説明

線材撚り合わせ装置

【課題】 複数の線材w1を案内させるための初期作業が簡便に行え、また撚り合わせピッチを簡便に変更すること。
【解決手段】 長さ途中に開放部46aを形成された少なくとも2つの金属管46には、金属管46を摺動する摺動体51が設けられる。引出ロッド49は、摺動体51に枢結され開放部46aを覆うように位置されるロッド50と、金属管46に枢結された支柱2とからなり、ロッド50と支柱2とは互いに枢結されている。ロッド50の内面にはロッド50が開放部46aを覆った閉鎖状態のときに金属管46の内周面に添うように位置される環状部53とを備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の線材、繊維、糸、或いは被覆電線や樹脂チューブなどを単線状に撚り合わせに使用される線材撚り合わせ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1又は2には、電線の撚り合わせ装置が開示されている。この撚り合わせ装置は、前側へ向かうほど漸次に近接する複数の前後向き回転中心線のそれぞれの回りへ自転するように支持台上に支持された少なくとも2つの回転案内体を備えている。そして、これら回転案内体のそれぞれの前後方向途中箇所に電線案内ローラを備えている。回転案内体のそれぞれがその案内する1本の被覆電線を元側から前側へ案内する過程で電線案内ローラが該被覆電線に捩り変形を付与する。ここに、捩りとは1本の被覆電線などの処理対象物をこれの中心線回りへ回転変形させることを言うものであり、以下この意味で使用する。
【0003】
この電線撚り合わせ装置においては、各回転案内体の回転により、撚り合わされる各被覆電線が供給移動される過程で捩り変形を連続的に付与される。回転案内体の出口では、複数の被覆電線が安定したピッチ及び圧密度で撚り合わされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−40261号公報
【特許文献2】特許第2671112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の撚り合わせ装置は、この電線撚り合わせ装置の初期作業として、作業者は、被覆電線に付与すべき捩り力の大小に関連して電線案内ローラの取り付け位置を変更し、被覆電線のスリップ量を変化させている。電線案内ローラは回転案内体に組みつけられており、処理すべき被覆電線ごとに、これを手作業により各回転案内体の電線供給用の軸管に挿通させなければならない。このさい、狭い場所に存在するローラに掛け回し、続いてその対応する電線送出用の軸管に挿通させる作業が必要である。これらの処理は何れも極めて面倒で手間が掛かるものであり、作業の能率化を阻む要因となっている。
【0006】
そこで本発明の目的は、各回転案内体及びリンクに被覆電線などの線材を案内させるための初期作業が簡便に行える撚り合わせ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の線材撚り合わせ装置は、夫々が長さ途中に開放部を有し、前側へ向かうほど漸次互いに近接する前後向き回転中心線のそれぞれの回りの同一方向へ回転するように支持された複数の中空管と、対応する中空管の開放部を覆う位置と離反する位置との間で回動するように一端が各中空管に枢結された複数のロッドと、前記各ロッドの動きに連動し、ロッドが開放部を覆う位置にあるとき、中空管の回転中心線が通過するように開口を位置し、ロッドが離反する位置にあるとき中空管の回転中心線からずれて開口を位置する環状体とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る線材撚り合わせ装置によれば、中空管の回転中心線が環状部内を通過するように位置付けたとき、中空管の元側の開口から線材を挿入することで、線材を環状部に挿通させることができる。これにより、各線材は中空管に案内された状態となる。
【0009】
また各中空管に線材が挿通した後、中空管の回転中心線から離れる位置に環状部を位置付けると、各環状部により線材に抵抗が付与され、各線材は各中空管の回転により捩り力を付与される。これに関連して、各中空管の前側において夫々の線材は互いにその捩りにより自ら撚り合わされ単線状になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】線材撚り合わせ装置2を示す斜視図である。
【図2】線材撚り合わせ装置2の一部を示す図である。
【図3】撚り合わせ装置2を使用した実施例を示す斜視図である。
【図4】長尺線材供給部の容器4を示す斜視図である。
【図5】長尺撚り合わせ線収容部の容器5を示す斜視説明図である。
【図6】短尺線材供給案内管部20を示す斜視図である。
【図7】ロッド145を示す図である。
【図8】ロッド145の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を次の実施例により詳細に説明する。
図1は線材撚り合わせ装置2を示す斜視図であり、図2は線材撚り合わせ装置2の一部を示す図である。図中、方向a0は線材撚り合わせ装置2の左右方向であり、i2は前後方向である。
【0012】
支持台30は、基礎台31と、基礎台31上面の後側i02に方向a0に沿った状態で起立状に固定された支持部32とを有する。支持台30はさらに、前側i01に支持部33を有しており、支持部33はガイド34と駆動装置35と上部支持板36とからなっている。
【0013】
ガイド34は、前後一対の下部支持板37a、37bと、左右一対の案内軌道部材38a、38bと、摺動台39とを備えている。一対の下部支持板37a、37bは、並行に配置され、基礎台31の前側に方向a0に沿った起立状に固定されている。一対の案内軌道部材38a、38bは下部支持板37a、37b間に並行に架設されている。摺動台39は案内軌道部材38a、38bに前後移動自在に支持されている。摺動台39上面の左右位置には縦棒部材40a、40bが起立されており、これら縦棒部材40a、40bの上端に上部支持板36の下端水平部36aが固定されている。駆動装置35は基礎台31上面に固定されたサーボモータ41と、摺動台39の左右幅中央の前後向き雌ネジ39aに螺合され一対の下部支持板37a、37b間に回転自在に架設されたネジ軸42とを備えている。サーボモータ41の出力軸41aにはウオームギヤ43が固定されると共に、ネジ軸42の前部にはホイールギヤ44が固定され、これら双方のギヤ43、44が連動可能に噛み合わされている。こうして、支持部33は、サーボモータ41が正側へ回転したとき、上部支持板36を前側i01へ変位させ、逆側へ回転したとき後側i02へ変位させる。
【0014】
支持部32及び支持部33には前側i01へ向かうほど漸次に互いに近接する複数の回転中心線j1、j1、j1、j1のそれぞれの回りへ自転する複数(少なくとも2つは必要であり、図示例では4つとされている。)の中空管45が架設状に設けられている。各中空管45は直状の金属管46を備えており、各金属管46の中心線がその対応する回転中心線j1に合致されている。
【0015】
支持部32は軸受47を介して、各金属管46の傾斜変位を許容した状態で回転自在に支持している。また、軸受47は前後方向への移動を規制した状態で各金属管46を支持している。支持部33の上部支持板36は中空管45の前寄り箇所をその対応する軸受48を介して金属管46の傾斜変位を許容した状態で回転自在に支持している。また、軸受48は、前後方向の相対変位を許容した状態でも金属管46を支持している。支持部32の軸受47として、例えば自動調心ころ軸受を使用することができ、また上部支持板36上の軸受48は例えば自動調心ころ軸受に加えて金属管46の中心線方向の摺動変位を案内するための適宜な摺動軸受を使用することができる。
【0016】
各金属管46には、その外周面の一部に外嵌された摺動体51と、引出ロッド49が設けられている。この引出ロッド49に対応して、各金属管46の長さ途中で支持部32と支持部33との間箇所には開放部46aが形成されている。
【0017】
各引出ロッド49は、対応する開放部46aを覆うように位置されるロッド50と、リンク52とからなり、ロッド50とリンク52とが金属管46の長さ方向に直列に配置され枢結されている。ロッド50の内面箇所には、環状部53が形成されている。各ロッド50はその対応する金属管46の外周面に外嵌される溝形体とされていて対応した開放部46aの全体を覆うことのできる大きさである。各摺動体51は対応する金属管46に摺動変位可能に外嵌されている。各摺動体51は、上部支持板36のa0方向の変移に伴って、金属管46の外周を摺動する一方、金属管46と同体状に回転する。そして各ロッド50の前端部とその対応する摺動体51の後端部とはスプリングヒンジ54を介して連結されており、各ロッド50はその対応するスプリングヒンジ54の弾力に抗して元側の先端が外方へ揺動変位されている。各リンク52は直状の帯板部材で形成されていて一端箇所がその対応するロッド50の長さ中央寄り箇所にピン55を介して枢結されると共に他端寄り箇所がその対応する金属管46にピン56を介して枢結されている。そして各リンク52の他端にはバランスウエイト57が固定されている。
【0018】
各引出ロッド49は、スプリングヒンジ54とピン55とピン56の枢結により、摺動体51の前後運動を、回転中心線j1を中心とした環状部53の直径方向の移動運動に変換している。
【0019】
各環状部53は細径部材をU字形に屈曲されたものであり、ロッド50の内面に固着されている。各環状部53は、該ロッド50が金属管46の長さ方向に平行となって開放部46aを完全に覆った位置に位置したとき、U字形の曲面外周が金属管46の内孔内周面に添って接する。
【0020】
各引出ロッド49は、支持部33の上部支持板36が図2に示す基準位置m0(最前方位置である)に位置されたとき、図2Aに示すように、摺動体51、ロッド50及びリンク52が、ピン56を支点として金属管46に沿って引き伸ばされた状態となる。このとき、環状部53の開口の位置を回転中心線j1が通る状態となる。また、環状部53のU字形曲面外周が金属管46の内孔内周面に添って接することにより、被服線材W1を金属管46に挿通するさいに、金属管46と環状部53との間に挟みこまれることが無い。
【0021】
一方、図2Bに示すように、上部支持板36が基準位置m0から後側i02へ距離i3だけ変位されたとき、ロッド50及びリンク52はピン56を支点として、かつスプリングヒンジ54及びピン55を枢結点として引き起こされた状態となる。環状部53のU字形曲面外周は、回転中心線j1を外れ、かつ金属管46の外側に達している。
【0022】
支持部33と支持部32との間で基礎台31の上面には各中空管45を回転させるための駆動装置としての電動モータ58が前後向きに固定されている。一方、支持部32の後面中央寄り位置には大径歯車59が前後向き線回りの回転自在に装設され電動モータ58の出力軸と連動連結されている。
【0023】
そして、各金属管46の元側端部は支持部32よりもさらに後側へ張り出されると共に外周面箇所に小径歯車60が固定されている。各小径歯車60は大径歯車59に同時に噛み合わされ、電動モータ58の出力軸の回転をその対応する中空管45に同時に伝達する。これにより、各金属管46は、同一方向に回転する。
【0024】
次に上記のように形成された線材撚り合わせ装置の使用例及び作用について説明する。
【0025】
まず、被覆電線w1を、線材撚り合わせ装置2の中空管45に案内する。この処理を行うさい、サーボモータ35を必要に応じて作動させることにより、引出ロッド49のロッド50は図2Aに示す状態としておく。被覆電線w1を金属管46の開口k1内に差し込む。このとき、被覆電線w1は環状部53のU字形内を通過した後、金属管46の前端開口を経て線材撚り合わせ装置2の前側に到達する。これにより被覆電線w1は中空管45に案内された状態となる。
【0026】
次に各中空管45に案内された状態の被覆電線w1を前方へ引いて、その先端部を手指により絡ませておく。
【0027】
そして図示しない操作盤のスイッチを操作することにより、サーボモータ41を被覆電線w1の撚り合わせ程度に対応した必要量だけ回転させる。サーボモータ41は前後案内機構34を介して摺動台39を後側i02へ変位させ、引出ロッド49のロッド50を図2Bに示す状態へ変位させる。これにより環状部53は連動して移動し、金属管46の回転中心線j1から離間した状態となる。
【0028】
環状部53の位置はウオームギヤ43及びホイールギヤ44のセルフロック機能やサーボモータ41に組み込まれたブレーキ手段などによる制動機能により安定的に維持されている。この後、線材撚り合わせ装置2の電動モータ58を作動させる。
【0029】
引出ロッド49を構成するロッド50やリンク52は傾斜し金属管46から回転中心線j1から離間するように張り出した状態で、金属管46と共に回転する。どの金属管46に設けられる引出ロッド49は、どれも同じ位相で回転するため、複数の金属管46の間隔が比較的狭いにも拘わらず、引出ロッド49同士が衝突し合うことは生じない。
【0030】
このような被覆電線w1と中空管45との関係において、引出ロッド49の環状部53はその対応する金属管46の開放部46aを経て該金属管46内に挿通された被覆電線w1をその対応する中空管45上で山形状に屈曲させる。この結果、該被覆電線w1はその対応する引出ロッド49から該中空管45の回転中にこの回転と同一方向の捩り力を付与されるものとなる。すなわち、サーボモータ41により摺動体51をより後方に変移させればさせる程、ロッド50が立ち上がり、環状部53は金属管46の回転中心線j1から離間した状態となる。これにより、環状部53の内側を通過する被覆電線w1に与える抵抗が大きくなり、被覆電線w1は中空管45の回転により引きづられ強い撚りが与えられる。その結果、中空管45から出る被覆電線w1は、短いピッチで互いに撚り合わされることになる。
【0031】
上記した捩りを付与された各被覆電線w1は、それぞれ捩り変形した状態で各中空管45の前側に達する。ここに到達した複数の被覆電線w1は、それぞれ自らの捩りにより互いに絡み合い単線状に撚り合わされて線w2となる。
【0032】
図3は本実施例による線材撚り合わせ装置2に対して、被覆電線w1を供給する側と撚り合わせ線w2を回収する側を付加した例を示す斜視図である。
【0033】
図中、1は一体状の組付定置台であり、床面に定置される下部1A、垂直面部1B、及び上部1Cからなっている。垂直面部1Bには主要部としての線材撚り合わせ装置2が図示しない支持機構を介して垂直面部1Bに直交した水平回転中心線a1回りの揺動可能に設けられている。線材撚り合わせ装置2は水平回転中心線a1回りへ揺動されることにより、2つの状態のうちの任意な何れか一方の状態に固定化されるものとなっている。上記2つの状態のうちの一方は、前部2aが下方へ向けられた図示のような下向き姿勢状態であり、他方は、前部2aが正面視で左側a01へ向けられた横向き姿勢状態である。
【0034】
線材撚り合わせ装置2の上側に位置した上部1Cには、線材撚り合わせ装置2の後部2bに向け線材w1を繰り出す長尺線材供給管部3が設けられている。長尺線材供給部3は複数(図示例では4つ)の縦向きの容器4、中空管5、線材縦案内管6、アーム部材7、線材案内プーリ8及び案内棒部材9を備えている。
【0035】
各容器4は縦向きの円筒体4aの上端面を開口されると共に下端面を円形板で閉鎖されて底面4bとされている。各容器4の底面4bは中空管5の上端部にこれと同芯状に固定されている。4dは縦向き容器4内に底面4bと同心の円軌跡上の3等分位置のそれぞれに起立姿勢で半径方向の位置変更可能に固定された巻線保持用治具としての棒部材である。
【0036】
図3に戻り、中空管5は組付定置台1の上部1Cに水平方向の間隔を置いて、各々が縦方向の回転軸周りに回転するように配設されている。線材縦案内管6は各中空管5を上方へ延長する状態に位置されるもので各中空管5に抜き差し自在に上方から嵌挿されている。各線材縦案内管6の上部外周面から斜め上方へ向けアーム部材7が張り出し状に固着されており、このアーム部材7の先部に横向き軸8aを介して線材案内プーリ8が回転自在に装着されている。
【0037】
容器4と線材撚り合わせ装置2との間に、長尺線材供給部3の一部を形成するものとして、線材案内フレキシブル管10、管保持板11及び、この管保持板11に固定された口金部材12が配設されている。各線材案内フレキシブル管10は上端をその対応する線材縦案内管6の下端に回転継手を介して相対回転自在に連通され、下端をその対応する口金部材12に連通状に結合されている。管保持部11は線材撚り合わせ装置2の後部2bの真上位置に水平状に位置され組付定置台1の垂直面部1Bに固定されている。
【0038】
線材撚り合わせ装置2の下側に位置した下部1Cには、線材撚り合わせ装置2の前部2aから送り出された撚り合わせ線w2を収容する長尺撚り合わせ線収容部13が設けられている。長尺撚り合わせ線収容部13は撚り合わせ線排出案内管14及び容器15からなっている。撚り合わせ線排出案内管14は縦向きの直状短管とされており、線材撚り合わせ装置2の前部2aの真下に位置されている。この撚り合わせ線排出案内管14は線材撚り合わせ装置1の箱形カバー16から下方へ同体状に延出された鈎形支持板17の水平部の先部に固着されている。
【0039】
図5は容器15周辺を示す斜視説明図である。容器15は、縦向きの円筒体15aと、中央箇所に円形透孔15b1を形成され円筒体15aの上端面を覆った状態に固着される環状板15bと、円筒体15aの下端面を覆った状態に固着され底面15cを形成する円形板15c1とで形成されている。容器15の底面15cは、組付定置台1の下部1Cに回転のみ自在に装設された縦回転軸19の上端部に同芯状に固定されている。円形板15c1の下面には比較的小径の円筒部材15dが同心状に固着され、容器15の補強及び縦回転軸19の覆いカバーとして機能している。
【0040】
この容器15は、分割組立可能な構造となっている。円筒体15a及びこれに固着された環状板15bを1つの直径位置で縦面に沿って2分割し、一方の半円筒部15a1は底面15cに固着された状態であり、他方の半円筒部15a2は底面15cに固着されてない状態となっている。そして、2つの半円筒部15a1、15a2は一方の半円筒部15a1の外周面に固着された複数の結合板片c1と、他方の半円筒部15a2の外周面の対応位置に形成されたネジ孔部c2とがボルトc3で結合されることにより、撚り合わせ線w2の収容が可能となる構成である。図5Aは2つの半円筒部15a1、15a2がボルトc3で結合されて一体状となった状態であり、一方、図5Bはボルトc3が取り外されて、他方の半円筒部15a2が単独状に分離された状態を示している。このように、容器15は円筒体15a及び環状板15bの半分が分離除去されることにより、内方にロール状になって収容される撚り合わせ線w2がロール状のまま取り出されるものである。
【0041】
図3に戻り、図面右側には、線材撚り合わせ装置2の右側には、短尺線材供給案内部20が設けられている。この短尺線材供給案内管部20は線材供給位置d1と同数の線材直状挿通管21をコ字形支持板22a及び2枚の方形結合板22bを介して平行に結合している。各線材直状挿通管21は伸縮可能な二重管構造となっており、伸長状態下で例えば数十cm程度の長さにされると共に内孔の直径を線材w1の数倍程度とされる。コ字形支持板22aの中央面部e1が図示しない支持機構を介して組付定置台1の垂直面部1Bに直交した水平回転中心線a2回りの揺動可能に装設されている。短尺線材供給案内管部20は水平回転中心線a2回りへ揺動操作されることにより、2つの状態のうちの任意な何れか一方の状態に固定化されるものとなっている。この2つの状態のうちの一方は、図3に示すように各線材直状挿通管21が垂直姿勢とされる不使用状態であり、他方は図6に示すように各線材直状挿通管21が水平姿勢とされる使用状態である。使用状態では、各線材直状挿通管21の前側開口21aがその対応する線材供給位置d1と水平方向で正対される。
【0042】
横向き姿勢状態の線材撚り合わせ装置2の、撚り合わせ線送出側である前部2a側には、その前部2aから送り出される単線状の撚り合わせ線w2を連続的に収容するための短尺撚り合わせ線収容部23が形成されている。この短尺撚り合わせ線収容部23は、容器24とその支持機構25からなっている。24aは容器24の回転変位を検出する回転センサである。容器24は、長尺撚り合わせ線収容部13の容器15に準じた構造であり、横向きの円筒体25と、環状板26と、底面27を形成する円形板とで形成されている。容器24の底面27は、左右方向a0に直交して配置されており、組付定置台1の垂直面部1Bの左端面1aに支持機構25を介して支持されている。支持機構25は左右方向線a3回りの揺動可能に装着された支持アーム25aを備えており、底面27はこの支持アーム25aの先部に左右方向線a4回りの回転自在に装着されている。支持アーム25aは矢印方向g1へ揺動操作されることにより、容器24を2つの異なる状態に位置させる。ここで、2つの異なる状態とは次のような状態を言う。即ち、一方は容器24が線材撚り合わせ装置2の前部2aに左右方向a0で正対する状態である。そして他方は容器24が例えば図6に示すような位置h1に移動されて線材撚り合わせ装置2の前部2aと対向する範囲から完全に外れた状態である。
【0043】
図3において、線材撚り合わせ装置2は、基礎台31上の構成部材全体の外周囲を図3に示す箱形カバー16で覆った状態となっている。各金属管46の後端開口k1が該箱形カバー16の後側外方へ開放されており、図3中の線材供給位置d1に対応する。また該箱形カバー16の前面部には図1に示す各金属管46の前端開口を箱形カバー16の前側外方へ開放するための比較的大きな図示しない開口が形成されている。
【0044】
組付定置台1には長尺線材供給部3の縦向き容器4と、長尺撚り合わせ線収容部13の容器15とを回転させるための容器駆動手段61が形成されている。この容器駆動手段61は電動モータ62、下側縦軸63、上側縦軸64、変速機構部65、下部ベルト伝動部66、上部ベルト伝動部67を備えている。電動モータ62及び変速機構部65は組付定置台1の垂直面部1Bの後面に固定されており、下側縦軸63及び上側縦軸64は図示しない軸受を介して組付定置台1の垂直面部1Bの後面に回転のみ自在に支持されている。変速機構部65は下側縦軸63と上側縦軸64の回転速度比を変更するためのもので、図示しない入力部材を操作することにより該回転速度比が任意に変更されるようになっている。そして、電動モータ62と下側縦軸63とがベルト伝動機構68を介して連動連結されている。
【0045】
また下部ベルト伝動部66は下側縦軸63の下端部と容器15の固定された縦回転軸19とを連動連結している。一方、上部ベルト伝動部67は縦向き容器4の固定された中空管5と上側縦軸64の上部とを連動連結している。こうして、縦向き容器4と容器15はそれぞれ任意な回転速度で回転されるものとなっている。
【0046】
次に上記のように形成された線材撚り合わせ装置2の使用例及び作用について説明する。
【0047】
ここでは、処理対象としての線材w1は被覆電線であり、長尺の被覆電線w1を処理する場合と短尺の被覆電線w1を処理する場合とに分けて説明するものとする。
【0048】
〈長尺の被覆電線w1を処理する場合〉
図3に示すように、線材撚り合わせ装置2はこれの前部2aを下向きとした状態に固定させる。そして、短尺線材供給案内管部20はその線材案内方向を縦向きとして組付定置台1の右端部の横方へ張り出さない状態とし、また短尺撚り合わせ線収容部23は必要に応じ左右方向線回りへ移動させ、作業の邪魔にならない位置に固定させる。
【0049】
長尺線材供給部3の各縦向き容器4の内方に被覆電線w1の巻線束w0を収容させる。このとき、線材縦案内管6を中空管5から上方へ抜き外す。そして線材縦案内管6、アーム部材7、線材案内プーリ8及び案内棒部材9を一体状のまま、支障のない位置に移動させる。この状態の下で、水平姿勢の巻線束w0を各縦向き容器4の真上から挿入して複数の位置決め棒部材4dに外嵌させ、縦向き容器4の底面4b上に同心に載置する。この後、線材縦案内管6、アーム部材7、線材案内プーリ8及び案内棒部材9を元位置に復旧させる。
【0050】
そして各縦向き容器4に対応する部位ごとにその対応する被覆電線w1を案内させる処理を行う。即ち、縦向き容器4内の巻線束w0の被覆電線w1を解いてこれの先端側から案内棒部材9先端の環状部9aに挿通させ上方へ導いて線材案内プーリ8の上半分側の外周溝に案内させる。続いて、下方へ導いて線材縦案内管6、中空管5及び線材案内フレキシブル管10の内孔に上方から差し込むようにして挿通させ、管保持板11に固定された口金12を経てこれの下側まで導く。
【0051】
次にこのように導いた被覆電線w1を線材供給位置d1に導き、線材撚り合わせ装置2の中空管45に案内させる。線材撚り合わせ装置2から出現した被覆電線w1の先端同士を撚り合わせ線排出案内管14の下側で単線状に絡ませて容器15内に固定する。
【0052】
この後、線材撚り合わせ装置2の電動モータ58を作動させると共に、容器駆動手段61の電動モータ62を作動させる。
【0053】
一方、電動モータ62の回転により下側縦軸63及び下側ベルト伝動部66を経て長尺撚り合わせ線収容部15の容器15を開店させ、また下側縦軸63及び変速機構部65及び上側ベルト伝動部67及び中空軸5を経て容器4を回転させる。このさい変速機構部65による回転速度変更機能により、容器4の回転速度が容器15のそれよりも幾分大きくされる。線材撚り合わせ装置2により、複数の被覆電線w1が撚り合わされて単線状となった長さは、撚り合わされた各被覆電線w1が螺旋状に変形されるため各被覆電線w1の長さ方向の移動量よりも短くなるからである。
【0054】
撚り合わせ線w2の撚り合わせピッチを変更したいときは、作業者は図示しない操作盤のスイッチを操作することにより、サーボモータ41を正逆任意な方向へ回転作動させる。このさい、撚り合わせピッチを大きくしたいときは、サーボモータ41を正側へ回転させる。これにより上部支持板36が前側i01へ移動され、引出ロッド49の環状部53がその対応する金属管46の回転中心線j1に近づくように変位される。この結果、その対応する被覆電線w1に付与される捩り力が減少され、撚り合わせピッチが大きくなる。逆に、撚り合わせピッチを小さくしたいときは、サーボモータ41を逆側へ回転させる。これにより上部支持板36が後側i02へ移動され、引出ロッド49の環状部53がその対応する金属管46の回転中心線j1から離れるように変位される。この結果、その対応する被覆電線w1に付与される捩り力が増大され、撚り合わせピッチが小さくなる。
【0055】
また撚り合わせ線w2の撚り合わせピッチの変更や被覆電線w1の性質の相違などにより、中空管45の回転速度を調整する。
【0056】
〈短尺の被覆電線w1を処理する場合〉
図6に示すように、線材撚り合わせ装置2はこれの前部2aを左向きとした状態に固定させる。そして、短尺線材供給案内管部20は支持機構25を手作業により移動して撚り合わせ線排出案内管14の左側真横に位置させる。
【0057】
この後、10m以下程度の長さからなる短尺の被覆電線w1を多数用意し、短尺線材供給案内管部20の各線材直状挿通管21にこれの後端開口k1から差し込み、各線材直状挿通管21内を経てこれの前端開口の左外方へ到達させる。この後、各被覆電線w1の先端を各線材直状挿通管21の左真横に存在した線材供給位置d1まで引き移動させる。そして、引き移動させた各被覆電線w1を、既述したと同様に、線材撚り合わせ装置2の各中空管45に案内させて、線材撚り合わせ装置2の前側に到達させ、さらに撚り合わせ線排出案内管14内を通過させる。複数の被覆電線w1の先端は、手作業で単線状に絡み合わせる。そして線材撚り合わせ装置2のサーボモータ41を必要に応じ作動させて引出ロッド49により付与される捩り力を適当な大きさとする。この後、電動モータ58を作動させる。これにより短尺の被覆電線w1は長尺の被覆電線w1の場合に準じて線材撚り合わせ装置2の前部2aと撚り合わせ線排出案内管14との間にて撚り合わされて撚り合わせ線w2とされ、漸次に左側a01へ移動され、容器24の内方へ環状板26の円形透孔を通じて供給される。
【0058】
撚り合わせ線w2が容器24へ供給されると、撚り合わせ線w2は重力で垂れ下がりつつ自身の剛性により変形を適当に抑制されながら押し込まれる。これにより撚り合わせ線w2は回転自在な容器24を左右方向線a4回りへ自転状に回転させながらロール状に変形され集積されるのである。
【0059】
回転センサ24aはこの撚り合わせ線w2の収容中の容器24の回転変位を検出する。この検出量に基づき、被覆線材w1の送り量に対する撚り合わせ線w2の形成量が検出できる。この関係を用いて、上記した長尺の被覆電線w1を処理する場合における容器4の回転量と容器15の回転量との関係を変速機構部65による回転速度変更機能に設定することができる。
【0060】
先の実施例においては、各引出ロッド49の姿勢を摺動体51の前後運動により定めていたが、これを手動にて行う実施例を図7に示す。
【0061】
本実施例における中空管45は、前後の金属管146b、146cに分けられており、プレート146dにより一線状に連結されている。プレート146dは、金属管146b、146cの外周を半周回って、金属管146b、146cを保持している。また、プレート146dは、金属管146b、146cの外周接線方向に伸びる部分146eを有している。部分146eには、ロッド156を枢結する軸156と、軸156を中心とした円弧形状のスリット146fが設けられる。スリット146fには、いずれの位置にも固定可能なピン155が設けられている。図では、ピン155は、スリット146fの最上部に固定されている様子が示されている。ロッド149は、軸156をその長さ方向に摺動するスリット149aを有しており、スリット149a内には、常にピン155を一方側に付勢するバネ149bが内蔵されている。ロッド149の他端には、ピン155に引っ掛けるための溝149cが設けられている。また、バランサー157がロッド156の反対側に設けられており、金属管146b、146cを回転させたときに回転中心に重心が来るように重さ調整をしている。
【0062】
環状部153は細径部材をU字形に屈曲されたものであり、ロッド149の内面に固着されている。各環状部153は、ロッド149が金属管146b、cの長さ方向に平行となって開放部146aを覆った位置に位置するとき(図8A)、U字形の曲面外周がプレート146dの内周面に添って接する。このとき、環状部153の開口の位置を回転中心線j1が通る状態となる。
【0063】
一方、環状部153を回転中心線j1から離間させるには、軸156を中心にロッド149を引き上げ(図8B)、バネ149bを圧縮する。その後、バネ149bを解放し、ピン155に溝149cに引っ掛ける。ロッド149の動きに連動し、環状部153を回転中心線j1から離間する。
【0064】
次に上記のようにロッド149の使用例及び作用について説明する。まず、ロッド149のロッド50は図8Aに示す状態としておく。被覆電線w1を、金属管146cに案内する。被覆電線w1は環状部153のU字形内を通過した後、金属管146bの前端開口に到達する。そして、ロッド149をピン155に引っ掛ける。これにより環状部153は金属管146b、cの回転中心線j1から離間した状態となる。ピン155の位置は、予め撚りピッチに対応して決めておく。後は、先に示した実施例のように、中空管146cに固定された小径歯車60を回転させて、金属管146b、cを回転させることにより被覆電線w1は、それぞれ自らの捩りにより互いに絡み合い単線状に撚り合わされる。
【0065】
上記した実施例及びその使用例は次のように変形して差し支えない。
即ち、長尺線材供給部3の各縦向き収容筒体4の数は少なくとも2つ以上であればよいのであり、このさい撚り合わされる被覆電線w1の数は2本から縦向き容器4の数までの範囲となる。また3つ以上の縦向き容器4を設けたときは少なくとも2つのものに巻線束w0を収容させることで、2本以上の被覆電線w1に対して撚り合わせ線w2が得られるものとなる。
【0066】
また摺動体51は金属管46上の異なる位置、例えば開放部46aと支持部32との間に位置させることも差し支えない。この場合は、上部支持板36は前後変位させる必要はなくなるが、摺動体51を前後変位させるために支持板36と同様の前後変位可能な支持板36を摺動体51と支持部32の間に設けることが必要となる。
【0067】
また、実施例においては、リンク52後ろ側に、ロッド50を前側に配置したが、この位置関係は逆でも良い。
【0068】
さらに処理対象は被覆電線w1のみならず他の線材、繊維、チューブなどであってもよいが、環状部53との摩擦抵抗の少ない素材では直状管部材の回転が伝播せずに撚りがかからないため、樹脂が望ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 組付定置台
2 線材撚り合わせ装置
3 長尺線材供給部
13 長尺撚り合わせ線収容部
15 縦向き有底筒容器
15a 円筒体
15b 環状板
15b1 円形透孔
15c1 円形板
19 縦向き回転軸
20 短尺線材供給案内管部
23 短尺撚り合わせ線収容部
30 支持台
32 元側支持部
33 前側支持部
35 駆動手段
45 回転案内体
49 リンク
46a 開放部
46 直状管部材
47 軸受
48 軸受
50 蓋体
51 摺動体
53 環状部
54 弾性部材(スプリングヒンジ)
56 支柱
57 バランスウエイト
i01 前側
i2 前後方向
i02 後側
j1 前後向き回転中心線
w0 巻線束
w1 線材
w2 撚り合わせ線




【特許請求の範囲】
【請求項1】
夫々が長さ途中に開放部を有し、前側へ向かうほど漸次互いに近接する前後向き回転中心線のそれぞれの回りの同一方向へ回転するように支持された複数の中空管と、
対応する中空管の開放部を覆う位置と離反する位置との間で回動するように一端が各中空管に枢結された複数のロッドと、
前記各ロッドの動きに連動し、ロッドが開放部を覆う位置にあるとき、中空管の回転中心線が通過するように開口を位置し、ロッドが離反する位置にあるとき中空管の回転中心線からずれて開口を位置する環状体とを有することを特徴とする線材撚り合わせ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記各中空管に設けられ、前記中空管を摺動するとともに中空管と同体状に回転する複数の摺動体と、
前記各中空管に設けられ、一端が前記ロッドの他端に、他端が前記摺動体に枢結したリンクと、
前記複数の摺動体に連結されて、直状管部材上を摺動させる駆動装置とを有することを特徴とする線材撚り合わせ装置。
【請求項3】
請求項1記載の線材撚り合わせ装置において、前記複数の中空管を前後で支持する支持部を有し、後側の支持部が前記複数の中空管を回転自在に支持し、前側の支持部が前記複数の中空管を回転自在に支持し、前側支持部と後側支持部との間に前記開放部が形成され、前記摺動体が該開放部の前側に位置されることを特徴とする線材撚り合わせ装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−285702(P2010−285702A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138801(P2009−138801)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(509164625)
【出願人】(509164636)
【Fターム(参考)】