説明

緑化システム

【課題】壁面の強度を劣化させることなく、つる植物をスムーズに成長させることができ、かつ美観にも優れた緑化システムを提供する。
【解決手段】本発明は、栽培用構造体につる植物を生長させた緑化システムであって、該栽培用構造体は、緑化したい領域に設けるものであり、つる植物は、マメ科トビカズラ属の植物であることを特徴とする。上記のつる植物は、マメ科トビカズラ属のアイラトビカズラであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化システムに関し、特にマメ科のつる植物を用いた緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の大量使用などにより大気中の二酸化炭素の割合が増加し、地球上で温室効果が生じている。このまま化石燃料の大量使用を継続すると、100年後には、現在よりも平均気温が2〜5℃上昇し、このまま平均気温が上昇し続けると、北極の氷山が融解することにより大陸の一部が水没してしまうとも言われている。このような地球温暖化を抑止することは急務であり、地球温暖化を抑止するためには、大気中の二酸化炭素を減少させることが必須である。
【0003】
大気中の二酸化炭素量を減少させる方法としては、化石燃料の使用を抑制するというアプローチがある。このアプローチの一例として、たとえば都会の高層ビルの上面には太陽電池パネルを設けている。このように太陽電池パネルを設けることにより、化石燃料に代替するクリーンなエネルギを使用することができ、以って大気中の二酸化炭素の排出を減らすことができる。
【0004】
大気中の二酸化炭素を減少するもう一つの方法として、植物の光合成を利用することにより、大気中の温室効果ガスの原因となる二酸化炭素を酸素に変換するというアプローチがある。このアプローチは、森林の伐採を極力減らすことと、植物の少ない地域で植物を育成することとが有効であるとされている。植物の少ない地域で植物を育成する試みとしては、たとえば紅海付近の砂漠地帯の沿岸でマングローブ林を形成することを挙げることができる。
【0005】
一方、日本では、都市部において植物の少ない地域が非常に多く、このような地域で植物を育成することができれば、大気中の二酸化炭素を減少させる上では非常に有効である。しかも、都市部ではヒートアイランド現象と呼ばれる現象が起こっているが、このヒートアイランド現象を抑制するためにも、建築物の壁面に植栽を施すことは非常に有効である。
【0006】
ここで、ヒートアイランド現象は、端的に言えば都市化に伴う環境の変化を主要因とするものであり、もともと土砂や植物で覆われていた場所に人間が集中的に定住して、高層ビル等が建設されることにより、そこに住む人々の熱が高密度に発生するとともに、その高層ビルが風の流れを遮り、都市部の高温化が過度に進むことをいう。
【0007】
ところで、都市部に住む人々は、パソコン業務を中心とする仕事に従事することが多く、その業務により疲れた目を癒すために植物の緑は最適である。しかしながら、都市部では緑を育成できる環境が限られているため、都市部に住む人々は植物を眺めることができず、精神的ストレスを解消することができない。このような状況下にあるため、都市部に住む人々は、緑を身近に置くことを切望している。
【0008】
そこで、特許文献1では、建物の屋根、屋上、外壁等に植生を繁茂させることにより、建物を緑化する試みがなされている。特許文献1によれば、栽培する場所ごとに供給する培養液の温度、種類等を代えることにより、優れた外観の植生を生長させることができる技術が開示されている。このように建物の外壁を緑化することにより、都市部に住む人々に癒される景観を形成することができる。
【0009】
しかしながら、建物の外壁に直接植生を生長させることにより、植生が建物の内部に一部入り込み、外壁の強度が低下してしまうという問題があった。
【0010】
このような問題を解決する試みとして、たとえば特許文献2には、ビル等の壁面近傍に立面格子を設け、当該立面格子につる植物を育成する方法が記載されている。このようにビル壁面につる植物を直接生長させないことにより、ビル壁面を傷ませずにつる植物を生長させることができる。
【0011】
しかしながら、特許文献2の表1に挙げられるつる植物はいずれも、一定の方向に生長せずに、立面格子内の上下左右に無造作に生長するため、壁面の上方につる植物が生長しにくく、所望の壁面を緑化することができなかった。
【0012】
そこで、特許文献3では、ビル等の壁面につる植物をテープ等で貼り合わせながら、つる植物を生長させることにより、所望の方向につる植物を生長させる技術が開示されている。これにより、たしかに壁面の上方に向かってつる植物を生長させることができる。
【0013】
しかしながら、つる植物が生長する度ごとにその部分をテープで貼り合わせる必要があり、一定方向に生長させるためにかなりの人手間を必要とする。しかも、ビルの壁面のように高い構造物の壁面を緑化するという手段は、高い部分に生長したつる植物を貼り付けることは困難で、必ずしも有効な手段とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−271272号公報
【特許文献2】特開平09−144129号公報
【特許文献3】特開2006−271358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記のような現状に鑑みてなされたものであり、壁面の強度を劣化させることなく、つる植物をスムーズに壁面の近傍に生長させることができ、かつ美観にも優れた緑化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の緑化システムは、栽培用構造体につる植物を生長させた緑化システムであって、該栽培用構造体は、緑化したい領域に設けるものであり、該つる植物は、マメ科トビカズラ属の植物であることを特徴とする。
【0017】
壁面を緑化する緑化システムであって、壁面に沿って設けられる栽培用構造体と、栽培用構造体に登攀または下垂されたつる植物とを有し、つる植物は、マメ科の植物であることが好ましい。
【0018】
上記のつる植物は、トビカズラ属の植物であることが好ましく、アイラトビカズラであることがより好ましい。
【0019】
また、栽培用構造体は、壁面の上下にワイヤを複数本伸ばしたもの、またはワイヤを網目状に交差させたものであることが好ましい。ワイヤは、金属線がビニールにより被覆されたものであることが好ましい。
【0020】
上記の緑化システムは、地上部分または屋上部分のいずれか一方もしくは両方に植栽ユニットを有し、植栽ユニットは、固相50%、液相25%、および気相25%の3相の分布状況の土壌基盤を備え、つる植物は、土壌基盤または植栽ユニットに植栽されることが好ましい。
【0021】
そして、上記の植栽ユニットは、固相50%、液相25%、および気相25%の3相の分布状況の土壌基盤を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の緑化システムは、上記の構成を有することにより、壁面をスムーズに緑化することができ、かつ壁面の美観を優れたものにすることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の緑化システムの全体構造を示す模式的な斜視図である。
【図2】実施例1で作製される緑化システムの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の緑化システムの形態を図面を用いて説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、本願の図面において、長さ、幅、厚さ等の寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。
【0025】
(緑化システム)
図1は、本発明の緑化システムの全体構成を示す斜視図である。本発明の緑化システム1は、図1に示されるように、栽培用構造体20につる植物10を生長させた緑化システムであって、該栽培用構造体20は、緑化したい領域に設けるものであり、つる植物10は、マメ科トビカズラ属の植物であることを特徴とする。
【0026】
ここで、「緑化したい領域」とは、たとえば図1に示されるようなビルの壁面、およびその屋上面に近接する領域のみに限られるものではなく、緑を形成されることが好まれるあらゆる場所を含み得るものである。このような緑化システムは、壁面に沿って設けられる栽培用構造体20と、栽培用構造体20に登攀または下垂されたつる植物10とを有することが好ましい。なお、栽培用構造体20の配置関係に関しては後述する。
【0027】
このようにつる植物10が栽培用構造体20に登攀または下垂するように生長することにより、ビル40の壁面を緑化することができる。そして、壁面が緑化されることにより、夏場はビル40内に外熱を伝道しにくくなるという遮熱効果が得られ、冬場はビル40内の熱を外部に逃がしにくくするという断熱効果が得られる。しかも、壁面が緑化されることにより、ビル40の壁面の美観を向上させることができ、以って都会の人々に精神的な安らぎをもたらすとともに、都会のヒートアイランド現象を抑止する効果も得られる。なお、図1においては、ビル40の壁面につる植物を生長させる場合を示しているが、緑化する壁面は、ビルの壁面のみに限られるものでなく、住宅用の壁面等に広く用いられることは言うまでもない。なおまた、本発明において「壁面」とは、図1に示されるように、建造物の側面のみを意味するものではなく、その屋上面をも含み得るものである。そして、屋上面につる植物を生長させる場合、壁面に対し略平行につる植物を生長させる。ここで、「略平行」とは、屋上面に対して平行である場合のみならず、多少の傾斜を有していても本発明の範囲に含まれることを意味する。以下、本発明の緑化システムを構成する各部を説明する。
【0028】
(つる植物)
本発明の緑化システムに用いられるつる植物10は、マメ科の植物であることを特徴とする。マメ科の植物は、根または茎に根粒菌という細菌を有しており、当該根粒菌は、大気中の窒素を植物の肥料となる硝酸塩に転換するという機能を有する。このため、マメ科の植物は、やせている土地でも容易に育成することができる。よって、マメ科の植物を用いることにより、土地の優劣に関わらずつる植物10を生長させることができる。
【0029】
しかも、マメ科の植物は、就眠運動を行なうことから、昼間に二酸化炭素を酸素に変える光合成を行なうとともに、かつ夜間に酸素を二酸化炭素に変える呼吸運動を行ないにくい。ここで、「就眠運動」とは、夜になると葉柄や小葉の根元で折れ曲がり葉が閉じる性質である。このため、他の科に属する植物よりも、温室効果ガスの原因となる二酸化炭素を効率よく酸素に変えることができ、以って温暖化を抑制することができる。
【0030】
加えて、マメ科の植物は、その茎が栽培用構造体20に巻き付いて生長するため、その生長方向が上空方向のみに限られるものではなく、上階から地上方向にも生長させることができる。このようにマメ科の植物を用いることにより、たとえば高層ビルの壁面を緑化するときに、図1に示されるように、つる植物10を地上から屋上へ登攀させるとともに、屋上から地上へと下垂させることができ、壁面を緑化する速度を早めることができる。
【0031】
上記のつる植物10は、マメ科のトビカズラ属の植物であることを特徴とする。トビカズラ属の植物は、その葉が葉柄の延長になる軸から、左右に小葉がいくつか並ぶ羽状複葉に生長するため、壁面を緑化するしたときに見苦しくなく、均等に葉を生長させることができる。
【0032】
また、従来のつる植物は、生長方向が定まらずにばらけてしまうことにより、遅遅として所望の方向に生長しないことがあったが、本発明に用いられるトビカズラ属の植物は、所望の方向に真っ直ぐ生長しやすい傾向がある。このため、手入れの必要が低減されるとともに、その生長速度も早いものとなる。
【0033】
このようなトビカズラ属の植物としては、たとえばアイラトビカズラ、ワニグチモダマ、ミドリモダマ、ムニンモダマ、ウジルカンダ、イルカンダ、クズモダマ、タイワンワニグチ、カマエカズラ、カショウクズマメ、ハネミノモダマ、ハッショウマメ等を挙げることができる。
【0034】
上記のマメ科トビカズラ属の中でも、アイラトビカズラを用いることが好ましい。アイラトビカズラは、非常に生長速度が早く、1日に約5cm程度生長するため、高層ビルの壁面であっても、その全面を2〜3年程度の比較的短期間で緑化することができる。ちなみに、従来の植物を用いる場合、高層ビルを緑化するためには少なくとも10数年を要するものであり、効率が非常に悪かった。
【0035】
しかも、アイラトビカズラは、その若葉が淡い黄緑色、本葉が鮮やかな深緑色、その花房が艶やかな赤紫〜暗紫色であるというように、1本のつるが多彩な色彩を有する。このため、無味乾燥なビルの壁面を鮮やかに飾ることができ、都会に住む人々の精神的ストレスを緩和させる効果が極めて高い。ちなみに、熊本県山鹿市菊鹿町に生長するアイラトビカズラは、国が指定する特別天然記念物に指定されるほどの美観を有するものである。
【0036】
その上、従来のつる植物は、冬には枯れてしまい、著しく外観が悪くなることが多かったが、本発明のつる植物10に用いられるアイラトビカズラは、冬場にも枯れることなく葉の色が緑色であるため、冬場でも壁面の緑化をすることができる。
【0037】
(栽培用構造体)
本発明において、栽培用構造体20は、つる植物10を所望の方向に生長させるために設けられるものである。このようにビル等の壁面に直接つる植物を生長させるのではなく、ビル等の壁面の近傍に栽培用構造体20を設けて、該栽培用構造体20につる植物10を生長させることにより、つる植物10が建物を傷ませにくくすることができる。しかも、このような栽培用構造体20を用いることにより、所望の位置のみにつる植物10を生長させることができ、美観に優れたものとなる。なお、栽培用構造体20が「壁面に沿って設けられる」とは、栽培用構造体20が壁面に対して平行に設けられる場合のみに限られるものではなく、壁面に対するのり面に設けられる場合も含み得るものとする。ここで、「のり面」とは、栽培用構造体と壁面とが一定の角度を成すように栽培用構造体を設けた場合の栽培用構造体が成す面に相当する。
【0038】
ここで、栽培用構造体と壁面との配置関係としては、壁面に対し栽培用構造体のなす角度が0°以上50°以下であることが好ましい。このような角度で栽培用構造体を形成することにより、マメ科トビカズラ属のつる植物の生長をより早めることができ、もって所望の領域に早期に緑化効果を得ることができる。
【0039】
壁面と栽培用構造体とのなす角度が、壁面に対し栽培用構造体のなす角度が50°を超えると、壁面の緑化に要する時間が長くなりすぎるため好ましくない。壁面に対する栽培用構造体の角度は、15°以上45°以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、25°以上35°以下である。
【0040】
上記においては、壁面の近傍に栽培用構造体を設ける場合のみを説明したが、必ずしも壁面の近傍に栽培用構造体を設ける必要はなく、一定の高さから一定の角度を成すように栽培用構造体を設けてもよい。すなわちたとえば、ジャングルジムの上面から地上にかけて栽培用構造体を設ける場合、石造の上面から地上にかけて栽培用構造体を設ける場合、その栽培用構造体が「のり面」に相当する。
【0041】
さらに、たとえば山間部の斜面であって、植物が育成されておらずに土壌面が露出している部分に対し、その斜面に平行に栽培用構造体を設けてもよい。この場合は、栽培用構造体が「のり面」に相当する。このように山間部の斜面に栽培用構造体を設け、その部分につる植物を生長させることにより、その部分の緑化を図ることができ、もって山間部の美観を向上させることができる。
【0042】
このような栽培用構造体20は、つる植物10が巻き付いて生長できる程度の太さのものであればどのような形状のものでもよく、壁面の上下にワイヤを複数本伸ばした形状のもの、またはワイヤを網目状に交差させた形状のものを用いることが好ましい。
【0043】
栽培用構造体20として、図1に示されるように、壁面の上下にワイヤを複数本伸ばした形状のものを用いる場合、つる植物10が互いに絡まりにくく、真っ直ぐ直上に生長させることができるメリットを有する。一方、栽培用構造体20としてワイヤを網目状に交差させた形状のものを用いる場合、植物の重さ、雨、雪などの気象変化にも対応できる程度の優れた強度と耐久性を有する栽培用構造体20とすることができる。
【0044】
栽培用構造体20が壁面の上下にワイヤを複数本伸ばした構成である場合、各ワイヤは20mm以上600mm以下の間隔で配置されることが好ましく、50mm以上400mm以下の間隔で配置されることがより好ましく、さらに好ましくは100mm以上300mm以下である。このような間隔でワイヤを配置することにより、隣接するワイヤにつる植物10が生長しにくくなり、以って所望の方向につる植物10を生長させることができる。なお、各ワイヤの間隔が600mmを超えて配置されると、間隔が広すぎることにより、壁面が均一に緑化できない虞がある。
【0045】
緑化に用いられる従来のつる植物は、栽培用構造体20を離れて意図しない方向に過大に生長することがあった。このため、つる植物がうっそうと生い茂り、著しく美観が損なわれることがあり、緑化システムを頻繁に手入れをする必要があった。
【0046】
しかしながら、本発明のようにつる植物10としてマメ科のものを用いることにより、栽培用構造体20があるところのみにつる植物10を生長させることができる。しかも、つる植物10が栽培用構造体20の全面に形成されると、自動的にその生長を止めることができるため、従来のように手入れを要しないというメリットもある。
【0047】
このような栽培用構造体20に用いられるワイヤは、金属線がビニールにより被覆されたものであることが好ましい。金属線をビニールで被覆することにより、ワイヤからつる植物10に熱が伝わりにくくなり、つる植物10が熱で萎れてしまうのを防ぐことができる。ここで、金属線に用いられる金属としては、たとえばステンレスを挙げることができ、金属線を被覆するビニールは、たとえば塩化ビニルを挙げることができるが、これのみに限られるものではない。
【0048】
上記のワイヤは、その断面の直径が1mm以上100mm以下であることが好ましく、2mm以上30mm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは3mm以上15mm以下である。このような直径を有するワイヤを用いることにより、つる植物10が巻きつき易くなり、つる植物10を登攀または下垂させやすくすることができる。
【0049】
また、ビル40の壁面と栽培用構造体20とは、20cm以上離れていることが好ましく、50cm以上離れていることがより好ましく、さらに好ましくは1m以上離れていることである。このように壁面と栽培用構造体20とが離れていることにより、栽培用構造体20に巻き付いて生長するつる植物10が壁面に移りにくくすることができ、以って所望の方向につる植物10を生長させることができる。
【0050】
(植栽ユニット)
本発明において、緑化システム1は、つる植物10および栽培用構造体20に加え、植栽ユニット30を備えることが好ましい。植栽ユニット30は、地上部分または屋上部分のいずれか一方もしくは両方であって、栽培用構造体20の近傍に設けられることが好ましい。このような植栽ユニット30を設けることにより、つる植物10の生長を早めることができる。なお、本発明においては、つる植物10としてマメ科の植物を用いるため、必ずしも植栽ユニット30を有しなくてもよい。
【0051】
このような植栽ユニット30には、つる植物10の生長に適した根がよく伸長できる土壌を備えることが好ましい。つる植物10の生長に適した土壌とは、たとえば生育がいちばんよい三相の割合、すなわち固相が50%(腐植を4%含む)液相が25%、気相が25%くらいの分布状況の土壌を用いることが好ましい。このような土壌を植栽ユニット30に準備することにより、つる植物10の生長を促進させることができ、以って壁面の緑化を早めることができる。
【0052】
(実施例1)
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図2は、実施例1で作製される緑化システムの模式的な斜視図である。
本実施例では、図2に示されるように、高さ5メートルの1階建ての一軒家140の壁面のうちの一面に、緑化システム101を作製した。以下、本実施例の緑化システム101の作製手順を述べる。
【0053】
まず、生育がいちばんよい三相の割合、すなわち固相が50%(腐植を4%含む)、液相が25%、気相が25%くらいの分布状況の土壌を用いて、一軒家140の壁面から1mの位置に植栽ユニット130を設けた。この植栽ユニット130の配置は、日中の日当たりがよく、かつ雨水が供給されるように考慮した。
【0054】
次に、断面の直径が5mmのワイヤを、一軒家の屋根から植栽ユニット130に150mmの間隔で8本並べ、栽培用構造体120を準備した。このワイヤには、ステンレス製の金属線を塩化ビニルで被覆したものを用いた。そして、植栽ユニット130に約30cmの長さを有するアイラトビカズラ110の苗木を植えた。
【0055】
そして、80日間経過後のアイラトビカズラ110の生長を確認したところ、アイラトビカズラ110は栽培用構造体120を構成するワイヤに巻きつきながら上方に412cm生長した。このことから、アイラトビカズラは1日に5.15cm生長していることになる。なお、アイラトビカズラの苗木には人為的に水を与えることはしなかった。
【0056】
以上のようにして、作製された本実施例の緑化システムは、アイラトビカズラ110は栽培用構造体120に沿って美しく生長したため、極めて優れた美観を有し、見るものに対し、精神的な安らぎを提供するものであった。
【0057】
(実施例2〜6)
実施例2〜6の緑化システムは、実施例1の緑化システムに対して、つる植物に用いられる品種が以下の表1に示すように異なることを除き、実施例1と同様の方法により作製した。たとえば表1中の実施例3は、つる植物としてカマエカズラを用いて緑化システムを作製したことを示す。
【0058】
(比較例1〜3)
比較例1〜3の緑化システムは、つる植物に用いられる品種としてマメ科のものを使用しなかったことを除き、実施例1と同様の方法により作製した。
【0059】
(比較例4)
本比較例では、一軒家の壁面に緑化システムを形成しなかった。本比較例を上記の各実施例と対比することにより緑化システムの効果を確認した。
【0060】
【表1】

【0061】
表1において、「80日生長」の欄の記載は、苗木を植えてから80日間に生長したつる植物の長さを意味する。
【0062】
<外観>
実施例1〜6および比較例1〜3の緑化システムに対し、10mの距離をおいてその外観を1から5までの5段階で20人が評価した。なお、表1の「外観」の欄には、20人の評価者の平均値を示し、数字が高いほど目視の美観が優れていることを示す。
【0063】
<遮熱性>
実施例1〜6および比較例1〜3の緑化システムが形成された一軒家内の体感温度を20人が確認した。そして、一軒家に入った20人のうちから多数決で最も多い意見を採用して遮熱性を評価した。一軒家内に入ったときに涼しいと感じる一軒家は、遮熱性が高いため表1の遮熱性の欄に「高」と示し、その一方、一軒家に入ったときに暑いと感じる一軒家は遮熱性が低いため表1の遮熱性の欄に「低」と示す。そして、一軒家に入ったときに暑いとも涼しいとも感じない一軒家は、遮熱性が中程度である。このため表1の遮熱性の欄に「中」と示している。
【0064】
表1から明らかなように、実施例1〜6の本発明に係る緑化システムは、比較例1〜4の緑化システムに比し、外観が優れているとともに、その遮熱性も優れているため、本発明の緑化システムを形成することにより、外観を美しくすることができるとともに、その内部の温度調節もすることができることを確認した。
【0065】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0066】
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、都会の高層ビルの壁面等を緑化することにより、ヒートアイランド現象を緩和するとともに、温室効果ガスの原因である二酸化炭素を酸素に変えることにより、地球温暖化を抑止することができる。
【符号の説明】
【0068】
1,101 緑化システム、10 つる植物、20,120 栽培用構造体、30,130 植栽ユニット、40 ビル、110 アイラトビカズラ、140 一軒家。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培用構造体につる植物を生長させた緑化システムであって、
前記栽培用構造体は、緑化したい領域に設けるものであり、
前記つる植物は、マメ科トビカズラ属の植物である、緑化システム。
【請求項2】
壁面を緑化する緑化システムであって、
前記壁面に沿って設けられる栽培用構造体と、
前記栽培用構造体に登攀または下垂されたつる植物とを有し、
前記つる植物は、マメ科トビカズラ属の植物である、請求項1に記載の緑化システム。
【請求項3】
前記つる植物は、アイラトビカズラである、請求項1または2に記載の緑化システム。
【請求項4】
前記栽培用構造体は、前記壁面の上下にワイヤを複数本伸ばしたもの、またはワイヤを網目状に交差させたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の緑化システム。
【請求項5】
前記ワイヤは、金属線がビニールにより被覆されたものである、請求項4に記載の緑化システム。
【請求項6】
請求項1〜5の壁面緑化システムは、地上部分または屋上部分のいずれか一方もしくは両方に植栽ユニットを有し、
前記植栽ユニットは、固相50%、液相25%、および気相25%の3相の分布状況の土壌基盤を備え、
前記つる植物は、前記土壌基盤または前記植栽ユニットに植栽される、請求項1〜5のいずれかに記載の緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−78402(P2011−78402A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262703(P2009−262703)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(503466967)細川エクステリア株式会社 (1)
【Fターム(参考)】