説明

線状ブロック共重合体組成物

押出し成形品やブロー成形品だけでなく、射出成形品においても透明性と耐衝撃性等のバランスに優れるブロック共重合体組成物を提供すること。 分子量の異なる少なくとも3種の、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを有し、その重合体ブロックの混合物の分子量分布がある特定の範囲にあり、該混合物のGPCにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM2としたときM1/M2がある特定の範囲にある線状ブロック共重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの新規な線状ブロック共重合体組成物に関し、とりわけ透明性及び耐衝撃性に優れ、組成物それ自体としても、各種熱可塑性樹脂との配合用としても有用である線状ブロック共重合体組成物に関する。
【背景技術】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が比較的高いブロック共重合体は、その透明性や耐衝撃性等の特性を利用して、射出成形用途や、シート、フィルム等の押出成形用途等に幅広く使用されている。とりわけ該ブロック共重合体及び該ブロック共重合体を配合したスチレン系重合体組成物は、透明性、耐衝撃性等に優れることから、いくつかの提案がなされている。
例えば、ビニル芳香族炭化水素ブロック部の分子量分布を2.3〜4.5とした線状共重合体組成物あるいはビニル芳香族炭化水素ブロック部の分子量分布が2.8〜3.5で、かつブレンドによって製造される分岐状ブロック共重合体の組成物が特開昭52−78260号公報に記載される。そしてビニル置換芳香族炭化水素ブロック部の分子量分布を1.2〜2.0とした線状ブロック共重合体あるいは分岐状ブロック共重合体が特公平2−59164号公報に記載される。更には、カップリングに先立つ2つの線状共重合体におけるビニル置換芳香族炭化水素ブロック部の高分子量成分と低分子量成分の数平均分子量の比を3〜7とした分岐状ブロック共重合体およびその製造方法が特開昭53−286号公報に記載される。3つ以上のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを有する分岐状ブロック共重合体とその製造方法が特開平7−173232号公報参に記載される。ビニル芳香族炭化水素ブロック部の分子量分布を2.8〜3.5の範囲外とした分岐状ブロック共重合体を組み合わせる方法が特開昭57−28150号公報に記載されている。
しかし、これらの方法では、該ブロック共重合体及びそれを用いた各種熱可塑性樹脂との組成物は透明性と耐衝撃性等のバランスが悪く、特に射出成形は高剪断下で成形を行なうため成形品に異方性を生じやすく、ある一方に対して強度が弱くなる等、成形品として十分なものが提供できるとは言い難かった。
【発明の開示】
本発明者らはかかる現状に鑑み、押出し成形品やブロー成形品だけでなく、射出成形品においても透明性と耐衝撃性等のバランスに優れるブロック共重合体組成物を得るべく種々の検討を行った結果、分子量の異なる少なくとも3種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを有し、その重合体ブロックの混合物の分子量分布がある特定の範囲にあり、該重合体ブロックの混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM2としたときM1/M2がある特定の範囲にある線状ブロック共重合体組成物を使用することにより、射出成形品においても透明性を悪化することなく耐衝撃性が極めて改良されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、共重合体の全質量に基づいて、単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンを含有する線状ブロック共重合体の組成物であって、
該線状ブロック共重合体は、下記一般式
S−B−S
(式中、Sはビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックを表す)で表される分子量が異なる少なくとも3種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とするブロックを有する線状ブロック共重合体の混合物であり、かつ
▲1▼ ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物の分子量分布が3.35〜6の範囲にあり、
▲2▼ ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり、全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM2とするとき、M1/M2が12.5〜25の範囲にある
ことを特徴とする線状ブロック共重合体組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、線状ブロック共重合体組成物を測定条件2による測定で得たクロマトグラム。なお、図中、*1及び*2はそれぞれ下記を表わす。*1;全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中で、ピークトップ分子量が最大の値を有すピーク。*2;全ピーク面積に対する面積割合が15%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有すピーク。
図2は、線状ブロック共重合体組成物をオゾン分解物した後に水素化リチウムアルミニウムで還元することで得られるポリマー分のクロマトグラム。なお、図中、S1、S2及び*3はそれぞれ下記を表わす。S1;全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有すピーク。S2;ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり、全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピーク。*3;ピークトップ分子量が1.3万〜5万の範囲にあるピークの中で全ピーク面積に対する面積割合が3〜15%の範囲にあるピーク。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の線状ブロック共重合体組成物に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン,o−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−tertブチルスチレン,1,3−ジメチルスチレン,α−メチルスチレン,ビニルナフタレン,ビニルアントラセン等で、特に一般的なものとしてはスチレンが挙げられる。これら1種のみならず2種以上の混合物として用いても良い。
また、共役ジエンとしては、炭素数が4ないし8の1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン,2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン),2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン,1,3−ペンタジエン,1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、特に一般的なものとしては、1,3−ブタジエン,イゾプレンが挙げられる。これら1種のみならず2種以上の混合物として用いても良い。
本発明の線状ブロック共重合体組成物は、重合体の全質量に基づいて、単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンを含有する。該線状ブロック共重合体組成物が、単量体単位として95質量%を超えるビニル芳香族炭化水素および5質量%未満の共役ジエンを含有する場合は、得られる線状ブロック共重合体組成物は耐衝撃性が劣るようになり、好ましくない。一方、該線状ブロック共重合体組成物が、単量体単位として55質量%未満のビニル芳香族炭化水素および45質量%を超える共役ジエンを含有する場合も、得られる線状ブロック共重合体組成物は透明性、成形加工性、剛性、熱安定性等が劣るようになり、やはり好ましくない。
なお該線状ブロック共重合体組成物が、重合体の全質量に基づいて、単量体単位として60〜85質量%のビニル芳香族炭化水素および15〜40質量%の共役ジエンを含有すると、得られる線状ブロック共重合体組成物は耐衝撃性および透明性のバランスが一層良好なものになり好ましい。また、単量体単位として65〜75質量%のビニル芳香族炭化水素および25〜35質量%の共役ジエンを含有すると、得られる線状ブロック共重合体組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性等の物性バランスがなお一層良好なものになり、さらに好ましい。
本発明の線状ブロック共重合体組成物に含まれる線状ブロック共重合体は、下記一般式
S−B−S
(式中、Sはビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックを表す)で表される分子量の異なる少なくとも3種の、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを有する線状ブロック共重合体の混合物である。
即ち該線状ブロック共重合体組成物は、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを少なくとも3種、好ましくは3〜6種、さらに好ましくは3種含有しており、これにより本発明で得られる線状ブロック共重合体組成物は、耐衝撃性、透明性、成形加工性等の物性バランスが非常に優れるようになる。
また該重合体ブロックを少なくとも3種、好ましくは3〜6種、さらに好ましくは3種有することにより、ポリスチレン等のようなスチレン系樹脂との相容性も良好になるため、該ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性等の物性バランスも良好なものになる。このように本発明の線状ブロック共重合体組成物には、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックが少なくとも3種あることが必須である。
また、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物の分子量分布は3.35〜6の範囲にあることが本発明においては必須である。該重合体ブロック混合物の分子量分布がこの範囲にあると、該重合体ブロック混合物とポリスチレンを始めとするスチレン系樹脂との相容性が良好になるために、該線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の耐衝撃性及び透明性が著しく優れたものになる。該重合体ブロック混合物の分子量分布が3.35〜6の範囲から外れた場合は、該線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物は充分な耐衝撃性及び透明性が発現せず、また成形加工性で劣り好ましくない。
ところで、該重合体ブロック混合物の分子量分布が3.35〜6の範囲にある本発明の線状ブロック共重合体組成物のなかでも、該分子量分布が3.35〜4.5の範囲にある線状ブロック共重合体組成物は、線状ブロック共重合体組成物そのもの、或いは該線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の特性として、全光線透過率や曇度といった透明性と落錘試験等で評価される面衝撃性とのバランスが一段と優れている。一方、該分子量分布が4.5〜6の範囲にある線状ブロック共重合体組成物については、線状ブロック共重合体組成物そのもの、或いは線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の特性として、全光線透過率や曇度といった透明性は若干劣るものの、シャルピー衝撃試験等で評価されるノッチ存在下の耐衝撃性が特段に優れている。一方で該分子量分布が3.35未満であると線状ブロック共重合体組成物そのもの、或いは線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、6を越える範囲にあると該ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の透明性が劣り好ましくない。このように本発明では、該重合体ブロック混合物の分子量分布が3.35〜6の範囲で適切にコントロールすることによって、様々な特性を有する材料設計が可能であることが特徴となっている。
透明性と耐衝撃性とのバランスが一段と優れている線状ブロック共重合体組成物を与える該分子量分布3.35〜4.5の範囲のなかでも、より好ましくは3.5〜4.5の範囲、更に好ましくは3.5〜4の範囲が挙げられる。一方、ノッチ存在下の耐衝撃性が特段に優れている線状ブロック共重合体組成物を与える該分子量分布4.5〜6の範囲のなかでも、より好ましくは4.5〜5.5の範囲が、更に好ましくは4.5〜5の範囲が挙げられる。
なお、該ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックS1、S2及びS3の混合物を分取するには、Polymer,vol22,1721(1981)、Rubber Chemistry and Technology,vol.59,16(1986)或いはMacromolecules,vol.16,1925(1983)等に記載されるように、該線状ブロック共重合体を含有するブロック共重合体混合物をオゾン分解した後に水素化リチウムアルミニウムで還元して生じるポリマー分として得る方法が採用される。
このようにして分取された該重合体ブロック混合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件としては、理論段数32000段以上のGPCカラムで測定する。
より具体的には、下記の測定条件1が挙げられる。
[測定条件1]
溶媒(移動相):THF
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製TSKguardcolumn MP(×L)6.0mmID×4.0cm 1本、および東ソー社製TSK−GEL MULTIPORE HXL−M7.8mmID×30.0cm(理論段数16000段):2本とをTSKguardcolumn MP(×L)、TSK−GEL MULTIPORE HXL−M、TSK−GEL MULTIPORE HXL−Mの順序で計3本使用(全体として理論段数32000段)、
サンプル注入量:100μL(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm2
検出器:RI検出器
さらに本発明で得られる線状ブロック共重合体組成物においては、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有すピークに対応するピークトップ分子量をM2とするとき、M1/M2が12.5〜25の範囲にあることが必須である。M1/M2が12.5〜25の範囲にあると、得られる該線状ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が一層向上する。更に好ましいM1/M2の範囲として、12.7〜21.5の範囲が挙げられ、より一層好ましいM1/M2の範囲として、13〜20の範囲が挙げられる。
なおM1/M2が12.5未満であると線状ブロック共重合体組成物そのもの、或いは線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、25を越える範囲にあると透明性が該ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の透明性が劣り好ましくない。
また、該ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいてピークトップ分子量が1.3万〜5万の範囲にあるピークの中で全ピーク面積に対する面積割合が3〜15%の範囲にある成分のピークトップ分子量をM5とするとき、M5/M2が2〜4の範囲にあると、得られる該線状ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が一層向上する。更に好ましいM5/M2の範囲として、2.2〜3.6の範囲の組み合わせが挙げられる。M5/M2が2未満であると線状ブロック共重合体組成物そのもの、或いは線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の透明性が劣る場合があり、4を越える範囲にあると透明性が該ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂を混合して得られる樹脂組成物の耐衝撃性が劣る場合がある。
ここで前記ピークトップ分子量M1、M2、M5はGPCにより次のように求めることができる。即ち、該重合体ブロック混合物中のピーク成分のピークトップ分子量は該ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物をGPCにかけてGPC曲線を得る一方、単分散ポリスチレンをGPCにかけてそのピークカウント数と分子量から作成した検量線を用いて、常法[例えば、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー」、81〜85頁(1976年、日本国丸善株式会社発行)を参照]に従って算出することによって求められる。ここで、各ピークの面積割合を使って、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークを選択し、その成分に対応する前記ピークトップ分子量M1が求められ、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークを選択し、その成分に対応するピークトップ分子量M2が求められる。また、ピークトップ分子量が1.3万〜5万の範囲にあるピークの中で全ピーク面積に対する面積割合が3〜15%の範囲にあるピークを選択することで、その成分に対応するピークトップ分子量M5が求められる。なお、この該重合体ブロック混合物のGPCの測定条件は、理論段数32000段以上のGPCカラムで測定するのが良い。
より具体的には、前述の該ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロック混合物の分子量分布を求める際に説明した測定条件1が採用される。
ここで、該ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロック混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分をS1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応する成分をS2とする時、S1、S2のモル数の和に対するS1のモル数の割合が5〜25モル%の範囲にあると、該線状ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性と透明性、成形加工性のバランスが良好になり好ましい。特に好ましいS1、S2のモル数の和に対するS1のモル数の割合の範囲は6〜20モル%が挙げられ、更に好ましい範囲は6.5〜17モル%が挙げられる。特にS1、S2のモル数の和に対するS1のモル数の割合が5モル%未満の範囲にあると該線状ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の透明性が劣り好ましくなく、S1、S2のモル数の和に対するS1のモル数の割合が25モル%を越えると該線状ブロック共重合体組成およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が劣り好ましくない。
なおS1、S2のモル比は、本発明においては例えば、M1、M2の値とS1、S2の混合物のGPCによるクロマトグラム上の対応する各ピークの面積値からモル分率として計算できる。
また、線状ブロック共重合体組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性のバランスの点から、該ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロック混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量が9万〜20万、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量が0.45万〜2万にあることが好ましい。
さらに全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量が10万〜17万、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量が0.5万〜1万にあると一層好ましい。
さらにピークトップ分子量が1.3〜5万の範囲にあるピークの中で全ピーク面積に対する面積割合が3〜15%の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が1.4万〜2.5万にあると線状ブロック共重合体組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性のバランスの点から好ましく、ピークトップ分子量が1.6万〜2.3万にあるとより一層好ましい。
本発明の線状ブロック共重合体組成物は、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分の分子量分布が1.03未満であると、該線状ブロック共重合体組成物を含有する混合物の耐衝撃性、特に面衝撃性が一層向上するため好ましい。全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分の分子量分布の範囲として、更に好ましくは1.005〜1.025の範囲が挙げられる。
ここで前記ピークの、全ピーク面積に対する面積割合は、本発明の線状ブロック共重合体組成物をGPCで測定して得られたゲルパーミエーションクロマトグラムを使い、GPC用として市販されている標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用して、理論段数100000段以上のGPCカラムで測定するのが良い。より具体的には、下記の測定条件2が挙げられる。
[測定条件2]
溶媒(移動相):THF
流速:0.2ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:昭和電工製KF−G 4.6mmID×10cm 1本、および昭和電工製KF−404HQ 4.6mmID×25.0cm(理論段数25000段)4本をKF−G、KF−404HQ、KF−404HQ、KF−404HQ、KF−404HQの順序で計5本使用(全体として理論段数100000段))
サンプル注入量:10μL(試料液濃度2mg/ml)
送液圧力:127kg/cm2
検出器:RI検出器
さらに、本発明の線状ブロック共重合体組成物は、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM3、全ピーク面積に対する面積割合が15%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM4とするとき、M3/M4が2.5〜4.5の範囲にあることが好ましい。M3/M4が2.5〜4.5の範囲にあると、線状ブロック共重合体組成物とスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が一層向上するようになる。特に好ましいM3/M4の範囲として、2.9〜4の範囲が挙げられる。M3/M4が2.5未満の範囲にあると得られる該線状ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性が劣り好ましくなく、4.5を超えると該分線状ブロック共重合体組成およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の透明性が劣り好ましくない。
なお、前記ピークトップ分子量M3は、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分を選択し、そのピークトップ分子量を求めればよい。
前記ピークトップ分子量M4も同様に全ピーク面積に対する面積割合が15%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応する成分を選択し、そのピークトップ分子量を求めればよい。
なお、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックと共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックからなる線状ブロック共重合体組成物のピークトップ分子量も、前述の全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分の分子量分布を求める際に説明した条件と同様の条件で、GPCにより求めることができる。つまりM3、M4はPS換算値である。またこの共重合体のGPCの測定条件の具体例として、前述の測定条件2が採用される。
本発明の線状ブロック共重合体組成物は、ゲルパーミエーションクロマトグラムにおける最大ピーク面積を与える成分のピークトップ分子量が12万〜25万の範囲にあることが好ましく、更に好ましい範囲として14万〜22万の範囲が挙げられ、一層好ましくは15万〜20万の範囲が挙げられる。特にゲルパーミエーションクロマトグラムにおける最大ピーク面積を与える成分のピークトップ分子量が12万未満の範囲にあると、得られる該線状ブロック共重合体組成物およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の耐衝撃性、透明性、成形加工性が劣り好ましくなく、25万を超えると該分線状ブロック共重合体組成およびこれとスチレン系樹脂との混合樹脂組成物の透明性、成形加工性が劣り好ましくない。
線状ブロック共重合体組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムを得るには、好ましくは、理論段数100000段以上のGPCカラムで測定するのが良い。より具体的には、前述の測定条件2が採用される。
本発明の線状ブロック共重合体組成物の製造に用いられる有機溶剤としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素など公知の有機溶剤が使用できる。
また、有機リチウム化合物は分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどが使用できる。
本発明の線状ブロック共重合体組成物の製造においては、少量の極性化合物を溶剤に溶解してもよい。極性化合物は開始剤の効率を改良するため、また共役ジエンのミクロ組成を調整するため、或いはビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを共重合する際はランダム化剤として使用される。本発明の線状ブロック共重合体組成物の製造に用いられる極性化合物としては、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアミン類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルペンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられるが、好ましい極性化合物はテトラヒドロフランである。
本発明の線状ブロック共重合体組成物を製造する際の重合温度は一般に−10℃ないし150℃、好ましくは40℃ないし120℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、特に好適には0.5ないし10時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガスをもって置換することが望ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液層に維持するのに十分な圧力の範囲で行なえばよく、特に限定されるものではない。さらに重合系内には開始剤及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、たとえば、水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
重合終了後、水、アルコール、二酸化炭素、有機酸、無機酸等の活性水素を有する物質を重合停止剤として用い、活性末端を不活性化せしめるのに充分な量を添加することにより不活性化される。この際、例えば重合停止剤として水やアルコール類を使用する場合は重合鎖末端に水素が、二酸化炭素を使用する場合はカルボキシル基が導入される。従って、重合停止剤を適当に選ぶことにより末端に種々の官能基を有するブロック共重合体成分を含有する線状ブロック共重合体組成物を製造することもできる。
本発明における、下記一般式
S−B−S
で表される少なくとも3種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とするブロックを有する線状ブロック共重合体の混合物は、例えば、以下の▲1▼、▲2▼又は▲3▼の方法で得ることができる。
▲1▼ 炭化水素溶媒中において有機リチウム化合物を開始剤に用いた通常のリビングアニオン重合法により製造された上記一般式で表される線状ブロック共重合体を本発明で規定する範囲内でブレンドして得ることができる。或いは下記の方法で得ることもできる。
▲2▼ 初めに開始剤を用いてビニル芳香族炭化水素をアニオン重合した後、続いて重合系への開始剤およびビニル芳香族炭化水素の逐次添加を2回行なって、ピークトップ分子量の異なる3種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを形成させ、次いで共役ジエンを添加し、さらにビニル芳香族炭化水素の逐次添加を行い、その後ポリマーの活性末端を全て失活させるという順序により本発明で規定する範囲内のポリマーを得ることができる。
▲3▼ 初めに開始剤を用いてビニル芳香族炭化水素をアニオン重合した後、続いて重合系への開始剤およびビニル芳香族炭化水素の逐次添加を2回行なって、ピークトップ分子量の異なる3種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを形成させ、次いで共役ジエンを添加し、さらにビニル芳香族炭化水素の逐次添加を行い、その後ポリマーの活性末端の一部を不活性化させ、重合を継続した後、さらにビニル芳香族炭化水素を添加するという順序でも本発明で規定する範囲内のポリマーを得る事もできる。
以下に、前述した▲2▼、▲3▼の方法による線状ブロック共重合体組成物の製造方法についてさらに説明する。
まず1段目重合としてビニル芳香族炭化水素を単量体単位とするブロックを重合するが、これには目的の分子量が得られるように仕込み量を決定した上でビニル芳香族炭化水素、有機リチウム化合物開始剤、溶媒、及び必要に応じて極性化合物を溶解し、所定温度で重合を進める。溶媒の仕込み量としては溶媒と全モノマー量の仕込み量の比として、好ましくは溶媒/全モノマー量=20/1〜2/1(重量比)、さらに好ましくは溶媒/全モノマー量=10/1〜2.5/1(重量比)が挙げられる。溶媒/全モノマー量=20/1以上であると生産性で劣り、溶媒/全モノマー量=2/1以下であると重合液の粘度が上昇し反応に影響するため好ましくない。溶媒と極性化合物の仕込み量の比としては、好ましくは極性化合物/溶媒=1/100000〜1/1000(重量比)さらに好ましくは極性化合物/溶媒=1/10000〜1/3333(重量比)が挙げられる。極性化合物/溶媒=1/100000未満であると開始剤の効率が劣り、極性化合物/溶媒=1/1000を越えると共役ジエンのミクロ組成に影響を及ぼし耐衝撃性が劣るため好ましくない。
全モノマー量と1段目有機リチウム化合物開始剤の仕込み量の比としては、好ましくは1段目有機リチウム化合物開始剤/全モノマー量=1/4000〜1/6000(重量比)、さらに好ましくは1/4400〜1/5600(重量比)であり、全モノマー量と1段目ビニル芳香族炭化水素の仕込み量の比としては、好ましくは全モノマー量/1段目ビニル芳香族炭化水素=2/1〜4/1(重量比)、さらに好ましくは2.5/1〜3.5/1(重量比)である。また全有機リチウム化合物開始剤と1段目有機リチウム化合物開始剤の仕込み量の比としては、好ましくは全有機リチウム化合物開始剤/1段目有機リチウム化合物開始剤=3〜10(モル比)、さらに好ましくは4〜7(モル比)である。そして1段目の重合反応が完全に完了した時点で重合の終点とする。その後に所定量の有機リチウム化合物開始剤およびビニル芳香族炭化水素を新たに重合系に添加して、2段目重合に入るのが好ましい。なお重合の終点はサンプリングした重合液中の固形分濃度を測定して、所定濃度のポリマーが生成しているか否か確認することで判断できる。或いは未反応モノマーが実質的に残っていないことをガスクロマトグラフィー等で測定して判断してもよい。
この時添加する有機リチウム化合物開始剤およびビニル芳香族炭化水素の量は、1段目重合において生成したリビングポリマー活性末端から継続して合成されるポリマー鎖と、1段目重合終了時に新たに添加される有機リチウム化合物開始剤から合成されるポリマー鎖について、目的の分子量が得られるように仕込み量を決定する。
全モノマー量と2段目有機リチウム化合物開始剤の仕込み量の比としては、好ましくは2段目有機リチウム化合物開始剤/全モノマー量=1/1400〜1/11000(重量比)、さらに好ましくは1/2500〜1/9000(重量比)である。全有機リチウム化合物開始剤と2段目有機リチウム化合物開始剤の仕込み量の比としては、好ましくは全有機リチウム化合物開始剤/2段目有機リチウム化合物開始剤=1.5/1〜12/1(モル比)、さらに好ましくは2.5/1〜10.5/1(モル比)である。
また、全モノマー量と2段目ビニル芳香族炭化水素の仕込み量の比としては、好ましくは全モノマー量/2段目ビニル芳香族炭化水素=9.5/1〜25/1(重量比)、さらに好ましくは11/1〜24/1(重量比)である。ビニル芳香族炭化水素を添加して所定温度で重合を継続した後、重合反応が完全に完了した時点で2段目重合の終点とする。その後、所定量の有機リチウム化合物開始剤およびビニル芳香族炭化水素を新たに重合系に添加して、3段目重合に入るのが好ましい。なお重合の終点はサンプリングした重合液中の固形分濃度を測定して、所定濃度のポリマーが生成しているか否か確認することで判断できる。或いは未反応モノマーが実質的に残っていないことをガスクロマトグラフィー等で測定して判断してもよい。
この時添加する有機リチウム化合物開始剤およびビニル芳香族炭化水素の量は、1段目と2段目重合を通じて生成したリビングポリマー活性末端から継続して合成されるポリマー鎖と2段目重合終了時に新たに添加される有機リチウム化合物開始剤から合成されるポリマー鎖について、目的の分子量が得られるように仕込み量を決定する。全モノマー量と3段目有機リチウム化合物開始剤の仕込み量の比としては、好ましくは3段目有機リチウム化合物開始剤/全モノマー量=1/1000〜1/5500(重量比)、さらに好ましくは1/1000から1/2000(重量比)、より一層好ましくは1/1300〜1/1900である。全有機リチウム化合物開始剤と3段目有機リチウム化合物開始剤の仕込み量の比としては、好ましくは全有機リチウム化合物開始剤/3段目有機リチウム化合物開始剤=1.05/1〜6/1(モル比)、さらに好ましくは1.3/1〜2.1/1(モル比)である。また、全モノマー量と3段目ビニル芳香族炭化水素の仕込み量の比としては、好ましくは全モノマー量/3段目ビニル芳香族炭化水素=6/1〜10/1(重量比)、さらに好ましくは7/1〜9/1(重量比)である。
ビニル芳香族炭化水素を添加して所定温度で重合を継続した後、重合反応が完全に完了した時点で3段目重合の終点とする。その後所定量の共役ジエンを新たに重合系に添加して、4段目重合に入るのが好ましい。なお重合の終点はサンプリングした重合液中の固形分濃度を測定して、所定濃度のポリマーが生成しているか否か確認することで判断できる。或いは未反応モノマーが実質的に残っていないことをガスクロマトグラフィー等で測定して判断してもよい。
4段目重合では目的の分子量が得られるように仕込み量を決定した上で共役ジエンを添加する。全モノマー量と共役ジエンの仕込み量の比としては、好ましくは共役ジエン/全モノマー量=2.5/1〜5/1(重量比)、さらに好ましくは2.9/1〜4/1(重量比)である。共役ジエンを添加して所定温度で重合を継続した後、重合反応が完全に完了した時点で4段目重合の終点とする。なお重合の終点はサンプリングした重合液中の固形分濃度を測定して、所定濃度のポリマーが生成しているか否か確認することで判断できる。
5段目重合では目的の分子量が得られるように仕込み量を決定した上でビニル芳香族炭化水素を添加する。全モノマー量と5段目ビニル芳香族炭化水素の仕込み量の比としては、好ましくは全モノマー量/5段目ビニル芳香族炭化水素=6/1〜10/1(重量比)、さらに好ましくは7/1〜9/1(重量比)である。ビニル芳香族炭化水素を添加して所定温度で重合を継続した後、重合反応が完全に完了した時点で5段目重合の終点とする。その後、活性ポリマー鎖は、活性末端を全て不活性化させるのに十分な量の水、アルコールなどの重合停止剤により、活性末端を全て不活性化させても良いが、活性末端の一部を不活性化させるだけの量の水、アルコールなどの重合停止剤及び必要に応じて溶媒を添加し、一部の活性末端のみを不活性化させリビングアニオン重合を継続して、6段目重合に入っても良い。6段目重合での残存活性末端数としては、好ましくは、5段目重合での活性末端数/6段目重合での活性末端数=1.05〜2.5、さらに好ましくは1.1〜2である。なお、重合の終点はサンプリングした重合液中の固形分濃度を測定して、所定濃度のポリマーが生成しているか否か確認することで判断できる。或いは未反応モノマーが実質的に残っていないことをガスクロマトグラフィー等で測定して判断してもよい。
一部の活性末端のみを不活性化させリビングアニオン重合を継続したときは、6段目重合に入るが、6段目重合では目的の分子量が得られるように仕込み量を決定した上でビニル芳香族炭化水素を添加する。全モノマー量と6段目ビニル芳香族炭化水素の仕込み量の比としては、好ましくは全モノマー量/6段目ビニル芳香族炭化水素=10/1〜30/1(重量比)、さらに好ましくは14/1〜25/1(重量比)である。ビニル芳香族炭化水素を添加して所定温度で重合を継続した後、重合反応が完全に完了した時点で6段目重合の終点とする。なお、重合の終点はサンプリングした重合液中の固形分濃度を測定して、所定濃度のポリマーが生成しているか否か確認することで判断できる。或いは未反応モノマーが実質的に残っていないことをガスクロマトグラフィー等で測定して判断してもよい。その後、活性ポリマー鎖は、活性末端を全て不活性化させるのに十分な量の水、アルコールなどの重合停止剤により活性末端をすべて不活性化させることが好ましい。
このように本発明の線状ブロック共重合体組成物は、1段目、2段目、3段目の重合における開始剤量と1段目、2段目、3段目、5段目、6段目の重合におけるビニル芳香族炭化水素量、5段目重合終点での活性末端数の不活性化率を適切にコントロールすることで少なくとも分子量の異なる3種のビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを有し、▲1▼ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物の分子量分布(Mw/Mn)が3.35〜6の範囲にあり、▲2▼ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり、全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM2、とするとき、M1/M2が12.5〜25の範囲にあることを特徴とする線状ブロック共重合体組成物を得ることができる。
本発明の線状ブロック共重合体組成物には、必要に応じてさらに各種の添加剤を配合することができる。
ブロック共重合体組成物が各種の加熱処理を受ける場合や、その成形品などが酸化性雰囲気や紫外線などの照射下にて使用され物性が劣化することに対処するため、また使用目的に適した物性をさらに付与するため、たとえば安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料などの添加剤を添加できる。
安定剤としては、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートや、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
また、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチルなどの脂肪酸エステルやペンタエリスリトール脂肪酸エステル、さらにエルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイドや、エチレンビスステアリン酸アマイド、またグリセリン−モノ−脂肪酸エステル、グリセリン−ジ−脂肪酸エステル、その他にソルビタン−モノ−パルミチン酸エステル、ソルビタン−モノ−ステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどに代表される高級アルコールなどが挙げられる。
さらに耐候性向上剤としては2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系や2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート系、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、また、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン型耐候性向上剤が例として挙げられる。さらにホワイトオイルや、シリコーンオイルなども加えることができる。
これらの添加剤は本発明の線状ブロック共重合体組成物中、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0〜3質量%の範囲で使用することが望ましい。
この様にして得た線状ブロック共重合体組成物は、従来公知の任意の成形加工方法、例えば、押出成形,射出成形,中空成形などによってシート,発泡体,フィルム,各種形状の射出成形品,中空成形品,圧空成形品,真空成形品,2軸延伸成形品等極めて多種多様にわたる実用上有用な製品に容易に成形加工出来る。
本発明の線状ブロック共重合体組成物は、必要に応じて各種熱可塑性樹脂と配合して樹脂組成物とすることができる。
使用できる熱可塑性樹脂の例としては、ポリスチレン系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体、ポリエチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体、ポリブテン系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、ポリ酢酸ビニル系重合体、ポリアミド系重合体、熱可塑性ポリエステル系重合体、ポリアクリレート系重合体、ポリフェノキシ系重合体、ポリフェニレンスルフィド系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアセタール系重合体、ポリブタジエン系重合体、熱可塑性ポリウレタン系重合体、ポリスルフィン系重合体等が挙げられるが、好ましい熱可塑性樹脂はスチレン系重合体であり、とりわけポリスチレン樹脂、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体が好適に使用できる。
本発明の線状ブロック共重合体組成物と熱可塑性樹脂との配合質量比は、好ましくは線状ブロック共重合体組成物/熱可塑性樹脂=3/97〜90/10である。前記ブロック共重合体の配合量が3質量%未満の場合には、生成樹脂組成物の耐衝撃性の改良効果が充分でなく、また熱可塑性樹脂の配合量が10質量%未満の場合は熱可塑性樹脂の配合による剛性等の改善効果が充分でないので好ましくない。特に好ましい該線状ブロック共重合体組成物と熱可塑性樹脂との配合質量比は、線状ブロック共重合体組成物/熱可塑性樹脂=30/70〜80/20であり、さらに好ましくは線状ブロック共重合体組成物/熱可塑性樹脂=40/60〜70/30である。
本発明を更に詳細に説明するために以下に本発明の実施例を示すが、本発明の内容をこれらの実施例に限定するものでない。
尚、実施例および比較例において示すデータは、下記方法に従って測定した。
線状ブロック共重合体組成物のポリスチレン換算のピークトップ分子量、分子量分布、そして線状ブロック共重合体組成物の全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分の分子量分布はGPC法により、測定条件2で測定した。
なお、線状ブロック共重合体組成物のクロマトグラムにおけるそれぞれのピークについて全ピーク面積に対する面積割合を求める際は、各ピークについて、ベースラインと、各ピーク間の谷間からベースラインに向かって降ろした垂線で囲まれる部分の面積を算出し、該線状ブロック共重合体組成物の全体のクロマトグラムの面積に対する各ピークの面積割合として百分率で求めた。
線状ブロック共重合体組成物の全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分の分子量分布は、線状ブロック共重合体組成物のクロマトグラムにおける当該ピークを選定し、隣接するピークの間の谷間からベースラインに向かって垂線を降ろし、ベースラインと垂線で囲まれる部分のピークを用いて分子量分布を算出した。
また、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックのポリスチレン換算のピークトップ分子量、分子量分布は該線状ブロック共重合体組成物をオゾン分解した後に水素化リチウムアルミニウムで還元することで得られるポリマー分をGPC法により、測定条件1で測定することにより求めた。なお、該ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックのクロマトグラムにおけるそれぞれのピークについて全ピーク面積に対する面積割合を求める際も、線状ブロック共重合体組成物のクロマトグラムにおけるそれぞれのピークについて全ピーク面積に対する面積割合を求める際と同様、各ピークについて、ベースラインと、各ピーク間の谷間からベースラインに向かって降ろした垂線で囲まれる部分の面積を算出し、該線状ブロック共重合体組成物の全体のクロマトグラムの面積に対する各ピークの面積割合として百分率で求めた。
全光線透過率および曇価はJIS−K7105、シャルピー衝撃強度はJIS K−7111(ノッチ付き)に準拠し、射出成形機により樹脂ペレットから試験片を成形して測定した。同様に落錘衝撃強度は、厚さ2mmの平板を射出成形機により成形し、落錘グラフィックインパクトテスター(東洋精機製作所の計装化落錘衝撃試験機の商標)を用いて、高さ62cmより質量6.5kgの重鎮をホルダー(径40mm)に固定した試験片平面上に自然落下させ、重鎮下部に設けてあるストライカー(径12.7mm)によって試験片を完全破壊または貫通させ、この時に要した全エネルギー(全吸収エネルギーと称す)を測定した。また、線状ブロック共重合体組成物中のポリブタジエンゴム成分量(PBd量)は、二重結合に塩化ヨウ素を付加して測定するハロゲン付加法により求めた。さらに高温化における流動性(MFR)はJIS K−7210に準拠し測定した。
【実施例1】
線状ブロック共重合体組成物は炭化水素溶媒中において有機リチウム化合物を開始剤に用いた通常のリビングアニオン重合法により得られる。
具体的な実施方法は、内容積10Lのジャケット・撹拌機付きステンレス製重合槽を、シクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において、テトラヒドロフラン150ppmを含む、水分含量7ppm以下に脱水したシクロヘキサン4200gを重合槽に仕込み、次に水分含量7ppm以下に脱水したスチレン377gを加えた。内温50℃に昇温後、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を4.2ml添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(1段目重合)。
次に、内温50℃一定の条件下で、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を4.7ml、続いて水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを80g添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(2段目重合)。
その後、内温50℃一定の条件下で、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を7.8ml、続いて水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを142gを添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(3段目重合)。
さらに、内温80℃に昇温後、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエンを310g添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(4段目重合)。
その後、内温80℃一定の条件下で、水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを142gを添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(5段目重合)。
最後に全ての重合活性末端をメタノールにより失活させた。安定剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾールをポリマー100質量部に対し0.2質量%の割合で添加してから重合液をシクロヘキサンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより粉末状のポリマーを得た。
得られた粉末状のポリマーを20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。
各種仕込み値を表1に各種分析値を表2〜3に固体物性評価結果を表4にそれぞれ示す。
また、実施例1の線状ブロック共重合体組成物の測定条件2による測定で得たクロマトグラムを図1に、得られた線状ブロック共重合体組成物をオゾン分解物した後に水素化リチウムアルミニウムで還元することで得られるポリマー分のクロマトグラムを図2に示す
実施例2〜3及び比較例1〜4
実施例1と同様に表1に示す処方を用いてペレットを得た。
各種分析値を表2〜3に固体物性評価結果を表4にそれぞれ示す。




【実施例4】
内容積10Lのジャケット・撹拌機付きステンレス製重合槽を、シクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において、テトラヒドロフラン150ppmを含む、水分含量7ppm以下に脱水したシクロヘキサン4400gを重合槽に仕込み、次に水分含量7ppm以下に脱水したスチレン360gを加えた。内温50℃に昇温後、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を3.0ml添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(1段目重合)。
次に、内温50℃一定の条件下で、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を1.5ml、続いて水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを45g添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(2段目重合)。
その後、内温50℃一定の条件下で、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を10.4ml、続いて水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを136gを添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(3段目重合)。
さらに、内温80℃に昇温後、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエンを340g添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(4段目重合)。
その後、内温80℃一定の条件下で、水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを136gを添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(5段目重合)。
さらに30mlのシクロヘキサンに分散させた0.28gの水を添加し重合活性末端の一部を失活させ、続いて水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを73gを添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(6段目重合)。
最後に全ての重合活性末端をメタノールにより失活させた。安定剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾールをポリマー100質量部に対し0.2質量%の割合で添加してから重合液をシクロヘキサンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより粉末状のポリマーを得た。
得られた粉末状のポリマーを20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。各種仕込み値を表5に各種分析値を表6〜7に固体物性評価結果を表8にそれぞれ示す。
実施例5および比較例5〜6
実施例4と同様に表5に示す処方を用いて粉末状のポリマーを得た。
各種分析値を表6〜7に固体物性評価結果を表8にそれぞれ示す。




参考例1
実施例1と同様に表9に示す処方を用いて重合を行なった。

【実施例6】
前記の参考例1で得られた粉末状のポリマー260gと比較例2で得られた粉末状のポリマー250gをブレンドした後、20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。
各種分析値を表10〜11に、固体物性評価結果を表12にそれぞれ示す。



比較例7
参考例1で得られた粉末状のポリマー260gと比較例2で得られた粉末状のポリマー350gをブレンドした後20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。
各種分析値を表10〜11に固体物性評価結果を表12にそれぞれ示す。
参考例2
表13に示す処方を用い以下の手順で粉末状のポリマーを得た。
内容積3Lのジャケット・撹拌機付きステンレス製重合槽を、シクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において、テトラヒドロフラン150ppmを含む、水分含量7ppm以下に脱水したシクロヘキサン1360gを重合槽に仕込み、次に水分含量7ppm以下に脱水したスチレン257gを加えた。内温50℃に昇温後、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を2.0ml添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(1段目重合)。
次に、内温80℃に昇温後、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエンを33g添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(2段目重合)。
その後、内温80℃一定の条件下で、水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを37gを添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(3段目重合)。
最後に全ての重合活性末端をメタノールにより失活させた。安定剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾールをポリマー100質量部に対し0.2質量%の割合で添加してから重合液をシクロヘキサンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより粉末状のポリマーを得た。

【実施例7】
参考例1で得られた粉末状のポリマー325gと後述する参考例2で得られた粉末状のポリマー50gをブレンドした後20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。
各種分析値を表10〜11に固体物性評価結果を表12にそれぞれ示す。
比較例8
参考例1で得られた粉末状のポリマー250gと参考例2で得られた粉末状のポリマー100gをブレンドした後20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。
各種分析値を表10〜11に固体物性評価結果を表12にそれぞれ示す。
比較例9
内容積10Lのジャケット・撹拌機付きステンレス製重合槽を、シクロヘキサンで洗浄し窒素置換後、窒素ガス雰囲気下において、テトラヒドロフラン150ppmを含む、水分含量7ppm以下に脱水したシクロヘキサン4360gを重合槽に仕込み、次に水分含量7ppm以下に脱水したスチレン474gを加えた。内温50℃に昇温後、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を5.2ml添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(1段目重合)。
次に、内温50℃一定の条件下で、n−ブチルリチウム10質量%のシクロヘキサン溶液を6.9ml、続いて水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを209g添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(2段目重合)。
さらに、内温80℃に昇温後、モレキュラーシーブを通過させて脱水したブタジエンを310g添加し最高温度が120℃を超えない範囲で20分間重合させた(3段目重合)。
その後、内温80℃一定の条件下で、水分含量7ppm以下に脱水したスチレンを100gを添加し、最高温度が120℃を超えない範囲で15分間重合させた(4段目重合)。
最後に全ての重合活性末端をメタノールにより失活させた。安定剤として2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾールをポリマー100質量部に対し0.2質量%の割合で添加してから重合液をシクロヘキサンで希釈し、この溶液を大量のメタノール中に注ぐことでポリマー分を析出させ、これを真空乾燥することにより粉末状のポリマーを得た。
得られた粉末状のポリマーを20mm単軸押出機に供給して210℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。
各種仕込み値を表14に各種分析値を表15〜16に固体物性評価結果を表17にそれぞれ示す。
比較例10〜11
比較例9と同様に表14に示す処方を用いてペレットを得た。
各種分析値を表15〜16に固体物性評価結果を表17にそれぞれ示す。




実施例8〜14および比較例12〜22
実施例1〜7および比較例1〜11で得られた線状ブロック共重合体組成物と汎用ポリスチレン(東洋スチレン(株)社製:G14L)とを線状ブロック共重合体組成物/汎用ポリスチレン=6/4の重量比率でブレンドした後、20mm単軸押出機に供給して230℃でダイスから溶融ストランドを引き出し、水冷し、カッターにて切断してペレット状の樹脂を得た。その後実施例1と同様に物性を評価した。結果を表18〜20に示す。



【産業上の利用可能性】
本発明の線状ブロック共重合体組成物は各種熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂の改質材,履物の素材,粘着剤・接着剤の素材,アスファルトの改質材,電線ケーブルの素材,加硫ゴムの改質材等、従来ブロック共重合体が利用されている用途に使用することができる。特に、本発明の線状ブロック共重合体組成物を各種熱可塑性樹脂配合した組成物は、シート及びフィルム用の素材として有効であり、優れた透明性,耐衝撃性及び低温特性を生かして食品包装容器の他、日用雑貨包装用,ラミネートシート・フィルムとしても活用できる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体単位として55〜95質量%のビニル芳香族炭化水素および5〜45質量%の共役ジエンを含有する線状ブロック共重合体組成物であって、
該線状ブロック共重合体は、下記一般式
S−B−S
(式中、Sはビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエンを単量体単位とする重合体ブロックを表す)で表される分子量の異なる少なくとも3種の、ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックを有する線状ブロック共重合体の混合物であり、かつ
▲1▼ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物の分子量分布(Mw/Mn)が3.35〜6の範囲にあり、
▲2▼ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロックの混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり、全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM2とするとき、M1/M2が12.5〜25の範囲にある、
ことを特徴とする線状ブロック共重合体組成物。
【請求項2】
ビニル芳香族炭化水素を単量体単位とする重合体ブロック混合物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分をS1、ピークトップ分子量が5万以下の範囲にあり全ピーク面積に対する面積割合が20%以上の範囲にあるピークの中で最小のピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応する成分をS2とする時、S1、S2のモル数の和に対するS1のモル数の割合が、5〜25モル%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の線状ブロック共重合体組成物。
【請求項3】
請求項1記載のピークトップ分子量M2が0.45万〜2万の範囲にあることを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載の線状ブロック共重合体組成物。
【請求項4】
請求項1記載のピークトップ分子量M1が9万〜20万の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の線状ブロック共重合体組成物。
【請求項5】
線状ブロック共重合体組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中で、ピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応する成分の分子量分布(Mw/Mn)が1.03未満であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の線状ブロック共重合体組成物。
【請求項6】
線状ブロック共重合体組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、全ピーク面積に対する面積割合が30%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最大の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM3、全ピーク面積に対する面積割合が15%以上の範囲にあるピークの中でピークトップ分子量が最小の値を有するピークに対応するピークトップ分子量をM4とするとき、M3/M4が2.5〜4.5の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の線状ブロック共重合体組成物。
【請求項7】
線状ブロック共重合体組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムにおいて、最大ピーク面積を与える成分のピークトップ分子量が12万〜25万の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の線状ブロック共重合体組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の線状ブロック共重合体組成物と、該線状ブロック共重合体組成物以外の熱可塑性樹脂とを含有する組成物。
【請求項9】
線状ブロック共重合体組成物/熱可塑性樹脂の質量比が30/70〜70/30である請求項8の組成物。
【請求項10】
熱可塑性樹脂がポリスチレン系重合体である請求項8又は9の組成物。

【国際公開番号】WO2004/085504
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504019(P2005−504019)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003717
【国際出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】