説明

線材圧延機

【課題】サイズフリー圧延の範囲を拡げることができ、また型替えに伴うライン停止時間を短縮してライン稼働率を高め得る簡単なパススケジュールを構成することが可能な線材圧延機を提供する。
【解決手段】線材圧延ラインLsの最終に、2台の4ロール圧延機P1,P2を1セット(S1)としたものを2セット以上(S1〜S3)設置した。セットS1を前段のパスとしセットS2を後段のパスとするサイズフリー圧延と、セットS1を前段のパスとしセットS3を後段のパスとするサイズフリー圧延とを、製品サイズ範囲に応じて切り替える。同一サイズ範囲の製品を製造するのに、従来は切替え可能な2系列の上流パススケジュールを必要としたのが、1系列のパススケジュールのみで足りるから、サイズ変更時の型替えが不要になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数台の4ロール圧延機を組み合わせた線材圧延機に係り、特に、線材圧延ラインの最終に配設することにより、高寸法精度で安定操業でき、またパススケジュールを簡略にして生産能率を向上させることができる線材圧延機に関する。
【0002】
【従来の技術】図5は、一般的な2ロール圧延機を使用した線材圧延ラインのパススケジュールの一例を示したものである。一辺150mmの断面角形のビレットが、図示されない粗圧延機群を経た後、第7スタンド〜第12スタンドからなる中間圧延機群及び第13スタンド〜第18スタンドからなる仕上げ圧延機群により、最終的に所定の製品サイズ(線径)を有する断面円形の線材に連続圧延される。このパススケジュールは、第7〜第18の各スタンドの2ロール圧延機により、楕円形のロール孔型を有するオーバルパスと、円形のロール孔型を有するラウンドパスを最終パス迄交互に繰り返して圧延するものである。しかし、製品サイズ毎に専用孔型を用意することが必要で、サイズ変更毎にラインを一旦停止してスタンドの組み替えを行わねばならない。図示の場合、9通りのラインを用意することにより9種類の製品サイズを得ているが、この9サイズの製品を製造するには、9回のライン停止と76台の組替えスタンドが必要である。
【0003】これに対して、最近、同一孔型のロールを使用し、そのロール間隙を変更することにより、無段階に異なるサイズの製品を高寸法精度で製造できる『サイズフリー圧延技術』が提案されるに至った。図6は、サイズフリー圧延のパススケジュールの一例を示したもので、第M1スタンド〜第M4スタンドの2ロールで中間圧延機群を構成し、第F1スタンド〜第F8スタンドの2ロール圧延機で仕上げ圧延機群を構成すると共に、最終の仕上げ圧延スタンドである第P1及び第P2の2スタンドにはそれぞれ4ロール圧延機を圧下方向を45°ずらして配置し、サイズフリー範囲が異なる2通りのパスラインを設けたものである。
【0004】一方のパスラインで製品サイズ9.0〜10.0mm迄の線材がサイズフリー圧延でき、他方のパスラインで製品サイズ10.1〜11.1mm迄の線材がサイズフリー圧延できるから、前記図5のパススケジュールの9サイズの製品を含めて、9.0〜11.1mmの範囲内であれば自由な製品サイズが得られ、しかもサイズ変更に伴うライン停止回数は2回だけで済み、さらにはサイズ変更に必要な組替えスタンド数も24スタンドで足りる。
【0005】このように、圧延ラインに2台1組の4ロール圧延機を組込むことで、型替えなしで製造できる製品サイズの範囲が増やせるから、サイズ変更の型替えに伴うライン停止時間が短縮されラインの稼働率が高くなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、現今、線材圧延におけるサイズフリー圧延範囲の更なる拡大と共に生産能率のより一層の向上が求められている。そこで、本発明は、サイズフリー圧延の範囲を拡げることができ、また上流パスのパススケジュールを簡略化できてライン停止時間が短く稼働率の極めて高いパススケジュールを構成することが可能な線材圧延機を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に係る線材圧延機は、線材圧延ラインの最終に、2台の4ロール圧延機を1セットとしたものを2セット以上、各セットの出側材が円形断面となるように設置したことを特徴とする。また、請求項2に係る線材圧延機は、上記請求項1に係る発明である線材圧延機において、各セット毎に、2台の4ロール圧延機を1台の共用モータで駆動するようにしたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態で、4台の4ロール圧延機を有する線材圧延機を、連続仕上圧延ラインの最終に設置したものである。すなわちこのラインには、図示されない粗圧延機群,中間圧延機群を経た母材Sを円形断面に加工する仕上げ圧延機群Lsの最終に、圧下方向を45°ずらして直列に並べた2台の4ロール圧延機を1セットとして、2セット直列に配設されている。前段のセットS1の2台の4ロール圧延機P1,P2は、1台の共用モータM1で駆動し、後段のセットS2の2台の4ロール圧延機P3,P4は他の1台の共用モータM2で駆動するようにしてある。
【0009】このように、2台の4ロール圧延機を1台のモータで駆動する構成としたため、一般的に行われている2台の4ロール圧延機をそれぞれ別のモータで駆動する独立駆動方式のようにモータ同士のスペースが干渉することがなく、各セットS1,S2内の4ロール圧延機を接近して配置できる。こうして、各セットS1,S2におけるスタンド間の距離を短くすると、スタンド間での材料の回転をなくすことが可能になり、通常のスタンド間距離の場合に必要とされる高価なローラガイドが不要になるという利点がある。
【0010】しかし、各セットS1,S2間の距離は、各モータM1,M2のスペース干渉があるため長くならざるを得ない。そのためセット間で材料の回転を生じる。この材料回転が後段のセットS2の第1パス(4ロール圧延機P3)の圧下の位相に影響を与えないようにする必要がある。そこで、各セットの出側材が円形断面となるように、セットS1の4ロール圧延機P1,P2及びセット2の4ロール圧延機P3,P4のミル構成を、1パス目が圧延(断面角形)、2パス目が圧延と同時に成形(断面円形)となるように設定してある。
【0011】なお、仕上げ圧延機群Lsの構成は、特に限定はされない。図示のものは、n台のスタンドLs1 〜Lsn からなる仕上げ圧延機の圧延方向を、水平−垂直に交互に入れ換えてH−V交互配列されているが、その他どんなものでも良い。この場合の線材圧延は次のように行われる。先ず、断面が正方形の母材Sを、図外の粗圧延機群のフラットロールにより圧下方向を鉛直方向と水平方向とに交互に変えながらカリバレス圧延して、母材断面積を徐々に小さくしていく。続いて、図外の中間圧延機群を経た後、仕上げ圧延機群Lsのロール孔型で交互に鉛直方向と水平方向とから圧下し、円形断面とする。
【0012】この円形断面の線材を、図2に示すように、前段のセットS1(1セット目)の上流側4ロール圧延機P1の孔型で断面略正方形に圧延する。これを下流側4ロール圧延機P2の孔型で断面ほぼ円形に圧延成形する。圧延機P1,P2間のスタンド間距離が短くて材料は回転しないから、ローラガイド無しでも次パスの圧延機P2への圧下の位相が変わることがなく、円形断面に正確に圧延成形できる。
【0013】続いて、後段のセットS2(2セット目)の上流側4ロール圧延機P3の孔型で断面略正方形に圧延する。それを下流側4ロール圧延機P4の孔型で断面円形に圧延成形して製品サイズにする。このときも、前記セットS2におけると同様に、ローラガイドを通さずに次パスの圧延機P4で円形断面に正確に圧延成形できる。
【0014】こうして、各セットの出側材はいずれも円形断面に成形されているので、1セット目S1と2セット目S2とのセット間距離が長くても、セットS1の下流側4ロール圧延機P2で圧延成形したものをセットS2の上流側4ロール圧延機P3で圧下する際の圧下の位相を無視して安定操業できる。図3に、本発明の第2の実施の形態を示す。
【0015】この場合は、線材の連続仕上げ圧延機群Lsの最終に、圧下方向を45°ずらして直列に並べた2台の4ロール圧延機を1セットとしたものを3セット設置している。セットS1(4ロール圧延機P1,P2)とセットS2(4ロール圧延機P3,P4)及びセットS1とセットS3(4ロール圧延機P5,P6)はそれぞれ直列に接続され、一方、セットS2,S3は互いに独立に並列されている。
【0016】このように、2台の4ロール圧延機を1セットとしたものを3セット設置したことにより、仕上げ圧延機群Lsで構成される上流パスのパススケジュールを統合することができる。以下に従来のサイズフリー圧延のパススケジュールと対比して説明する。図4は、従来のサイズフリー圧延例として図6に示したものとほぼ同様のパススケジュールである。すなわち、オーバルパスとラウンドパスを交互に直列に配置した6スタンドからなる仕上げ圧延機群Ls1 の最終に、圧下方向を45°ずらした2台の4ロール圧延機からなり、径0.5〜1.5mmの範囲で圧下減径できるサイズフリー範囲1.0mmのセットS1を備える上側のパスラインと、同様の仕上げ圧延機群Ls2 と2台の4ロール圧延機からなり、同じくサイズフリー範囲が1.0mmのセットS2を備える下側のパスラインとを、切り替え可能に2ライン並列している。
【0017】この2ライン並列のパススケジュールによれば、上側パスラインでは、セットS1への入側材の線径が10.5mmの場合、製品サイズ9.0〜10.0mmの範囲でサイズフリー圧延できる。また、下側パスラインに切り替えれば、セットS2への入側材の線径が11.6mmの場合、製品サイズ10.1〜11.1mmの範囲でサイズフリー圧延できる。
【0018】これに対して、図3の本発明では、各セットS1,S2,S3がそれぞれ上記同様に径0.5〜1.5mmの範囲で圧下減径できるものとしたとき、セットS1への入側材の線径を12.0mmにすると、セットS1の出側材の線径は10.5〜11.5mmとなる。これを次のセットS2に送れば製品サイズ9.0〜10.0mmの範囲でサイズフリー圧延できる。また、セットS1からセットS3に送れば、製品サイズ10.0〜11.0mmの範囲でサイズフリー圧延できる。
【0019】すなわち、本発明によれば、従来は仕上げ圧延機群Ls1 とLs2 との2ラインで構成していた上流パスを、1ラインの仕上げ圧延機群Lsに統合することができる。そのため、従来必要であったサイズ変更時の型替えが不要となり、結局型替えに伴うライン停止時間が短縮されるから、ラインの稼働率が高く生産能率が向上する。
【0020】なお、この第2の実施の形態によりパススケジュールを簡略化するに当たり、各セットS1,S2,S3の2台の4ロール圧延機の駆動は、各別の専用モータによる独立駆動方式であっても良い。しかし、1台の共用モータで駆動する方式にすると上記第1の実施の形態の効果も得られる。
【0021】
【発明の効果】以上、説明したように、請求項1に係る発明によれば、線材圧延ラインの最終に、2台の4ロール圧延機を1セットとしたものを2セット以上設置したことにより、サイズフリー圧延の範囲を拡げることができ、且つまた上流パスのパススケジュールを簡略化してサイズ変更時の型替えに伴うライン停止時間を短縮することができ、その結果、ラインの稼働率を高め生産能率が向上するという効果を奏する。
【0022】また、請求項2に係る発明によれば、各セット毎に、2台の4ロール圧延機を1台の共用モータで駆動することにより、スタンド間距離を短くできて材料回転が防止され、その結果、高価なローラガイドを省くことができるという効果が得られる。更に、各セットの出側材が円形断面となるように設置することで、次セットでの圧下の位相に無関係となり、その結果、線材連続圧延の安定操業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】4ロール圧延機からなる本発明の第1の実施の形態の連続仕上圧延ラインの模式図である。
【図2】図1の4ロール圧延機の各パスの圧延材断面形状を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の連続仕上圧延ラインの模式図である。
【図4】4ロール圧延機を組み込んだ従来のサイズフリー圧延のパススケジュールの一例である。
【図5】4ロール圧延機を用いない従来の線材圧延のパススケジュールの一例である。
【図6】4ロール圧延機を組み込んだ従来のサイズフリー圧延のパススケジュールの他の例である。
【符号の説明】
Ls 線材圧延ライン
P1〜P6 4ロール圧延機
S1〜S3 2台1組の4ロール圧延機のセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 線材圧延ラインの最終に、2台の4ロール圧延機を1セットとしたものを2セット以上、各セットの出側材が円形断面となるように設置したことを特徴とする線材圧延機。
【請求項2】 各セット毎に、2台の4ロール圧延機を1台の共用モータで駆動するようにした請求項1記載の線材圧延機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2000−237803(P2000−237803A)
【公開日】平成12年9月5日(2000.9.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−37812
【出願日】平成11年2月16日(1999.2.16)
【出願人】(000001258)川崎製鉄株式会社 (8,589)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】