説明

線状体用梱包箱

【課題】 線状体を巻いたボビンを収納したまま、ボビンからの線状体の繰り出し用の装置として利用でき、しかも、繰り出し前の変形等を回避でき、円滑な繰り出し作業を確実に実現できる線状体用梱包箱の提供。
【解決手段】 四角枠状の箱本体部2の相対する一対の側壁部に、ボビン12の回転軸を通す軸受け孔を形成するためのミシン目6が形成されている線状体用梱包箱1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光ファイバ、電線などといった線状体を巻いたボビンを収納する梱包箱に係り、特に、線状体を繰り出すための繰り出し装置としての機能を持つ線状体用梱包箱に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ心線や光ファイバコード、電線等の線状体は、プラスチックあるいは発泡スチロールなどといった材料で形成されたボビンに巻かれ、ダンボール製の梱包箱に梱包して、布設業者などへ供給される。布設業者は、線状体が巻かれたボビンをダンボールから取り出し、繰り出し用の繰り出し装置101(図9)などを用いて、現場で繰り出し作業を行う。図9において、符号102は線状体、103はボビンである。
繰り出し装置が無い場合は、ボビンを手で持って繰り出し作業を行うこともある。
なお、線状体が巻かれたボビンを収納する梱包箱としては、例えば、特許文献1〜3のものが知られている。
【特許文献1】特開平11−335004号公報
【特許文献2】特開2004−217354号公報
【特許文献3】登録実用新案第3038095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のように梱包箱からボビンを取り出して線状体の繰り出し作業を行うのでは、現場などで梱包箱からボビンを取り出す作業に手間が掛かる(特に、梱包箱にボビンが複数収納されている場合など)といった問題があった。また、繰り出し装置が無い場合、手でボビンを持ちながら作業を行うとなると、労力を要する。
【0004】
一方、特許文献1、2、3に開示された梱包箱は、箱内部に設けられた軸受けで、ボビンの回転軸を支持した状態で、ボビンを収納する構造になっている。この構造の梱包箱は、梱包箱自体を、線状体の繰り出し用の繰り出し装置として機能させることができるため、線状体の繰り出し時に、梱包箱からボビンを取り出す手間を解消できる。しかしながら、この梱包箱は、ボビンを、回転できる状態で収納するため、運送時などに線状体の巻き緩みが発生することがあり、この巻き緩みによる線状体の落ち込みで、線状体の繰り出しが困難になるといった問題がある。また、ボビンを収納したまま長期保管されたり、運送時などに長時間にわたって振動が与えられたりすると、回転軸を支持している梱包箱の側壁部、あるいは、回転軸を支持するために梱包箱内に設けたダンボール板が、線状体を巻いたボビンの重みで変形して、回転軸の傾斜などが生じ、線状体の繰り出し作業に支障を来すといった問題もある。このため、この梱包箱によっても、問題の根本的な解決には至らない。
【0005】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、
(a)内部に収納したボビンを取り出すことなく、内部にボビンを収納した状態で、ボビンからの線状体の繰り出し作業を行うことができる、
(b)しかも、巻き緩みによる線状体の落ち込みや、線状体の繰り出し前の箱の変形等といった不都合を回避でき、線状体の円滑な繰り出しを確実に実現できる、
線状体用梱包箱の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、線状体を巻いたボビンを収納する線状体用梱包箱において、側壁部に、前記線状体の繰り出し時にボビンを箱底壁から離隔した位置に回転可能に軸支する回転軸が通される軸受け孔を形成するためのミシン目が設けられ、前記ミシン目を破ることで前記軸受け孔を形成できるようになっていることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の線状体用梱包箱において、前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための円形の切断線を形成していることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の線状体用梱包箱において、前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための多角形の切断線を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、側壁部のミシン目を破って形成した軸受け孔にボビンの回転軸を通すことで、ボビンを回転可能に支持できる。これにより、この線状体用梱包箱を、線状体を繰り出すための繰り出し装置として機能させることができる。
ミシン目を破って軸受け孔を形成する作業は線状体用梱包箱の外から行うことができる。そして、線状体用梱包箱の外から、回転軸を軸受け孔とボビンとに通し、ボビンを回転可能に支持すれば、線状体用梱包箱を、線状体を繰り出すための繰り出し装置として機能させることができる。したがって、線状体の繰り出しのためにボビンを回転可能に支持する作業を、線状体用梱包箱からボビンを取り出すことなく行うことができる。
また、この線状体用梱包箱の内部にボビンを収納(格納)した状態では、ボビンを回転軸で軸支している訳では無いため、箱内でボビンが回転しにくい。このため、運搬時のボビンの回転による線状体の巻き緩みといった不都合を生じにくい。
また、ボビンを回転可能な状態で収納する梱包箱のように、回転軸を支持する梱包箱の側壁部(あるいは回転軸を支持するためのダンボール板)が、線状体を巻いたボビンの重みで変形して、線状体の繰り出し作業に支障を来すといった不都合も生じにくい。
このため、線状体の円滑な繰り出しを確実に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る線状体用梱包箱1を示す全体斜視図、図2は前記線状体用梱包箱1を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、図3は線状体用梱包箱1の箱本体部2に形成した軸受け孔3に、線状体11を巻いたボビン12を軸支するための回転軸13を通す作業を示す斜視図、図4は線状体用梱包箱1を用いて組み立てた繰り出し装置21を示す側面図、図5は図4の繰り出し装置21を示す斜視図である。
【0009】
まず、図1〜図3を参照して、前記線状体用梱包箱1の構成を説明する。
なお、図1〜図3において、上側を上、下側を下として説明する。また、図2(a)における左右を前後、図2(b)における左右を左右として説明する。
【0010】
図1〜図3に示すように、線状体用梱包箱1はダンボール製であり、4つの側壁部2a、2b、2c、2dからなる四角枠状の箱本体部2と、この箱本体部2の上下の開口部(図3の符号2eを参照)を塞ぐ蓋部4とを具備している。
【0011】
また、図1、図2(a)、(b)は、線状体用梱包箱1の内部に、線状体11を巻いたボビン12を収納した状態を示す。以下、線状体11を巻いたボビン12を線状体用梱包箱1の内部に収納(格納)した状態のものを、貯線ユニット(符号1Aを付す)と称する場合がある。
【0012】
箱本体部2を構成する各側壁部2a、2b、2c、2dの上下両端からは、箱上下の蓋部4を構成する蓋板(符号4a、4b、4c、4d参照)がそれぞれ延出されている。なお、図1〜図3において、箱下側の蓋板の図示は省略している。
線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cから延びる蓋板4a、4cと、線状体用梱包箱1の左右の側壁部2b、2dから延びる蓋板4b、4cとを、箱本体部2の開口部2eに折り込んで、開口部2eを塞ぐことで、蓋板4a、4cと蓋板4b、4dとが重ね合わされた板状の蓋部4が構成される。蓋板4a、4b、4c、4dを開くと、開口部2eを開放できる。箱本体部2の開口部2eは、蓋板4a、4b、4c、4dによって開閉できる。
【0013】
線状体用梱包箱1の内部空間は、線状体11が巻かれたボビン12を収納する収納空間5として機能する。ボビン12は、上下が蓋部4によって閉じられた線状体用梱包箱1の内部に収納した状態(貯線ユニット1Aの状態)で運送することができる。
【0014】
線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cには、前記ボビン12の回転軸13を通す軸受け孔3を形成するためのミシン目6が設けられている。ミシン目6を破ると、箱本体部2の前後の側壁部2a、2cに軸受け孔3を開口させることができる。
【0015】
なお、図示例の線状体用梱包箱1は、平面視長方形の外観六面体であり、上下の蓋部4は、長方形板状である。箱本体部2の4つの側壁部2a、2b、2c、2dの内、前後の側壁部2a、2cは、長方形板状の蓋部4の一対の長辺に対応する位置に設けられ、左右の側壁部2b、2dは、蓋部4の一対の短辺に対応する位置に設けられている。
軸受け孔3を形成するためのミシン目6は、線状体用梱包箱1の箱本体部2の相対する一対の側壁部に設けられていれば良く、形成位置が、左右の側壁部2b、2dであっても良い。
また、本発明に係る線状体用梱包箱は、箱本体部に、軸受け孔3用のミシン目6を形成するための相対する一対の側壁部を有するものであれば良く、必ずしも、平面視長方形の外観六面体である必要は無い。この点、例えば、箱本体部2の4つの側壁部2a、2b、2c、2dと上下の蓋部4とが同じサイズになっている外観立方体のものや、箱本体部の4つの側壁部の内、軸受け孔3用のミシン目6が形成される一対の側壁部以外が、湾曲板状になっているもの等であっても良い。
【0016】
軸受け孔3は、例えば、前後の側壁部2a、2cに開口する円形の開口部であるが、これに限定されず、様々な形状を採用できる。前後の側壁部2a、2cに開口する開口部である軸受け孔3の形状としては、例えば、六角形(図8(a)参照)、菱形(図8(b)参照)、五角形(図8(c)参照)などの多角形も採用できる。
【0017】
前記ミシン目6は、前後の側壁部2a、2cに軸受け孔3を形成するために、箱本体部2(詳細には側壁部2a、2c)の一部を切り取るための切断線として機能する。ミシン目6によって形成される切断線は、例えば、形成する軸受け孔3の形状(外周)に対応する形状で設けられる。例えば、軸受け孔3が円形であれば切断線を円形に形成し、軸受け孔3が六角形等の多角形であれば切断線を多角形に形成する。
【0018】
前記ミシン目6の形成位置は、線状体11の繰り出し時(つまり、線状体用梱包箱1を繰り出し装置として機能させるとき。図4、図5参照。)に下側に配置される蓋部4(本発明に係る「箱底壁」。以下、繰り出し時底壁、とも言う)と軸受け孔3に通される回転軸13との間の距離h1(図4参照)が、前記ボビン12の半径rよりも大きいように設定する。これにより、繰り出し時に、ボビン12が繰り出し時底壁41に接触しなくなり、軽い力で円滑に回転できる。
繰り出し時底壁41から軸受け孔3までの「距離h1」とは、繰り出し時底壁41から、軸受け孔3に通した回転軸13に回転可能に軸支されるボビン12の回転中心(換言すれば、回転軸13の断面中心)までの距離を指す。
【0019】
図2(a)、(b)に示すように、箱本体部2は、ボビン12のサイズよりも若干大きく形成されており、線状体用梱包箱1内に収納したボビン12と箱本体部2内面との間にクリアランスを確保できる。ミシン目6の形成位置は、詳細には、前述の距離h1を確保でき、しかも、ミシン目6を破って形成した軸受け孔3に通した回転軸13に軸支したボビン12と箱本体部2の内面との間にクリアランスを確保できる位置になっている。
軸受け孔3に通した回転軸13に軸支したボビン12は、前後の側壁部2a、2cに接触し得るが、前記クリアランスによって、前後の側壁部2a、2cとの接触が、ボビン12の円滑な回転の支障になることは無い。このため、ボビン12は軽い力で円滑に回転できる。
図2(a)、(b)では、ボビン12と箱本体部2内面との間に確保されるクリアランスを誇張して大きく図示しているが、本発明では、前記クリアランスを小さくして、運搬時などにボビン12が繰り出し時底壁41上を転動することを防止する。これにより、ボビン12の回転による線状体11の巻き緩みを防止できる。
【0020】
なお、線状体用梱包箱1には、線状体11の繰り出し時の上下(天地)の向きを示す目印7を設けておくことが好ましい。
繰り出し時底壁41を構成する蓋部4は、線状体用梱包箱1を用いて繰り出し装置21を組み立てる作業において開く必要が無いため、必ずしも、4枚の蓋板4a〜4dで開閉可能な構造とする必要は無い。繰り出し時底壁41は、例えば、箱本体部2から連続するダンボール板、箱本体部2に別途固定した一枚のダンボール板などによって構成しても良い。
【0021】
前後の側壁部2a、2cに形成される軸受け孔3の位置は、収納空間5を介して対称であり、繰り出し時底壁41から軸受け孔3までの「距離h1」も同じである。
ボビン12の回転軸13は、側壁部2a、2cの軸受け孔3に通すことで、繰り出し時底壁41と平行に支持される。
【0022】
ボビン12の回転軸13は、棒状の部材であり、ボビン12とは別体になっている。
線状体用梱包箱1にボビン12を回転可能に支持する場合、線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cに開口した軸受け孔3と、線状体用梱包箱1内のボビン12に貫通されている軸挿入孔12aとに、線状体用梱包箱1の外から、回転軸13を通し、回転軸13の両端を側壁部2a、2cに支持させれば良い。
側壁部2a、2cの軸受け孔3には、回転軸13の両端が嵌め込まれる。
【0023】
線状体11は、ここでは、光ファイバ心線あるいは光ファイバコードあるいは光ファイバケーブルである。線状体11としては、これに限定されず、例えば、電線等であっても良い。但し、線状体11としては、ダンボール製の線状体用梱包箱1の強度等に鑑みて、例えば電力ケーブル等の重量の大きいものは排除される。ここで採用し得る線状体11としては、比較的重量の軽いものである。
線状体11の繰り出し時に線状体用梱包箱1に支持するボビン12の重量(ボビン12自体の重量と、ボビン12に巻いた線状体11の重量との合計)は、線状体用梱包箱1に繰り出し作業の支障となるような破壊や変形を生じさせないために、重すぎるものは排除される。
【0024】
ボビン12は、貫通孔である軸挿入孔12aを有するリング状に形成されている。ボビン12の形成材料は、例えばプラスチック、発泡スチロールなどを採用できるが、木や紙などであっても良い。
回転軸13の形成材料としては、例えば、紙、プラスチック、金属等を採用できる。
【0025】
次に、ボビン12から線状体11を繰り出すため、線状体用梱包箱1を利用して繰り出し装置21を組み立てる手順の一例を説明する。
まず、線状体11を巻いたボビン12を内部に収納した状態で(貯線ユニット1A)、線状体用梱包箱1を、線状体11を使用する現場に搬入する。
次に、以下の(1)〜(3)に記載のことを行う。但し、(1)、(2)、(3)の順序は任意である。
(1)線状体用梱包箱1は、上下の蓋部4の内、繰り出し時底壁41が下となる向きにする(図1、図2の状態)。
(2)前後の側壁部2a、2cのミシン目6を破って、側壁部2a、2cに軸受け孔3を形成する。
(3)上側の蓋部4を開いて、箱本体部2の開口部2eを開放する(図3参照)。
【0026】
次に、収納空間5内のボビン12を少し持ち上げて、ボビン12の軸挿入孔12aを、前後の側壁部2a、2cの軸受け孔3の間に位置するように位置決めし、側壁部2a、2cの軸受け孔3とボビン12の軸挿入孔12aとに、回転軸13を通す(図3、図4参照)。回転軸13は、線状体用梱包箱1の外側から、線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cの軸受け孔3と、ボビン12の軸挿入孔12aとに貫通させ、両端を、前後の側壁部2a、2cの軸受け孔3に支持させる。これにより、ボビン12が、箱本体部2に支持された回転軸13に回転可能に軸支される。
ボビン12を回転軸13に軸支する作業にあたり、ボビン12を線状体用梱包箱1から取り出す必要は無い。
なお、図3では、線状体用梱包箱1の構造を示すため、ボビン12が、線状体用梱包箱1から外に出された状態に図示したが、ボビン12を回転軸13に軸支する作業にあたり、ボビン12を線状体用梱包箱1から取り出すことを示すものでは無い。
【0027】
以上により、繰り出し装置21の組み立てが完了する(図4、図5の状態)。
線状体11は、繰り出し装置21の上側の開口部2e(詳細には、箱本体部2の開口部2e)から引き出すようにして、繰り出すことができる。
【0028】
なお、線状体用梱包箱1の箱本体部2に、線状体11の引き出し用の引出口を設けても良い。箱本体部2に、引出口用のミシン目を形成しても良い。
【0029】
前記線状体用梱包箱1によれば、ボビン12を回転軸13に軸支する作業を、ボビン12を該線状体用梱包箱1から取り出すことなく行える。
【0030】
また、この線状体用梱包箱1の内部にボビン12を収納した状態(貯線ユニット1Aの状態)では、ボビン12を回転軸13で軸支している訳では無いため、箱内でのボビン12の回転が生じにくい。このため、運搬時のボビン12の回転による線状体11の巻き緩みといった不都合を生じにくい。箱内に、ボビン12の回転を規制するための特別な手段を設けるといった必要性も無い。
【0031】
ボビンを収納した状態(貯線ユニット1Aの状態)では、線状体11を巻いたボビン12の重みが線状体用梱包箱1の箱本体部2に作用する訳ではない。このため、特許文献1、2、3記載の技術のように、ボビンの回転軸を支持した梱包箱の側壁部(あるいは回転軸を支持するためのダンボール板)が、線状体を巻いたボビンの重みで変形して、線状体の繰り出し作業に支障を来す、といった不都合が生じることを回避できる。
【0032】
(別実施形態)
次に、本発明の別実施形態を説明する。
図6は、この実施形態の線状体用梱包箱50を示す正面図、図7は、線状体用梱包箱50を用いて繰り出し装置(符号22)を組み立てた状態を示す正面図である。
図6、図7に示すように、線状体用梱包箱50は、箱本体部2における軸受け孔10用のミシン目11の形成位置が、前述した線状体用梱包箱1と異なっている。軸受け孔10形成用のミシン目11の位置以外の構成は、前述した線状体用梱包箱1と同様である。
【0033】
前記線状体用梱包箱50において、軸受け孔10用のミシン目11の形成位置が箱本体部2の前後の側壁部2a、2cであること、及び、ミシン目11を破ることで形成される軸受け孔10の繰り出し時底壁41からの距離h1が、前記ボビン12の半径rよりも大きいことは、前述した線状体用梱包箱1と同様である。
但し、軸受け孔10用のミシン目11の形成位置は、ミシン目11を破って形成される軸受け孔10の、繰り出し作業時における箱本体部2上端(以下、繰り出し時上端とも言う。符号2f)からの距離h2が、前記ボビン12の半径rと同じになるように設定する。
前記距離h2は、軸受け孔10に嵌め込まれる回転軸13の断面中心の、繰り出し時上端2fからの距離を指す。
【0034】
ボビン12に巻かれた線状体11の繰り出し作業のために、線状体用梱包箱50を用いて繰り出し装置22を組み立てる手順の一例を説明する。
まず、図6のように、線状体11が巻かれたボビン12を収納(格納)した状態(貯線ユニットの状態)の線状体用梱包箱50を、繰り出し時底壁41が上となる向きにして置く。そして、線状体用梱包箱50の向き(繰り出し時底壁41が上)を維持したまま、ミシン目11を破って箱本体部2の相対する一対の側壁部2a、2cに形成しておいた軸受け孔10と、ボビン12の軸挿入孔12aとに、回転軸13を通し、側壁部2a、2cの軸受け孔10に嵌め込んだ回転軸13の両端を側壁部2a、2cに支持させる。
【0035】
この線状体用梱包箱50では、軸受け孔10の繰り出し時上端2fからの距離h2をボビン12の半径rに揃えてあるため、図6のように、繰り出し時上端2fが下の状態では、ボビン12の軸挿入孔12aと側壁部2a、2cの軸受け孔10との位置が揃っている。ボビン12の軸挿入孔12aと側壁部2a、2cの軸受け孔10との間に位置ずれがある場合でも、例えば、ボビン12を、上下の蓋部4の内の繰り出し時上端2f側の蓋部4上で微動させるだけで、ボビン12の軸挿入孔12aと側壁部2a、2cの軸受け孔10とが一直線上に配置されるように、ボビン12の位置を簡単に調整できる。つまり、ボビン12に回転軸13を通すにあたり、ボビン12を持ち上げる必要が無い。
したがって、側壁部2a、2cの軸受け孔10とボビン12の軸挿入孔12aとに回転軸13を通す作業の作業性を向上できる。
【0036】
次いで、線状体用梱包箱50を上下反転させ、繰り出し時上端2f側の蓋板4を構成する蓋板4a〜4dを開いて箱本体部2の開口部2eを開放し、ボビン12に巻かれている線状体11を開口部2eから引き出せるようにする。
これにより、繰り出し装置22の組み立てが完了する。
【0037】
この実施形態の線状体用梱包箱50でも、ボビン12を外に取り出すことなく、繰り出し装置22を組み立てることが可能である。
また、この線状体用梱包箱50では、側壁部2a、2cの軸受け孔10とボビン12の軸挿入孔12aとに回転軸13を通す作業性を向上でき、繰り出し装置22の組み立てを簡単に行える。
ボビン12に回転軸13を通すにあたり、ボビン12を持ち上げる必要が無いため、例えば、ボビン12のサイズが大きい場合などでも、一対の側壁部2a、2cの軸受け孔10とボビン12の軸挿入孔12aとに回転軸13を通す作業を容易に行える、といった利点がある。
【0038】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、各種変更が可能である。
上述の実施形態では、線状体を巻いたボビンを一つのみ収納する構造の線状体用梱包箱を例示したが、本発明に係る線状体用梱包箱はこれに限定されず、線状体を巻いたボビンを複数収納できるものであっても良い。
収納する各ボビンの軸挿入孔が直列に配列されるようにして、複数のボビンを収納する線状体用梱包箱にあっては、相対する一対の側壁部に、一つずつ、軸受け孔用のミシン目を形成すれば良い。
収納する各ボビンの軸挿入孔が横並びに並列されるようにして、複数のボビンを収納する線状体用梱包箱にあっては、相対する一対の側壁部に、それぞれ、ボビンの収納数に応じた数の軸受け孔を形成できるように、ミシン目を複数形成する。
【0039】
回転軸は、ボビンとともに線状体用梱包箱内に収納しておき、繰り出し装置の組み立て時に、線状体用梱包箱から取り出すようにしても良い。また、回転軸は線状体用梱包箱に外付けしても良い。
【0040】
箱本体部の上下の蓋部の内、繰り出し装置の組み立て時に上側となる蓋部、すなわち、繰り出し時底壁とは反対の側に位置する蓋部は、線状体の繰り出し時に、箱本体部の開口部を開放できる構造であれば良く、4つの蓋板からなる構造に限定されない。例えば、箱本体部の開口部を閉塞できる大きさの1枚の蓋板からなるもの等、様々な構造を採用できる。
【0041】
線状体用梱包箱の形成材料はダンボールに限定されない。例えば、ダンボール以外の紙製板状材料や、木材粉砕チップなどを固めた板状材料等、様々なものを採用できる。
但し、線状体の繰り出すための繰り出し装置の組み立て時に、ミシン目を破ることで、簡単に軸受け孔を形成することが可能なものを採用することは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の線状体用梱包箱を示す全体斜視図である。
【図2】図1の線状体用梱包箱を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】図1の線状体用梱包箱の箱本体部に形成した軸受け孔に、線状体を巻いたボビンを軸支するための回転軸を通す作業を示す斜視図である。
【図4】図1の線状体用梱包箱を用いて組み立てた繰り出し装置を示す側面図である。
【図5】図4の繰り出し装置を示す斜視図である。
【図6】本発明の別実施形態の線状体用梱包箱を示す正面図である。
【図7】図6の線状体用梱包箱を用いて組み立てた繰り出し装置を示す正面図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明に係る線状体用梱包箱に形成する軸受け孔の形状の例を示す図である。
【図9】梱包箱から取り出したボビンから線状体を繰り出す作業に用いられる繰り出し装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1、50…線状体用梱包箱、2…箱本体部、2a〜2d…側壁部、3…軸受け孔、4…蓋部、41…箱底壁(繰り出し時底壁)、5…収納空間、6…ミシン目、11…線状体、12…ボビン、12a…(ボビンの)軸挿入孔、13…回転軸、21、22…繰り出し装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体を巻いたボビンを収納する線状体用梱包箱において、
側壁部に、前記線状体の繰り出し時にボビンを箱底壁から離隔した位置に回転可能に軸支する回転軸が通される軸受け孔を形成するためのミシン目が設けられ、
前記ミシン目を破ることで前記軸受け孔を形成できるようになっていることを特徴とする線状体用梱包箱。
【請求項2】
前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための円形の切断線を形成していることを特徴とする請求項1記載の線状体用梱包箱。
【請求項3】
前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための多角形の切断線を形成していることを特徴とする請求項1記載の線状体用梱包箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−248582(P2006−248582A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69192(P2005−69192)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】