説明

総食物繊維含量の高い処理耐性デンプン組成物

【課題】化学、酵素および物理的化工を含む特定のデンプン処理操作によるデンプンの多くの食物繊維含量は、処理、特に押出の過酷な条件に耐えることができず、著しく繊維が減った押出製品が生じる。
【解決手段】本発明は、総食物繊維(TDF)が多く、そのTDFを処理時に維持するデンプン組成物に関する。特に、そのような繊維の50%を超える繊維が押出処理時に維持される。そのようなデンプンは、朝食用シリアルおよびスナックなどの押出製品を含む、高繊維食品製品の製造に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総食物繊維の多いデンプン組成物であって、押出プロセスなどの処理時にそのような繊維の50%を超える繊維を維持するデンプン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンは、1つがα−1,4−D−グルコシド結合により結合しているD−無水グルコース単位のほとんど直鎖で柔軟性のあるポリマーであるアミロースであり、もう1つがα−1,6−D−グルコシド結合により結合している直鎖の分岐ポリマーであるアミロペクチンである、2種の多糖分子から構成される複雑な炭水化物である。
【0003】
研究文献によると、繊維の多いデンプンは、結腸の健康および低いカロリー値を含む多くの有益な効果を有する。さらに、前記デンプンは、低い食事炭水化物含量、低い血糖反応およびインスリン(insulimic)反応をもたらし、飽満に影響を与え、そして持続的なエネルギー放出、体重管理、低血糖、高血糖、血糖調節障害、インスリン耐性症候群、2型糖尿病の制御および向上した運動能力、精神的集中および記憶に貢献することがある。
【0004】
化学、酵素および物理的化工を含む特定のデンプン処理操作が、デンプンの食物繊維含量を増やすことがあることが知られている。残念ながら、これらのデンプンの多くの食物繊維含量は、処理、特に押出の過酷な条件に耐えることができず、著しく繊維が減った押出製品が生じる。総食物繊維含量を高いまま保つために、他の繊維源を利用するか、デンプンの量を増やして、そのような処理の損失を考慮に入れてきた。残念なことに、他の繊維源は、高繊維耐性デンプンに認められるのと同様の健康上の利益をしばしば与えず、最終製品の機能性に悪影響を与え、かつ/または処理条件を大幅に変更する必要を提示する。さらに、多量のデンプンの使用は、製品の官能性に有害であり、経済的な解決法を示さない。
【0005】
驚くべきことに、トリメタリン酸ナトリウムまたはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせにより化学架橋され、湿熱処理されたデンプンが、種々の異なる剪断レベル下で押し出され、または他の過酷な方法で処理され、それでもその総食物繊維含量の50%を超える繊維を維持することが見いだされた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、総食物繊維(TDF)が多く、そのTDFを処理時に維持するデンプン組成物に関する。特に、そのような繊維の50%を超える繊維が押出処理時に維持される。そのようなデンプンは、朝食用シリアルおよびスナックなどの押出製品を含む、高繊維食品製品の製造に有用である。
【0007】
「総食物繊維含量」(total dietary fiber(TDF))という用語は、非デンプン性多糖類、耐性デンプン、リグニン、並びにワックス、クチンおよびスベリンなどの微量成分を含む、ヒトの消化酵素による加水分解(消化)に耐性のある多糖類および植物性物質の残滓を含む。本願で使用するとおり、TDFは、Association of Official Analytical Chemists,International (AOAC) method 991.43 (Journal of AOAC,Int.,1992,v.72,No,3,p.395−416)により記載されている方法を利用し記載のとおり未消化の物質の重量により測定されると定義される。総食物繊維は乾量基準で報告される。以下の実施例セクションに記載の試験を参照されたい。
【0008】
「耐性デンプン」(resistant starch(RS))という用語は、健康な個人の小腸で吸収されないデンプンおよびデンプン分解生成物の合計と定義され、当業界に公知の種々の試験により測定できる。耐性デンプンは、本願において、以下の実施例セクションに記載の試験における膵液αアミラーゼによる処理で測定されると定義される。
【0009】
本願で使用するとおり、「高アミロースデンプン」とは、以下の実施例セクションに詳述の電位差滴定法により測定して、小麦または米デンプン、または穀粉(flour)では少なくとも約27%のアミロースを、他の供給源では少なくとも約40%のアミロースをそのデンプン重量に対して含むデンプンまたは穀粉を意味するものとする。
本願で使用する「粒状デンプン」という用語は、偏光下で、複屈折およびマルタ十字が壊れないように、その粒状構造を維持しある程度の結晶性を有するデンプンを意味する。
【0010】
本願で使用するとおり、食品製品は、ヒトおよび/または動物が摂取するための全ての可食製品を含むものとし、飲料を含む。
特許請求の範囲で使用するとおり、「含んでなる(comprises or comprising)」は、その後に続く要素を含むが、他の要素を除外するのではなく開放型であるものとする。
【0011】
[発明の詳細な説明]
本発明は、総食物繊維(TDF)が多く、処理時にそのTDFを維持するデンプン組成物に関する。特に、そのような繊維の50%を超える繊維が押出処理時に維持される。そのようなデンプンは、朝食用シリアルおよびスナックなどの押出製品を含む、高繊維食品製品の製造に有用である。
【0012】
本発明の調製に使用されるデンプンは、どのような天然源に由来するどのようなデンプンでもよい。本願で使用される天然デンプンは、天然に見いだされるままのものである。交雑育種、転移、逆位、形質転換、挿入、照射、化学的なまたは他の誘発突然変異を含む標準育種技術、あるいは変形物を含む他の遺伝子または染色体工学の方法により得られる植物に由来するデンプンも好適である。さらに、公知の突然変異育種の標準法により製造できる、誘発突然変異および上記の遺伝子組成物の変形から育てられる植物に由来するデンプンも本願に好適である。
【0013】
デンプンの典型的な供給源は、穀物(cereals)、塊茎および根、豆果および果物である。天然源は、限定はされないが、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、大麦、小麦、米、サゴ、アマランス、タピオカ、クズウコン、カンナ、エンドウ、バナナ、エンバク、ライムギ、ライコムギおよびモロコシ、ならびにその低アミロース(ワキシー(waxy))または高アミロース変形物から得られるどのような種類でもよい。低アミロースまたはワキシー変形物とは、重量で10%未満のアミロースを、ある実施形態においてデンプンの重量で5%未満の、他の実施形態において2%未満の、さらに他の実施形態において1%未満のアミロースを含むデンプンまたは穀粉を意味するものとする。
【0014】
ある実施形態においてデンプンは非ワキシーデンプンであり、他の実施形態において高アミロースコーンスターチである。さらに他の実施形態において、高アミロースデンプンは、全て重量基準で、少なくとも約50%のアミロースを含み、第2の実施形態において少なくとも約70%のアミロースを含み、第3の実施形態において少なくとも約80%のアミロースを含み、第4の実施形態において少なくとも約90%のアミロースを含む。
【0015】
他の実施形態において、高アミロースデンプンは、アミロース増量遺伝子型(amylose extender genotype)(劣性または優性)を有する植物源から抽出される。他の実施形態において、デンプンは、ブタノール分画方法により測定して、10重量%未満のアミロペクチンを含む。さらに他の実施形態において、デンプンは、生殖質淘汰の遺伝子混合物(genetic composite)であり、少なくとも75重量%のアミロースを、ある場合には少なくとも85%アミロース(すなわち通常のアミロース)を、10重量%未満、他の場合には5%未満のアミロペクチン、並びに約8〜25%の低分子量アミロースを含んでなる、トウモロコシなどの植物育種固体群(plant breeding population)に由来する。さらなる実施形態において、デンプンは、多くのアミロース増量変更遺伝子(amylose extender modifier genes)と組み合わさった劣性アミロース増量遺伝子型を有するデンプン含有植物の穀粒から抽出される。そのような植物は当分野に公知であり記載されている。
【0016】
デンプンは、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせ(STMP/STPP)を使用し、湿熱処理(熱水処理)により化工される。これらの2種の化工は、以下のガイダンスに従いどの順序でも当業者に実施可能である。
【0017】
リン酸化は、例えば、Wurzburg編、CRC Press,Inc., Florida(1986)の「Modified Starches:Properties and Uses」に記載のものなど当分野に公知な方法を利用して実施される。化工の量を変えて、望ましい性質および総食物繊維含量を得ることができる。
【0018】
水の存在下で、化工デンプンを得るpHおよび温度の条件下でSTMPまたはSTMPおよびSTPPとデンプンを反応させてデンプンを化学的に化工する。ある反応方法は、最初に水の中のデンプンのスラリーを形成し、前記スラリーに架橋剤を加えるものである。前記スラリーは、重量で約15〜60%のデンプン、ある場合には約30〜50%のデンプンでよい。ある実施形態において、反応条件には、10.0を超え、ある場合には10.5を超える塩基性pHが含まれる。他の実施形態において、反応条件は、約10〜13のpH、ある場合において約11〜12のpHが含まれる。必要に応じて、反応の間pHを調整し、言及した望ましい塩基性pHレベルに維持することができる。反応温度は約25℃から70℃であり、ある場合には約30℃から50℃である。
【0019】
反応は、αアミラーゼ消化に対する望ましい程度の耐性を与えるのに十分な時間しか実施する必要がなく、従来約10分から24時間、ある場合には約1〜3時間である。ある実施形態において、デンプンの重量に対し約0.1〜20%の硫酸ナトリウムおよび/または塩化ナトリウムがスラリーに加えられる。これらの塩の存在は、反応の間のゲル生成を阻止し、デンプン細粒に吸着される塩基を増やすことにより反応を加速させる役割をする。
【0020】
デンプンはリン酸化により架橋し、二デンプンリン酸エステルを形成するが、一置換リン酸基も増加し、少なくとも0.1重量%の残存リンを含む。ある実施形態において、残存リンは、デンプンの重量の少なくとも約0.2%であり、他の実施形態において、少なくとも約0.3%であり、さらに他の実施形態において少なくとも0.35%である。さらなる実施形態において、残存リンは、デンプンの重量の0.1〜0.4%の範囲である。リン酸化剤は、STMP、STMPとSTPPの混合物からなる群から選択され、ある場合において、STMPとSTPPの混合物である。ある実施形態において、反応は、置換よりも架橋を優先するように実施される。
【0021】
一般的に、混合物が使用される場合、それは、約1〜20重量%のSTMP、ある場合には約5〜16重量%のSTMPおよび約0.01〜0.2重量%のSTPP、ある場合には約0.05〜0.16重量%のSTPPを含まなくてはならない。STMP/STPP混合物は、デンプンの重量に対し、約1〜20重量%の濃度で使用するのが有利であり、ある場合において約5〜16重量%である。STMPが単独で使用される場合も、上記の範囲を利用できる。
【0022】
実質的に同じ残存リン濃度へのオキシ塩化リン(POCl3)によるデンプンの架橋および湿熱処理によっても、同様な性質および機能性を有するデンプンが生じるであろう。
デンプンは、例えば米国特許第5,593,503号に記載のものなど、当分野に公知の方法を利用して湿熱処理される。熱および湿度の量を変えて、望ましい性質および総食物繊維含量を得ることができる。本発明のデンプンを調製する際に、その粒状構造を維持するよう部分的または完全にデンプンが糊化するのを防ぐため、特定の総水分と定義された温度の組み合わせにおいて、特定の時間でデンプンを処理することが必要である。
【0023】
湿熱処理は、デンプンを水和して約10と80%の間の湿分を得て、次いで65℃と160℃の間の温度で熱処理することにより常套的に実施される。特定の湿分および熱処理条件は、使用するデンプンの種類および処理、ならびに望ましい総食物繊維の量に依存する。ある実施形態において、湿熱処理は、加熱中にデンプンが混合されるような動的加熱(dynamic heating)を利用して実施される。動的加熱は、従来の混合の利用を含む当分野に公知の方法を利用して、あるいは流動床反応器またはミキサー、水平機械的ミキサー(horizontal mechanical mixer)または加熱ミキサーなどの混合を与える装置中で実施できる。
【0024】
熱処理されるデンプンの総湿分または水分は、乾燥デンプンの重量に対して、典型的には約10〜約80重量%の範囲であり、ある実施形態において約15%から約55%であり、他の実施形態において約20%から約45重量%であり、さらに他の実施形態において約20%から約35%である。ある実施形態において、この相対的な湿度レベルが、加熱工程の大部分の間維持され、例えば密閉容器中での加熱により当分野に公知の方法で実施される。他の実施形態において、加熱の間に水が全くデンプンに加えられない(すなわち、加熱工程の間デンプンの湿分の他に水が存在しない)。さらに他の実施形態において、処理されると処理済みデンプンの湿分が低くなるように、湿分が熱水処理の間制御されない(実質的に一定に保たれる)。
【0025】
特定の湿分を有するデンプンは、典型的には約65〜160℃の温度で、ある実施形態において約90〜130℃で、他の実施形態において約90〜約120℃で加熱される。最も望ましい温度は、デンプンの植物源、処理の程度および湿分により変わることがある。また、デンプンが加熱される時間は、デンプン源、その処理の程度、湿分、加熱温度ならびに望まれる総食物繊維含量のレベルにより変わる。
【0026】
典型的には、加熱時間は約0.25〜24時間であり、ある実施形態において約1〜4時間である。しかし、処理が実施される装置によっては、短い時間を利用してもよい。ある実施形態において、湿熱処理は、典型的に押出調理に利用されるプレコンディショナー(preconditioner)などの連続熱交換器中で、30秒から15分の非常に短い時間で実施される。他の実施形態において、架橋デンプンがシリアル配合体に加えられ、湿熱処理が、押出の前などプレコンディショナー中で非常に短い時間(30秒〜15分)実施される。
【0027】
さらに、当業者であれば、穀物から抽出されたデンプンがすでに湿熱処理されており架橋のみが必要とされるように穀物に湿熱処理を実施できることを、または架橋されたデンプンを配合体に使用でき、押出に先立つ前処理工程などで湿熱処理をシリアル配合体に実施できることを理解するであろう。
【0028】
上記の時間、温度および湿度条件は、デンプンの粒状構造が破壊されず、偏光下で観察したときマルタ十字が破壊されないように粒子が複屈折性を保つ限り、変更してよい。高湿度および高温などのある条件下では、デンプン粒子が部分的に膨潤しているように見えることがあるが、結晶性は壊されていない。
【0029】
得られたデンプンを、他の従来の試薬および/または方法により化工し、総食物繊維増強以外のテクスチャー性または機能性に影響を与えることができる。ある実施形態において、総食物繊維含量をさらに増加させるために、αアミラーゼによる分解、または酸処理により、残存アモルファス領域が粒状耐性デンプンから除去される。
【0030】
得られたデンプンを、従来の手段を利用してどのような望ましい範囲にもpH調整できるが、ある実施形態において、約6〜8のpHにpH調整される。得られたデンプンを洗浄して、少なくともある程度の可溶分、ある実施形態において実質的に全ての可溶分を除くことができる。可溶分には、塩および糖などの低分子量デンプン生成物がある。
【0031】
得られたデンプンを、空気乾燥、ベルト乾燥または流動床乾燥などの従来の手段を利用して乾燥し、約10重量%と約15重量%の間の湿度の平衡湿度に達することができる。デンプンの粒状構造が実質的に破壊されない限り、他の乾燥方法を利用できる。
特定の条件下で、本発明のリン酸化・湿熱処理されたデンプンは、耐性デンプン含量の望ましい増加ならびに総食物繊維含量の増加を示すことがある。
【0032】
リン酸化・湿熱処理されたデンプンの食物繊維含量の増加レベルは、利用する処理条件ならびに利用する特定のベースデンプンにより変わるであろう。ある実施形態において、デンプンは、未化工(天然)デンプンに比べ総食物繊維の絶対的増加が少なくとも50%、他の実施形態において少なくとも60%、さらに他の実施形態において少なくとも70%、さらに他の実施形態において少なくとも80%であろう。
リン酸化・湿熱処理されたデンプンは、デンプンの重量に対して、少なくとも70%の総食物繊維含量を、ある実施形態において少なくとも80%、他の実施形態において少なくとも90%の総食物繊維含量を有するであろう。
【0033】
得られたデンプンは、高温、高圧および/または高剪断力下でそのTDF含量を容易には失わない点で高処理耐性を有する。これにより、本発明のデンプンは、高TDFデンプンがそれほど機能的でない種々の製品のTDF含量を増加させるのに有用となる。高処理には、レトルト、乳化、均一化、揚げ調理、高速混合、超高温処理(UHT)および押出があるがこれらに限定されない。ある実施形態において、得られたデンプンは押出の間に、他の実施形態において高温(約40℃を超える)押出の間にそのTDF含量を実質的に維持する。
【0034】
食品配合物の押出は、当業界に公知のどのような好適な装置および処理パラメータを利用して実施してもよい。例えば、生成物水分、スクリューデザインおよびスピード、供給速度、バレル温度、ダイデザイン、配合および長さ/直径(L/D)比など、処理パラメータの多数の組み合わせが存在するので、押出の処理パラメータ領域(process parameter window)を説明するために、特定機械エネルギー(specific mechanical energy)(SME)および生成物温度(product temperature)(PT)が当業界で使用されてきた。ある実施形態において、食品配合物は、150Wh/kg以下のSMEおよび145℃以下のPTに、他の実施形態において125Wh/kg以下のSMEおよび115℃以下のPTに曝される。
【0035】
処理(押出を含む)の直後、得られた食品配合物は、前処理済み(例えば予備押出済み)ドライブレンド配合物の少なくとも50%(w/w)の総食物繊維含量を、ある実施形態において、前処理済みドライブレンド配合物の少なくとも60%、他の実施形態において少なくとも75%、さらに他の実施形態において少なくとも85%(w/w)の総食物繊維含量を維持する。高アミロースデンプンでは、得られた食品配合物は、予備処理済みドライブレンド配合物の少なくとも70%(w/w)の総食物繊維含量を、ある実施形態において、予備処理済みドライブレンド配合物の少なくとも80%、他の実施形態において少なくとも85%、さらに他の実施形態において少なくとも95%(w/w)の総食物繊維含量を維持する。
【0036】
本発明のデンプンは、過酷な(高い)処理条件に曝されなかった食品製品にも使用可能である。前記デンプンは総食物繊維に寄与し、そのような食品製品のカロリー含量を低くするであろう。
【0037】
典型的な食品製品には、そのまま食べられるパフ状シリアルまたは膨張したシリアルなどの朝食用シリアル、フレーク状シリアルおよび食前に調理されるシリアル;パン、クラッカー、クッキー、ケーキ、マフィン、ロール、ペストリーおよび他の穀粉系成分などの焼いた品々;パスタ;飲料;揚げ物およびコーティングされた食品;スナック;プリンなどの乳製品;ならびにヨーグルト、チーズおよびサワークリームなどの培養された乳製品があるが、これらに限定されない。押出食品組成物には、クッキー、ビスケット、朝食用シリアル、スナック、パスタおよび調味料ならびに動物用食品製品およびより高い繊維含量が望ましい他の押出製品があるが、これらに限定されない。
【0038】
食品に加えて使用できる食物繊維の量は、機能的な見地から許容できる量により大いに決まるであろう。他の言い方をすれば、使用される高TDFデンプンの量は、一般的に食品の官能評価で許容できるまでの量である。ある実施形態において、本発明のデンプンは、食品の重量に対して約2〜50%の量で、他の実施形態において、食品の重量に対して約10〜25%の量で使用される。
【0039】
ある実施形態において、得られたデンプンは、従来配合物の繊維の少なくとも1部分に代えて使用される。他の実施形態において、得られたデンプンは、従来配合物のデンプンの少なくとも1部分に代えて使用される。デンプンは、他のデンプンと同様に配合物に加えてよく、ある実施形態において、配合物に直接デンプンを混合して加えられ、他の実施形態において、溶液または分散液の形態で加えられる。
【0040】
得られた食品組成物は、望ましい総食物繊維含量を得るように配合できる。ある実施形態において、組成物は、化工デンプンのない同じ組成物に比べて、総食物繊維含量を、2〜45重量%、他の実施形態において3〜25重量%増加させるように配合される。さらに、他の実施形態において、組成物は、その総食物繊維含量が、化工デンプンのない同じ組成物より、少なくとも10%(w/w)、さらに他の実施形態において少なくとも20%(w/w)多くなるように配合される。
【0041】
本発明のデンプンは、プリバイオティック(prebiotic)およびプロバイオティック(probiotic)組成物、糖尿病食およびサプリメント、食事療法食、血糖反応を制御する食品、並びに錠剤及び他の薬剤投薬形態を含むがこれらに限定されない薬剤または栄養製品にも使用できる。
本発明の化工デンプンを利用してつくられる組成物は、水などの食品および/または薬剤成分などの、摂取に適した少なくとも1種の追加成分を含んでよい。
【0042】
本発明の化工デンプンを利用してつくられる組成物は、どのような動物に与え(摂取させ)てもよく、ある実施形態において哺乳類に、他の実施形態においてヒトに与えてよい。そのような組成物は、限定はされないが、血糖およびインスリネミック(insulinemic)反応を弱め、血漿トリグリセライドおよびコレステロールを低下させ、短鎖脂肪酸を増加させ、プリバイオティックとして作用して乳酸桿菌およびビフィドバクテリアなどのプロバイオティックバクテリアの増殖および/または活性を高め、カルシウムなどの微量元素の吸収を上昇させることにより、食物繊維および/または耐性デンプンを含む他の食品組成物と同じまたは類似の方法で動物の健康に貢献する。
【0043】
[実施態様]
本発明をさらに表し説明するために以下の実施形態を与えるが、どのような点でも限定的ではないものとする。
1.トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用してリン酸化され、湿熱処理されたデンプンであって、リン酸化・湿熱処理されたデンプンが粒状であり少なくとも90重量%の総食物繊維含量を有するデンプン;および摂取に適した第2の成分を含んでなる、組成物。
2.前記デンプンが高アミロースデンプンである、実施形態1の組成物。
3.前記デンプンが、デンプンの重量に対し0.1〜0.4%の残存リンを含む、実施形態1の組成物。
【0044】
4.前記化工デンプンが、未化工デンプンに比べて少なくとも50%の総食物繊維含量の絶対的増加を有する、実施形態1の組成物。
5.前記化工デンプンが、未化工デンプンに比べて少なくとも70%の総食物繊維含量の絶対的増加を有する、実施形態1の組成物。
6.前記化工デンプンが、未化工デンプンに比べて少なくとも80%の総食物繊維含量の絶対的増加を有する、実施形態1の組成物。
【0045】
7.a)デンプンの乾燥重量に対して約10重量%から約80重量%の総湿分を有するデンプンを、約65℃から約160℃の温度において、粒状である湿熱処理されたデンプンを提供する湿度および温度条件の組み合わせで、湿熱処理する工程;および
b)トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用して、10.0より高く保たれたpHでスラリー中の湿熱処理されたデンプンを架橋する工程
を含んでなる、デンプンの調製方法。
【0046】
8.a)トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用して、10.0より高く保たれたpHでスラリー中の湿熱処理されたデンプンを架橋する工程;および
b)デンプンの乾燥重量に対して約10重量%から約80重量%の総湿分を有する架橋されたデンプンを、約65℃から約160℃の温度において、粒状である湿熱処理されたデンプンを提供する湿度および温度条件の組み合わせで、湿熱処理する工程
を含んでなる、デンプンの調製方法。
【0047】
9.前記湿熱処理が30秒から15分である、実施形態7または8の方法。
10.前記湿熱処理が0.25時間から24時間である、実施形態7または8の方法。
11.前記湿熱処理が1時間から4時間である、実施形態10の方法。
12.前記湿熱処理が90℃から130℃の温度である、実施形態7または8の方法。
13.前記湿熱処理が90℃から120℃の温度である、実施形態12の方法。
14.前記デンプンが15%から55%の湿分を有する、実施形態7または8の方法。
【0048】
15.前記デンプンが20%から45%の湿分を有する、実施形態14の方法。
16.前記デンプンが25%から35%の湿分を有する、実施形態15の方法。
17.前記pHが10.5より高く保たれている、実施形態7または8の方法。
18.前記湿熱処理が動的加熱を利用して実施される、実施形態7または8の方法。
19.可溶分の少なくとも1部を洗い落とす工程をさらに含んでなる、実施形態7または8の方法。
【0049】
20.前記工程が実施されて、少なくとも70重量%の総食物繊維含量を有するデンプンを製造する、実施形態7または8の方法。
21.前記工程が実施されて、少なくとも80重量%の総食物繊維含量を有するデンプンを製造する、実施形態20の方法。
22.前記工程が実施されて、少なくとも90重量%の総食物繊維含量を有するデンプンを製造する、実施形態20の方法。
23.前記組成物が押し出された、実施形態1の組成物。
【0050】
24.トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用してリン酸化され、湿熱処理されたデンプンであって、リン酸化・湿熱処理されたデンプンが粒状であり少なくとも90重量%の総食物繊維含量を有するデンプン;および摂取に適した第2の成分を含んでなる配合物を、150Wh/kg以下のSMEおよび145℃以下のPTで押し出す工程を含んでなる、押出組成物の調製方法。
25.前記押出が125Wh/kg以下のSMEおよび119℃以下のPTである、実施形態24の方法。
【0051】
26.前記組成物の総食物繊維含量が、配合物の食物繊維含量の少なくとも50%である、実施形態24の方法により調製された組成物。
27.前記組成物の総食物繊維含量が、配合物の食物繊維含量の少なくとも60%である、実施形態26の組成物。
28.前記組成物の総食物繊維含量が、配合物の食物繊維含量の少なくとも75%である、実施形態27の組成物。
29.前記組成物の総食物繊維含量が、配合物の食物繊維含量の少なくとも85%である、実施形態28の組成物。
【0052】
30.前記デンプンが高アミロースデンプンであり、前記組成物の総食物繊維含量が配合物の総食物繊維含量が少なくとも70%である、実施形態24の方法により調製される組成物。
31.前記組成物の総食物繊維含量が、配合物の総食物繊維含量の少なくとも80%である、実施形態30の組成物。
32.前記組成物の総食物繊維含量が、配合物の総食物繊維含量の少なくとも85%である、実施形態31の組成物。
33.前記組成物の総食物繊維含量が、配合物の総食物繊維含量の少なくとも95%である、実施形態32の組成物。
【実施例】
【0053】
本発明をさらに表し説明するために以下の実施形態を与えるが、どのような点でも限定的ではないものとする。特に断りのない限り、全ての部およびパーセンテージは重量により温度は全て摂氏温度(℃)である。
以下の試験手順を、実施例全体で利用した。
【0054】
A.総食物繊維測定
以下の手順は、AOAC法 991.43(Journal of AOAC,Int.,1992,v.75,No,3,p.395−416)を利用する総食物繊維含量の測定を概説する。
Megazyme AOAC 991.43 TDF法キット、KTDFRを利用して試験を実施する。
【0055】
1. ブランク
各アッセイには、試料と共に2つのブランクを実施して試薬から残渣への寄与を測定する。
2. 試料
a.二連の1.000±0.005gの試料を、400mlのトールビーカーに正確に量り入れる。
b.0.05MのMES−TRISブレンド緩衝液(pH8.2)40mlを各ビーカーに加える。マグネティックスターラーバーを各ビーカーに加える。試料が溶液状態で完全に分散するまでマグネティックスターラーで攪拌する。
【0056】
3. 耐熱性αアミラーゼによるインキュベーション
a.低速で攪拌しながら、50μlの熱安定性αアミラーゼ溶液を加える。
b.正方形のアルミ箔で各ビーカーに蓋をする。
c.蓋をした試料を95〜100℃の振盪水槽中に入れ、連続的に攪拌しながら35分インキュベーションする。全ビーカーが恒温槽に入ったら計時を始める。
【0057】
4. 冷却
a.熱水槽から全試料ビーカーを出し、60℃に冷却する。
b.箔の蓋を取る。
c.必要であれば、ビーカーの周りの環状のものおよびビーカーの底のゲルをスパチュラでこすり落とす。
d.ピペットを用いてビーカーの側壁およびスパチュラを10mlの蒸留水ですすぐ。
e.水浴の温度を60℃に調整する。
【0058】
5. プロテアーゼによるインキュベーション
a.各試料に100μlのプロテアーゼ溶液を加える。
b.アルミニウム箔で蓋をする。
c.連続的に攪拌しながら、60±1℃の振盪水槽中で30分間インキュベーションする。水浴の温度が60℃に達したら計時を始める。
【0059】
6. pH調整
a.振盪水槽から試料ビーカーを取り出す。
b.蓋をはずす。
c.マグネティックスターラーで攪拌しながら、試料に0.561NのHCl溶液5mlを分配する。
d.pHを確認するが、4.1〜4.8でなくてはならない。必要であれば、追加の5%NaOH溶液または5%HCl溶液でpHを調整する。
【0060】
7. アミログルコシダーゼによるインキュベーション
a.マグネティックスターラーで攪拌しながら、200μlのアミログルコシダーゼ溶液を加える。
b.アルミニウムの蓋を再び置く。
c.連続的に攪拌しながら、60℃の振盪水槽中で30分間インキュベーションする。水浴の温度が60℃に達したら計時を始める。
【0061】
8. EtOHによる食物繊維の沈殿
a.各試料に、60℃に予備加熱されている225mlの95%EtOHを加える。加熱の後体積を量る。EtOH体積と試料体積の比は4:1でなくてはならない。
b.アルミニウム箔の大きなシートで全ての試料を覆う。
c.室温で60分間沈殿を形成させる。
【0062】
9. 濾過装置
a.セライトを含むるつぼの風袋を、一番近い0.1mgまで量る。
b.洗瓶から15mlの78%EtOHを利用してセライトの床を濡らし、再配置する。
c.るつぼを吸引し、平らなマットとしてセライトをフリットガラス上に引く。
【0063】
10. 濾過
a.工程8の沈殿した酵素消化物を、るつぼを通して濾過フラスコへ濾過する。
b.78%EtOHの入った洗瓶を使って、残った粒子を全てるつぼへ移す。
11. 以下のものの15ml分で残渣を2回洗浄する:
a.78%EtOH
b.95%EtOH
c.アセトン
【0064】
12. 103℃のオーブンで、残渣を含むるつぼを一晩乾燥する。
13. るつぼをデシケーター中でおよそ1時間冷却する。食物繊維残渣を含むるつぼおよびセライトを最も近い0.1mgまで量る。残渣重量を得るために、風袋、すなわち乾燥したるつぼおよびセライトの重量を差し引く。
【0065】
14. タンパク質および灰分の測定
各種の繊維から1残渣を、タンパク質に関して分析し、二連の第2の残渣を、灰分に関して分析する。
a.ケルダール(Kjeldahl)法(AACC 46−10)を利用し残渣のタンパク質分析を実施する。全ての場合に6.25の係数を利用してタンパク質のグラム数を計算する。
b.灰分分析には、AACC法08−01に記載のとおり第2の残渣を525℃で5時間焼却する。デシケーター中で冷却し、最も近い0.1mgまで量る。るつぼとセライト重量を差し引いて灰分を決定する。
【0066】
以下の式により総食物繊維を計算し、特に断りのない限り乾燥重量基準で報告する。
TDF(%)=[(R1−R2)/2−P−A−ブランク]/(m1+m2)/2×100
上式において
m1:試料重量1
m2:試料重量2
R1:m1からの残渣重量
R2:m2からの残渣重量
A:R1からの灰分重量
P:R2からのタンパク質重量
【0067】
B.耐性デンプン分析
耐性デンプン含量は、Englystらにより記載の擬似消化により測定した(British Journal of Nutrition,1996,75,327−337;European Journal of Clinical Nutrition,1992,46,S33−S50)。
【0068】
食品試料を、咀嚼されたかのようにすりつぶし、切り刻む。粉末デンプン試料は、250ミクロン以下の粒径に篩い分ける。分析に必要な試料の重量は、その炭水化物含量により決まる。デンプン試料は、主に炭水化物からなると考えられる。試料を測定し、試料あたり500〜600mg+0.1mgの炭水化物を提供する。試料の必要量を量り、試料管に加える。ペプシン(0.5%)、グアーガム(0.5%)のHCl(0.05M)溶液10mlを各管に加える。
【0069】
ブランクおよびグルコース標準管を調製する。ブランクは、0.25M酢酸ナトリウムおよび0.02%塩化カルシウムを含む緩衝液20mlである。グルコース標準は、(上述の)酢酸ナトリウム緩衝液10mlおよび50mg/mlグルコース溶液の10mlを混合して調製する。標準は、二連で調製する。
【0070】
12gのブタパンクレアチン(Sigma P−7545)を85mlの脱イオン水に加え、よく混合し、3000gで10分間遠心分離して酵素ミックスを調製する。上清を集め、40mgの乾燥インベルターゼ(Sigma I−4504)および1.0mlのAMG EまたはAMG 300L(Novozymes)を加える。
試料管を37℃で30分間プレインキュベーションし、次いで浴からはずし、10mlの酢酸ナトリウム緩衝液を、ガラス玉/ビー玉(振盪の間の試料の物理的崩壊を助ける)とともに加える。
【0071】
5mlの酵素混合物を試料、ブランクおよび標準に20〜30秒間隔で加える。管を37℃の水槽で、およそ180ストローク/分で水平方向に振盪する。時間「零」は、最初の管への酵素混合物の最初の添加を表す。
20および120分後、インキュベーションしている試料から(同じ20〜30秒間隔で)0.5mlのアリコートを取り出し、それぞれ19mlの66%エタノール(反応停止のため)の別々な管に入れる。1時間後、アリコートをマイクロ遠心分離管中で、3000gで10分間遠心分離する。
【0072】
各管のグルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ/ペルオキシダーゼ法(Megazyme Glucose Assay Procedure GLC9/96)を利用して測定する。3mlのGOPODを培養管に入れ、次いで0.1mlの試料アリコートを加え、よく混合し(軽い渦の設定)、次いで、50℃で20分間インキュベーションする。インキュベーションした試料を、UV分光光度計で510での吸光度について試験する。これが比色手順である。
【0073】
デンプン消化の程度は、転化率0.9を用いて、グルコース標準に対するグルコース濃度を計算して決定する。耐性デンプン(RS)は、120分(GR 120)時点までに消化されなかった全デンプン(TS)のうちの部分である。耐性デンプンパーセントは、RS(% db)=TS−GR120×100として計算するが、TS=100でありGR120=120分で消化されたTSのパーセントである。
【0074】
C.アミロース分析
アミロース含量の電位差測定
およそ0.5gのデンプン(1.0gの粉砕穀粉から得る)試料を、10mlの濃塩化カルシウム(約30重量%)中で、95℃で30分間加熱した。試料を室温に冷却し、5mlの2.5%酢酸ウラニル溶液で希釈し、よく混合し、2000rpmで5分間遠心分離した。次いで、試料を濾過し透明な溶液を得た。デンプン濃度は、1cmの偏光セルを利用し偏光分析により決定した。次いで、KCl参照電極を持つ白金電極を利用して電位を記録しながら、試料のアリコート(通常5ml)を標準化0.01Nヨウ素溶液で直接滴定した。変曲点に達するのに要したヨウ素の量を、結合ヨウ素として直接測定した。アミロースの量は、1.0グラムのアミロースが200ミリグラムのヨウ素と結合すると仮定して計算した。
【0075】
D.結合(残存)リン分析
1. およそ10.0グラムの試料を、石英ジャー中に量り入れた。600mlの5%EDTA(エチレンジアミン四酢酸、ナトリウム塩)溶液を加え、マグネティックスターラーでスラリーを5分間混合した。
2. 2リットル濾過フラスコ、ブフナー漏斗および11cmのワットマン濾紙#1を利用して、デンプンスラリーを濾過した。デンプンケーキが割れる前に、4つの純水の200mlアリコートをデンプンケーキ上に連続的に注いだ。ブフナー漏斗の側面を純水の入った洗瓶で洗い流した。
【0076】
3. 1.00グラムのデンプンケーキをブフナーから外し、125mlの三角フラスコに入れた(水分はこの試料で測定した)。25mlの4N塩化水素酸を、3片または4片の沸騰石と共にフラスコに加えた。
4. フラスコをホットプレート上に置き、沸騰させ、次いでさらに7分加熱して、時々渦を巻かせながら試料の加水分解を完全にした。加熱期間の間フラスコの口を小さい時計皿で覆い、蒸発を最低限にした。7分後、ホットプレートから外し、室温まで放冷した。
5. 内容物を250mlメスフラスコに定量的に移した。純水で数回洗い、三角フラスコ中の残渣をメスフラスコへとすすぎ入れた。次いで、容量を純水で標線まで希釈し、栓をして、振盪して均一な混合物を得た。
【0077】
6. この溶液のおよそ10mlを、10mlの使い捨てシリンジ中に引き入れた。13mm、0.2μmのゲルマン社製イオンクロマトグラフィーアクロディスクシリンジフィルタを端に取り付けた。溶液を、フィルターを通して直接15ml使い捨て遠心管に入れ、次いで蓋を付け、ラベルを貼った。
7. 次いで、集めた濾液を、メーカーの推奨にしたがって標準化したICP−AE分光光度計で分析した。
8. 次いで、その結果を、以下のとおり結合(残存)リンの%に変換した:
%リン={ppmリン×希釈率(0.25L)×100}/mgで表した無水試料の重量
【0078】
例1−リン酸化・湿熱処理されたデンプンの調製
a.STMP/STPPリン酸化
2,500ポンド(1134kg)の水道水を、反応容器に量り入れた。100ポンド(45.4kg)のNa2SO4をかき混ぜながら加え、溶解するまで攪拌した。よく攪拌しながら、2,000ポンド(907.2kg)の高アミロースコーンスターチ(試料C)またはデントコーンスターチ(試料D)を加えた。次いで、3%NaOHを、必要に応じて4ポンド/分(1.8kg/分)でそのデンプンスラリーに加え、40mlアルカリ度に達した(46mlアルカリ度には約600ポンド(272.2kg)のNaOH)。混合物を1時間攪拌し、pHを記録した(pH11.6)。温度を108°F(42℃)に調整した。試料Cには、99/1のSTMP/STPPブレンド140ポンド(63.5kg)を加え、17時間反応させた。アルカリ度をモニターし、反応の間維持した。試料Dには、99/1のSTMP/STPPブレンド240ポンド(108.9kg)を加え、17時間反応させた。最終的なpHおよび温度を記録した(pH11.4および108°F(42℃))。pHを、必要に応じて3:1HClにより5.5に調整した(75ポンド(34kg)HClを使用してpH5.4)。デンプンを洗浄し、Merco遠心機で遠心分離して、フラッシュ乾燥した。架橋により、0.35%結合リンを含む高アミローススターチ(試料C)および0.39%結合リンを含むデントコーンスターチ(試料D)が得られた。
【0079】
b.湿熱処理
高アミロースコーンスターチを、バッチプロセスプローシェアミキサーおよびドライヤー(アメリカ合衆国、オハイオ州、シンシナティのProcessall製造の300HP型Prestovacリアクター)を利用して湿熱処理した。以下の条件を利用した。高アミロースコーンスターチをリアクターに室温で移した。高アミロースコーンスターチの湿分を、25〜30%水分(±1%)に調整した。水分を調整した高アミロースコーンスターチを121℃(250°F)に加熱し、その温度に120分間保った。次いで、湿熱処理されたデンプンを冷却し、USメッシュ40を通して篩いにかけた。
【0080】
c.最終結合リンレベルが0.35%以上である架橋・湿熱処理されたデンプンの調製
架橋されたデンプンを、以下を除いてセクションa)に記載のとおり調製した。試料F中間体では、200ポンド(90.7kg)のSTMP/STPP混合物を使用し、結合リン0.50%の高アミロースデンプンが生じた。試料G中間体では、260ポンド(117.9kg)のSTMP/STPP混合物を使用し、結合リン0.50%のデントコーンスターチが生じた。次いで、架橋されたデンプンに、セクションb)に記載のとおり湿熱処理を施した。湿熱処理のあと、高アミロースデンプンは0.38%の結合リンを有し(試料F)、デントコーンスターチは0.35%の結合リンを有した(試料G)。
【0081】
d.湿熱処理・架橋されたデンプンの調製
高アミロースデンプンを、セクションb)に記載の手順により湿熱処理した(試料E中間体)。次いで、湿熱処理された高アミロースデンプンを、セクションa)に記載の手順で架橋した。湿熱処理・架橋された高アミロースデンプンは、0.38%の結合リンを有していた(試料E)。
【0082】
e.最終結合リンレベルが0.26および0.27%である湿熱処理・架橋されたデンプンの調製
試料をセクションa)に記載のとおり調製した。架橋により、結合リンが0.35%である高アミロースデンプン(試料H中間体)および結合リンが0.39%であるデントコーンスターチ(試料J中間体)が生じた。次いで、試料に、セクションb)に記載の湿熱処理を施した。湿熱処理の後、高アミロースデンプンは0.26%の結合リンを有し(試料H)、デントコーンスターチは0.27%の結合リンを有した(試料J)。
【0083】
【表1】

【0084】
例2−リン酸化・湿熱処理されたデンプンの押出
押出処理は、WengerのTX57型三胴(three barrel)二軸式押出機を利用して実施し、膨張した朝食用シリアルを調製した。成分のドライブレンドは、表2に列記の配合にしたがい調製した。実験試料を、配合物中の胚を取り除いたコーンフラワーの代わりに使い、シリアル30g分あたり5g(17%)の繊維を得たが、これは、湿量基準(wb)で成分に対して計算して「高繊維源」ラベルに対応する。
【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
乾燥した原料をWenger Manufacturing,Inc.のNo.61001−000型リボンミキサー中で30分ブレンドし、ホッパー中に入れ、予備調整なしに押し出した。供給速度は、100〜105kg/時であった。押出機への水の流れは6.0〜6.5kg/時であった。スクリュースピードは全試料に対して一定であり、400rpmであった。押出機のモーター負荷は40%±5であった。使用した三胴押出機の設計では、バレルの温度プロファイルは50℃、80℃および92℃に設定し、4℃の範囲内に維持された。以下に示す式により特定機械エネルギー(SME)を計算し、プロセスへの機械的剪断入力(mechanical shear input)の指標として使用した。
(トルク実際/トルク最大×スクリュースピード実際/スクリュースピード最大×エンジン出力定数)/スループットレート
【0088】
選択した押出条件を表3にまとめる。押出機から、膨張した試料がドライヤーに送られた。ドライヤー温度は、第1領域で130℃に、第2および第3領域で30℃に設定した。全滞留時間はおよそ8分であり、最終製品湿分は2〜3%であった。ドライヤーの出口で、製品を裏打ちされた箱に集めて包装し、大気中の水分の吸収を最小限にした。
【0089】
乾燥ブレンドおよび最終製品のTDFは、AOAC 991.43法を利用して測定した。TDF維持は、以下の式により計算した:
TDF維持(%)=(TDF試料×100)/TDFドライブレンド
押出後成分のTDF(TDFPEI)は、以下の式により計算した:
TDFPEI=(TDF成分×TDF維持)/100
【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
例3−比較例
上記の処理を、最良と述べられている条件(10% STMP/STPP混合物および45%湿分)を利用して、SangおよびSeib(Carbohydrate Polymers 63:167−175(2006))のものと比較した。
500g(乾量基準)の高アミロースデンプン(少なくとも70%のアミロースを含む)を、25グラムのNa2SO4および50.0g(10%)の99:1のSTMP/STPPブレンドを含む700mlの水に加えた。4%のNaOH溶液でpHを11.5に調整し、1時間攪拌した。これを10の等しい部分に分け(重量による)、湿分が45%に下がるに十分な時間40℃の強制空気オーブン中の金属トレイの上に薄膜状に置いた。
【0093】
45%の湿分を持つ試料を石英ガラスジャーに入れ、密封し、110℃で4時間加熱した。デンプンを室温で室温(25℃)に冷却し、次いで、100mlの蒸留水に分散し、pHを記録した。pHを6.5の1MのHClに調整し、濾過し、7つの蒸留水150mで洗浄した。デンプンを40℃で乾燥し、TDFおよび結合リンについて分析した。
得られたSeibデンプンは、11%の湿分、79%の総食物繊維(乾量基準)および0.29%の結合リンを有していた。したがって、実施例1の試料Hの7%に対して10%という高いレベルのSTMP/STPPブレンドを利用してSeib試料をつくったが、得られたデンプンは、本発明により調製した試料より著しく低いTDFを与えた。
【0094】
例4−比較例
本発明の製品の調製に使用したものに匹敵する、より低レベルのSTMP/STPP(7%)を利用して、SangおよびSeib(Carbohydrate Polymers 63:167−175(2006))のものに本発明を比較した。500g(乾量基準)の高アミロースデンプン(少なくとも70%のアミロースを含む)を、25グラムのNa2SO4および30または35g(7%)の99:1のSTMP/STPPブレンドを含む700mlの水に加えた。4%のNaOH溶液でpHを11.5に調整し、1時間攪拌した。次いで、このスラリーを、湿分が45%に下がるに十分な時間40℃の強制空気オーブン中の金属トレイの上に薄膜状に置いた。
【0095】
この試料を石英ガラスジャーに入れ、密封し、110℃で4時間加熱した。デンプンを室温で室温(25℃)に冷却し、次いで、100mlの蒸留水に分散し、pHを記録した。pHを1MのHClにより6.5に調整し、濾過し、7つの蒸留水150ml分で洗浄した。デンプンを40℃で乾燥し、TDFについて分析した。
この試料の最終TDFは72%であり、本発明により得られたものより著しく低かった(実施例1、試料H参照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用してリン酸化され、湿熱処理されたデンプンであって、リン酸化・湿熱処理されたデンプンが粒状であり少なくとも90重量%の総食物繊維含量を有するデンプン;並びに摂取に適した第2の成分を含んでなる、組成物。
【請求項2】
a)デンプンの乾燥重量に対して約10重量%から約80重量%の総湿分を有するデンプンを、約65℃から約160℃の温度において、粒状である湿熱処理されたデンプンを提供するための湿度および温度条件の組み合わせで、湿熱処理する工程;および
b)トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用して、10.0より高く保たれたpHで、スラリー中の湿熱処理されたデンプンを架橋する工程
を含んでなる、デンプンの調製方法。
【請求項3】
a)トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用して、10.0より高く保たれたpHで、スラリー中の湿熱処理されたデンプンを架橋する工程;および
b)デンプンの乾燥重量に対して約10重量%から約80重量%の総湿分を有する架橋されたデンプンを、約65℃から約160℃の温度において、粒状である湿熱処理されたデンプンを提供するための湿度および温度条件の組み合わせで、湿熱処理する工程
を含んでなる、デンプンの調製方法。
【請求項4】
トリメタリン酸ナトリウム、またはトリメタリン酸ナトリウムとトリポリリン酸ナトリウムの組み合わせを使用してリン酸化され、湿熱処理されたデンプンであって、リン酸化・湿熱処理されたデンプンが粒状であり、少なくとも90重量%の総食物繊維含量を有するデンプン;並びに摂取に適した第2の成分を含んでなる配合物を、150Wh/kg以下のSMEおよび145℃以下のPTで押し出す工程を含んでなる、押出組成物の調製方法。

【公開番号】特開2007−254739(P2007−254739A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−66421(P2007−66421)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】