説明

緑化用土壌および緑化用土壌の製造方法

【課題】石炭灰に含まれるアルカリ成分を充分に不溶化若しくは洗浄するとともに、石炭灰に含まれる重金属を低コスト且つ短期間で不溶化若しくは洗浄することができ、さらには肥料バランスに優れた緑化用土壌および緑化用土壌の製造方法を提供する。
【解決手段】石炭灰と、未分解の植物発生材と、この未分解の植物発生材の発酵を促進する発酵副資材と、中和剤との混合物を好気条件下で発酵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化用土壌および緑化用土壌の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭灰には、植物の生育を阻害するアルカリ成分が含まれている。そのため、石炭灰を緑化用土壌に利用するには、アルカリ成分を不溶化若しくは洗浄する必要がある。また、石炭灰には、環境汚染の原因となる重金属が含まれていることもある。そして、かかる石炭灰を緑化用土壌に利用するには、重金属を不溶化若しくは洗浄する必要もある。そこで、従来、このような石炭灰を緑化用土壌に利用するための技術として、例えば、特許文献1〜3に示す技術が開発されている。
【特許文献1】特開2002−212554号公報
【特許文献2】特開2001−220271号公報
【特許文献3】特開2000−8037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、次に掲げる問題がある。すなわち、従来の技術では、石炭灰に含まれるアルカリ成分を充分に不溶化若しくは洗浄することが困難であり、石炭灰を緑化用土壌の母材として利用するなど、大量の石炭灰を緑化用土壌に利用することができないという問題がある。また、従来の技術では、石炭灰に含まれる重金属を不溶化若しくは洗浄するために、不溶化材を添加し若しくは化学的処理を施す必要があり、高コスト化し、長期化してしまうという問題もある。さらに、従来の緑化用土譲は、肥料バランスに欠けており、必ずしも緑化用土譲に適していないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、石炭灰に含まれるアルカリ成分を充分に不溶化若しくは洗浄するとともに、石炭灰に含まれる重金属を低コスト且つ短期間で不溶化若しくは洗浄することができ、さらには肥料バランスに優れた緑化用土壌および緑化用土壌の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、石炭灰と、未分解の植物発生材と、この未分解の植物発生材の発酵を促進する発酵副資材と、中和剤との混合物を好気条件下で発酵させたこととする。
【0006】
このような構成によれば、石炭灰に含まれるアルカリ成分を充分に不溶化若しくは洗浄することができるので、大量の石炭灰を緑化用土壌に利用することが可能となる。また、石炭灰に重金属が含まれている場合には、その重金属を低コスト且つ短期間で不溶化若しくは洗浄することもできる。また、本発明の緑化用土譲は、肥料バランスに優れており、緑化用土譲に適している。
【0007】
また、前記石炭灰は、重金属を含むこととする。
また、前記重金属は、ホウ素、鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、六価クロムのうち少なくとも1種以上を含むこととする。
また、前記中和剤は、過リン酸石灰、重過リン酸石灰などのリン酸質肥料を含むこととする。
【0008】
また、本発明は、石炭灰と、未分解の植物発生材と、この未分解の植物発生材の発酵を促進する発酵副資材と、中和剤との混合物に対してエアレーションを行い、前記未分解の植物発生材を発酵させることとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、石炭灰に含まれるアルカリ成分を充分に不溶化若しくは洗浄するとともに、石炭灰に含まれる重金属を低コスト且つ短期間で不溶化若しくは洗浄することができ、さらには肥料バランスに優れた緑化用土壌および緑化用土壌の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る緑化用土壌及び緑化用土壌の製造方法について説明する。
【0011】
===緑化用土壌===
本実施形態の緑化用土壌は、石炭灰と、未分解の植物発生材と、発酵副資材と、中和剤との混合物(以下、「発酵資材」ともいう)を好気条件下で発酵させたものである。そして、本実施形態の石炭灰には、植物の生育を阻害するアルカリ成分が含まれており、さらには、環境汚染の原因となる重金属が含まれている。かかる重金属としては、例えば、ホウ素、鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、ヒ素等が挙げられる。
【0012】
また、未分解の植物発生材は、分解されていない植物発生材であり、植物発生材は、草木材チップや生ごみなどの有機質を含み、発酵に必要な土着菌が付着している。かかる植物発生材としては、例えば、植物の幹部、枝部、小枝部、根部などの草木に由来する材料であり、草木材チップの場合、山間部でのダム工事や道路工事等に伴い発生する森林伐採木や伐採根、緑地、街路樹、公園、植栽樹木などの剪定枝葉、枯損樹木、建築現場から発生する廃木材、おがくず、落ち葉、刈草、刈芝等が挙げられる。また、生ごみ、食品工場や事業所から発生する食品原材料くずなど、または畜産事業所から発生する牛、馬などの家畜の糞尿が混じる敷料なども利用できる。なお、敷料とは、畜舎の床に敷いて、家畜を保護したり、糞尿を吸収させるためのものであり、一般的に、敷わらという稲わらを用いるが、鋸くず、粉砕パーク、爆砕籾殻なども用いる。
【0013】
また、発酵副資材は、未分解の植物発生材の発酵を促進する材料であり、小麦フスマや末粉等の発酵栄養剤や、草木質の破砕物を発酵する発酵微生物、pH緩衝剤、腐植酸類、カルシウム化合物およびマグネシウム化合物等のミネラル類等を含有するものを採用できる。発酵副資材としては、特に、アラビノースやガラクトースなどの天然高分子を生成できる糖類を含むものが好ましく、より具体的には、日清製粉株式会社製の「シャトルコンポ(商品名)」や「アクセルコンポ(商品名)」、「アシストコンポ(商品名)」、「カロリーコンポ(商品名)」等がある。かかる発酵副資材は、石炭灰と混合すると適度な連続空隙を形成して発酵菌の活性を促すため、好気条件下での発酵を促進する。なお、上記の天然高分子には、キレート剤と同様の作用があり、石炭灰に含まれる重金属を不溶化する作用がある。
【0014】
また、中和剤は、石炭灰に含まれるアルカリ成分を中和させるためのものであり、可溶性のリン酸またはリン酸塩を多く含む化学肥料が好ましく、特に、過リン酸石灰、重過リン酸石灰等のリン酸質肥料を含むものが好ましい。リン酸質肥料を含む中和剤は、肥料バランスの向上に寄与するとともに、石炭灰に含まれる重金属を不溶化する作用もある。
【0015】
上記の緑化用土壌は、石炭灰に含まれるアルカリ成分を充分に不溶化若しくは洗浄することができるので、大量の石炭灰を緑化用土壌に利用することが可能となる。さらに、石炭灰に含まれている重金属を低コスト且つ短期間で不溶化若しくは洗浄することもできるので、環境汚染の原因となることもない。また、リン酸やカリウム等の肥料バランスにも優れており、緑化用土譲に適している。なお、上記の効果を最大限発揮するために、発酵資材の配合比を適宜調整することとし、例えば、石炭灰90重量%に対して未分解の植物発生材10重量%を混合し、その混合物に対して発酵副資材5重量%、中和剤3重量%を配合する。
【0016】
===緑化用土壌の製造方法===
次に、図1,図2A及び図2Bを参照しながら、本実施形態の緑化用土壌の製造方法について説明する。図1は緑化用土壌の製造方法を説明するための基本フロー図、図2A及び図2Bは緑化用土壌の製造方法を施工現場で実施する場合の説明図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の緑化用土壌の製造方法は、S101〜S107の各工程で構成されている。まず、石炭灰10を発酵ヤードXに運搬して盛土しておく(S101)。また、草木質(伐採木)を発酵ヤードXの別の場所に運搬して自走式木材破砕機等により一次破砕をした後(S102)、より細かく二次破砕を行うことにより前記草木質の破砕物(以下、「伐採材チップ」ともいう)を製造する(S103)。そして、製造した草木質の破砕物(「未分解の植物発生材」に相当する)と、発酵副資材と、中和剤とを盛土に添加した後(S104)、ミキサー等により混合・攪拌し(S105)、土の切返しと散水とを行い、発酵過程を経て(S106)、緑化用土壌1を製造する(S107)。なお、発酵過程(S106)では、前述の発酵資材を適切な水分条件に調整した上でエアレーションを行い、未分解の植物発生材を好気条件下で発酵させることとする(養生期間:1ヶ月以上3ヶ月未満)。但し、エアレーションを行う際には、発酵資材の温度を過度に低下させないようにする。また、発酵条件を適切に調整するために、養生期間中に最低1回、その全量を攪拌混合して均質化することが好ましい。
【0018】
このような緑化用土壌の製造方法を施工現場で実施する形態としては、小規模形態で実施する場合(図2A参照)と大規模形態で実施する場合(図2B参照)とがある。以下、各々説明する。
【0019】
<小規模形態で実施する場合>
図2Aに示すように、緑化用土壌の製造方法を小規模形態で実施する場合、例えば、施工現場が幅4〜5m、高さ2m程度等のような場合には、まず、ダンプアップした石炭灰10をバックホウ31にて撒出し、その上から発酵副資材30及び中和剤40を散布する。次に、このバックホウ31のアタッチメントをバケット33aから、例えば、油圧式ジョークラッシャー等のような攪拌・破砕機能を備えた特殊バケット33b(例えば、ガラナイザー等)に交換し、この特殊バケット33bを用いて石炭灰10と発酵副資材30及び中和剤40を一次混合する。さらに、この一次混合物32に未分解の植物発生材である伐採材チップ20を撒出し、同様にして一次混合物32と伐採材チップ20とを二次混合する。二次混合物35は所定場所に集積しておく。なお、石炭灰10と伐採材チップ20及び発酵副資材30とは比重が著しく異なるため、通常、これらを均一に混合することは困難である。しかし、特殊バケット33bを用いて攪拌することにより、これらを均一に混合することが容易となる。
【0020】
一方、ブロア、送気管、砕石、金網等を設置して堆肥ヤード36を整備しておき、二次混合物35をこの堆肥ヤード36上に堆積し、エアレーションを行いながら好気条件下で養生する。エアレーションにより発酵に必要な空気量(例えば、0.9m/min等)が確保されるため、発酵条件が厳しい冬季であっても上記の養生が可能となる。堆積した二次混合物35内には、温度計及びpH計測器等を埋設しておき、温度及びpH等を計測しながら養生条件を適切に維持管理する。このようにして二次混合物35を養生すると、本発明の緑化用土壌が製造される。なお、二次混合物35の養生中には、バックホウ31を用いて適宜切り返しを行う。この切り返しにより好気条件を維持することが可能となる。以上の工程により、緑化用土壌の製造を小規模で実施することができる。
【0021】
<大規模形態で実施する場合>
また、図2Bに示すように、緑化用土壌の製造方法を大規模形態で実施する場合、例えば、緑化用土壌を継続的且つ大量に製造するような場合には、自走式土質改良機37(例えば、日立建機SR−G2000等)、バックホウ31a,31b、及び大型ダンプ38等の各種の機械を用いる。まず、火力発電所等で発生した石炭灰10をバックホウ31aにて大型ダンプ38に積み込んで所定の仮置き場まで運搬し、集積する。一方、人口樹林を維持するための間伐やダムの流木などから伐採材を採取し、あるいは廃材をチップ化して伐採材チップ20を用意しておく。次に、集積した石炭灰10をバックホウ31bにて自走式土質改良機37内に投入するとともに、伐採材チップ20と発酵副資材30及び中和剤40をこの自走式土質改良機37内に投入する。自走式土質改良機37内では、石炭灰10、伐採材チップ20、発酵副資材30及び中和剤40が均一に攪拌混合される。これらの混合物41は、土塊が細粒化(例えば、粒径20mm以下)されており、自走式土質改良機37外へと噴出され、堆積される。なお、自走式土質改良機37を移動させることにより、堆積場所を適宜変更することができる。そして、堆積された混合物41を好気条件下で養生することより緑化用土壌が製造される。但し、養生前の混合物と緑化用土壌には、説明の便宜上、同一符号41を付して説明している。なお、大規模形態で実施する場合には、養生後に大量の緑化用土壌41をバックホウ31で掬い、これを大型ダンプ38等に積み込み易くするために、エアレーション用の配管、砕石等を地面下に設置しておくことが好ましい。以上の工程により、緑化用土壌41の製造を大規模で実施することができる。
【0022】
このようにして製造した緑化用土壌41は、緑地への適用が可能であり、例えば、施工現場においてブルドーザー39等で敷き均し、盛り土造成によって平地を緑化することができる。さらには、緑化用土壌41を吹き付け材として用いることにより、傾斜面を緑化することもできる。傾斜面を緑化する場合には、一般的の吹き付け工法で用いられる機械、設備等を使用すればよい(例えば、吹き付け機90、吹き付けホース91、延長ホース92、空気圧縮機93、発電機94、ベルトコンベア95、計量ミキサー96、材料ホッパ97、タイヤショベル98等)。
【0023】
なお、本実施形態によれば、無機系の廃棄物である石炭灰と、有機系の廃棄物である未分解の植物発生材(例えば、伐採材チップ等)とを同時に発酵処理することで、廃棄物の削減と、有用資材である緑化用土壌の製造とを同時に実現することが可能となる。従って、社会のゼロエミッション化がより一層進み、環境改善にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】緑化用土壌の製造方法を説明するための基本フロー図である。
【図2A】緑化用土壌の製造方法を小規模形態で実施する場合の説明図である。
【図2B】緑化用土壌の製造方法を大規模形態で実施する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10 石炭灰
20 草木質の破砕物(未分解の植物発生材)
30 発酵副資材
40 中和剤
41 緑化用土壌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰と、未分解の植物発生材と、この未分解の植物発生材の発酵を促進する発酵副資材と、中和剤との混合物を好気条件下で発酵させたことを特徴とする緑化用土壌。
【請求項2】
前記石炭灰は、重金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の緑化用土壌。
【請求項3】
前記重金属は、ホウ素、鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、六価クロムのうち少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の緑化用土壌。
【請求項4】
前記中和剤は、過リン酸石灰、重過リン酸石灰などのリン酸質肥料を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の緑化用土壌。
【請求項5】
石炭灰と、未分解の植物発生材と、この未分解の植物発生材の発酵を促進する発酵副資材と、中和剤との混合物に対してエアレーションを行い、前記未分解の植物発生材を発酵させることを特徴とする緑化用土壌の製造方法。
【請求項6】
前記石炭灰は、重金属を含むことを特徴とする請求項5に記載の緑化用土壌の製造方法。
【請求項7】
前記重金属は、ホウ素、鉛、亜鉛、カドミウム、水銀、六価クロムのうち少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項6に記載の緑化用土壌の製造方法。
【請求項8】
前記中和剤は、過リン酸石灰、重過リン酸石灰などのリン酸質肥料を含むことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の緑化用土壌の製造方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2007−28907(P2007−28907A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212096(P2005−212096)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】