説明

線材梱包装置

【課題】中空コイル状に巻回した線材を巻き束の状態で収納でき、かつ収納した状態のままスムーズに線材を引き出すことを可能とした線材梱包装置を提供すること。
【解決手段】本体ケース内には軸部が突設され、巻芯体は、前記軸部に係合し、前記中空コイル状に巻回された線材の周方向に回転可能に保持され、該巻芯体は、平行に配された第一の板状部材と第二の板状部材との2枚の板状部材によりなるものであって、第一の板状部材は、該板状部材本体の外周に沿って複数の折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部を第二の板状部材の方向へ、かつ第一の板状部材本体と90度未満の角度を成すように折り曲げられて、第二の板状部材に形成された係合孔に係合され、これにより、前記複数の折り曲げ部が、第一の板状部材本体から第二の板状部材の方向へ向かって縮径する軸芯を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材梱包装置に関するものであり、より詳しくは、様々な配線や配管などに利用される合成樹脂製あるいは金属製の各種ケーブルその他の線材を中空コイル状に巻回した巻き束の状態で収納でき、かつそのように収納した状態のままスムーズに線材を引き出すことを可能とした線材梱包装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したような線材梱包装置としては、下記特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示されている梱包装置は、前面に前穴を有する箱本体に、1本のケーブルを同心円状に整列かつ数段巻いた整列巻き束を収納し、前記整列巻き束の上に内径より径の小さい貫通孔を有するパルプモールドを取り付けた中蓋を置いたことを特徴とするものである。
【0003】
確かに、この従来の梱包装置によれば、箱本体を水平に寝かせた状態としたときには、ある程度スムーズに線材を引き出すことが可能になると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−55626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の線材梱包装置によれば、例えば限られたスペースで用いる際に箱本体を立てて使用することができず、仮に、そのように立てて使用した場合には、線材をスムーズに引き出すことが出来ない。
【0006】
本発明は、上述のような問題点を克服するためになされたものであり、中空コイル状に巻回した線材を巻き束の状態で収納でき、かつそのように収納した状態のままスムーズに線材を引き出すことを可能とした線材梱包装置を提供することを目的とする。また、線材梱包装置の本体を立てたまま、線材をスムーズに引き出すことを可能とし、狭いスペースでも当該作業を可能とした線材梱包装置を提供することを目的とする。さらに、上述のような装置を簡単な構成で実現でき、かつ線材の巻き束を容易に取り替え・補充ができるようにした線材梱包装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る線材梱包装置は、本体ケースと、本体ケース内に収納され、中空コイル状に巻回された線材を保持可能な巻芯体とを備え、前記本体ケース内には軸部が突設され、前記巻芯体は、前記軸部に係合し、前記中空コイル状に巻回された線材の周方向に回転可能に保持されて、本体ケースの側壁に形成された引出孔から線材を引き出し可能となされると共に、該巻芯体は、平行に配された第一の板状部材と第二の板状部材との2枚の板状部材によりなるものであって、第一の板状部材は、該板状部材本体の外周に沿って複数の折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部を第二の板状部材の方向へ、かつ第一の板状部材本体と90度未満の角度を成すように折り曲げられて、第二の板状部材に形成された係合孔に係合され、これにより、前記複数の折り曲げ部が、第一の板状部材本体から第二の板状部材の方向へ向かって縮径する軸芯を形成し、該軸芯の周囲に中空コイル状に巻回された線材を保持できるようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る線材梱包装置によれば、中空コイル状に巻回された線材の巻き束を保持した巻芯体が、本体ケースの軸部に係合し、巻回された線材の周方向に回転可能に保持されているので、引き出し孔から線材を引き出そうとする力に応じて線材と巻芯体とが同期して回転する。それゆえ、スムーズに線材を引き出すことができる。
【0009】
また、第一の板状部材に形成された折り曲げ部を第二の板状部材の方向へ、かつ第一の板状部材本体と90度未満の角度を成すように折り曲げて、第二の板状部材に形成された係合孔に係合させ、これにより、前記複数の折り曲げ部が、第一の板状部材本体から第二の板状部材の方向へ向かって縮径する軸芯を形成するようにしているので、少ない部材点数かつ簡単な構成により巻芯体を形成できる。
【0010】
しかも、上記のような構成により、簡単に巻芯体を組み立て・分解することができるので、線材の巻き束の取り替え・補充が非常に容易である。さらに、第一の板状部材本体から第二の板状部材の方向へ向かって縮径する軸芯部分が、線材を巻回させる巻芯の役割と、線材がバラバラにならないようガイドする鍔の役割とを果たすので、線材を好適に保持しつつ、スムーズな線材の引き出し作業を可能とできる。
【0011】
また、本発明に係る線材梱包装置において、本体ケース内に形成された軸部は円筒形状であり、第二の板状部材には円形状の保持孔が形成され、巻芯体は、前記円形状の保持孔に前記本体ケースの軸部を嵌挿することによって、本体ケースに対して回転可能に保持されるものとすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る線材梱包装置において、本体ケースおよび巻芯体は、いずれも段ボールにより形成されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明に係る線材梱包装置によれば、中空コイル状に巻回された線材を保持した巻芯体が、本体ケースの軸部に係合し、巻回された線材の周方向に回転可能に保持されているので、引き出し孔から線材を引き出そうとする力に応じて線材と巻芯体とが同期して回転するので、スムーズに線材を引き出すことができる。
【0014】
また、第一の板状部材に形成された折り曲げ部を第二の板状部材の方向へ、かつ第一の板状部材本体と90度未満の角度を成すように折り曲げて、第二の板状部材に形成された係合孔に係合させ、これにより、前記複数の折り曲げ部が、第一の板状部材本体から第二の板状部材の方向へ向かって縮径する軸芯を形成するようにしているので、少ない部材点数かつ簡単な構成により巻芯体を形成できる。
【0015】
しかも、上記のような構成により、簡単に巻芯体を組み立て・分解することができるので、線材の巻き束の取り替え・補充が非常に容易である。さらに、第一の板状部材本体から第二の板状部材の方向へ向かって縮径する軸芯部分が、線材を巻回させる巻芯の役割と、線材がバラバラにならないようガイドする鍔の役割とを果たすので、線材を好適に保持しつつ、スムーズな線材の引き出し作業を可能とできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る線材梱包装置の一実施形態を示すものであり、その外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る線材梱包装置の一実施形態を示すものであり、外蓋を開いて内部の状態を示した斜視図(線材を保持させた状態を示す図)である。
【図3】図2に示した線材梱包装置の分解斜視図である。
【図4】図2に示した線材梱包装置における第一の板状部材の展開図である。
【図5】図1におけるX−X線間断面図である。
【図6】本発明に係る線材梱包装置の別の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図7】本発明に係る線材梱包装置の更に別の一実施形態を示す側断面図である。
【図8】本発明に係る線材梱包装置の更に別の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図9】図8における第一の板状部材の展開図である。
【図10】図8に示した線材梱包装置に関し、図1のX−X線間における断面を示す図である。
【図11】図3〜5に示した第一の板状部材の構成を説明するための図であり、折り曲げ部を折り曲げた状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る線材梱包装置の一実施形態を示すものであり、その外観を示した斜視図である。図1に示すとおり、この実施形態における線材梱包装置1は、外観上、矩形の箱状とした本体ケース2からなるものである。当該本体ケースは、内部に中空コイル状に巻回した線材sの巻き束Sを収納可能なものであり、その側壁に線材を引き出すための引き出し孔21が形成されている。また、引き出し孔21の少し下の位置には、引き出した線材sの先端部を一時的に挿通させて保持するための線材保持孔22が形成されている。また、図2に示すように、本体ケース2の一側壁には外蓋23設けられ、開閉自在となされている。
【0019】
尚、本体ケース2は、この実施形態においては段ボールにより形成されており、例えば幅が50mm、奥行き及び高さが400mmであって、その中に直径1.5mm、長さ250mのポリエステルモノフィラメント製線材が中空コイル状に巻回されて、収納されている。尚、この本体ケース2を作成する材料は段ボールに限られるものではなく、適宜選択される合成樹脂材料や金属材料等を用いることができる。また、その中に収納される線材も上記に限られるものではなく、各種合成樹脂線材、金属線材又は樹脂被覆した金属製線材などを収納できる。
【0020】
図3に示すように、本体ケース2の内壁(外蓋を開放した状態における底部にあたる側壁の略中央)には、本体ケース2の内方へ突出する略円筒形状の軸部24が突設されている。この軸部24は、本体ケース2の形成時に一体的に形成するようにしてもよく、あるいは、本体ケース2の形成後に付加的に円筒形状の部材を接着剤等で固着させるようにして形成してもよい。
【0021】
第一の板状部材4は、図3及び図4に示すように、略正八角形の板状部材本体41と、板状部材本体41の外周上の各辺を底辺として一体的に形成された台形状の折り曲げ部42とからなる。第二の板状部材5は、円盤形状をした板状部材の中心部に、本体ケース2の軸部24を嵌挿可能な円形状の保持孔51が形成されてなる。また、第二の板状部材5の保持孔51よりも外周よりの位置に、第一の板状部材4の折り曲げ部42の先端部を差し込むようにして挿通させ、係合させることが可能な係合孔52が形成されている。いうまでもなく、この係合孔52は、第一の板状部材4の折り曲げ部42の数と同数(この実施形態においては8箇所)形成されている。尚、第一の板状部材4及び第二の板状部材5は、この実施形態においてはいずれも段ボールにより形成されている。
【0022】
この実施形態における線材梱包装置1は、以上のような構成を備える本体ケース2、及び第一の板状部材4及び第二の板状部材5からなるものであり、図3の分解斜視図に示したような配置で一体に組み立てられるものである。
【0023】
すなわち、第一の板状部材4の折り曲げ部42を折り曲げ(第二の板状部材5の方向、かつ板状部材本体41と90度未満の鋭角をなすように折り曲げ)、これら8枚の折り曲げ部42によって、第二の板状部材5の方へ向かって縮径する軸芯7を形成し(図11参照)、中空コイル状に巻回した線材sの巻き束Sの中空部内へ軸芯7を挿通させたのち、当該軸芯7の先端部、すなわち各折り曲げ部42の先端部を第二の板状部材5に形成された係合孔52に挿通させて係合させる。このようにして、第一の板状部材4と第二の板状部材5とにより巻芯体3を形成し、第二の板状部材5の方へ向かって縮径する軸芯7の傾斜面と第二の板状部材5との間に線材sの巻き束Sを保持させるようになされている。
【0024】
そして、第二の板状部材5に形成された保持孔51に本体ケース2の軸部24を挿通させ、当該軸部24に巻芯体3を保持させる。これにより、図5に示したように本体ケース2内に巻芯体3が線材の巻き束Sの周方向に回動可能となされた状態で保持されることとなる。それゆえ、線材sの先端部を引き出し孔21から本体ケースの外へ出して適宜引っ張ることによって、巻芯体3及び線材の巻き束Sが同期して回転し、線材をスムーズに引っ張りだすことが可能となる。
【0025】
このとき、第一の板状部材本体41から第二の板状部材5の方向へ向かって縮径する軸芯7により形成される傾斜面が、線材sを巻回させる巻芯の役割と、線材がバラバラにならないようガイドする鍔の役割とを果たすので、線材を好適に保持しつつ、スムーズな引き出し作業を可能とできる。
【0026】
尚、折り曲げ部42の長さ(台形状における「高さ」)Mは、本体ケース内の幅(深さ)Lよりも長く形成されるのが好ましい。このようにすれば、折り曲げ部42の先端が軸芯7の径方向外側へ開く恐れがなく、それゆえ巻芯体3が分解する心配がない。
【0027】
図6は、本発明に係る線材収納装置1の別の実施形態(第二の実施形態)における側断面を示す図である。第二の実施形態につき、図2〜5に示した第一の実施形態と異なる点のみを説明すると、この実施形態においては、第一の実施形態よりも、折り曲げ部42の長さを長くし(台形状における「高さ」を高くし)、その先端部に第二の折り曲げ部421を形成している。そして、この第二の折り曲げ部421を軸芯7の径方向外側へ折り曲げるものとしている。なお、上述の第一の実施形態と同じく、折り曲げ部42の長さ(台形状における「高さ」)Mは、本体ケース内の幅(深さ)Lよりも長く形成されるのが好ましい。このようにすれば、折り曲げ部42の先端が軸芯7の径方向外側へ開く恐れがなく、それゆえ線材の引き出し作業中に巻芯体3が分解する心配がない。
【0028】
このように、第二の折り曲げ部421を形成して軸芯7の径方向外側へ折り曲げるものとし、かつ折り曲げ部42の長さ(台形状における「高さ」)Mは、本体ケース内の幅(深さ)Lよりも長くすることで、折り曲げ部42の先端が軸芯7の径方向外側へ開く恐れがなく、しかも第一の板状部材4と第二の板状部材5との係合が解除される可能性が極めて低くなるので、線材sの引き出し作業中に巻芯体3が分解する心配がない。
【0029】
図7は、本発明に係る線材収納装置1の更に別の実施形態(第三の実施形態)を示すものである。第三の実施形態が第一の実施形態のものと異なる点は、第一の板状部材4の板状部材本体41が略正六角形状となされている点である。このように、第一の板状部材本体41の形状は、八角形や六角形であってもよく、或いは他の多角形や円形とすることもできる。尚、言うまでもなくこの形状の相違により折り曲げ部42の数や形状は適宜変更されるものであり、また、それに応じて第二の板状部材5に形成される係合孔52の数や位置なども適宜変更されるものである。
【0030】
図8〜図10は、更に別の実施形態(第四の実施形態)を示すものである。この実施形態においては、第二の実施形態と同じく、第一の板状部材4の折り曲げ部42の先端に第二の折り曲げ部421が形成されている。
【0031】
また、この実施形態においては、第一〜第三の実施形態のように係合孔52が独立して形成されていない。この実施形態においては、円形状の保持孔51が係合孔52を兼ねる構成である。すなわち、図8及び図10に示すように、折り曲げ部42を折り曲げてその先端部を保持孔51に挿通させた後、第二の折り曲げ部421を軸芯7の径方向外側へ広げるようにして折り曲げることにより、当該折り曲げ箇所が保持孔51の周縁部に係合する。このようにして組み立てた巻芯体3を本体ケース2内に収納することにより、図10に示すように、巻芯体3は、線材の巻き束Sの周方向に回動可能なようにして軸部24に保持される。
【0032】
以上、本発明に係る線材梱包装置1について、具体的な実施形態を示して説明したが、本発明は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々に形態等を変更することが可能なものである。
【0033】
たとえば、上述した実施形態においては、本体ケース2、第一の板状部材4及び第二の板状部材5は、いずれも段ボールによって形成されたものであるが、これに限られるものではない。例えば、金属材料、又は各種合成樹脂材料で形成するようにしてもよく、あるいはそれらの材料を組み合わせて用いるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 線材梱包装置
2 本体ケース
3 巻芯体
4 第一の板状部材
41 第一の板状部材本体
42 折り曲げ部
421 第二の折り曲げ部
5 第二の板状部材
51 保持孔
52 係合孔
s 線材
S 線材の巻き束





【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
本体ケース内に収納され、中空コイル状に巻回された線材を保持可能な巻芯体とを備え、
前記本体ケース内には軸部が突設され、
前記巻芯体は、前記軸部に係合し、前記中空コイル状に巻回された線材の周方向に回転可能に保持されて、本体ケースの側壁に形成された引出孔から線材を引き出し可能となされると共に、
該巻芯体は、平行に配された第一の板状部材と第二の板状部材との2枚の板状部材によりなるものであって、第一の板状部材は、該板状部材本体の外周に沿って複数の折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部を第二の板状部材の方向へ、かつ第一の板状部材本体と90度未満の角度を成すように折り曲げられて、第二の板状部材に形成された係合孔に係合され、
これにより、前記複数の折り曲げ部が、第一の板状部材本体から第二の板状部材の方向へ向かって縮径する軸芯を形成し、該軸芯の周囲に中空コイル状に巻回された線材を保持できるようにしたことを特徴とする線材梱包装置。
【請求項2】
本体ケース内に形成された軸部は円筒形状であり、
第二の板状部材には円形状の保持孔が形成され、巻芯体は、前記円形状の保持孔に前記本体ケースの軸部が嵌挿されることによって、本体ケースに対して回転可能に保持されるものであることを特徴とする請求項1に記載の線材梱包装置。
【請求項3】
本体ケースおよび巻芯体は、いずれも段ボールにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の線材梱包装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−218740(P2012−218740A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82938(P2011−82938)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】