説明

線状部材の定長切断方法及び装置

【課題】 線状部材の先端を掴み、定長の往復運動を行いながら定長切断を行うときの時間的ロスを低減して高速化する。
【解決手段】 前方チャック1で線状部材Cの先端部を保持する。前方チャック1を前方へ、線状部材Cの切断長L1の1/2移動させると共に、カッタ2及び後方チャック3を後方へ、前方チャック1と等距離移動させる。後方チャック3で線状部材Cを掴み、受取装置のチャック4、5で線状部材Cを掴んだ後に、カッタ2で線状部材Cを切断する。カッタ2を後退させて前方チャック1の掴み代を確保した後に、前方チャック1、カッタ2及び後方チャック3を最初の位置に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴムで被覆されたコード等の線状部材を一定長毎に切断する装置及び方法に関し、特に高速かつ高精度な切断を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、直線状の搬送路に沿って連続的に送られる線状部材を一定長に切断する装置としては、図4に示すように、線状部材Cの先端を初期位置X10にてチャック装置101で掴み、一定のテンションを保ちながら直線的に引き出していき、位置X11迄一定距離L10引き出した時点で位置X11にて図示されていないカッタにより線状部材Cを切断し、切断後はチャック装置101を初期位置X10に戻す動作を繰り返すようにしたものがある(特許文献1参照)。また、文献に記載されたものではないが、図5に示すように、ベルトコンベア110により搬送されている線状部材Cを所定の位置X12にて、図示されていないカッタにより切断するようにしたものもある。
【特許文献1】特開平10−193019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された切断装置では、チャック装置101を一定距離移動させ、切断後に一定距離逆方向に移動させる往復運動を行うため、時間的なロスが大きい。一方、ベルトコンベアの搬送は一方向であるため、往復動作による時間的ロスはないが、高速で搬送させた場合、線状部材Cとコンベア110の表面との間の相対条件の変動(生ゴムで被覆されたコードの場合、常に摩擦係数が変化している)により、切断された線状部材Cの長さにバラツキが発生するおそれがある。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、直線状の搬送路に沿って送られる線状部材の定長切断を行うときの時間的ロスを低減して高速化すると共に、切断長のバラツキを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、線状部材を直線状の搬送路に沿って引き出し、一定長毎に切断する方法であって、第1のチャック手段による掴み代に相当する距離だけ切断手段を前記引き出し方向と逆方向へ移動させる工程と、前記第2のチャック手段及び切断手段を前記引き出し方向へ移動させて前記線状部材を引き出す工程と、前記第1のチャック手段を前記引き出し方向と逆方向へ移動させる工程と、前記第1のチャック手段が前記掴み代を保持できる位置になったときに前記第1のチャック手段、切断手段及び第2のチャック手段の移動を停止させる工程と、前記第1のチャック手段が前記掴み代を保持する工程と、前記第2のチャック手段が前記線状部材の保持を解除する工程と、第1のチャック手段により前記線状部材を引き出す工程と、前記切断手段及び第2のチャック手段を前記引き出し方向と逆方向へ移動させる工程と、前記第1のチャック手段と前記切断手段との間隔が前記一定長になったときに前記第1のチャック手段、切断手段及び第2のチャック手段の移動を停止させる工程と、前記第2のチャック手段により前記線状部材を保持する工程と、前記切断手段により前記線状部材を切断する工程とを繰り返すことを特徴とする線状部材の定長切断方法である。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の線状部材の定長切断方法において、前記線状部材を引き出すときは、前記第1のチャック手段と前記第2のチャック手段及び切断手段とを同時に移動させることを特徴とする線状部材の定長切断方法である。
請求項3に係る発明は、請求項2記載の線状部材の定長切断方法において、前記線状部材を引き出すときは、前記第1のチャック手段と前記第2のチャック手段及び切断手段とを同速度で移動させることを特徴とする線状部材の定長切断方法である。
請求項4に係る発明は、線状部材を直線状の搬送路に沿って引き出し、一定長毎に切断する装置であって、前記搬送路に沿って往復移動可能であり、かつ前記線状部材を解放自在に保持する第1、第2のチャック手段と、前記第2のチャック手段と一体的に往復移動可能であり、かつ第1、第2のチャック手段の間に配置された切断手段とを備えたことを特徴とする線状部材の定長切断装置である。
請求項5に係る発明は、請求項4記載の線状部材の定長切断装置において、前記第2のチャック手段と前記切断手段との前記搬送路方向の間隔を変化させる手段を備えたことを特徴とする線状部材の定長切断装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1のチャック手段と第2のチャック手段とを反対方向に往復移動させることで、単一のチャック手段のみを往復移動させていた従来装置よりも短時間で定長切断を行うことができるので、時間的ロスを低減し、高速化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る定長切断装置の構成を説明するための図である。この定長切断装置10は、送り出し装置31から定テンションで連続的に供給される線状部材を一定長毎に切断し、受取装置30へ渡すように構成したものである。以下の説明では、線状部材の送り方向を前方と言う。
【0008】
この定長切断装置10は、前後(図では左右)一対のフレーム11,12と、フレーム11,12間に両端が固定されたガイドレール13と、フレーム11に固定されたモータMと、前端がモータMの回転軸に接続され、後端がフレーム12に取り付けられた軸受(図示せず)に支持され、かつガイドレール13に沿って配置されたネジ軸14とを備えている。ネジ軸14には、その中心の前方側に前方ボールネジ14Aが形成され、後方側に後方ボールネジ14Bが形成されている。ここで、前方ボールネジ14Aと後方ボールネジ14Bとはネジ山の切られ方が互いに逆(例えば前方ボールネジ14Aは左ネジ、後方ボールネジ14Bは右ネジ)である。また、前方ボールネジ14Aには、それに嵌合したボールナットを有し、前方ボールネジ14Aの正逆回転に応じて、ガイドレール13に案内されながらネジ軸14の中心の前方側(図では左側)を前後に移動するスライダ16が取り付けられ、後方ボールネジ14Bには、それに嵌合したボールナットを有し、後方ボールネジ14Bの正逆回転に応じて、ガイドレール13に案内されながらネジ軸14の中心の後方側を前後に移動するスライダ18が取り付けられている。さらに、スライダ18の前方には、スライダ18とエアシリンダ19で接続され、かつガイドレール13に案内されながらネジ軸14の中心の右側を前後に移動するスライダ17が取り付けられている。ここで、スライダ17は、スライダ18とは異なり、ネジ軸14を通す孔は形成されているが、後方ボールネジ14Bに嵌合するボールナットを備えていない。スライダ16、17、18には、それぞれ前方チャック1、カッタ2、後方チャック3が固定されている。
【0009】
モータMの正逆回転により、スライダ17及び18をネジ軸14の中心に対して図1で前後に対称かつ同時に進退させることができる。また、モータMの正逆回転とは独立してエアシリンダ19のピストンロッドを伸縮させることにより、スライダ17及び18の移動時及び停止時の何れにおいても、スライダ18の位置とは独立してスライダ17の位置を変化させることができる。
【0010】
前方チャック1及び後方チャック3は、それぞれエアシリンダを内蔵しており、その空気圧を制御することで、それぞれの先端に配置されている保持部材1A及び3Aを開閉させ、図示されていない線状部材を掴んだり、離したりすることができる。カッタ2はエアシリンダを内蔵しており、その空気圧を制御することで、切断刃2Aを駆動し、図示されていない線状部材を切断することができる。
【0011】
モータ13、前方チャック1、カッタ2、後方チャック3、及びエアシリンダ19は、それぞれモータドライバ20、チャックドライバ21、カッタドライバ22、チャックドライバ23、及びシリンダドライバ24により駆動され、各ドライバはコントローラ25から供給される制御信号により制御される。また、コントローラ25は受取装置30及び送り出し装置31の制御も行う。さらに、図示されていないが、送り出し装置31から定長切断装置10まで線状部材の搬送路が直線上に形成され、搬送路には線状部材のセンサが配置されている。コントローラ25はセンサの出力を監視することで線状部材の先端部等の搬送位置を把握し、各ドライバに必要な制御信号を送るように構成されている。
【0012】
以上の構成を備えた定長切断装置の動作について、図2のフローチャート及び図3のタイミング図を参照しながら説明する。
まず、図3(a)に示すように、コントローラ25は、前方チャック1、カッタ2、及び後方チャック3が、それぞれの初期位置X0、X1及びX2に設定されるように、モータMを回転させるための制御信号をモータドライバ20に供給する(ステップS1)。このとき、エアシリンダ19の長さはL5(=シリンダ戻り寸法)に設定されている。この初期位置では、前方チャック1、カッタ2、及び後方チャック3が互いに最も接近しており、ネジ軸14の中心に近い状態である。また、線状部材Cの先端は前方チャック1の初期位置X0で停止している。さらに、エアシリンダ19のシリンダ出寸法はL6であり、L6とL5との差(L6−L5)であるシリンダストロークL4がX0とX1との差に等しい。
【0013】
次に、コントローラ25は、チャックドライバ21に制御信号を送り、前方チャック1が線状部材Cの先端部を保持するように制御する。さらに、図3(b)に示すように、前方チャック1が初期位置X0の前方(図1、3の左方)へ線状部材Cの切断長L1の1/2であるL2移動した位置X3に到達する迄ネジ軸14をモータMにより回転させるための制御信号をモータドライバ20に供給する。このとき、後方チャック3は、初期位置X2から後方へL3(=L2)移動して、位置X4に到達する。また、コントローラ25は、モータドライバ20に制御信号を送ると同時に、シリンダドライバ24に対して、エアシリンダ19のピストンロッドをシリンダ戻り寸法からシリンダ出寸法へ伸長させるための制御信号を送る。これにより、後方チャック3が位置X4に到達したとき、カッタ2はその前方L6(=L4+L5)の位置X5に存在するようになる(以上ステップS2)。
【0014】
次いで、図3(c)に示すように、コントローラ25は、チャックドライバ23に制御信号を送り、後方チャック3が線状部材Cを保持するように制御すると共に、受取装置30に制御信号を送り、そのチャック4,5が線状部材Cをそれぞれ前方チャック1、カッタ2の近傍の内側の位置で保持するように制御する(ステップS3)。
【0015】
次に、チャック4,5による保持動作を確認した後に、図3(d)に示すように、コントローラ25は、カッタドライバ22に制御信号を送り、カッタ2が線状部材Cを切断するように制御し、同時にチャックドライバ21に制御信号を送り、前方チャック1が線状部材Cの先端を離すように制御する(ステップS4)。これにより、一定の切断長L1で切断された線状部材は、線状部材Cの搬送路から分離されて、受取装置30に渡される。ここで、L1=L2+L3+L4+L5−L6=L2+L3=2L2=2L3である。
【0016】
次いで、図3(e)に示すように、前方チャック1の掴み代(例、20mm)を確保するために、コントローラ25は、シリンダドライバ24に対して、エアシリンダ19のピストンロッドをシリンダ出寸法からシリンダ戻り寸法へ短縮させるための制御信号を送り、カッタ2の位置が後方チャック3の位置X4の前方L5の位置X6になるように制御する(ステップS5)。このとき、線状部材Cは後方チャック3に保持されているため、線状部材Cの先端位置はX5の位置から変化せず、カッタ2の位置のみX6の位置へ移動する。
【0017】
次に、図3(f)に示すように、コントローラ25は、前方チャック1、カッタ2、及び後方チャック3が各々の初期位置迄移動するように、モータMを回転させるための制御信号をモータドライバ20へ供給する(ステップS6)。これで図3(a)と同じ状態になるので、以後ステップS2から繰り返すことで、順次一定長さL1 で切断された線状部材Cを受取装置30に渡すことができる。
【0018】
以上説明したように、本実施形態に係る一定長切断装置は、前方チャック1及び後方チャック3を対称的に移動させることにより、線状部材Cを切断長L1の1/2ずつ2段階に分けて送るので、下記(1)〜(3)の利点を有する。
(1)2度送りにより、送りが平均化されるため、高速送り時には非常に重要な安定したテンション制御が可能となる。
(2)送り方向の中心位置(X0及びX2)を基準にして前後に等長に送る中心振分けの定長送りであるため、線状部材Cの切断長L1を変更する場合は、前後のボールネジ14A,14Bの送り量を変更するのみで簡単に中心振分けに対応できる。このとき、受取装置30は、一対のチャック4、5の間隔を中心振分けにより切断長L1に応じて調節するだけでよいため、中心振分けの受渡しに有利である。これに対し、図4のような送り方向の後端を基準にした送りの場合は、切断長を変更すると、切断された線状部材の中心位置が変化するため、受取装置30の位置を線状部材の中心位置に応じて移動調整することが必要となる。
(3)送り量が1/2であるため、送り時間が短縮されるので、高速切断動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る定長切断装置の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の実施形態に係る定長切断装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る定長切断装置の動作を示すタイミング図である。
【図4】従来の定長切断装置の一例を示す図である。
【図5】従来の定長切断装置の別の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1・・・前方チャック、2・・・カッタ、3・・・後方チャック、10・・・定長切断装置、25・・・コントローラ、30・・・受取装置、31・・・送り出し装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材を直線状の搬送路に沿って引き出し、一定長毎に切断する方法であって、
第1のチャック手段による掴み代に相当する距離だけ切断手段を前記引き出し方向と逆方向へ移動させる工程と、
前記第2のチャック手段及び切断手段を前記引き出し方向へ移動させて前記線状部材を引き出す工程と、
前記第1のチャック手段を前記引き出し方向と逆方向へ移動させる工程と、
前記第1のチャック手段が前記掴み代を保持できる位置になったときに前記第1のチャック手段、切断手段及び第2のチャック手段の移動を停止させる工程と、
前記第1のチャック手段が前記掴み代を保持する工程と、
前記第2のチャック手段が前記線状部材を離す工程と、
第1のチャック手段により前記線状部材を引き出す工程と、
前記切断手段及び第2のチャック手段を前記引き出し方向と逆方向へ移動させる工程と、
前記第1のチャック手段と前記切断手段との間隔が前記一定長になったときに前記第1のチャック手段、切断手段及び第2のチャック手段の移動を停止させる工程と、
前記第2のチャック手段により前記線状部材を保持する工程と、
前記切断手段により前記線状部材を切断する工程と
を繰り返すことを特徴とする線状部材の定長切断方法。
【請求項2】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の線状部材の定長切断方法において、
前記線状部材を引き出すときは、前記第1のチャック手段と前記第2のチャック手段及び切断手段とを同時に移動させることを特徴とする線状部材の定長切断方法。
【請求項3】
請求項2に係る発明は、請求項2記載の線状部材の定長切断方法において、
前記線状部材を引き出すときは、前記第1のチャック手段と前記第2のチャック手段及び切断手段とを同速度で移動させることを特徴とする線状部材の定長切断方法。
【請求項4】
線状部材を直線状の搬送路に沿って引き出し、一定長毎に切断する装置であって、
前記搬送路に沿って往復移動可能であり、かつ前記線状部材を解放自在に保持する第1、第2のチャック手段と、
前記第2のチャック手段と一体的に往復移動可能であり、かつ第1、第2のチャック手段の間に配置された切断手段と
を備えたことを特徴とする線状部材の定長切断装置。
【請求項5】
請求項4記載の線状部材の定長切断装置において、
前記第2のチャック手段と前記切断手段との前記搬送路方向の間隔を変化させる手段を備えたことを特徴とする線状部材の定長切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate