線維形成状態の治療方法
本発明は、線維形成状態、例えば肝臓、腎臓及び肺の線維症、並びに身体の他の組織の線維形成状態の治療方法を目的とする。本発明の方法は、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなるる。本発明の方法の実施に用いることができる例示的なB細胞アンタゴニストには、B細胞表面抗原に対する抗体(例えばCD20に対する抗体)、及びBAFFアンタゴニストが含まれる。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、線維症又は線維形成状態の治療のための方法に関する。より具体的には、本発明は、線維形成状態を治療するための、B細胞アンタゴニスト又は枯渇化(depleting)薬剤の使用に関する。
【0002】
(関連技術)
組織障害は、感染、自己免疫応答及び物理的な損傷を含む様々な慢性ないしは急性の刺激から生じうる。治癒過程は、通常、結合組織が実質組織を置き換える段階を伴う。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594 (2004))。しかしながら、この過程が抑制されないでいると、永続的な瘢痕組織の形成は生じ得、場合によっては、最終的に臓器不全及び死につながりうる。
線維形成状態は、組織障害後の線維形成材料(例えば細胞外基質)の異常な及び/又は過剰な蓄積に特徴がある病的状態である。線維形成状態は、循環器病、大脳疾患及び末梢血管性疾患などの血管性疾患と関係する線維増殖性疾患、並びに皮膚、腎臓、肺、腸及び肝臓を含むすべての主要組織及び臓器系の線維増殖性疾患を含む。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594 (2004))。線維形成状態は多様な種類の病理であるにもかかわらず、ほとんどの線維形成状態において、線維形成組織蓄積を引き起こす一般的なメカニズムは多くの共通する因子を有すると考えられる。
【0003】
線維形成状態の治療のための多くの治療法は、一般的に線維症の発達に働くと思われる炎症応答を標的とする。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594 (2004))。線維形成状態を治療するための薬剤方策の例には、免疫抑制剤、例えば、副腎皮質ステロイド、他の従来の免疫抑制薬又は細胞障害性剤及び抗線維剤が含まれる。それにもかかわらず、当分野では、線維形成状態の治療のための新規でより特異的なターゲティング手法が求められいている。
【0004】
(発明の概要)
本発明は、B細胞を欠いている又は薬理的にB細胞が減少しているマウスにおいて、実験的に誘発された線維形成障害の範囲が実質的に低減しているという驚くべき発見に少なくともある程度関係しており、それによって、動物のB細胞の枯渇又はB細胞活性の障害が線維形成状態を治療するための有効な方法であることが示される。
したがって、本発明は線維形成状態の治療方法を包含する。本発明の方法は、線維形成状態の治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる。
線維形成は伴う特定の組織を問わず同様の生体分子メカニズムにより起こると考えられているので、本発明は患者の何れかの組織に影響を及ぼす任意の線維形成状態を治療するために用いてもよい。例えば、本発明は、肺(肺性)、腎臓(腎性)、肝臓(肝性)、皮膚、血管、腸及び角膜組織の線維形成の治療、減縮又は、遅延のために用いてもよい。本方法は、感染、自己免疫応答、物理的な損傷、化学製品、糖尿病、高血圧などから生じる組織障害を含む任意の種類の組織障害から生じる線維形成状態を治療するために用いてもよい。本発明の方法を用いて治療されうる特定の例示的な線維形成状態は、本明細書中の他の場所に記述される。
【0005】
また、本発明の方法は、線維形成状態が発達するリスクを有する患者において、線維形成状態を発達させるのを防止するために用いてもよい。線維形成状態が発達するリスクを有する患者には、例えば、肺、腎臓又は肝臓の瘢痕組織蓄積を引き起こすか又は刺激することが知られている一又は複数の環境要因にさらされたことがある患者が含まれる。例示的な環境要因には、例えば、煙曝露、粉塵曝露、アスベスト曝露、過剰なアルコール消費、放射線被曝、ブレオマイシン、二酸化ケイ素、細菌、ウイルスなどへの曝露が含まれる。また、ある実施態様では、線維形成状態が発達するリスクを有する患者には、例えば、糖尿病、慢性喘息、狼瘡、強皮症、関節リウマチ、血管系疾患、緑内障、IgA神経障害、アルポート症候群を有する個体、並びに肺移植及び/又は腎臓移植を経た個体が含まれる。
【0006】
本発明の方法の実施に用いられうる例示的なB細胞アンタゴニストには、B細胞(免疫グロブリンの分泌を含む)の成長、生存、増殖又は機能を阻害又は障害しうる、もしくは、B細胞の死又は破壊を引き起こしうる任意の分子又は化合物(ポリペプチド、リガンド、融合タンパク質、抗体、小分子など)が含まれる。本発明によるB細胞アンタゴニストは、必ずではないが、B細胞を減少させるように機能しうる。本発明の選択された好ましい実施態様は、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)、補体依存性細胞障害活性(CDC)又はアポトーシスにより、循環B細胞又はその他のB細胞の少なくとも一部が枯渇するB細胞アンタゴニストの使用を含んでなる。本明細書のために、このようなアンタゴニストはB細胞枯渇化薬剤(B-cell depleting agents)と称されうる。
【0007】
本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤はB細胞表面抗原に対する抗体である。特に好ましい実施態様では、B細胞アンタゴニストはCD20に対する抗体である。本発明の方法の実施に用いられうる抗CD20抗体の例はリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である。
本発明の他の実施態様では、B細胞アンタゴニストはBAFF又はBAFFレセプター(BR3、BCMA又はTACI)のアンタゴニストであり、それはB細胞に発現される。当分野の技術者は、特に自己応答性B細胞が病原性になりやすい時期に骨髄から脾臓へ移行するので、BAFFがB細胞の強力な生存因子であると認識するであろう。ゆえに、BAFFとBRとの相互作用を阻止するためにBAFFアンタゴニストを使用することにより、自己応答性になりうるB細胞の生成を下方制御するか、阻害するか又は抑制できる。この点で、有用なアンタゴニストには、抗BAFF抗体(例えばベリムマブ)、抗BR抗体、BAFFないしはBRと相互作用する小分子、又はリガンドベースのポリペプチドアンタゴニストが含まれうる。特に好ましい実施態様では、BAFFアンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域に連結されるBAFFレセプターの全部又は一部を含んでなる可溶性分子である。特定の例示的なポリペプチドBAFFアンタゴニストは、以下で更に詳細に述べられる。
【0008】
本発明は、複数のB細胞アンタゴニストの投与を含んでなる方法を更に含む。例えば、特定の実施態様では、CD20に対する抗体(例えばリツキシマブ)は、BAFFアンタゴニストとともに患者に投与される。
また、本発明は、一又は複数のB細胞アンタゴニストと、一又は複数の線維形成状態を治療するために有用である一又は複数の更なる薬剤の投与を含んでなる方法を包含する。また、例えば、本発明は、一又は複数のB細胞アンタゴニストと一又は複数のインテグリンレセプターアンタゴニストの投与を含んでなる方法を包含する。当分野の技術者は、インテグリンレセプターアンタゴニストには、ペプチド、抗体、可溶性リガンド、又はインテグリンないしはインテグリンレセプターの機能を阻害する小分子、例えばαvβ6、αvβ5、αvβ8、α5β1、α1β1、α4β1(VLA-4)、α4β7などに対する抗体が包含されていることを理解するであろう。α4β1インテグリンレセプターに特異的に結合する抗体及び、本発明において、線維形成状態を治療するためにB細胞アンタゴニストと組み合わして用いられうる抗体の例は、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))である。
【0009】
また、本発明は、一又は複数のB細胞アンタゴニストと一又は複数のTGF-β経路阻害薬、例えばTGF-βリガンドアンタゴニスト又はTGF-βレセプターアンタゴニスト(例えばモノクローナル抗体、可溶性TGF-β RII-Fc融合タンパク質、LAP-Fc融合タンパク質、TGF-βRI又はRIIキナーゼ阻害薬、小分子阻害薬など)の投与を含んでなる方法を包含する。
熟練した当業者は、本明細書中の教示に適合する他の抗線維形成薬剤を認識することが可能であろう。
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の好適な例示的実施態様の詳細な説明の検討から、当業者に明らかであろう。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、線維症又は線維形成状態を治療するか、寛解するか、軽減するか又は予防するための方法を目的とする。本発明の方法は、このような治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる。
本明細書中で用いられる「線維形成状態」なる表現は、線維形成組織、瘢痕組織、結合組織及び/又は細胞外基質(ECM)構成成分が組織障害(例えば、感染、自己免疫応答、物理的な損傷、化学的な損傷、糖尿病、高血圧など)に応答して体内の一又は複数の臓器に又は臓器内に蓄積する任意の状態を意味することを意図する。本明細書中で用いられる「線維形成状態」なる表現及び「線維性状態」は同じ意味を有することを意図する。
【0011】
例示的な線維形成状態には、以下のものが含まれるが、これらに限定するものではない。
(I) 線維形成と関連する肺疾患、例えば突発性肺線維形成、放射線誘発性線維形成、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘発性肺線維症、慢性喘息、珪肺症、アスベスト誘発性肺線維形成、急性肺障害及び急性呼吸困難(細菌性肺炎誘発性、外傷誘発性、ウイルス肺炎誘発性、人工呼吸器誘発性、非肺敗血症誘発性、及び吸引誘発性を含む)、
(II) 障害/線維形成(腎線維症)と関連する慢性腎症、例えば狼瘡、糖尿病、強皮症、腎糸球体腎炎、局所性分節性腎糸球体硬化症、IgA腎症(ネフロパシー)、高血圧、同種異系移植片、ループス、及びアルポート、
(III) 腸線維症、例えば強皮症、及び放射線誘発性腸線維症、
(IV) 肝線維症、例えば肝硬変、アルコール誘発性肝線維形成、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆汁導管障害、原発性胆管萎縮症、感染又はウイルス誘発性肝線維形成(例えば、慢性HCV感染)、及び自己免疫性肝炎、
(V) 頭頸部線維症、例えば放射線誘発性のもの、
(VI) 角膜瘢痕化、例えばLASIX、角膜移植片及び柵状織切除、
(VII) 肥大性瘢痕化及びケロイド、例えば熱傷誘発性及び外科的なもの、そして、
(VIII) その他の線維形成性疾患、例えばサルコイドーシス、強皮症、脊髄障害/線維形成、骨髄線維症、血管性再狭窄、アテローム性動脈硬化、ベゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病及びペロニー病。
【0012】
本明細書中で用いられる「このような治療を必要とする患者」なる表現は、例えば、一又は複数の線維形成状態、例えば上記に挙げた何れかの線維形成状態について治療を必要とするヒトないし非ヒト動物を意味することを意図する。「このような治療を必要とする患者」は、体内の一又は複数の臓器上に又は臓器内に、線維形成組織、瘢痕組織及び/又は細胞外基質材料(例えばコラーゲン、ビメンチン、アクチンなど)の蓄積を有するヒトないし非ヒト動物であってもよい。「このような治療を必要とする患者」は、必ずではないが、一又は複数の線維形成状態の臨床診断を受けたヒトないし非ヒト動物であってもよい。「このような治療を必要とする患者」は、線維形成状態の一又は複数の症状を表すヒトないし非ヒト動物であってもよい。(Khalil及びO'Connor, Canadian Medical Journal 171:153-160 (2004))。例えば、「このような治療を必要とする患者」は、以下の一又は複数の症状を表すヒトないし非ヒト動物であってもよい:肝臓の線維形成状態(例えばウイルス性肝炎、アルコール乱用、ドラッグ、鉄ないしは銅の過負荷による代謝病、肝細胞ないしは胆管上皮の自己免疫性攻撃、又は先天的な異常によって、引き起こされる肝臓組織障害又は瘢痕化など) (Friedman, J. Biol. Chem. 275:2247-2250 (2000))、肺の線維形成状態(例えば、突発性間質性肺炎を含む刺激現象に対する肺の炎症性応答による又はこれに関連する肺組織障害又は瘢痕化など) (Garantziotis等, J. Clin. Invest. 114:319-321 (2004))、皮膚又は他の臓器(一又は複数)の強皮症(Trojanowska, Frontiers Biosci. 7: d608-618 (2002))、及び/又は腎臓の線維形成状態(例えば糸球体硬化症又は管状間質性線維形成に関連する腎臓組織障害又は瘢痕化など) (Negri, J. Nephrol. 17:496-503 (2004))。
【0013】
特定の実施態様によると、「このような治療を必要とする患者」は、自己免疫性疾患を有さない及び/又は、自己免疫性疾患を有するリスクにない。例えば、「このような治療を必要とする患者」は、必ずではないが、一又は複数の自己免疫性疾患の臨床診断を受けていない患者であってもよい。「このような治療を必要とする患者」は、必ずではないが、一又は複数の自己免疫性疾患の一又は複数の症状を表さない患者であってもよい。本明細書中に用いられる「自己免疫性疾患」なる用語は、個体自身(自己)の抗原及び/又は組織から生じる、並びにそれらに対する非悪性の疾患ないしは疾病を意味する。(例として米国公開特許第2005/0095243号参照)。ゆえに、本発明の特定の例示的な実施態様では、「このような治療を必要とする患者」は、以下の一又は複数の自己免疫性疾患の臨床診断を受けていない、又は以下の一又は複数の自己免疫性疾患の一又は複数の症状を表さない患者である:関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、血管炎、真正糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群又は糸球体腎炎。
非ヒト動物には、例えば、家庭動物及び酪農動物、並びに動物園動物、スポーツ動物及びペット動物(例えばネコ、イヌ、ウマ、ウシなど)が含まれる。
【0014】
本明細書中で用いられる「治療的に有効な量」なる表現は、問題の線維形成状態の症状を予防、寛解、治療又は改善させるために有効なB細胞アンタゴニストないしはアンタゴニストの量を指す。例えば、本明細書中で用いられる、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、線維形成状態の一又は複数のマーカーの減少を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量であってもよい。線維形成状態の例示的なマーカーには、例えば、コラーゲン沈着、平滑筋アクチン沈着などが含まれる。本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、B細胞アンタゴニストの投与前に観察されるコラーゲン沈着のレベルと比較して、コラーゲン沈着の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%又は100%の減少を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量である。本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、B細胞アンタゴニストの投与前に観察される平滑筋アクチン沈着のレベルと比較して、平滑筋アクチン沈着の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%又は100%の減少を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量である。更に他の実施態様では、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、B細胞アンタゴニストの投与前に観察される臓器機能と比較して、臓器機能(例えば肝機能、肺機能、腎機能)の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%又は100%の改善を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量である。
【0015】
B細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤
本明細書中で用いられる「B細胞アンタゴニスト」なる表現は、(B細胞により誘発される体液性応答を低減又は阻害することによって、)B細胞の成長、生存、増殖又は機能を阻害、障害、遅延、寛解又は下方制御する、又はすべてないしは一部のB細胞集団の死ないしは破壊を引き起こす任意の物質又は薬剤を意味することを意図する。後者の場合、このようなB細胞アンタゴニストは、B細胞枯渇化薬剤と称されうる。B細胞アンタゴニストは、B細胞表面抗原と結合するか又は相互作用するか、又はB細胞機能を阻害するために細胞内シグナル伝達分子と相互作用する、合成ないしは天然配列のペプチド及び小分子であってもよい。いくつかの実施態様では、B細胞アンタゴニストは細胞障害性剤と融合又はコンジュゲートしてもよい。本発明の更なる他の実施態様では、B細胞アンタゴニストは、融合タンパク質(例えばBR-Fc)又は抗体、例えば一又は複数のB細胞表面抗原に対する抗体である。
【0016】
上記したように、B細胞アンタゴニストは、B細胞アンタゴニストの患者への投与の際又は、その投与の後にB細胞を減少させる薬剤であってもよい。例えば、B細胞アンタゴニストは、B細胞アンタゴニストの投与の24〜100時間以内に、2%〜100%のB細胞が枯渇しうる。
例えば、B細胞アンタゴニストは、該B細胞アンタゴニストの投与の24時間以内に、末梢B細胞の2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%、又は100%が枯渇しうる(例として米国特許第6399061号に記載)。
【0017】
あるいは、B細胞アンタゴニストは、該B細胞アンタゴニストの投与の48時間以内に、末梢B細胞の2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%、又は100%が枯渇しうる。
他の実施態様では、B細胞アンタゴニストは、該B細胞アンタゴニストの投与の72時間以内に、末梢B細胞の2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%、又は100%が枯渇しうる。
【0018】
B細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤の線維形成状態を治療する能力は、一又は複数のインビトロ又はインビボの線維形成モデルを用いて検定されてもよい。例示的な線維形成モデルには、例えば外傷誘発性線維形成モデル(例えば、外科的な外傷又は臓器移植、熱傷、胆管閉塞、片側性尿管閉塞、虚血性再灌流、人工呼吸器誘発性肺障害、血管性バルーン障害、腎摘出、照射、外傷性大動脈大静脈異常導管及び急速性心室ペーシング)、毒素又はドラッグ誘発性線維形成モデル(例えば、ブレオマイシン、アスベスト、二酸化ケイ素、卵白アルブミン、アセトアルデヒド、四塩化炭素、コンカナバリンA、塩化ビニル、トリニトロベンゼンスルホン酸、オキサゾロン、シクロスポリンA、硫酸ニッケル、及びセルレイン)、自己免疫性疾患又は機能不全性免疫関連線維形成モデル(例えば、抗体及び免疫複合体病モデル、臓器移植拒絶反応、タイト-スキン(Tsk)マウスモデル(tight skin mouse model)、虚血性再灌流障害、移植片対宿主誘発性、及び関節リウマチ)、慢性感染病誘発性線維形成モデル(住血吸虫類種又は慢性ウイルス性肝炎、アスペルギルスフミガタス、結核菌、及びクルーズトリパノソーマ)、及び、遺伝子操作されたマウスモデル又はウイルス感染したマウス(例えば、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)又はTGF-β-レセプタートランスジェニックマウス及びノックアウトマウス、シグナル伝達分子欠失マウス(例えば、マザーアゲインストデカペンタプレジックホモログ3(SMAD3)-欠失マウス)、Col4A3の欠失マウス(Alport)、TGF-β活性化に作用する分子に欠失のあるマウス(例えば、α1インテグリン又は基質メタロプロテイナーゼ9)、及びサイトカイン-遺伝子トランスジェニックマウス、ウイルス感染マウス及びノックアウトマウス(例えば、腫瘍壊死因子、インターロイキン4(IL-4)、IL-13又はIL-10))が含まれる。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594)。本発明のB細胞アンタゴニストには、例えば、線維症の症状を改善すること、又は線維性障害の範囲を減少、遅延、障害及び/又は寛解すること、又は線維性障害の一又は複数のマーカーを減少することが上述した線維形成モデルの何れかに示される、B細胞アンタゴニストが含まれる。上述した線維形成モデルの何れか一において、線維性障害の範囲を減少するため、又は線維症の症状を改善するための能力についてB細胞アンタゴニストを含む薬剤をアッセイすることは、当分野の通常の技術者の技術及び知識の範囲内である。
【0019】
抗体
本発明のB細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤は抗体であってもよい。本明細書中で用いられる「抗体」なる用語には、例えば、天然の抗体、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、抗体断片(例えば、一又は複数の抗原に結合する及び/又は一又は複数の抗原を認識する抗体断片)、その他の多価抗体コンストラクト、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551 (1993)、Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993)、Bruggermann等, Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5591669号及び同第5545807号)、抗体ファージライブラリーから単離された抗体及び抗体断片(McCafferty等, Nature 348:552-554 (1990);Clackson等, Nature 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991);Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Waterhouse等, Nucl. Acids Res. 21: 2265-2266 (1993))が含まれる。抗体を製作し使用するための方法は当分野で公知である。(国際公開第00/67796号及びここに引用される文献を参照のこと)。
【0020】
本発明と組み合わせてB細胞アンタゴニストないしは枯渇化薬剤として特に有用である2つの抗体は、マウス/ヒトキメラ抗体であるリツキシマブと、マウスのCDRを含んでなるヒト化抗体である2H7である。リツキシマブは米国特許第6399061号に開示されており、2H7及びその変異体は国際公開第04/056312号に開示されている。これら文書のそれぞれは出典明記によって、その全体が本明細書中に援用される。
【0021】
本明細書中の教示に適する他の抗CD20抗体には、「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」(ゼバリン(登録商標))と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体、Biogen-Idecから市販(米国特許第5736137号も参照、出典明記によって本明細書中に援用される);場合によっては131I-B138抗体(BEXXARTM)を生成するために131Iで標識されうる「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5595721号も参照、出典明記によって本明細書中に援用される);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69:584-591 (1987)及びそれらの変異体、例として「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公開第2003/002607号);ATCC寄託番号HB-96450);HuMaxTM-CD20(完全なヒトIgG1抗体、米国公開特許第2004/167319号;国際公開第04/035607号、Genmab, Denmark)、AME-133(最適化したCDR移植抗体、米国公開特許第2005/025764;国際公開第04/103404、Applied Molecular Evolution)、HumaLymTM(完全なヒト抗体、Intracel)、及びhA20 (ヒト化IgG1抗体、米国公開特許第2003/0219433号;国際公開第00/74718号、Immunomedics);及びthe International Leukocyte Typing Workshopより入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-CI又はNU-B2 (Valentine等, Leukocyte Typing III (McMichael, 編集, p. 440, Oxford University Press (1987))が含まれる。
【0022】
本明細書中で用いる「抗体断片」なる用語は、インタクト抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む分子である。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)断片、ドメイン欠失抗体、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
本明細書中で用いる「天然抗体」なる用語は、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質を意味することを意図する。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中でばらつきがある。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0023】
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布する必要はない。可変性は軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたPシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与などの種々のエフェクター機能を表す。
【0024】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0025】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、その間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の何れかに分類される。
【0026】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスに分類される。インタクト抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれうる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
本明細書中で用いる「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片なる表現は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖に存在する抗体断片を意味することを意図する。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。(Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994))。
【0027】
本明細書中で用いる「ダイアボディ」なる用語は、2つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる(VH−VL)。非常に短いために同一鎖上で2つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補的なドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を作製する。(欧州特許第404097号;国際公報93/11161;及びHollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993))。
【0028】
ポリクローナル抗体は、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物内で産生される抗体を含む。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシン阻害剤に関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はRとR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRによりコンジュゲートされうる。
ポリクローナル抗体を生成するために、動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1か月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0029】
本明細書中で使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。例えば、集団を構成する個々の抗体は、天然に生じる可能性のある突然変異又は存在しうる少量の翻訳後突然変異を除いて実質的に同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作製することもできる。
【0030】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」なる用語は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種(例えばマウス又はラット)由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似するものである(米国特許第4816567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
【0031】
本明細書中で用いられるように、非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体を指す。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)由来の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。(Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992);国際公開第00/67796号)。
【0032】
本明細書中で用いる「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0033】
B細胞表面抗原
本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストはB細胞表面抗原に対する抗体である。本明細書中に用いられる「B細胞表面抗原」なる表現は、Bリンパ球の表面に発現される任意の抗原を意味することを意図する。本発明のいくつかの実施態様では、「B細胞表面抗原」は健康な個体のB細胞の表面に発現される抗原である。他の実施態様では、「B細胞表面抗原」は、疾患状態に罹っている個体のB細胞の表面上に発現される抗原である。更なる他の実施態様では、「B細胞表面抗原」は、健康な個体及び疾患状態に罹っている個体の両方のB細胞の表面上に発現される抗原である。本発明のいくつかの実施態様では、B細胞表面抗原は、非B細胞上よりも広い範囲で(例えば、2×広く、3×広く、4×広く、5×広く、10×広く、100×広く又はより広く)B細胞上に発現される。あるいは、ある実施態様では、B細胞表面抗原は、非B細胞上と同じ範囲か又は非B細胞上よりも狭い範囲でB細胞上に発現されてもよい。特定のB細胞表面抗原は、本質的に非B細胞上に発現されてもよく及び/又は活性化されたB細胞上に発現されてもよい。本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はB細胞上だけに発現される。
【0034】
例示的なB細胞表面抗原には、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD52、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86白血球表面マーカーが含まれる。その他の例示的なB細胞表面抗原には、toll様レセプター(例えばTLR-7及びTLR-9)、ケモカインレセプター(例えばCXCR3)、及びAPRILが含まれる (Medema等, Cell Death Differ. 10:1121-1125 (2003))。また、BAFFレセプター(BAFFR/BR3、BCMA及びTACI)は、本開示内容のためのB細胞表面抗原と考えられてもよい。
本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はCD19である。「CD19」抗原は、例えばHD237-CD19又はB4抗体により同定される90kDa以下の抗原を指す(Kiesel等, Leukemia Research II 12:1119 (1987))。CD19は、幹細胞段階からプラズマ細胞への終末分化の直前の時期までの系統分化の期間の全体にわたって細胞上にみられる。CD19へのB細胞表面抗原の結合により、CD19抗原の内部移行が生じうる。
【0035】
B細胞アンタゴニストは、例えば、B細胞を認識するIgG2a抗体であるLym-1;CD21抗原に対する抗体であるB2;CD22抗原に対する抗体であるB3;又は、CD10抗原に対する抗体であるJ5であってもよい(米国特許第5843398号)。本発明に関してB細胞アンタゴニストとして有用な抗CD22抗体は、例えば、米国特許第5484892号、同第5789557号及び同第5789554号、国際公開第98/42378号、国際公開第00/20864号及び国際公開第98/41641号、及びCampana, D.等, J. Immunol. 134:1524 (1985)、Dorken等, J. Immunol. 150:4719 (1993)及びEngel等, J. Immunol. 150:4519 (1993)に記載されている。この点に関しては、抗CD22抗体であるエピラツズマブは本発明で特に有用である。
本発明に関してB細胞アンタゴニストとして用いることができる付加的な例示的CD22抗体は、例えば、米国特許第5484892号、同第5789557号及び同第6846476号、及び国際公開第98/42378号、国際公開第00/20864同及び国際公開第98/41641号に記載されている。
【0036】
本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はCD23である。CD23はIgEの低親和性レセプターである。CD23は、細胞接着を媒介し、IgE及びヒスタミン放出を制御して、アポトーシスからB細胞を救い、骨髄細胞増殖を制御することが知られている。例としてConrad, Annu Rev Immunol 8:623-645 (1990);Delespesse等, Adv. Immunol. 49: 149-191 (1991);Bonnefoy等, Curr Opin Immunol 5:944-947 (1993)を参照のこと。CD23に特異的な抗体及びその使用は、例えば、Rector等, Immunol. 55:481-488 (1985);Suemura等, J. Immunol 137:1214-1220 (1986);Noro等, J. Immunol 137:1258-1263 (1986);Bonnefoy等, J. Immunol 138:2970- 2978 (1987);Flores-Romo等, Science 261:1038-1046 (1993);Sherr等, J. Immunol. 142: 481-489 (1989);Pene等, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85:6880-6884 (1988);Bonnefoy等 (国際公開第87/07302号);Bonnefoy等 (国際公開第96/12741号);Bonnefoy等, Eur. J. Immunol. 20:139-144 (1990);Sarfati等, J. Immunol. 141:2195-2199 (1988)及びWakai等, Hybridoma 12:25-43 (1993)において検討されている。また、米国特許第7008623号、同第6893638号、及び同第6011138号を参照のこと。
【0037】
本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はCD80である。CD80(「B7.1」とも称される)は免疫応答の生成において、重要であることが示されている。(Azuma等, J. Exp. Med. 177: 845-850 (1993);Freeman等, J. Immunol. 143:2714-2722 (1989);Hathcock等, Science 262:905-911 (1993);Hart等, Immunol. 79:616-620 (1993))。例えば、「IDEC-114」と称されるヒトCD80に特異的な霊長類化IgG1抗体を含め、CD80に特異的な抗体は記載されている(米国特許第5736137号;同第6113898号)。
特定の本発明の好ましい実施態様では、B細胞表面抗原はCD20である。「CD20」抗原は、末梢血液又はリンパ系臓器の90%以上のB細胞の表面上にみられる、35kDa以下の、非グリコシル化リンタンパク質である。CD20は、初期のプレB細胞発達の間に発現され、プラズマ細胞分化まで残る。CD20は正常なB細胞並びに悪性のB細胞上に存在する。文献内でのCD20の他の名称には「Bリンパ球限局抗原」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例えばClark等, Proc. Natl. Acad. Sci. 82: 1766 (1985)に記載される。
【0038】
CD20に対する抗体
本発明のB細胞アンタゴニストはCD20に対する抗体であってもよい。B細胞アンタゴニストとして機能する当分野で公知のCD20に対する任意の抗体が、本発明において、用いられてもよい。(例として米国特許第6682734号、同第6538124号、同第6528624号、同第6455043号、同第6410391号、同第6399061号、同第6368596号、同第6287537号、同第6242195号、同第6224866号、同第6171586号、同第6194551号、同第6120767号、同第6015542号、同第6090365号、同第5849898号、同第5843439号、同第5843398号、同第5776456号、同第5736137号、同第5721108号、同第5677180号、同第5595721号、同第5500362号、同第4861579参照、米国公開特許第2005/0069545号、同第2005/0053602号、同第2005/0025764号、同第2004/0167319号、同第2004/0093621号、同第2003/0219433号、同第2003/0157108号、同第2003/0147885号、同第2003/01339301号、同第2003/0103971号、同第2003/0095963号、同第2003/0082172号、同第2003/0068664号、同第2003/0026801号、同第2003/0021781号、同第2002/0197256号、同第2002/0197255号、同第2002/0128448号、同第2002/0058029号、同第2002/0041847号、同第2002/0012665号、同第2002/0009444号、同第2002/0006404号、同第2002/0004587、国際特許出願公開第00/09160号、国際公開第00/27428号、国際公開第00/27433号、国際公開第00/44788号、国際公開第01/10462号、国際公開第01/10461号、国際公開第01/10460号、国際公開第02/04021号、国際公開第01/74388号、国際公開第01/80884号、国際公開第01/97858号、国際公開第02/34790号、国際公開第02/060955号、国際公開第2/096948号、国際公開第02/079255号、国際公開第98/56418号、国際公開第98/58964号、国際公開第99/22764号、国際公開第99/51642号、国際公開第00/42072号、国際公開第00/67796号、国際公開第01/03734号、国際公開第01/77342号、国際公開第00/20864号、国際公開第01/13945号、国際公開第00/67795号、国際公開第00/74718号、国際公開第00/76542号、国際公開第01/72333号、国際公開第02/102312号、国際公開第03/002607号、国際公開第049694号、国際公開第03/061694号、国際公開第95/03770、及び欧州特許第330191号及び同第332865号を参照のこと)。
【0039】
CD20に対する例示的な抗体は、例えば米国公開特許第2005/0053602号に記載されており、「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5736137号);「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」(ゼバリン(登録商標))と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体(米国特許第5736137号);場合によっては「131I-B1」抗体(ヨードI131 Tositumomab、BEXXARTM)を生成するために131Iで標識した「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5595721号);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69:584-591 (1987))、及び「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公開第2003/002607号);ATCC寄託番号HB-96450;マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号);ヒト化2H7;huMax-CD20(Genmab, Denmark);AME-133(Applied Molecular Evolution);及びthe International Leukocyte Typing Workshopより入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2 (Valentine等, Leukocyte Typing III, McMichael編集, p. 440, Oxford University Press (1987))が含まれる。
【0040】
ここで「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、一般的にCD20抗原に対する、米国特許第5736137号において「C2B8」と命名された遺伝子操作キメラマウス/ヒトモノクローナル抗体であり、CD20に結合する能力を保持するその断片を含むものを意味する。
特定の実施態様では、抗CD20抗体はヒト及び霊長類のCD20に結合する。特定の実施態様では、CD20を結合する抗体はヒト化又はキメラである。CD20結合抗体には、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、m2H7(マウス2H7)、hu2H7(ヒト化2H7)、及び限定するものではないが、hu2H7.v16(vは型を表す)、v31、v73、v75、v114、v511並びにフコース欠乏性変異体を含むその全ての機能的変異体が含まれる。hu2H7変異型抗体の幾つかの配列を、出典明記によってその全体が本明細書中に援用される国際公開第04/056312号に記載され、N末端アミノ酸配列の成熟ポリペプチドでは取り除かれるリーダー配列を太字で以下に示す:
【0041】
hu2H7.v16 L鎖[232aa](配列番号1):
hu2H7.v16 H 鎖[471aa](配列番号2):
hu2H7.v31 H 鎖[471aa](配列番号3):
v31のL鎖は上記のv16のもの、すなわち配列番号1と同じである。
【0042】
本明細書中で用いる「ヒト化2H7v.16」なる用語は、可変軽鎖配列を含んでなるインタクトな抗体又は抗体断片を意味する:
及び可変重鎖配列:
【0043】
ヒト化2H7v.16抗体がインタクト抗体の場合、好ましくはv16軽鎖アミノ酸配列を含む:
及びv16重鎖アミノ酸配列:
【0044】
特定の示した位置のアミノ酸置換を除き、v16のアミノ酸配列を含んでなる例示的なヒト化2H7抗体変異体を以下の表1にまとめる。特に示さなければ、2H7変異体はv16と同じL鎖を有するであろう。
【0045】
前述のヒト化2H7mAbの変異型は上記配列番号6と同じL鎖配列と以下のH鎖アミノ酸配列を有する2H7v.31である:
マウス抗ヒトCD20抗体m2H7は、VH配列:
及びVL配列
を有する。
【0046】
他の好適なヒト化2H7抗体は、2H7.v511可変軽鎖ドメイン配列:
及び2H7.v511可変重鎖ドメイン配列:
を含んでなる。
ヒト化2H7.v511抗体がインタクト抗体である場合、軽鎖アミノ酸配列:
及び配列番号7の重鎖アミノ酸配列又は:
を含んでなる。
特に示さない限り、ここに開示したヒト化2H7v.16及びその変異体の配列は、成熟ポリペプチド、すなわちリーダー配列を持たないものである。(米国公開特許第2005/0095243号)。
【0047】
BAFFアンタゴニスト、BAFFレセプターアンタゴニスト及びその他のB細胞アンタゴニスト
BAFF(BLyS、TALL-1、THANK、TNFSF13B又はzTNF4としても知られている)は、B細胞生存及び成熟のために必須であるTNF1リガンドスーパーファミリーの一つである。トランスジェニックマウスにおけるBAFF過剰発現により、B細胞の異常増殖及び重度の自己免疫性疾患の発症が生じる(Mackay等 (1999) J. Exp. Med. 190, 1697-1710;Gross等 (2000) Nature 404, 995-999;Khare等 (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97, 3370-33752-4)。BAFFは、TACI、BCMA及びBR3(BAFF-Rとしても知られる)の3つのTNFレセプタースーパーファミリーに結合することによってB細胞に作用する(上掲のGross等;Thompson, J. S.等, (2001) Science 293, 2108-2111;Yan, M.等, (2001) Curr. Biol. 11, 1547-1552;Yan, M.等, (2000) Nat. Immunol. 1, 37-41;Schiemann, B.等, (2001) Science 293, 2111-2114)。3つのBAFFレセプターの中でBR3だけはBAFFに特異的であり、また、他の2つは関連したTNFファミリーメンバーであるAPRILを結合する。BR3は、B細胞の表面上に発現される184残基のIII型膜貫通タンパク質である。(米国公開特許第2005/0095243号)。
【0048】
本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストは、BAFFアンタゴニスト又はBAFFレセプターアンタゴニストである。本明細書中で用いられる「BAFFアンタゴニスト」なる用語には、天然配列のBAFFポリペプチドを結合する、会合する及び/又は相互作用する任意の分子、及び天然配列のBAFFシグナル伝達を部分的又は完全に阻止する、阻害する、又は中和する任意の分子が含まれる。選択された実施態様では、本発明には、BAFFと結合するか又は関連する抗体ないしはその断片の使用を含む。当業者は、天然配列のBAFFポリペプチドシグナル伝達が、とりわけ、B細胞生存及びB細胞成熟を促進すると理解するであろう。例えば、生物学的に活性なBAFFリガンドは、インビトロ又はインビボでの以下の事象の何れか一又はこれらの組合せを増強する:(i) B細胞の生存の増加、(ii) IgG及び/又はIgMレベルの増加、(iii) プラズマ細胞の数の増加、及び、(iv) 脾臓B細胞のNF-κB2/100のp52 NF-κBへのプロセシング(例えば、Batten等, J. Exp. Med. 192: 1453-1465 (2000);Moore,等, Science 285:260-263 (1999);Kayagaki等, Immunity 17:515-524 (2002)。ゆえに、BAFFシグナル伝達の阻害、遮断又は中和により、とりわけ、B細胞の数が減少する。したがって、本発明のある態様でのBAFFアンタゴニストは、インビトロ又はインビボでのBAFFポリペプチドの一又は複数の生物学的活性を、部分的ないしは完全に遮断、阻害又は中和して、これによって、B細胞活性を低減又は阻害するであろう。BAFFアンタゴニストを試験するために有用ないくつかのアッセイは、米国公開特許第2005/0095243号に記載される。
【0049】
BAFFアンタゴニストとして有用なペプチドには、例えば、国際公開第02/092620号において、TALL-1 12-3と称されるペプチドが含まれ、以下のアミノ酸配列を有する:
このペプチド、並びに国際公開第02/092620号において開示される他の例示的なペプチドは、BAFFと結合して、BAFFがそのレセプターであるBR3、TACI及びBCMAに結合するのを阻害する。ある実施態様では、国際公開第02/092620号に記載されるBAFFペプチドアンタゴニストは、例えばFc又はPEGに連結されてもよい。
【0050】
更なるBAFFペプチドアンタゴニストには、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号:15)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号:16)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号:17)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号:18)、及びECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号:19)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドないしはポリペプチド、及び、配列番号:15、16、17、18又は19の何れか一に少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性があるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが含まれる。
本発明の方法の実施に用いることができる更なるBAFFペプチドアンタゴニストには、米国公開特許第2005/0095243号に記載の式I、式II又は式IIIのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが含まれる。
【0051】
本発明のいくつかの実施態様では、BAFFアンタゴニストは、抗BAFF抗体、イムノアドヘシン又は小分子である。ある実施態様では、イムノアドヘシンは、可溶性コンストラクトの形態でBAFFレセプターのBAFF結合領域(例えばBR3、BCMA又はTACIの細胞外ドメイン)を含んでなる。特に好適な実施態様では、イムノアドヘシンはBR3-Fc又は配列番号:15、16、17、18又は19の何れか一の配列を有するポリペプチドである(米国公開特許第2002/0037852号、同第2003/0059937号、同第2005/0095243号及び同第2005/0163775号に記載)。他の実施態様では、イムノアドヘシンは、TACI又はBCMAの可溶型(例えばTACI-Fc又はBCMA-Fc)である。
さらに、当業者は、BAFFに特異的に結合するか又はBAFFと会合する抗体ないしその断片もまた、本明細書中の教示と矛盾しておらず、例えば米国公開特許第2003/0059937号にあるように当分野で公知であることを理解するであろう。本発明の態様に記載の例示的な抗体は、特異的に認識してBAFFの生物活性を阻害するヒトモノクローナル抗体であるLymphoStat-BTM(ベリムマブ(belimumab)) (Human Genome Sciences, Inc.)である。
【0052】
本発明の特定の他の実施態様では、B細胞アンタゴニストはBAFFレセプターアンタゴニストである。本明細書中で用いられる「BAFFレセプターアンタゴニスト」なる用語には、天然配列のBAFFレセプター(例えばBR3、TACI又はBCMA)ポリペプチドを結合又は会合する任意の分子、及び/又はそのレセプターを介する天然配列のBAFFシグナル伝達を部分的ないしは完全に遮断、阻害又は中和する任意の分子が含まれる。ゆえに、本発明の選択された実施態様では、B細胞アンタゴニストは、Btk、TACI、BCMA(米国公開特許第2002/0081296号)又はBAFF-R(米国公開特許第2002/0165156号)と特異的に結合又は会合する抗体ないしその断片、ポリペプチド又は小分子を含んでなる。他の例示的なB細胞アンタゴニストには、例えば、Ig-α/Ig-βのITAMモチーフとそれらの標的との相互作用を阻害する抗体、ポリペプチド又は小分子、典型的又は選択的にNFκB活性化経路を阻害する抗体、ポリペプチド又は小分子、及びOCA-B、CD40、LT-βを阻害する抗体、ポリペプチド又は小分子などが含まれる。
【0053】
B細胞アンタゴニストのコンジュゲート及び他の修飾
本発明の特定の実施態様によると、B細胞アンタゴニストは細胞障害性剤とコンジュゲートされる。
B細胞アンタゴニスト-細胞障害性剤コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は当分野で周知である。
また、B細胞アンタゴニストと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン(calicheamicin)、メイタンシン(maytansine)(米国特許第5208020号)、トリコテン(trichothene)及びCC1065のコンジュゲートもここにおいて考慮される。本発明の一実施態様では、B細胞アンタゴニストは、一又は複数のメイタンシン(maytansine)分子(例えば、B細胞アンタゴニスト当たり約1から約10のメイタンシン分子)とコンジュゲートしている。メイタンシンは、例えばMay-SH3へ還元されるMay-SS-Meへ変換され、修飾されたB細胞アンタゴニスト(Chari等,Cancer Research 52:127-131(1992))と反応してメイタンシノイド(maytansinoids)-B細胞アンタゴニストコンジュゲートを生成する。
【0054】
あるいは、B細胞アンタゴニストは、一又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートする。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、サブピコモル濃度で、二重鎖DNAの割れ目を作ることができる。使用されるであろうカリケアマイシンの構造類似体は、限定されるものではないが、γ1I、α2I、α3I、N-アセチル-γ1I、PSAG及びθI1(Hinman等, Cancer Research 53:3336-3342(1993)及びLode等,Cancer Research 58:2925-2928(1998))を含む。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリス阻害剤、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(Restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。また、メイタンシノイドはB細胞アンタゴニストにコンジュゲートしうる。
【0055】
本発明は、更に、核酸分解性活性を有する化合物(例えば、リボムクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)とコンジュゲートされたB細胞アンタゴニストを考慮する。
種々の放射性同位元素が放射性コンジュゲートB細胞アンタゴニストの生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素が含まれる。
【0056】
B細胞アンタゴニストと細胞障害性剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシインミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-I-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ヒス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)がB細胞アンタゴニストに放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは、細胞内で細胞毒性薬剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。例えば、酸性の易動性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari等 Cancer Research 52: 127-131(1992))を用いてもよい。
【0057】
あるいは、B細胞アンタゴニスト及び細胞障害性剤を含んでなる融合タンパク質を、例えば組換え技術又はペプチド合成によって製造してもよい。
他の実施態様では、予備標的化で使用するために、B細胞アンタゴニストは「レセプター」(ストレプトアビジン等)にコンジュゲートされてもよく、該B細胞アンタゴニスト-レセプター複合体は患者に投与され、次いで清澄化剤を用いて未結合複合体を循環から除去し、次に細胞毒性薬(例えば、放射性ヌクレオチド等)にコンジュゲートされた「リガンド」(アビジン等)を投与する。
また、本発明のB細胞アンタゴニストを、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照)を活性な薬剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせてもよい。例えば国際公開第88/07378号及び米国特許第4975278号を参照されたい。そのようなコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
【0058】
この発明の方法に有用な酵素には、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含むプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びOガラクトシダーゼ;Pラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なPラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた知られている酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。B細胞アンタゴニスト-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、細胞集団又は組織にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0059】
酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、B細胞アンタゴニストに共有的に結合させることができる。あるいは、本発明のB細胞アンタゴニストの少なくとも抗原結合領域を酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(例えばNeuberger等, Nature 312:604-608(1984)参照。
B細胞アンタゴニストの他の修飾がここで考慮される。例えば、B細胞アンタゴニストは、様々な非タンパク質性(nonproteinaceous)のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーのいずれかに結合させてもよい。
【0060】
B細胞アンタゴニストへの結合のために用いることができる例示的なポリマーは、ポリアルキレングリコール(PEG)である。PEG成分、例えば1、2、3、4又は5つのPEGポリマーは各々のB細胞アンタゴニストに結合して、B細胞アンタゴニスト単独と比較して血清半減期を増加しうる。PEG成分は非抗原性で、基本的に生物学的に不活性である。本発明の実施に用いられるPEG成分は、分枝状又は非分枝状であってもよい。
B細胞アンタゴニストに付着するPEG成分の数及び個々のPEG鎖の分子量は異なりうる。一般に、ポリマーの分子量が高ければ高いほど、ポリペプチドに付着するポリマー鎖が少なくなる。通常、B細胞アンタゴニストに付着する総ポリマー量は、20kDaから40kDaである。ゆえに、1つのポリマー鎖が付着される場合、鎖の分子量は一般に20〜40kDaである。2つの鎖が付着される場合、各々の鎖の分子量は一般に10〜20kDaである。3つの鎖が付着される場合、分子量は一般に7〜14kDaである。
【0061】
ポリマー、例えばPEGは、ポリペプチド上の任意の好適な露出した反応基を介してB細胞アンタゴニストに連結されうる。露出した反応基(一又は複数)は、例えば、N末端アミノ基又は内部リジン残基のεアミノ基、又はその両方であってもよい。活性化されたポリマーは反応して、B細胞アンタゴニスト上の任意の遊離アミノ基で共有結合してもよい。また、(利用可能であれば)B細胞アンタゴニストの遊離したカルボン酸基、最適に活性化されたカルボニル基、ヒドロキシル、グアニジル、イミダゾール、酸化炭化水素成分及びメルカプト基は、ポリマー付着のための反応基として用いることができる。
コンジュゲート反応において、ポリペプチドの濃度によって、典型的にはポリペプチドの1モルにつきおよそ1.0からおよそ10モルの活性化されたポリマーが用いられる。通常、B細胞アンタゴニストの所望の薬理活性を損ないうる副作用(しばしば非特異的なもの)を最小限に抑えながら反応を最大限にするバランスを表す比率を選択する。好ましくは、B細胞アンタゴニストの少なくとも50%の生物活性(例えば本明細書又は当分野で公知の何れかのアッセイにおいて、示される)が保持され、最も好ましくはほぼ100%が保持される。
【0062】
ポリマーは、従来の化学反応を用いてB細胞アンタゴニストにコンジュゲートされうる。例えば、ポリアルキレングリコール成分は、B細胞アンタゴニストのリジンεアミノ基にカップリングしてもよい。リジン側鎖への結合は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステル、例として、PEGスクシンイミジルスクシナート(SS-PEG)及びスクシンイミジルプロピオン酸(SPA-PEG)により行われうる。適切なポリアルキレングリコール成分には、例えば、カルボキシメチル-NHS及びノルロイシン-NHS, SCが含まれる。これらの試薬は市販されている。更なるアミン反応性PEGリンカーは、スクシンイミジル成分と置換されてもよい。これらには、例えば、イソチオシアネート、ニトロフェニルカルボネート(PNP)、エポキシド、ベンゾトリアゾールカルボネート、SC-PEG、トレシレート(tresylate)、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール及びPNPカルボネートが含まれる。条件は、通常、反応の選択性及び程度を最大にするために最適化される。反応条件のこのような最適化は、当分野の通常の技術の範囲内である。
【0063】
PEG化(PEGylation)は、当分野で公知の何れかのPEG化により行われうる。例として、Focus on Growth Factors, 3: 4-10, 1992及び欧州特許第0154316号及び欧州特許第0401384号を参照のこと。PEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子(又は、類似した反応性水溶性ポリマー)とのアルキル化反応又はアシル化反応を用いて行われてもよい。
一般に、アシル化によるPEG化は、ポリエチレングリコールの活性なエステル誘導体の反応を伴う。PEG化に任意の反応性PEG分子が用いられうる。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にエステル化されるPEGは、頻繁に使われる活性化されたPEGエステルである。本明細書中で用いられる「アシル化」には、治療的タンパク質とPEGなどの水溶性ポリマーとの結合の以下の種類:アミド、カルバメート、ウレタンなどがあるが、これらに限定するものではない。例としてBioconjugate Chem. 5: 133-140, 1994を参照のこと。反応パラメーターは、通常、B細胞アンタゴニストを障害するか又は不活性化する温度、溶媒及びpH条件を避けるために選択される。
【0064】
通常、連結結合はアミドであり、典型的に、結果として生じる生成物の少なくとも95%はモノ-、ジ-又はトリ-PEG化されている。しかしながら、高い程度のPEG化を有するいくつかの種は、使用する特定の反応条件に依存した量で形成されうる。場合によって、精製されPEG化された種は、従来の精製方法、例えば透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、疎水性交換クロマトグラフィ及び電気泳動によって、混合物、特に反応していない種から分離される。
一般に、アルキル化によるPEG化は、還元剤の存在下において、本発明のB細胞アンタゴニストとPEGの終末アルデヒド誘導体との反応を伴う。加えて、実質的にB細胞アンタゴニストのN末端アミノ基にのみPEG化を働かせるように反応条件を操作してもよい。これはすなわちモノ-PEG化されたタンパク質である。モノ-PEG化又はポリ-PEG化のいずれかの場合、PEG基は、一般的に-CH2-NH-基を介してタンパク質に付着される。特に-CH2-基に関して、この種の結合は「アルキル」結合として知られている。
【0065】
N末端を標的とするモノ-PEG化された生成物を産生するために還元型のアルキル化による誘導体化は、誘導体化に利用可能な異なる種類の第一アミノ基(N末端に対するリジン)の差動的反応性を利用する。反応は、リジン残基のε-アミノ基とタンパク質のN末端アミノ基のものとのpKa差動を利用し得るpHで行われる。このような選択的な誘導体化によって、アルデヒドなどの反応基を含有する水溶性ポリマーのタンパク質への付着は制御される。ポリマーとのコンジュゲートがタンパク質のN末端で主に起こり、リジン側鎖アミノ基などの他の反応基の有意な修飾は起こらない。
【0066】
アシル化手法及びアルキル化手法に用いられるポリマー分子は、水溶性ポリマーの中から選択される。本方法で示されるように重合の程度が制御されうるように、選択されるポリマーは一般的に、アシル化のための活性なエステル又はアルキル化のためのアルデヒドなどの単一の反応基を有するように修飾される。例示的な反応性PEGアルデヒドはポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドであり、水安定性であるか、又はモノC1-C10アルコキシ基又はそのアリールオキシ誘導体である(例としてHarris等、米国特許第5252714号を参照)。ポリマーは、分枝状か又は非分枝状でもよい。アシル化反応のために、一般的に選択されるポリマー(一又は複数)は、単一の反応性エステル基を有する。還元性アルキル化のために、一般的に選択されるポリマー(一又は複数)は、単一の反応性アルデヒド基を有する。一般に、水溶性ポリマーは、通常哺乳類組み換え発現系によって、都合よく作製されるので、天然に生じるグリコシル残基から選択されないであろう。
【0067】
一般に、本発明のPEG化されたB細胞アンタゴニストの調製方法は、(a) 分子が一又は複数のPEG基に付着するような条件下で本発明のB細胞アンタゴニストとポリエチレングリコール(例として、PEGのアルデヒド誘導体又は反応性エステル)とを反応させる、そして(b) 反応生成物(一又は複数)を得る工程を含む。一般に、アシル化反応のための最適反応条件は、既知のパラメーター及び所望の結果に基づいて個別的に決定されるであろう。例えば、一般に、タンパク質に対してPEGの比率が大きければ、ポリ-PEG化された生成物の割合が大きくなる。
一般に、実質的に均一なモノ-ポリマー/B細胞アンタゴニストの集団を生成するための還元性アルキル化は、(a) NgRのN末端アミノ基の選択的な修飾をペンニット(pen-nit)するために好適なpHで、還元性アルキル化条件下で反応性PEG分子と本発明のB細胞アンタゴニストとを反応させる。そして、(b) 反応生成物(一又は複数)を得る工程を含んでなる。
【0068】
実質的に均一なモノ-ポリマー/B細胞アンタゴニストの集団について、還元性アルキル化反応条件は、本発明のB細胞アンタゴニストのN末端への水溶性ポリマー成分の選択的な付着を可能にするものである。このような反応条件により一般に、リジン側鎖アミノ基とN末端アミノ基との間のpKa差が生じる。本発明の目的を達成するために、pHは、通常、3〜9、典型的には3〜6の範囲である。
本発明のB細胞アンタゴニストはtag、例えばタンパク質分解に引き続いて放出されうる成分、を含んでもよい。ゆえに、リジン成分は、まず、リジンとN末端の両方と反応するであろうトラウト試薬(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)などの低分子量のリンカーにより修飾されたHis-タグを反応させて、次いでHisタグを放出することによって、選択的に修飾できる。次いで、ポリペプチドは、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基又は遊離ないしは保護されたSHなどのチオール反応性頭基を含有するPEGによって、選択的に修飾されうる遊離型SH基を含有するであろう。
【0069】
トラウト試薬は、PEG付着に特異的な部位を提供する任意のリンカーにより置換されてもよい。例えば、トラウト試薬は、SPDP、SMPT、SATA又はSATP (Pierce Chemical Company, Rockford, IL)により置換されてもよい。同様に、マレイミド(例えばSMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS又はGMBS)、ハロアセテート基(SBAP、SIA、SIAB)又はビニルスルホン基を挿入するアミン反応性のリンカーとタンパク質とを反応させ、遊離型SHを含有するPEGと結果として生じる生成物とを反応させることもできる。
いくつかの実施形態では、ポリアルキレングリコール成分は、B細胞アンタゴニストのシステイン基にカップリングする。カップリングは、例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基又はチオール基を用いて行ってもよい。
【0070】
場合によって、B細胞アンタゴニストは、不安定な結合によってポリエチレングリコール成分にコンジュゲートされる。不安的な結合は、例えば生化学的加水分解、タンパク質分解又はスルフヒドリル切断において切断されうる。例えば、この結合はインビボ(生理学的な)条件下で切断されうる。
反応基がN末端のαアミノ基上にある場合、反応は、不活性ポリマーと生物学的に活性な材料を反応させるために用いる任意の適切な方法によって、一般におよそpH5〜8、例えばpH5、6、7又は8で起こる。通常、この過程には、活性化されたポリマーを調製して、その後活性化されたポリマーとタンパク質を反応させて製剤に適切な可溶性タンパク質を生産することが伴う。
【0071】
また、ここに開示する抗体はリポソームとして調製してもよい。B細胞アンタゴニストを含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985);Hwang等, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980);及び米国特許第4485045号及び第4544545号;及び国際公開第97/38731号に記載されたような、当分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5013556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成されうる。リポソームは、所定の孔径のフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab'断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームにコンジュゲートされ得る。化学治療薬は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst., 81(19): 1484 (1989)参照。
【0072】
ここで記載のタンパク質又はペプチドB細胞アンタゴニストのアミノ酸配列の修飾を考察する。例えば、B細胞アンタゴニストの結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。
B細胞アンタゴニストのアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化をB細胞アンタゴニストコード化核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、B細胞アンタゴニストのアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終コンストラクトに達するまでなされるが、その最終コンストラクトは所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化などのB細胞アンタゴニストの翻訳後過程を変更しうる。
【0073】
突然変異のための好ましい位置にあるB細胞アンタゴニストの特定の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置換される。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現されたB細胞アンタゴニスト変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0074】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つB細胞アンタゴニスト又は細胞障害ポリペプチドに融合したB細胞アンタゴニストを含む。B細胞アンタゴニストの他の挿入変異体は、B細胞アンタゴニストの血清半減期を向上させるポリペプチド又は酵素のB細胞アンタゴニストのN-ないしはC-末端への融合物を含む。
他の種類の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基によって置換されたB細胞アンタゴニスト分子に少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。抗体B細胞アンタゴニストの置換突然変異の最も対象となる部位は高度可変領域を含むが、FR変化も考慮される。
保存的置換は、「好ましい置換」と題して以下の表2に示す。これらの置換により生物学的活性に変化が生じる場合、表2に「例示的置換」と称した又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。
【0075】
表2
【0076】
B細胞アンタゴニストの生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はヘリックス配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro; 及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
【0077】
B細胞アンタゴニストの適切な高次構造を維持するために関与しない任意のシステイン残基も、一般的には、セリンと置換して、分子の酸化的安定性を改善して、異常な交差を防いでもよい。逆に、システイン結合をB細胞アンタゴニストに付加して、その安定性を改善してもよい(特にこの場合、B細胞アンタゴニストはFv断片などの抗体断片である)。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる開発のために選択され、得られた変異体は、それらを生成した親抗体と比較して向上した生物学的特性を有するであろう。そのような置換変異体を作製する簡便な方法には、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異がある。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された抗体変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として一価様式でディスプレイされる。ついで、ファージディスプレイ変異体は、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
【0078】
B細胞アンタゴニストのアミノ酸変異の他の型は、B細胞アンタゴニストの元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、B細胞アンタゴニストに見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又はB細胞アンタゴニストに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースなどの糖類の一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0079】
B細胞アンタゴニストへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元のB細胞アンタゴニストの配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0080】
抗体がFc領域を含有する場合、それに接着する炭水化物を変更してもよい。例えば、抗体のFc領域に接着するフコースを欠損する成熟炭水化物構造の抗体は、米国特許公開第2003/0157108号に記載される。抗体のFc領域に接着した炭水化物内のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を二分する抗体は、国際公開第03/011878号、及び米国特許第6602684号に参照されている。抗体のFc領域に接着するオリゴサッカライド内の少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体は、国際公開第97/30087号に報告される。また、抗体のFc領域に接着する変更された炭水化物を有する抗体については、国際公開第98/58964号及び国際公開第99/22764号も参照のこと。
【0081】
B細胞アンタゴニストのアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製されたB細胞アンタゴニストの変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
エフェクター機能に関して、例えばB細胞アンタゴニストの抗原依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)を向上させるために、本発明のB細胞アンタゴニストを修飾することが望ましい。このことは、抗体B細胞アンタゴニストのFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することで達成される。あるいは又は加えて、Fc領域にシステイン残基を導入することによってこの領域での鎖間のジスルフィド結合形成が起こりうる。故に、生成されたホモ二量体抗体は内部移行能を向上及び/又は補体媒介性細胞障害及びADCCを増強する。Caron等, J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992) 及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。抗線維形成活性が亢進されたホモ二量体抗体もまた、Wolff等, Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されているような異種性二機能性交差結合を用いて調製されうる。又は、抗体を二重のFc領域を持つように操作して、それによって補体媒介性溶解及びADCC能を亢進した。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。国際公開第00/42072号は、抗体がそのFc領域内にアミノ酸置換を含有する場合のヒトエフェクター細胞の存在下で改善されたADCC機能を有する抗体を述べる。
【0082】
変更したC1q結合及び/又は補体依存性細胞障害活性(CDC)を有する抗体については、国際公開第99/51642号、米国特許第6194551号B1、米国特許第6242195号B1、米国特許第6528624号B1及び米国特許第6538124号 に記載される。抗体は、そのFc領域のアミノ酸位置270、322、326、327、329、313、333及び/又は334の一以上にアミノ酸置換を含有する。
B細胞アンタゴニストの血清半減期を延長するために、例として米国特許第5739277号に記載されているようにB細胞アンタゴニスト(特に抗体断片)内にサルベージレセプター結合エピトープを組み込む方法がある。ここで用いる、「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期延長に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを表す。また、Fc領域内に置換を有し、血清半減期が延長された抗体は国際公開第00/42072号に記載される。
3つ以上(好ましくは4つ)の機能的抗原結合部位を有する遺伝的に操作した抗体もまた考慮される(米国公開特許第2002/0004587号)。
【0083】
B細胞アンタゴニストの製剤と投与
本発明のB細胞アンタゴニストは治療用製剤の形態で患者に投与されるのが好ましい。本発明に関連して使用されるB細胞アンタゴニストの治療的剤形は、所望の純度を有するB細胞アンタゴニストを選択的に薬剤的許容可能な担体、賦形剤、安定剤と混合して凍結乾燥の剤形又は液状溶液の形態の貯蔵に適するものである(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)又はTWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0084】
例示的抗CD20抗体の剤形は国際公開第98/56418号に記載されており、出典明記により特別に本明細書中に援用される。この公報は、2−8℃で2年間の最小限の貯蔵期間を持つように、リツキシマブ40mg/mL、25mM酢酸塩、150mMトレハロース、0.9%ベンジルアルコール、及び0.02%ポリソルベート20, pH5.0を含む液状複数回用量の剤形である。他の抗CD20剤形は、リツキシマブ10mg/mL、塩化ナトリウム9.0mg/mL、クエン酸ナトリウム二水和物7.35mg/mL、ポリソルベート80 0.7mg/mL、及び注入用の滅菌水を含むpH 6.5のものである。
凍結乾燥剤形は米国特許第6267958号に記載されるように、皮下的投与に適する。そのような凍結乾燥剤形は適当な希釈剤で高いタンパク質濃度に再編成されるかもしれない、また再編成された剤形はここで治療される患者に皮下注射されうる。
【0085】
また、本明細書中の製剤は、治療される特定の徴候のための必要に応じて、一以上の活性な化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有するものを含有してもよい。例えば、細胞障害性剤、化学療法剤、サイトカイン、TGFβ経路の阻害剤(例えば、TGFβ活性化のモノクローナル抗体、ペプチド、小分子アンタゴニスト、阻害剤)、インテグリンレセプターアンタゴニスト、又は免疫抑制剤(例えば、T細胞に作用するもの、例としてT細胞を結合する抗体又はシクロスポリン、例えばLFA-1を結合するもの)を更に供給するのが望ましい。このような他の薬剤の有効量は、製剤に存在するB細胞アンタゴニストの量、疾患又は疾病又は治療の種類、及び他の要因に依存する。
また、B細胞アンタゴニストは、例としてコアセルべーション技術又は界面重合化により調製したマイクロカプセル、例として、コロイド状のドラッグデリバリーシステム(例として、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョン中のそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタサイクリン)マイクロカプセル中に包まれているかもしれない。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0086】
B細胞アンタゴニストの持続性徐放剤が調製される。持続性徐放剤の好適な例は、B細胞アンタゴニストを含む固形疎水性ポリマーの準透過性基質を含むものであり、基質は、造形品、例としてフィルム、又はマイクロカプセルの形である。持続性徐放基質の例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号), L-グルタミン酸及びエチルLグルタミン酸の共重合体、非分解性のエチレンビニール酢酸塩、分解性の乳酸グリコール酸共重合体、例としてLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸共重合体及びロイプロリド酢酸塩で構成された注入可能ミクロスフェア)、及びポリD-(−)-3ヒドロキシブチリン酸を含む。
インビボ投与のために使用される製剤は無菌でなければならない。これは濾過滅菌メンブレンによる濾過によって容易に達成されうる。
【0087】
B細胞アンタゴニストは、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻腔内を含む任意の適切な方法により投与されうる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与が含まれる。加えて、B細胞アンタゴニストは、例えばB細胞アンタゴニストを漸減しながらパルス注入によって、適切に投与されてもよい。好ましくは、投薬は、投与が短期のものであるか長期のものであるかにある程度依存して、注射、最も好ましくは静脈内注射又は皮下注射により行われる。
【0088】
本発明の特定の例示的実施形態では、B細胞アンタゴニストは、(例えば、静脈内に) 1mg/m2から500mg/m2の用量で患者に投与される。例えば、B細胞アンタゴニストは、1mg/m2、2mg/m2、3mg/m2、4mg/m2、5mg/m2、10mg/m2、15mg/m2、20mg/m2、25mg/m2、30mg/m2、35mg/m2、40mg/m2、45mg/m2、50mg/m2、55mg/m2、60mg/m2、65mg/m2、70mg/m2、75mg/m2、80mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、95mg/m2、100mg/m2、105mg/m2、110mg/m2、115mg/m2、120mg/m2、125mg/m2、130mg/m2、135mg/m2、140mg/m2、145mg/m2、150mg/m2、155mg/m2、160mg/m2、165mg/m2、170mg/m2、175mg/m2、180mg/m2、185mg/m2、190mg/m2、195mg/m2、200mg/m2、205mg/m2、210mg/m2、215mg/m2、220mg/m2、225mg/m2、230mg/m2、235mg/m2、240mg/m2、245mg/m2、250mg/m2、255mg/m2、260mg/m2、265mg/m2、270mg/m2、275mg/m2、280mg/m2、285mg/m2、290mg/m2、295mg/m2、300mg/m2、305mg/m2、310mg/m2、315mg/m2、320mg/m2、325mg/m2、330mg/m2、335mg/m2、340mg/m2、345mg/m2、350mg/m2、355mg/m2、360mg/m2、365mg/m2、370mg/m2、375mg/m2、380mg/m2、385mg/m2、390mg/m2、395mg/m2又は400mg/m2の用量で投与されてもよい。
【0089】
B細胞アンタゴニストは、多種多様な投薬計画に従って投与されてもよい。(例として米国特許出願公開第2006/0002930号を参照)。例えば、B細胞アンタゴニストは、予め決められた期間(例えば4〜8週又はそれ以上)の間1日に1回、又は、週ごとの計画(例えば1週につき1日、1週につき2日、1週につき3日、1週につき4日、1週につき5日、1週につき6日又は1週につき7日)に従って、予め決められた期間(例えば4〜8週又はそれ以上)の間、投与されてもよい。「1週間に1回」の投薬計画の具体的な例は、治療期間の1日目、8日目、15日目及び22日目のB細胞アンタゴニストの投与である。代替的な実施態様では、B細胞アンタゴニストは、数か月にわたって間欠的に投与されてもよい。例えば、B細胞アンタゴニストは、半年ごとに連続する3週間の間毎週)投与されてもよい(すなわち、6か月ごとに週1回の投薬を繰り返す)。このような投薬計画は、初期治療によって、生じる有益な治療効果を維持するために、延長して(年単位で)続けられてもよい。更なる他の実施態様では、このような維持療法は、線維形成状態の即時型の症状を低減するように設定された急性期投薬措置の後に行われてもよい。
治療期間中のそれぞれの時期に投与されるB細胞アンタゴニストの量は同じでもよい。これに対して、治療期間中のそれぞれの時期に投与される量は、異なっていてもよい(例えば、ある時点に投与される量はその前に投与された量より多くても少なくてもよい)。例えば、維持療法の間に投与される用量は、治療の急性期の間に投与される量より少なくてもよい。特定の状況に応じて適切な投薬計画は、当業者に明らかであろう。
【0090】
患者へのタンパク質B細胞アンタゴニストの投与の他に、本出願は、遺伝子治療によるB細胞アンタゴニストの投与を考慮する。B細胞アンタゴニストをコードする核酸のこのような投与は、「治療的有効量のB細胞アンタゴニストがこの治療を必要とする患者に投与される」という表現により包含される。例として、細胞内抗体を生成するための遺伝子治療の使用に関しては、国際公開第96/07321号を参照のこと。
患者の細胞内への核酸(場合によって、ベクターに含まれている)の取り込みには2つの主な手法があり、それはインビボとエクスビボである。インビボ運搬のために、通常患者のB細胞アンタゴニストが必要である部位に核酸が直接注入される。エクスビボ治療のために、患者の細胞が取り除かれ、核酸がこれら単離した細胞内に導入され、変更した細胞が直接又は、例えば、患者内に着床される多孔性膜内に被包して患者に投与される(例として米国特許第4892538号および同第5283187号を参照)。核酸を生きた細胞に導入するために有用な様々な技術がある。技術は、核酸が対象とする宿主の細胞内にインビボで移入されるか、又はインビトロで培養細胞に形質移入されるかの何れかによって、異なる。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の移入に適する技術には、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、などの使用が含まれる。遺伝子のエクスビボ運搬のために一般的に用いられるベクターはレトロウィルスである。
【0091】
例示的なインビボ核酸移入技術には、ウイルスベクター(例として、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス又はアデノ関連ウイルス)及び脂質ベースのシステム(遺伝子の脂質が媒介する移入に有用な脂質は、例えばDOTMA、DOPE及びDC-Cholである)を用いる形質移入が含まれる。場合によっては、標的細胞を標的とする薬剤、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンドなどにより核酸供給源を提供するのが好ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスに関係する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の種類の細胞に対するキャプシドタンパク質ないしはその断片、循環への内部移行を起こすタンパク質に対する抗体、並びに、細胞内局在化を標的とするタンパク質及び細胞内半減期を上げるタンパク質は、ターゲティングのため及び/又は取込を促すために用いられてもよい。レセプターが媒介するエンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987)、Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414 (1990)に記載されている。遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコールの概要については、Anderson等, Science 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、国際公開第93/25673号及びそこに引用される文献を参照のこと。
【0092】
B細胞アンタゴニストと他の薬剤との併用
本発明の特定の実施態様では、複数の種類のB細胞アンタゴニストは他と組み合わされて、一又は複数の線維形成状態を治療するために患者に投与される。例えば、本発明は、出典明記によって、本明細書中にその全体が援用される米国特許出願公開第2005/0095243号及び本明細書中の他の箇所に記載されるBAFFアンタゴニストとCD20に対する抗体(例えばリツキシマブ)の治療的に有効な量が患者に投与されることを含む、線維形成状態の治療方法を包含する。複数のB細胞アンタゴニストが患者に投与される場合、異なるB細胞アンタゴニストは単一の医薬組成物中に合わせて投与されてもよいく、好ましくは、何れかの順番で異なる投与で続けて投与されてもよい。
【0093】
また、本発明は、第一薬剤と第二薬剤を含む組合せが必要とする患者に投与されることを含み、このときの該第一薬剤がB細胞アンタゴニストであり、該第二薬剤が、一又は複数の線維形成状態を治療するために有用であるが、必ずしもB細胞アンタゴニストではない薬剤である、線維形成状態の治療方法を包含する。例えば、本発明の特定の実施態様によると、B細胞アンタゴニストは、一又は複数のインテグリンレセプター(例えば、α1β1、αvβ6、αvβ8、αvβ5、α5β1、α4β1、α4β7など)のアンタゴニスト、例えば、一又は複数のインテグリンレセプター(例えば、α1β1、αvβ6、αvβ8、αvβ5、α5β1、α4β1、α4β7など)に特異的な抗体、ポリペプチドアンタゴニスト及び/又は小分子アンタゴニストとともに、患者に投与される。(米国特許第6652856号及び同第6692741号、及び米国特許出願公開第2004/0248837号、同第2004/0208878号、同第2002/0004482号、同第2005/0255102号、及び同第2005/0226885号)。本発明において、α4β1インテグリンレセプターに特異的に結合し、線維形成状態の治療のためにB細胞アンタゴニストと組み合わせて用いられうる抗体の例は、米国公開特許第2005/0276803号に記載のナタリズマブ(Tysabri(登録商標))である。
【0094】
本発明の態様の特定の実施態様では、B細胞アンタゴニストとともに投与される第二薬剤は、例えばステロイド、細胞障害性剤、コルヒチン、酸素、抗酸化剤(例えば、N-アセチルシステイン)、金属キレーター(例えば、テラチオモリブデート)、IFN-γ又はαアンチトリプシンである。特定の実施態様では、第二薬剤は、例えばBtkの小分子阻害剤を含むBtkの阻害剤であってもよい。特定の実施態様では、第二薬剤は、例えばTWEAKの抗体及び小分子阻害剤を含むTWEAKの阻害剤であってもよい。さらに他の実施態様では、第二薬剤は、LTBRアンタゴニスト(例えば可溶性融合タンパク質又は抗体)、米国特許第7030080号及び同第7001921号を参照、又は、TRAIL-R2のアンタゴニストを含んでもよい。
【0095】
本発明の態様の特定の実施態様によると、B細胞アンタゴニストとともに投与される第二薬剤は、例えば、TGF-β経路阻害剤であってもよい。本発明において、用いられうる例示的なTGF-β経路阻害剤は、TGF-βシグナル伝達経路の一又は複数の構成因子、例えばAng II、IL-1、IL-4、IL-10、IL-13、MIF、PDGF、RAGE、AGE、TNF-α、トロンボスポンジン-1、VLA-I、SMAD-2、SMAD-3(米国公開特許第2003/0139366号)、SMAD-4、ERK、pl5、Ink4b、p21 Waf1、p27Kip1、p-38、CTGF(米国公開特許第2004/0248206号)、PAI-1、PTHrP、エンドセリン-1、ファルネソイドX、HGF、IGF-1、MMP-1、MMP-9、PGE2、プロピルヒドロキシラーゼ、プロコラーゲン、フィブリリン、TIMP、CXCR4、CXCL12、CCR2、CCL2、CCL-7及びCCL-22を阻害又は中和する抗体、合成ないしは天然の配列ペプチド及び小分子を含むが、これに限定されるものではない。本発明において、用いられうる他の例示的なTGF-β経路阻害剤は、例えば、TGF-βリガンド及びレセプターアンタゴニスト、例えば抗体、可溶性TGF-βRII-Fc融合タンパク質、LAP-Fc融合タンパク質、TGF-βRI又はRIIキナーゼ阻害剤及びTGF-βRIIの下流の小分子阻害剤を含むが、これに限定されるものではない。
【0096】
本発明においてB細胞アンタゴニストとともに投与されうる更なる薬剤は、例えばピルフェニドン、エンドセリンアンタゴニスト、TNF-α阻害剤、PDGF阻害剤、CTGF阻害剤、CD40リガンドアンタゴニスト(米国特許第6506383号)、BCMA-Ig、P38 MAPキナーゼ阻害剤、プレドニゾン、チトキサン及びアザチオプリンを含む。
本発明において線維形成状態を治療するためにB細胞アンタゴニストと組み合わせて用いられうる特定の例示的な臨床製品は、表3に挙げるものを含む。
【0097】
表3
【0098】
キット
また、本発明は線維形成状態を治療するためのキットを包含する。本発明のキットは、少なくとも1つの容器がB細胞アンタゴニストを含む、一又は複数の容器を具備する。本明細書中の他の箇所に記載されるB細胞アンタゴニストの何れかが本発明のキットに内包されていてもよい。また、本発明のキットは、線維形成状態を治療するためにB細胞アンタゴニストと組み合わせて投与されうる一又は複数の付加的な薬剤を含んでなる一又は複数の容器を具備してもよい。このような付加的な薬剤は、本明細書の他の箇所に記載される。場合によって、キットは、線維形成状態を治療するための指示書の一又は複数を具備してもよい。指示書は、とりわけ、患者に投与される他の薬剤及び/又はB細胞アンタゴニストの量に関する情報、投与のタイミング及び頻度、考えられる投与の手段、及びB細胞アンタゴニスト及び/又は他の薬剤が投与されなければならない患者により表される特徴及び/又は症状が含まれうる。
【0099】
本明細書中に記載される方法及び施行に対するの他の適切な変更及び応用は明らかであり、本発明又はその任意の実施態様の範囲から逸脱しないものであろう。ここで、本発明を詳細に記載しているので、以下の実施例を参照することで同じことがより明確に理解されるであろう。この実施例は、例示の目的で本明細書中に包含されており、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0100】
実施例1 B細胞非存在下における肝線維症の減弱
序論
慢性肝疾患、例として、アルコール誘発性肝臓変性、C型肝炎感染、非アルコール誘発性脂肪性肝炎の特徴は、慢性炎症、細胞性障害、再生及び線維症である。これらの特徴の全ては、度重なる四塩化炭素(CCl4)誘発性の肝障害により惹起されうる。(Jungermann及びKatz, Physiol. Rev. 69: 708-764 (1989);Friedman, Semin. Liver Dis. 19: 129-140 (1999))。この実施例では、CCl4-誘発性線維形成を、野生型マウス及びB細胞欠失マウスにおいて評価した。
代替モデルにおいて、肝障害は胆汁毒素α-ナフチルイソチオシアナート(ANIT)により誘発され、胆汁肝硬変及び硬化性胆管炎と類似した症状を呈する。(Tjandra等, Hematology 31:280-290 (2000))。CCl4に類似のANITは炎症及び線維形成応答に続いて非免疫性の細胞標的肝毒性を引き起こすが、CCl4と比べてその場所は肝解剖学的に異なる場所であった。
CCl4治療の6週間後、組織化学的分析によると、同じように治療された野生型マウスと比較してB細胞欠失マウスではコラーゲン沈着が減少していた。加えて、B細胞の数は正常であるがT細胞を欠いているマウスを分析することによって、B細胞がT細胞非依存的な様式で線維形成に関与することが確認された。ANIT処置JH-/-マウスはコラーゲン沈着に関して同じような結果を示した。
【0101】
材料及び方法
マウス
特に明記しない限り、マウスは、Biogen Idec (Cambridge, MA)の特定病原体不在のマウス施設で飼育された。すべての動物の手続きは、Biogen Idecの施設内動物管理及び利用委員会の承認を得た。表4に挙げる系統の雄マウスは、研究に用いられるためには体重20g以上、少なくとも6週齢でなければならない。
表4
【0102】
CCl4及びANIT障害モデル
ミネラルオイル(Sigma-Aldrich Corp.)とCCl4(Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)の混合物は、20ゲージの動物給餌針によって0.2mlの用量を超えないで強制飼養により与えた。3.5mg/kg又は1.75mg/kg用量のCCl4を用いて実験を行った。高用量と比較して、羅病率/死亡率を減らし、なおかつ血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルとコラーゲン沈着の変化を引き起こしたので、後者の用量を選択した。長期実験のため、マウスは、6週間、週に一度強制飼養により与えた。短期実験には1回のCCl4投与が含まれた。
ANIT(1-ナフチルイソチオシアネート、Sigma- Aldrich Corp.)は、30mg/mlでミネラルオイル(Sigma- Aldrich Corp.)に溶解した。マウスに8週間、週に2回、50mg/kgを強制飼養により与えた。
CCl4投与の24時間後に血清ALTレベルを測定した。第6週目の強制飼養後1週間又は単回強制飼養後の示した日に、マウスを屠殺し、それぞれのマウスから3つの異なる肝臓葉を採取し、4%のPFAを含むPBS中で2日間インキュベートして、更なる免疫組織化学分析のために包埋した。
【0103】
肝臓リンパ球単離
CO2吸入によってマウスを安楽死させた。肝門脈は、25Gの針で挿管して、10mlの冷却されたPBSで灌流した。胆嚢の除去の後、肝臓を切片にし、50mlの氷温のRPMI/5%FBSにて70μm孔径の細胞濾過器(BD Falcon, Bedford, MA)に通した。肝臓懸濁液を、1つの肝臓当たり50mlのチューブにて300gで10分間遠心分離した。ペレットを10mlの0.02%コラゲナーゼIV(Sigma- Aldrich Corp.)を含むRPMI1640に再懸濁して、37℃に45分間放置した。30mlの氷温のRPMI/5%FBSを各チューブに加えて、30gで3分間遠心分離した。ペレットを廃棄した。上清を40℃、300gで10分間遠心分離した。細胞ペレットを6mlの氷温のRPMI1640(又は45%パーコール(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)に再懸濁し、24%メトリザミド(Sigma- Aldrich Corp.)を含むPBS(又は、それぞれ、70%パーコール含むPBS)を下層にした。その後、40℃、1000gで2分間遠心分離を行った。境界面のリンパ球を回収し、RPMI75%FBSにて洗浄して、更なる分析のために用いた。
NK-T細胞の肝特異的な増加と、血液B細胞のV-D及びD-J接合部(4.5及び3.4、結果を参照)と比較して、肝内Bリンパ球のV-D及びD-J接合部でのNヌクレオチド挿入の比率が異なる(3.5及び4.4)ことが結果から示されたので、血液リンパ球による肝内リンパ球混入の程度は低い。
【0104】
脾臓、血液及び腹腔からのリンパ球の単離
脾臓をナイロンメッシュ(Cell Strainer;BD Falcon, Bedford, MA)により細かく切り刻んで、DMEM、5%FCS及び2mM L-グルタミン中の細胞浮遊液を得た。赤血球は、溶解バッファ(140mM NH4Cl、17mM トリス-HCl、pH7.65)中で氷上で3分間インキュベートすることによって溶解した。血液は、EDTAを含有しているチューブ(BD Pharmingen, San Diego, CA)に集めた。血液リンパ球を単離するために、200μlの血液をFicoll-Paque(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)の上層に置き、室温、1000gにて20分間遠心分離した。リンパ球を境界面から回収した。腹腔(PC)を5mlのDMEM、5%FCS及び2mM L-グルタミンにて洗浄して、PC白血球を回収した。これらの手順の後、リンパ球は、40℃、300gの遠心分離によって、DMEM、5%FCS及び2mM L-グルタミンにて2回洗浄し、フローサイトメトリー分析のためにPBS/BSA/アジドに、又は、増殖試験のために細胞培養液に再懸濁した。
【0105】
フローサイトメトリ
過去に記載されているように蛍光染色を行った。(Forster及びRajewsky, Eur. J. Immunol. 17:521-528 (1987))。IgM、IgD、CD19、CD23、CD5、CD69、CD86、B220、MHCII、CD43、Mac-1、CD4、CD8 (BD Pharmingen, San Diego CA)又はCD21 (Ebioscience, San Diego, CA )に特異的なアネキシンV、7AAD及び抗体を用いた。抗体は、FITC、PE、APC、PerCP、Cy-クロム又はビオチンにコンジュゲートした。ビオチン化した抗体は、PerCPにコンジュゲートされたストレプトアビジンによって、検出した。染色した細胞を固定して、FACScalibur(BD Biosciences, San Jose, CA)を用いて分析した。
【0106】
CFSE標識B細胞のインビトロ刺激
原液を生成するために、CFSE (Molecular Probes, Eugene, OR)をDMSO 5mMに溶解し、−80℃で保存した。脾臓B細胞は、製造業者の指示に従って、LS磁気カラム(Miltenyi Biotec)上の抗B220 Ab(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)にカップリングされたMACSビーズによる濃縮によってMACSで精製した。次いで細胞をRPMI1640にて2回洗浄して、5mMの濃度のCSFEを含む暖めたRPMI1640にて5×107細胞/mlに再懸濁して37℃に10分間置いた。次いで、細胞を、氷温のRPMI1640/5%FCSにて3回洗浄して、RPMI1640/5%FCS/βME/L-グルタミンにて2×105/100μlに再懸濁して、100μl/ウェルを平底96ウェルプレートに移した。さらに100μlのRPMIを添加して、2倍の終濃度で刺激試薬を含むようにした。純粋なF(ab')2断片ヤギ抗マウスIgM(2.5μg/ml、Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)、IL-4(25U/ml、R&D Systems, Minneapolis, MN)、抗マウスCD40 Ab(0.25μg/ml、Ebioscience)、抗RP105Ab(10.5μg/ml、Ebioscience)、LPS(20μg/ml、Sigma-Aldrich Corp.)を刺激として用いた。
【0107】
免疫組織化学法
α平滑筋アクチンに特異的な抗体(クローン1A4、DakoCytomation, Carpinteria, CA)を1:50に希釈して30分間インキュベーションをした。組織切片の熱誘導されたエピトープ回復前処置は、10mMのクエン酸バッファ、pH6.0中にて125℃で30秒間行い、90℃に10秒間置き、室温にまで冷ましてさらに20分間置き、免疫染色を行った。組織成分への第一抗体の結合は、3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)基質と、MMビオチン化キット(Biocare Medical, Walnut Creek, CA)を用いて検出した。スライドは、マイヤーのヘマトキシリンにて1分間、対比染色した。
F4/80特異的抗体(クローンCLA3-1、Serotec Inc., Raleigh, NC)を20μg/mlの濃度で30分間用いた。組織切片は、プロテイナーゼK(DakoCytomation, Glostrup, Denmark)にて、室温で5分間前、処理した。第一抗体の結合は、DAB基質と、ベクターエリートABCキット(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いて検出した。スライドは、マイヤーのヘマトキシリンにて1分間、対比染色した。
【0108】
製造者の指示に従って、ApopTagインサイツアポトーシス検出キット(Chemicon International, Temecula, CA)を用いてTUNEL染色を行った。標識されたアポトーシス細胞はDAB/塩化ニッケルを基質として用いて検出した。スライドは、メチルグリーン(Vector Laboratories, Burlingame, CA)にて5分間対比染色した。
コラーゲン繊維は、シリウスレッド染色を用いて検出した(Luna, Histopathologic Methods and Color Atlas of Special Stains and Tissue Artifacts: American HistoLabs, Incorporated. 767 pp. (1992))。他の文献に記載のように(Luna, Manual of Histologic Staining Methods of the Armed Forces Institute of Pathology. New York: McGraw-Hill Book Company (1968))、H&E染色を行った。
【0109】
PCR及びIg遺伝子再構成分析
ゲノムDNA単離キット(Qiagen, Valencia, CA)の製造業者のプロトコールに従って、CD19+磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,)上に陽性選択された細胞からDNAを抽出した。DNA(2μl、およそ103個のB細胞の相当物)を、VDJ結合部の増幅のために用いた。J558L、Q52及び7183のVHファミリーに特異的なVHA、VHB及びVHEの5'プライマーと、1回目の増幅にはJH4Eの3'プライマー(16)を、2回目の増幅にはJH1又はJH4Aの3'プライマーを用いて、2回の増幅を行った。AUプライマーはBiogen Ideeで合成されたものである。1回目では20サイクル行った(95℃で1分、60℃で1分及び72℃で1.5分)、2回目では30サイクル行った(95℃で1分、63℃で1分及び72℃で1.5分)。2μlの1回目の反応生成物を鋳型として用いた。予想される0.4kbの断片をゲルから精製して、pCR4-TOPOベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)にサブクローニングした。個々のコロニーからDNAを調製して、標準的なベクター特異的プライマーを用いて配列決定した。
【0110】
間質性コラーゲン定量化
各々の動物の肝臓からの合計3つの切片(各々異なる葉から)を染色した。シリウスレッド染色の白黒の画像は、5×拡大、偏光下で作製した。画像は、肝臓組織がカメラで捕らえた全領域をカバーするように作製し、各々の画像(1動物につき4〜10の画像)においてすべての画像領域が一致することを確認した。恒常的にコラーゲンを含有している脈管は、各々の画像から電子的に取り除いた。次に、白い染色(間質性コラーゲン)の量は、MetaMorph画像分析ソフトウェア(Universal Imaging Corporation, Downingtown, PA)によって、定量化した。定量化は、任意の単位で表した(1は1000ピクセルに相関)。シリウスレッド染色の強度によって異なるので、白い領域の絶対的な量は各々の実験間で直接比較することはできない。
【0111】
結果
B細胞は肝臓において主要なリンパ球集団である
B細胞は、発生中の胚の主な造血部位である胚性肝臓において広く研究されている。しかしながら、成体肝臓の肝性B細胞についてはほとんど知られていない。この実施例において、肝内(IH)B細胞を表現型的及び機能的に特徴付けた。
PBS灌流肝臓からリンパ球集団を濃縮した後、B系統特異的なマーカーであるCD19を染色することによってIHB細胞の割合を定量した。BALB/c及びC57BL/6マウスでは、B細胞はIHリンパ球のおよそ50%に相当した(範囲30〜60%、図1A及びデータは未掲載)。肝臓から単離されたB細胞の絶対数は2×106以下であった。CD19+IHB細胞は、その脾臓相対物と同じレベルでIgM、IgD、B220、MHCII及びCD62Lを発現することが示された(図1A及びB、データは未掲載)。IHB細胞は、B-1又は未成熟B細胞の代表的なマーカーであるCD43及びMac-1を発現しなかった(データは未掲載)。IHB細胞は、血液B細胞で検出されるよりも高いが、PC B細胞で観察されるよりも低いレベルでCD5を発現する(図1B)。CD5レベルが高いほど通常のB細胞活性化を表す。(Cong等, Int. Immunol. 3:467- 476 (1991))。IHB細胞は、CD23を発現するが、脾臓又は血液B細胞より低いレベルである。また、CD21表面発現は、脾臓B細胞よりIHBでわずかに低いが、血液B細胞よりも高い(図1B)。まとめると、これらのマーカーの発現に関して、肝臓B細胞は濾胞性脾臓B細胞と最も類似していた。
【0112】
肝B細胞は機能的に十分である
肝臓は死につつあるリンパ球の送り先として認識されているので(Crispe等, Immunol. Rev. 174: 47-62 (2000))、細胞がアポトーシスを経る際に細胞膜の内側から外側へ転移するリン脂質ホスファチジルセリン(PS)へ結合するアネキシンVを用いて、IHB細胞がアポトーシス前にあるかどうかが決定される。アネキシンVは、15%以下の脾臓B細胞に対して30%以下の肝B細胞に結合した(図1C、データは未掲載)。ゆえに、ほとんどの肝臓B細胞はアポトーシスの素因を示さず、脾臓に比べて肝臓にアポトーシス細胞の数が多いことはリンパ球単離の違いに関連があるかもしれない。
分裂促進及びB細胞レセプター架橋に応答するBリンパ球の増殖力は、B細胞サブセットごとに実質的に異なる重要な機能的特徴である。(Morris及びRothstein, J. Exp. Med. 177: 857-861 (1993);Philips等, Immunol. Cell. Biol. 76:332-342 (1998);Erickson等, 2001. J. Immunol. 166:1531-1539 (2001))。肝臓及び脾臓のB細胞を、様々な刺激に応答したときの、CD86(B7.2)及びMHCIIなどの共刺激分子の上方制御及び増殖の程度について比較した。興味深いことに、IHB細胞の増殖応答は、脾臓Bリンパ球のものと非常に類似していた(図1D)。Toll様レセプター4、RP105及びCD40刺激に対する応答は同じであるのに対して、IgM架橋への応答はIL-4の非存在下では大きく、IL-4の存在下では小さかった。IgM架橋に対してのみ増殖応答がより大きいことは、外来性生存因子様IL-4を含まない培養物中でIHB細胞がより良好に生存することを示し得、CD5上方制御により示されるIHB細胞の活性化状態と一致している(図1B)。試験されるすべての刺激によるMHCII、CD86及びCD5の上方制御の程度は、肝臓及び脾臓のB細胞に関して非常に類似していた(図1B及びD、データは未掲載)。
【0113】
IHB細胞は脾臓B2細胞と類似しており、胚性肝臓起源のものではない
成体肝臓のB細胞は胚性肝臓の残渣肝臓B細胞世代を表しうる。あるいは、成体中の脾臓B細胞のように、IHB細胞は骨髄(BM)由来であるかもしれない。肝内B細胞の起源を調べるために、そのVDJ再編成を遺伝的に分析した。胚性肝臓において、生成される新生児のB細胞のVDJ接合部では鋳型でない(N、P)ヌクレオチドはほとんどみられない。これは、B1細胞について報告されたことと類似している。(Feeney, J. Exp. Med. 172: 1377-1390 (1990);Gu等, EMBO J. 9:2133-2140 (1990);Meek, Science 250:820-823 (1990))。それに対して、成体脾臓及び血液B細胞は、多くの鋳型でないヌクレオチドが付加している。(Kantor等, J. Immunol. 158:1175-1186 (1997);Kepler等, J. Immunol. 157: 4451-4457 (1996))。プールされた成体肝臓リンパ球から得られるCDR3配列を、2日齢のマウスの脾細胞又は成体マウスの血液B細胞から得られるものと比較した。成体IHB細胞は、新生児B細胞と顕著に異なり、そのVDJ接合部配列が脾臓B2細胞又は再循環血液B細胞に似ている。新生児B細胞におけるN,Pヌクレオチドの平均数は、VD接合部では0.5であり、DJ接合部では0.1である。これは、成体肝臓(又は血液)中のB細胞のVD接合部の3.5(又は4.5)及びDJ接合部の4.4(又は3.4)と顕著に異なる。興味深いことに、成体肝臓及び血液のB細胞も、そのVD及びDJ接合部の長さが異なるようである。この相違は、統計学的に有意な、p=0.1、スチューデントt検定の境界にある。IHB細胞はそのDJ接合部よりもVD接合部のN,Pヌクレオチドが少なく、従来の成体B2細胞について報告されたことに反する。(Kantor等, J. Immunol 158:1175-1186 (1997))。IHB及び成体血液B細胞のN5P挿入の長さの相違は、肝内B細胞選別の結果であるかもしれない。さらに、この違いにより、肝臓B細胞が末梢血液B細胞と有意に混合しないで真性の肝内集団を表すという概念が強化される。
【0114】
肝線維形成におけるB細胞の役割
B細胞が肝臓において、果たしうる生理学的役割を調べるために、肝疾患を誘発し、疾患の進行をB細胞欠失マウスと野生型動物とで比較した。CCl4投与のたびに生じる顕著な壊死炎症性肝障害の後に慢性の修復応答が生じる、CCl4誘発性肝障害モデルを用いた。免疫系の特定の部分を先天的にターゲティングするよりも、毒性侵襲により一般的な肝毒性が誘発されるので、このモデルは、多くの広く利用される肝障害モデル(例えば住血吸虫、LPS、ConA)より有利であると考えた。さらに、興味深いことに、肝臓のB細胞はCCl4投与に特に感受性があることが明らかとなった。他の肝内リンパ球(NK-T、T細胞)はこの時点では変化がなかったのに対して、IHB細胞数はCCl4処置の1日後におよそ10分の1に下がった(データは未掲載)。CCl4注射の5日後までに、B細胞数は回復した(データは未掲載)。
B細胞が肝障害及び修復において、役割があるかどうかを試験するために、CCl4誘発性肝毒性試験にB細胞欠失マウスを用いた。分析に選んだB細胞欠失マウス系統は免疫グロブリン重鎖遺伝子のJH領域に目的の欠失がある。この遺伝子はコード化重鎖遺伝子の集合(アセンブリ)を除去して、B細胞及び抗体産生を阻害する。(Chen等, Int. Immunol. 5:647-656 (1993))。これらのB細胞欠失マウスは、本明細書においてJH-/-マウスと称する。
【0115】
CCl4処置の24時間後に血清に放出される肝細胞特異的な酵素であるALTにより評価される、CCl4誘発性肝細胞障害の程度は、JH-/-及びWT BALB/cマウスにおいて、同程度であった(図2A)。また、組織学的分析からも明らかであった(図3及び下記を参照)。しかしながら、興味深いことに、コラーゲン繊維の蓄積量に大きな差があった。第6週目の1.75又は3.5mg/kgのCCl4投与の1週間後には、JH-/-マウスの間質性コラーゲン沈着が、野生型マウスのおよそ6〜8分の1であった(図2B及び2C)。6回のCCl4治療後には、F4/80+マクロファージの数又は位置と筋線維芽細胞を産生する平滑筋アクチンに有意な変化は観察されなかった(データは未掲載)。ゆえに、B細胞は、CCl4への応答の際に肝臓が線維形成変化を発達させるために必要となる重複性のない細胞群を構成するようである。
【0116】
B細胞機能がCCl4誘発性の障害の特異的な場合に限定されるのか、又は肝臓の組織修復において、より一般的な役割を果たすのかを試験するために、CCl4により誘発された場合と異なるメカニズムによって肝臓を破壊する1-ナフチルイソチオシアナート(ANIT)によって、肝毒性を誘発した。ANITにより誘発される肝毒性は、胆管上皮細胞及び肝実質細胞の好中球依存性壊死として現れる。(Hill等, Toxicol. Sci. 47:118-125 (1999))。8週のANIT処置の後、JH-/-はWTマウスのおよそ7分の1のコラーゲン沈着であったことが明らかとなった。ゆえに、線維形成は、少なくとも2つのモデル系においてB細胞の非存在下で減少した。
標準を超えるB細胞数の増加により、より顕著な線維形成が生じるかどうかを試験するために、B細胞数の20〜30%の増加を示すBAFF-tgマウス(Mackay等, J. Exp. Med. 190: 1697-1710(1999))を対応するC57B1/6 WTコントロールマウスと比較した。6回のCCl4処置の後、BAFF-tg及びC57B1/6コントロールにおいて線維形成が発達した。この線維形成は、BALB/cマウスに顕著に見られるより少ないコラーゲン繊維沈着によって特徴付けられた(データは未掲載、Shi等, Proc. Natl. Acad. Sci USA 94:10663-10668 (1997))。しかしながら、興味深いことに、BAFFトランスジェニックマウスは、コラーゲン沈着の量がそのWT C57B1/6相対物のおよそ2倍であった(図2D)。
【0117】
B細胞欠失マウス及びWTマウスは単回のCCl4誘発性障害に対して異なる応答をした
6週の処置の後、どんな急性の効果がコラーゲン沈着の変化を誘発するかについて理解するために、単回CCl4抗原投与の1日、3日及び5日後のB細胞欠失マウス及びコントロールマウスの肝臓切片において、組織変化の動態を分析した。興味深いことに、アポトーシス細胞を検出するTUNEL染色では、1日目には初めの障害が同等であったにもかかわらず、WTマウスでは障害の5日後でさえも死んでゆく細胞がいくらか検出される一方で、JR-/-マウスは3日目までに完全にアポトーシス細胞がないことが示された(図3)。組織マクロファージ特異的なマーカーF4/80について切片を染色した場合、1日目という早い時期に、WTマウスと比較してJH-/-のマクロファージ数はわずかに増加しており、3日目及び5日目までにかなりの量になった(図3)ことが明らかとなった。ゆえに、B細胞の非存在下では、むしろマクロファージが死にゆく肝細胞を除去しうるようである。コラーゲン繊維の主要な細胞性供与源が筋線維芽細胞の集団であるので(Rockey等, Clin. Liver. Dis. 4: 319- 355 (2000))、障害した肝臓の筋線維芽細胞を示す平滑筋アクチンもモニターした。3日目に初めて、筋線維芽細胞は、B細胞欠失マウス及びコントロールマウスにおいて同じレベルで検出される。しかしながら、5日目までに、WTマウスは、より多くの筋線維芽細胞を示す(図3)。繰り返す障害について、マクロファージが効率的に死にゆく肝細胞を取り除くことができないために、筋線維芽細胞の過剰刺激が引き起こされ、その結果、長期間の障害の際に見られるコラーゲンの沈着がより大きくなるかもしれない。近年の研究では(Duffield等, J. Clin. Invest. 115:56-65 (2005))、マクロファージは、肝障害及び修復の間に、異なった、相反する役割を果たすことが示された。B細胞の非存在下では、炎症性瘢痕化から回復するために関与するマクロファージが優先して活性化されるようである。
【0118】
CD4+、CD8+又はγδT細胞は有意には肝線維形成に影響しない
また、T細胞を欠失しているマウスが線維形成を欠失しているかどうかを判断するために、B及びT細胞をともに欠失しているマウス(RAG2-/-)、CD4+T細胞を欠失しているマウス(Aβ-/-)、CD8+T細胞を欠失しているマウス(β2m-/-)、又はγδT細胞を欠失しているマウス(TCRδ-/-)を用いて一連のCCl4誘発性肝障害実験を行った。すべてのマウス突然変異株について、同じ遺伝的背景のコントロール株を用いた(材料及び方法を参照)。これらの中で、RAG2-/-マウスのみは、好適なWT相対物と比較して、CCl4による長期処置後にコラーゲン沈着の量が異なった(図4及びデータは未掲載)。そのレセプターを集合化(アセンブリ)するためにDNA再編成を必要とするすべてのリンパ球を欠失しているRAG2-/-マウスは、WTマウスと比較して間質性コラーゲン蓄積がおよそ3〜4分の1に減少する(図4B)。この結果は、B細胞だけを欠失しているマウスにおいて得られた結果と非常に類似しており、肝臓線維形成のCCl4モデルにおいてT細胞の顕著な役割を示唆するものではない。
【0119】
肝臓線維形成でのB細胞の役割は抗体依存性である
B細胞は、抗原提示、サイトカイン放出、及び/又は共刺激分子により調節される細胞-細胞接触、及び抗体による長期間作用などの局所作用を媒介しうる。T細胞欠失動物(上記参照)はコラーゲン沈着に全く違いがないので、T細胞に対するB細胞抗原提示は肝臓線維形成に影響しそうにない。
肝臓線維形成のB細胞調節に免疫グロブリンが必要であるかどうかを決定するために、正常数のB細胞を有するが、血清のIgを欠いているかIgレベルが非常に低い2つのマウス系統を用いた。IgH遺伝子座のJエレメントの位置に組み込まれる遺伝子(DHLMP2a対立遺伝子(Casola等, Nat. Immunol. 5:317-327 (2004))からエプスタインバーウイルス誘導タンパク質LMP2aを発現するマウスは表面免疫グロブリン及び循環免疫グロブリンを欠失しているのに対して、JH-/-バックグラウンドにmIgM導入遺伝子を発現するマウスは表面免疫グロブリンをコードするが、分泌型免疫グロブリンはコードしない。(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639- 1648 (1999))。
【0120】
図5Aに示すように、1.75mg/kgのCCl4の6週間の処置後に、エプスタインバーウイルス誘導LMP2aタンパク質を発現するマウス及びそのWT BALB/cAnNCrlBrコントロールにおいて、同レベルのコラーゲン沈着がみられた。さらに、表面Igを発現するが分泌型Igを発現しないmIgM tg(JH-/-)マウス(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639-1648 (1999))は、CCl4誘発肝臓線維形成の程度がWTコントロールBALB/cマウスと同じであった(図5B)。ゆえに、CCl4誘発肝臓線維形成の病理に対するB細胞効果は抗体非依存性である。これらの実験におけるWT BALB/cマウスの線維形成の程度が、潜在的にこれらの動物の異なる収容条件及び/又は同時感染のため、以前のもの(図2、4、5)より低いことは注目に値する:LMP2a及びmIgMマウスのコロニーはいずれもヘリコバクター・ヘパティカスについて陽性であった。したがって、これらのマウス並びに対応するWT系統は隔離施設で飼育した。
【0121】
考察
この実施例において、肝内B細胞が従来のB2細胞と似た表現型及び機能的特徴を有する大きい集団を表すことが示された。IHB細胞は従来のB2細胞よりいくらか高いレベルでCD5を発現し、インビトロでIL-4を添加することなくIgM架橋に応答してより良好に増殖する(図1)。このことからIHB細胞の活性化状態が示唆される。成体肝臓が多系列白血球を引き起こしうるc-kit+造血多能性幹細胞を含有することが知られているにもかかわらず(Watanabe等, J. Exp. Med. 184: 687-693 (1996);Taniguchi等, Nat. Med. 2: 198-203 (1996))、自己増殖性胚性肝臓由来のB1系統細胞とは対照的に、成体肝臓のほとんどのB細胞はBM由来であるようである。(Herzenberg, Immunol. Rev. 175: 9-22 (2000))。IHB細胞はおそらくBM起源のものである。肝内B細胞のVDJ接合部は、広範囲なNヌクレオチド挿入を含有して、従来のB2細胞と同程度の総平均長となっている。特に、Nヌクレオチド挿入を担う酵素である末端デオキシリボヌクレオチド転移酵素(TdT)の発現は成人肝臓において、研究されていなかった(Benedict等, Immunol. Rev. 175: 150-157 (2000))ので、成人肝臓B細胞がTdT-依存性の様式で肝臓において生成されるという可能性は、理論上考えられるが実際は低い。
【0122】
この実施例では、局所のB細胞機能におそらく依存している他の疾患モデルに加え、B細胞が、肝臓線維形成の発達において重要な抗体依存性の役割を果たすことが示される。また、B細胞の必須の役割は、非肥満性糖尿病(NOD)マウスの自己免疫性糖尿病について示されている。B細胞欠失NOD.Igμヌルマウス及びB細胞減少NODマウスは膵島炎又はインシュリン依存性真正糖尿病を発達させなかった。このことからB細胞が自己応答性T細胞の惹起及び/又は活性化に重要であるという考えが示唆される。(Serreze等, J. Exp. Med. 184: 2049-2053 (1996);Noorchashm等, Diabetes 46:941-946 (1997))。また、B細胞は、全身性自己免疫状態の多遺伝子性、fas-インタクト及びfas-欠失性のMRLモデルのループス腎炎に必要であることが示された。(Chan等, J. Exp. Med. 189:1639-1648 (1999);Chan等, J. Immunol. 160:51-59 (1998);Chan等, J. Immunol. 163:3592-3596 (1999))。両方の場合において、抗体非依存性のメカニズムはB細胞関与に重要であることが明らかとなった。(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639-1648 (1999);Wong等, Diabetes 53:2581-2587 (2004))。
この実施例では、B細胞を本質的に欠失しているマウスを用いて、線維形成病理学的にB細胞関与を調べた。全体の生理機能が正常であるにもかかわらず、B細胞欠失マウスは、濾胞性樹状ネットワーク(Fu等, J. Exp. Med. 187: 1009- 1018 (1998);Gonzalez等, J. Exp. Med. 187: 997-1007 (1998);Endres等, J. Exp. Med. 189: 159-168 (1999))、腸パイエル板の濾胞性関連上皮(Golovkina等, Science 286:1965-1968 (1999))及びNK-T細胞の非標準サブセットを欠いている。(Treiner等, Nature 422:164-169 (2003))。また、B細胞のないマウスは、CD4+T細胞機能を欠いており(Baumgarth等, Proc. Natl Acad. Sci. USA 97:4766-4771 (2000))、おそらくいくつかの他のまだ記されていない発生上/機能的な欠損を有するであろう。ゆえに、B細胞欠失マウスにより得られた結果から、B細胞が間接的に肝臓線維形成の病因に作用することが示される。
【0123】
T細胞欠失マウスが肝臓線維形成の発達において全く相違を示さないので(データは未掲載)、CD4+T細胞欠失はJH-/-マウスで観察される非常に低減した肝臓線維形成を説明するものではないようである。しかしながら、マウスの肝臓に存在する(Shimamura等, FEBS Lett. 516:97-100 (2002))、変化しないTCRを含有するVα19を発現するB細胞依存性NK-T細胞サブセット(Treiner等, Nature 422:164- 169 (2003))は、B細胞欠失マウスにみられる低減した線維形成に関与するかもしれない。NK-T細胞は、急速な様式で応答し、TH1及びTH2の両方のタイプのサイトカインを産生する能力について知られている。(Godfrey等, J. Clin. Invest. 114:1379-1388 (2004))。このような特性によって、NK-T細胞は免疫応答調節機能に関与できる。(Godfrey等, J. Clin. Invest. 114:1379-1388 (2004))。従来のVα14 TCR NK-T細胞を欠失しているCD1-/-マウスの肝臓線維形成発達に違いがないことが明らかとなった(データは未掲載)。残念なことに、肝臓線維形成における標準的でないVα19不変NK-T細胞の役割を調べるために利用可能なマウス変異体がない。それにもかかわらず、RAG-/-動物は、B細胞欠失マウスと同じ程度に線維形成を阻害するので、発達のために遺伝子再編成を必要とする細胞型(様々な系統のB及びT細胞)の役割を示唆する。ゆえに、総して、データから、発達のためにB細胞を必要とする非CD1限局性NK-T細胞(Treiner等, Nature 422:164-169 (2003))とB細胞自主的機能のいずれかがCCl4誘発肝毒性モデルに特徴的な線維形成に役割があることが示唆される。
【0124】
免疫グロブリン産生に欠陥のある2つの既に作製されたマウス系統(LMP2a挿入マウス及びmIgM-Tgマウス)を用いて、抗体がCCl4誘発肝臓線維形成を発達させるために必要でないことが示された。LMP2aマウスは、正常なB細胞数を有し、分泌抗体と免疫グロブリンの表面発現の両方を欠失している。(Casola等, Nat. Immunol. 5:317-327 (2004))。LMP2AはBCRシグナル伝達を模倣するだけでなく、更なるシグナル伝達経路を誘発する(Ikeda等, J. Virol. 77:5529-5534 (2003);Portis及びLongnecker, J. Virol. 77:105-114 (2003))。したがって、導入遺伝子性表面BCRを発現し、正常なマウスと比較して300〜500分の1に低減した抗体力価を有する(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639- 1648 (1999))、mIgM-Tg(JH-/-)マウスにおける線維形成を評価した。両マウス系統は、コントロールと同程度に肝臓線維形成を発達させた。ゆえに、肝臓線維形成病理学でのB細胞の役割は抗体非依存性であるようである。これは、生物体の他の箇所に位置するB細胞により媒介される長期間となりうる作用に反して、局所のB細胞の機能(例えばサイトカイン分泌及び/又は細胞-細胞接触)により媒介されることを示唆する。従来のT細胞に欠陥のあるマウスがそのWT相対物に類似した線維形成を示すので、B細胞に対する抗原提示の役割は肝臓線維形成において、有意な役割を果たすようではない。さらに、LMP2a B細胞は、その表面上にB細胞レセプターを欠失しており、WTマウスに類似のコラーゲン沈着を示すので、抗原結合、抗原内部移行及び抗原提示の能力を持たない。総して、これらのデータから、肝臓組織修復が、本明細書において定めるIHB細胞によって部分的に媒介されうる局所のB細胞機能により作用されることが示唆される。形式的に、B細胞は肝臓のクリアランスメカニズム(一又は複数)を破壊する可能性がある。しかしながら、B細胞数は肝細胞数と比較して非常に少ない。
【0125】
この実施例で示された結果は、CCl4に応答する肝障害の程度が、偽手術ラットと比較した場合の脾臓摘出したラット(Chen等, Chin. Med. J. (Engl) 111: 779-783 (1998))、及び適切なコントロールと比較した場合のBALB/cバックグラウンドのSCIDマウスにおいて、有意により軽度であったという報告と一致する。(Shi等, Proc. Natl. Acad. ScL USA 94:10663-10668 (1997))。しかしながら、マンソン住血吸虫寄生虫により誘発される肝臓線維形成は、コントロールマウスと比較してB細胞欠失マウスにおいて、増加する。(Ferru等, Scand. J. Immunol. 45:233-240 (1998))。反復する肝細胞障害(CCl4及びANITの場合のように)又は、低レベルの虫感染による線維形成誘発メカニズムの相違によりこの矛盾を説明できる。
また、B細胞機能は、マウス及びヒトの皮膚の線維形成と関係していた。タイト-スキン(TSK/+)マウス並びに全身性硬化症個体において、増大したCD19発現から生じる慢性のB細胞活性化により皮膚線維形成と自己免疫性が引き起こされる。(Saito等, J. Clin. Invest. 109: 1453-1462 (2002))。さらに、強皮症患者の肺組織から樹立されたB細胞株は、線維形成変化に至るかもしれない増大した増殖と炎症応答を示す。(Kondo等, Cytokine 13:220-226 (2001))。
つまり、この実施例は、成人肝臓B細胞群の単離及び特徴づけを記述して、直接、肝障害後の組織修復におけるB細胞の役割を示す。さらに、この実施例は、B細胞が線維形成状態の病理に関与することを示す。ゆえに、ここで示される結果は、B細胞アンタゴニストが線維形成状態を治療する際に有効であることを証明しうるものである。
【0126】
実施例2 B細胞欠失マウスモデルにおける肺線維症
序論
肺線維症は、ブレオマイシンへの曝露によって動物モデルにおいて誘発できる。齧歯動物へのブレオマイシンの気管内投与は、最も広く用いられる肺線維形成のモデルである。ブレオマイシンは、ある程度、フリーラジカルの生成及び炎症性サイトカインの誘発によって、内皮及び上皮の障害を引き起こす細胞障害性剤である。(Sleijfer, Chest 120:617-624 (2001))。線維芽細胞は活性化され、2週間までに肺に有意な線維形成及びコラーゲン沈着が生じる。この実施例において、B細胞欠失マウスは、ブレオマイシンへの持続性全身曝露の後に、同じように処置された野生型マウスと比較して生存率の向上と肺線維形成の減少を示した。
【0127】
材料及び方法
マウス
C57BL/6J:正常なB細胞機能をもつ野生型マウス、
B6.129S2-lgh-6tm1Cgn/J:B細胞欠失マウス。
持続性ブレオマイシン曝露
0日目、生理食塩水(n=7、wt、n=5、ko)又は60mg/kgの用量レベルのブレオマイシン溶液(n=12、wt、n=10、ko)ないしは100mg/kgの用量レベルのブレオマイシン溶液(n=8、wt、n=10、ko) (7日間かけて総用量を供給)を含有する皮下投与用7日用Alzet(登録商標)浸透圧ミニポンプを野生型マウス又はB細胞欠失マウスに無菌的に移植した。
測定値
体重及び臨床徴候を1か月間、モニターした。28日目にマウスを安楽死させ、肺を取り出し、10%の中性緩衝ホルマリンを滴下して固定した。既存のコラーゲン/線維形成を識別するためにマッソントリクロームによって肺を染色して、αアクチンについて免疫組織化学を行い、今後の線維形成の可能性の程度を同定した。コラーゲン又はアクチンにより占有される組織領域の割合を、Metamorph(登録商標)ソフトウェアを使用して組織形態計測して決定した。
【0128】
結果
60mg/kg/7日のブレオマイシンの投与により、28日目までにわずかばかりのα-アクチン蓄積が生じた。野生型及びB細胞ノックアウトマウスは同程度のα-アクチンレベルを示した。(図6)。
100mg/kg/7日のブレオマイシンの投与により、28日目までに中程度から広範囲なα-アクチン蓄積にが生じた。野生型動物は生存率の低下を示し、B細胞ノックアウトマウスより統計学的に高いα-アクチンレベルであった。(図6、7及び8)。
これらの実験結果から、C57BL6マウスにおいてBリンパ球の欠如により肺線維形成の範囲が低減し、持続性のブレオマイシン曝露の後に生存率が向上することが示された。したがって、さらにこれらの結果から、線維形成状態、特に、肺系の線維形成状態を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用が示唆される。
【0129】
実施例3 B細胞欠失マウスモデルにおける腎臓線維形成
序論
片側性尿管閉塞(UUO)は、進行性組織圧迫、管状変性及び間質性及び糸球体性の線維形成を産生する閉塞性腎症のモデルである。(Miyajima等, Kidney International 55:2301-2313 (2000))。この実施例において、B細胞欠失マウスは野生型マウスと比較して、UUOに応答した腎臓線維形成が少なかった。
【0130】
材料及び方法
マウス
C57BL/6J:正常なB細胞機能をもつ野生型マウス、
B6.129S2-lgh-6tm1Cgn/J:B細胞欠失マウス。
片側性尿管閉塞
0日目に、ケタミン/キシラジン麻酔下にて無菌的に、野生型マウス(n=10)又はB細胞欠失マウス(n=10)の結紮間で左尿管を単離し、結紮して、切片化した。また、手術していない野生型マウス(n=5)又はB細胞欠失マウス(n=5)を正常なコントロールとした。
測定値
体重及び臨床徴候は、疾患が最大となるまでの10日間の進行の間、モニターした。10日目にマウスを安楽死させて、両腎臓を取り出し、10%の中性緩衝ホルマリンに固定した。既存のコラーゲン/線維形成を識別するためにマッソントリクロームによって、腎臓を染色して、αアクチンについて免疫組織化学を行い、今後の線維形成の可能性の程度を同定した。コラーゲン又はアクチンにより占有される組織領域の割合を、Metamorph(登録商標)ソフトウェアを使用して組織形態計測して決定した。
【0131】
結果
UUOの後、野生型相対物と比較して、B細胞欠失マウスはαアクチン染色が統計学的に有意に29%減少しており(図9A)、間質性コラーゲンの蓄積は統計学的に有意に62%減少していた(図9B)。これらの病的状態が、線維形成状態の定量化及び測定のための2つの典型的なマーカーとなることは理解されるであろう。
また、UUOの後、B細胞欠失マウスは、尿細管拡張が有意に減少しており(図9C)、正常な尿細管染色が有意に増加していた(図9D)。増加した正常な尿細管染色は、障害がない場合でもB細胞欠失マウスに観察された(図9D、また図10も参照)。
これらの実験結果から、Bリンパ球の欠如によりUUO誘発性の障害後の腎臓線維形成の範囲が減少することが示された。
複数のモデル系の実験的に誘発された線維形成障害の程度は、B細胞を欠失するマウスにおいて実質的に減少するという所見(実施例1〜3を参照)は、炎症性/線維形成病理が関与する様々な疾患徴候を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用を強く支持するものである。
【0132】
実施例4 抗CD20モノクローナル抗体はブレオマイシン処置によって生じる肺及び脾臓のB細胞の増加を抑える
序論
実施例2に示すように、肺線維形成はブレオマイシンへの曝露によって、動物モデルにおいて誘発され、そのブレオマイシン誘発性肺線維形成の程度はB細胞欠失マウスでは小さい。この実施例では、ブレオマイシンで処置したマウスは、その肺においてB細胞の増加を表し、重要なことに、B細胞のこのブレオマイシン誘発性の増加は抗CD20抗体により治療されるマウスにおいて有意に少ないことが示された。これらの結果から、線維形成状態を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用がさらに支持された。
【0133】
材料及び方法
この実施例では、9週齢のC57B1/6雄マウスを実験に用いた。0日目に、マウスをケタミン/キシラジンの腹腔内投与によって、麻酔し、PennCenntury噴霧器を用いて50μl容量ITのブレオマイシン0.025単位を投与した。PennCenntury噴霧器は、口から気管内に挿入する。−7日目(ブレオマイシン投与の7日前)と7日目に、抗マウスCD-20モノクローナル抗体(Biogen Idec、米国特許第60/741491号で開発され「18B12」と称される)及びPBSのいずれかをマウスに腹腔内投与した。異なるグループのマウスにPBSのみを与え(intrachacheally)、他のマウスは処置を行わなかった。
9日目に、CO2にて動物を安楽死させ、肺及び脾臓を回収した。肺及び脾臓ははさみで断片化し、次いでホモジナイズして、50mlの遠心管へ移した。40mlの氷温のRPMI1640/5%FBSをチューブに添加し、4℃、300×g(標準的なローターによるIEC Centra 8Rで1200回転数/分)で10分間遠心分離し、細胞片を沈降して減らした。ペレットは、10mlの消化培養液に再懸濁して、37℃で40〜60分間置いた。
【0134】
リンパ球濃縮細胞群を単離するために、30mlの氷温の無血清RPMI1640を各チューブに添加して終容量40mlとした。チューブは、4℃、300×g(IEC Centra 8Rで1200回転数/分)で10分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを氷温の45%パーコールを含む無血清RPMI1640に6mlの終容量で再懸濁し、70%パーコールを含むPBSにより傾斜をつけて勾配を得た。
境界面を回収して、10容量の氷温の無血清RPMI1640を添加して、チューブを4℃で400×g(IEC Centra 8Rで1500回転数/分)で10分間遠心分離した。CD5及びCD19を発現する細胞をFACSを用いて分析した。(図11、12及び13)。
【0135】
結果
図11及び13に示すように、ブレオマイシンで処置したマウスは肺のB細胞(CD19+)の増加を表し、この増加はブレオマイシンに加えて抗CD20抗体を投与したマウスにおいて有意に減少していた。図12に示すように、抗CD20抗体による処置においても効果的に脾臓のB細胞が減少した。上記の実施例2にて強調したように、肺性線維形成は、ブレオマイシンへの曝露によって、動物モデルにおいて誘発できる。したがって、これらの結果から、B細胞アンタゴニスト、例えば抗CD20抗体が線維形成状態の治療に有効であるという結論が支持される。
【0136】
実施例5 抗CD20モノクローナル抗体はCCl4誘発性肝臓線維形成に対する保護薬である
序論
実施例1に示すように、肝臓線維形成はCCl4への曝露によって、動物モデルにおいて誘発され、そのCCl4誘発性肝臓線維形成の程度はB細胞欠失マウスでは小さい。この実施例では、CCl4誘発性肝臓線維形成は、抗CD20抗体で処置されるマウスにおいて有意に少ないことが示された。これらの結果は、線維形成状態を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用をさらに証明するものである。
【0137】
材料及び方法
抗マウスCD20 B細胞減少抗体(Biogen Idec、米国特許第60/741491号で開発され「18B12」と称される)を、化学四塩化炭素(CCl4)を投与することにより誘発された肝臓線維形成のマウスモデルにおいて試験した。ミネラルオイルにて調製した1.75ml/kg用量のCCl4を6週間、週に1度マウスに投与し、同時にPBS単独、250μgの抗CD20モノクローナル抗体、又は250μgのアイソタイプコントロールモノクローナル抗体にて処置した(腹腔内投与)。CCl4の初回投与の1週間前と、続くCCl4の各投与の1日前に、マウスにPBS及び抗体を注射した。6回目のCCl4投与の7日後にマウスを屠殺し、肝臓を取り出し、線維形成のマーカーである平滑筋アクチンの発現について免疫染色した。
【0138】
結果
図14に示すように、抗CD20抗体にて処置した動物の肝臓線維形成の程度(平滑筋アクチン染色により示されるもの)は、PBSを投与したコントロールマウスよりおよそ20%少なく、コントロールモノクローナル抗体を投与した動物よりもおよそ28%少なかった。また、この実施例は、特に肝臓の線維形成状態の発生又は進行を治療するか、遅延させるか又は予防する際への本発明の方法の適応を示す。
【0139】
実施例6 線維形成状態の治療方法
線維形成状態の一又は複数の症状と診断された患者をこの実施例に従って治療する。本明細書において治療される線維形成状態の例には、例えば障害/線維形成と関連する肺疾患、障害/線維形成と関連する慢性腎症(腎臓線維形成)、腸線維形成、肝臓線維形成(例えば肝硬変を含む)、頭頸部線維形成、角膜瘢痕化、血管性疾患、及び線維形成と関係する自己免疫性疾患、例えば強皮症、狼瘡及び移植片対宿主病が含まれる。
患者は、リツキシマブないしはヒト化2H7、又はリツキシマブないしはヒト化2H7の断片(例えば、Fab、F(ab').sub.2、Fv、scFv又はダイアボディ)により治療する。
好ましくは、抗体は、以下のいずれかの投薬計画に従って患者に静脈内投与(IV)される:
(A) 1日目に50mg/m2、8、15及び22日目に150mg/m2、
(B) 1日目に150mg/m2、8、15及び22日目に375mg/m2、又は
(C) 1、8、15及び22日目に375mg/m2。
CD20抗体にて治療される患者は、線維形成状態の症状の改善を表すであろう。
代替的な投薬計画においては、患者は、上記のスケジュールAに記載のようにリツキシマブと、出典明記によって、本明細書中にその全体が援用される米国特許第6316601号に記載のαvβ6に対する抗体により治療される。やはり患者は、線維形成状態の症状の改善を表すであろう。
他の代替的な投薬計画においては、患者は、スケジュールBに記載のようにリツキシマブにより治療される。
患者の末梢B細胞のレベルを、対象とする臓器のコラーゲン沈着の量としてモニターする。8か月後に、患者の再構成されたB細胞免疫応答及び/又はコラーゲン沈着の量が予想したレベルに達するので、患者はスケジュールAに従ってリツキシマブにて再治療される。
【0140】
ここで、明確に理解するために図及び実施例によっていくらか詳細に本発明を記載しているので、本発明及び本発明のいずれかの具体的な実施態様の権利範囲を侵すことなく、条件、製剤及び他のパラメーターの広く均等な範囲内で本発明を修飾又は変更することによって同じことを行うことができること、及びそのような修飾及び変更が掲げる特許請求の範囲内に包含されることを意図することは、当分野の通常の技術者に明らかであろう。
本明細書において、言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、この発明が関係する当業者の技術のレベルを表すものであり、個々の刊行物、特許又は特許出願が出典明記により援用されるために具体的かつ個別に示されるのと同じ程度に、出典明記によって本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1A】成体マウスの脾臓、腹腔(PC)及び肝臓のB細胞集団を示す。リンパ球は単離して、抗IgD抗体(X軸)及び抗IgM(Y軸)にて染色した。リンパ球の中のIgD+、IgM+細胞の割合をプロット線で示す。
【図1B】脾臓、血液、PC及び肝臓から単離したB細胞のCD21、CD23及びCD5の発現レベルを示す。
【図1C】肝性B細胞及び脾臓B細胞に結合したアネキシンVの量を示す。
【図1D】様々な刺激に応答したときのCFSE及びCD86(B7.2)の上方制御と肝内B細胞及び脾臓B細胞の増殖の範囲を示す。
【図2A】B細胞欠失マウス(JH-/-)及び野生型マウス(BALB/c)の、単回CCl4投与の24時間後に血清に放出される肝細胞特異的酵素であるALTによって、評価した、肝障害の程度を示す。
【図2B】第6週目のオイル(コントロール)又はCCl4の何れかの投与後1週間の、B細胞欠失マウス(JH-/-)及び野生型マウス(BALB/c)のコラーゲン特異的な染料シリウスレッドにて染色された肝臓組織の組織学的な分析を示す。
【図2C】3回の代表的実験におけるコラーゲン特異的シリウスレッド染色(任意の単位)の量を示す。実験例1及び2(図2C)は3.5mg/kgのCCl4の第6週目の投与1週間後の間質性コラーゲン沈着の範囲を示す。
【図2D】3回の代表的実験におけるコラーゲン特異的シリウスレッド染色(任意の単位)の量を示す。実験3(図2D)は1.75mg/kgのCCl4の第6週目の投与1週間後の間質性コラーゲン沈着の範囲を示す。一連のドットは1匹の動物からの一連の切片を表す。平均値を棒で示す。
【図3】単回CCl4投与後1日目、3日目及び5日目の、B細胞欠失マウス(JH-/-)及び野生型マウス(BALB/c)の肝臓切片の組織学的分析を示す。アポトーシス特異的TUNEL染色(上の2列)、平滑筋アクチン染色(αSMA)(真ん中の2列)又はマクロファージ特異的F4/80染色(下の2列)の何れかに切片を用いた。
【図4A】長期CCl4処置後の、B細胞及びT細胞の両方を欠失しているマウス(RAG2-/-)及び野生型マウスの、肝臓組織中のコラーゲン沈着の組織学的分析を示す。
【図4B】長期CCl4処置後の、RAG2-/-マウス及び野生型マウスの、肝臓組織中の間質性コラーゲン沈着の定量化を示す。
【図5A】第6週目の1.75mg/kgのCCl4処置後の、エプスタインバーウイルス由来のLMP2aタンパク質を発現しているマウス及び野生型マウスの、肝臓組織中の間質性コラーゲン沈着の定量化を示す。
【図5B】第6週目の1.75mg/kgのCCl4処置後の、表面Igを発現しているmIgM tgマウス及び野生型マウスの、肝臓組織中の間質性コラーゲン沈着の定量化を示す。
【図6】60mg/kg/7日又は100mg/kg/7日の何れかのブレオマイシン投与28日間後の、野生型「B6BWT」(C57BL/6J)及びB細胞欠失「B6BKO」(B6.129S2-Igh-6tmlCgn/J)マウスのα-平滑筋アクチンの割合を示す。
【図7】100mg/kg/7日のブレオマイシン又は生理食塩水の何れかの投与28日間後の、野生型(C57BL/6J)及びB-細胞欠失(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J)マウスの肺組織の免疫組織化学分析を示す。
【図8】28日の期間にわたる100mg/kg/7日のブレオマイシン投与後の、野生型マウス(C57BL/6J、■)及びB細胞欠失マウス(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J、□)のパーセント生存率を示す。
【図9】片側性尿管閉塞(Op)に罹っている又は未処置(Unop)のB細胞欠失「B6Bko」(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J)マウス及び野生型「B6Bwt」(C57BL/6J)マウスにおける、α-平滑筋アクチン(図9A)、間質性線維形成(図9B)、拡張した尿細管(図9C)及び健康な尿細管(図9D)のパーセントを示す。
【図10】片側性尿管閉塞(Op)に罹っている又は未処置(Unop)のB細胞欠失(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J)マウス及び野生型(C57BL/6J)マウスから得た、トリクローム染色された腎臓組織の組織学的分析を示す。
【図11】ブレオマイシンなし(コントロール)、ブレオマイシン、ブレオマイシンと抗CD20モノクローナル抗体にて処置されるマウスの肺のB細胞計数を示す。
【図12】ブレオマイシンなし(コントロール)、ブレオマイシン、ブレオマイシンと抗CD20モノクローナル抗体にて処置されるマウスの脾臓のB細胞計数を示す。
【図13】未処置のマウス、又はブレオマイシン滴下後9日後にB細胞枯渇化抗CD20モノクローナル抗体ないしはPBSで処理したマウスの肺から単離したB細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図14】第6週目の1.75mg/kgのCCl4の処置後に、B細胞枯渇化抗CD20抗体、アイソタイプコントロール抗体又はPBSにて処置したマウスの肝臓組織における平滑筋アクチン免疫染色の定量化を示す。◆、■、△及び●は示したように処置された個々のマウスについて得られた結果を表す。
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、線維症又は線維形成状態の治療のための方法に関する。より具体的には、本発明は、線維形成状態を治療するための、B細胞アンタゴニスト又は枯渇化(depleting)薬剤の使用に関する。
【0002】
(関連技術)
組織障害は、感染、自己免疫応答及び物理的な損傷を含む様々な慢性ないしは急性の刺激から生じうる。治癒過程は、通常、結合組織が実質組織を置き換える段階を伴う。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594 (2004))。しかしながら、この過程が抑制されないでいると、永続的な瘢痕組織の形成は生じ得、場合によっては、最終的に臓器不全及び死につながりうる。
線維形成状態は、組織障害後の線維形成材料(例えば細胞外基質)の異常な及び/又は過剰な蓄積に特徴がある病的状態である。線維形成状態は、循環器病、大脳疾患及び末梢血管性疾患などの血管性疾患と関係する線維増殖性疾患、並びに皮膚、腎臓、肺、腸及び肝臓を含むすべての主要組織及び臓器系の線維増殖性疾患を含む。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594 (2004))。線維形成状態は多様な種類の病理であるにもかかわらず、ほとんどの線維形成状態において、線維形成組織蓄積を引き起こす一般的なメカニズムは多くの共通する因子を有すると考えられる。
【0003】
線維形成状態の治療のための多くの治療法は、一般的に線維症の発達に働くと思われる炎症応答を標的とする。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594 (2004))。線維形成状態を治療するための薬剤方策の例には、免疫抑制剤、例えば、副腎皮質ステロイド、他の従来の免疫抑制薬又は細胞障害性剤及び抗線維剤が含まれる。それにもかかわらず、当分野では、線維形成状態の治療のための新規でより特異的なターゲティング手法が求められいている。
【0004】
(発明の概要)
本発明は、B細胞を欠いている又は薬理的にB細胞が減少しているマウスにおいて、実験的に誘発された線維形成障害の範囲が実質的に低減しているという驚くべき発見に少なくともある程度関係しており、それによって、動物のB細胞の枯渇又はB細胞活性の障害が線維形成状態を治療するための有効な方法であることが示される。
したがって、本発明は線維形成状態の治療方法を包含する。本発明の方法は、線維形成状態の治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる。
線維形成は伴う特定の組織を問わず同様の生体分子メカニズムにより起こると考えられているので、本発明は患者の何れかの組織に影響を及ぼす任意の線維形成状態を治療するために用いてもよい。例えば、本発明は、肺(肺性)、腎臓(腎性)、肝臓(肝性)、皮膚、血管、腸及び角膜組織の線維形成の治療、減縮又は、遅延のために用いてもよい。本方法は、感染、自己免疫応答、物理的な損傷、化学製品、糖尿病、高血圧などから生じる組織障害を含む任意の種類の組織障害から生じる線維形成状態を治療するために用いてもよい。本発明の方法を用いて治療されうる特定の例示的な線維形成状態は、本明細書中の他の場所に記述される。
【0005】
また、本発明の方法は、線維形成状態が発達するリスクを有する患者において、線維形成状態を発達させるのを防止するために用いてもよい。線維形成状態が発達するリスクを有する患者には、例えば、肺、腎臓又は肝臓の瘢痕組織蓄積を引き起こすか又は刺激することが知られている一又は複数の環境要因にさらされたことがある患者が含まれる。例示的な環境要因には、例えば、煙曝露、粉塵曝露、アスベスト曝露、過剰なアルコール消費、放射線被曝、ブレオマイシン、二酸化ケイ素、細菌、ウイルスなどへの曝露が含まれる。また、ある実施態様では、線維形成状態が発達するリスクを有する患者には、例えば、糖尿病、慢性喘息、狼瘡、強皮症、関節リウマチ、血管系疾患、緑内障、IgA神経障害、アルポート症候群を有する個体、並びに肺移植及び/又は腎臓移植を経た個体が含まれる。
【0006】
本発明の方法の実施に用いられうる例示的なB細胞アンタゴニストには、B細胞(免疫グロブリンの分泌を含む)の成長、生存、増殖又は機能を阻害又は障害しうる、もしくは、B細胞の死又は破壊を引き起こしうる任意の分子又は化合物(ポリペプチド、リガンド、融合タンパク質、抗体、小分子など)が含まれる。本発明によるB細胞アンタゴニストは、必ずではないが、B細胞を減少させるように機能しうる。本発明の選択された好ましい実施態様は、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)、補体依存性細胞障害活性(CDC)又はアポトーシスにより、循環B細胞又はその他のB細胞の少なくとも一部が枯渇するB細胞アンタゴニストの使用を含んでなる。本明細書のために、このようなアンタゴニストはB細胞枯渇化薬剤(B-cell depleting agents)と称されうる。
【0007】
本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤はB細胞表面抗原に対する抗体である。特に好ましい実施態様では、B細胞アンタゴニストはCD20に対する抗体である。本発明の方法の実施に用いられうる抗CD20抗体の例はリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である。
本発明の他の実施態様では、B細胞アンタゴニストはBAFF又はBAFFレセプター(BR3、BCMA又はTACI)のアンタゴニストであり、それはB細胞に発現される。当分野の技術者は、特に自己応答性B細胞が病原性になりやすい時期に骨髄から脾臓へ移行するので、BAFFがB細胞の強力な生存因子であると認識するであろう。ゆえに、BAFFとBRとの相互作用を阻止するためにBAFFアンタゴニストを使用することにより、自己応答性になりうるB細胞の生成を下方制御するか、阻害するか又は抑制できる。この点で、有用なアンタゴニストには、抗BAFF抗体(例えばベリムマブ)、抗BR抗体、BAFFないしはBRと相互作用する小分子、又はリガンドベースのポリペプチドアンタゴニストが含まれうる。特に好ましい実施態様では、BAFFアンタゴニストは、免疫グロブリン定常領域に連結されるBAFFレセプターの全部又は一部を含んでなる可溶性分子である。特定の例示的なポリペプチドBAFFアンタゴニストは、以下で更に詳細に述べられる。
【0008】
本発明は、複数のB細胞アンタゴニストの投与を含んでなる方法を更に含む。例えば、特定の実施態様では、CD20に対する抗体(例えばリツキシマブ)は、BAFFアンタゴニストとともに患者に投与される。
また、本発明は、一又は複数のB細胞アンタゴニストと、一又は複数の線維形成状態を治療するために有用である一又は複数の更なる薬剤の投与を含んでなる方法を包含する。また、例えば、本発明は、一又は複数のB細胞アンタゴニストと一又は複数のインテグリンレセプターアンタゴニストの投与を含んでなる方法を包含する。当分野の技術者は、インテグリンレセプターアンタゴニストには、ペプチド、抗体、可溶性リガンド、又はインテグリンないしはインテグリンレセプターの機能を阻害する小分子、例えばαvβ6、αvβ5、αvβ8、α5β1、α1β1、α4β1(VLA-4)、α4β7などに対する抗体が包含されていることを理解するであろう。α4β1インテグリンレセプターに特異的に結合する抗体及び、本発明において、線維形成状態を治療するためにB細胞アンタゴニストと組み合わして用いられうる抗体の例は、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標))である。
【0009】
また、本発明は、一又は複数のB細胞アンタゴニストと一又は複数のTGF-β経路阻害薬、例えばTGF-βリガンドアンタゴニスト又はTGF-βレセプターアンタゴニスト(例えばモノクローナル抗体、可溶性TGF-β RII-Fc融合タンパク質、LAP-Fc融合タンパク質、TGF-βRI又はRIIキナーゼ阻害薬、小分子阻害薬など)の投与を含んでなる方法を包含する。
熟練した当業者は、本明細書中の教示に適合する他の抗線維形成薬剤を認識することが可能であろう。
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の好適な例示的実施態様の詳細な説明の検討から、当業者に明らかであろう。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、線維症又は線維形成状態を治療するか、寛解するか、軽減するか又は予防するための方法を目的とする。本発明の方法は、このような治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる。
本明細書中で用いられる「線維形成状態」なる表現は、線維形成組織、瘢痕組織、結合組織及び/又は細胞外基質(ECM)構成成分が組織障害(例えば、感染、自己免疫応答、物理的な損傷、化学的な損傷、糖尿病、高血圧など)に応答して体内の一又は複数の臓器に又は臓器内に蓄積する任意の状態を意味することを意図する。本明細書中で用いられる「線維形成状態」なる表現及び「線維性状態」は同じ意味を有することを意図する。
【0011】
例示的な線維形成状態には、以下のものが含まれるが、これらに限定するものではない。
(I) 線維形成と関連する肺疾患、例えば突発性肺線維形成、放射線誘発性線維形成、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、強皮症、ブレオマイシン誘発性肺線維症、慢性喘息、珪肺症、アスベスト誘発性肺線維形成、急性肺障害及び急性呼吸困難(細菌性肺炎誘発性、外傷誘発性、ウイルス肺炎誘発性、人工呼吸器誘発性、非肺敗血症誘発性、及び吸引誘発性を含む)、
(II) 障害/線維形成(腎線維症)と関連する慢性腎症、例えば狼瘡、糖尿病、強皮症、腎糸球体腎炎、局所性分節性腎糸球体硬化症、IgA腎症(ネフロパシー)、高血圧、同種異系移植片、ループス、及びアルポート、
(III) 腸線維症、例えば強皮症、及び放射線誘発性腸線維症、
(IV) 肝線維症、例えば肝硬変、アルコール誘発性肝線維形成、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、胆汁導管障害、原発性胆管萎縮症、感染又はウイルス誘発性肝線維形成(例えば、慢性HCV感染)、及び自己免疫性肝炎、
(V) 頭頸部線維症、例えば放射線誘発性のもの、
(VI) 角膜瘢痕化、例えばLASIX、角膜移植片及び柵状織切除、
(VII) 肥大性瘢痕化及びケロイド、例えば熱傷誘発性及び外科的なもの、そして、
(VIII) その他の線維形成性疾患、例えばサルコイドーシス、強皮症、脊髄障害/線維形成、骨髄線維症、血管性再狭窄、アテローム性動脈硬化、ベゲナー肉芽腫症、混合性結合組織病及びペロニー病。
【0012】
本明細書中で用いられる「このような治療を必要とする患者」なる表現は、例えば、一又は複数の線維形成状態、例えば上記に挙げた何れかの線維形成状態について治療を必要とするヒトないし非ヒト動物を意味することを意図する。「このような治療を必要とする患者」は、体内の一又は複数の臓器上に又は臓器内に、線維形成組織、瘢痕組織及び/又は細胞外基質材料(例えばコラーゲン、ビメンチン、アクチンなど)の蓄積を有するヒトないし非ヒト動物であってもよい。「このような治療を必要とする患者」は、必ずではないが、一又は複数の線維形成状態の臨床診断を受けたヒトないし非ヒト動物であってもよい。「このような治療を必要とする患者」は、線維形成状態の一又は複数の症状を表すヒトないし非ヒト動物であってもよい。(Khalil及びO'Connor, Canadian Medical Journal 171:153-160 (2004))。例えば、「このような治療を必要とする患者」は、以下の一又は複数の症状を表すヒトないし非ヒト動物であってもよい:肝臓の線維形成状態(例えばウイルス性肝炎、アルコール乱用、ドラッグ、鉄ないしは銅の過負荷による代謝病、肝細胞ないしは胆管上皮の自己免疫性攻撃、又は先天的な異常によって、引き起こされる肝臓組織障害又は瘢痕化など) (Friedman, J. Biol. Chem. 275:2247-2250 (2000))、肺の線維形成状態(例えば、突発性間質性肺炎を含む刺激現象に対する肺の炎症性応答による又はこれに関連する肺組織障害又は瘢痕化など) (Garantziotis等, J. Clin. Invest. 114:319-321 (2004))、皮膚又は他の臓器(一又は複数)の強皮症(Trojanowska, Frontiers Biosci. 7: d608-618 (2002))、及び/又は腎臓の線維形成状態(例えば糸球体硬化症又は管状間質性線維形成に関連する腎臓組織障害又は瘢痕化など) (Negri, J. Nephrol. 17:496-503 (2004))。
【0013】
特定の実施態様によると、「このような治療を必要とする患者」は、自己免疫性疾患を有さない及び/又は、自己免疫性疾患を有するリスクにない。例えば、「このような治療を必要とする患者」は、必ずではないが、一又は複数の自己免疫性疾患の臨床診断を受けていない患者であってもよい。「このような治療を必要とする患者」は、必ずではないが、一又は複数の自己免疫性疾患の一又は複数の症状を表さない患者であってもよい。本明細書中に用いられる「自己免疫性疾患」なる用語は、個体自身(自己)の抗原及び/又は組織から生じる、並びにそれらに対する非悪性の疾患ないしは疾病を意味する。(例として米国公開特許第2005/0095243号参照)。ゆえに、本発明の特定の例示的な実施態様では、「このような治療を必要とする患者」は、以下の一又は複数の自己免疫性疾患の臨床診断を受けていない、又は以下の一又は複数の自己免疫性疾患の一又は複数の症状を表さない患者である:関節リウマチ、若年性慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェゲナー病、炎症性腸疾患、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経炎、重症筋無力症、血管炎、真正糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群又は糸球体腎炎。
非ヒト動物には、例えば、家庭動物及び酪農動物、並びに動物園動物、スポーツ動物及びペット動物(例えばネコ、イヌ、ウマ、ウシなど)が含まれる。
【0014】
本明細書中で用いられる「治療的に有効な量」なる表現は、問題の線維形成状態の症状を予防、寛解、治療又は改善させるために有効なB細胞アンタゴニストないしはアンタゴニストの量を指す。例えば、本明細書中で用いられる、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、線維形成状態の一又は複数のマーカーの減少を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量であってもよい。線維形成状態の例示的なマーカーには、例えば、コラーゲン沈着、平滑筋アクチン沈着などが含まれる。本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、B細胞アンタゴニストの投与前に観察されるコラーゲン沈着のレベルと比較して、コラーゲン沈着の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%又は100%の減少を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量である。本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、B細胞アンタゴニストの投与前に観察される平滑筋アクチン沈着のレベルと比較して、平滑筋アクチン沈着の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%又は100%の減少を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量である。更に他の実施態様では、B細胞アンタゴニストの治療的に有効な量は、B細胞アンタゴニストの投与前に観察される臓器機能と比較して、臓器機能(例えば肝機能、肺機能、腎機能)の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%又は100%の改善を引き起こすために十分なB細胞アンタゴニストの量である。
【0015】
B細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤
本明細書中で用いられる「B細胞アンタゴニスト」なる表現は、(B細胞により誘発される体液性応答を低減又は阻害することによって、)B細胞の成長、生存、増殖又は機能を阻害、障害、遅延、寛解又は下方制御する、又はすべてないしは一部のB細胞集団の死ないしは破壊を引き起こす任意の物質又は薬剤を意味することを意図する。後者の場合、このようなB細胞アンタゴニストは、B細胞枯渇化薬剤と称されうる。B細胞アンタゴニストは、B細胞表面抗原と結合するか又は相互作用するか、又はB細胞機能を阻害するために細胞内シグナル伝達分子と相互作用する、合成ないしは天然配列のペプチド及び小分子であってもよい。いくつかの実施態様では、B細胞アンタゴニストは細胞障害性剤と融合又はコンジュゲートしてもよい。本発明の更なる他の実施態様では、B細胞アンタゴニストは、融合タンパク質(例えばBR-Fc)又は抗体、例えば一又は複数のB細胞表面抗原に対する抗体である。
【0016】
上記したように、B細胞アンタゴニストは、B細胞アンタゴニストの患者への投与の際又は、その投与の後にB細胞を減少させる薬剤であってもよい。例えば、B細胞アンタゴニストは、B細胞アンタゴニストの投与の24〜100時間以内に、2%〜100%のB細胞が枯渇しうる。
例えば、B細胞アンタゴニストは、該B細胞アンタゴニストの投与の24時間以内に、末梢B細胞の2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%、又は100%が枯渇しうる(例として米国特許第6399061号に記載)。
【0017】
あるいは、B細胞アンタゴニストは、該B細胞アンタゴニストの投与の48時間以内に、末梢B細胞の2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%、又は100%が枯渇しうる。
他の実施態様では、B細胞アンタゴニストは、該B細胞アンタゴニストの投与の72時間以内に、末梢B細胞の2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、82%、84%、86%、88%、90%、92%、94%、96%、98%、又は100%が枯渇しうる。
【0018】
B細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤の線維形成状態を治療する能力は、一又は複数のインビトロ又はインビボの線維形成モデルを用いて検定されてもよい。例示的な線維形成モデルには、例えば外傷誘発性線維形成モデル(例えば、外科的な外傷又は臓器移植、熱傷、胆管閉塞、片側性尿管閉塞、虚血性再灌流、人工呼吸器誘発性肺障害、血管性バルーン障害、腎摘出、照射、外傷性大動脈大静脈異常導管及び急速性心室ペーシング)、毒素又はドラッグ誘発性線維形成モデル(例えば、ブレオマイシン、アスベスト、二酸化ケイ素、卵白アルブミン、アセトアルデヒド、四塩化炭素、コンカナバリンA、塩化ビニル、トリニトロベンゼンスルホン酸、オキサゾロン、シクロスポリンA、硫酸ニッケル、及びセルレイン)、自己免疫性疾患又は機能不全性免疫関連線維形成モデル(例えば、抗体及び免疫複合体病モデル、臓器移植拒絶反応、タイト-スキン(Tsk)マウスモデル(tight skin mouse model)、虚血性再灌流障害、移植片対宿主誘発性、及び関節リウマチ)、慢性感染病誘発性線維形成モデル(住血吸虫類種又は慢性ウイルス性肝炎、アスペルギルスフミガタス、結核菌、及びクルーズトリパノソーマ)、及び、遺伝子操作されたマウスモデル又はウイルス感染したマウス(例えば、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)又はTGF-β-レセプタートランスジェニックマウス及びノックアウトマウス、シグナル伝達分子欠失マウス(例えば、マザーアゲインストデカペンタプレジックホモログ3(SMAD3)-欠失マウス)、Col4A3の欠失マウス(Alport)、TGF-β活性化に作用する分子に欠失のあるマウス(例えば、α1インテグリン又は基質メタロプロテイナーゼ9)、及びサイトカイン-遺伝子トランスジェニックマウス、ウイルス感染マウス及びノックアウトマウス(例えば、腫瘍壊死因子、インターロイキン4(IL-4)、IL-13又はIL-10))が含まれる。(Wynn, Nature Reviews 4:583-594)。本発明のB細胞アンタゴニストには、例えば、線維症の症状を改善すること、又は線維性障害の範囲を減少、遅延、障害及び/又は寛解すること、又は線維性障害の一又は複数のマーカーを減少することが上述した線維形成モデルの何れかに示される、B細胞アンタゴニストが含まれる。上述した線維形成モデルの何れか一において、線維性障害の範囲を減少するため、又は線維症の症状を改善するための能力についてB細胞アンタゴニストを含む薬剤をアッセイすることは、当分野の通常の技術者の技術及び知識の範囲内である。
【0019】
抗体
本発明のB細胞アンタゴニスト又は枯渇化薬剤は抗体であってもよい。本明細書中で用いられる「抗体」なる用語には、例えば、天然の抗体、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、抗体断片(例えば、一又は複数の抗原に結合する及び/又は一又は複数の抗原を認識する抗体断片)、その他の多価抗体コンストラクト、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体(Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2551 (1993)、Jakobovits等, Nature 362:255-258 (1993)、Bruggermann等, Year in Immunol. 7:33 (1993);米国特許第5591669号及び同第5545807号)、抗体ファージライブラリーから単離された抗体及び抗体断片(McCafferty等, Nature 348:552-554 (1990);Clackson等, Nature 352:624-628 (1991);Marks等, J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991);Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992);Waterhouse等, Nucl. Acids Res. 21: 2265-2266 (1993))が含まれる。抗体を製作し使用するための方法は当分野で公知である。(国際公開第00/67796号及びここに引用される文献を参照のこと)。
【0020】
本発明と組み合わせてB細胞アンタゴニストないしは枯渇化薬剤として特に有用である2つの抗体は、マウス/ヒトキメラ抗体であるリツキシマブと、マウスのCDRを含んでなるヒト化抗体である2H7である。リツキシマブは米国特許第6399061号に開示されており、2H7及びその変異体は国際公開第04/056312号に開示されている。これら文書のそれぞれは出典明記によって、その全体が本明細書中に援用される。
【0021】
本明細書中の教示に適する他の抗CD20抗体には、「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」(ゼバリン(登録商標))と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体、Biogen-Idecから市販(米国特許第5736137号も参照、出典明記によって本明細書中に援用される);場合によっては131I-B138抗体(BEXXARTM)を生成するために131Iで標識されうる「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5595721号も参照、出典明記によって本明細書中に援用される);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69:584-591 (1987)及びそれらの変異体、例として「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公開第2003/002607号);ATCC寄託番号HB-96450);HuMaxTM-CD20(完全なヒトIgG1抗体、米国公開特許第2004/167319号;国際公開第04/035607号、Genmab, Denmark)、AME-133(最適化したCDR移植抗体、米国公開特許第2005/025764;国際公開第04/103404、Applied Molecular Evolution)、HumaLymTM(完全なヒト抗体、Intracel)、及びhA20 (ヒト化IgG1抗体、米国公開特許第2003/0219433号;国際公開第00/74718号、Immunomedics);及びthe International Leukocyte Typing Workshopより入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-CI又はNU-B2 (Valentine等, Leukocyte Typing III (McMichael, 編集, p. 440, Oxford University Press (1987))が含まれる。
【0022】
本明細書中で用いる「抗体断片」なる用語は、インタクト抗体の一部、好ましくはその抗原結合又は可変領域を含む分子である。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)断片、ドメイン欠失抗体、ダイアボディ、線形抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれる。
本明細書中で用いる「天然抗体」なる用語は、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質を意味することを意図する。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の中でばらつきがある。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖間ジスルフィド結合を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(VH)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0023】
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布する必要はない。可変性は軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を結合し、ある場合にはその一部を形成するループ結合を形成する、3つの高頻度可変領域により連結されたPシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖の高頻度可変領域は、FRによって近接して結合され、他の鎖の高頻度可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequence of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、抗体依存性細胞媒介性障害活性(ADCC)への抗体の関与などの種々のエフェクター機能を表す。
【0024】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位を持ち、残りは容易に結晶化する能力を反映して「Fc」断片と命名される。ペプシン処理はF(ab')2断片を生じ、それは2つの抗原結合部位を持ち、抗原を交差結合することができる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小抗体断片である。この領域は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つの高頻度可変領域は相互に作用してVH-VL二量体表面に抗原結合部位を形成する。集合的に、6つの高頻度可変領域が抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの高頻度可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
【0025】
またFab断片は、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常領域(CH1)を有する。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が少なくとも一つの遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')2抗体断片は、その間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として生産された。また、抗体断片の他の化学結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の何れかに分類される。
【0026】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体は異なるクラスに分類される。インタクト抗体には5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、更にそれらは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれうる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られている。
本明細書中で用いる「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片なる表現は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインが単一のポリペプチド鎖に存在する抗体断片を意味することを意図する。好ましくは、FvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。(Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994))。
【0027】
本明細書中で用いる「ダイアボディ」なる用語は、2つの抗原結合部位を持つ小さい抗体断片を指し、その断片は同一のポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる(VH−VL)。非常に短いために同一鎖上で2つのドメインの対形成が可能であるリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補的なドメインと強制的に対形成させ、2つの抗原結合部位を作製する。(欧州特許第404097号;国際公報93/11161;及びHollinger等, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:6444-6448 (1993))。
【0028】
ポリクローナル抗体は、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物内で産生される抗体を含む。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシン阻害剤に関連抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、又はRとR1が異なったアルキル基であるR1N=C=NRによりコンジュゲートされうる。
ポリクローナル抗体を生成するために、動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1か月後、該動物を、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。7ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合として組換え細胞培養中で調製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために好適に使用される。
【0029】
本明細書中で使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する。例えば、集団を構成する個々の抗体は、天然に生じる可能性のある突然変異又は存在しうる少量の翻訳後突然変異を除いて実質的に同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対するものである。更に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンの混入がないという利点がある。「モノクローナル」との修飾語句は、実質的に均一な抗体の集団から得たものとしての抗体の性質を表すものであり、抗体が何か特定の方法による生成を必要として構築したものであることを意味するものではない。例えば、本発明において使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler等, Nature, 256:495 (1975)に記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法によって作ることができる(例えば米国特許第4816567号を参照のこと)。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991)及びMarks等, J. Mol. biol. 222: 581-597 (1991)に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから作製することもできる。
【0030】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」なる用語は、特に「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、それは特定の種由来又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似する重鎖及び/又は軽鎖の一部を含むものであり、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、抗体断片のように他の種(例えばマウス又はラット)由来又は他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体が持つ配列に一致する又は類似するものである(米国特許第4816567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザルなどの旧世界サル)由来の可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む(米国特許第5693780号)。
【0031】
本明細書中で用いられるように、非ヒト(例えばマウス)の抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体を指す。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)由来の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例として、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、もしくはドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいは実質的に全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいは実質的に全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである少なくとも1又は一般的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の一部、一般的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部も含む。(Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-329 (1988);Verhoeyen等, Science, 239:1534-1536 (1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992);国際公開第00/67796号)。
【0032】
本明細書中で用いる「高頻度可変領域」なる用語は、抗原結合に寄与する抗体のアミノ酸残基を意味する。高頻度可変領域は一般には「相補性決定領域」又は「CDR」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、及び重鎖可変ドメインの31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest,5版, Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))及び/又は「高頻度可変ループ」のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインの残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)及び重鎖可変ドメインの残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia及びLesk J.Mol.Biol. 196:901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」又は「FR」残基はここで定義するように高頻度可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0033】
B細胞表面抗原
本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストはB細胞表面抗原に対する抗体である。本明細書中に用いられる「B細胞表面抗原」なる表現は、Bリンパ球の表面に発現される任意の抗原を意味することを意図する。本発明のいくつかの実施態様では、「B細胞表面抗原」は健康な個体のB細胞の表面に発現される抗原である。他の実施態様では、「B細胞表面抗原」は、疾患状態に罹っている個体のB細胞の表面上に発現される抗原である。更なる他の実施態様では、「B細胞表面抗原」は、健康な個体及び疾患状態に罹っている個体の両方のB細胞の表面上に発現される抗原である。本発明のいくつかの実施態様では、B細胞表面抗原は、非B細胞上よりも広い範囲で(例えば、2×広く、3×広く、4×広く、5×広く、10×広く、100×広く又はより広く)B細胞上に発現される。あるいは、ある実施態様では、B細胞表面抗原は、非B細胞上と同じ範囲か又は非B細胞上よりも狭い範囲でB細胞上に発現されてもよい。特定のB細胞表面抗原は、本質的に非B細胞上に発現されてもよく及び/又は活性化されたB細胞上に発現されてもよい。本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はB細胞上だけに発現される。
【0034】
例示的なB細胞表面抗原には、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD52、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85及びCD86白血球表面マーカーが含まれる。その他の例示的なB細胞表面抗原には、toll様レセプター(例えばTLR-7及びTLR-9)、ケモカインレセプター(例えばCXCR3)、及びAPRILが含まれる (Medema等, Cell Death Differ. 10:1121-1125 (2003))。また、BAFFレセプター(BAFFR/BR3、BCMA及びTACI)は、本開示内容のためのB細胞表面抗原と考えられてもよい。
本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はCD19である。「CD19」抗原は、例えばHD237-CD19又はB4抗体により同定される90kDa以下の抗原を指す(Kiesel等, Leukemia Research II 12:1119 (1987))。CD19は、幹細胞段階からプラズマ細胞への終末分化の直前の時期までの系統分化の期間の全体にわたって細胞上にみられる。CD19へのB細胞表面抗原の結合により、CD19抗原の内部移行が生じうる。
【0035】
B細胞アンタゴニストは、例えば、B細胞を認識するIgG2a抗体であるLym-1;CD21抗原に対する抗体であるB2;CD22抗原に対する抗体であるB3;又は、CD10抗原に対する抗体であるJ5であってもよい(米国特許第5843398号)。本発明に関してB細胞アンタゴニストとして有用な抗CD22抗体は、例えば、米国特許第5484892号、同第5789557号及び同第5789554号、国際公開第98/42378号、国際公開第00/20864号及び国際公開第98/41641号、及びCampana, D.等, J. Immunol. 134:1524 (1985)、Dorken等, J. Immunol. 150:4719 (1993)及びEngel等, J. Immunol. 150:4519 (1993)に記載されている。この点に関しては、抗CD22抗体であるエピラツズマブは本発明で特に有用である。
本発明に関してB細胞アンタゴニストとして用いることができる付加的な例示的CD22抗体は、例えば、米国特許第5484892号、同第5789557号及び同第6846476号、及び国際公開第98/42378号、国際公開第00/20864同及び国際公開第98/41641号に記載されている。
【0036】
本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はCD23である。CD23はIgEの低親和性レセプターである。CD23は、細胞接着を媒介し、IgE及びヒスタミン放出を制御して、アポトーシスからB細胞を救い、骨髄細胞増殖を制御することが知られている。例としてConrad, Annu Rev Immunol 8:623-645 (1990);Delespesse等, Adv. Immunol. 49: 149-191 (1991);Bonnefoy等, Curr Opin Immunol 5:944-947 (1993)を参照のこと。CD23に特異的な抗体及びその使用は、例えば、Rector等, Immunol. 55:481-488 (1985);Suemura等, J. Immunol 137:1214-1220 (1986);Noro等, J. Immunol 137:1258-1263 (1986);Bonnefoy等, J. Immunol 138:2970- 2978 (1987);Flores-Romo等, Science 261:1038-1046 (1993);Sherr等, J. Immunol. 142: 481-489 (1989);Pene等, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85:6880-6884 (1988);Bonnefoy等 (国際公開第87/07302号);Bonnefoy等 (国際公開第96/12741号);Bonnefoy等, Eur. J. Immunol. 20:139-144 (1990);Sarfati等, J. Immunol. 141:2195-2199 (1988)及びWakai等, Hybridoma 12:25-43 (1993)において検討されている。また、米国特許第7008623号、同第6893638号、及び同第6011138号を参照のこと。
【0037】
本発明のある実施態様では、B細胞表面抗原はCD80である。CD80(「B7.1」とも称される)は免疫応答の生成において、重要であることが示されている。(Azuma等, J. Exp. Med. 177: 845-850 (1993);Freeman等, J. Immunol. 143:2714-2722 (1989);Hathcock等, Science 262:905-911 (1993);Hart等, Immunol. 79:616-620 (1993))。例えば、「IDEC-114」と称されるヒトCD80に特異的な霊長類化IgG1抗体を含め、CD80に特異的な抗体は記載されている(米国特許第5736137号;同第6113898号)。
特定の本発明の好ましい実施態様では、B細胞表面抗原はCD20である。「CD20」抗原は、末梢血液又はリンパ系臓器の90%以上のB細胞の表面上にみられる、35kDa以下の、非グリコシル化リンタンパク質である。CD20は、初期のプレB細胞発達の間に発現され、プラズマ細胞分化まで残る。CD20は正常なB細胞並びに悪性のB細胞上に存在する。文献内でのCD20の他の名称には「Bリンパ球限局抗原」及び「Bp35」が含まれる。CD20抗原は、例えばClark等, Proc. Natl. Acad. Sci. 82: 1766 (1985)に記載される。
【0038】
CD20に対する抗体
本発明のB細胞アンタゴニストはCD20に対する抗体であってもよい。B細胞アンタゴニストとして機能する当分野で公知のCD20に対する任意の抗体が、本発明において、用いられてもよい。(例として米国特許第6682734号、同第6538124号、同第6528624号、同第6455043号、同第6410391号、同第6399061号、同第6368596号、同第6287537号、同第6242195号、同第6224866号、同第6171586号、同第6194551号、同第6120767号、同第6015542号、同第6090365号、同第5849898号、同第5843439号、同第5843398号、同第5776456号、同第5736137号、同第5721108号、同第5677180号、同第5595721号、同第5500362号、同第4861579参照、米国公開特許第2005/0069545号、同第2005/0053602号、同第2005/0025764号、同第2004/0167319号、同第2004/0093621号、同第2003/0219433号、同第2003/0157108号、同第2003/0147885号、同第2003/01339301号、同第2003/0103971号、同第2003/0095963号、同第2003/0082172号、同第2003/0068664号、同第2003/0026801号、同第2003/0021781号、同第2002/0197256号、同第2002/0197255号、同第2002/0128448号、同第2002/0058029号、同第2002/0041847号、同第2002/0012665号、同第2002/0009444号、同第2002/0006404号、同第2002/0004587、国際特許出願公開第00/09160号、国際公開第00/27428号、国際公開第00/27433号、国際公開第00/44788号、国際公開第01/10462号、国際公開第01/10461号、国際公開第01/10460号、国際公開第02/04021号、国際公開第01/74388号、国際公開第01/80884号、国際公開第01/97858号、国際公開第02/34790号、国際公開第02/060955号、国際公開第2/096948号、国際公開第02/079255号、国際公開第98/56418号、国際公開第98/58964号、国際公開第99/22764号、国際公開第99/51642号、国際公開第00/42072号、国際公開第00/67796号、国際公開第01/03734号、国際公開第01/77342号、国際公開第00/20864号、国際公開第01/13945号、国際公開第00/67795号、国際公開第00/74718号、国際公開第00/76542号、国際公開第01/72333号、国際公開第02/102312号、国際公開第03/002607号、国際公開第049694号、国際公開第03/061694号、国際公開第95/03770、及び欧州特許第330191号及び同第332865号を参照のこと)。
【0039】
CD20に対する例示的な抗体は、例えば米国公開特許第2005/0053602号に記載されており、「リツキシマブ」(「リツキサン(登録商標)」)と呼称される「C2B8」(米国特許第5736137号);「Y2B8」又は「Ibritumomab Tiuxetan」(ゼバリン(登録商標))と命名されるイットリウム-[90]-標識2B8マウス抗体(米国特許第5736137号);場合によっては「131I-B1」抗体(ヨードI131 Tositumomab、BEXXARTM)を生成するために131Iで標識した「Tositumomab」とも呼称されるマウスIgG2a「B1」(米国特許第5595721号);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press等 Blood 69:584-591 (1987))、及び「フレームワークパッチ」又はヒト化1F5(国際公開第2003/002607号);ATCC寄託番号HB-96450;マウス2H7及びキメラ2H7抗体(米国特許第5677180号);ヒト化2H7;huMax-CD20(Genmab, Denmark);AME-133(Applied Molecular Evolution);及びthe International Leukocyte Typing Workshopより入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2 (Valentine等, Leukocyte Typing III, McMichael編集, p. 440, Oxford University Press (1987))が含まれる。
【0040】
ここで「リツキシマブ」又は「リツキサン(登録商標)」なる用語は、一般的にCD20抗原に対する、米国特許第5736137号において「C2B8」と命名された遺伝子操作キメラマウス/ヒトモノクローナル抗体であり、CD20に結合する能力を保持するその断片を含むものを意味する。
特定の実施態様では、抗CD20抗体はヒト及び霊長類のCD20に結合する。特定の実施態様では、CD20を結合する抗体はヒト化又はキメラである。CD20結合抗体には、リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、m2H7(マウス2H7)、hu2H7(ヒト化2H7)、及び限定するものではないが、hu2H7.v16(vは型を表す)、v31、v73、v75、v114、v511並びにフコース欠乏性変異体を含むその全ての機能的変異体が含まれる。hu2H7変異型抗体の幾つかの配列を、出典明記によってその全体が本明細書中に援用される国際公開第04/056312号に記載され、N末端アミノ酸配列の成熟ポリペプチドでは取り除かれるリーダー配列を太字で以下に示す:
【0041】
hu2H7.v16 L鎖[232aa](配列番号1):
hu2H7.v16 H 鎖[471aa](配列番号2):
hu2H7.v31 H 鎖[471aa](配列番号3):
v31のL鎖は上記のv16のもの、すなわち配列番号1と同じである。
【0042】
本明細書中で用いる「ヒト化2H7v.16」なる用語は、可変軽鎖配列を含んでなるインタクトな抗体又は抗体断片を意味する:
及び可変重鎖配列:
【0043】
ヒト化2H7v.16抗体がインタクト抗体の場合、好ましくはv16軽鎖アミノ酸配列を含む:
及びv16重鎖アミノ酸配列:
【0044】
特定の示した位置のアミノ酸置換を除き、v16のアミノ酸配列を含んでなる例示的なヒト化2H7抗体変異体を以下の表1にまとめる。特に示さなければ、2H7変異体はv16と同じL鎖を有するであろう。
【0045】
前述のヒト化2H7mAbの変異型は上記配列番号6と同じL鎖配列と以下のH鎖アミノ酸配列を有する2H7v.31である:
マウス抗ヒトCD20抗体m2H7は、VH配列:
及びVL配列
を有する。
【0046】
他の好適なヒト化2H7抗体は、2H7.v511可変軽鎖ドメイン配列:
及び2H7.v511可変重鎖ドメイン配列:
を含んでなる。
ヒト化2H7.v511抗体がインタクト抗体である場合、軽鎖アミノ酸配列:
及び配列番号7の重鎖アミノ酸配列又は:
を含んでなる。
特に示さない限り、ここに開示したヒト化2H7v.16及びその変異体の配列は、成熟ポリペプチド、すなわちリーダー配列を持たないものである。(米国公開特許第2005/0095243号)。
【0047】
BAFFアンタゴニスト、BAFFレセプターアンタゴニスト及びその他のB細胞アンタゴニスト
BAFF(BLyS、TALL-1、THANK、TNFSF13B又はzTNF4としても知られている)は、B細胞生存及び成熟のために必須であるTNF1リガンドスーパーファミリーの一つである。トランスジェニックマウスにおけるBAFF過剰発現により、B細胞の異常増殖及び重度の自己免疫性疾患の発症が生じる(Mackay等 (1999) J. Exp. Med. 190, 1697-1710;Gross等 (2000) Nature 404, 995-999;Khare等 (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97, 3370-33752-4)。BAFFは、TACI、BCMA及びBR3(BAFF-Rとしても知られる)の3つのTNFレセプタースーパーファミリーに結合することによってB細胞に作用する(上掲のGross等;Thompson, J. S.等, (2001) Science 293, 2108-2111;Yan, M.等, (2001) Curr. Biol. 11, 1547-1552;Yan, M.等, (2000) Nat. Immunol. 1, 37-41;Schiemann, B.等, (2001) Science 293, 2111-2114)。3つのBAFFレセプターの中でBR3だけはBAFFに特異的であり、また、他の2つは関連したTNFファミリーメンバーであるAPRILを結合する。BR3は、B細胞の表面上に発現される184残基のIII型膜貫通タンパク質である。(米国公開特許第2005/0095243号)。
【0048】
本発明のある実施態様では、B細胞アンタゴニストは、BAFFアンタゴニスト又はBAFFレセプターアンタゴニストである。本明細書中で用いられる「BAFFアンタゴニスト」なる用語には、天然配列のBAFFポリペプチドを結合する、会合する及び/又は相互作用する任意の分子、及び天然配列のBAFFシグナル伝達を部分的又は完全に阻止する、阻害する、又は中和する任意の分子が含まれる。選択された実施態様では、本発明には、BAFFと結合するか又は関連する抗体ないしはその断片の使用を含む。当業者は、天然配列のBAFFポリペプチドシグナル伝達が、とりわけ、B細胞生存及びB細胞成熟を促進すると理解するであろう。例えば、生物学的に活性なBAFFリガンドは、インビトロ又はインビボでの以下の事象の何れか一又はこれらの組合せを増強する:(i) B細胞の生存の増加、(ii) IgG及び/又はIgMレベルの増加、(iii) プラズマ細胞の数の増加、及び、(iv) 脾臓B細胞のNF-κB2/100のp52 NF-κBへのプロセシング(例えば、Batten等, J. Exp. Med. 192: 1453-1465 (2000);Moore,等, Science 285:260-263 (1999);Kayagaki等, Immunity 17:515-524 (2002)。ゆえに、BAFFシグナル伝達の阻害、遮断又は中和により、とりわけ、B細胞の数が減少する。したがって、本発明のある態様でのBAFFアンタゴニストは、インビトロ又はインビボでのBAFFポリペプチドの一又は複数の生物学的活性を、部分的ないしは完全に遮断、阻害又は中和して、これによって、B細胞活性を低減又は阻害するであろう。BAFFアンタゴニストを試験するために有用ないくつかのアッセイは、米国公開特許第2005/0095243号に記載される。
【0049】
BAFFアンタゴニストとして有用なペプチドには、例えば、国際公開第02/092620号において、TALL-1 12-3と称されるペプチドが含まれ、以下のアミノ酸配列を有する:
このペプチド、並びに国際公開第02/092620号において開示される他の例示的なペプチドは、BAFFと結合して、BAFFがそのレセプターであるBR3、TACI及びBCMAに結合するのを阻害する。ある実施態様では、国際公開第02/092620号に記載されるBAFFペプチドアンタゴニストは、例えばFc又はPEGに連結されてもよい。
【0050】
更なるBAFFペプチドアンタゴニストには、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号:15)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号:16)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号:17)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号:18)、及びECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号:19)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるペプチドないしはポリペプチド、及び、配列番号:15、16、17、18又は19の何れか一に少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性があるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが含まれる。
本発明の方法の実施に用いることができる更なるBAFFペプチドアンタゴニストには、米国公開特許第2005/0095243号に記載の式I、式II又は式IIIのアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドが含まれる。
【0051】
本発明のいくつかの実施態様では、BAFFアンタゴニストは、抗BAFF抗体、イムノアドヘシン又は小分子である。ある実施態様では、イムノアドヘシンは、可溶性コンストラクトの形態でBAFFレセプターのBAFF結合領域(例えばBR3、BCMA又はTACIの細胞外ドメイン)を含んでなる。特に好適な実施態様では、イムノアドヘシンはBR3-Fc又は配列番号:15、16、17、18又は19の何れか一の配列を有するポリペプチドである(米国公開特許第2002/0037852号、同第2003/0059937号、同第2005/0095243号及び同第2005/0163775号に記載)。他の実施態様では、イムノアドヘシンは、TACI又はBCMAの可溶型(例えばTACI-Fc又はBCMA-Fc)である。
さらに、当業者は、BAFFに特異的に結合するか又はBAFFと会合する抗体ないしその断片もまた、本明細書中の教示と矛盾しておらず、例えば米国公開特許第2003/0059937号にあるように当分野で公知であることを理解するであろう。本発明の態様に記載の例示的な抗体は、特異的に認識してBAFFの生物活性を阻害するヒトモノクローナル抗体であるLymphoStat-BTM(ベリムマブ(belimumab)) (Human Genome Sciences, Inc.)である。
【0052】
本発明の特定の他の実施態様では、B細胞アンタゴニストはBAFFレセプターアンタゴニストである。本明細書中で用いられる「BAFFレセプターアンタゴニスト」なる用語には、天然配列のBAFFレセプター(例えばBR3、TACI又はBCMA)ポリペプチドを結合又は会合する任意の分子、及び/又はそのレセプターを介する天然配列のBAFFシグナル伝達を部分的ないしは完全に遮断、阻害又は中和する任意の分子が含まれる。ゆえに、本発明の選択された実施態様では、B細胞アンタゴニストは、Btk、TACI、BCMA(米国公開特許第2002/0081296号)又はBAFF-R(米国公開特許第2002/0165156号)と特異的に結合又は会合する抗体ないしその断片、ポリペプチド又は小分子を含んでなる。他の例示的なB細胞アンタゴニストには、例えば、Ig-α/Ig-βのITAMモチーフとそれらの標的との相互作用を阻害する抗体、ポリペプチド又は小分子、典型的又は選択的にNFκB活性化経路を阻害する抗体、ポリペプチド又は小分子、及びOCA-B、CD40、LT-βを阻害する抗体、ポリペプチド又は小分子などが含まれる。
【0053】
B細胞アンタゴニストのコンジュゲート及び他の修飾
本発明の特定の実施態様によると、B細胞アンタゴニストは細胞障害性剤とコンジュゲートされる。
B細胞アンタゴニスト-細胞障害性剤コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤は当分野で周知である。
また、B細胞アンタゴニストと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン(calicheamicin)、メイタンシン(maytansine)(米国特許第5208020号)、トリコテン(trichothene)及びCC1065のコンジュゲートもここにおいて考慮される。本発明の一実施態様では、B細胞アンタゴニストは、一又は複数のメイタンシン(maytansine)分子(例えば、B細胞アンタゴニスト当たり約1から約10のメイタンシン分子)とコンジュゲートしている。メイタンシンは、例えばMay-SH3へ還元されるMay-SS-Meへ変換され、修飾されたB細胞アンタゴニスト(Chari等,Cancer Research 52:127-131(1992))と反応してメイタンシノイド(maytansinoids)-B細胞アンタゴニストコンジュゲートを生成する。
【0054】
あるいは、B細胞アンタゴニストは、一又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートする。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、サブピコモル濃度で、二重鎖DNAの割れ目を作ることができる。使用されるであろうカリケアマイシンの構造類似体は、限定されるものではないが、γ1I、α2I、α3I、N-アセチル-γ1I、PSAG及びθI1(Hinman等, Cancer Research 53:3336-3342(1993)及びLode等,Cancer Research 58:2925-2928(1998))を含む。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシン(dianthin)タンパク質、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリス阻害剤、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(Restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日に公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。また、メイタンシノイドはB細胞アンタゴニストにコンジュゲートしうる。
【0055】
本発明は、更に、核酸分解性活性を有する化合物(例えば、リボムクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNA分解酵素)とコンジュゲートされたB細胞アンタゴニストを考慮する。
種々の放射性同位元素が放射性コンジュゲートB細胞アンタゴニストの生成に利用できる。具体例にはAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32及びLuの放射性同位元素が含まれる。
【0056】
B細胞アンタゴニストと細胞障害性剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、スクシインミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-I-カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ヒス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)がB細胞アンタゴニストに放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは、細胞内で細胞毒性薬剤の放出を容易にする「切断可能なリンカー」でもよい。例えば、酸性の易動性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari等 Cancer Research 52: 127-131(1992))を用いてもよい。
【0057】
あるいは、B細胞アンタゴニスト及び細胞障害性剤を含んでなる融合タンパク質を、例えば組換え技術又はペプチド合成によって製造してもよい。
他の実施態様では、予備標的化で使用するために、B細胞アンタゴニストは「レセプター」(ストレプトアビジン等)にコンジュゲートされてもよく、該B細胞アンタゴニスト-レセプター複合体は患者に投与され、次いで清澄化剤を用いて未結合複合体を循環から除去し、次に細胞毒性薬(例えば、放射性ヌクレオチド等)にコンジュゲートされた「リガンド」(アビジン等)を投与する。
また、本発明のB細胞アンタゴニストを、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、国際公開第81/01145号を参照)を活性な薬剤に転化させるプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートさせてもよい。例えば国際公開第88/07378号及び米国特許第4975278号を参照されたい。そのようなコンジュゲートの酵素成分には、より活性な細胞毒形態に転化するように、プロドラッグに作用し得る任意の酵素が含まれる。
【0058】
この発明の方法に有用な酵素には、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアルカリ性ホスファターゼ;スルファート含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性5-フルオロシトシンを抗癌剤5-フルオロウラシルに転化するのに有用なシトシンデアミナーゼ;プロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL)で、ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なもの;D-アミノ酸置換基を含むプロドラッグの転化に有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;炭水化物切断酵素、例えばグリコシル化プロドラッグを遊離の薬剤に転化するのに有用なノイラミニダーゼ及びOガラクトシダーゼ;Pラクタムで誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化させるのに有用なPラクタマーゼ;及びペニシリンアミダーゼ、例えばそれぞれフェノキシアセチル又はフェニルアセチル基で、それらのアミン性窒素において誘導体化された薬剤を遊離の薬剤に転化するのに有用なペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれる。あるいは、「アブザイム」としてもまた知られている酵素活性を有する抗体を、遊離の活性薬剤に本発明のプロドラッグを転化させるために使用することもできる(例えば、Massey, Nature 328:457-458(1987)を参照)。B細胞アンタゴニスト-アブザイムコンジュゲートは、ここで記載されているようにして、細胞集団又は組織にアブザイムを送達するために調製することができる。
【0059】
酵素は、当該分野においてよく知られている技術、例えば上で検討したヘテロ二官能性架橋試薬を使用することにより、B細胞アンタゴニストに共有的に結合させることができる。あるいは、本発明のB細胞アンタゴニストの少なくとも抗原結合領域を酵素の少なくとも機能的に活性な部位に結合せしめてなる融合タンパク質を、当該技術においてよく知られている組換えDNA技術を使用して作成することができる(例えばNeuberger等, Nature 312:604-608(1984)参照。
B細胞アンタゴニストの他の修飾がここで考慮される。例えば、B細胞アンタゴニストは、様々な非タンパク質性(nonproteinaceous)のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン類、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのコポリマーのいずれかに結合させてもよい。
【0060】
B細胞アンタゴニストへの結合のために用いることができる例示的なポリマーは、ポリアルキレングリコール(PEG)である。PEG成分、例えば1、2、3、4又は5つのPEGポリマーは各々のB細胞アンタゴニストに結合して、B細胞アンタゴニスト単独と比較して血清半減期を増加しうる。PEG成分は非抗原性で、基本的に生物学的に不活性である。本発明の実施に用いられるPEG成分は、分枝状又は非分枝状であってもよい。
B細胞アンタゴニストに付着するPEG成分の数及び個々のPEG鎖の分子量は異なりうる。一般に、ポリマーの分子量が高ければ高いほど、ポリペプチドに付着するポリマー鎖が少なくなる。通常、B細胞アンタゴニストに付着する総ポリマー量は、20kDaから40kDaである。ゆえに、1つのポリマー鎖が付着される場合、鎖の分子量は一般に20〜40kDaである。2つの鎖が付着される場合、各々の鎖の分子量は一般に10〜20kDaである。3つの鎖が付着される場合、分子量は一般に7〜14kDaである。
【0061】
ポリマー、例えばPEGは、ポリペプチド上の任意の好適な露出した反応基を介してB細胞アンタゴニストに連結されうる。露出した反応基(一又は複数)は、例えば、N末端アミノ基又は内部リジン残基のεアミノ基、又はその両方であってもよい。活性化されたポリマーは反応して、B細胞アンタゴニスト上の任意の遊離アミノ基で共有結合してもよい。また、(利用可能であれば)B細胞アンタゴニストの遊離したカルボン酸基、最適に活性化されたカルボニル基、ヒドロキシル、グアニジル、イミダゾール、酸化炭化水素成分及びメルカプト基は、ポリマー付着のための反応基として用いることができる。
コンジュゲート反応において、ポリペプチドの濃度によって、典型的にはポリペプチドの1モルにつきおよそ1.0からおよそ10モルの活性化されたポリマーが用いられる。通常、B細胞アンタゴニストの所望の薬理活性を損ないうる副作用(しばしば非特異的なもの)を最小限に抑えながら反応を最大限にするバランスを表す比率を選択する。好ましくは、B細胞アンタゴニストの少なくとも50%の生物活性(例えば本明細書又は当分野で公知の何れかのアッセイにおいて、示される)が保持され、最も好ましくはほぼ100%が保持される。
【0062】
ポリマーは、従来の化学反応を用いてB細胞アンタゴニストにコンジュゲートされうる。例えば、ポリアルキレングリコール成分は、B細胞アンタゴニストのリジンεアミノ基にカップリングしてもよい。リジン側鎖への結合は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性エステル、例として、PEGスクシンイミジルスクシナート(SS-PEG)及びスクシンイミジルプロピオン酸(SPA-PEG)により行われうる。適切なポリアルキレングリコール成分には、例えば、カルボキシメチル-NHS及びノルロイシン-NHS, SCが含まれる。これらの試薬は市販されている。更なるアミン反応性PEGリンカーは、スクシンイミジル成分と置換されてもよい。これらには、例えば、イソチオシアネート、ニトロフェニルカルボネート(PNP)、エポキシド、ベンゾトリアゾールカルボネート、SC-PEG、トレシレート(tresylate)、アルデヒド、エポキシド、カルボニルイミダゾール及びPNPカルボネートが含まれる。条件は、通常、反応の選択性及び程度を最大にするために最適化される。反応条件のこのような最適化は、当分野の通常の技術の範囲内である。
【0063】
PEG化(PEGylation)は、当分野で公知の何れかのPEG化により行われうる。例として、Focus on Growth Factors, 3: 4-10, 1992及び欧州特許第0154316号及び欧州特許第0401384号を参照のこと。PEG化は、反応性ポリエチレングリコール分子(又は、類似した反応性水溶性ポリマー)とのアルキル化反応又はアシル化反応を用いて行われてもよい。
一般に、アシル化によるPEG化は、ポリエチレングリコールの活性なエステル誘導体の反応を伴う。PEG化に任意の反応性PEG分子が用いられうる。N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)にエステル化されるPEGは、頻繁に使われる活性化されたPEGエステルである。本明細書中で用いられる「アシル化」には、治療的タンパク質とPEGなどの水溶性ポリマーとの結合の以下の種類:アミド、カルバメート、ウレタンなどがあるが、これらに限定するものではない。例としてBioconjugate Chem. 5: 133-140, 1994を参照のこと。反応パラメーターは、通常、B細胞アンタゴニストを障害するか又は不活性化する温度、溶媒及びpH条件を避けるために選択される。
【0064】
通常、連結結合はアミドであり、典型的に、結果として生じる生成物の少なくとも95%はモノ-、ジ-又はトリ-PEG化されている。しかしながら、高い程度のPEG化を有するいくつかの種は、使用する特定の反応条件に依存した量で形成されうる。場合によって、精製されPEG化された種は、従来の精製方法、例えば透析、塩析、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過クロマトグラフィ、疎水性交換クロマトグラフィ及び電気泳動によって、混合物、特に反応していない種から分離される。
一般に、アルキル化によるPEG化は、還元剤の存在下において、本発明のB細胞アンタゴニストとPEGの終末アルデヒド誘導体との反応を伴う。加えて、実質的にB細胞アンタゴニストのN末端アミノ基にのみPEG化を働かせるように反応条件を操作してもよい。これはすなわちモノ-PEG化されたタンパク質である。モノ-PEG化又はポリ-PEG化のいずれかの場合、PEG基は、一般的に-CH2-NH-基を介してタンパク質に付着される。特に-CH2-基に関して、この種の結合は「アルキル」結合として知られている。
【0065】
N末端を標的とするモノ-PEG化された生成物を産生するために還元型のアルキル化による誘導体化は、誘導体化に利用可能な異なる種類の第一アミノ基(N末端に対するリジン)の差動的反応性を利用する。反応は、リジン残基のε-アミノ基とタンパク質のN末端アミノ基のものとのpKa差動を利用し得るpHで行われる。このような選択的な誘導体化によって、アルデヒドなどの反応基を含有する水溶性ポリマーのタンパク質への付着は制御される。ポリマーとのコンジュゲートがタンパク質のN末端で主に起こり、リジン側鎖アミノ基などの他の反応基の有意な修飾は起こらない。
【0066】
アシル化手法及びアルキル化手法に用いられるポリマー分子は、水溶性ポリマーの中から選択される。本方法で示されるように重合の程度が制御されうるように、選択されるポリマーは一般的に、アシル化のための活性なエステル又はアルキル化のためのアルデヒドなどの単一の反応基を有するように修飾される。例示的な反応性PEGアルデヒドはポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドであり、水安定性であるか、又はモノC1-C10アルコキシ基又はそのアリールオキシ誘導体である(例としてHarris等、米国特許第5252714号を参照)。ポリマーは、分枝状か又は非分枝状でもよい。アシル化反応のために、一般的に選択されるポリマー(一又は複数)は、単一の反応性エステル基を有する。還元性アルキル化のために、一般的に選択されるポリマー(一又は複数)は、単一の反応性アルデヒド基を有する。一般に、水溶性ポリマーは、通常哺乳類組み換え発現系によって、都合よく作製されるので、天然に生じるグリコシル残基から選択されないであろう。
【0067】
一般に、本発明のPEG化されたB細胞アンタゴニストの調製方法は、(a) 分子が一又は複数のPEG基に付着するような条件下で本発明のB細胞アンタゴニストとポリエチレングリコール(例として、PEGのアルデヒド誘導体又は反応性エステル)とを反応させる、そして(b) 反応生成物(一又は複数)を得る工程を含む。一般に、アシル化反応のための最適反応条件は、既知のパラメーター及び所望の結果に基づいて個別的に決定されるであろう。例えば、一般に、タンパク質に対してPEGの比率が大きければ、ポリ-PEG化された生成物の割合が大きくなる。
一般に、実質的に均一なモノ-ポリマー/B細胞アンタゴニストの集団を生成するための還元性アルキル化は、(a) NgRのN末端アミノ基の選択的な修飾をペンニット(pen-nit)するために好適なpHで、還元性アルキル化条件下で反応性PEG分子と本発明のB細胞アンタゴニストとを反応させる。そして、(b) 反応生成物(一又は複数)を得る工程を含んでなる。
【0068】
実質的に均一なモノ-ポリマー/B細胞アンタゴニストの集団について、還元性アルキル化反応条件は、本発明のB細胞アンタゴニストのN末端への水溶性ポリマー成分の選択的な付着を可能にするものである。このような反応条件により一般に、リジン側鎖アミノ基とN末端アミノ基との間のpKa差が生じる。本発明の目的を達成するために、pHは、通常、3〜9、典型的には3〜6の範囲である。
本発明のB細胞アンタゴニストはtag、例えばタンパク質分解に引き続いて放出されうる成分、を含んでもよい。ゆえに、リジン成分は、まず、リジンとN末端の両方と反応するであろうトラウト試薬(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)などの低分子量のリンカーにより修飾されたHis-タグを反応させて、次いでHisタグを放出することによって、選択的に修飾できる。次いで、ポリペプチドは、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基又は遊離ないしは保護されたSHなどのチオール反応性頭基を含有するPEGによって、選択的に修飾されうる遊離型SH基を含有するであろう。
【0069】
トラウト試薬は、PEG付着に特異的な部位を提供する任意のリンカーにより置換されてもよい。例えば、トラウト試薬は、SPDP、SMPT、SATA又はSATP (Pierce Chemical Company, Rockford, IL)により置換されてもよい。同様に、マレイミド(例えばSMCC、AMAS、BMPS、MBS、EMCS、SMPB、SMPH、KMUS又はGMBS)、ハロアセテート基(SBAP、SIA、SIAB)又はビニルスルホン基を挿入するアミン反応性のリンカーとタンパク質とを反応させ、遊離型SHを含有するPEGと結果として生じる生成物とを反応させることもできる。
いくつかの実施形態では、ポリアルキレングリコール成分は、B細胞アンタゴニストのシステイン基にカップリングする。カップリングは、例えば、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基又はチオール基を用いて行ってもよい。
【0070】
場合によって、B細胞アンタゴニストは、不安定な結合によってポリエチレングリコール成分にコンジュゲートされる。不安的な結合は、例えば生化学的加水分解、タンパク質分解又はスルフヒドリル切断において切断されうる。例えば、この結合はインビボ(生理学的な)条件下で切断されうる。
反応基がN末端のαアミノ基上にある場合、反応は、不活性ポリマーと生物学的に活性な材料を反応させるために用いる任意の適切な方法によって、一般におよそpH5〜8、例えばpH5、6、7又は8で起こる。通常、この過程には、活性化されたポリマーを調製して、その後活性化されたポリマーとタンパク質を反応させて製剤に適切な可溶性タンパク質を生産することが伴う。
【0071】
また、ここに開示する抗体はリポソームとして調製してもよい。B細胞アンタゴニストを含むリポソームは、Epstein等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985);Hwang等, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980);及び米国特許第4485045号及び第4544545号;及び国際公開第97/38731号に記載されたような、当分野で知られた方法で調製される。向上した循環時間を持つリポソームは、米国特許第5013556号に開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成されうる。リポソームは、所定の孔径のフィルターを通して押し出され、所望の径を有するリポソームが生成される。本発明の抗体のFab'断片は、Martin等, J. Biol. Chem. 257:286-288 (1982)に記載されているように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームにコンジュゲートされ得る。化学治療薬は、場合によってはリポソーム内に包含される。Gabizon等, J. National Cancer Inst., 81(19): 1484 (1989)参照。
【0072】
ここで記載のタンパク質又はペプチドB細胞アンタゴニストのアミノ酸配列の修飾を考察する。例えば、B細胞アンタゴニストの結合親和性及び/又は他の生物学的特性が改善されることが望ましい。
B細胞アンタゴニストのアミノ酸配列変異体は、適当なヌクレオチド変化をB細胞アンタゴニストコード化核酸に導入することにより、又はペプチド合成により調製される。そのような修飾は、例えば、B細胞アンタゴニストのアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終コンストラクトに達するまでなされるが、その最終コンストラクトは所望の特徴を有する。また、アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化などのB細胞アンタゴニストの翻訳後過程を変更しうる。
【0073】
突然変異のための好ましい位置にあるB細胞アンタゴニストの特定の残基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham及びWells , Science 244: 1081-1085 (1989)に記載されているように「アラニンスキャンニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、標的残基の残基又は基が同定され(例えば、arg, asp, his, lys,及びglu等の荷電残基)、中性又は負荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置換される。次いで置換に対する機能的感受性を示すこれらのアミノ酸の位置は、置換部位において又はそれに対して更に又は他の置換を導入することにより精密にされる。即ち、アミノ酸配列変異を導入する部位は予め決定されるが、変異自体の性質は予め決める必要はない。例えば、与えられた部位における変異の性能を分析するために、alaスキャンニング又はランダム突然変異誘発を標的コドン又は領域で実施し、発現されたB細胞アンタゴニスト変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0074】
アミノ酸配列挿入は、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合物、並びに一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N-末端メチオニル残基を持つB細胞アンタゴニスト又は細胞障害ポリペプチドに融合したB細胞アンタゴニストを含む。B細胞アンタゴニストの他の挿入変異体は、B細胞アンタゴニストの血清半減期を向上させるポリペプチド又は酵素のB細胞アンタゴニストのN-ないしはC-末端への融合物を含む。
他の種類の変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基によって置換されたB細胞アンタゴニスト分子に少なくとも一つのアミノ酸残基を有する。抗体B細胞アンタゴニストの置換突然変異の最も対象となる部位は高度可変領域を含むが、FR変化も考慮される。
保存的置換は、「好ましい置換」と題して以下の表2に示す。これらの置換により生物学的活性に変化が生じる場合、表2に「例示的置換」と称した又はアミノ酸の分類を参照して以下に更に記載するような、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングしてよい。
【0075】
表2
【0076】
B細胞アンタゴニストの生物学的性質における実質的な修飾は、(a)置換領域のポリペプチド骨格の構造、例えばシート又はヘリックス配置、(b)標的部位の分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖の嵩を維持するそれらの効果において実質的に異なる置換を選択することにより達成される。天然に生じる残基は共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性の親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖配向に影響する残基:gly、pro; 及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
非保存的置換は、これらの分類の一つのメンバーを他の分類に交換することを必要とするであろう。
【0077】
B細胞アンタゴニストの適切な高次構造を維持するために関与しない任意のシステイン残基も、一般的には、セリンと置換して、分子の酸化的安定性を改善して、異常な交差を防いでもよい。逆に、システイン結合をB細胞アンタゴニストに付加して、その安定性を改善してもよい(特にこの場合、B細胞アンタゴニストはFv断片などの抗体断片である)。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体の一又は複数の高頻度可変領域残基の置換を含む。一般的に、さらなる開発のために選択され、得られた変異体は、それらを生成した親抗体と比較して向上した生物学的特性を有するであろう。そのような置換変異体を作製する簡便な方法には、ファージディスプレイを使用する親和性突然変異がある。簡潔に言えば、幾つかの高頻度可変領域部位(例えば6−7部位)を突然変異させて各部位における全ての可能なアミノ酸置換を生成させる。このように生成された抗体変異体は、繊維状ファージ粒子から、各粒子内に充填されたM13の遺伝子III産物への融合物として一価様式でディスプレイされる。ついで、ファージディスプレイ変異体は、ここに開示されるようなそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補となる高頻度可変領域部位を同定するために、アラニンスキャンニング突然変異誘発を実施し、抗原結合に有意に寄与する高頻度可変領域残基を同定することができる。別法として、又はそれに加えて、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して抗体と抗原の接点を特定するのが有利である場合もある。このような接触残基及び隣接残基は、ここに述べた技術に従う置換の候補である。そのような変異体が生成されると、変異体のパネルにここに記載するようなスクリーニングを施し、一又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を持つ抗体を更なる開発のために選択する。
【0078】
B細胞アンタゴニストのアミノ酸変異の他の型は、B細胞アンタゴニストの元のグリコシル化パターンを変更する。変更とは、B細胞アンタゴニストに見い出される一又は複数の糖鎖部分の欠失、及び/又はB細胞アンタゴニストに存在しない一又は複数のグリコシル化部位の付加を意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合の何れかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を意味する。アスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(ここでXはプロリンを除く任意のアミノ酸)のトリペプチド配列は、アスパラギン側鎖への糖鎖部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列の何れかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作出される。O結合グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンに、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースなどの糖類の一つが結合することを意味するが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンもまた用いられる。
【0079】
B細胞アンタゴニストへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を、それが一又は複数の上述したトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位のもの)を含むように変化させることによって簡便に達成される。該変化は、元のB細胞アンタゴニストの配列への一又は複数のセリン又はスレオニン残基の付加、又はこれによる置換によってもなされる(O-結合グリコシル化部位の場合)。
【0080】
抗体がFc領域を含有する場合、それに接着する炭水化物を変更してもよい。例えば、抗体のFc領域に接着するフコースを欠損する成熟炭水化物構造の抗体は、米国特許公開第2003/0157108号に記載される。抗体のFc領域に接着した炭水化物内のN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を二分する抗体は、国際公開第03/011878号、及び米国特許第6602684号に参照されている。抗体のFc領域に接着するオリゴサッカライド内の少なくとも一のガラクトース残基を有する抗体は、国際公開第97/30087号に報告される。また、抗体のFc領域に接着する変更された炭水化物を有する抗体については、国際公開第98/58964号及び国際公開第99/22764号も参照のこと。
【0081】
B細胞アンタゴニストのアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、この分野で知られた種々の方法によって調製される。これらの方法は、限定するものではないが、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異体の場合)又は初期に調製されたB細胞アンタゴニストの変異体又は非変異体のオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及びカセット突然変異誘発による調製を含む。
エフェクター機能に関して、例えばB細胞アンタゴニストの抗原依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)及び/又は補体依存性細胞毒性(CDC)を向上させるために、本発明のB細胞アンタゴニストを修飾することが望ましい。このことは、抗体B細胞アンタゴニストのFc領域に一又は複数のアミノ酸修飾を導入することで達成される。あるいは又は加えて、Fc領域にシステイン残基を導入することによってこの領域での鎖間のジスルフィド結合形成が起こりうる。故に、生成されたホモ二量体抗体は内部移行能を向上及び/又は補体媒介性細胞障害及びADCCを増強する。Caron等, J. Exp Med. 176:1191-1195 (1992) 及びShopes, B. J. Immunol. 148:2918-2922 (1992)を参照。抗線維形成活性が亢進されたホモ二量体抗体もまた、Wolff等, Cancer Research 53:2560-2565 (1993)に記載されているような異種性二機能性交差結合を用いて調製されうる。又は、抗体を二重のFc領域を持つように操作して、それによって補体媒介性溶解及びADCC能を亢進した。Stevenson等, Anti-Cancer Drug Design 3:219-230 (1989)を参照。国際公開第00/42072号は、抗体がそのFc領域内にアミノ酸置換を含有する場合のヒトエフェクター細胞の存在下で改善されたADCC機能を有する抗体を述べる。
【0082】
変更したC1q結合及び/又は補体依存性細胞障害活性(CDC)を有する抗体については、国際公開第99/51642号、米国特許第6194551号B1、米国特許第6242195号B1、米国特許第6528624号B1及び米国特許第6538124号 に記載される。抗体は、そのFc領域のアミノ酸位置270、322、326、327、329、313、333及び/又は334の一以上にアミノ酸置換を含有する。
B細胞アンタゴニストの血清半減期を延長するために、例として米国特許第5739277号に記載されているようにB細胞アンタゴニスト(特に抗体断片)内にサルベージレセプター結合エピトープを組み込む方法がある。ここで用いる、「サルベージレセプター結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期延長に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)のFc領域のエピトープを表す。また、Fc領域内に置換を有し、血清半減期が延長された抗体は国際公開第00/42072号に記載される。
3つ以上(好ましくは4つ)の機能的抗原結合部位を有する遺伝的に操作した抗体もまた考慮される(米国公開特許第2002/0004587号)。
【0083】
B細胞アンタゴニストの製剤と投与
本発明のB細胞アンタゴニストは治療用製剤の形態で患者に投与されるのが好ましい。本発明に関連して使用されるB細胞アンタゴニストの治療的剤形は、所望の純度を有するB細胞アンタゴニストを選択的に薬剤的許容可能な担体、賦形剤、安定剤と混合して凍結乾燥の剤形又は液状溶液の形態の貯蔵に適するものである(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に非毒性であり、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;ベンズアルコニウムクロライド;ベンズエトニウムクロライド;フェノール;ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及び他の炭水化物EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)又はTWEENTM、PLURONICSTM、又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0084】
例示的抗CD20抗体の剤形は国際公開第98/56418号に記載されており、出典明記により特別に本明細書中に援用される。この公報は、2−8℃で2年間の最小限の貯蔵期間を持つように、リツキシマブ40mg/mL、25mM酢酸塩、150mMトレハロース、0.9%ベンジルアルコール、及び0.02%ポリソルベート20, pH5.0を含む液状複数回用量の剤形である。他の抗CD20剤形は、リツキシマブ10mg/mL、塩化ナトリウム9.0mg/mL、クエン酸ナトリウム二水和物7.35mg/mL、ポリソルベート80 0.7mg/mL、及び注入用の滅菌水を含むpH 6.5のものである。
凍結乾燥剤形は米国特許第6267958号に記載されるように、皮下的投与に適する。そのような凍結乾燥剤形は適当な希釈剤で高いタンパク質濃度に再編成されるかもしれない、また再編成された剤形はここで治療される患者に皮下注射されうる。
【0085】
また、本明細書中の製剤は、治療される特定の徴候のための必要に応じて、一以上の活性な化合物、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有するものを含有してもよい。例えば、細胞障害性剤、化学療法剤、サイトカイン、TGFβ経路の阻害剤(例えば、TGFβ活性化のモノクローナル抗体、ペプチド、小分子アンタゴニスト、阻害剤)、インテグリンレセプターアンタゴニスト、又は免疫抑制剤(例えば、T細胞に作用するもの、例としてT細胞を結合する抗体又はシクロスポリン、例えばLFA-1を結合するもの)を更に供給するのが望ましい。このような他の薬剤の有効量は、製剤に存在するB細胞アンタゴニストの量、疾患又は疾病又は治療の種類、及び他の要因に依存する。
また、B細胞アンタゴニストは、例としてコアセルべーション技術又は界面重合化により調製したマイクロカプセル、例として、コロイド状のドラッグデリバリーシステム(例として、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)又はマクロエマルジョン中のそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタサイクリン)マイクロカプセル中に包まれているかもしれない。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
【0086】
B細胞アンタゴニストの持続性徐放剤が調製される。持続性徐放剤の好適な例は、B細胞アンタゴニストを含む固形疎水性ポリマーの準透過性基質を含むものであり、基質は、造形品、例としてフィルム、又はマイクロカプセルの形である。持続性徐放基質の例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号), L-グルタミン酸及びエチルLグルタミン酸の共重合体、非分解性のエチレンビニール酢酸塩、分解性の乳酸グリコール酸共重合体、例としてLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸共重合体及びロイプロリド酢酸塩で構成された注入可能ミクロスフェア)、及びポリD-(−)-3ヒドロキシブチリン酸を含む。
インビボ投与のために使用される製剤は無菌でなければならない。これは濾過滅菌メンブレンによる濾過によって容易に達成されうる。
【0087】
B細胞アンタゴニストは、非経口、皮下、腹腔内、肺内、及び鼻腔内を含む任意の適切な方法により投与されうる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、又は皮下投与が含まれる。加えて、B細胞アンタゴニストは、例えばB細胞アンタゴニストを漸減しながらパルス注入によって、適切に投与されてもよい。好ましくは、投薬は、投与が短期のものであるか長期のものであるかにある程度依存して、注射、最も好ましくは静脈内注射又は皮下注射により行われる。
【0088】
本発明の特定の例示的実施形態では、B細胞アンタゴニストは、(例えば、静脈内に) 1mg/m2から500mg/m2の用量で患者に投与される。例えば、B細胞アンタゴニストは、1mg/m2、2mg/m2、3mg/m2、4mg/m2、5mg/m2、10mg/m2、15mg/m2、20mg/m2、25mg/m2、30mg/m2、35mg/m2、40mg/m2、45mg/m2、50mg/m2、55mg/m2、60mg/m2、65mg/m2、70mg/m2、75mg/m2、80mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、95mg/m2、100mg/m2、105mg/m2、110mg/m2、115mg/m2、120mg/m2、125mg/m2、130mg/m2、135mg/m2、140mg/m2、145mg/m2、150mg/m2、155mg/m2、160mg/m2、165mg/m2、170mg/m2、175mg/m2、180mg/m2、185mg/m2、190mg/m2、195mg/m2、200mg/m2、205mg/m2、210mg/m2、215mg/m2、220mg/m2、225mg/m2、230mg/m2、235mg/m2、240mg/m2、245mg/m2、250mg/m2、255mg/m2、260mg/m2、265mg/m2、270mg/m2、275mg/m2、280mg/m2、285mg/m2、290mg/m2、295mg/m2、300mg/m2、305mg/m2、310mg/m2、315mg/m2、320mg/m2、325mg/m2、330mg/m2、335mg/m2、340mg/m2、345mg/m2、350mg/m2、355mg/m2、360mg/m2、365mg/m2、370mg/m2、375mg/m2、380mg/m2、385mg/m2、390mg/m2、395mg/m2又は400mg/m2の用量で投与されてもよい。
【0089】
B細胞アンタゴニストは、多種多様な投薬計画に従って投与されてもよい。(例として米国特許出願公開第2006/0002930号を参照)。例えば、B細胞アンタゴニストは、予め決められた期間(例えば4〜8週又はそれ以上)の間1日に1回、又は、週ごとの計画(例えば1週につき1日、1週につき2日、1週につき3日、1週につき4日、1週につき5日、1週につき6日又は1週につき7日)に従って、予め決められた期間(例えば4〜8週又はそれ以上)の間、投与されてもよい。「1週間に1回」の投薬計画の具体的な例は、治療期間の1日目、8日目、15日目及び22日目のB細胞アンタゴニストの投与である。代替的な実施態様では、B細胞アンタゴニストは、数か月にわたって間欠的に投与されてもよい。例えば、B細胞アンタゴニストは、半年ごとに連続する3週間の間毎週)投与されてもよい(すなわち、6か月ごとに週1回の投薬を繰り返す)。このような投薬計画は、初期治療によって、生じる有益な治療効果を維持するために、延長して(年単位で)続けられてもよい。更なる他の実施態様では、このような維持療法は、線維形成状態の即時型の症状を低減するように設定された急性期投薬措置の後に行われてもよい。
治療期間中のそれぞれの時期に投与されるB細胞アンタゴニストの量は同じでもよい。これに対して、治療期間中のそれぞれの時期に投与される量は、異なっていてもよい(例えば、ある時点に投与される量はその前に投与された量より多くても少なくてもよい)。例えば、維持療法の間に投与される用量は、治療の急性期の間に投与される量より少なくてもよい。特定の状況に応じて適切な投薬計画は、当業者に明らかであろう。
【0090】
患者へのタンパク質B細胞アンタゴニストの投与の他に、本出願は、遺伝子治療によるB細胞アンタゴニストの投与を考慮する。B細胞アンタゴニストをコードする核酸のこのような投与は、「治療的有効量のB細胞アンタゴニストがこの治療を必要とする患者に投与される」という表現により包含される。例として、細胞内抗体を生成するための遺伝子治療の使用に関しては、国際公開第96/07321号を参照のこと。
患者の細胞内への核酸(場合によって、ベクターに含まれている)の取り込みには2つの主な手法があり、それはインビボとエクスビボである。インビボ運搬のために、通常患者のB細胞アンタゴニストが必要である部位に核酸が直接注入される。エクスビボ治療のために、患者の細胞が取り除かれ、核酸がこれら単離した細胞内に導入され、変更した細胞が直接又は、例えば、患者内に着床される多孔性膜内に被包して患者に投与される(例として米国特許第4892538号および同第5283187号を参照)。核酸を生きた細胞に導入するために有用な様々な技術がある。技術は、核酸が対象とする宿主の細胞内にインビボで移入されるか、又はインビトロで培養細胞に形質移入されるかの何れかによって、異なる。インビトロでの哺乳動物細胞への核酸の移入に適する技術には、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、などの使用が含まれる。遺伝子のエクスビボ運搬のために一般的に用いられるベクターはレトロウィルスである。
【0091】
例示的なインビボ核酸移入技術には、ウイルスベクター(例として、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス又はアデノ関連ウイルス)及び脂質ベースのシステム(遺伝子の脂質が媒介する移入に有用な脂質は、例えばDOTMA、DOPE及びDC-Cholである)を用いる形質移入が含まれる。場合によっては、標的細胞を標的とする薬剤、例えば細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンドなどにより核酸供給源を提供するのが好ましい。リポソームを用いる場合、エンドサイトーシスに関係する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定の種類の細胞に対するキャプシドタンパク質ないしはその断片、循環への内部移行を起こすタンパク質に対する抗体、並びに、細胞内局在化を標的とするタンパク質及び細胞内半減期を上げるタンパク質は、ターゲティングのため及び/又は取込を促すために用いられてもよい。レセプターが媒介するエンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem. 262:4429-4432 (1987)、Wagner等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414 (1990)に記載されている。遺伝子マーキング及び遺伝子治療プロトコールの概要については、Anderson等, Science 256:808-813 (1992)を参照のこと。また、国際公開第93/25673号及びそこに引用される文献を参照のこと。
【0092】
B細胞アンタゴニストと他の薬剤との併用
本発明の特定の実施態様では、複数の種類のB細胞アンタゴニストは他と組み合わされて、一又は複数の線維形成状態を治療するために患者に投与される。例えば、本発明は、出典明記によって、本明細書中にその全体が援用される米国特許出願公開第2005/0095243号及び本明細書中の他の箇所に記載されるBAFFアンタゴニストとCD20に対する抗体(例えばリツキシマブ)の治療的に有効な量が患者に投与されることを含む、線維形成状態の治療方法を包含する。複数のB細胞アンタゴニストが患者に投与される場合、異なるB細胞アンタゴニストは単一の医薬組成物中に合わせて投与されてもよいく、好ましくは、何れかの順番で異なる投与で続けて投与されてもよい。
【0093】
また、本発明は、第一薬剤と第二薬剤を含む組合せが必要とする患者に投与されることを含み、このときの該第一薬剤がB細胞アンタゴニストであり、該第二薬剤が、一又は複数の線維形成状態を治療するために有用であるが、必ずしもB細胞アンタゴニストではない薬剤である、線維形成状態の治療方法を包含する。例えば、本発明の特定の実施態様によると、B細胞アンタゴニストは、一又は複数のインテグリンレセプター(例えば、α1β1、αvβ6、αvβ8、αvβ5、α5β1、α4β1、α4β7など)のアンタゴニスト、例えば、一又は複数のインテグリンレセプター(例えば、α1β1、αvβ6、αvβ8、αvβ5、α5β1、α4β1、α4β7など)に特異的な抗体、ポリペプチドアンタゴニスト及び/又は小分子アンタゴニストとともに、患者に投与される。(米国特許第6652856号及び同第6692741号、及び米国特許出願公開第2004/0248837号、同第2004/0208878号、同第2002/0004482号、同第2005/0255102号、及び同第2005/0226885号)。本発明において、α4β1インテグリンレセプターに特異的に結合し、線維形成状態の治療のためにB細胞アンタゴニストと組み合わせて用いられうる抗体の例は、米国公開特許第2005/0276803号に記載のナタリズマブ(Tysabri(登録商標))である。
【0094】
本発明の態様の特定の実施態様では、B細胞アンタゴニストとともに投与される第二薬剤は、例えばステロイド、細胞障害性剤、コルヒチン、酸素、抗酸化剤(例えば、N-アセチルシステイン)、金属キレーター(例えば、テラチオモリブデート)、IFN-γ又はαアンチトリプシンである。特定の実施態様では、第二薬剤は、例えばBtkの小分子阻害剤を含むBtkの阻害剤であってもよい。特定の実施態様では、第二薬剤は、例えばTWEAKの抗体及び小分子阻害剤を含むTWEAKの阻害剤であってもよい。さらに他の実施態様では、第二薬剤は、LTBRアンタゴニスト(例えば可溶性融合タンパク質又は抗体)、米国特許第7030080号及び同第7001921号を参照、又は、TRAIL-R2のアンタゴニストを含んでもよい。
【0095】
本発明の態様の特定の実施態様によると、B細胞アンタゴニストとともに投与される第二薬剤は、例えば、TGF-β経路阻害剤であってもよい。本発明において、用いられうる例示的なTGF-β経路阻害剤は、TGF-βシグナル伝達経路の一又は複数の構成因子、例えばAng II、IL-1、IL-4、IL-10、IL-13、MIF、PDGF、RAGE、AGE、TNF-α、トロンボスポンジン-1、VLA-I、SMAD-2、SMAD-3(米国公開特許第2003/0139366号)、SMAD-4、ERK、pl5、Ink4b、p21 Waf1、p27Kip1、p-38、CTGF(米国公開特許第2004/0248206号)、PAI-1、PTHrP、エンドセリン-1、ファルネソイドX、HGF、IGF-1、MMP-1、MMP-9、PGE2、プロピルヒドロキシラーゼ、プロコラーゲン、フィブリリン、TIMP、CXCR4、CXCL12、CCR2、CCL2、CCL-7及びCCL-22を阻害又は中和する抗体、合成ないしは天然の配列ペプチド及び小分子を含むが、これに限定されるものではない。本発明において、用いられうる他の例示的なTGF-β経路阻害剤は、例えば、TGF-βリガンド及びレセプターアンタゴニスト、例えば抗体、可溶性TGF-βRII-Fc融合タンパク質、LAP-Fc融合タンパク質、TGF-βRI又はRIIキナーゼ阻害剤及びTGF-βRIIの下流の小分子阻害剤を含むが、これに限定されるものではない。
【0096】
本発明においてB細胞アンタゴニストとともに投与されうる更なる薬剤は、例えばピルフェニドン、エンドセリンアンタゴニスト、TNF-α阻害剤、PDGF阻害剤、CTGF阻害剤、CD40リガンドアンタゴニスト(米国特許第6506383号)、BCMA-Ig、P38 MAPキナーゼ阻害剤、プレドニゾン、チトキサン及びアザチオプリンを含む。
本発明において線維形成状態を治療するためにB細胞アンタゴニストと組み合わせて用いられうる特定の例示的な臨床製品は、表3に挙げるものを含む。
【0097】
表3
【0098】
キット
また、本発明は線維形成状態を治療するためのキットを包含する。本発明のキットは、少なくとも1つの容器がB細胞アンタゴニストを含む、一又は複数の容器を具備する。本明細書中の他の箇所に記載されるB細胞アンタゴニストの何れかが本発明のキットに内包されていてもよい。また、本発明のキットは、線維形成状態を治療するためにB細胞アンタゴニストと組み合わせて投与されうる一又は複数の付加的な薬剤を含んでなる一又は複数の容器を具備してもよい。このような付加的な薬剤は、本明細書の他の箇所に記載される。場合によって、キットは、線維形成状態を治療するための指示書の一又は複数を具備してもよい。指示書は、とりわけ、患者に投与される他の薬剤及び/又はB細胞アンタゴニストの量に関する情報、投与のタイミング及び頻度、考えられる投与の手段、及びB細胞アンタゴニスト及び/又は他の薬剤が投与されなければならない患者により表される特徴及び/又は症状が含まれうる。
【0099】
本明細書中に記載される方法及び施行に対するの他の適切な変更及び応用は明らかであり、本発明又はその任意の実施態様の範囲から逸脱しないものであろう。ここで、本発明を詳細に記載しているので、以下の実施例を参照することで同じことがより明確に理解されるであろう。この実施例は、例示の目的で本明細書中に包含されており、本発明を限定するためのものではない。
【実施例】
【0100】
実施例1 B細胞非存在下における肝線維症の減弱
序論
慢性肝疾患、例として、アルコール誘発性肝臓変性、C型肝炎感染、非アルコール誘発性脂肪性肝炎の特徴は、慢性炎症、細胞性障害、再生及び線維症である。これらの特徴の全ては、度重なる四塩化炭素(CCl4)誘発性の肝障害により惹起されうる。(Jungermann及びKatz, Physiol. Rev. 69: 708-764 (1989);Friedman, Semin. Liver Dis. 19: 129-140 (1999))。この実施例では、CCl4-誘発性線維形成を、野生型マウス及びB細胞欠失マウスにおいて評価した。
代替モデルにおいて、肝障害は胆汁毒素α-ナフチルイソチオシアナート(ANIT)により誘発され、胆汁肝硬変及び硬化性胆管炎と類似した症状を呈する。(Tjandra等, Hematology 31:280-290 (2000))。CCl4に類似のANITは炎症及び線維形成応答に続いて非免疫性の細胞標的肝毒性を引き起こすが、CCl4と比べてその場所は肝解剖学的に異なる場所であった。
CCl4治療の6週間後、組織化学的分析によると、同じように治療された野生型マウスと比較してB細胞欠失マウスではコラーゲン沈着が減少していた。加えて、B細胞の数は正常であるがT細胞を欠いているマウスを分析することによって、B細胞がT細胞非依存的な様式で線維形成に関与することが確認された。ANIT処置JH-/-マウスはコラーゲン沈着に関して同じような結果を示した。
【0101】
材料及び方法
マウス
特に明記しない限り、マウスは、Biogen Idec (Cambridge, MA)の特定病原体不在のマウス施設で飼育された。すべての動物の手続きは、Biogen Idecの施設内動物管理及び利用委員会の承認を得た。表4に挙げる系統の雄マウスは、研究に用いられるためには体重20g以上、少なくとも6週齢でなければならない。
表4
【0102】
CCl4及びANIT障害モデル
ミネラルオイル(Sigma-Aldrich Corp.)とCCl4(Sigma-Aldrich Corp., St. Louis, MO)の混合物は、20ゲージの動物給餌針によって0.2mlの用量を超えないで強制飼養により与えた。3.5mg/kg又は1.75mg/kg用量のCCl4を用いて実験を行った。高用量と比較して、羅病率/死亡率を減らし、なおかつ血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルとコラーゲン沈着の変化を引き起こしたので、後者の用量を選択した。長期実験のため、マウスは、6週間、週に一度強制飼養により与えた。短期実験には1回のCCl4投与が含まれた。
ANIT(1-ナフチルイソチオシアネート、Sigma- Aldrich Corp.)は、30mg/mlでミネラルオイル(Sigma- Aldrich Corp.)に溶解した。マウスに8週間、週に2回、50mg/kgを強制飼養により与えた。
CCl4投与の24時間後に血清ALTレベルを測定した。第6週目の強制飼養後1週間又は単回強制飼養後の示した日に、マウスを屠殺し、それぞれのマウスから3つの異なる肝臓葉を採取し、4%のPFAを含むPBS中で2日間インキュベートして、更なる免疫組織化学分析のために包埋した。
【0103】
肝臓リンパ球単離
CO2吸入によってマウスを安楽死させた。肝門脈は、25Gの針で挿管して、10mlの冷却されたPBSで灌流した。胆嚢の除去の後、肝臓を切片にし、50mlの氷温のRPMI/5%FBSにて70μm孔径の細胞濾過器(BD Falcon, Bedford, MA)に通した。肝臓懸濁液を、1つの肝臓当たり50mlのチューブにて300gで10分間遠心分離した。ペレットを10mlの0.02%コラゲナーゼIV(Sigma- Aldrich Corp.)を含むRPMI1640に再懸濁して、37℃に45分間放置した。30mlの氷温のRPMI/5%FBSを各チューブに加えて、30gで3分間遠心分離した。ペレットを廃棄した。上清を40℃、300gで10分間遠心分離した。細胞ペレットを6mlの氷温のRPMI1640(又は45%パーコール(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)に再懸濁し、24%メトリザミド(Sigma- Aldrich Corp.)を含むPBS(又は、それぞれ、70%パーコール含むPBS)を下層にした。その後、40℃、1000gで2分間遠心分離を行った。境界面のリンパ球を回収し、RPMI75%FBSにて洗浄して、更なる分析のために用いた。
NK-T細胞の肝特異的な増加と、血液B細胞のV-D及びD-J接合部(4.5及び3.4、結果を参照)と比較して、肝内Bリンパ球のV-D及びD-J接合部でのNヌクレオチド挿入の比率が異なる(3.5及び4.4)ことが結果から示されたので、血液リンパ球による肝内リンパ球混入の程度は低い。
【0104】
脾臓、血液及び腹腔からのリンパ球の単離
脾臓をナイロンメッシュ(Cell Strainer;BD Falcon, Bedford, MA)により細かく切り刻んで、DMEM、5%FCS及び2mM L-グルタミン中の細胞浮遊液を得た。赤血球は、溶解バッファ(140mM NH4Cl、17mM トリス-HCl、pH7.65)中で氷上で3分間インキュベートすることによって溶解した。血液は、EDTAを含有しているチューブ(BD Pharmingen, San Diego, CA)に集めた。血液リンパ球を単離するために、200μlの血液をFicoll-Paque(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)の上層に置き、室温、1000gにて20分間遠心分離した。リンパ球を境界面から回収した。腹腔(PC)を5mlのDMEM、5%FCS及び2mM L-グルタミンにて洗浄して、PC白血球を回収した。これらの手順の後、リンパ球は、40℃、300gの遠心分離によって、DMEM、5%FCS及び2mM L-グルタミンにて2回洗浄し、フローサイトメトリー分析のためにPBS/BSA/アジドに、又は、増殖試験のために細胞培養液に再懸濁した。
【0105】
フローサイトメトリ
過去に記載されているように蛍光染色を行った。(Forster及びRajewsky, Eur. J. Immunol. 17:521-528 (1987))。IgM、IgD、CD19、CD23、CD5、CD69、CD86、B220、MHCII、CD43、Mac-1、CD4、CD8 (BD Pharmingen, San Diego CA)又はCD21 (Ebioscience, San Diego, CA )に特異的なアネキシンV、7AAD及び抗体を用いた。抗体は、FITC、PE、APC、PerCP、Cy-クロム又はビオチンにコンジュゲートした。ビオチン化した抗体は、PerCPにコンジュゲートされたストレプトアビジンによって、検出した。染色した細胞を固定して、FACScalibur(BD Biosciences, San Jose, CA)を用いて分析した。
【0106】
CFSE標識B細胞のインビトロ刺激
原液を生成するために、CFSE (Molecular Probes, Eugene, OR)をDMSO 5mMに溶解し、−80℃で保存した。脾臓B細胞は、製造業者の指示に従って、LS磁気カラム(Miltenyi Biotec)上の抗B220 Ab(Miltenyi Biotec, Auburn, CA)にカップリングされたMACSビーズによる濃縮によってMACSで精製した。次いで細胞をRPMI1640にて2回洗浄して、5mMの濃度のCSFEを含む暖めたRPMI1640にて5×107細胞/mlに再懸濁して37℃に10分間置いた。次いで、細胞を、氷温のRPMI1640/5%FCSにて3回洗浄して、RPMI1640/5%FCS/βME/L-グルタミンにて2×105/100μlに再懸濁して、100μl/ウェルを平底96ウェルプレートに移した。さらに100μlのRPMIを添加して、2倍の終濃度で刺激試薬を含むようにした。純粋なF(ab')2断片ヤギ抗マウスIgM(2.5μg/ml、Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)、IL-4(25U/ml、R&D Systems, Minneapolis, MN)、抗マウスCD40 Ab(0.25μg/ml、Ebioscience)、抗RP105Ab(10.5μg/ml、Ebioscience)、LPS(20μg/ml、Sigma-Aldrich Corp.)を刺激として用いた。
【0107】
免疫組織化学法
α平滑筋アクチンに特異的な抗体(クローン1A4、DakoCytomation, Carpinteria, CA)を1:50に希釈して30分間インキュベーションをした。組織切片の熱誘導されたエピトープ回復前処置は、10mMのクエン酸バッファ、pH6.0中にて125℃で30秒間行い、90℃に10秒間置き、室温にまで冷ましてさらに20分間置き、免疫染色を行った。組織成分への第一抗体の結合は、3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)基質と、MMビオチン化キット(Biocare Medical, Walnut Creek, CA)を用いて検出した。スライドは、マイヤーのヘマトキシリンにて1分間、対比染色した。
F4/80特異的抗体(クローンCLA3-1、Serotec Inc., Raleigh, NC)を20μg/mlの濃度で30分間用いた。組織切片は、プロテイナーゼK(DakoCytomation, Glostrup, Denmark)にて、室温で5分間前、処理した。第一抗体の結合は、DAB基質と、ベクターエリートABCキット(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いて検出した。スライドは、マイヤーのヘマトキシリンにて1分間、対比染色した。
【0108】
製造者の指示に従って、ApopTagインサイツアポトーシス検出キット(Chemicon International, Temecula, CA)を用いてTUNEL染色を行った。標識されたアポトーシス細胞はDAB/塩化ニッケルを基質として用いて検出した。スライドは、メチルグリーン(Vector Laboratories, Burlingame, CA)にて5分間対比染色した。
コラーゲン繊維は、シリウスレッド染色を用いて検出した(Luna, Histopathologic Methods and Color Atlas of Special Stains and Tissue Artifacts: American HistoLabs, Incorporated. 767 pp. (1992))。他の文献に記載のように(Luna, Manual of Histologic Staining Methods of the Armed Forces Institute of Pathology. New York: McGraw-Hill Book Company (1968))、H&E染色を行った。
【0109】
PCR及びIg遺伝子再構成分析
ゲノムDNA単離キット(Qiagen, Valencia, CA)の製造業者のプロトコールに従って、CD19+磁気ビーズ(Miltenyi Biotec,)上に陽性選択された細胞からDNAを抽出した。DNA(2μl、およそ103個のB細胞の相当物)を、VDJ結合部の増幅のために用いた。J558L、Q52及び7183のVHファミリーに特異的なVHA、VHB及びVHEの5'プライマーと、1回目の増幅にはJH4Eの3'プライマー(16)を、2回目の増幅にはJH1又はJH4Aの3'プライマーを用いて、2回の増幅を行った。AUプライマーはBiogen Ideeで合成されたものである。1回目では20サイクル行った(95℃で1分、60℃で1分及び72℃で1.5分)、2回目では30サイクル行った(95℃で1分、63℃で1分及び72℃で1.5分)。2μlの1回目の反応生成物を鋳型として用いた。予想される0.4kbの断片をゲルから精製して、pCR4-TOPOベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)にサブクローニングした。個々のコロニーからDNAを調製して、標準的なベクター特異的プライマーを用いて配列決定した。
【0110】
間質性コラーゲン定量化
各々の動物の肝臓からの合計3つの切片(各々異なる葉から)を染色した。シリウスレッド染色の白黒の画像は、5×拡大、偏光下で作製した。画像は、肝臓組織がカメラで捕らえた全領域をカバーするように作製し、各々の画像(1動物につき4〜10の画像)においてすべての画像領域が一致することを確認した。恒常的にコラーゲンを含有している脈管は、各々の画像から電子的に取り除いた。次に、白い染色(間質性コラーゲン)の量は、MetaMorph画像分析ソフトウェア(Universal Imaging Corporation, Downingtown, PA)によって、定量化した。定量化は、任意の単位で表した(1は1000ピクセルに相関)。シリウスレッド染色の強度によって異なるので、白い領域の絶対的な量は各々の実験間で直接比較することはできない。
【0111】
結果
B細胞は肝臓において主要なリンパ球集団である
B細胞は、発生中の胚の主な造血部位である胚性肝臓において広く研究されている。しかしながら、成体肝臓の肝性B細胞についてはほとんど知られていない。この実施例において、肝内(IH)B細胞を表現型的及び機能的に特徴付けた。
PBS灌流肝臓からリンパ球集団を濃縮した後、B系統特異的なマーカーであるCD19を染色することによってIHB細胞の割合を定量した。BALB/c及びC57BL/6マウスでは、B細胞はIHリンパ球のおよそ50%に相当した(範囲30〜60%、図1A及びデータは未掲載)。肝臓から単離されたB細胞の絶対数は2×106以下であった。CD19+IHB細胞は、その脾臓相対物と同じレベルでIgM、IgD、B220、MHCII及びCD62Lを発現することが示された(図1A及びB、データは未掲載)。IHB細胞は、B-1又は未成熟B細胞の代表的なマーカーであるCD43及びMac-1を発現しなかった(データは未掲載)。IHB細胞は、血液B細胞で検出されるよりも高いが、PC B細胞で観察されるよりも低いレベルでCD5を発現する(図1B)。CD5レベルが高いほど通常のB細胞活性化を表す。(Cong等, Int. Immunol. 3:467- 476 (1991))。IHB細胞は、CD23を発現するが、脾臓又は血液B細胞より低いレベルである。また、CD21表面発現は、脾臓B細胞よりIHBでわずかに低いが、血液B細胞よりも高い(図1B)。まとめると、これらのマーカーの発現に関して、肝臓B細胞は濾胞性脾臓B細胞と最も類似していた。
【0112】
肝B細胞は機能的に十分である
肝臓は死につつあるリンパ球の送り先として認識されているので(Crispe等, Immunol. Rev. 174: 47-62 (2000))、細胞がアポトーシスを経る際に細胞膜の内側から外側へ転移するリン脂質ホスファチジルセリン(PS)へ結合するアネキシンVを用いて、IHB細胞がアポトーシス前にあるかどうかが決定される。アネキシンVは、15%以下の脾臓B細胞に対して30%以下の肝B細胞に結合した(図1C、データは未掲載)。ゆえに、ほとんどの肝臓B細胞はアポトーシスの素因を示さず、脾臓に比べて肝臓にアポトーシス細胞の数が多いことはリンパ球単離の違いに関連があるかもしれない。
分裂促進及びB細胞レセプター架橋に応答するBリンパ球の増殖力は、B細胞サブセットごとに実質的に異なる重要な機能的特徴である。(Morris及びRothstein, J. Exp. Med. 177: 857-861 (1993);Philips等, Immunol. Cell. Biol. 76:332-342 (1998);Erickson等, 2001. J. Immunol. 166:1531-1539 (2001))。肝臓及び脾臓のB細胞を、様々な刺激に応答したときの、CD86(B7.2)及びMHCIIなどの共刺激分子の上方制御及び増殖の程度について比較した。興味深いことに、IHB細胞の増殖応答は、脾臓Bリンパ球のものと非常に類似していた(図1D)。Toll様レセプター4、RP105及びCD40刺激に対する応答は同じであるのに対して、IgM架橋への応答はIL-4の非存在下では大きく、IL-4の存在下では小さかった。IgM架橋に対してのみ増殖応答がより大きいことは、外来性生存因子様IL-4を含まない培養物中でIHB細胞がより良好に生存することを示し得、CD5上方制御により示されるIHB細胞の活性化状態と一致している(図1B)。試験されるすべての刺激によるMHCII、CD86及びCD5の上方制御の程度は、肝臓及び脾臓のB細胞に関して非常に類似していた(図1B及びD、データは未掲載)。
【0113】
IHB細胞は脾臓B2細胞と類似しており、胚性肝臓起源のものではない
成体肝臓のB細胞は胚性肝臓の残渣肝臓B細胞世代を表しうる。あるいは、成体中の脾臓B細胞のように、IHB細胞は骨髄(BM)由来であるかもしれない。肝内B細胞の起源を調べるために、そのVDJ再編成を遺伝的に分析した。胚性肝臓において、生成される新生児のB細胞のVDJ接合部では鋳型でない(N、P)ヌクレオチドはほとんどみられない。これは、B1細胞について報告されたことと類似している。(Feeney, J. Exp. Med. 172: 1377-1390 (1990);Gu等, EMBO J. 9:2133-2140 (1990);Meek, Science 250:820-823 (1990))。それに対して、成体脾臓及び血液B細胞は、多くの鋳型でないヌクレオチドが付加している。(Kantor等, J. Immunol. 158:1175-1186 (1997);Kepler等, J. Immunol. 157: 4451-4457 (1996))。プールされた成体肝臓リンパ球から得られるCDR3配列を、2日齢のマウスの脾細胞又は成体マウスの血液B細胞から得られるものと比較した。成体IHB細胞は、新生児B細胞と顕著に異なり、そのVDJ接合部配列が脾臓B2細胞又は再循環血液B細胞に似ている。新生児B細胞におけるN,Pヌクレオチドの平均数は、VD接合部では0.5であり、DJ接合部では0.1である。これは、成体肝臓(又は血液)中のB細胞のVD接合部の3.5(又は4.5)及びDJ接合部の4.4(又は3.4)と顕著に異なる。興味深いことに、成体肝臓及び血液のB細胞も、そのVD及びDJ接合部の長さが異なるようである。この相違は、統計学的に有意な、p=0.1、スチューデントt検定の境界にある。IHB細胞はそのDJ接合部よりもVD接合部のN,Pヌクレオチドが少なく、従来の成体B2細胞について報告されたことに反する。(Kantor等, J. Immunol 158:1175-1186 (1997))。IHB及び成体血液B細胞のN5P挿入の長さの相違は、肝内B細胞選別の結果であるかもしれない。さらに、この違いにより、肝臓B細胞が末梢血液B細胞と有意に混合しないで真性の肝内集団を表すという概念が強化される。
【0114】
肝線維形成におけるB細胞の役割
B細胞が肝臓において、果たしうる生理学的役割を調べるために、肝疾患を誘発し、疾患の進行をB細胞欠失マウスと野生型動物とで比較した。CCl4投与のたびに生じる顕著な壊死炎症性肝障害の後に慢性の修復応答が生じる、CCl4誘発性肝障害モデルを用いた。免疫系の特定の部分を先天的にターゲティングするよりも、毒性侵襲により一般的な肝毒性が誘発されるので、このモデルは、多くの広く利用される肝障害モデル(例えば住血吸虫、LPS、ConA)より有利であると考えた。さらに、興味深いことに、肝臓のB細胞はCCl4投与に特に感受性があることが明らかとなった。他の肝内リンパ球(NK-T、T細胞)はこの時点では変化がなかったのに対して、IHB細胞数はCCl4処置の1日後におよそ10分の1に下がった(データは未掲載)。CCl4注射の5日後までに、B細胞数は回復した(データは未掲載)。
B細胞が肝障害及び修復において、役割があるかどうかを試験するために、CCl4誘発性肝毒性試験にB細胞欠失マウスを用いた。分析に選んだB細胞欠失マウス系統は免疫グロブリン重鎖遺伝子のJH領域に目的の欠失がある。この遺伝子はコード化重鎖遺伝子の集合(アセンブリ)を除去して、B細胞及び抗体産生を阻害する。(Chen等, Int. Immunol. 5:647-656 (1993))。これらのB細胞欠失マウスは、本明細書においてJH-/-マウスと称する。
【0115】
CCl4処置の24時間後に血清に放出される肝細胞特異的な酵素であるALTにより評価される、CCl4誘発性肝細胞障害の程度は、JH-/-及びWT BALB/cマウスにおいて、同程度であった(図2A)。また、組織学的分析からも明らかであった(図3及び下記を参照)。しかしながら、興味深いことに、コラーゲン繊維の蓄積量に大きな差があった。第6週目の1.75又は3.5mg/kgのCCl4投与の1週間後には、JH-/-マウスの間質性コラーゲン沈着が、野生型マウスのおよそ6〜8分の1であった(図2B及び2C)。6回のCCl4治療後には、F4/80+マクロファージの数又は位置と筋線維芽細胞を産生する平滑筋アクチンに有意な変化は観察されなかった(データは未掲載)。ゆえに、B細胞は、CCl4への応答の際に肝臓が線維形成変化を発達させるために必要となる重複性のない細胞群を構成するようである。
【0116】
B細胞機能がCCl4誘発性の障害の特異的な場合に限定されるのか、又は肝臓の組織修復において、より一般的な役割を果たすのかを試験するために、CCl4により誘発された場合と異なるメカニズムによって肝臓を破壊する1-ナフチルイソチオシアナート(ANIT)によって、肝毒性を誘発した。ANITにより誘発される肝毒性は、胆管上皮細胞及び肝実質細胞の好中球依存性壊死として現れる。(Hill等, Toxicol. Sci. 47:118-125 (1999))。8週のANIT処置の後、JH-/-はWTマウスのおよそ7分の1のコラーゲン沈着であったことが明らかとなった。ゆえに、線維形成は、少なくとも2つのモデル系においてB細胞の非存在下で減少した。
標準を超えるB細胞数の増加により、より顕著な線維形成が生じるかどうかを試験するために、B細胞数の20〜30%の増加を示すBAFF-tgマウス(Mackay等, J. Exp. Med. 190: 1697-1710(1999))を対応するC57B1/6 WTコントロールマウスと比較した。6回のCCl4処置の後、BAFF-tg及びC57B1/6コントロールにおいて線維形成が発達した。この線維形成は、BALB/cマウスに顕著に見られるより少ないコラーゲン繊維沈着によって特徴付けられた(データは未掲載、Shi等, Proc. Natl. Acad. Sci USA 94:10663-10668 (1997))。しかしながら、興味深いことに、BAFFトランスジェニックマウスは、コラーゲン沈着の量がそのWT C57B1/6相対物のおよそ2倍であった(図2D)。
【0117】
B細胞欠失マウス及びWTマウスは単回のCCl4誘発性障害に対して異なる応答をした
6週の処置の後、どんな急性の効果がコラーゲン沈着の変化を誘発するかについて理解するために、単回CCl4抗原投与の1日、3日及び5日後のB細胞欠失マウス及びコントロールマウスの肝臓切片において、組織変化の動態を分析した。興味深いことに、アポトーシス細胞を検出するTUNEL染色では、1日目には初めの障害が同等であったにもかかわらず、WTマウスでは障害の5日後でさえも死んでゆく細胞がいくらか検出される一方で、JR-/-マウスは3日目までに完全にアポトーシス細胞がないことが示された(図3)。組織マクロファージ特異的なマーカーF4/80について切片を染色した場合、1日目という早い時期に、WTマウスと比較してJH-/-のマクロファージ数はわずかに増加しており、3日目及び5日目までにかなりの量になった(図3)ことが明らかとなった。ゆえに、B細胞の非存在下では、むしろマクロファージが死にゆく肝細胞を除去しうるようである。コラーゲン繊維の主要な細胞性供与源が筋線維芽細胞の集団であるので(Rockey等, Clin. Liver. Dis. 4: 319- 355 (2000))、障害した肝臓の筋線維芽細胞を示す平滑筋アクチンもモニターした。3日目に初めて、筋線維芽細胞は、B細胞欠失マウス及びコントロールマウスにおいて同じレベルで検出される。しかしながら、5日目までに、WTマウスは、より多くの筋線維芽細胞を示す(図3)。繰り返す障害について、マクロファージが効率的に死にゆく肝細胞を取り除くことができないために、筋線維芽細胞の過剰刺激が引き起こされ、その結果、長期間の障害の際に見られるコラーゲンの沈着がより大きくなるかもしれない。近年の研究では(Duffield等, J. Clin. Invest. 115:56-65 (2005))、マクロファージは、肝障害及び修復の間に、異なった、相反する役割を果たすことが示された。B細胞の非存在下では、炎症性瘢痕化から回復するために関与するマクロファージが優先して活性化されるようである。
【0118】
CD4+、CD8+又はγδT細胞は有意には肝線維形成に影響しない
また、T細胞を欠失しているマウスが線維形成を欠失しているかどうかを判断するために、B及びT細胞をともに欠失しているマウス(RAG2-/-)、CD4+T細胞を欠失しているマウス(Aβ-/-)、CD8+T細胞を欠失しているマウス(β2m-/-)、又はγδT細胞を欠失しているマウス(TCRδ-/-)を用いて一連のCCl4誘発性肝障害実験を行った。すべてのマウス突然変異株について、同じ遺伝的背景のコントロール株を用いた(材料及び方法を参照)。これらの中で、RAG2-/-マウスのみは、好適なWT相対物と比較して、CCl4による長期処置後にコラーゲン沈着の量が異なった(図4及びデータは未掲載)。そのレセプターを集合化(アセンブリ)するためにDNA再編成を必要とするすべてのリンパ球を欠失しているRAG2-/-マウスは、WTマウスと比較して間質性コラーゲン蓄積がおよそ3〜4分の1に減少する(図4B)。この結果は、B細胞だけを欠失しているマウスにおいて得られた結果と非常に類似しており、肝臓線維形成のCCl4モデルにおいてT細胞の顕著な役割を示唆するものではない。
【0119】
肝臓線維形成でのB細胞の役割は抗体依存性である
B細胞は、抗原提示、サイトカイン放出、及び/又は共刺激分子により調節される細胞-細胞接触、及び抗体による長期間作用などの局所作用を媒介しうる。T細胞欠失動物(上記参照)はコラーゲン沈着に全く違いがないので、T細胞に対するB細胞抗原提示は肝臓線維形成に影響しそうにない。
肝臓線維形成のB細胞調節に免疫グロブリンが必要であるかどうかを決定するために、正常数のB細胞を有するが、血清のIgを欠いているかIgレベルが非常に低い2つのマウス系統を用いた。IgH遺伝子座のJエレメントの位置に組み込まれる遺伝子(DHLMP2a対立遺伝子(Casola等, Nat. Immunol. 5:317-327 (2004))からエプスタインバーウイルス誘導タンパク質LMP2aを発現するマウスは表面免疫グロブリン及び循環免疫グロブリンを欠失しているのに対して、JH-/-バックグラウンドにmIgM導入遺伝子を発現するマウスは表面免疫グロブリンをコードするが、分泌型免疫グロブリンはコードしない。(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639- 1648 (1999))。
【0120】
図5Aに示すように、1.75mg/kgのCCl4の6週間の処置後に、エプスタインバーウイルス誘導LMP2aタンパク質を発現するマウス及びそのWT BALB/cAnNCrlBrコントロールにおいて、同レベルのコラーゲン沈着がみられた。さらに、表面Igを発現するが分泌型Igを発現しないmIgM tg(JH-/-)マウス(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639-1648 (1999))は、CCl4誘発肝臓線維形成の程度がWTコントロールBALB/cマウスと同じであった(図5B)。ゆえに、CCl4誘発肝臓線維形成の病理に対するB細胞効果は抗体非依存性である。これらの実験におけるWT BALB/cマウスの線維形成の程度が、潜在的にこれらの動物の異なる収容条件及び/又は同時感染のため、以前のもの(図2、4、5)より低いことは注目に値する:LMP2a及びmIgMマウスのコロニーはいずれもヘリコバクター・ヘパティカスについて陽性であった。したがって、これらのマウス並びに対応するWT系統は隔離施設で飼育した。
【0121】
考察
この実施例において、肝内B細胞が従来のB2細胞と似た表現型及び機能的特徴を有する大きい集団を表すことが示された。IHB細胞は従来のB2細胞よりいくらか高いレベルでCD5を発現し、インビトロでIL-4を添加することなくIgM架橋に応答してより良好に増殖する(図1)。このことからIHB細胞の活性化状態が示唆される。成体肝臓が多系列白血球を引き起こしうるc-kit+造血多能性幹細胞を含有することが知られているにもかかわらず(Watanabe等, J. Exp. Med. 184: 687-693 (1996);Taniguchi等, Nat. Med. 2: 198-203 (1996))、自己増殖性胚性肝臓由来のB1系統細胞とは対照的に、成体肝臓のほとんどのB細胞はBM由来であるようである。(Herzenberg, Immunol. Rev. 175: 9-22 (2000))。IHB細胞はおそらくBM起源のものである。肝内B細胞のVDJ接合部は、広範囲なNヌクレオチド挿入を含有して、従来のB2細胞と同程度の総平均長となっている。特に、Nヌクレオチド挿入を担う酵素である末端デオキシリボヌクレオチド転移酵素(TdT)の発現は成人肝臓において、研究されていなかった(Benedict等, Immunol. Rev. 175: 150-157 (2000))ので、成人肝臓B細胞がTdT-依存性の様式で肝臓において生成されるという可能性は、理論上考えられるが実際は低い。
【0122】
この実施例では、局所のB細胞機能におそらく依存している他の疾患モデルに加え、B細胞が、肝臓線維形成の発達において重要な抗体依存性の役割を果たすことが示される。また、B細胞の必須の役割は、非肥満性糖尿病(NOD)マウスの自己免疫性糖尿病について示されている。B細胞欠失NOD.Igμヌルマウス及びB細胞減少NODマウスは膵島炎又はインシュリン依存性真正糖尿病を発達させなかった。このことからB細胞が自己応答性T細胞の惹起及び/又は活性化に重要であるという考えが示唆される。(Serreze等, J. Exp. Med. 184: 2049-2053 (1996);Noorchashm等, Diabetes 46:941-946 (1997))。また、B細胞は、全身性自己免疫状態の多遺伝子性、fas-インタクト及びfas-欠失性のMRLモデルのループス腎炎に必要であることが示された。(Chan等, J. Exp. Med. 189:1639-1648 (1999);Chan等, J. Immunol. 160:51-59 (1998);Chan等, J. Immunol. 163:3592-3596 (1999))。両方の場合において、抗体非依存性のメカニズムはB細胞関与に重要であることが明らかとなった。(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639-1648 (1999);Wong等, Diabetes 53:2581-2587 (2004))。
この実施例では、B細胞を本質的に欠失しているマウスを用いて、線維形成病理学的にB細胞関与を調べた。全体の生理機能が正常であるにもかかわらず、B細胞欠失マウスは、濾胞性樹状ネットワーク(Fu等, J. Exp. Med. 187: 1009- 1018 (1998);Gonzalez等, J. Exp. Med. 187: 997-1007 (1998);Endres等, J. Exp. Med. 189: 159-168 (1999))、腸パイエル板の濾胞性関連上皮(Golovkina等, Science 286:1965-1968 (1999))及びNK-T細胞の非標準サブセットを欠いている。(Treiner等, Nature 422:164-169 (2003))。また、B細胞のないマウスは、CD4+T細胞機能を欠いており(Baumgarth等, Proc. Natl Acad. Sci. USA 97:4766-4771 (2000))、おそらくいくつかの他のまだ記されていない発生上/機能的な欠損を有するであろう。ゆえに、B細胞欠失マウスにより得られた結果から、B細胞が間接的に肝臓線維形成の病因に作用することが示される。
【0123】
T細胞欠失マウスが肝臓線維形成の発達において全く相違を示さないので(データは未掲載)、CD4+T細胞欠失はJH-/-マウスで観察される非常に低減した肝臓線維形成を説明するものではないようである。しかしながら、マウスの肝臓に存在する(Shimamura等, FEBS Lett. 516:97-100 (2002))、変化しないTCRを含有するVα19を発現するB細胞依存性NK-T細胞サブセット(Treiner等, Nature 422:164- 169 (2003))は、B細胞欠失マウスにみられる低減した線維形成に関与するかもしれない。NK-T細胞は、急速な様式で応答し、TH1及びTH2の両方のタイプのサイトカインを産生する能力について知られている。(Godfrey等, J. Clin. Invest. 114:1379-1388 (2004))。このような特性によって、NK-T細胞は免疫応答調節機能に関与できる。(Godfrey等, J. Clin. Invest. 114:1379-1388 (2004))。従来のVα14 TCR NK-T細胞を欠失しているCD1-/-マウスの肝臓線維形成発達に違いがないことが明らかとなった(データは未掲載)。残念なことに、肝臓線維形成における標準的でないVα19不変NK-T細胞の役割を調べるために利用可能なマウス変異体がない。それにもかかわらず、RAG-/-動物は、B細胞欠失マウスと同じ程度に線維形成を阻害するので、発達のために遺伝子再編成を必要とする細胞型(様々な系統のB及びT細胞)の役割を示唆する。ゆえに、総して、データから、発達のためにB細胞を必要とする非CD1限局性NK-T細胞(Treiner等, Nature 422:164-169 (2003))とB細胞自主的機能のいずれかがCCl4誘発肝毒性モデルに特徴的な線維形成に役割があることが示唆される。
【0124】
免疫グロブリン産生に欠陥のある2つの既に作製されたマウス系統(LMP2a挿入マウス及びmIgM-Tgマウス)を用いて、抗体がCCl4誘発肝臓線維形成を発達させるために必要でないことが示された。LMP2aマウスは、正常なB細胞数を有し、分泌抗体と免疫グロブリンの表面発現の両方を欠失している。(Casola等, Nat. Immunol. 5:317-327 (2004))。LMP2AはBCRシグナル伝達を模倣するだけでなく、更なるシグナル伝達経路を誘発する(Ikeda等, J. Virol. 77:5529-5534 (2003);Portis及びLongnecker, J. Virol. 77:105-114 (2003))。したがって、導入遺伝子性表面BCRを発現し、正常なマウスと比較して300〜500分の1に低減した抗体力価を有する(Chan等, J. Exp. Med. 189: 1639- 1648 (1999))、mIgM-Tg(JH-/-)マウスにおける線維形成を評価した。両マウス系統は、コントロールと同程度に肝臓線維形成を発達させた。ゆえに、肝臓線維形成病理学でのB細胞の役割は抗体非依存性であるようである。これは、生物体の他の箇所に位置するB細胞により媒介される長期間となりうる作用に反して、局所のB細胞の機能(例えばサイトカイン分泌及び/又は細胞-細胞接触)により媒介されることを示唆する。従来のT細胞に欠陥のあるマウスがそのWT相対物に類似した線維形成を示すので、B細胞に対する抗原提示の役割は肝臓線維形成において、有意な役割を果たすようではない。さらに、LMP2a B細胞は、その表面上にB細胞レセプターを欠失しており、WTマウスに類似のコラーゲン沈着を示すので、抗原結合、抗原内部移行及び抗原提示の能力を持たない。総して、これらのデータから、肝臓組織修復が、本明細書において定めるIHB細胞によって部分的に媒介されうる局所のB細胞機能により作用されることが示唆される。形式的に、B細胞は肝臓のクリアランスメカニズム(一又は複数)を破壊する可能性がある。しかしながら、B細胞数は肝細胞数と比較して非常に少ない。
【0125】
この実施例で示された結果は、CCl4に応答する肝障害の程度が、偽手術ラットと比較した場合の脾臓摘出したラット(Chen等, Chin. Med. J. (Engl) 111: 779-783 (1998))、及び適切なコントロールと比較した場合のBALB/cバックグラウンドのSCIDマウスにおいて、有意により軽度であったという報告と一致する。(Shi等, Proc. Natl. Acad. ScL USA 94:10663-10668 (1997))。しかしながら、マンソン住血吸虫寄生虫により誘発される肝臓線維形成は、コントロールマウスと比較してB細胞欠失マウスにおいて、増加する。(Ferru等, Scand. J. Immunol. 45:233-240 (1998))。反復する肝細胞障害(CCl4及びANITの場合のように)又は、低レベルの虫感染による線維形成誘発メカニズムの相違によりこの矛盾を説明できる。
また、B細胞機能は、マウス及びヒトの皮膚の線維形成と関係していた。タイト-スキン(TSK/+)マウス並びに全身性硬化症個体において、増大したCD19発現から生じる慢性のB細胞活性化により皮膚線維形成と自己免疫性が引き起こされる。(Saito等, J. Clin. Invest. 109: 1453-1462 (2002))。さらに、強皮症患者の肺組織から樹立されたB細胞株は、線維形成変化に至るかもしれない増大した増殖と炎症応答を示す。(Kondo等, Cytokine 13:220-226 (2001))。
つまり、この実施例は、成人肝臓B細胞群の単離及び特徴づけを記述して、直接、肝障害後の組織修復におけるB細胞の役割を示す。さらに、この実施例は、B細胞が線維形成状態の病理に関与することを示す。ゆえに、ここで示される結果は、B細胞アンタゴニストが線維形成状態を治療する際に有効であることを証明しうるものである。
【0126】
実施例2 B細胞欠失マウスモデルにおける肺線維症
序論
肺線維症は、ブレオマイシンへの曝露によって動物モデルにおいて誘発できる。齧歯動物へのブレオマイシンの気管内投与は、最も広く用いられる肺線維形成のモデルである。ブレオマイシンは、ある程度、フリーラジカルの生成及び炎症性サイトカインの誘発によって、内皮及び上皮の障害を引き起こす細胞障害性剤である。(Sleijfer, Chest 120:617-624 (2001))。線維芽細胞は活性化され、2週間までに肺に有意な線維形成及びコラーゲン沈着が生じる。この実施例において、B細胞欠失マウスは、ブレオマイシンへの持続性全身曝露の後に、同じように処置された野生型マウスと比較して生存率の向上と肺線維形成の減少を示した。
【0127】
材料及び方法
マウス
C57BL/6J:正常なB細胞機能をもつ野生型マウス、
B6.129S2-lgh-6tm1Cgn/J:B細胞欠失マウス。
持続性ブレオマイシン曝露
0日目、生理食塩水(n=7、wt、n=5、ko)又は60mg/kgの用量レベルのブレオマイシン溶液(n=12、wt、n=10、ko)ないしは100mg/kgの用量レベルのブレオマイシン溶液(n=8、wt、n=10、ko) (7日間かけて総用量を供給)を含有する皮下投与用7日用Alzet(登録商標)浸透圧ミニポンプを野生型マウス又はB細胞欠失マウスに無菌的に移植した。
測定値
体重及び臨床徴候を1か月間、モニターした。28日目にマウスを安楽死させ、肺を取り出し、10%の中性緩衝ホルマリンを滴下して固定した。既存のコラーゲン/線維形成を識別するためにマッソントリクロームによって肺を染色して、αアクチンについて免疫組織化学を行い、今後の線維形成の可能性の程度を同定した。コラーゲン又はアクチンにより占有される組織領域の割合を、Metamorph(登録商標)ソフトウェアを使用して組織形態計測して決定した。
【0128】
結果
60mg/kg/7日のブレオマイシンの投与により、28日目までにわずかばかりのα-アクチン蓄積が生じた。野生型及びB細胞ノックアウトマウスは同程度のα-アクチンレベルを示した。(図6)。
100mg/kg/7日のブレオマイシンの投与により、28日目までに中程度から広範囲なα-アクチン蓄積にが生じた。野生型動物は生存率の低下を示し、B細胞ノックアウトマウスより統計学的に高いα-アクチンレベルであった。(図6、7及び8)。
これらの実験結果から、C57BL6マウスにおいてBリンパ球の欠如により肺線維形成の範囲が低減し、持続性のブレオマイシン曝露の後に生存率が向上することが示された。したがって、さらにこれらの結果から、線維形成状態、特に、肺系の線維形成状態を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用が示唆される。
【0129】
実施例3 B細胞欠失マウスモデルにおける腎臓線維形成
序論
片側性尿管閉塞(UUO)は、進行性組織圧迫、管状変性及び間質性及び糸球体性の線維形成を産生する閉塞性腎症のモデルである。(Miyajima等, Kidney International 55:2301-2313 (2000))。この実施例において、B細胞欠失マウスは野生型マウスと比較して、UUOに応答した腎臓線維形成が少なかった。
【0130】
材料及び方法
マウス
C57BL/6J:正常なB細胞機能をもつ野生型マウス、
B6.129S2-lgh-6tm1Cgn/J:B細胞欠失マウス。
片側性尿管閉塞
0日目に、ケタミン/キシラジン麻酔下にて無菌的に、野生型マウス(n=10)又はB細胞欠失マウス(n=10)の結紮間で左尿管を単離し、結紮して、切片化した。また、手術していない野生型マウス(n=5)又はB細胞欠失マウス(n=5)を正常なコントロールとした。
測定値
体重及び臨床徴候は、疾患が最大となるまでの10日間の進行の間、モニターした。10日目にマウスを安楽死させて、両腎臓を取り出し、10%の中性緩衝ホルマリンに固定した。既存のコラーゲン/線維形成を識別するためにマッソントリクロームによって、腎臓を染色して、αアクチンについて免疫組織化学を行い、今後の線維形成の可能性の程度を同定した。コラーゲン又はアクチンにより占有される組織領域の割合を、Metamorph(登録商標)ソフトウェアを使用して組織形態計測して決定した。
【0131】
結果
UUOの後、野生型相対物と比較して、B細胞欠失マウスはαアクチン染色が統計学的に有意に29%減少しており(図9A)、間質性コラーゲンの蓄積は統計学的に有意に62%減少していた(図9B)。これらの病的状態が、線維形成状態の定量化及び測定のための2つの典型的なマーカーとなることは理解されるであろう。
また、UUOの後、B細胞欠失マウスは、尿細管拡張が有意に減少しており(図9C)、正常な尿細管染色が有意に増加していた(図9D)。増加した正常な尿細管染色は、障害がない場合でもB細胞欠失マウスに観察された(図9D、また図10も参照)。
これらの実験結果から、Bリンパ球の欠如によりUUO誘発性の障害後の腎臓線維形成の範囲が減少することが示された。
複数のモデル系の実験的に誘発された線維形成障害の程度は、B細胞を欠失するマウスにおいて実質的に減少するという所見(実施例1〜3を参照)は、炎症性/線維形成病理が関与する様々な疾患徴候を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用を強く支持するものである。
【0132】
実施例4 抗CD20モノクローナル抗体はブレオマイシン処置によって生じる肺及び脾臓のB細胞の増加を抑える
序論
実施例2に示すように、肺線維形成はブレオマイシンへの曝露によって、動物モデルにおいて誘発され、そのブレオマイシン誘発性肺線維形成の程度はB細胞欠失マウスでは小さい。この実施例では、ブレオマイシンで処置したマウスは、その肺においてB細胞の増加を表し、重要なことに、B細胞のこのブレオマイシン誘発性の増加は抗CD20抗体により治療されるマウスにおいて有意に少ないことが示された。これらの結果から、線維形成状態を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用がさらに支持された。
【0133】
材料及び方法
この実施例では、9週齢のC57B1/6雄マウスを実験に用いた。0日目に、マウスをケタミン/キシラジンの腹腔内投与によって、麻酔し、PennCenntury噴霧器を用いて50μl容量ITのブレオマイシン0.025単位を投与した。PennCenntury噴霧器は、口から気管内に挿入する。−7日目(ブレオマイシン投与の7日前)と7日目に、抗マウスCD-20モノクローナル抗体(Biogen Idec、米国特許第60/741491号で開発され「18B12」と称される)及びPBSのいずれかをマウスに腹腔内投与した。異なるグループのマウスにPBSのみを与え(intrachacheally)、他のマウスは処置を行わなかった。
9日目に、CO2にて動物を安楽死させ、肺及び脾臓を回収した。肺及び脾臓ははさみで断片化し、次いでホモジナイズして、50mlの遠心管へ移した。40mlの氷温のRPMI1640/5%FBSをチューブに添加し、4℃、300×g(標準的なローターによるIEC Centra 8Rで1200回転数/分)で10分間遠心分離し、細胞片を沈降して減らした。ペレットは、10mlの消化培養液に再懸濁して、37℃で40〜60分間置いた。
【0134】
リンパ球濃縮細胞群を単離するために、30mlの氷温の無血清RPMI1640を各チューブに添加して終容量40mlとした。チューブは、4℃、300×g(IEC Centra 8Rで1200回転数/分)で10分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを氷温の45%パーコールを含む無血清RPMI1640に6mlの終容量で再懸濁し、70%パーコールを含むPBSにより傾斜をつけて勾配を得た。
境界面を回収して、10容量の氷温の無血清RPMI1640を添加して、チューブを4℃で400×g(IEC Centra 8Rで1500回転数/分)で10分間遠心分離した。CD5及びCD19を発現する細胞をFACSを用いて分析した。(図11、12及び13)。
【0135】
結果
図11及び13に示すように、ブレオマイシンで処置したマウスは肺のB細胞(CD19+)の増加を表し、この増加はブレオマイシンに加えて抗CD20抗体を投与したマウスにおいて有意に減少していた。図12に示すように、抗CD20抗体による処置においても効果的に脾臓のB細胞が減少した。上記の実施例2にて強調したように、肺性線維形成は、ブレオマイシンへの曝露によって、動物モデルにおいて誘発できる。したがって、これらの結果から、B細胞アンタゴニスト、例えば抗CD20抗体が線維形成状態の治療に有効であるという結論が支持される。
【0136】
実施例5 抗CD20モノクローナル抗体はCCl4誘発性肝臓線維形成に対する保護薬である
序論
実施例1に示すように、肝臓線維形成はCCl4への曝露によって、動物モデルにおいて誘発され、そのCCl4誘発性肝臓線維形成の程度はB細胞欠失マウスでは小さい。この実施例では、CCl4誘発性肝臓線維形成は、抗CD20抗体で処置されるマウスにおいて有意に少ないことが示された。これらの結果は、線維形成状態を治療するためのB細胞アンタゴニストの使用をさらに証明するものである。
【0137】
材料及び方法
抗マウスCD20 B細胞減少抗体(Biogen Idec、米国特許第60/741491号で開発され「18B12」と称される)を、化学四塩化炭素(CCl4)を投与することにより誘発された肝臓線維形成のマウスモデルにおいて試験した。ミネラルオイルにて調製した1.75ml/kg用量のCCl4を6週間、週に1度マウスに投与し、同時にPBS単独、250μgの抗CD20モノクローナル抗体、又は250μgのアイソタイプコントロールモノクローナル抗体にて処置した(腹腔内投与)。CCl4の初回投与の1週間前と、続くCCl4の各投与の1日前に、マウスにPBS及び抗体を注射した。6回目のCCl4投与の7日後にマウスを屠殺し、肝臓を取り出し、線維形成のマーカーである平滑筋アクチンの発現について免疫染色した。
【0138】
結果
図14に示すように、抗CD20抗体にて処置した動物の肝臓線維形成の程度(平滑筋アクチン染色により示されるもの)は、PBSを投与したコントロールマウスよりおよそ20%少なく、コントロールモノクローナル抗体を投与した動物よりもおよそ28%少なかった。また、この実施例は、特に肝臓の線維形成状態の発生又は進行を治療するか、遅延させるか又は予防する際への本発明の方法の適応を示す。
【0139】
実施例6 線維形成状態の治療方法
線維形成状態の一又は複数の症状と診断された患者をこの実施例に従って治療する。本明細書において治療される線維形成状態の例には、例えば障害/線維形成と関連する肺疾患、障害/線維形成と関連する慢性腎症(腎臓線維形成)、腸線維形成、肝臓線維形成(例えば肝硬変を含む)、頭頸部線維形成、角膜瘢痕化、血管性疾患、及び線維形成と関係する自己免疫性疾患、例えば強皮症、狼瘡及び移植片対宿主病が含まれる。
患者は、リツキシマブないしはヒト化2H7、又はリツキシマブないしはヒト化2H7の断片(例えば、Fab、F(ab').sub.2、Fv、scFv又はダイアボディ)により治療する。
好ましくは、抗体は、以下のいずれかの投薬計画に従って患者に静脈内投与(IV)される:
(A) 1日目に50mg/m2、8、15及び22日目に150mg/m2、
(B) 1日目に150mg/m2、8、15及び22日目に375mg/m2、又は
(C) 1、8、15及び22日目に375mg/m2。
CD20抗体にて治療される患者は、線維形成状態の症状の改善を表すであろう。
代替的な投薬計画においては、患者は、上記のスケジュールAに記載のようにリツキシマブと、出典明記によって、本明細書中にその全体が援用される米国特許第6316601号に記載のαvβ6に対する抗体により治療される。やはり患者は、線維形成状態の症状の改善を表すであろう。
他の代替的な投薬計画においては、患者は、スケジュールBに記載のようにリツキシマブにより治療される。
患者の末梢B細胞のレベルを、対象とする臓器のコラーゲン沈着の量としてモニターする。8か月後に、患者の再構成されたB細胞免疫応答及び/又はコラーゲン沈着の量が予想したレベルに達するので、患者はスケジュールAに従ってリツキシマブにて再治療される。
【0140】
ここで、明確に理解するために図及び実施例によっていくらか詳細に本発明を記載しているので、本発明及び本発明のいずれかの具体的な実施態様の権利範囲を侵すことなく、条件、製剤及び他のパラメーターの広く均等な範囲内で本発明を修飾又は変更することによって同じことを行うことができること、及びそのような修飾及び変更が掲げる特許請求の範囲内に包含されることを意図することは、当分野の通常の技術者に明らかであろう。
本明細書において、言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、この発明が関係する当業者の技術のレベルを表すものであり、個々の刊行物、特許又は特許出願が出典明記により援用されるために具体的かつ個別に示されるのと同じ程度に、出典明記によって本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1A】成体マウスの脾臓、腹腔(PC)及び肝臓のB細胞集団を示す。リンパ球は単離して、抗IgD抗体(X軸)及び抗IgM(Y軸)にて染色した。リンパ球の中のIgD+、IgM+細胞の割合をプロット線で示す。
【図1B】脾臓、血液、PC及び肝臓から単離したB細胞のCD21、CD23及びCD5の発現レベルを示す。
【図1C】肝性B細胞及び脾臓B細胞に結合したアネキシンVの量を示す。
【図1D】様々な刺激に応答したときのCFSE及びCD86(B7.2)の上方制御と肝内B細胞及び脾臓B細胞の増殖の範囲を示す。
【図2A】B細胞欠失マウス(JH-/-)及び野生型マウス(BALB/c)の、単回CCl4投与の24時間後に血清に放出される肝細胞特異的酵素であるALTによって、評価した、肝障害の程度を示す。
【図2B】第6週目のオイル(コントロール)又はCCl4の何れかの投与後1週間の、B細胞欠失マウス(JH-/-)及び野生型マウス(BALB/c)のコラーゲン特異的な染料シリウスレッドにて染色された肝臓組織の組織学的な分析を示す。
【図2C】3回の代表的実験におけるコラーゲン特異的シリウスレッド染色(任意の単位)の量を示す。実験例1及び2(図2C)は3.5mg/kgのCCl4の第6週目の投与1週間後の間質性コラーゲン沈着の範囲を示す。
【図2D】3回の代表的実験におけるコラーゲン特異的シリウスレッド染色(任意の単位)の量を示す。実験3(図2D)は1.75mg/kgのCCl4の第6週目の投与1週間後の間質性コラーゲン沈着の範囲を示す。一連のドットは1匹の動物からの一連の切片を表す。平均値を棒で示す。
【図3】単回CCl4投与後1日目、3日目及び5日目の、B細胞欠失マウス(JH-/-)及び野生型マウス(BALB/c)の肝臓切片の組織学的分析を示す。アポトーシス特異的TUNEL染色(上の2列)、平滑筋アクチン染色(αSMA)(真ん中の2列)又はマクロファージ特異的F4/80染色(下の2列)の何れかに切片を用いた。
【図4A】長期CCl4処置後の、B細胞及びT細胞の両方を欠失しているマウス(RAG2-/-)及び野生型マウスの、肝臓組織中のコラーゲン沈着の組織学的分析を示す。
【図4B】長期CCl4処置後の、RAG2-/-マウス及び野生型マウスの、肝臓組織中の間質性コラーゲン沈着の定量化を示す。
【図5A】第6週目の1.75mg/kgのCCl4処置後の、エプスタインバーウイルス由来のLMP2aタンパク質を発現しているマウス及び野生型マウスの、肝臓組織中の間質性コラーゲン沈着の定量化を示す。
【図5B】第6週目の1.75mg/kgのCCl4処置後の、表面Igを発現しているmIgM tgマウス及び野生型マウスの、肝臓組織中の間質性コラーゲン沈着の定量化を示す。
【図6】60mg/kg/7日又は100mg/kg/7日の何れかのブレオマイシン投与28日間後の、野生型「B6BWT」(C57BL/6J)及びB細胞欠失「B6BKO」(B6.129S2-Igh-6tmlCgn/J)マウスのα-平滑筋アクチンの割合を示す。
【図7】100mg/kg/7日のブレオマイシン又は生理食塩水の何れかの投与28日間後の、野生型(C57BL/6J)及びB-細胞欠失(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J)マウスの肺組織の免疫組織化学分析を示す。
【図8】28日の期間にわたる100mg/kg/7日のブレオマイシン投与後の、野生型マウス(C57BL/6J、■)及びB細胞欠失マウス(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J、□)のパーセント生存率を示す。
【図9】片側性尿管閉塞(Op)に罹っている又は未処置(Unop)のB細胞欠失「B6Bko」(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J)マウス及び野生型「B6Bwt」(C57BL/6J)マウスにおける、α-平滑筋アクチン(図9A)、間質性線維形成(図9B)、拡張した尿細管(図9C)及び健康な尿細管(図9D)のパーセントを示す。
【図10】片側性尿管閉塞(Op)に罹っている又は未処置(Unop)のB細胞欠失(B6.129S2-lgh-6tmlCgn/J)マウス及び野生型(C57BL/6J)マウスから得た、トリクローム染色された腎臓組織の組織学的分析を示す。
【図11】ブレオマイシンなし(コントロール)、ブレオマイシン、ブレオマイシンと抗CD20モノクローナル抗体にて処置されるマウスの肺のB細胞計数を示す。
【図12】ブレオマイシンなし(コントロール)、ブレオマイシン、ブレオマイシンと抗CD20モノクローナル抗体にて処置されるマウスの脾臓のB細胞計数を示す。
【図13】未処置のマウス、又はブレオマイシン滴下後9日後にB細胞枯渇化抗CD20モノクローナル抗体ないしはPBSで処理したマウスの肺から単離したB細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【図14】第6週目の1.75mg/kgのCCl4の処置後に、B細胞枯渇化抗CD20抗体、アイソタイプコントロール抗体又はPBSにて処置したマウスの肝臓組織における平滑筋アクチン免疫染色の定量化を示す。◆、■、△及び●は示したように処置された個々のマウスについて得られた結果を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維形成状態の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項2】
前記B細胞アンタゴニストがB細胞表面抗原に対する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記B細胞表面抗原がCD20である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記B細胞表面抗原がCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD52、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86、TLR-7、TLR-9、CXCR3、APRIL、BR3、BCMA及びTACIからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体がCD20に対するモノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CD20に対する前記モノクローナル抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が完全なヒト抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記患者に治療上有効な量のBAFFアンタゴニストが投与されることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記BAFFアンタゴニストが、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号:15)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号:16)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号:17)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号:18)、及びECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号:19)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記BAFFアンタゴニストは、BAFFレセプター一部と免疫グロブリンの定常領域の一部を少なくとも含む可溶性融合タンパク質を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が自己免疫性疾患に罹っていない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が自己免疫性疾患に罹るリスクを持たない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記B細胞アンタゴニストにより、該B細胞アンタゴニストの前記患者への投与の24時間以内に該患者の末梢B細胞の20%が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記B細胞アンタゴニストにより、該B細胞アンタゴニストの前記患者への投与の24時間以内に該患者の末梢B細胞の60%が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記B細胞アンタゴニストにより、該B細胞アンタゴニストの前記患者への投与の24時間以内に該患者の末梢B細胞の80%が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
肺線維症の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項20】
前記B細胞アンタゴニストがCD20に対する抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
CD20に対する前記抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者が、該B細胞アンタゴニストの投与前と比較して、一又は複数の線維症のマーカーの減少を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記の一又は複数の線維症のマーカーが、平滑筋アクチン沈着又はコラーゲン沈着である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲より少なくとも5%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲より少なくとも25%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲より少なくとも50%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察されるコラーゲン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察されるコラーゲン染色の範囲より少なくとも5%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察されるコラーゲン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察されるコラーゲン染色の範囲より少なくとも25%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察されるコラーゲン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察されるコラーゲン染色の範囲より少なくとも50%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
肝線維症の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項32】
前記B細胞アンタゴニストがCD20に対する抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
CD20に対する前記抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
腎臓線維症の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項36】
前記B細胞アンタゴニストがCD20に対する抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
CD20に対する前記抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
線維形成状態の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストと治療的有効な量のインテグリンレセプターアンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項40】
前記インテグリンレセプターアンタゴニストがインテグリンレセプターに特異的な抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記インテグリンレセプターが、αvβ6、αvβ5、α5β1、α1β1、α4β1及びα4β7からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記インテグリンレセプターがα4β1又はα4β7インテグリンレセプターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記インテグリンレセプターアンタゴニストはナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が自己免疫性疾患に罹っていない、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記患者が自己免疫性疾患に罹るリスクを持たない、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
線維形成状態の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))と治療的有効な量のナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))が投与されることを含んでなる方法。
【請求項47】
線維形成状態の予防方法であって、一又は複数の線維形成状態が発達するリスクを有する患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項48】
前記の一又は複数の線維形成状態が発達するリスクを有する患者が、肺、肝臓又は腎臓の線維形成のリスクを増やすことが知られている一又は複数の環境条件に曝されたことがある、請求項47に記載の方法。
【請求項1】
線維形成状態の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項2】
前記B細胞アンタゴニストがB細胞表面抗原に対する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記B細胞表面抗原がCD20である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記B細胞表面抗原がCD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD52、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86、TLR-7、TLR-9、CXCR3、APRIL、BR3、BCMA及びTACIからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体がCD20に対するモノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
CD20に対する前記モノクローナル抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が完全なヒト抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記患者に治療上有効な量のBAFFアンタゴニストが投与されることを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記BAFFアンタゴニストが、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号:15)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号:16)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号:17)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号:18)、及びECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号:19)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記BAFFアンタゴニストは、BAFFレセプター一部と免疫グロブリンの定常領域の一部を少なくとも含む可溶性融合タンパク質を含んでなる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が自己免疫性疾患に罹っていない、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が自己免疫性疾患に罹るリスクを持たない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記B細胞アンタゴニストにより、該B細胞アンタゴニストの前記患者への投与の24時間以内に該患者の末梢B細胞の20%が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記B細胞アンタゴニストにより、該B細胞アンタゴニストの前記患者への投与の24時間以内に該患者の末梢B細胞の60%が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記B細胞アンタゴニストにより、該B細胞アンタゴニストの前記患者への投与の24時間以内に該患者の末梢B細胞の80%が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
肺線維症の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療上有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項20】
前記B細胞アンタゴニストがCD20に対する抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
CD20に対する前記抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者が、該B細胞アンタゴニストの投与前と比較して、一又は複数の線維症のマーカーの減少を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記の一又は複数の線維症のマーカーが、平滑筋アクチン沈着又はコラーゲン沈着である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲より少なくとも5%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲より少なくとも25%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察される平滑筋アクチン染色の範囲より少なくとも50%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察されるコラーゲン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察されるコラーゲン染色の範囲より少なくとも5%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察されるコラーゲン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察されるコラーゲン染色の範囲より少なくとも25%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記B細胞アンタゴニストが前記患者に投与された後に、該患者の一又は複数の組織に観察されるコラーゲン染色の範囲が、該B細胞アンタゴニストの投与前の該患者の一又は複数の同じ組織に観察されるコラーゲン染色の範囲より少なくとも50%以上狭い、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
肝線維症の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項32】
前記B細胞アンタゴニストがCD20に対する抗体である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
CD20に対する前記抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
腎臓線維症の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項36】
前記B細胞アンタゴニストがCD20に対する抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体がCD20に対するキメラのマウス/ヒトモノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
CD20に対する前記抗体がリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
線維形成状態の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストと治療的有効な量のインテグリンレセプターアンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項40】
前記インテグリンレセプターアンタゴニストがインテグリンレセプターに特異的な抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記インテグリンレセプターが、αvβ6、αvβ5、α5β1、α1β1、α4β1及びα4β7からなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記インテグリンレセプターがα4β1又はα4β7インテグリンレセプターである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記インテグリンレセプターアンタゴニストはナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が自己免疫性疾患に罹っていない、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記患者が自己免疫性疾患に罹るリスクを持たない、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
線維形成状態の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に治療的有効な量のリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))と治療的有効な量のナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))が投与されることを含んでなる方法。
【請求項47】
線維形成状態の予防方法であって、一又は複数の線維形成状態が発達するリスクを有する患者に治療的有効な量のB細胞アンタゴニストが投与されることを含んでなる方法。
【請求項48】
前記の一又は複数の線維形成状態が発達するリスクを有する患者が、肺、肝臓又は腎臓の線維形成のリスクを増やすことが知られている一又は複数の環境条件に曝されたことがある、請求項47に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−540678(P2008−540678A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512532(P2008−512532)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019404
【国際公開番号】WO2006/125140
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507381330)バイオジェン アイデック インク. (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019404
【国際公開番号】WO2006/125140
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507381330)バイオジェン アイデック インク. (1)
【Fターム(参考)】
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