説明

線状部材の案内挿入装置

【課題】リード線のような可撓性を有する線状部材の先端部を、所定の挿入穴に向けて自動的に案内し挿入することができる、線状部材の案内挿入装置を提供する。
【解決手段】リード線3の固定側である基端部3cと自由側である先端部3aとの間の中間部(自由部分3b)を保持する保持部材としての螺旋体4と、螺旋体4のリード線3との接触部分を所定の方向に移動させる移動手段とを有する案内挿入装置である。モータ5で回転する螺旋体4の先端部4aでリード線3の中間部を螺旋体4の内側に取り込んだ後、さらに回転する螺旋体4でリード線3の先端部3aを挿入すべき挿入穴2aに向けて移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する線状部材の先端部を、所定の挿入穴に向けて案内し挿入する、線状部材の案内挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品を搭載する基板に、リード線を自由状態で基板外に延ばしたサーミスタのような部品が取り付けられることがある。当該リード線は、その基端部が、基板に搭載されたサーミスタ本体に接続される。リード線の先端部は、他の電子部品に接続するためのコネクタを装備し、基板の上方に向かって自由状態で所定長さ延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−275243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような基板を、基板を覆うカバー部材に配置する場合、当該カバー部材のリード線通し穴に前記リード線の先端部を通す工程がある。この工程は、リード線の先端部の位置がその可撓性のために不定であることから、機械による自動化が難しい。このため、この種のリード線の挿入工程は、殆ど手作業で行っているのが実情である。手作業による挿入作業は能率が悪く、コストも嵩む。
【0005】
本発明の目的は、リード線のような可撓性を有する線状部材の先端部を、所定の挿入穴に向けて自動的に案内し挿入することができる、線状部材の案内挿入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、可撓性を有する線状部材の固定側である基端部と自由側である先端部との間の中間部を保持する保持部材と、前記保持部材を所定の方向に移動させる移動手段とを有し、前記保持部材を、前記線状部材の中間部を保持した状態で、前記移動手段によって、前記線状部材の先端部を挿入すべき挿入穴に向けて移動させることにより、前記線状部材の先端部を、前記挿入穴に案内して挿入するようにした、線状部材の案内挿入装置である。
【0007】
前記保持部材は、前記挿入穴から、前記線状部材の基端部に向かって延びた螺旋体で構成することができ、当該螺旋体をその軸線回りに回転させることによって、前記線状部材の中間部を、前記螺旋体の先端から前記螺旋体の内側に取り込んで保持することができる。
【0008】
この場合、線状部材の先端部を含む中間部を螺旋体の内側に取り込むことが出来るので、当該線状部材を挿入穴に確実に挿入することができる。
【0009】
また、前記螺旋体を、前記挿入穴から前記線状部材の基端部に向かって延びた円筒体に出没自在に収納し、前記螺旋体の回転によって、前記線状部材の先端部が、前記挿入穴の軸線の延長線上に来た状態で、前記円筒体を、前記線状部材の基端部に向かって移動させることにより、前記螺旋体と前記線状部材を当該円筒体の中に収容し、当該収容状態で前記円筒体を前記挿入穴の中に引き込むことができる。
【0010】
この場合、線状部材を螺旋体と共に円筒体の中に収容することで、線状部材をさらに確実に挿入穴に挿入することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、可撓性を有する線状部材の先端部と基端部との間の中間部を保持部材によって保持し、この状態で保持部材を移動手段によって挿入穴に向けて移動させることで、線状部材の先端部を挿入穴に挿入することができ、線状部材の挿入工程を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る線状部材の案内挿入装置の原理を示す要部側面図である。
【図2】曲がった線状部材を案内する状態を示す、図1と同様の要部側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る線状部材の案内挿入装置の側面図である。
【図4A】(a)〜(j)は、線状部材の挿入工程の前半を示す図である。
【図4B】(a)〜(h)は、線状部材の挿入工程の後半を示す図である。
【図5】本発明の変形例に係る案内挿入装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(線状部材の案内挿入装置の原理)
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1と図2は、本発明の実施形態に係る線状部材の案内挿入装置の原理を示す要部側面図である。同図において1は基板、2は基板1の上方を覆うためのカバー部材である。この基板1の上に、図示しないサーミスタのような電子部品の本体が搭載される。
【0014】
当該電子部品の本体から、線状部材としてのリード線3が基板1に沿って所定長さで延びている。このリード線3は、電子部品の本体から基板1上のA点まで、基板1に固定されている。A点から先のリード線3は、コネクタを装備した先端部3aまで、基板1に固定されていない自由状態である。
【0015】
図1では、この自由状態の自由部分3bを右側にやや傾斜した直線状態で示しているが、当該自由部分3bは、図2のように曲がっていることもある。自由部分3bの長さは直線状態でLとする。なお、図1と図2のリード線3の固定状態は例示であり、実際のリード線3は、電子部品本体から直接上方に自由状態で延ばしている場合が多い。この場合は、電子部品本体に対するリード線3の接続部が実質的な固定部としてのA点となる。
【0016】
リード線3は可撓性があるため、自由部分3bは、A点を中心として三次元的に移動可能である。このため、リード線3の先端部3aの位置は不定であり、その最大範囲は、A点を中心とする半径Lの半球状の領域である。先端部3aは、この最大領域内のいずれかにある。
【0017】
このため、先端部3aを挿入すべきカバー部材2の挿入穴2aをA点の直上に配置し、基板1を垂直に上昇させても、先端部3aが挿入穴2aにうまく入る保証はない。従来の手作業による挿入工程では、先端部3aを挿入穴2aの軸線の延長線上まで手作業で移動させ、この状態で基板1を上昇させたり、あるいはカバー部材2の方を下降させたりしていた。
【0018】
本発明の実施形態は、A点の垂直方向上方に、A点を通る垂直な軸線Yに中心軸を一致させるようにして、保持部材としての螺旋体4を配置した。この螺旋体4は、その外径が、リード線3の先端部3aを挿入すべき挿入穴2aの内径Dよりも、少し小さい程度である。螺旋体4は、図3に示す駆動手段としてのモータ5によって、回転自在、かつ、軸線Yに沿って昇降自在とされている。
【0019】
リード線3の先端部3aを挿入穴2aに挿入するには、前記螺旋体4を回転させながら、図1及び図2に示すように、自由部分3bの下端の固定点Aに近い高さHまで下降させる。どの程度まで下降させるかは、リード線3の曲げ強さや、挿入穴2aの内径Dの大きさに基づいて、経験により決める。比較的曲がりにくいリード線3であれば、あまり固定点Aに近付くまで下降させる必要はない。逆に、曲がりやすいリード線3であれば、できるだけ固定点Aに近付くまで螺旋体4の先端部4aを下降させる。
【0020】
また、挿入穴2aの内径Dが大きい場合は、螺旋体4の外径も大きくすることができるので、螺旋体4の先端部4aを、あまり固定点Aに近付くまで下降させる必要はない。挿入穴2aの内径Dが小さい場合は、螺旋体4の外径も小さくなるので、螺旋体4の先端部4aを、できるだけ固定点Aに近付くまで下降させる。
【0021】
図1及び図2のように、螺旋体4を矢印方向に回転させながら下降させると、その先端部4aがリード線3の基端部3cと先端部3aの間の中間部(自由部分3b)を引っ掛ける。そして、螺旋体4を矢印方向に回転し続けることにより、リード線3の自由部分3bが螺旋体4の内側に取り込まれ、最後はリード線3の自由部分3bが、軸線Yを中心とする内径Dの範囲内に収まる。従って、後は基板1を上昇させるか、或いはカバー部材2を下降させることにより、リード線3の先端部3aを挿入穴2aに挿入することが可能になる。
【0022】
(案内挿入装置の具体的構成)
図3は、本発明に係る案内挿入装置の具体的な実施形態を示したものである。図3の螺旋体4は、図1及び図2の螺旋体4と形状が異なる。これは、図1及び図2では本発明の原理を説明する都合上、螺旋体4を単純化して描いているためであり、図3の螺旋体4は図1及び図2の螺旋体4と機能的に同じものである。従って、螺旋体4に同一の参照符号を使用することとする。
【0023】
図3に示すように、垂直に配置された螺旋体4の上端部がモータ5に接続され、このモータ5が、昇降手段としての第1アクチュエータ6に支持されている。螺旋体4は、螺旋体4の外径よりもやや大きい内径を有する垂直な円筒体7の中に、回転自在かつ昇降自在(出没自在)に収容されている。なお、螺旋体4の回転駆動はモータ5に限らず各種の回転駆動手段を使用可能である。
【0024】
円筒体7は、別の昇降手段としての第2アクチュエータ8に支持され、リード線3の先端部3aを挿入するカバー部材2の垂直な挿入穴2aの上端開口から、円筒体7の下端を挿入可能とされている。螺旋体4と円筒体7は、案内挿入装置の外装体となる垂直な筒部9の中に収容されている。
【0025】
第1アクチュエータ6及び第2アクチュエータ8としては、電動アクチュエータ、油圧アクチュエータ又は空気圧アクチュエータなど、各種アクチュエータを使用可能である。
【0026】
(リード線の挿入工程)
次に、図4Aと図4Bを参照して、リード線3の挿入工程について説明する。図4Aは挿入工程の前半を示し、図4Bは後半を示している。
【0027】
図4Aの(a)は、案内挿入装置を作動する前の状態である。この時、リード線3の先端部3aは、挿入穴2aの軸線から半径方向外方に、挿入穴2aの半径以上にズレた位置にある。この状態から、図4A(b)に示すように、円筒体7を下降し始める。図4A(c)は、円筒体7の下端部が挿入穴2aの下端開口にさしかかった状態である。
【0028】
図4A(d)は円筒体7の下端部が挿入穴2aの下端開口から少し突出し、螺旋体4が回転しつつ下降してその先端部4aが円筒体7から少し出た状態である。この状態ではまだ螺旋体4の先端部4aがリード線3に接触していない。
【0029】
図4A(e)は、円筒体7が下降を停止し、螺旋体4が回転しつつ下降し続けてリード線3の自由部分3bの中間部分に触れ始める状態を示している。これにより、螺旋体4の先端部4aがリード線3の先端部3aよりも下の部分を螺旋体4の内側に取り込み始める。
【0030】
図4A(f)は、螺旋体4の先端部4aがリード線3の自由部分3bの下端部付近を螺旋体4の内側に取り込み、リード線3の自由部分3bをその根元側から半径方向内側に寄せることにより、自由部分3bの傾斜を垂直に近付ける状態を示している。
【0031】
図4A(g)は、リード線3の自由部分3bがほぼ垂直に立ち、挿入穴2aの軸線とリード線3の自由部分3bの軸線とがほぼ一致した状態を示している。螺旋体4の先端部4aは、図4A(f)と同じ高さ位置で回転し続けている。
【0032】
螺旋体4がリード線3の自由部分3bと接触する部分は、リード線3の実質的な「保持部材」を構成し、この接触部分は、図4(f)(g)のように、螺旋体4の高さを一定にしたままでも、螺旋体4を回転することで挿入穴2aに向かって移動する。従って、この実施形態ではモータ5が「保持部材」の「移動手段」を構成することになる。このようにして、リード線3の自由部分3bが垂直に立った後は、螺旋体4は必ずしも回転を継続する必要はないので、モータ5の駆動を停止することも可能である。
【0033】
図4A(h)は、円筒体7が再び下降し始めた状態を示している。円筒体7を下降させることにより、リード線3の先端部が円筒体7の下端部に入り込む。
【0034】
図4A(i)は円筒体7がさらに下降し続け、リード線3の先端部3aの大半が円筒体7の中に収容された状態を示している。
【0035】
図4A(j)は、円筒体7がさらに下降し続け、リード線3の自由部分3bの大半が円筒体7の中に収容された状態を示している。この状態で円筒体7の下降を停止する。
【0036】
次に、挿入工程の後半を図4Bに基づいて説明する。図4B(a)は、カバー部材2が挿入穴2aの軸線に沿って下降した状態を示している。
【0037】
図4B(b)は、カバー部材2がさらに下降し、円筒体7の下端部まで到達した状態を示している。
【0038】
図4B(c)は、螺旋体4を引き上げ始めた状態を示している。
【0039】
図4B(d)は、螺旋体4がリード線3の自由部分3bと共に円筒体7の中に完全に収容された状態を示している。
【0040】
図4B(e)は、螺旋体4を収容した円筒体7が、上昇し始めた状態を示している。円筒体7の下端部は、カバー部材2の挿入穴2aの上端開口まで上昇している。
【0041】
図4B(f)は、円筒体7がさらに上昇し、リード線3の自由部分3bの高さ方向半分よりも上側がカバー部材2の上方で露出した状態を示している。
【0042】
図4B(g)は、円筒体7がさらに上昇し、リード線3の自由部分3bの先端部3aが、円筒体7から外側に出た状態を示している。
【0043】
図4B(h)は、円筒体7が筒部9内に完全に収容され、カバー部材2の挿入穴2aに対するリード線3の挿入が完了した状態を示している。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
【0045】
例えば、前記実施形態は線状部材としてのリード線3をカバー部材2の挿入穴2aに案内挿入する場合を示したが、線状部材はリード線3に限られない。
【0046】
本発明は、針金や細いコイルバネなど、可撓性を有する他の線状部材を任意の挿入穴に案内挿入する場合にも適用可能である。
【0047】
また、前記実施形態は線状部材を保持する保持部材として螺旋体4を使用したが、当該螺旋体4に代えて、図5のような保持部材20を使用してもよい。この保持部材20は、水平な支持棒20aの先端に円弧部20bを備えたもので、円弧部20bの開口は開閉アーム20cで開閉するようにしている。
【0048】
この変形例では、リード線3の基端部3cに近い部分を円弧部20bの内側に入れた後に開閉アーム20cを閉じ、この状態で保持部材20を図示しない移動手段によって挿入穴2aに向かって上昇させる。これにより、リード線3の先端部3aを挿入穴2aの軸線を中心とした内径Dの範囲内に案内することができる。傾いたリード線3を図5の鎖線のように起こした後に、リード線3を挿入穴2aに挿入することが可能になる。
【符号の説明】
【0049】
1 基板
2 カバー部材
2a 挿入穴
3 リード線
3a 先端部
3b 自由部分
3c 基端部
4 螺旋体
4a 先端部
5 モータ
6 第1アクチュエータ
7 円筒体
8 第2アクチュエータ
9 筒部
20 保持部材
20a 支持棒
20b 円弧部
20c 開閉アーム
A 固定点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する線状部材の固定側である基端部と自由側である先端部との間の中間部を保持する保持部材と、前記保持部材を所定の方向に移動させる移動手段とを有し、前記保持部材を、前記線状部材の中間部を保持した状態で、前記移動手段によって、前記線状部材の先端部を挿入すべき挿入穴に向けて移動させることにより、前記線状部材の先端部を、前記挿入穴に案内して挿入するようにした、線状部材の案内挿入装置。
【請求項2】
前記保持部材が、前記挿入穴から、前記線状部材の基端部に向かって延びた螺旋体であって、当該螺旋体をその軸線回りに回転させることによって、前記線状部材の中間部を、前記螺旋体の先端から前記螺旋体の内側に取り込んで保持するようにした、請求項1の線状部材の案内挿入装置。
【請求項3】
前記螺旋体を、前記挿入穴から前記線状部材の基端部に向かって延びた円筒体に出没自在に収納し、前記螺旋体の回転によって、前記線状部材の先端部が、前記挿入穴の軸線の延長線上に来た状態で、前記円筒体を、前記線状部材の基端部に向かって移動させることにより、前記螺旋体と前記線状部材を当該円筒体の中に収容し、当該収容状態で前記円筒体を前記挿入穴の中に引き込むようにした、請求項2の線状部材の案内挿入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115188(P2013−115188A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259176(P2011−259176)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000177128)三洋機工株式会社 (35)
【Fターム(参考)】