レボノルゲストレル(LNG)、ノルゲストレル(NG)、デソゲストレル(DSG)、ゲストデン(GSD)又はジエノゲスト(DNG)などを使用することが可能であり、その中でレボノルゲストレル(LNG)、デソゲストレル(DSG)、ゲストデン(GSD)及びジエノゲスト(DNG)が好ましい。緊急避妊のための製品として本発明での使用に関して、レボノルゲストレルが特に好ましい。
【0036】
緊急避妊に使用されるゲスターゲンに関する投与量下限は、依然排卵を阻害する投与量である。この投与量は、使用されるゲスターゲンに応じて変動する。以下に示された排卵の阻害に関する最小投与量(21日使用)は、文献に認められる(表1):
【0037】
【表1】
【0038】
レボノルゲストレル単回投与の投与量上限は、900μgである。本発明に従い、投与量750μg、すなわち同じく全てLNGを基にして、市販されている緊急避妊製品において使用される用量の半分に相当する量が好ましい。
【0039】
本発明に従い使用される他のゲスターゲンに関して、下記量は、好ましい単回投与のための投与量範囲を示している:
【0040】
【表2】
【0041】
本発明に従い、排卵−阻害する投与量の2倍量から6倍量に相当する投与量範囲が、特に好ましい。従って本発明に従い、特に好ましい投与量範囲は、レボノルゲストレルについて100〜360μg、ジエノゲストについて1〜12mg、デソゲストレルについて120〜360μg、ゲストデンについて60〜300μg、又はCMAについて3〜30mg、NGMについて360〜1500μg、及びNOMAcについて5〜15mgである。
【0042】
COX阻害剤に加え、レボノルゲストレルを150〜300μgの量で含有する緊急避妊のための組成物が、特に好ましい。
【0043】
本発明に従い使用されるCOX阻害剤は、原則として、他の適応に利用可能である全てのCOX阻害剤、例えばメロキシカムも含む。本発明に特に適しているCOX阻害剤は、ピロキシカム、ナプロキセン、セレコキシブ、ジクロフェナク、テノキシカム、ニメスリド、ロルノキシカム及びインドメタシンを含み、その中でピロキシカムが特に好ましい。従ってゲスターゲン(LNG)と組み合わせられるこのCOX阻害剤は、例えばLNGのメロキシカムとの組み合わせにより達成される作用よりもより良い作用を有し(実施例1参照)、かつ加えてこれは受精を低下する。
【0044】
COX阻害剤についても、様々な用量が、使用されるCOX阻害剤に応じて、利用される。本発明に従い使用されるCOX阻害剤の投与量範囲は、好ましくは単回投与に関する各COX阻害剤の推奨最大1日量から生じる。これらの推奨最大投与量は、長期処置及び連続療法に関連しており、従って好ましくは単回投与である本緊急避妊の適応に関しては、推奨最大1日量の3倍を使用することも可能である。推奨最大1日量の4分の1は、下限と見なされる。本発明に従い使用されるCOX阻害剤に関して、これは、下記の量をもたらす(表3):
【0045】
【表3】
【0046】
本発明の好ましい実施態様において、投与量範囲5〜60mgのピロキシカムとその範囲60〜750μgのレボノルゲストレルの組み合わせが、医薬製剤において使用される。特に好ましいのは、ピロキシカム10〜30mg及びLNG 150〜300μgを含有する製剤である。
【0047】
本医薬製剤は、例えば、錠剤、フィルムコート錠又はコート錠、カシェ剤、カプセル剤、丸剤又は散剤など、固形又は液体の状態で存在することができる。液体組成物のその場での調製が可能である凍結乾燥された粉末アンプル製剤も含まれる。液体組成物は、例えば、注射液剤又は注入液剤であることができる。
【0048】
本医薬製剤の調製は、専門家には熟知されている。錠剤としての製剤の調製は、実施例4に説明されている。
【0049】
本発明の組成物の有効性は、正常な周期を持つ成体雌ラットにおいて実施された排卵−阻害試験により確認された。最初に、5投与量群(0.003mg、0.01mg、0.03mg、0.1mg及び0.3mg)に加えプラセボを使用し、依然排卵−阻害作用が存在しない、レボノルゲストレル(LNG)の投与量限界を決定した。1匹の動物につきレボノルゲストレル投与量0.01mg(皮下、以後s.c.と略す)は、依然排卵−阻害作用がないことがわかった。
【0050】
こうして決定されたLNGの投与量(0.01mg)による比較試験を次に実行し、この試験はLNG、プラセボ、メロキシカム、ピロキシカム、及びLNGとメロキシカムの組み合わせの排卵−阻害作用を、LNGに加えピロキシカムの本発明の組成物に対し比較した。
【0051】
各事例において発情後期が始まった動物5匹を、(a)プラセボ、(b)LNGの0.01mg、(c)ピロキシカム2mg、(d)LNG 0.01mgとピロキシカム2mg、(e)メロキシカム2mg、及び(f)LNG 0.1mgとメロキシカム3mgにより、4連続日処置した。LNGは、s.c.投与により与えられ、かつCOX阻害剤は経口的に(p.o.)与えられた。
【0052】
対照群(a)において42個の卵母細胞が排卵され、かつレボノルゲストレル0.1mgによる処置群(b)において35個の卵母細胞が排卵されたのに対し、ピロキシカム2mgのp.o.に加えレボノルゲストレル0.1mgの組み合わせ(処置群d)による排卵率は、わずかに3個の卵母細胞であった(5匹の動物のうち1匹のみは全く排卵を示さなかった)。対照的に、ピロキシカム2mg単独(処置群c)では、9個の卵母細胞が排卵された。
【0053】
ピロキシカムが正に1mgの更により低い投与量では、レボノルゲストレル0.1mgとの組み合わせに関する排卵率は、16個の卵母細胞であったのに対し、ピロキシカム1mgでは、28個の卵母細胞の排卵が可能であった。
【0054】
LNG/メロキシカムとLNG/ピロキシカムとLNGの間の比較は、この直接比較においてメロキシカムに加えLNGは、ピロキシカムに加えLNGよりもより効果が低いことを示している。従ってメロキシカム2mgに加えレボノルゲストレル0.01mgの組み合わせは、依然5匹の動物における18個の卵母細胞の排卵率を示した。
【0055】
完全な月経周期を持つラット(n=10匹の動物)における別の試験(実施例2)において、驚くべきことに、ピロキシカム単独では、発情前期の夕方(19時)、すなわちLHピーク時の血清プロゲステロン濃度に対し、有意な投与量に依存した作用を有するということがわかった。これは、主要エストロゲン−産生卵巣(LHピーク以前)から主要プロゲステロン−産生卵巣(LHピークにより生じた)への変化におけるLHピークの効率の指標として認めることができる。この驚くべき知見は、ピロキシカム単独は、このホルモンの状況に対し作用を有し、これはゲスターゲンの避妊作用を生じるか若しくは避妊作用の増強を生じることができることを示している。対照的に、文献は、他のCOX阻害剤は、このホルモンレベルに作用を有さないことを説明している[Pallら; Human Reproduction, vol. 16, no. 7, pp 1323-1328 (2001);Bataら, J Clin Pharmacol, (2006) 46:925-932]。本試験においても、低投与量のレボノルゲストレル(0.01mg、s.c.)とピロキシカム(0.5;1及び2mg、p.o.)の組み合わせは、各物質単独よりもかなりより良く排卵を阻害することがわかった:ビヒクル群において100個の卵母細胞が排卵され、LNG単独の群において68個、ピロキシカム0.5mgの群において85個、ピロキシカム1mgの群において56個、及びピロキシカム2mgの群において30個が排卵された。レボノルゲストレル0.01mgと、ピロキシカム0.5mgとの組み合わせの排卵率(31個の卵母細胞)、ピロキシカム1mgとの組み合わせの排卵率(19個の卵母細胞)及びピロキシカム2mgとの組み合わせの排卵率(0個の卵母細胞)は、非常に低く、かつ最高投与量では、完全な無排卵にさえつながった(1群につき10匹の動物)。
【実施例】
【0056】
本発明は、下記の非限定的実施例により説明される。
実施例1(ラットにおける排卵阻害試験):
ラットは、自然に排卵しかつその月経周期は膣塗抹標本を用い容易にモニタリングすることができるので、ラットは排卵−阻害物質の実証に特に適した動物モデルである。
【0057】
下記試験において、体重200〜220gの間の雌のラットを使用した。これらの動物は、管理された照明条件下(暗闇12時間、点灯12時間)の室内でマクロロンケージ(macrolon cage)内で飼育し、標準の飼料を給餌し、かつ水は自由に摂取させた。
レボノルゲストレルを安息香酸ベンジル/ヒマシ油(1+4v/v)中に溶解し、その1日量を、1ml/kg体重の容量で、s.c.投与により与えた。
【0058】
COX阻害剤を、担体溶液(0.9%w/v NaCl溶液100mlを溶媒とするMyrjR53(2−ヒドロキシエチルオクタデカノアート;CAS番号9004−99−3の85mg)中に懸濁し、処置群に相当する1日量を、容量2ml/kg体重で経口投与した。2つの周期を、膣塗抹標本を用いてモニタリングし、その後本試験を開始した。規則的に4日周期の動物のみを、本試験に組み入れた。処置群への割り当ては、無作為化した。月経が始まると、被験物質を4日間(1〜4日目)投与し、かつその周期のモニタリングを継続した。処置の3日目(発情前期)に、黄体形成ホルモン(LH)を測定するために、眼球後方の血液試料を、9時及び18時30分に採取した。4日目に(投与後)、膣塗抹標本が動物が発情期又は発情後期にあることを示す動物に、麻酔下で片側性の卵巣摘出を施した。圧壊した調製品を、卵管(tube)から作製し、かつ卵母細胞の存在について顕微鏡下で試験した。5日目に、全ての動物(無傷の動物及び片側性の卵巣摘出を受けた動物)を屠殺し、かつ発情期又は発情後期にある動物の卵管を調製し、かつ同じ方法で試験した。
【0059】
実行した試験は、レボノルゲストレルの低投与量は、それ自身は排卵を阻害しないが、COX阻害剤と組み合わせた場合に排卵の増大された抑制を提供し、並びにピロキシカムの場合、ほぼ完全な排卵抑制が実現され得ることを示した。対照的に、COX阻害剤単独では、排卵の部分的抑制のみを提供した。
【0060】
本試験の結果、すなわちレボノルゲストレルに加えCOX阻害剤の排卵に対する組み合わせ作用は、表4にまとめている:
【0061】
【表4】
【0062】
実施例2
本試験の設定は、実施例1において説明したものに対応している。
19時での発情前期のプロゲステロン濃度に関する結果を、表5にまとめている:
【0063】
【表5】
【0064】
実施例3
物質は、卵母細胞又は卵丘−卵母細胞複合体の受精能を低下することにより、受精に影響を及ぼすことができる。そのような作用を調べるために、物質をインビボで投与し、かつ卵丘/卵母細胞複合体からの排卵後、体外受精を施すことができる。更なる被験物質が添加されない場合の体外受精率は、被験物質のインビボ作用に関して結論を引き出すことができる。
【0065】
未熟な雌マウス(系列:B6D2F1、Charles River、Suelzfeld、年齢:19〜25日目)を、管理された照明条件下(暗闇12時間、点灯12時間)の室内でマクロロンケージ内で飼育し、標準の飼料を給餌し、かつ水は自由に摂取させた。
マウスは、PMSG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン)(10IU/動物 i.p.)により予備刺激した。48時間後、排卵−引き起こす刺激が、10IU/動物 i.p.の投与により、動物において誘発された。COX阻害剤を、担体溶液(0.9%w/v NaCl溶液100mlを溶媒とするMyrjR53(2−ヒドロキシエチルオクタデカノアート;CAS番号9004−99−3の85mg)中に懸濁し、処置群に相当する1日量(1群につき動物n=5)を、容量0.2mlのp.o.により、hCGの8時間前及びhCGと同時に投与した。hCG投与後14時間で、動物を屠殺した。排卵された卵母細胞及び卵丘−卵母細胞複合体を、卵嚢及び/又は卵管から回収し、精子数40,000精子/0.5mlを1時間受精に使用し、体外受精を施した。精子と共に24時間インキュベーションした後、受精した卵母細胞の数を確定し、かつ受精率の百分率を決定した。
【0066】
これらの結果は、ピロキシカムは、排卵された卵丘−卵母細胞複合体の受精能に作用を有することを示している。
ピロキシカムの排卵された卵丘−卵母細胞複合体の受精率に対する作用の試験結果は、表6にまとめている:
【0067】
【表6】
【0068】
実施例4 (緊急避妊用錠剤の製造方法)
1錠につき総重量200mgを有し、かつ表7に示した組成物である錠剤は、流動床造粒装置に、トウモロコシデンプン31.68kg、加工デンプン21.12kg、レボノルゲストレル(微粉末化された)0.22kg、ピロキシカム(微粉末化された)17.6kg及び乳糖一水和物94.82kgを充填し、かつこの流動床を始動することにより製造した。精製水50kg中のポリビニルピロリドン25000の8.8kgの水溶液を、流動床上に連続噴霧し、かつこの混合物を、流動床の空気流れを加熱することにより、同時に乾燥した。この過程の最後に、ステアリン酸マグネシウム1.76kgを、この流動床造粒装置に投入し、かつ流動床の運転により得られた顆粒と混合した。こうして形成された顆粒を、回転打錠機で、直径8mmの錠剤の形状に圧縮した。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8−1】
【0071】
【表8−2】
【0072】
【表8−3】
【0073】
【表8−4】
【0074】
【表8−5】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急避妊のための医薬組成物(「事後服用経口避妊薬(day after pill)」としても公知である)、前述の目的のための医薬組成物の製造のためにCOX阻害剤と組み合わせたレボノルゲストレルの使用、及びこれらの医薬組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な器具及び医薬組成物、例えばコンドーム、ペッサリー、子宮内ペッサリー、及び様々な一相性又は多相性経口避妊薬などが、望ましくない妊娠を阻止するために利用可能である。しかし多種多様な避妊法にもかかわらず、妊娠を望まない場合であっても、全く避妊手段をとらずに性交渉が行われることが多い。
【0003】
例えば、強姦事件において、又はコンドームなどの避妊器具が損傷した場合に、そのような状況が起こる。このような事例において排卵が阻止される場合、又は一旦排卵が生じた後受精が阻止される場合には、妊娠を避けることができる。この目的のためには、性交渉の直後に、遅くとも72時間以内に、緊急避妊が行われなければならない。
【0004】
この種の緊急避妊は、銅付加子宮内ペッサリー(例えばNova T(登録商標))による子宮内避妊のみではなく、特に下記のふたつの種類の間で区別されている緊急避妊薬(ECP)の使用によっても行なわれることができる:(a)エストロゲンと、更にはゲスターゲンの両方を含有する、EPC、及び(b)活性成分としてゲスターゲンのみを含有する、より新しい「プロゲスチン単独」ピル。
【0005】
より新しい「プロゲスチン単独」ECPは、より効果的でありかつより少ない副作用を生じるので、これらは今日までにより古い組み合わせのECPに大きく取って代わっている。しかしこれらの調製品の避妊の有効性も、経口避妊薬の定期的投与により達成される有効性をかなり下回る。従ってTrusselらの「避妊失敗の理解(Understanding Contraceptive Failure)」と題する論文[Best Practice & Research Clinical Obstetrics and Gynaecology 23 (2009) 199-209]は、様々な研究において、LNG−ベースのEPCの有効性は、わずかに59〜94%の間であることを報告している。
【0006】
エストロゲン及びゲスターゲンを含有するこれらの調製品の作用機序、並びに同じくゲスターゲンのみを含有する調製品の作用機序が、多数の研究において調べられている。これらの研究は、その作用機序は、阻害されたか若しくは遅れた排卵にあることを確認している1,2,3,4。
【0007】
この排卵の遅れは、ECPが周期の前半期(first half of the cycle)、すなわち排卵前に服用された場合の、ECPの有効性を説明している。
【0008】
研究は、EPCは、例え排卵後であっても妊娠の回避に作用があるかどうかの疑問点も検証している。この疑問点の包括的総説は、J. Trussell及びE. G. Raymondにより2009年3月に刊行された彼等の文献「緊急避妊:意図しない妊娠を阻止する最後のチャンス(Emergency Contraception: A Last Chance to Prevent Unintended Pregnancy)」により提供される。しかし、異なる視点でかつ場合によっては矛盾する(研究)結果において、著者らは、ECPは受精後であっても妊娠を阻止することができるかどうかという疑問点は、未だ解明されていないという結論に到達している。
【0009】
従っていくつかの研究は、ECPによる処置後の、子宮内膜における組織学的変化及び生化学的変化を示している。これらの研究は、ECPは、子宮内膜における受精卵の着床も妨害し得るという結論を可能にしている1,5,6,7。
【0010】
しかしより最近の研究は、ECPの投与は子宮内膜に作用を有するというこの仮説と矛盾している1,8,9。
【0011】
考察されている更なる作用は、黄体の機能の乱れ、精子の進入に影響を及ぼす子宮頸管粘膜の肥厚化、精子と卵の卵管輸送における変化、及び受精の直接の阻害を含む13,10,11,12。
【0012】
しかしECPの有効性に関する統計学的データは、様々な要因が、その有効性に寄与し、かつそれらの作用は、排卵の遅れ又は阻止にのみ起因し得ないことを指摘している14。
【0013】
いくつかの研究は、ゲスターゲン(レボノルゲストレル)のみを含有するECPによる初期処置は、排卵過程に対する作用に加え、黄体機能に対する作用も両方を有することを示した15,18,19,20,58。対照的に、別のふたつの研究は、子宮内膜に対し作用がないことを示している6,17。
【0014】
ゲスターゲン(レボノルゲストレル)がLH急上昇以前に投与された別の試験は、今度は、血清及び子宮内膜中のグリコデリンの分泌パターンに対する作用を示している21。しかし、その目的はまさに子宮内膜のグリコデリン発現を評価することである後者の研究においては、この結果は確認されていない22。
【0015】
30年以上前に実施されたレボノルゲストレルの研究は、精子の移動及び生殖管の機能に対する作用を確立した23。しかしより最近の研究は、レボノルゲストレル1.5mgは、子宮頸管粘膜に対し、又は精子の子宮腔への進入に対し作用を有さないことを示した22。
【0016】
EPC投与が避妊されない性交後に遅延される場合のEPCの有効性の低下は、EPCは、卵母細胞の着床に対し作用を有さないことを示唆し、その理由はそうでなければ本製品の有効性は、少なくともECPが着床以前に服用される限りは、恐らく投与される時間に左右されないからである24。
【0017】
ラット及びオマキザル(Cebus)における排卵−阻害投与量のレボノルゲストレルの研究は、受精率は、受精後に損なわれないことを示している12,25,26。しかしこの知見は、ヒトにあてはめることができるかどうかは不明である。
【0018】
ECPの作用の機序は完全に明らかではないが、例えば米食品医薬品局(FDA)/米国立衛生研究所(NIH)などの医学的管轄官庁により使用される定義の意味内であっても、ECPは流産作用を有さないことが明示されている27。
【0019】
作用機序を試験する研究に加え、多くの研究が、性交後避妊のための、様々な処置投薬計画、ゲスターゲン及び投与量の好適性を試験している。性交後避妊とは、避妊手段をとらない性交渉後、妊娠することを望まない女性が、排卵を阻止することを意図した適切な医薬品を服用することを意味する。
【0020】
これに関連した最初の研究は、1970年代初頭に行われた。このように、レボノルゲストレルを含む様々なゲスターゲンが、大規模試験において、定型的(routine)性交後避妊薬として試験された(The Journal of Reproductive Medicine, 13(2), (1974);Contraception, 7(5), 367-379, (1973);Reproduction, 2(1), 61-62, (1975);International Journal of Fertility, 20, 156-160, (1975))。その1日1回投与量は、150μg〜1,500μgの間であった。これらの研究の結果は、レボノルゲストレルの性交後避妊薬の有効性は、単独で使用された場合、投与量1mgであっても低いものであることを示した。
【0021】
A. A. Yuzpe及び同僚[The Journal of Reproductive Medicine, 13(2), (1974)]は、エチニルエストラジオール100μg及びノルゲストレル1.0mgを含有する医薬組成物を、性交後避妊薬として単回投与で使用した研究の結果を報告した。本組成物は、避妊手段をとらない性交渉後5日以内に服用された。この方法は、その後変更された。一方で、この組成物の可能な使用期間が、5日間から72時間に短縮され、かつ他方で、その投与量は、この組成物の投与は、初回投与後、12時間で繰り返されたという意味で、二倍にされた[Fertility and Sterility, 28, 932-936, (1977);同書、37, 508-513 (1982);International Journal of Gynaecology and Obstetrics, 15, 133-136, (1977)]。この変更は、この方法の成功を向上した。
【0022】
A. A. Yuzpe及び同僚による研究に続き、この組み合わせの有効性を明らかにするために、様々な他の治験が行われた。これらの研究において、ノルゲストレル2.0mg又はレボノルゲストレル1.0mgと組み合わせた、エチニルエストラジオールの総投与量は0.2mgであった。これらの研究の結果は、前記投与(Yuzpe投薬計画)は、より早期により高投与量で使用されたエストロゲンよりもより少ない副作用を引き起こしたが、悪心及び吐気の相対発生率は依然非常に高い(各々、50%及び20%)ことを示した。これらの副作用は、エストロゲン作用に起因し、かつ本方法の受け容れの低下につながる。更に、この処置の有効性は、吐気が生じる場合には、低下する。
【0023】
緊急避妊のためのレボノルゲストレルの使用は、1990年代に発見された。これらの研究の結果は、2つの詳しく文書化された刊行物において報告された[Lancet, 352, 428-433, (1998)、及びHuman Reproduction, 8(3), 389-392, (1993)]。2回目の投与量が初回投与後12時間で投与される、レボノルゲストレル0.75mgのみ含有する錠剤、並びにエチニルエストラジオール0.1mg及びレボノルゲストレル1.0mgを含有するYuzpe法の組み合わせ錠剤の有効性を、避妊手段をとらない性交渉後48時間以内、同じく72時間以内に調べた。これらの結果は、レボノルゲストレル0.75mgを含有する錠剤2個による防御は、Yuzpe投薬計画による防御よりも良好であり、かつ同じくレボノルゲストレルのみを受け取る女性は、より少ない副作用を経験したことを示し、この知見はエチニルエストラジオールの非存在に起因するであろう。
【0024】
これらの臨床試験の結果は、処置が性交後より早期に開始されると、その作用がより良いことも示した。しかし経験から、女性は、12時間後に服用されるべき2回目の投与量が、不適切な時点(例えば、女性が眠っている時点)にあたる(fall)状況を避けるために、初回の錠剤の服用が遅れることが示されている。しかしこれらの研究によると、これら2回の投与量の間の12時間間隔の正確な遵守は、所望の作用を低下しないために必須である。統計学的データによると、ほとんどの女性は、初回投与量後12〜16時間以内に、2回目の投与量を服用する[Lancet, 352, 428-433, (1998)]。
【0025】
指摘された欠点(2回目の錠剤の投与の遅れ)の観点から、欧州特許第1448207号は、わずか1個の錠剤で構成されるが、2倍量のレボノルゲストレル、すなわち活性物質1.5mgを含有する製品を開示している。この錠剤は、避妊手段をとらない性交渉後72時間以内に服用されなければならない。臨床試験が示すことができるように、この避妊作用は、投与量が2錠に分割され、各々0.75mgを含有する場合の避妊作用と同等か又はわずかに良好でさえある[E. Jonannsonら, Human Reproduction, vol. 17, no. 6, 1472-1476 (2002)]。しかしJohannsenは、1.5mgの高投与量製剤は、より忍容性が悪い(悪心、胃のむかつき、吐気、及び同じく月経周期の乱れ)と推定している。
【0026】
他の研究グループは、COX阻害剤の排卵に対する影響を調べた。例えばPallらは、ロフェコキシブの排卵に対する影響を調べた[Pallら; Human Reproduction, vol. 16, no.7, pp 1323-1328 (2001)]。この研究において、活性物質25mgが、連続9日間使用された。48時間を超える排卵の遅れが、患者6名中4名において得られた。
【0027】
M. S. Bataらによる研究は、Pallの結果と一致しているが、メロキシカムの排卵に対する影響を調べている[Bataら, J Clin Pharmacol, (2006) 46:925-932]。この研究は、患者1名につき1日に30mgの投与量(連続5日間)は、5日間の排卵の遅延を実現することが可能であることを示している。
【0028】
COX阻害剤は、原則として比較的忍容性が良好であることがわかっているが、欧州医薬品審査庁(EMEA)[EMEA/62838/2005;EMEA/62757/2005]は、このクラスの物質は、有害な心臓血管系事象のより高いリスクを有し、従って最小有効量が使用されることが推奨されることを指摘している。現在入手可能な試験データは、COX−2(2型シクロオキシゲナーゼ)の選択性が増大するにつれ、腎臓事象及び心臓血管系事象のリスクが増加する傾向を示している。従ってメロキシカムは、ピロキシカムなどの他のCOX阻害剤と比べ、慎重に処置されなければならない[Clin Pharmacol Ther. 2009 Feb; 85(2):190-7;Pharmacotherapy, 2006;26(7):919-938]。しかしCOX−2選択性の増大は、より少ない胃腸管の副作用に結びつけられ、これまでは有害な心臓血管系事象は長期使用の症例においてのみ認められている[Am. J. Med. 2004; 117:100-106]。
【0029】
Massaiらは、パイロット試験において、緊急避妊と結びつけた排卵時点に対するレボノルゲストレル(LNG)と組み合わせたメロキシカムの使用を調べた[Human Reproduction, vol. 22, no.2, pp 434-439 (2007)]。この試験において、2個の錠剤が使用され、各々1錠にLNG 0.75mgを含有する(例えば商標名Postinor-2で公知)。メロキシカムは、投与量15mgで使用された。メロキシカム及びLNGの組み合わせを受け取った患者群において、LNGによってのみ処置された群と比べ、排卵の低下した発生率の傾向が存在した。この作用は、排卵に対しより遅く錠剤が服用されると、次第により顕著になった。
【発明の概要】
【0030】
従って本発明の目的は、COX阻害剤及び同じくゲスターゲンの両方の低下した投与量で1回のみ投与されることができ、かつ同時に現在利用可能なゲスターゲン−ベースの避妊薬製品と比べ改善された避妊有効性を示す、緊急避妊のための利用可能な医薬組成物を製造することである。本発明の更なる目的は、軽減された副作用を伴い安全な1回限りの使用が可能であり、かつ加えてその中において心臓及び/又は腎臓への作用の最小のリスクを有するか又はそのリスクのないCOX阻害剤が使用される、利用可能な製品を製造することである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この目的は、本発明により実現される。COX阻害剤は、ゲスターゲンの作用を強化し、その結果排卵を避けるために必要なゲスターゲンの投与量は、驚くべきことにかなり減少され得ることがわかった。反対に、ゲスターゲンは、COX阻害剤の排卵−阻害作用を更に強化することができる。これらの相乗作用により、特にゲスターゲンが極めて低い用量であるにも関わらず、同等の又は増強されさえもした避妊作用が実現され、かつ同時に両方のクラスの物質の副作用が軽減されることが可能である。
【0032】
特にゲスターゲンに関連した副作用(悪心及び頭痛など)は、COX阻害剤の追加により軽減することができ、このことは本方法の忍容性及び受け容れを増大する。
【0033】
COX阻害剤の使用は、排卵された卵丘−卵母細胞複合体(卵丘細胞により取り囲まれている卵母細胞、卵母細胞を取り囲んでいる卵丘細胞は、受精において重要な機能を有する、Tamba S.ら、PNAS 2008)の受精率を低下することを示すことも可能であった。すなわち、例え排卵がCOX阻害剤により抑制されないとしても、低下した受精率の結果として、更なる避妊作用が存在する。これは恐らく、LHピーク後に生じ、かつそこではプロスタグランジンが役割を果たす、卵丘膨張の特徴に対する影響によるものであろう(実施例3参照)。これは、排卵阻害の機序のみを使用するLNG−ベースの市販品と比べ、避妊の信頼性の改善につながる。従って排卵にも関わらず、改善された避妊効率が達成される。受精に対するプロスタグランジンの作用に関して、Normann R. J.のTHE LANCET, 2001、及びSirois J.らのHuman Reproduction Update, 2004の文献が参照とされる。
【0034】
1回目投与量と2回目投与量の間の間隔が12時間を超えないことが確認される限り、及び両方のピルが、避妊手段をとらない性交渉後72時間以内に服用されることも確認される限りは、原則として、有効性を有意に損なうことなく、活性物質(ゲスターゲン及びCOX阻害剤)の投与量を、2個のピルに等分で分割することも可能である。しかし第24段落において言及された理由(2回目投与量の服用における服薬遵守、及び患者にとっての利便性)に関して、この投与の形態は好ましくない。
【0035】
ゲスターゲンとして、原則として、公知でありかつ経口避妊薬において使用されるゲスターゲン、及び同じく経口使用に適した他のゲスターゲン、例えば、酢酸クロルマジノン(CMA)、ノルゲスチメート(NGM)、ノルエルゲストロミン(NGMN)、ノルエチステロン(NET)/酢酸ノルエチステロン(NETA)、エトノゲストレル(3−ケト−デソゲストレル)、酢酸ノメゲストロール(NOMAc)、デメゲストン、プロメゲストン、ドロスピレノン(DRSP)、酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)、酢酸シプロテロン(CPA)、トリメゲストン(TMG)、レボノルゲストレル(LNG)、ノルゲストレル(NG)、デソゲストレル(DSG)、ゲストデン(GSD)又はジエノゲスト(DNG)などを使用することが可能であり、その中でレボノルゲストレル(LNG)、デソゲストレル(DSG)、ゲストデン(GSD)及びジエノゲスト(DNG)が好ましい。緊急避妊のための製品として本発明での使用に関して、レボノルゲストレルが特に好ましい。
【0036】
緊急避妊に使用されるゲスターゲンに関する投与量下限は、依然排卵を阻害する投与量である。この投与量は、使用されるゲスターゲンに応じて変動する。以下に示された排卵の阻害に関する最小投与量(21日使用)は、文献に認められる(表1):
【0037】
【表1】
【0038】
レボノルゲストレル単回投与の投与量上限は、900μgである。本発明に従い、投与量750μg、すなわち同じく全てLNGを基にして、市販されている緊急避妊製品において使用される用量の半分に相当する量が好ましい。
【0039】
本発明に従い使用される他のゲスターゲンに関して、下記量は、好ましい単回投与のための投与量範囲を示している:
【0040】
【表2】
【0041】
本発明に従い、排卵−阻害する投与量の2倍量から6倍量に相当する投与量範囲が、特に好ましい。従って本発明に従い、特に好ましい投与量範囲は、レボノルゲストレルについて100〜360μg、ジエノゲストについて1〜12mg、デソゲストレルについて120〜360μg、ゲストデンについて60〜300μg、又はCMAについて3〜30mg、NGMについて360〜1500μg、及びNOMAcについて5〜15mgである。
【0042】
COX阻害剤に加え、レボノルゲストレルを150〜300μgの量で含有する緊急避妊のための組成物が、特に好ましい。
【0043】
本発明に従い使用されるCOX阻害剤は、原則として、他の適応に利用可能である全てのCOX阻害剤、例えばメロキシカムも含む。本発明に特に適しているCOX阻害剤は、ピロキシカム、ナプロキセン、セレコキシブ、ジクロフェナク、テノキシカム、ニメスリド、ロルノキシカム及びインドメタシンを含み、その中でピロキシカムが特に好ましい。従ってゲスターゲン(LNG)と組み合わせられるこのCOX阻害剤は、例えばLNGのメロキシカムとの組み合わせにより達成される作用よりもより良い作用を有し(実施例1参照)、かつ加えてこれは受精を低下する。
【0044】
COX阻害剤についても、様々な用量が、使用されるCOX阻害剤に応じて、利用される。本発明に従い使用されるCOX阻害剤の投与量範囲は、好ましくは単回投与に関する各COX阻害剤の推奨最大1日量から生じる。これらの推奨最大投与量は、長期処置及び連続療法に関連しており、従って好ましくは単回投与である本緊急避妊の適応に関しては、推奨最大1日量の3倍を使用することも可能である。推奨最大1日量の4分の1は、下限と見なされる。本発明に従い使用されるCOX阻害剤に関して、これは、下記の量をもたらす(表3):
【0045】
【表3】
【0046】
本発明の好ましい実施態様において、投与量範囲5〜60mgのピロキシカムとその範囲60〜750μgのレボノルゲストレルの組み合わせが、医薬製剤において使用される。特に好ましいのは、ピロキシカム10〜30mg及びLNG 150〜300μgを含有する製剤である。
【0047】
本医薬製剤は、例えば、錠剤、フィルムコート錠又はコート錠、カシェ剤、カプセル剤、丸剤又は散剤など、固形又は液体の状態で存在することができる。液体組成物のその場での調製が可能である凍結乾燥された粉末アンプル製剤も含まれる。液体組成物は、例えば、注射液剤又は注入液剤であることができる。
【0048】
本医薬製剤の調製は、専門家には熟知されている。錠剤としての製剤の調製は、実施例4に説明されている。
【0049】
本発明の組成物の有効性は、正常な周期を持つ成体雌ラットにおいて実施された排卵−阻害試験により確認された。最初に、5投与量群(0.003mg、0.01mg、0.03mg、0.1mg及び0.3mg)に加えプラセボを使用し、依然排卵−阻害作用が存在しない、レボノルゲストレル(LNG)の投与量限界を決定した。1匹の動物につきレボノルゲストレル投与量0.01mg(皮下、以後s.c.と略す)は、依然排卵−阻害作用がないことがわかった。
【0050】
こうして決定されたLNGの投与量(0.01mg)による比較試験を次に実行し、この試験はLNG、プラセボ、メロキシカム、ピロキシカム、及びLNGとメロキシカムの組み合わせの排卵−阻害作用を、LNGに加えピロキシカムの本発明の組成物に対し比較した。
【0051】
各事例において発情後期が始まった動物5匹を、(a)プラセボ、(b)LNGの0.01mg、(c)ピロキシカム2mg、(d)LNG 0.01mgとピロキシカム2mg、(e)メロキシカム2mg、及び(f)LNG 0.1mgとメロキシカム3mgにより、4連続日処置した。LNGは、s.c.投与により与えられ、かつCOX阻害剤は経口的に(p.o.)与えられた。
【0052】
対照群(a)において42個の卵母細胞が排卵され、かつレボノルゲストレル0.1mgによる処置群(b)において35個の卵母細胞が排卵されたのに対し、ピロキシカム2mgのp.o.に加えレボノルゲストレル0.1mgの組み合わせ(処置群d)による排卵率は、わずかに3個の卵母細胞であった(5匹の動物のうち1匹のみは全く排卵を示さなかった)。対照的に、ピロキシカム2mg単独(処置群c)では、9個の卵母細胞が排卵された。
【0053】
ピロキシカムが正に1mgの更により低い投与量では、レボノルゲストレル0.1mgとの組み合わせに関する排卵率は、16個の卵母細胞であったのに対し、ピロキシカム1mgでは、28個の卵母細胞の排卵が可能であった。
【0054】
LNG/メロキシカムとLNG/ピロキシカムとLNGの間の比較は、この直接比較においてメロキシカムに加えLNGは、ピロキシカムに加えLNGよりもより効果が低いことを示している。従ってメロキシカム2mgに加えレボノルゲストレル0.01mgの組み合わせは、依然5匹の動物における18個の卵母細胞の排卵率を示した。
【0055】
完全な月経周期を持つラット(n=10匹の動物)における別の試験(実施例2)において、驚くべきことに、ピロキシカム単独では、発情前期の夕方(19時)、すなわちLHピーク時の血清プロゲステロン濃度に対し、有意な投与量に依存した作用を有するということがわかった。これは、主要エストロゲン−産生卵巣(LHピーク以前)から主要プロゲステロン−産生卵巣(LHピークにより生じた)への変化におけるLHピークの効率の指標として認めることができる。この驚くべき知見は、ピロキシカム単独は、このホルモンの状況に対し作用を有し、これはゲスターゲンの避妊作用を生じるか若しくは避妊作用の増強を生じることができることを示している。対照的に、文献は、他のCOX阻害剤は、このホルモンレベルに作用を有さないことを説明している[Pallら; Human Reproduction, vol. 16, no. 7, pp 1323-1328 (2001);Bataら, J Clin Pharmacol, (2006) 46:925-932]。本試験においても、低投与量のレボノルゲストレル(0.01mg、s.c.)とピロキシカム(0.5;1及び2mg、p.o.)の組み合わせは、各物質単独よりもかなりより良く排卵を阻害することがわかった:ビヒクル群において100個の卵母細胞が排卵され、LNG単独の群において68個、ピロキシカム0.5mgの群において85個、ピロキシカム1mgの群において56個、及びピロキシカム2mgの群において30個が排卵された。レボノルゲストレル0.01mgと、ピロキシカム0.5mgとの組み合わせの排卵率(31個の卵母細胞)、ピロキシカム1mgとの組み合わせの排卵率(19個の卵母細胞)及びピロキシカム2mgとの組み合わせの排卵率(0個の卵母細胞)は、非常に低く、かつ最高投与量では、完全な無排卵にさえつながった(1群につき10匹の動物)。
【実施例】
【0056】
本発明は、下記の非限定的実施例により説明される。
実施例1(ラットにおける排卵阻害試験):
ラットは、自然に排卵しかつその月経周期は膣塗抹標本を用い容易にモニタリングすることができるので、ラットは排卵−阻害物質の実証に特に適した動物モデルである。
【0057】
下記試験において、体重200〜220gの間の雌のラットを使用した。これらの動物は、管理された照明条件下(暗闇12時間、点灯12時間)の室内でマクロロンケージ(macrolon cage)内で飼育し、標準の飼料を給餌し、かつ水は自由に摂取させた。
レボノルゲストレルを安息香酸ベンジル/ヒマシ油(1+4v/v)中に溶解し、その1日量を、1ml/kg体重の容量で、s.c.投与により与えた。
【0058】
COX阻害剤を、担体溶液(0.9%w/v NaCl溶液100mlを溶媒とするMyrjR53(2−ヒドロキシエチルオクタデカノアート;CAS番号9004−99−3の85mg)中に懸濁し、処置群に相当する1日量を、容量2ml/kg体重で経口投与した。2つの周期を、膣塗抹標本を用いてモニタリングし、その後本試験を開始した。規則的に4日周期の動物のみを、本試験に組み入れた。処置群への割り当ては、無作為化した。月経が始まると、被験物質を4日間(1〜4日目)投与し、かつその周期のモニタリングを継続した。処置の3日目(発情前期)に、黄体形成ホルモン(LH)を測定するために、眼球後方の血液試料を、9時及び18時30分に採取した。4日目に(投与後)、膣塗抹標本が動物が発情期又は発情後期にあることを示す動物に、麻酔下で片側性の卵巣摘出を施した。圧壊した調製品を、卵管(tube)から作製し、かつ卵母細胞の存在について顕微鏡下で試験した。5日目に、全ての動物(無傷の動物及び片側性の卵巣摘出を受けた動物)を屠殺し、かつ発情期又は発情後期にある動物の卵管を調製し、かつ同じ方法で試験した。
【0059】
実行した試験は、レボノルゲストレルの低投与量は、それ自身は排卵を阻害しないが、COX阻害剤と組み合わせた場合に排卵の増大された抑制を提供し、並びにピロキシカムの場合、ほぼ完全な排卵抑制が実現され得ることを示した。対照的に、COX阻害剤単独では、排卵の部分的抑制のみを提供した。
【0060】
本試験の結果、すなわちレボノルゲストレルに加えCOX阻害剤の排卵に対する組み合わせ作用は、表4にまとめている:
【0061】
【表4】
【0062】
実施例2
本試験の設定は、実施例1において説明したものに対応している。
19時での発情前期のプロゲステロン濃度に関する結果を、表5にまとめている:
【0063】
【表5】
【0064】
実施例3
物質は、卵母細胞又は卵丘−卵母細胞複合体の受精能を低下することにより、受精に影響を及ぼすことができる。そのような作用を調べるために、物質をインビボで投与し、かつ卵丘/卵母細胞複合体からの排卵後、体外受精を施すことができる。更なる被験物質が添加されない場合の体外受精率は、被験物質のインビボ作用に関して結論を引き出すことができる。
【0065】
未熟な雌マウス(系列:B6D2F1、Charles River、Suelzfeld、年齢:19〜25日目)を、管理された照明条件下(暗闇12時間、点灯12時間)の室内でマクロロンケージ内で飼育し、標準の飼料を給餌し、かつ水は自由に摂取させた。
マウスは、PMSG(妊馬血清性性腺刺激ホルモン)(10IU/動物 i.p.)により予備刺激した。48時間後、排卵−引き起こす刺激が、10IU/動物 i.p.の投与により、動物において誘発された。COX阻害剤を、担体溶液(0.9%w/v NaCl溶液100mlを溶媒とするMyrjR53(2−ヒドロキシエチルオクタデカノアート;CAS番号9004−99−3の85mg)中に懸濁し、処置群に相当する1日量(1群につき動物n=5)を、容量0.2mlのp.o.により、hCGの8時間前及びhCGと同時に投与した。hCG投与後14時間で、動物を屠殺した。排卵された卵母細胞及び卵丘−卵母細胞複合体を、卵嚢及び/又は卵管から回収し、精子数40,000精子/0.5mlを1時間受精に使用し、体外受精を施した。精子と共に24時間インキュベーションした後、受精した卵母細胞の数を確定し、かつ受精率の百分率を決定した。
【0066】
これらの結果は、ピロキシカムは、排卵された卵丘−卵母細胞複合体の受精能に作用を有することを示している。
ピロキシカムの排卵された卵丘−卵母細胞複合体の受精率に対する作用の試験結果は、表6にまとめている:
【0067】
【表6】
【0068】
実施例4 (緊急避妊用錠剤の製造方法)
1錠につき総重量200mgを有し、かつ表7に示した組成物である錠剤は、流動床造粒装置に、トウモロコシデンプン31.68kg、加工デンプン21.12kg、レボノルゲストレル(微粉末化された)0.22kg、ピロキシカム(微粉末化された)17.6kg及び乳糖一水和物94.82kgを充填し、かつこの流動床を始動することにより製造した。精製水50kg中のポリビニルピロリドン25000の8.8kgの水溶液を、流動床上に連続噴霧し、かつこの混合物を、流動床の空気流れを加熱することにより、同時に乾燥した。この過程の最後に、ステアリン酸マグネシウム1.76kgを、この流動床造粒装置に投入し、かつ流動床の運転により得られた顆粒と混合した。こうして形成された顆粒を、回転打錠機で、直径8mmの錠剤の形状に圧縮した。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8−1】
【0071】
【表8−2】
【0072】
【表8−3】
【0073】
【表8−4】
【0074】
【表8−5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)レボノルゲストレル 50〜900μg、ジエノゲスト 1〜30mg、デソゲストレル 60〜900μg、ゲストデン 30〜750μg、CMA 1.5〜75mg、NGM 180〜3700μg、酢酸シプロテロン(CPA) 1〜15mg、ドロスピレノン(DRSP) 2〜30mg、ジドロゲステロン 30〜450mg、エチノジオール 2〜30mg、リネストレノール 2〜30mg、メドロゲストン 10〜150mg、酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA) 10〜150mg、ノルエチステロン 0.5〜8mg、酢酸ノルエチステロン(NETA) 0.5〜8mg、プロゲステロン 300〜4500mg、プロメゲストン 0.5〜8mg、トリメゲストン 0.5〜8mg、又はNOMAc 2.5〜37mg、並びに
(b)COX阻害剤として、活性物質としてのピロキシカム、ナプロキセン、セレコキシブ、インドメタシン、ジクロフェナク、ニメスリド、ロルノキシカム又はテノキシカム、及び、医薬調製において使用される公知の助剤を含有することを特徴とする、単回投与で投与される医薬組成物。
【請求項2】
ゲスターゲンとして、レボノルゲストレル 100〜360μg、ジエノゲスト 2〜12mg、デソゲストレル 120〜360μg、ゲストデン 60〜300μg、CMA 3〜30mg、NGM 360〜1500μg、又はNOMAc 5〜15mgを含有することを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
COX阻害剤が、下記範囲で含有されることを特徴とする、請求項1又は2記載の医薬組成物:
ピロキシカム 5〜60mg
テノキシカム 10〜120mg
ナプロキセン 300〜3800mg
ジクロフェナク 40〜450mg
インドメタシン 50〜600mg
セレコキシブ 100〜1200mg
ニメスリド 50〜600mg
ロルノキシカム 4〜48mg
【請求項4】
ゲスターゲンとして、レボノルゲストレルを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
レボノルゲストレルを投与量150〜300μgで含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
COX阻害剤としてピロキシカムを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ピロキシカムを投与量5〜60mgで含有する、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
ピロキシカムを投与量10〜30mgで含有する、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項9】
ゲスターゲンとしてレボノルゲストレルを、及びCOX阻害剤としてピロキシカムを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
レボノルゲストレル 150〜300μg及びピロキシカム 10〜30mgを含有する、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
緊急避妊のための医薬品の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
医薬組成物が、性交後72時間以内に単回投与で投与される、請求項9記載の使用。
【請求項13】
COX阻害剤としてイブプロフェン 600〜3600mgを含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【請求項1】
(a)レボノルゲストレル 50〜900μg、ジエノゲスト 1〜30mg、デソゲストレル 60〜900μg、ゲストデン 30〜750μg、CMA 1.5〜75mg、NGM 180〜3700μg、酢酸シプロテロン(CPA) 1〜15mg、ドロスピレノン(DRSP) 2〜30mg、ジドロゲステロン 30〜450mg、エチノジオール 2〜30mg、リネストレノール 2〜30mg、メドロゲストン 10〜150mg、酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA) 10〜150mg、ノルエチステロン 0.5〜8mg、酢酸ノルエチステロン(NETA) 0.5〜8mg、プロゲステロン 300〜4500mg、プロメゲストン 0.5〜8mg、トリメゲストン 0.5〜8mg、又はNOMAc 2.5〜37mg、並びに
(b)COX阻害剤として、活性物質としてのピロキシカム、ナプロキセン、セレコキシブ、インドメタシン、ジクロフェナク、ニメスリド、ロルノキシカム又はテノキシカム、及び、医薬調製において使用される公知の助剤を含有することを特徴とする、単回投与で投与される医薬組成物。
【請求項2】
ゲスターゲンとして、レボノルゲストレル 100〜360μg、ジエノゲスト 2〜12mg、デソゲストレル 120〜360μg、ゲストデン 60〜300μg、CMA 3〜30mg、NGM 360〜1500μg、又はNOMAc 5〜15mgを含有することを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
COX阻害剤が、下記範囲で含有されることを特徴とする、請求項1又は2記載の医薬組成物:
ピロキシカム 5〜60mg
テノキシカム 10〜120mg
ナプロキセン 300〜3800mg
ジクロフェナク 40〜450mg
インドメタシン 50〜600mg
セレコキシブ 100〜1200mg
ニメスリド 50〜600mg
ロルノキシカム 4〜48mg
【請求項4】
ゲスターゲンとして、レボノルゲストレルを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
レボノルゲストレルを投与量150〜300μgで含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
COX阻害剤としてピロキシカムを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ピロキシカムを投与量5〜60mgで含有する、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
ピロキシカムを投与量10〜30mgで含有する、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項9】
ゲスターゲンとしてレボノルゲストレルを、及びCOX阻害剤としてピロキシカムを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
レボノルゲストレル 150〜300μg及びピロキシカム 10〜30mgを含有する、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
緊急避妊のための医薬品の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
医薬組成物が、性交後72時間以内に単回投与で投与される、請求項9記載の使用。
【請求項13】
COX阻害剤としてイブプロフェン 600〜3600mgを含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の医薬組成物。
【公表番号】特表2012−530733(P2012−530733A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516546(P2012−516546)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003497
【国際公開番号】WO2010/149273
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003497
【国際公開番号】WO2010/149273
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(300049958)バイエル ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】
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