説明

緑化ボード及び緑化システム

【課題】複数の緑化ボード1,1,…を設置面上に載置した状態でも、簡単な潅水システムで、複数の緑化ボード1,1,…の木質繊維板2に対し同時に定常的に給水できるようにする。
【解決手段】緑化ボード1は、裏面にパイプ溝4が形成された木質繊維板2と、この木質繊維板2裏面のパイプ溝4内に収容されかつ両端部に接続部8,9が設けられ、木質繊維板2内に給水するための潅水パイプ7とを備えたものとする。この潅水パイプ7端部の接続部8,9を隣り合う緑化ボード1の潅水パイプ7端部の接続部9,8と接続することで、両緑化ボード1,1,…同士を通水状態で連結可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物が生育される緑化ボード及びそれを備えた緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物を育生するための緑化ボード及びそれを備えた緑化システムが、CO吸収や省エネルギー化等の環境向上を図る手段として注目されている。緑化システムは、例えば建物の屋上等に設置されるが、その設置場所に加わる荷重を低減するために、軽量化することが望まれている。
【0003】
そこで、不織布やフェルトのような樹脂繊維をマット状に成形した保水用ボードが提案されており、土壌の一部を軽量な保水用ボードに置き換える試みが行われている。そして、保水用ボードの上に載積された土壌層において、例えば芝草等の植物を生育するようにしている。
【0004】
しかし、上記保水用ボードは樹脂繊維からなるため、その保水用ボード自体を廃棄する際に多量のCOが排出されるという問題がある。さらに、上記保水用ボードには芝草等の根が入り込んでしまうため、例えば芝草の一部を他の植物に入れ替えるような場合には、保水用ボードごと芝草を取り外し、新たな保水用ボードと共に他の植物を設置する必要がある。この芝草の根が入り込んだ保水用ボードは、産業廃棄物として埋め立て処理しなければならず、環境配慮の観点で問題がある。
【0005】
また、上記保水用ボードは、樹脂繊維によって構成されているので、保水性に優れるものの、不必要に水分を保持してしまう問題も有している。例えば、降雨等により大量の水が保水用ボードに供給されたときには、長期にわたって水溜りのような状態が続いてしまうこととなる。
【0006】
一方、吸水ポリマーを含有する保水板によって、大量に供給された水を内部に保持することも提案されている。この保水板では、保水した水の蒸散を抑制できるが、吸水ポリマーに保持されている水分を植物が直接に利用できないため、合理的とはいえない。
【0007】
これに対し、特許文献1では、木質繊維板の全体に界面活性剤を添加し、保水性(親水性)を向上させた植物栽培用の保水資材が提案されている。この保水資材によれば、植物が保水された水分を直接に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−183177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来の特許文献1の植栽用保水資材において、その複数を設置面上に載置して緑化するとき、各保水資材に潅水パイプを利用して水を定常的に供給することが必要となる。そして、複数の保水部材に同時に給水するために、各保水部材を個別に潅水装置に接続しようとすると、潅水システムが大掛かりな構造になってしまうという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、保水性を有する木質繊維板を備え、板植物が生育される緑化ボードの構造に工夫を加えることにより、複数の緑化ボードを設置面上に載置した状態でも、簡単な潅水システムで、複数の緑化ボードの木質繊維板に対し同時に定常的に給水できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、この発明では、木質繊維板の片面(表面又は裏面)に溝部を形成して、その内部に、両端部に接続部を有する潅水パイプを収容し、隣り合う緑化ボードの潅水パイプ同士を接続部で接続するようにした。
【0012】
具体的には、第1の発明の緑化ボードは、片面にパイプ溝が形成された木質繊維板と、この木質繊維板片面のパイプ溝内に収容されかつ両端部に接続部が設けられ、木質繊維板内に給水するための潅水パイプとを備え、この潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部と接続することで、両緑化ボード同士が通水状態で連結可能とされていることを特徴とする。
【0013】
この第1の発明では、緑化ボードは木質繊維板を備え、その木質繊維板が保水している水分により、緑化ボードの表面側において植物を生育することが可能になる。また、この植物の生育に伴い木質繊維板に植物の根が絡んでいたとしても、廃棄する際には当該植物の根と共に木質繊維板を燃焼して廃棄することが可能となり、環境への負荷が容易に低減される。
【0014】
また、木質繊維板の片面のパイプ溝に、両端部に接続部を有する潅水パイプが収容され、この潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部と接続して、両緑化ボード同士が通水状態で連結可能となっているので、複数の緑化ボードを並べて設置し、それらに潅水するときには、各緑化ボードの木質繊維板に内有されている潅水パイプを隣り合う緑化ボードにおける同様の潅水パイプに両潅水パイプ端部の接続部で接続すれば、複数の緑化ボードの潅水パイプが一連に連続することとなり、その連続した潅水パイプに通水することで、各緑化ボードの木質繊維板内に給水される。このことで、最小限の数の潅水装置で複数の緑化ボードを潅水することができ、潅水システムがコンパクトになる。
【0015】
しかも、潅水パイプは木質繊維板に形成したパイプ溝内に収容され、その端部の接続部のみが木質繊維板の外に露出するので、潅水パイプが隠蔽され、外観見映えを高めることができる。
【0016】
さらに、各緑化ボード毎に潅水パイプが木質繊維板のパイプ溝に収容された状態で具備され、それらを接続するだけで潅水システムができ上がるので、その施工が容易になる。
【0017】
第2の発明の緑化ボードは、第1の発明の緑化ボードにおいて、木質繊維板におけるパイプ溝のある片面に親水層が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この第2の発明では、木質繊維板の片面にパイプ溝と親水層とが形成されているので、パイプ溝内の潅水パイプから供給される水が親水層を経て木質繊維板内に浸入することとなり、木質繊維板全体を速やかに親水性にすることができる。
【0019】
また、第3の発明では、第1又は第2の発明の緑化ボードにおいて、パイプ溝のある片面は木質繊維板の表面とする。一方、第4の発明では、同様に、パイプ溝のある片面は木質繊維板の裏面とする。
【0020】
これら第3及び第4の発明でも、上記第1の発明と同様の作用効果を奏することができる。特に、第4の発明では、潅水パイプは木質繊維板裏面に形成したパイプ溝内に収容されので、潅水パイプが隠蔽され、外観見映えを高めることができる。
【0021】
第5の発明では、第4の発明の緑化ボードにおいて、木質繊維板の裏面に、パイプ溝を通りかつ木質繊維板の異なる2辺に連通する連通溝が設けられていることを特徴とする。
【0022】
この第5の発明では、木質繊維板の裏面に木質繊維板の異なる2辺間に亘って延びる連通溝が形成され、この連通溝は同じ裏面に位置するパイプ溝を通っているので、潅水パイプからパイプ溝内に供給された水はパイプ溝だけでなく連通溝にも流れて、木質繊維板の辺の連通溝側端部に案内され、木質繊維板の裏面側を速やかに保水することが可能になる。よって、木質繊維板の裏面側から水を十分に供給して、その保水性を大幅に高めることが可能となる。
【0023】
第6の発明の緑化システムは、第1〜第5のいずれか1つの発明の複数の緑化ボードが、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、上記各緑化ボード上に土壌層が形成されていることを特徴とする。
【0024】
この第6の発明では、複数の緑化ボードは、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、その各緑化ボード上に土壌層が形成されているので、表面に植物が植生される土壌層が配置され、その下側に保水用の木質繊維板が設けられた、潅水システムの簡略な緑化システムが得られる。
【0025】
第7の発明の緑化システムは、第3の発明の複数の緑化ボードが、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、上記各緑化ボードの表面にパイプ保護シート層が設けられ、該パイプ保護シート層の表面に直接植物が植生されていることを特徴とする。
【0026】
この第7の発明では、複数の緑化ボードは、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、その各緑化ボード表面上のパイプ保護シート層の表面に直接植物が植生されているので、表面に植物が植生されるパイプ保護シート層が配置され、その下側に保水用の木質繊維板が設けられた、潅水システムの簡略な緑化システムが得られる。
【0027】
また、潅水パイプが木質繊維板表面のパイプ溝に収容されて該木質繊維板表面に剥き出しになっていても、それはパイプ保護シート層によって覆われることとなり、潅水パイプを保護することができる。
【0028】
第8の発明の緑化システムは、第4又は第5の発明の複数の緑化ボードが、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、上記各緑化ボードの木質繊維板の表面に直接植物が植生されていることを特徴とする。
【0029】
この第8の発明では、複数の緑化ボードは、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、その各緑化ボードの木質繊維板の表面に直接植物が植生されているので、表面に植物が植生されかつ裏面に潅水パイプが配置された木質繊維板を有する、潅水システムの簡略な緑化システムが得られる。
【0030】
また、木質繊維板自体に植物が植生するので、土壌層等が不要であり、軽量な緑化システムとなる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、第1、第3又は第4の発明によると、表面に植物が植栽される緑化ボードとして、吸水性を有する木質繊維板の片面にパイプ溝を形成して、その内部に、両端部に接続部材を有する潅水パイプを収容し、その潅水パイプの接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプの接続部に接続可能としたことにより、緑化ボードを廃棄する際の環境への負荷の低減を図るとともに、最小限の数の潅水装置で複数の緑化ボードを潅水することができ、潅水システムのコンパクト化及びその施工の容易化を図ることができる。
【0032】
第2の発明によると、木質繊維板におけるパイプ溝のある片面に親水層を形成したことにより、パイプ溝内の潅水パイプから供給される水により、木質繊維板全体を速やかに親水性にすることができる。
【0033】
第5の発明によると、木質繊維板の裏面にパイプ溝と共に、そのパイプ溝を通りかつ木質繊維板の異なる2辺に連通する連通溝を形成したことにより、潅水パイプからの水をパイプ溝だけでなく連通溝にも流して木質繊維板の裏面側を速やかに保水でき、木質繊維板の裏面側から水を十分に供給して、その保水性を大幅に高めることができる。
【0034】
第6の発明の緑化システムによると、複数の緑化ボードを、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結し、各緑化ボード上に土壌層を形成したことにより、表面に植物が植生される土壌層が配置され、その下側に保水用の木質繊維板が設けられた、潅水システムの簡略な緑化システムが得られる。
【0035】
第7の発明の緑化システムによると、木質繊維板の表面に潅水パイプが配置された複数の緑化ボードを、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結し、各緑化ボードの表面上のパイプ保護シート層の表面に直接植物を植生したことにより、表面に植物が植生されるパイプ保護シート層が配置され、その下側に保水用の木質繊維板が設けられた、潅水システムの簡略な緑化システムが得られるとともに、潅水パイプが木質繊維板の表面に剥き出しになっていても、その潅水パイプをパイプ保護シート層によって保護することができる。
【0036】
第8の発明によると、木質繊維板の裏面に潅水パイプが配置された複数の緑化ボードを、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結し、各緑化ボードの木質繊維板の表面に直接植物を植生したことにより、表面に植物が植生されかつ裏面に潅水パイプが配置された木質繊維板を有する、潅水システムの簡略なかつ軽量な緑化システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る第1緑化ボードを表面側から見た斜視図である。
【図2】図2は第1緑化ボードを裏面側から見た平面図である。
【図3】図3は実施形態1に係る第2緑化ボードを示す図1相当図である。
【図4】図4は第2緑化ボードを示す図2相当図である。
【図5】図5は木質繊維板の構造を示す断面図である。
【図6】図6は、実施形態1に係る緑化ボードを複数設置して形成された緑化システムを示す斜視図である。
【図7】図7は、緑化システムにおける複数の緑化ボードの間の潅水パイプの接続状態を示すために一部の緑化ボードを裏面側から見た平面図である。
【図8】図8は、緑化システムの緑化ボード表面に植物が植栽された状態を示す斜視図である。
【図9】図9は緑化システムの構造を部分的に示す概略断面図である。
【図10】図10は実施形態1に係る緑化ボードの変形例を示す図1相当図である。
【図11】図11は実施形態1に係る緑化ボードの変形例を示す図2相当図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態2に係る第1緑化ボードを表面側から見た斜視図である。
【図13】図13は実施形態2に係る第1緑化ボードを表面側から見た平面図である。
【図14】図14は実施形態2に係る第2緑化ボードを示す図12相当図である。
【図15】図15は実施形態2に係る第2緑化ボードを示す図13相当図である。
【図16】図16は、実施形態2に係る緑化ボードを複数設置して形成された緑化システムの構造を示す図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0039】
[実施形態1]
(緑化ボード)
図1〜図11において、1は本発明の実施形態1に係る矩形状の緑化ボードであって、この緑化ボード1を図6及び図7に示すように複数マトリクス状に連結して後述する設置対象体12上に設置することで緑化システムが構成される。
【0040】
上記緑化ボード1は、その表面上の土壌層17に植物P(図8及び図9参照)が植栽されるものであり、矩形状の木質繊維板2と、この木質繊維板2の裏面に、後述するパイプ溝4に収容された状態で一体的に組み付けられた潅水パイプ7とを備えている。本実施形態では、緑化ボード1は少なくとも第1及び第2の2種類の緑化ボード1A,1Bからなり(尚、種類を特定しない緑化ボードの符号を「1」とすることがある)、これらは上記木質繊維板2裏面のパイプ溝4の配置形状が異なっている。
【0041】
(木質繊維板)
上記木質繊維板2は、表面(上面)側に植物Pが植生されるもので吸水性を有する。この木質繊維板2は、例えば比重0.05〜0.35のもの(インシュレーションボード等)が使用される。木質繊維板2の比重が、0.05未満であると、上を歩行するための積載荷重が不足するだけでなく、保水量も少なくなる一方、0.35を越えると、比重が高すぎて植物Pの根の活着性が悪くなる(根が入り難くなる)からである。
【0042】
また、木質繊維板2の厚みは例えば10〜25mmが望ましい。木質繊維板2の厚みが、10mm未満であると、その保水量が不足する一方、25mmを越えると、不必要にコストアップするからである。木質繊維板2の大きさは、特に限定されないが、この実施形態では90cm×90cmのものが用いられている。
【0043】
これにより、同じ厚みの土壌に比べ優れた保水性を確保しつつ、極めて軽く、屋上緑化を始め、どのような場所にも設置可能な緑化システムを提供することができる。例えば比重0.2、厚み11mmの木質繊維板2であれば、10〜12kg/m程度の吸水量が期待できる。
【0044】
木質繊維板2の保水性を向上させる方法としては、製造時の抄造スラリーにワックス等の撥水性を発現するものを添加しない方法が最も好適である。また、製造時に界面活性剤を抄造スラリーに添加したり、製造された木質繊維板2の表面に界面活性剤をスプレー塗布したりする方法が考えられる。このような木質繊維板2に水を接触させて保水状態の保水ボードとし、それに植物Pを植生する。
【0045】
また、一般的に市販されている撥水性を有する木質繊維板2も使用できる。この場合、木質繊維板2は、比重0.05〜0.35のいわゆるインシュレーションボードが好適に用いられる。インシュレーションボードとは、長繊維の木質繊維をバインダーやワックスと共に湿式抄造して板状に成形した木質繊維板である。一般的なインシュレーションボードは、耐水性を向上させるために、ワックスが内添されており、多少の水かかってもそれをはじく性能を有している。従って、界面活性剤等を使用し、インシュレーションボードの濡れ性を向上させて保水状態とする。このような界面活性剤としては、例えば(株)ハイポネックスジャパン社製の「ワターイン」(登録商標)や「ワターインキレート」(商品名)等が挙げられる。
【0046】
具体的には、界面活性剤を含む水に木質繊維板2を浮かべたり漬けたりする。木質繊維板2を浮かべると、水が接した部分から徐々に保水されていく。この場合、木質繊維板2を完全な保水状態としてもよいが、木質繊維板2が完全に保水状態となると、例えば90cm×90cm等の大きな板を施工する場合、強度が弱くなってハンドリングが悪くなるだけでなく、完全に保水状態とするためには、かなりの時間を要する。従って、少なくとも表層部を界面活性剤を含む水により保水状態としておき、保水状態となった面を上向きに施工し、施工後に保水部分に水を供給することで、施工状態で完全な保水状態となるようにするのが好ましい。
【0047】
つまり、撥水性を有する木質繊維板2に界面活性剤を含む水を接触させ、少なくとも表層部に親水層を形成して保水ボードとする。例えば、施工前の木質繊維板2は、図5(a)に示すように、表面のみに親水層2aがパイプ溝4と木質繊維板2の厚み方向で部分的に重なるように形成されていてもよい(他は撥水層2bである)。或いは図5(b)に示すように、木質繊維板2の周囲全体が親水層2aとなり、その内側部分が撥水層2bとなるように形成してもよい。また、界面活性剤により木質繊維板2の表面又は裏面に親水層2aを形成し、その後に乾燥させてもよいし、親水層2aのない木質繊維板2を載置した後に表面からじょうろ等で、界面活性剤を含む水を散布してもよい。木質繊維板2は、表面側に植物Pが植生されるので、少なくとも表面に親水層2aが形成されていることが必要である。また、木質繊維板2の裏面にも親水層2aを形成しておけば、後述するように、潅水パイプ7からの水や木質繊維板2の表裏面に亘る貫通孔からの水等、木質繊維板2の裏側に供給される種々の水により木質繊維板2の全体を速やかに保水状態とすることができる。
【0048】
(パイプ溝)
図1〜図4に示すように、木質繊維板2の裏面にはパイプ溝4が形成され、この木質繊維板2裏面のパイプ溝4内には、木質繊維板2の内部に給水するための潅水パイプ7が収容されている。
【0049】
図2及び図4に示すように、第1及び第2緑化ボード1A,1Bの矩形状の木質繊維板2はいずれも第1〜第4の4辺S1〜S4を有し、第1緑化ボード1Aの木質繊維板2においては、例えば図2に示すように、パイプ溝4は、一端が該木質繊維板2の第1辺S1の長さ方向略中央に接続されかつ他端が、第1辺S1に対向する第3辺S3に向かって木質繊維板2の四半分程度まで延びる第1溝部4aと、一端が第1溝部4aの他端に略直角に連続し、他端が木質繊維板2の第2辺S2側に向かって少し延びた後、第2辺S2近くにおいて向きを略180°変えて、第2辺S2に対向する第4辺S4に向かうように円弧状に湾曲する第1湾曲溝部4bと、一端が第1湾曲溝部4bの他端に連続し、他端が第1及び第3辺S1,S3間の中央位置を第4辺S4に向かって直線状に延びる直線溝部4cと、一端がこの直線溝部4cの他端に連続し、他端が第4辺S4近くにおいて向きを略180°変えて再度第2辺S2に向かうように円弧状に湾曲する第2湾曲溝部4dと、一端が第2湾曲部4dの他端に略直角に連続し、他端が第3辺S3側に向かって木質繊維板2の四半分程度延びる第2溝部4eとを備えている。
【0050】
一方、第2緑化ボード1Bの木質繊維板2においては、例えば図4に示すように、パイプ溝4は、一端が矩形状の木質繊維板2の第1辺S1の長さ方向略中央に接続されかつ他端が第1辺S1に対向する第3辺S3に向かって木質繊維板2の四半分程度まで延びる第1溝部4aと、一端が第1溝部4aの他端に略直角に連続し、他端が木質繊維板2の第4辺S4側に向かって少し延びた後、その第4辺S4、上記第3辺S3、及び上記第4辺S4に対向する第2辺S2に順に近付くように円弧状に湾曲する円弧湾曲部4fと、一端がこの円弧湾曲部4fの他端に略直角に連続し、他端が第2辺S2に向かって延びる第2溝部4eとを備えている。
【0051】
また、第1緑化ボード1Aの木質繊維板2において、上記第1溝部4aと第1湾曲溝部4bとの接続部、及び第2湾曲溝部4dと第2溝部4eとの接続部は上記のように略直角に曲がるように湾曲している。一方、第2緑化ボード1Bの木質繊維板2において、上記第1溝部4aと円弧湾曲部4fとの接続部、及び該円弧湾曲部4fと第2溝部4eとの接続部も略直角に曲がるように湾曲している。この各接続部には、その接続部を湾曲外側に向かって拡げるようにパイプ溝4の溝幅を拡げた溝幅拡大部4gが形成されており、後述する潅水パイプ7の端部を木質繊維板2の辺S1,S3,S2の側端面から出没させるときに、その没入状態で木質繊維板2内に移動した潅水パイプ7の余剰部分を溝幅拡大部4g内に収容して吸収し、潅水パイプ7が弛んで木質繊維板2の裏面から下側に突出しないようにしている。
【0052】
さらに、第1緑化ボード1Aの木質繊維板2のパイプ溝4における第2溝部4eの他端部、第2緑化ボード1Bの木質繊維板2のパイプ溝4における第2溝部4eの他端部には、それぞれ潅水パイプ7端部の後述する第1接続部8を収容するための接続部収容部4hが溝幅を辺S3,S2の端面から拡げるように形成されており、上記潅水パイプ7の端部を木質繊維板2の辺S3,S2の側端面に没入させるときに、該端部の第1接続部8を接続部収容部4hに収容した状態で没入させる。
【0053】
(潅水パイプ)
上記第1及び第2緑化ボード1A,1Bの各木質繊維板2には潅水パイプ7が組み付けられている。すなわち、各木質繊維板2裏面のパイプ溝4内には連続した1本の潅水パイプ7が収容されている。第1及び第2緑化ボード1A,1Bのそれぞれのパイプ溝4,4に収容される潅水パイプ7,7は互いに長さのみが異なり、その他の構造は同じである。この潅水パイプ7はパイプ溝4に沿って湾曲するように可撓性を有するもので、その潅水パイプ7の壁部には微細孔からなる無数の給水孔(図示せず)が開口されており、潅水パイプ7の内部に流れる水を吸水孔からパイプ7外に滲み出るように吐出させることで、その吐出水をパイプ溝4内壁面に供給して、そのパイプ溝4壁面から木質繊維板2の内部に染み込ませるようにしている。その他、潅水パイプ7としては、点滴ドリップチューブを使用してもよい。
【0054】
上記各潅水パイプ7の一端部には第1接続部8が、また他端部には第2接続部9がそれぞれ液密状態で一体的に取り付けられている。第1接続部8と第2接続部9とは、詳細に図示しないが、第1接続部8に第2接続部9を嵌合して液密状態に接続可能な構造であり、隣接する緑化ボード1,1の一方の第1接続部8に他方の緑化ボード1の第2接続部9を嵌合して両接続部8,9同士を液密状態に接続することで、両緑化ボード1,1の潅水パイプ7,7間で通水できるようになっている。
【0055】
尚、木質繊維板2の表面に複数の表溝や表穴を形成してもよい。これにより、表面に育生される植物Pの根が表溝又は表穴に入り込むようになり、植物Pの木質繊維板2に対する活着が確実に行われる。また、表溝又は表穴に植物Pの種や肥料を入れることにより、所望の位置に確実に種や肥料を播種することが可能となる。
【0056】
また、木質繊維板2の表面に複数の表溝を、また裏面に複数の裏溝をそれぞれ該表裏溝間で互いに連通するように形成して、木質繊維板2の表裏面に亘る貫通孔を設けることもできる。例えば木質繊維板2の表面に複数の表溝を互いに平行に配置して形成する一方、裏面には、同様に複数の裏溝を互いに平行にかつ表溝と交差するように配置して形成し、この表面側の複数の表溝と裏面側の裏溝とが交差する位置において、表裏溝間を互いに連通させることにより、木質繊維板2の表裏面で連通する貫通孔を形成する。或いは、木質繊維板2の表面及び裏面に連通する複数の貫通孔を設けることもできる。
【0057】
こうして木質繊維板2に表裏面を貫通する貫通孔を形成することにより、木質繊維板2に対する植物Pの活着性を向上できるとともに、木質繊維板2自体に透水性を持たせることもできる。また、この木質繊維板2に表裏面を貫通する貫通孔により、屋外の緑化システムとして施工した場合、特に降雨時に緑化ボード1,1(木質繊維板2)の表面に溜まった水を貫通孔により確実に裏面側に抜くことができ、排水性に優れた緑化システムを提供することができる。また、表面に育生される植物Pの木質繊維板2に対する活着もより確実に行われる。
【0058】
また、緑化ボード1の木質繊維板2の裏面に、その木質繊維板2の異なる2辺に連通する複数の裏溝のみを設けてもよい。すなわち、木質繊維板2の裏面に裏溝を、木質繊維板2の対向する2辺間に亘るように残りの辺と平行に形成するか、或いは、木質繊維板2の裏面に裏溝を、木質繊維板2の隣接する2辺間に亘るように斜めに平行に形成する。これにより、散水時等に緑化ボード1,1間の隙間から木質繊維板2の裏面に入り込んだ水や、木質繊維板2の表裏側に連通するように設けられた上記貫通孔から入り込んだ水を裏溝によって確実に木質繊維板2全体に行き渡らせることができる。また、降雨等により大量に水が供給された場合においても、速やかに水を排出することができる。
【0059】
この貫通孔を設ける場合、さらに好ましくは、図示しないが、木質繊維板2に接するようにその裏面に保水シート又は透水シートを設けるのがよい。これにより、木質繊維板2の表面から供給された水が貫通孔を通って裏面側に到達し、さらに裏溝を伝って木質繊維板2の全面に供給されていく。このとき、隣り合う緑化ボード1,1同士の保水シート又は透水シートは互いに重なる様に施工されているのが望ましい。その理由は、保水シート又は透水シートの間に隙間がなくなり、保水シート又は透水シートの効果を有効利用できるからである。
【0060】
上記保水シートは、木質繊維板2の裏面(下面)に設置されて、隣り合う緑化ボード1,1の木質繊維板2,2間の隙間を通過した水を木質繊維板2全体に均一に浸透できることを目的としている。完全に水を通し易いものでもよいし、水を通し難いものでもよい。緑化システムの排水性が悪くなるため、完全に水を通さないシートは使用することができない。
【0061】
保水シートの直下に後述する防根シートがある場合、保水シートは水を透過又は保持する機能を有するシートが好ましく、例えば、0.2mm〜1mm程度の樹脂不織布や綿布等が好適に用いられる。これにより、隣り合う隣り合う緑化ボード1,1の木質繊維板2,2間の隙間を通過した水を木質繊維板2と防根シートとの間の保水シートを伝って木質繊維板2の裏面全体に行き渡らせることができる。
【0062】
このような、水を透過又は保持する機能を有するシートとしては、植物Pと分別廃棄の必要がなく、燃やしても水と二酸化炭素しか発生しない例えばポリエステル樹脂、PP樹脂やPE樹脂を用いるのが好ましい。このような材料としては、例えば東洋紡(株)の親水性不織布「ジャームガード」(商品名)等が挙げられる。
【0063】
また、いわゆる生分解性プラスチックを用いてもよい。生分解性プラスチックとしては、微生物系のバイオポリエステル樹脂やバクテリアセルロース樹脂、天然物系のセルロース変性物、キトサン/セルロール変性物や酢酸セルロース変性物、化学合成系のポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、エチレンテレフタレート/サクシネート樹脂、ポリプチレンサクシネート樹脂等、1ヶ月〜1年程度で土壌で分解されるものが好ましい。このような材料としては、例えば旭化成繊維(株)の「ベンネット」(商品名)やシンワ(株)の「Haibon」(商品名)等が挙げられる。
【0064】
透水シートとしては、透水耐根シートが最も好ましい。表面からの散水又は潅水パイプ7による潅水により供給された水が裏溝と透水シートとの間に移動し、木質繊維板2の裏面全体に水が拡散される。透水耐根透水シートとしては、一般的に市販されている耐根性を有し、透水性を有するものであればどのようなものでも使用することができるが、例えば厚さ0.1〜0.5mm程度の樹脂不織布や密に織られた樹脂織布、綿布等が用いられる。このような材料としては、例えば東洋紡(株)製の「コスモアングラス」(商品名)やスパンボンドポリエステル樹脂不織布「エコロベース透水シート」(商品名)等が挙げられる。
【0065】
(緑化システム)
本発明の実施形態1に係る緑化システムは、図6〜図9に示すように、上記のように、木質繊維板2に潅水パイプ7を組み付けた複数の緑化ボード1,1,…が各々の木質繊維板2表面を上側(表側)にして縦横マトリクス状に並べられかつ木質繊維板2裏側(下側)の潅水パイプ7,7,…同士が互いに通水可能に連結されたものであり、その状態で複数の緑化ボード1,1,…が設置対象体12(設置面)上に設置されている。
【0066】
上記設置対象体12とは、例えば建物の屋上を構成するコンクリートスラブ、建物の室内の床面や壁面、屋外駐車場の地面、道路の法面、切土や盛土の法面等である。
【0067】
具体的には、図9に示すように、設置対象体12上に耐根シート層13を介して排水層14が設けられ、その排水層14上に透水耐根シート層15を介して緑化ボード1,1,…が載置されている。
【0068】
(耐根シート層)
上記耐根シート層13は、設置対象体12の表面に設置されている。耐根シート層13は、厚みが0.6mm程度であり、例えばポリプロピレン樹脂(PP樹脂)によって構成されている。耐根シート層13は、その他にも例えばポリエステル不織布や、塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)等の樹脂シート等の植物Pの根を通さないような材料によって構成することができる。
【0069】
(排水層)
排水層14は、耐根シート層13の表面に設置されている。排水層14は、耐根シート層13の表面上で緑化システムの排水用の空間を確保するためのものである。排水層14は、例えば東洋紡(株)の「コスモジオ」(登録商標)等の厚みが10mm程度であるプラスチック網状成形体によって構成されている。また、プラスチック3次元立体成形体によって排水層14を構成することも可能である。
【0070】
プラスチック網状成形体とは、例えばナイロン、ポリプロプレン又は塩化ビニル等の剛性を有する0.5mm〜2mm程度の樹脂線材を、カールさせた状態で立体網目状に嵩高に絡めたもの、好ましくは線材接点が熱融着されたものである。また、プラスチック3次元立体成形体とは、ナイロン、ポリプロプレン又は塩化ビニル等の剛性を有する樹脂を、例えばインジェクションプレス等の成形方法により、波状、3次元網目状又はウェブ状に立体成形されたものである。プラスチック網状成形体及びプラスチック3次元立体成形体は、何れも空隙部を有しており、その空隙部によって排水が可能な樹脂成形排水マットとなっている。
【0071】
プラスチックからなる網状成形体の他の例としては、例えば、新光ナイロン(株)の「ヘチマロン」(登録商標)等を挙げることができる。また、プラスチックからなる3次元立体成形体の例としては、例えば、ELMICH社の「VersiCell」(登録商標)や、複数のスペーサが一方向に突出して形成された板状の格子部材からなるプラスチック成形体等を挙げることができる。
【0072】
排水層14は、上記プラスチック網状成形体及びプラスチック3次元立体成形体以外にも、排水用の空間を確保できるような耐圧性を有するマット状の他の部材によって構成することが可能である。
【0073】
(透水耐根シート層)
透水耐根シート層15は、排水層14の上に設置され、厚みが0.1mm程度である例えば東洋紡(株)の「コスモアングラス」(登録商標)等のポリエステル不織布によって構成されている。
【0074】
透水耐根シート層15は、水を透過させる一方、植物Pの根を通さないように構成されたシートである。透水耐根シート層15は、緑化ボード1(木質繊維板2)の裏面に接触して設けられている。この透水耐根シート層15を設けることにより、透水耐根シート層15と緑化ボード1との間を適度に保水し、緑化ボード1の裏面側に水を供給することが可能になる。
【0075】
一方、この透水耐根シート層15を設けないと、緑化ボード1を通過した根が排水層14に入り込んでしまう結果、分別廃棄が難しくなるだけでなく、排水層14における排水不良を招く原因となる。また、植物Pが育成された植物育成層と排水層14との分別も困難になる。
【0076】
透水耐根シート層15には、耐根性及び透水性を有する種々のシートを適用できる。例えば厚さ0.1mm〜0.5mm程度の樹脂不織布、密に織られた樹脂織布、又は綿布等を適用することが可能である。このような材料の他の例としては、例えばビルマテル(株)のスパンボンドポリエステル樹脂不織布である「エコロベース」(登録商標)等の透水シート等が挙げられる。
【0077】
そして、図6及び図7に示すように、上記複数の緑化ボード1,1,…は、各々の木質繊維板2裏面の組み付けられている潅水パイプ7端部の接続部8,9を、隣り合う緑化ボード1の同潅水パイプ7端部の接続部9,8に接続することで通水状態で連結されている。具体的に一例を示すと、図7の右側下部に示すように、2つの第1緑化ボード1A,1Aを隣り合わせて並べ、その一方の緑化ボート1Aの潅水パイプ7端部の第1接続部8に、他方の緑化ボート1Aの潅水パイプ7端部の第2接続部9を嵌合することで、両緑化ボード1A,1Aの潅水パイプ7,7同士を端部の接続部8,9で接続して両潅水パイプ7,7を通水状態で連結する。このような連結を順に繰り返して複数の第1緑化ボード1A,1A,…を直列に接続することで、その潅水パイプ7,7,…も配列方向に通水可能に接続される。そして、このような配列の端部位置で、図7の右側上端部に示すように、潅水パイプ7の向きを配列方向から変える必要があるときには、第2緑化ボード1Bを用い、その潅水パイプ7端部の第2接続部9を上記配列端部に位置する第1緑化ボード1Aの潅水パイプ7端部の第1接続部8に接続する。その隣にさらに第2緑化ボード1Bを配置し、その第2接続部9を隣接する第2緑化ボード1Bの第1接続部8に接続する。この第2緑化ボード1Bの隣でかつ最初の第1緑化ボード1A,1A,…の配列の隣に今度は第1緑化ボード1Aを配置し、その第2接続部9を上記隣接する第2緑化ボード1Bの第1接続部8に接続し、以後は複数の第1緑化ボード1A,1A,…を順に最初の配列状態で接続する。
【0078】
このような連結により、複数の緑化ボード1,1,…が各々の潅水パイプ7,7,…を直列に接続した状態でマトリクス状に連結される。尚、例えば図6で左下角部及び右上角部に位置する緑化ボード1,1は、緑化システムにおける潅水経路の出入口となっており、その潅水パイプ7,7端部の接続部8,9は図外の潅水装置に接続される。
【0079】
図8及び図9に示すように、こうして設置された複数の緑化ボード1,1,…上に軽量土壌による土壌層17が形成され、その土壌層17に植物Pが植生されている。図9中、18は各緑化ボード1,1間に充填された粒状物である。
【0080】
(植物)
上記植物Pは、種の状態で表面に存在し、緑化ボード1の施工後に水遣りすることで育生させてもよいし、既に発芽して繁茂状態に育生されたものでもよい。植物Pとしては、上に人間が歩いたり運動したりすることを考慮すると芝草(芝)が最も好適である。例えば芝草であれば、その芝草をマット状に成形し、ロール状にした巻芝や、300mm角程度の大きさに切った切芝を木質繊維板2上に直接載置してもよい。
【0081】
上を人間が歩いたりしないことを前提とするなら、つる性植物や、その他の草花等でもよい。
【0082】
また、植物Pは芝や他の植物に代えて苔を使用してもよい。その場合、苔は根がないため、剥がれ易いことから、特に緑化ボード1を載架する場合や、屋外で緑化ボード1を設置する場合等については、例えば表面を網状シートで覆い、網状シートと木質繊維板2とを固定一体化しておく等の配慮が必要である。
【0083】
したがって、この実施形態においては、緑化システムを形成する複数の緑化ボード1,1,…の各々が木質繊維板2を備えているので、その木質繊維板2が保水している水分により、緑化ボード1の表面側において植物Pを生育することが可能になる。また、この植物Pの生育に伴い木質繊維板2に植物Pの根が絡んでいたとしても、その植物Pの根と共に木質繊維板2を燃焼して廃棄することができ、廃棄する際の環境への負荷が容易に低減される。
【0084】
また、各木質繊維板2の裏面にパイプ溝4が形成され、そのパイプ溝4に、両端部に接続部8,9を有する潅水パイプ7が収容されていて、各緑化ボード1は木質繊維板2に潅水パイプ7を組み合わせたものとなっている。この潅水パイプ7端部の接続部8,9を隣り合う緑化ボード1の潅水パイプ7端部の接続部9,8と接続することで、両緑化ボード1,1同士が潅水パイプ7,7を通水状態で連結される。そのため、図6及び図7に示すように、複数の緑化ボード1,1,…を並べて設置し、それらに潅水するときには、各緑化ボード1に木質繊維板2のパイプ溝4に収容されて内有されている潅水パイプ7を、隣り合う緑化ボード1における同様の潅水パイプ7に両潅水パイプ7,7端部の接続部8,9で接続すれば、複数の緑化ボード1,1,…の潅水パイプ7,7,…が一連に連続することとなり、その連続した潅水パイプ7,7,…に通水することで、各緑化ボード1の木質繊維板2内に給水される。このことで、最小限の数の潅水装置で複数の緑化ボード1,1,…を潅水することができ、潅水システムがコンパクトになる。
【0085】
しかも、潅水パイプ7は木質繊維板2の裏面に形成したパイプ溝4内に収容され、その端部の接続部8,9のみが木質繊維板2の外に露出するので、緑化ボード1の表側から潅水パイプ7が隠蔽され、外観見映えを高めることができる。
【0086】
さらに、各緑化ボード1毎に潅水パイプ7が木質繊維板2のパイプ溝4に収容された状態で具備され、それらを接続するだけで潅水システムができ上がるので、その施工が容易になる。
【0087】
(緑化ボードの変形例)
図10及び図11に示すように、上記各緑化ボード1における木質繊維板2の裏面に、そのパイプ溝4を通りかつ木質繊維板2の異なる2辺に連通する連通溝6を設けてもよい。
【0088】
具体的に、これらの図に示される例では、第1緑化ボード1Aにおいて、その木質繊維板2の裏面に2条の連通溝6,6が、木質繊維板2の対向する2辺S1,S3間(2辺S2,S4間であってもよい)に亘りかつ残りの2辺S2,S4(2辺S1,S3であってもよい)と平行に延びるように形成され、この各連通溝6は途中でパイプ溝4の湾曲溝部4b,4dと2回交差した状態で該パイプ溝4に連通している。
【0089】
尚、連通溝6は、木質繊維板2の隣接する例えば2辺S1,S2間及び2辺S3,S4間(2辺S1,S4間及び2辺S2,S3間であってもよい)に亘って互いに平行に各辺S1〜S4に対し斜めに延びるように形成してもよい。連通溝6は曲線状のものであってもよく、その数も1条又は3条以上でもよい。
【0090】
こうすることで、木質繊維板2の裏面の連通溝6は同じ裏面に位置するパイプ溝4を通っているので、潅水パイプ7からパイプ溝4内に供給された水がパイプ溝4だけでなく連通溝6にも流れるようになり、その水は連通溝6から木質繊維板2の各辺S1〜S4に開口する連通溝6の側端部に案内される。この場合、木質繊維板2の裏面に上記した親水層2aを形成しておけば、木質繊維板2の裏面側を速やかに保水することができ、よって木質繊維板2の裏面側から水を十分に供給して、その保水性を大幅に高めることが可能となる。
【0091】
[実施形態2]
(緑化ボード)
図12〜図15は実施形態2を示し(尚、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する)、木質繊維板2に形成されるパイプ溝4の位置、その内部に収容される潅水パイプ7の形状等を変えたものである。
【0092】
すなわち、この実施形態では、上記実施形態1とは異なり、各緑化ボード1における木質繊維板2の表面にパイプ溝4が形成されている。また、緑化ボード1は実施形態1と同様に第1及び第2の2種類の緑化ボード1A,1Bがあり、これらは木質繊維板2表面のパイプ溝4の配置形状が異なっている。すなわち、第1緑化ボード1Aにおいては、例えば図12及び図13に示すように、木質繊維板2表面のパイプ溝4は、一端が矩形状の木質繊維板2の第1辺S1の長さ方向略中央に接続されかつ他端が、第1辺S1に対向する第3辺S3まで木質繊維板2の全体を延びたものである。
【0093】
一方、第2緑化ボード1Bにおいては、例えば図14及び図15に示すように、木質繊維板2表面のパイプ溝4は、一端が矩形状の木質繊維板2の第1辺S1の長さ方向略中央に接続されかつ他端が、第1辺S1に対向する第3辺S3に向かって木質繊維板2の半分程度まで直線状に延びる第1直溝部4iと、一端が第1直溝部4iの他端に略直角に連続し、他端が木質繊維板2の第4辺S4に向かって該第4辺S4まで直線状に延びる第2直溝部4jと、一端が第1直溝部4iの他端(第2直溝部4jとの接続部)に略直角に連続し、他端が木質繊維板2の第4辺S4と対向する第2辺S2に向かって該第2辺S2まで直線状に延びる第3直溝部4kとを備え、第1〜第3直溝部4i〜4kはいずれも略同じ長さを有する。そして、第2直溝部4j及び第3直溝部4k同士は連続して一直線状に延び、第2直溝部4jの他端部及び第3直溝部4kの他端部にはそれぞれ接続部収容部4h,4hが形成されている。
【0094】
そして、潅水パイプ7も第1及び第2緑化ボード1A,1Bに合わせて2種類があり、第1緑化ボード1Aの木質繊維板2表面のパイプ溝4に収容される潅水パイプ7は、該パイプ溝4と同じ長さのもので、その一端部に第2接続部9が、また他端に第1接続部8がそれぞれ取り付けられている。
【0095】
第2緑化ボード1Bの木質繊維板2表面のパイプ溝4に収容される潅水パイプ7は、一端に第2接続部9を有しかつ上記第1直溝部4iに収容される第1パイプ部7aと、一端がこの第1パイプ部7aの他端部に連結部7cを介して通水可能に接続され、上記第2直溝部4j又は第3直溝部4kに収容される第2パイプ部7bとからなり、この第2パイプ部7bの他端部に第1接続部8が取り付けられている。図14に示すように、第2パイプ部7bは第1パイプ部7aを回動軸心としてその回りに回動可能とされており、この回動により第2パイプ部7bは第2直溝部4i又は第3直溝部4kのいずれか一方に選択的に収容されるようになっている。その他の構成は実施形態1と同様である。尚、この場合も、木質繊維板2の表面に親水層2aを形成しておけば、木質繊維板2の表面側を速やかに保水することができる。
【0096】
(緑化システム)
この実施形態2においても、緑化システムは、複数の緑化ボード1,1,…が各々の木質繊維板2表面を上側(表側)にして縦横マトリクス状に並べられかつ隣り合う緑化ボード1,1の木質繊維板2,2表側の潅水パイプ7,7同士が互いに通水可能に連結され、その状態で複数の緑化ボード1,1,…は設置対象体12(設置面)上に設置されている。
【0097】
すなわち、例えば、複数の第1緑化ボード1A,1A,…を直列に各々の第1タイプの潅水パイプ7,7,…が一直線状になるように並べ、隣接する両緑化ボード1,1の一方の第1接続部8に他方の緑化ボード1の第2接続部9を接続して両者の潅水パイプ7,7同士を通水可能に連結する。また、設置スペースの角部等で潅水方向を変えるときには、第1緑化ボード1Aの隣に第2緑化ボード1Bを設置し、両方の接続部8,9同士を接続する。
【0098】
その際、第2緑化ボード1Bの木質繊維板2表面には第2直溝部4j及び第3直溝部4kが形成され、潅水パイプ7の第2パイプ部7bは第1パイプ部7aを回動軸心として回動可能であるので、緑化ボード1,1,…の潅水方向に応じて適宜に第2パイプ部7bを図14矢印にて示すように回動させて第2直溝部4j又は第3直溝部4kの一方に収容するように選択すればよく、緑化ボード1,1,…の設置が容易となる。
【0099】
このように複数の緑化ボード1,1,…が敷き詰められて設置された後、実施形態1と同様に、その緑化ボード1,1,…の各木質繊維板2の上に軽量土壌の土壌層17が形成され、その土壌層17に植物Pが植生される。従って、この実施形態においても実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
(緑化システムの変形例)
尚、この緑化システムにおいて、上記のように緑化ボード1,1,…の上に軽量土壌の土壌層17を形成して、その土壌層17に植物Pを植生するのに代え、図16(図9をベースに作成する)に示すように、各緑化ボード1の表面にパイプ保護シートを載置してパイプ保護シート層20を設け、そのパイプ保護シート層20の表面に直接植物Pを植生するようにしてもよい。
【0101】
上記パイプ保護シート層20となるパイプ保護シートは、潅水パイプ7上に植物Pが育成できかつ保水機能がある材料が好適に用いられ、例えば樹脂不織布や樹脂織布が好適に用いられる。また、植物Pと分別して廃棄する必要がなく、燃やしても水と二酸化炭素しか発生しない例えばPP樹脂やPE樹脂を用いるのが好ましい。また、いわゆる生分解性プラスチックを用いるのも好ましい。生分解性プラスチックとしては、微生物系のバイオポリエステル樹脂やバクテリアセルロース樹脂、天然物系のセルロース変性物、キトサン/セルロール変性物や酢酸セルロース変性物、化学合成系のポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、エチレンテレフタレート/サクシネート樹脂、ポリプチレンサクシネート樹脂等であり、1ヶ月〜1年程度で土壌で分解されるものが好ましい。このような材料としては、例えば旭化成繊維(株)製の商品名「ベンネット」、シンワ(株)製の商品名「Haibon」等が挙げられる。
【0102】
こうすれば、各緑化ボード1表面上のパイプ保護シート層20の表面に直接植物Pが植生されているので、表面に植物Pが植生したパイプ保護シート層20が配置され、その下側に保水用の木質繊維板2が設けられていて、潅水システムの簡略な緑化システムが得られる。
【0103】
[その他の実施形態]
尚、上記実施形態1に係る緑化システムにおいて、緑化ボード1,1,…の上に土壌層17を形成するのに代えて、各緑化ボード1の木質繊維板2の表面に直接植物Pを植生するようにしてもよい。このように、各緑化ボード1の木質繊維板2の表面に直接植物Pを植生させることで、表面に植物Pが植生されかつ裏面に潅水パイプ7が配置された木質繊維板2を有する、潅水システムの簡略な緑化システムが得られる。また、木質繊維板2自体に植物Pが植生するので、土壌層17等が不要であり、軽量な緑化システムとなる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、最小限の数の潅水装置で複数の緑化ボードを潅水することができ、潅水システムのコンパクト化及びその施工の容易化を図ることができるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0105】
P 植物
1,1A,1B 緑化ボード
2 木質繊維板
4 パイプ溝
4g 溝幅拡大部
4h 接続部収容部
6 連通溝
7 潅水パイプ
8 第1接続部
9 第2接続部
12 設置対象体
17 土壌層
20 パイプ保護シート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面にパイプ溝が形成された木質繊維板と、
上記木質繊維板片面のパイプ溝内に収容されかつ両端部に接続部が設けられ、木質繊維板内に給水するための潅水パイプとを備え、
上記潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部と接続することで、両緑化ボード同士が通水状態で連結可能とされていることを特徴とする緑化ボード。
【請求項2】
請求項1において、
木質繊維板におけるパイプ溝のある片面に親水層が形成されていることを特徴とする緑化ボード。
【請求項3】
請求項1又は2において、
パイプ溝のある片面は木質繊維板の表面であることを特徴とする緑化ボード。
【請求項4】
請求項1又は2において、
パイプ溝のある片面は木質繊維板の裏面であることを特徴とする緑化ボード。
【請求項5】
請求項4において、
木質繊維板の裏面に、パイプ溝を通りかつ木質繊維板の異なる2辺に連通する連通溝が設けられていることを特徴とする緑化ボード。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの複数の緑化ボードが、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、
上記各緑化ボード上に土壌層が形成されていることを特徴とする緑化システム。
【請求項7】
請求項3の複数の緑化ボードが、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、
上記各緑化ボードの表面にパイプ保護シート層が設けられ、該パイプ保護シート層の表面に直接植物が植生されていることを特徴とする緑化システム。
【請求項8】
請求項4又は5の複数の緑化ボードが、各々の潅水パイプ端部の接続部を隣り合う緑化ボードの潅水パイプ端部の接続部に接続することで通水状態で連結され、
上記各緑化ボードの木質繊維板の表面に直接植物が植生されていることを特徴とする緑化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−223158(P2012−223158A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95309(P2011−95309)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】