説明

線材繰り出し装置および線はんだ

本発明の目的は、軟質な線材を容易に挿着することができる線材繰り出し装置を提供することである。この目的を達成するため、本発明に係る線材繰り出し装置においては、線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体(7)で繰り出すと共に、そのチャック体の開放状態を維持する開放手段を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置およびそれに用いる線はんだに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器のはんだ付けには、はんだを線状に加工した線はんだや線はんだの内部に松脂などのフラックス成分を含浸させたやに入りはんだをはんだ鏝を用いてはんだ付けするマニュアルソルダリングがあり、特にフローソルダリングやリフローソルダリングで付けられない部品のはんだ付けやはんだ付け後の修正に広く用いられている。近年の電子機器の小型化に伴い、電子部品も小型化しており、マニュアルソルダリングに使用する線はんだややに入りはんだの線径も細くなっている。はんだは軟質な材料であり、線径が細くなると供給時に折れ曲がってしまう。線径の細いはんだを供給する装置として、線はんだを開閉可能、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出す装置が知られている(特許文献1参照)。詳述すると、外筒の内部には線はんだを保持する三角形の突起が形成されたチャックが配置されており、そのチャックの前方の離隔した位置には線はんだの後退(戻り)を阻止する保持部材が配置されている。又、チャックの後方には、コイルスプリングの付勢力に抗してチャックを前進させ線はんだの繰り出し操作を行うレバーが取り付けられている。
【0003】
上記従来技術にあっては、レバーの操作によって一定量の線はんだを繰り出すことができ、使用性に優れている。
また、一般的に前記線はんだは、その直径が0.7mm〜1.0mmの物が多く使用されているが、近年においては直径が0.5mmや0.3mmと言った物も要求され使用されつつある。製品のコンパクト化が進んでおり、それ故に、その製品の内部に具備される部品も小さく、その部品の極小化に伴って線はんだも極細化しているのである。
しかし、この様に極細化された線はんだを、上記従来の線材繰り出し装置に挿着するには、些か問題があった。具体的に説明すると、前記チャックは常時コイルスプリングによって閉鎖せしめられている為、レバーの操作によるチャックを拡開させながらの挿着作業となってしまうのである。即ち、太い線はんだの挿着は兎も角、一方の手で付勢力に抗してレバー操作を行いながら、他方の手で細い線はんだを挿着する作業は、線はんだの先端の位置合わせが難しく、チャック内面に当接し屈曲させてしまったりしていた。
【特許文献1】実願昭62−169776号(実開平1−72974号)のマイクロフィルム
【発明の開示】
【0004】
本発明の目的は、線はんだ等の軟質な線材を容易に挿着することができる線材繰り出し装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明に係る線材繰り出し装置は、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体の開放状態を維持する開放手段を配置したことを第1の要旨とし、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体を作動せしめる作動部材の復帰動作を徐々になしたことを第2の要旨とし、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体の線材把持部の長さを線材の繰り出し量よりも長く形成したことを第3の要旨とし、軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、前記軟質な線材を収容する線材貯留手段を装置本体に設けたことを第4の要旨とする。
【0005】
ここで軟質な材料からなる線材とは、種々の測定方法があるが、例えばブリネル硬さ試験において硬度45以下の材料からなる線材であり、その1例として、線はんだやエナメル線、銅線、天蚕糸、裁縫用の糸などが挙げられる。ちなみに、線はんだのブリネル硬さにおける硬度は4〜20が一般的である。
【0006】
上記構成によれば、容易に軟質な線材を線材繰り出し装置に挿着することができる。
【0007】
本発明に係る線材繰り出し装置の作用について説明する。線材の挿着時には、チャック体が開放している為、そのチャック体に線材が容易に挿通すると共に、線材は、線材繰り出し装置の内部空間を通ってチャック体へと供給される。又、チャック体を開放状態から復帰させる際には、作動部材が徐々に復帰する。更に、湾曲状態にある軟質な線材が、開閉するチャック体によって押圧され、その押圧力によって直線状へと矯正される。しかも、線材が繰り出される量よりも押圧・矯正される量(長さ)が多い為、矯正されずに線材が繰り出されることがないうえ、少なくとも1回は必ず押圧・矯正された状態で繰り出される。又、線材は、装置本体に設けた線材貯留手段から供給され繰り出される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明に係る線材繰り出し装置の第1実施形態を示す縦半断面図である。
【図2】図2はスライド部材とノック駒を示す斜視図である。
【図3】図3は図1の線材繰り出し装置の先端部を示す拡大断面図である。
【図4】図4は図3の変形例を示す断面図である。
【図5】図5はチャック体の要部縦断面図である。
【図6】図6は線材の挿着過程を示す縦半断面図である。
【図7】図7は図6の要部拡大図である。
【図8】図8は軸筒と後軸との連結構造の変形例を示す縦断面図である。
【図9】図9は図8のZ−Z線断面図である。
【図10】図10はリング部材の変形例を示す縦半断面図である。
【図11】図11はリング部材の変形例を示す横断面図である。
【図12】図12はリング部材の変形例を示す横断面図である。
【図13】図13はリング部材の変形例を示す横断面図である。
【図14】図14はノック駒の復帰過程を示す縦半断面図である。
【図15】図15はノック駒の変形例を示す要部斜視図である。
【図16】図16はノック駒の復帰過程を示す縦半断面図である。
【図17】図17はノック駒の変形例を示す要部斜視図である。
【図18】図18は後軸のノック駒の変形例を示す縦断面図である。
【図19】図19はリールの上面図である。
【図20】図20は後軸の変形例を示す要部外観図である。
【図21】図21は後軸の要部外観斜視図である。
【図22】図22はリールの変形例を示す縦半断面図である。
【図23】図23はリールの取付構造の変形例を示す要部外観図である。
【図24】図24はリールの変形例を示す平面図である。
【図25】図25は図24のリールのW−W線縦断面図である。
【図26】図26は貯留手段の変形例を示す縦断面図である。
【図27】図27は図1の線材繰り出し装置の後端部を示す縦半断面図である。
【図28】図28は本発明に係る線材繰り出し装置の第2実施形態を示す外観図である。
【図29】図29は図28の線材繰り出し装置の左側面断面図である。
【図30】図30は図28の線材繰り出し装置の動作を示す縦断面図である。
【図31】図31は本発明に係る線材繰り出し装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図32】図32は図31の線材繰り出し装置の使用例を示す縦断面図である。
【図33】図33は回転軸部に溝部が形成されていないリールを示す平面図である。
【図34】図34は図33のリールの縦断面図である。
【符号の説明】
【0009】
1 軸筒
2 スライダ部材
3 傾斜面
4 窓孔
5 ノック駒(作動部材)
5a 押圧操作面
5b 傾斜面
5c 凹陥部(段部)
5d 傾斜面
5e 凹陥部(段部)
6 押圧部
7 チャック体
7a 溝部(線材把持部)
8 チャックリング
9 弾撥部材
10 先部材
10a 内面段部
11 先端パイプ(線材保護管)
12 先端パイプ
13 線材案内部材
14 戻り止め部材
15 スペーサ
16 案内パイプ
17 線材挿着部材
17a 貫通孔
17b 内面円錐部
17c 外面円錐部
18 嵌合部
19 後軸(開放手段)
20 リング部材
20a 小径部
20b 大径部
20c 傾斜面
21 平坦部
22 膨出部
22a 小形溝部
22b 大形溝部
22c 傾斜面
23 円弧部
24 平面部
25 挟持片
26 間隙
27 リール(線材貯留手段)
28 鍔部
29 回転軸部
30 貫通孔
31 後軸
32 挟持片
33 間隙
34 リール
35 貫通孔
36 内面突部
37 鍔部
38 貯留手段
39 嵌合部
40 スリット
41 面取り部
42 把持部
43 軸筒
44 ノック駒
45 スライダ部材
46 突起
47 凸部
48 凹部
49 軸筒
50 前軸
51 カートリッジ部
52 後部筒
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
先ず、本発明に係る線材繰り出し装置の第1実施形態を説明する。本実施形態における線材繰り出し装置は、線はんだHを繰り出す為の装置である。軸筒の中間部の側面にノック駒を配置し、そのノック駒を軸筒の径方向に押圧することによって線はんだHを繰り出す、所謂、サイドノック式の線材繰り出し装置であるが、ノック駒を軸筒の長手方向にスライドさせることによって線はんだHを繰り出すサイドスライド式の線材繰り出し装置であっても良いし、或いは、軸筒の後端にノック駒を配置し、そのノック駒を軸筒の長手方向に押圧することによって線はんだHを繰り出す後端ノック式の線材繰り出し装置であっても良い。以下、具体的に説明する。図1に示すように、軸筒1の中間部の内側には、スライダ部材2が摺動自在に配置されており、そのスライダ部材2の側壁には、図2に示すように、2つの平行した傾斜面3が対向した位置に形成されている。その傾斜面3には、前記軸筒1の側壁に形成された窓孔4に装着されたノック駒(作動部材)5の押圧部6が当接している。ノック駒5を軸筒1の径方向に押圧することによって、スライダ部材2が図中下方(軸筒1の軸線方向)に移動するというものである。尚、前記軸筒1の長手方向には、図9に示すように、平面部1aが形成されており、その横断面形状を「D」字状としている。そして、その平面部1aの前方には、図1に示すように、前記ノック駒5が配置される窓孔4が形成されている。
【0011】
また、前記スライダ部材2の前方には、線はんだHの把持・開放を行うコレット(2つ割、或いは、3つ割など)式のチャック体7が圧入・固定されている。そのチャック体7の前方には、チャック体7の拡開・閉鎖を行うチャックリング8が囲繞している。図1において、符号9は、前記チャック体7やスライダ部材2を図中上方に向け付勢すると共に、チャック体7を閉鎖せしめ線はんだHを保持させるコイルスプリングなどの弾撥部材であり、その弾撥部材の荷重は、200g〜600gに設定されている。
【0012】
前記軸筒1の先端には、先部材10が螺着などの手段によって着脱自在に固定されているが、軸筒1に一体形成などしても良い。その先部材10の先端には、ステンレスや鉄、アルミニウムなどの金属材質、フッ素系樹脂などの耐熱性樹脂、或いは、金属材質に耐熱樹脂材を被覆したもの、或いは、金属材質に耐熱樹脂をコーティングしたもの、或いは、耐熱樹脂に金属材質を被覆したものなどからなる直線状の先端パイプ(線材保護管)11が固定されているが、図4に示すように湾曲した先端パイプ12としても良い。はんだ作業を行う被はんだ物の形状如何によっては、湾曲した先端パイプとするのが好ましい場合もある。特に、周りが囲まれた部分に作業を行う場合に有効な手段である。
【0013】
前記先端パイプ11の上端には、図3に示すように、ロート状の貫通孔が形成された線材案内部材13が取り付けられているが、この線材案内部材13は、先端パイプ11、或いは、先部材10と一体形成などしても良い。線材案内部材13は、線はんだHを先端パイプ11に導きやすくする為のものである。尚、それら線材案内部材13と先端パイプ11との間には、線はんだHを軽く保持すると共に、軽く保持することによってその線はんだHの後退を阻止するゴム状弾性体からなる戻り止め部材14が挿着されているが、その戻り止め部材14は線材案内部材13と一体形成しても良く、又、先部材10と一体に形成しても良い。
【0014】
また、前記線材案内部材13に形成されているロート状の貫通孔の最大内径aは、使用する線はんだHの外径cの2倍以上となっている。これは、線はんだHを線材案内部材13の貫通孔に導きやすくする為の設定である。この設定によれば、万が一、線はんだHの先端が湾曲している場合でも戻り止め部材14に線はんだHを徐々に矯正しながら導くことができる。尚、先端パイプ11の下端には、外周部と共に内周部も縮径し、細径部を形成しても良い。具体的には、先端パイプ11の内径は、0.5mmとなっているが細径部においては0.38mmとしても良い。線はんだHの直径は、0.3mmである。作業時における線はんだHの安定性(振れ防止)を向上させていると共に、視認性を向上させるものとなる。又、先端パイプ11の内径bとしては、本例に限らず、使用する線はんだHの外径cの1.25〜10倍程度で有れば良好な繰り出し動作が得られる。一方、内径bが線はんだHの外径cの1.25倍未満のパイプであると、線はんだHの多少の湾曲によって摺動(通過)性が悪くなってしまい、10倍を超えるとパイプ内で座屈が発生してしまう危険性がある。この先端パイプ11の内径bのより好ましい範囲は、線はんだHの外径cの1.25倍〜2倍未満である。又、先端パイプ11の突出長さとしては、視認性やパイプ先端における安定性を考慮すると、1.0mm〜20.0mmの範囲が好ましい。更に、被はんだ物の種類にもよるが、線はんだHの繰り出し量としては、0.5mm〜2.0mmの範囲に設定するのが好ましい。
【0015】
ここで、前記チャック体7の把持部には、図5に示すように、約0.25mmの溝部7aが形成されている。本実施形態では、線はんだHが把持され通過する溝となっているが、必ずしも必要なものではなく、単に平面部となっていても良い。特に、横断面形状が矩形状や楕円状の線はんだを繰り出す際には、平面部となっているのが好ましい。この溝部(線材把持部)7aは、チャック体7をチャックリング8によって閉鎖したときに、線はんだHを把持する部分であり、この把持動作によって線はんだHは挟み込まれ押圧される。即ち、この押圧動作によって湾曲していた線はんだHが直線状へと矯正されるのである。しかも、チャックリング8が移動する量X(チャックリング8が内面段部10aに接触するまでの長さ)よりも溝部(線材把持部)7aの長さYの方が長く形成されている(図3、図5参照)為、矯正されずに線はんだHが繰り出されることがないうえ、少なくとも1回は必ず押圧・矯正動作を経た後に、戻り止め部材14を通過し繰り出されることになる。よって、線はんだHの矯正を主な目的とするのであれば、前記溝部7aを積極的に形成し、線はんだHを囲むように周囲から押圧し矯正するのが好ましい。
【0016】
尚、図1において、符号15は軸筒1と先部材10の間に介在させた環状のスペーサであって、そのスペーサ15の有無や、介在させる枚数によって線はんだHの繰り出し量を多くしたり、少なくしたりするなど適宜変化させることができる。
【0017】
また、前記線材把持部の後方であって、チャック体7の内部には、図5に示すように、前記先端パイプ11と同様の内径を有した案内パイプ16の前方部が位置しており、その後端部は前記スライダ部材2を突き抜けて軸筒1の後方部まで延設形成されている。本例においては、チャック体7と案内パイプ16とを別部材で構成しチャック体7内を摺動自在なものとしているが、チャック体7と案内パイプ16とを固定、或いは、一体成形などしても良い。即ち、チャック体7の前後動に連動して案内パイプ16を前後動させても良い。そして、案内パイプ16の後端部には、図1に示すように、線材挿着部材17が圧入・固定されているが、螺合や凹凸嵌合など適宜な手段によって着脱可能に配置しても良いし、前記のようにチャック体7と案内パイプ16を固定、或いは一体成形などした場合には、線材挿着部材17に対し案内パイプ16の後端を摺動自在にしても良い。
【0018】
その線材挿着部材17には、前記案内パイプ16の内径と同等の内径を有する貫通孔17aが形成されていると共に、その下端側に向かって縮径する内面円錐部17bが形成されている。又、線材挿着部材17の上方外面には、その上端側に向かって縮径する外面円錐部17cが形成されている。この外面円錐部17cの縦断面形状は、親指と人差し指を接触させた際に形成されるほぼ三角形状の大きさとなっている(図6参照)が、階段状の段部(図7参照)としても良い。即ち、線はんだHを挿着する際、線はんだHを親指と人差し指で摘むと、前記線材挿着部材17の外面円錐部17cと同様な形状が構成され、此によって、各々の指が外面円錐部17cを覆うように接触し、これと同時に線はんだHが内面円錐部17bによって導かれ、案内パイプ16へと誘導させるのである。つまり、線はんだHを摘んだ部分から案内パイプ16までの距離を極力短くすることによって、その間に発生してしまう危険性がある線はんだHの座屈を極力防止しているのである。尚、線材挿着部材17は、前記軸筒1の後端に延設形成された嵌合部18に着脱自在に固定されているが、着脱不能に固定してもよい。
【0019】
図1において、符号19は軸筒1の後部に囲繞した筒状の後軸であって、その後軸19は、軸筒1の軸線方向に対して前後動が可能なものとなっているが、前進位置においては前記ノック駒5を覆った状態で停止し得るものとなっている。即ち、図6に示すように、後軸19を前進させることによって前記線材挿着部材17を後軸19の後端から露出させると共に、ノック駒5を押圧状態にすることによって、チャック体7による線はんだHの把持を開放している。すなわち、本実施形態では、チャック体7の開放状態を維持する開放手段が、後軸19によって構成されている。
【0020】
ここで、後軸19の前端部には、リング部材20が固定されているが、そのリング部材20を後軸19と一体に形成しても良い。このリング部材20の外接円径は、この繰り出し装置の外形における最大外径部となっている。一方、後軸19の後部内面は、円形ではあるものの、図8および図9に示すように、前記軸筒1の平面部1aと同様な平坦部21を形成しても良い。軸筒1の外形と同様な内形を形成することによって、後軸19の軸筒1に対する相対的な回転が防止されている。
【0021】
また、図10および図11に示すように、前記リング部材20の外面の1部分に膨出部22を形成しても良い。膨出部22は、机上などに載置した際における回転防止手段となる。即ち、膨出部22によって転がりが規制され、机上からの落下による破損(先端パイプ11の潰れや屈曲)などが防止されるのである。尚、図12に示すように、リング部材20の断面形状を例えば5角形の多角形とすることによって複数の膨出部22を形成するようにしたり、或いはリング部材20の断面形状を楕円や、図13に示すように円形の一部を切り欠いた異形形状としても良く(すなわち、リング部材20の外面を円弧部23と平面部24とで構成するようにしても良く)、真円以外の形状であれば少なからず回転による転がりが規制される。
【0022】
そして、前記膨出部22や前記リング部材20の内面には、図10および図14に示すように、前記ノック駒5の方向に向けて小形溝部22a(小径部20a)と、その小形溝部22aの前方に大形溝部22b(大径部20b)が傾斜面22c(傾斜面20c)を介して段階的に形成されているが、傾斜状の内形とし連続的に小形溝部22aと大形溝部22bを形成しても良い。つまり、小形溝部22aによって線はんだHを開放している状態から、再び線はんだHを把持させる際、大形溝部22bによってノック駒5を約半分程度上昇せしめ、次いで、完全に突出せしめた状態となし、これらによって、ノック駒5を軸筒1から段階的に上昇せしめているのである。その結果、ノック駒5の急激な上昇に伴う軸筒1からの飛び出しが防止されるものとなっている。
【0023】
尚、前記ノック駒5の押圧操作面5aの後部に、図15に示すように、傾斜面5bを介して押圧方向に低く形成された凹陥部(段部)5cを形成しても良い。つまり、前記リング部材20(後軸19)の内面と押圧操作面5aの当接によって線はんだHを開放している状態から、再び線はんだHを把持させる際、凹陥部5cによってノック駒5を約半分程度上昇せしめ(図16参照)、次いで、完全に突出せしめた状態となし、これらによって、ノック駒5を軸筒1から段階的に上昇せしめるのである。その結果、ノック駒5の急激な上昇に伴う軸筒1からの飛び出しが防止されるものとなっている。又、前記凹陥部5cに換え、図17に示すように押圧操作面5aのほぼ中央部から後端部にかけて緩やかな円弧状の傾斜面5dを形成し、その傾斜面5dの後端近傍を前記例相当の凹陥部5eとしても良い。このような構成によれば、ノック駒5が連続的に徐々に突出されるため、滑らかな突出動作が得られる。
【0024】
以上、ノック駒5を徐々に復帰させる例を示したが、弾撥部材9の弾撥力が小さかったり、ノック駒5の軸筒1に対する飛び出し防止が確実になされている場合には、図18に示すように後軸19(本例においては、リング部材を後軸19に一体成形している)の内面やノック駒5の押圧操作面5aをフラットな形状としても良い。
【0025】
後軸19について、更に詳述する。後軸19の後方には、挟持片25が対向する位置に延設されており、その挟持片25間に形成される間隙26には、前記線はんだHが巻回された線材貯留手段であるリール27が回転自在に、且つ、着脱自在に配置されている。具体的には、図1および図19に示すように、リール27の両側に形成されている円盤状の鍔28を介して形成された回転軸部(巻き付け部)29が、前記挟持片25に形成された貫通孔30に回転自在に軸支されているが、回転軸部29を別部材で構成し、即ち、樹脂製のリールに金属材質などからなる回転軸を挿着し、その回転軸を前記貫通孔に回転自在に軸支しても良い。又、図20に示すように、挟持片25の貫通孔30の上部を切り欠き、その切り欠き部30aから前記リール27の回転軸部29を挿着するようにしても良い。このような構成によれば、リール27の交換の容易性が図れる。
【0026】
ここで、前記間隙26の幅D(図21参照)は、リール27の幅E(図19参照)より若干小さく設定されており、リール27が回転する際には、その回転動作に対して抵抗を付与しているが、その回転抵抗は線はんだHの繰り出しには影響しない抵抗力となっている。使用中における不慮の回転、即ち、不用意な線はんだHの繰り出し動作を防止しているのである。又、図22の例では、前記リール27の外径Aが、軸筒1並びに、後軸19の挟持片25やリング部材20の外径(挟持片の幅B、リング部材の外径C)よりも大きくなっている。即ち、リール27は、後軸19の挟持片25から露出した状態で回転自在に配置されている。後軸19から露出せしめることによって、万が一線はんだHが弛んだときに容易にリール27を回転させ、前記の弛みを修復することができるようになっている。又、リール27を本体の最大外径であるリング部材20よりも大きくすることによって、前述の緩み修復は勿論、線材繰り出し装置を机上などに載置した際に発生する転がりをも防止している。此によって、机上からの落下などが極力防止され、その結果、先端パイプ11などの破損や屈曲などが防止される。
【0027】
後軸19、並びに、リール27の変形例を図23に示し説明する。後軸31の後方には、挟持片32が対向する位置に延設されており、その挟持片32間に形成される間隙33には、前記線はんだHが巻回された線材貯留手段であるリール34が回転自在に、且つ、着脱自在に配置されている。具体的には、リール34の中心軸には貫通孔35が形成されており、その貫通孔35が、前記挟持片32の内面に形成された内面突部36に回転自在に軸支されている。リール34の鍔部37の表面を平面部とすることができ、そのリール34を複数重合させ収納する場合には、安定感が得られ確実な収納が得られる。
【0028】
図24、図25にリール27の更なる変形例を示し説明する。リール27の回転軸部29に線はんだHの端部を挿入する孔を形成した例である。具体的に説明する。回転軸部29と鍔28内面との接合部には、ほぼ三角形状の貫通孔29aが形成されている。そして、その貫通孔29aの側部には、前記回転軸部29と鍔28内面との接合部に沿った状態で溝部29bが形成されている。即ち、この貫通孔29aに線はんだHの端部を差し込み、回転軸部29にその線はんだHを巻回するのである。この時、線はんだHは前記三角形状の貫通孔29aの内面角部に食い込むように固定される。つまり、貫通孔29aの内面角部と線はんだHが共に弾性変形し食い付くようにして固定されるのである。また、巻き始め部分の線はんだHは屈曲しながら溝部29bに入り込む為、その屈曲した部分は回転軸部29の表面からあまり膨出せず、此によって、次ぎに巻回された線はんだHは一度は前記屈曲した部分に乗り上げるものの(図25参照)、その膨出量が少ない為緩やかに回転軸部29の表面に落下し当接する。その結果、最初に巻回された部分に次に巻回される部分が隙間なく接触し(図24参照)、此によって、線はんだHが回転軸部29の長手方向に整った状態で巻かれると共に、前記巻き始めの上部に位置する線はんだHも崩れることなく綺麗に巻くことができる。これは、前記屈曲部による膨出状態が溝部29bによって吸収される為である。尚、その溝部29bは、貫通孔29aの両側部に形成されている為、線はんだHを正方向から巻回しても良いし、反対方向から巻回しても同様な効果が得られる。
【0029】
ちなみに、前記溝部29aが形成されていないようなリールにあっては、図33に示すように、巻き始め部分の線はんだHは屈曲しながら回転軸部29の表面乗り上げ、その屈曲した部分は回転軸部29の表面から線径以上に膨出し、此によって、次ぎに巻回された線はんだHは前記屈曲・膨出した部分に乗り上げ(図25参照)、その瞬間に勢いよく回転軸部29の表面に落下し当接する。その結果、最初に巻回された部分と次に巻回される部分に隙間Sが発生してしまい(図34参照)、綺麗に巻けなくなってしまっていた。
ここで、前記溝部29bは回転軸部29の外径が使用する線はんだの線径の5倍〜10倍のリールに対して特に有効である。5倍未満であると溝の有無に関わらず上記の効果が得られなく、40倍を超えると溝部が無くても次の線はんだが緩やかに回転軸部の表面に落下する為綺麗に巻かれるが、40倍を超えたリールであっても、勿論、溝部を形成しても良い。
【0030】
以上、第1実施形態においては、線材の貯留手段を回転可能なリールとなしたが、例えば、巻回された線はんだHや折り畳まれた線はんだHをケースに収納し、そのケースを線材繰り出し装置に挿着し、順次そのケースから線はんだHが繰り出されるようにしても良い。線はんだHがケース内に収容されている為、挿着時においては勿論、挿着前においても線はんだHのバラケなどが防止される。
【0031】
また、線はんだHが巻回された線材貯留手段であるリール27(34)を、後軸19に取り付けることによって作業性(繰り出し装置の取り回し性)を向上させているが、線はんだHを一時的に大量に使用する場合には、図26に示すように、線はんだHの貯留手段38を繰り出し装置の外部に設置させても良い。大量の線はんだHを貯留することができ、長期に渡って作業を継続することができる。
【0032】
又、前記後軸19の中間部内面には、図27に示すように、前記線材挿着部材17と係合する嵌合部39が形成されている。後軸19を軸筒1に対して後退させたとき、即ち、使用状態において係合する嵌合部であり、不用意には前進しないようにしているのである。図21において、符号40は、その嵌合部39の近傍に形成されたスリットであり、そのスリット40による弾性的な開閉によって前記線材挿着部材17に対する係合、非係合が容易になされるようになっているが、前記嵌合部39の形状如何によっては必ずしも必要な構成ではない。又、敢えて前記嵌合部39を形成せずに、スリット40の開閉力を利用して後軸19を線材挿着部材17に圧入・固定などしても良い。
【0033】
更に、前記挟持片25の後部内面であって、前記貫通孔30の上方には円弧状の面取り加工(面取り部41)が施されている。前記リール27の回転軸部29を挟持片25の後端にあてがい押し込むと、この面取り部41によって回転軸部29が中心方向に案内されるように導かれ、容易に貫通孔30に到達し嵌り込むようになっている。
また、図1において、符号42は人が指などで把持する把持部であって、その把持部42には滑りを防止する為のローレット加工などが施されている。
【0034】
以上説明したように、本例は、電子部品を基板にはんだ付けする線材(線はんだH)繰り出し装置である。その為、軸筒1や線材挿着部材17、後軸19、リール27などは、導電性樹脂から成形されている。即ち、発生した静電気を床などに放射させることによって、前記電子部品の静電気による破壊を防止しているのである。その導電性樹脂としては、体積抵抗率が1010Ω・cm以下であることが好ましく、市販品としては、POM(ポリアセタール)としてテナックTFC64、EF750(旭化成(株)製)やジュラコンCH−10、CH−15、CH−20、EB−08、EB−10、ES−5(ポリプラスチックス(株)製)、ユピタ−ルET−20(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)が挙げられ、又、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)としてスタイラックABS IC10N、IC10E(旭化成(株)製)、PC(ポリカーボネート)としてSDポリカ CF5101V、CF5201V、CF5301V、FD−9082I−2(住友ダウ(株)製)、PP(ポリプロピレン)としてダイセルPP PB2N1(ダイセルポリマー(株)製)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)としてDURANEX CD7400B5(ポリプラスチックス(株)製)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)としてFORTORN 2130A1、7140A4、7340A4(ポリプラスチックス(株)製)、トレリナ A756MX02(東レ(株)製)、PPE(変性ポリフェニレンエーテル)としてユピエース EV08、EV12、EV20(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)などが挙げられる。
【0035】
本発明の繰り出し装置に使用する線はんだとしては、円柱状のはんだを押し出したり、伸ばしたりしてはんだを線状にしたものが用いられる。線はんだの線径としては、0.1mmから2.0mmのものが使用可能であるが、チャック体の把持部の形状を変更することにより適宜の太さの物に対応させることができる。また、繰り出し装置で使用されるはんだ材料は、60質量%Sn−40質量%Pbや63質量%Sn−37質量%Pbなどの従来のSn−Pbはんだだけでなく、環境に対する配慮から今後使用されていく、Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cuはんだなど、Snを主成分として他の元素を加えた鉛フリーはんだも使用可能である。
【0036】
さらに本発明の繰り出し装置では、線はんだの内部に松脂などのフラックス成分を含浸させたやに入りはんだも使用可能である。
これらの線はんだおよびやに入りはんだは、巻き付け部の両端部に円盤状の鍔部を形成したリール部材に巻き付けられて使用される。本発明の繰り出し装置に使用する線はんだおよびやに入りはんだは柔らかいため、リール部材に巻き付けた後に巻き崩れをおこし易い。そのため前述のように、リール27の回転軸部29と鍔28の内面の接合部に貫通孔29aを設け、巻き付け開始のときに線はんだを差し込み巻き付けることによって巻き崩れを防止することが可能である。リール27に付けられた貫通孔29aは、必ずしも三角形状でなくとも良く、丸形、楕円状などでも良いが、線はんだHの端部とリール27との固定性を考慮すれば前述したように三角形状とするのが好ましい。
【0037】
次ぎに、線材繰り出し装置の使用例について説明する。線はんだHをこの装置に挿着するに当たっては、前記後軸19を前進させる。この後軸19の前進によって、線材挿着部材17が後軸19から完全に露出する。この時、前記後軸19のリング部材20(後軸19)はノック駒5を覆った状態にあり、そのノック駒5を押圧している為、前記チャック体7は開放された状態にある。ここで、線はんだHを親指と人差し指で摘み、前記線材挿着部材17の外面円錐部17cを覆うように接触させる。これと同時に、線はんだHが内面円錐部17bによって導かれ、案内パイプ16へと誘導される。この動作を連続的に行うと、線はんだHは案内パイプ16を貫通してチャック体7、並びに、先端パイプ11まで挿入される(図6、図7参照)。挿入終了後、後軸19を後退させると、前記リング部材20の大径部20bによってノック駒5が約半分程度上昇する。更に後軸19を後退させると、ノック駒5が後軸19(リング部材20)から完全に露出すると共に、ノック駒5も完全に突出した状態となり、ここで、前記チャック体7が閉鎖し線はんだHを把持する。
【0038】
次いで、ノック駒5に凹陥部5cを形成した使用例について説明する。線材の線材挿着部材17への挿着は、同様である。挿入終了後、後軸19を後退させると、ノック駒5の凹陥部5cに前記リング部材20の前方内面が接触するようなり(図16参照)、その結果、ノック駒5が約半分程度上昇する。更に後軸19を後退させると、ノック駒5がリング部材20(後軸19)から完全に露出すると共に、ノック駒5も完全に突出した状態となり、ここで、前記チャック体7が閉鎖し線はんだHを把持する。
【0039】
この線はんだHが挿入された状態で、ノック駒5を押圧すると、押圧部6とスライダ部材2の傾斜面3との当接によって、スライダ部材2とチャック体7が前進する。この時、線はんだHもチャック体7の把持部に把持されている為、リール27から繰り出されると共に、案内パイプ16によって多少の摩擦抵抗が付与された状態で摺動しながら前進し、その結果、先端パイプ11の細径部から繰り出され、やがて、チャックリング8が内面段部10aに当接し、その前進移動が規制されチャック体7が拡開する。尚、この過程で、リール27から繰り出された線はんだHは、後軸19の内部空間を通過する為、外力などの影響を受けることが無く、もって、曲がったりすることなく正確に線材挿着部材17へと供給される。又、線材挿着部材17や案内パイプ16から引き抜かれるようにして前進もする為、多少屈折しているような線はんだであっても真っ直ぐな状態へと矯正もされる。更に、線はんだHが繰り出される量よりもチャック体7の把持動作によって押圧・矯正される量(長さ)が多い為、矯正されずに線はんだHが繰り出されることがないうえ少なくとも1回は必ず押圧・矯正された状態で繰り出され、より一層真っ直ぐな状態へとなり、確実な繰り出しが得られる。ここで、ノック駒5の押圧操作を解除すると、チャック体7やスライダ部材2が弾撥部材9の付勢力によって後退・復帰する。
【0040】
尚、前記リール27に貯留されている線はんだHを使い切ってしまった場合には、前記2つの挟持片25を指などで摘み拡開し、使い切ったリール27を取り外す。次いで、新たなリール27から線はんだHをある程度引き出し、前述したように線はんだHを線材挿着部材17や案内パイプ16などに挿通せしめチャック体7に把持させた後、リール27を挟持片25に取り付ける。
【0041】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る線材繰り出し装置の第2実施形態を図28〜図30に示し説明する。前記第1実施形態は、軸筒の側壁に設けられたノック駒を押圧することによって線はんだHを繰り出すものであるが、本実施形態は、軸筒43の後部にノック駒44を配置している。以下具体的に説明する。チャック体7を有するスライダ部材45は、軸筒43の後部近傍まで延設形成されていると共に、その後端部からは横方向に突起46が形成されている。そして、その突起46は前記軸筒43の後方に摺動自在に取り付けられたノック駒44に係合している。即ち、そのノック駒44を図中下方に向けて押圧操作するとスライダ部材45を介してチャック体7が前進するようになっている。
また、そのチャック体7の内部には、前記第1実施形態と同様に案内パイプ16が固定されており、その案内パイプ16の後部には線材挿着部材17が固定されているが、この線材挿着部材17内を前記案内パイプ16の後部が摺動し得るようにしても良い。
【0042】
また、前記チャック体7が開放した状態が維持できるよう、前記軸筒43とノック駒44には係合手段が設けられている。具体的には、軸筒43の外周部には凸部47が形成されており、その凸部47に係合する凹部48がノック駒44の内面に形成されている。
即ち、ノック駒44を通常の線繰り出し操作以上に前進させ、チャック体7を前進・開放せしめると、前記軸筒43の凸部47とノック駒44の凹部48が係合し、チャック体7の開放が維持されるのである。そして、このチャック体7が開放した状態で線はんだHの挿着を行う。挿着後、前記軸筒43とノック駒44との係合を解除すれば、チャック体7が再び線はんだHを把持し、繰り出しが可能となる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る線材繰り出し装置の第3実施形態を図31、図32に示し説明する。第3実施形態は、軸筒49を2分割し、それらを凹凸嵌合など公知の手段によって着脱自在に連結させた例である。具体的に説明する。軸筒49は、前軸50とカートリッジ部51から構成されている。その前軸50の中間部の内側には、前例と同様にスライダ部材2が摺動自在に配置されており、そのスライダ部材2にはノック駒5が係合している。また、スライダ部材2の前方には、線はんだHの把持・開放を行うコレット式のチャック体7が圧入・固定されている。そのチャック体7の前方には、チャック体7の拡開・閉鎖を行うチャックリング8が囲繞している。符号9は、前記チャック体7やスライダ部材2を図中上方に向け付勢すると共に、チャック体7を閉鎖せしめ線はんだHを保持させるコイルスプリングなどの弾撥部材である。
【0044】
一方、カートリッジ部51は、前記前軸50に対して着脱自在に連結された後部筒52と、その後部筒52に対して摺動自在に取り付けられた前記実施形態と同様な後軸19や線材挿着部材17、並びに、後軸19の挟持片25に着脱自在に配置されたリール27などから構成されている。符号16は、線材挿着部材17に固定された案内パイプであって、その案内パイプ16によって線はんだHをチャック体7まで正確に導くことができる。
この様に、軸筒49の後部をカートリッジ化することによって、使用者などは、線はんだHに触れることなく交換することができるようになり、汗や手脂などによる線はんだHの接着不良を防止することができる。つまり、図32に示す状態から、カートリッジ部51を前軸50に連結し、次いで、リール27を回転させれば線はんだHをチャック体7まで導くことができる。ここで、ノック駒5を押圧すれば線はんだHが繰り出される。よって、線はんだHに触れることなく、線はんだHの交換、並びに、繰り出しを行うことができる。
【実施例】
【0045】
本発明の線材繰り出し装置を用いて、電子機器のマニュアルソルダリングを行った。使用線材は、線径が0.3mm、材料がSn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cuの鉛フリーやに入りはんだで、携帯電話基板のチップ部品の修正を実施した。1回のノックで約0.6mm線材を繰り出すことができ、8時間の作業で5mのやに入りはんだを使用したが、線材の繰り出し量の変化や繰り出した線材の外形に傷は発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の線材繰り出し装置ははんだ材料だけでなく、ブリネル硬さ試験において硬度200以下の軟質な材料の線材が使用可能である。例えば、半導体のワイヤーボンディングに使用する金線やコイルに用いられるエナメル線や銅線、天蚕糸、裁縫用の糸などにも応用可能である。尚、線はんだの場合には、ブリネル硬さ試験において硬度4〜20のものを使用することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体の開放状態を維持する開放手段を配置したことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項2】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体を作動せしめる作動部材の復帰動作を徐々になしたことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項3】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体の線材把持部の長さを線材の繰り出し量よりも長く形成したことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項4】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、前記軟質な線材を収容する線材貯留手段を装置本体に設けたことを特徴とする線材繰り出し装置。
【請求項5】
前記チャック体を作動せしめるノック駒を軸筒の側壁に露出した状態で配置すると共に、そのノック駒を前記軸筒の径方向に押圧することによって前記チャック体を開放せしめる開放手段を、前記軸筒に対して前後動可能に配置し、その開放手段の内面に前記ノック駒の方向に向けて小径部と大径部を順次形成したことを特徴とする請求項2記載の線材繰り出し装置。
【請求項6】
前記チャック体を作動せしめるノック駒を軸筒の側壁に露出した状態で配置すると共に、そのノック駒を前記軸筒の径方向に押圧することによって前記チャック体を開放せしめる開放手段を、前記軸筒に対して前後動可能に配置し、
又、前記ノック駒にはそのノック駒の押圧方向に対して高さの異なる段部を前記開放手段の移動方向に向けて順次形成したことを特徴とする請求項2記載の線材繰り出し装置。
【請求項7】
前記チャック体を作動せしめるノック駒を軸筒の側壁に露出した状態で配置すると共に、そのノック駒を前記軸筒の径方向に押圧することによって前記チャック体を開放せしめる開放手段を、前記軸筒に対して前後動可能に配置し、
又、前記ノック駒にはそのノック駒の押圧方向に対して傾斜する傾斜面を前記開放手段の移動方向に向けて形成したことを特徴とする請求項2記載の線材繰り出し装置。
【請求項8】
前記チャック体の前方外周に、そのチャック体の開閉を行うチャックリングを配置すると共に、そのチャックリングの移動量をチャック体の線材把持部の長さよりも短くしたことを特徴とする請求項3記載の線材繰り出し装置。
【請求項9】
前記線材貯留手段を装置本体に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項4記載の線材繰り出し装置。
【請求項10】
前記線材貯留手段を装置本体から露出させたことを特徴とする請求項4記載の線材繰り出し装置。
【請求項11】
前記線材貯留手段に線材を巻回したことを特徴とする請求項4記載の線材繰り出し装置。
【請求項12】
前記線材貯留手段を回転自在に設けたことを特徴とする請求項4記載の線材繰り出し装置。
【請求項13】
前記線材貯留手段に回転抵抗を付与させたことを特徴とする請求項4記載の線材繰り出し装置。
【請求項14】
前記線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、前記装置本体にそのチャック体の開放手段を設け、その開放手段に前記線材貯留手段を配置したことを特徴とする請求項4記載の線材繰り出し装置。
【請求項15】
前記線材貯留手段を巻き付け部の両端部に円盤状の鍔部を形成したリール部材としたことを特徴とする請求項4記載の線材繰り出し装置。
【請求項16】
前記繰り出し装置の外方に回転防止手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項17】
前記回転防止手段を膨出部としたことを特徴とする請求項16記載の線材繰り出し装置。
【請求項18】
前記回転防止手段を多角形、或いは、異形形状としたことを特徴とする請求項16記載の線材繰り出し装置。
【請求項19】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体の前方に線材保護管を設け、その線材保護管の内径を使用する線材の外径の2倍未満としたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項20】
軟質な材質からなる線材を繰り出す装置であって、その線材を把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体の前方に線材保護管を設け、その線材保護管の内径を使用する線材の外径の1.25倍以上としたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項21】
前記チャック体と線材保護管の間に線材案内部材を設け、その線材案内部材の最大内径を使用する線材の外径の2倍以上としたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項22】
前記チャック体の後方に線材挿着部材を配置し、その線材挿着部材の内面と外面に円錐部を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項23】
前記チャック体に線材案内パイプを挿着すると共に、その線材案内パイプの後端に線材挿着部材を配置したことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項24】
前記チャック体の前後方向の少なくとも一方にパイプを設け、そのパイプとチャック体とを連動させたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項25】
前記軟質な線材を線はんだ、或いは、やに入り線はんだとしたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の線材繰り出し装置。
【請求項26】
前記線はんだ、或いは、やに入り線はんだは、巻き付け部の両端部に円盤状の鍔部を形成したリール部材に巻き付けられていることを特徴とする請求項25記載の線材繰り出し装置。
【請求項27】
線材繰り出し装置に用いる線はんだであって、
前記線材繰り出し装置は、当該線はんだを把持・開放、且つ、前後動可能なチャック体で繰り出すと共に、そのチャック体の開放状態を維持する開放手段を配置した線材繰り出し装置であり、
当該線はんだは、ブリネル硬さ試験において硬度20以下の材料からなることを特徴とする線はんだ。
【請求項28】
巻き付け部の両端部に円盤状の鍔部を形成したリール部材に巻き付けられていることを特徴とする請求項27記載の線はんだ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【国際公開番号】WO2005/000515
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511033(P2005−511033)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008877
【国際出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】