説明

緑化パネル

【課題】従来の緑化器は、網状保護材に登攀助材を添設するために、止め具で固定すると同時にスペーサーや留金具を用いて登攀間隔を設ける必要があり、製造や取り付けに手間やコストがかかるという問題や、建築デザインに十分適用できない場合があった。
【解決手段】本発明に係る緑化パネル(1)は、登攀助材(2)、菱形金網(3)、押さえ用部材(4)及び緊結用部材(5)を有する。該登攀助材(2)は矩形で非剛性体となっている。該菱形金網(3)は3次元型である。該押さえ用部材(4)は該登攀助材(2)の裏面に垂下され、該緊結用部材(5)は該登攀助材(2)を貫通して該菱形金網(3)と該押さえ用部材(4)を該登攀助材(2)越しに緊結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、のり面や建造物壁面を緑化するために使用される緑化パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
のり面や建造物壁面を緑化するための手段として、特開平11−89420号公報に開示された緑化器がある。この緑化器は、網状保護材に、吸着型蔓性植物の登攀間隔を保って留金具により多孔質の登攀助材を添設したものであり、緑化対象であるのり面、壁面等の起立面に登攀助材を対面させ、網状保護材の外面から留め具を起立面に差し込み、起立面に留めて使用する。そして、起立面に設置後、吸着型蔓性植物を登攀間隔の下方に植栽すれば、その吸着型蔓性植物は、生長するに従い付着根が所々に発生して登攀助材に侵入し、その組織の一部と係合し、自身を保定しながら登攀助材に沿って網状保護材との間の登攀間隔を登攀することになる。しかも、蔓性植物の登攀助材からの脱落も網状保護材によって防ぐことができるため、起立面全面を下から万遍なく緑化することができる。
【特許文献1】特開平11−89420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の緑化器は、網状保護材に登攀助材を添設するために、止め具で固定すると同時にスペーサーや留金具を用いて登攀間隔を設ける必要があり、製造や取り付けに手間やコストがかかるという問題があった。
【0004】
また、上記従来の緑化器は、一体ものとしての使用が想定されているため、建築デザインに十分適用できない場合があった。
【0005】
更に、建築デザインに対応すべく壁面の一部のみに上記従来の緑化器を設置する場合、蔓性植物が登攀助材から外れて緑化器の設置されていない壁面に直接付着するおそれがあった。蔓性植物が壁面に直接付着すると、付着根が壁面の防水性を低下させたり、維持管理に支障をもたらしたりするおそれがあり、好ましくない。そのため、この点からも建築デザインに十分適用できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明の第一の目的は、網状の部材に登攀助材を添設する構造が簡単で、その製造や取り付けに手間やコストがかからない緑化パネルを提供することにある。
また、本発明の第二の目的は、登攀助材を直接固定できない軟弱な面の緑化に有効で、また緑化対象面に応じて簡単に大きさを調整できる緑化パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)本発明にかかる緑化パネルは、登攀助材、菱形金網、押さえ用部材及び緊結用部材を有する。該登攀助材は矩形で非剛性体となっている。該菱形金網は3次元型である。該押さえ用部材は該登攀助材の裏面に垂下される。そして該緊結用部材は該登攀助材を貫通して該菱形金網と該押さえ用部材を該登攀助材越しに緊結している。 緊結用部材とは、例えば可撓性を有する線材や帯材等で、菱形金網を構成する線材と押さえ用部材の外周に巻き付けることのできるものである。登攀助材が非剛性体であっても、押さえ用部材及び緊結部材と容易に固定できる。
一方、菱形金網の隙間は登攀間隔を形成する。従って、スペーサーや留金具を用いることなく登攀間隔を設けながら格子を登攀助材に容易に固定することができ、製造や取り付けに手間やコストがかからないものとなる。特に、菱形金網は水平に設けた支持部材から吊り下げるのみで設置できるため、登攀助材を直接固定できない軟弱な面を緑化する場合に有効である。また、菱形金網を構成する螺状線材を介して複数の菱形金網を上下に連結するのみで、緑化対象面に応じて簡単に大きさを調整できる。
【0008】
(請求項2)該登攀助材はヤシ殻繊維製であってもよい。
【0009】
(請求項3)該菱形金網は、厚みが10〜80mmのものであってもよい。なお、菱形金網に関してはJIS規格で定められているが、厚みに関しては規定がない。
【0010】
(請求項4)該菱形金網は、その下縁をアンカーによって地面に固定されていてもよい。
【0011】
(請求項5)該菱形金網は矩形を呈し、その外縁の少なくとも一辺は該登攀助材の外方への突出部となっており、該突出部を他の同様構成の菱形金網と重合して結束することにより連設可能となっていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
(請求項1)本発明にかかる緑化パネルでは、登攀助材が矩形で非剛性体となっているので、登攀助材の表面に菱形金網を、登攀助材の裏面に垂下する押さえ用部材に緊結用部材で登攀助材越しに結びつけるのみで、容易に固定できる。一方、菱形金網の隙間は登攀間隔を形成する。従って、スペーサーや留金具を用いることなく登攀間隔を設けながら格子を登攀助材に容易に固定することができ、製造や取り付けに手間やコストがかからないものとなる。特に、菱形金網は水平に設けた支持部材から吊り下げるのみで設置できるため、登攀助材を直接固定できない軟弱な面を緑化する場合に有効である。また、菱形金網を構成する螺状線材を介して複数の菱形金網を上下に連結するのみで、緑化対象面に応じて簡単に大きさを調整できる。
【0013】
(請求項2)該登攀助材はヤシ殻繊維製なので、菱形金網の取付けが容易で、この菱形金網を登攀助材の支持用部材として機能させることにより、登攀助材を起立させることができる。
【0014】
(請求項3)菱形金網の厚みが10〜80mmであれば、特に好適な登攀間隔を形成することができる。
【0015】
(請求項4)該菱形金網は、その下縁をアンカーによって地面に固定されると、緑化パネルに対する菱形金網の位置が安定する。
【0016】
(請求項5)該菱形金網は矩形を呈し、その外縁の少なくとも一辺は該登攀助材の外方への突出部となっており、該突出部を他の同様構成の菱形金網と重合して結束することにより連設可能となるので、登攀助材の領域を越えて緑化パネルを伸張できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜7に、本発明にかかる緑化パネルの具体例を示す。図1は同緑化パネルの正面図、図2は背面図、図3は部分側断面図である。図4は菱形金網を押さえ用部材に結びつける部分を拡大して示し、(a)は正面図、(b)は平断面図である。図5は、同緑化パネルの上側の取り付け状態を示す部分正面図である。図6は同緑化パネルの下側固定部分を拡大して示す部分正面図である。図7は同緑化パネルの複数を連結した場合において折り畳んだ状態を示す側面図である。
【0018】
(請求項1)本発明にかかる緑化パネル1は、登攀助材2、菱形金網3、押さえ用部材4及び緊結用部材5を有する。この登攀助材2は矩形で非剛性体となっている。菱形金網3は3次元型である。押さえ用部材4は登攀助材2の裏面に垂下される。そして、緊結用部材5は登攀助材2を貫通して菱形金網3と押さえ用部材4を登攀助材2越しに緊結している。緊結用部材5とは、例えば可撓性を有する線材や帯材等で、菱形金網3を構成する線材と押さえ用部材4の外周に巻き付けることのできるものである。
なお、緊結用部材5は、緑化パネル1の全体的なサイズから見れば小さいため、図1及び2においてその図示は省略されている。
【0019】
この緑化パネル1では、登攀助材2の表面に配置された菱形金網3を、登攀助材2の裏面に垂下する押さえ用部材4に緊結用部材5で登攀助材2越しに結びつけるのみで、登攀助材2に容易に固定できる。一方、菱形金網3の隙間は登攀間隔を形成する。従って、スペーサーや留金具を用いることなく登攀間隔を設けながら、菱形金網3を登攀助材2に容易に固定することができ、製造や取り付けに手間やコストがかからないものとなる。特に、図5に示すように、菱形金網3は水平に設けた支持部材6から吊り下げるのみで設置できるため、登攀助材2を直接固定できない軟弱な面を緑化する場合に有効である。また、菱形金網3を構成する螺状線材を介して複数の菱形金網3を上下に連結するのみで、緑化対象面に応じて簡単に大きさを調整できる。
【0020】
緑化パネル1を複数連結して使用する際、施工現場で連結させることも可能ではあるが、施工性を考慮した場合、工場等の設備の整った施設内で予め連結しておくことが好ましい。その場合、一枚当たりの面積が大きくなり運搬しずらくなるという問題が発生するが、その問題については連結部分で折り返し小さく畳むことで対処すればよい。すなわち、菱形金網3の連結部分3aで折り返して二つ折り、三つ折り等にして図7(a)や(b)に示す状態とすれば、一枚当たりの面積を連結する前の面積にまで小さくできるので、支障なく運搬することができる。
【0021】
(請求項2)登攀助材2はヤシ殻繊維製である。
この場合、登攀助材2に対する菱形金網3の取り付けが容易で、この菱形金網3を登攀助材2の支持用部材として機能させることにより、登攀助材2を起立させることができる。
【0022】
(請求項3)菱形金網3は、その厚みtが10〜80mmとなっている。
この場合、特に好適な登攀間隔を形成することができる。
【0023】
(請求項4)菱形金網3は、その下縁をアンカー7によって地面に固定される。
この場合、緑化パネル1に対する菱形金網3の位置が安定する。
【0024】
(請求項5)菱形金網33は矩形を呈し、その外縁の少なくとも一辺は登攀助材2の外方への突出部3bとなっており、この突出部3bを他の同様構成の菱形金網3と重合して結束することにより連設可能となっている。
この場合、この緑化パネル1の長手方向(図1の水平方向)に別の緑化パネル1を隣接して配置すると、菱形金網3の登攀助材2から突き出た突出部3bが隣接する緑化パネル1の菱形金網3に重なることになる。そのためこの菱形金網3の重なった部分を結束材で結びつけることにより、長手方向に隣接するパネル同士を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にかかる緑化パネルの具体例を示す正面図である。
【図2】同緑化パネルの背面図である。
【図3】同緑化パネルの部分側断面図である。
【図4】菱形金網を押さえ用部材に結びつける部分を拡大して示し、(a)は正面図、(b)は平断面図である。
【図5】同緑化パネルの上側の取り付け状態を示す部分正面図である。
【図6】同緑化パネルの下側固定部分を拡大して示す部分正面図である。
【図7】同緑化パネルの複数を連結した場合において折り畳んだ状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 緑化パネル
2 登攀助材
3 菱形金網
3a 連結部分
3b 突出部
4 押さえ用部材
5 緊結用部材
6 支持部材
7 アンカー




【特許請求の範囲】
【請求項1】
登攀助材(2)、菱形金網(3)、押さえ用部材(4)及び緊結用部材(5)を有し、該登攀助材(2)は矩形で非剛性体となっており、該菱形金網(3)は3次元型で、該押さえ用部材(4)は該登攀助材(2)の裏面に垂下され、該緊結用部材(5)は該登攀助材(2)を貫通して該菱形金網(3)と該押さえ部材(4)を該登攀助材(2)越しに緊結していることを特徴とする緑化パネル(1)。
【請求項2】
該登攀助材(2)はヤシ殻繊維製である請求項1に記載の緑化パネル(1)。
【請求項3】
該菱形金網(3)は、厚み(t)が10〜80mmのものである請求項1又は2に記載の緑化パネル(1)。
【請求項4】
該菱形金網(3)は、その下縁をアンカー(7)によって地面に固定される請求項1、2又は3に記載の緑化パネル(1)。
【請求項5】
該菱形金網(3)は矩形を呈し、その外縁の少なくとも一辺は該登攀助材(2)の外方への突出部(3b)となっており、該突出部(3b)を他の同様構成の菱形金網(3)と重合して結束することにより連設可能となっている請求項1、2、3又は4に記載の緑化パネル(1)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−93(P2010−93A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231079(P2009−231079)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【分割の表示】特願2004−259571(P2004−259571)の分割
【原出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(300013258)大島造園土木株式会社 (10)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【出願人】(505398963)西日本高速道路株式会社 (105)
【Fターム(参考)】