説明

線路測定データ分析システム

【課題】地上側設備で測定された軌道回路受信電圧等の線路データを、キロ程軸上で評価を可能とする線路測定データ分析システムを提供する。
【解決手段】車上システム3において、車両の速度を含む運転状況を示す情報を取得し、時刻とともに車上記憶装置20に格納する。地上システム5では、車上記憶装置20からそれらの情報を取得し、速度と時刻から車両の走行距離を算出し、キロ程に変換する。変換したキロ程と時刻及び地上記憶装置に格納されている軌道回路の開始点と終点のキロ程と、に基づき、車両が軌道回路を通過したときの在線時間を算出する。そして、地上記憶装置に格納された経過時間に対応する軌道回路受信電圧を在線時間に対応するキロ程に対応させて、車両の運転状況を示す情報とともに地上記憶装置70に格納し、格納したデータを出力装置100に出力する。これによりキロ程に対する軌道回路受信電圧を分析・評価できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の線路の状態を評価するための線路測定データ分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両走行時の軌道回路の短絡状態を把握するため、メモリハイコーダのような測定装置を用いて、地上側で軌道回路受信電圧を測定し、あらかじめ、車両が軌道回路のある位置を走行したときの軌道回路受信電圧をデータベース化しておき、別の車両がその軌道回路を走行したときの軌道回路受信電圧を測定し、データベースと照合することで車両の走行位置を推定する手法があった(例えば、特許文献1参照)
また、検測車を用いて軌道短絡状態を検出する装置もある。つまり、検測車の先端下部においてレール間の短絡電流を検出した値と、後端下部においてレール間の短絡電流の値のレベル差に基づいて、軌道短絡状態を検出するのである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−1054号公報
【特許文献2】特開平10−59180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に記載の技術では、メモリハイコーダを用いて地上側で軌道回路受信電圧を測定した場合、測定結果により評価できるのは軌道回路受信電圧の時間変化のみの評価であり、車両がどの位置を走行したときのデータであるか評価することは困難であった。
【0005】
また、あらかじめ車両走行位置と軌道回路受信電圧の特性をデータベース化しておけば、軌道回路受信電圧から車両がどの位置を走行したかを評価することは可能であるが、時々刻々と変化することが予想される軌道回路受信電圧との照合では、推定される車両走行位置と実際の走行位置では差が生じてしまう可能性があった。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の技術では、専用の検測車が必要となる上、検査周期も限定的となること。また、軌道回路の短絡状態を的確に分析するためには、軌道回路受信電圧を測定することが必要であるが、上記特許文献2に記載の技術で検出できるのは、車両の車軸を流れる短絡電流の値であって、軌道回路受信電圧を測定することはできないという問題もあった。
【0007】
さらに、従来の技術では、地上側で測定された軌道回路受信電圧は時系列データであり、それをキロ程へ換算する換算手法がなかったため、時系列上での評価することしかできなかった。
【0008】
そして、軌道回路受信電圧を、キロ程軸上で評価できなかったため、車両の運転データ、線形データとの関係について分析および評価することが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、地上側設備で測定された軌道回路受信電圧等の線路データを、キロ程軸上で評価を可能とする線路測定データ分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための形態」欄において用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0011】
上記「発明が解決しようとする課題」において述べた問題を解決するための線路測定データ分析システム(1)は、車両(7)に搭載された車上システム(3)及び地上に設置された地上システム(5)を備えた線路測定データ分析システム(1)である。
【0012】
車上システム(3)は、運転情報取得手段(10)、運転情報格納手段(20)及び車上処理手段(30)を備えている。
運転情報取得手段(10)は、少なくとも車両(7)の移動情報を含む車両(7)の運転状況を示す情報を取得するものであり、運転情報格納手段(20)は、運転情報取得手段(10)で取得した車両(7)の運転状況を示す情報を、その情報を取得した時刻とともに格納するためのものである。
【0013】
車上処理手段(30)は、運転情報取得手段(10)で取得した車両(7)の運転状況を示す情報を、情報を取得した時刻とともに運転情報格納手段(20)に格納するものである。
【0014】
地上システム(5)は、車両入出検出手段(50)、線路データ取得手段(60)、地上情報格納手段(70)、走行距離算出手段(80)、キロ程入力手段(70,92)、走行キロ程変換手段(80)、在線時間算出手段(80)及び線路データ抽出手段(80)を備えている。
【0015】
車両入出検出手段(50)は、所定の区間への車両(7)の進入と退出を検出するためのものであり、線路データ取得手段(60)は、車両(7)が所定の区間を通過しているときに、線路上で取得可能な線路データを取得するものである。
【0016】
地上情報格納手段(70)は、線路データ取得手段(60)で取得した線路データを、車両(7)が所定の区間に進入してから退出するまでの経過時間に対応付けて格納するためのものである。
【0017】
走行距離算出手段(80)は、運転情報格納手段(20)に格納した車両(7)の移動情報とその情報を取得した時刻に基づいて、線路上において基準となる地点から情報を取得した時刻における車両(7)の走行距離を算出し、算出した走行距離を、時刻と対応付けて、地上情報格納手段(70)に順次格納するものである。
【0018】
キロ程入力手段(70,92)は、走行距離算出手段(80)における線路上において基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程を入力するためのものである。
【0019】
走行キロ程変換手段(80)は、走行距離算出手段(80)で算出した車両(7)の走行距離を、キロ程入力手段(70,92)から入力された、線路上において基準となる地点のキロ程に対応付けて変換するものである。
【0020】
在線時間算出手段(80)は、走行キロ程変換手段(80)で変換した車両(7)の走行したキロ程及び時刻と、キロ程入力手段(70,92)から入力された所定区間の開始点と終点のキロ程と、に基づき、車両(7)が所定の区間を通過したときの在線時間を算出するものである。
【0021】
線路データ抽出手段(80)は、地上情報格納手段(70)に格納された経過時間に対応する線路データを、在線時間算出手段(80)で算出した在線時間に対応するキロ程に対応させて、地上情報格納手段(70)に格納するものである。
【0022】
このような、線路測定データ分析システム(1)によれば、地上システム(5)において取得された線路データを、線路上おけるキロ程において評価することが可能となる。以下説明する。
【0023】
線路測定データ分析システム(1)では、車上システム(3)において、車両(7)の運転状況を示す情報が取得され、時刻とともに運転情報格納手段(20)に格納される。格納された運転状況を示す情報には、車両(7)の移動に関する情報が含まれている。
【0024】
一方、地上においては、所定の区間を車両(7)が通過したときの線路データが取得され、車両(7)が所定の区間に進入してから退出するまでの経過時間とともに格納される。
【0025】
また、車上システム(3)において、運転情報取得手段(10)には、少なくとも車両(7)の移動情報を含む車両(7)の運転状況を示す情報がその情報を取得した時刻とともに格納されている。
【0026】
ここで「車両(7)の移動に関する情報」とは、車両(7)の速度や移動距離のように、車両(7)の移動に伴って変化する情報である。
したがって、例えば、車両(7)の移動に関する情報が車両(7)の速度である場合には、その値を線路上において基準となる地点から時間積算していけば、その所定の地点からの車両(7)の線路上の走行距離が算出できる。
【0027】
そして、走行距離及び時刻と、キロ程入力手段(70,92)から入力された、線路上において基準となる地点のキロ程と、を対比させることにより、車両(7)がある時刻においてどのキロ程に位置しているのかが分かる。
【0028】
また、キロ程入力手段(70,92)からは、所定の区間の開始点と終点のキロ程が入力されるので、車両(7)の走行したキロ程及び時刻と、所定の区間の開始点と終点のキロ程と、に基づき、車両(7)が所定の区間を通過したときの在線時間を算出することができる。
【0029】
ここで、地上情報格納手段(70)に格納された「経過時間」と「在線時間」とは、いずれも、車両(7)が所定の区間を通過する際に要する時間であり、同じものである。
したがって、経過時間に対応する線路データを、在線時間に対応するキロ程に対応させることにより、地上システム(5)において取得された線路データを、線路におけるキロ程において評価することが可能となる。
【0030】
また、車上システム(3)及び地上システム(5)における相対的な時間である在線時間と経過時間を対応させて、キロ程に対する線路データを算出している。したがって、車上システム(3)における時刻と地上システム(5)における時刻に誤差があっても、その誤差がキロ程に対する線路データの算出に影響を与えないので、キロ程に対する線路データを正確に評価することができる。
【0031】
ここで、請求項2に記載のように、キロ程入力手段(70,92)は、使用者の入力操作により、線路上において基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程を入力可能に構成されていると、キロ程入力を、例えば、キーボードなどの入力装置から入力することができるので、線路測定データ分析システム(1)を簡易な構成とすることができる。
【0032】
また、請求項3に記載のように、キロ程入力手段(70,92)は、線路上において基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程を予め格納しておくキロ程格納手段(70)を備え、キロ程格納手段(70)から線路上において基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程を入力するようにしてもよい。
【0033】
このようにすると、線路上において基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程等のキロ程情報を予めデータベース化して、キロ程格納手段(70)に格納しておくことにより、使用者が入力操作をする必要がなくなるので、使用者にとって使いやすい線路測定データ分析システム(1)とすることができる
なお、「線路データ」とは、軌道回路受信電圧、帰線電流、電車線の押上量・歪量、線路・沿線設備の振動及び騒音、或いは、レール輪重・横圧などのように、列車が線路を通過する際に地上システム(5)で取得することができるデータを意味している。
【0034】
また、請求項4に記載のように、地上システム(5)は、地上情報格納手段(70)に格納された、線路のキロ程及びそのキロ程に対応付けられた線路データを目視可能な状態で出力する出力手段(100)を備えるようにすると、キロ程に対する線路データを目視できるので、評価が容易になる。
【0035】
また、線路データを評価するには、線路上の車両(7)の位置における線路データとともに線路の状態や車両(7)の運転状況を示す情報が分かっていると、その位置における線路の状況をより的確に評価することができる。
【0036】
そこで、請求項5に示すように、地上システム(5)に、線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を格納した線路状態入力手段(90、92)を備えるようにする。
そして、線路データ抽出手段(80)では、線路状態入力手段(90、92)から、線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を取得し、取得した線路の状態を示す情報を、地上情報格納手段(70)に格納された線路データに加え、キロ程と対応付けて地上情報格納手段(70)に格納する。
【0037】
また、出力手段(100)では、地上情報格納手段(70)に格納された、線路のキロ程、そのキロ程に対応付けられた線路データ及び線路の状態を示す情報を目視可能な状態で出力するようにすると、線路の状況をより的確に評価することができる。
【0038】
ここで、請求項6に記載のように、線路状態入力手段(90、92)は、使用者の入力操作により、線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を入力可能に構成されていると、線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を、例えば、キーボードなどの入力装置から入力することができるので、線路測定データ分析システム(1)を簡易な構成とすることができる。
【0039】
また、請求項7に記載のように、線路状態入力手段(90、92)は、線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を予め格納した線路情報データベース(90)を備え、線路情報データベース(90)から線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を入力するようにしてもよい。
【0040】
このようにすると、線路のキロ程に対する線路の状態を予めデータベース化して、線路情報データベース(90)に格納しておくことにより、使用者が入力操作をする必要がなくなるので、使用者にとって使いやすい線路測定データ分析システム(1)とすることができる
さらに、請求項8に記載のように、出力手段(100)を、地上情報格納手段(70)に格納された、線路のキロ程、そのキロ程に対応付けられた線路データ及び線路の状態を示す情報に加え、車両(7)の運転状況を示す情報を読み出し、目視可能な状態で出力するように構成するとよい。
【0041】
このようにすると、線路の状態だけでなく、車両(7)が走行中に各キロ程において取得された車両(7)の運転状況を示す情報も線路データとともに出力されるので、線路の状況をより的確に評価することができる。
【0042】
ところで、車上システム(3)と地上システム(5)の間で情報を授受する方法としては、種々の方法が考えられるが、請求項9に記載のようにするとよい。つまり、運転情報格納手段(20)を、車上システム(3)から着脱可能に構成し、線路データ抽出手段(80)に、運転情報格納手段(20)が着脱可能となるように構成する。
【0043】
そして、運転情報格納手段(20)が装着された状態で、運転情報格納手段(20)から車両(7)の運転状況を示す情報を取得するようにすると、例えば、小型ハードディスク装置やUSBメモリなど着脱可能な記憶装置を用いて、簡単に車両(7)の運転状況を示す情報を授受できて便利である。
【0044】
また、請求項10に記載のように、運転情報格納手段(20)を、格納している情報を通信にて出力可能に構成し、線路データ抽出手段(80)を、運転情報格納手段(20)から通信出力される情報を受信可能に構成し、運転情報格納手段(20)に格納されている情報、例えば、車両(7)の移動に関する情報や運転状況を示す情報を通信にて取得するようにしてもよい。
【0045】
このようにすると、例えば、無線通信により車両(7)の移動に関する情報や運転状況を示す情報をリアルタイムで授受できるようになるので、線路の状態を速やかに分析・評価できるようになる。
【0046】
ところで、地上システム(5)において、車両(7)の走行状態を示す線路データとして、軌道回路受信電圧がキロ程に対応付けられて分析・評価することができると軌道回路の短絡状態を的確に把握することができるので都合がよい。
【0047】
そこで、請求項11に記載のように、所定の区間を、軌道回路とし、線路データを、軌道回路における軌道回路受信電圧とすると、軌道回路受信電圧をキロ程に対応付けて分析・評価することができるようになるため、軌道回路の短絡状態を的確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】線路測定データ分析システムの概略の構成を示すブロック図である。
【図2】車両の運転状況を示す情報の測定方法及び軌道における軌道回路受信電圧の測定方法を示す説明図である。
【図3】車上処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】地上算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】車上記憶装置及び地上記憶装置に格納される時刻、運転情報、キロ程、経過時間及び在線時間のイメージを示す図である。
【図6】地上記憶装置に格納される時刻、運転情報、キロ程及び在線時間のイメージを示す図である。
【図7】出力装置におけるデータの出力のイメージを示す図である。
【図8】出力装置におけるデータの出力のイメージを示す図である。
【図9】第2実施形態における線路測定データ分析システム2の概略の構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態における地上算出処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
[第1実施形態]
図1は、本発明が適用された線路測定データ分析システム1の概略の構成を示すブロック図である。また、図2は、車両7の運転状況を示す情報の測定方法及び軌道における軌道回路受信電圧の測定方法を示す説明図である。
【0050】
線路測定データ分析システム1は、図1に示すように、車上システム3と地上システム5とから構成される。
車上システム3は、車両7(図2(a)参照)に搭載されており、運転情報取得部10、車上記憶装置20及び車上処理部30を備えている。
【0051】
運転情報取得部10は、少なくとも車両7の移動情報を含む車両7の運転状況を示す情報を取得するものであり、速度センサ12、力行ノッチカウンタ14、ブレーキノッチカウンタ16などから構成されている。
【0052】
速度センサ12は、車両7の速度を検出するセンサであり、車両7の車軸の回転数に比例した電圧を出力する速度発電機や車両7の車軸の回転数に比例したパルスを発生させるパルス発生器などである。
【0053】
力行ノッチカウンタ14は、車両7の力行時の力行ノッチ数を検出するセンサであり、運転者が力行レバーを操作したときのノッチ数を検出するカウンタである。また、ブレーキノッチカウンタ16は、運転者がブレーキ操作をしたときのブレーキノッチ数を検出するカウンタである。
【0054】
車上記憶装置20は、運転情報取得部10で取得した車両7の運転状況を示す情報を、その情報を取得した時刻とともに格納するための記憶装置であり、小型ハードディスク装置やUSBメモリなど、車上システム3から着脱可能な記憶装置である。
【0055】
車上処理部30は、図示しないCPU、ROM、RAM及びI/Oを備えており、また、現在時刻を得るための時計機能を有している。そして、運転情報取得部10で取得した車両7の運転状況を示す情報を、その情報を取得した時刻とともに車上記憶装置20に格納する。
【0056】
このとき、車上記憶装置20に格納される運転状況を示す情報のイメージを図6(a)に示す。
地上システム5は、軌道リレー50、軌道回路受信電圧測定部60、地上記憶装置70、地上処理部80、線路情報データベース90及び出力装置100を備えている。
【0057】
軌道リレー50は、軌道回路への車両7の進入と退出を検出して出力するリレーであり、図2(b)に示すように、2本のレール間の受信端に設置されている。
軌道リレー50は、軌道回路に車両が存在しない場合は、短絡電流が流れないので、レールを介して軌道リレー50のコイルに電流が流れ、軌道リレー50はオンとなり、軌道回路に車両が存在する場合には、短絡電流が流れるので、受信端に設置された軌道リレー50には電流が流れなくなるため、軌道リレー50はオフとなる。
【0058】
軌道回路受信電圧測定部60は、車両7が軌道回路を通過しているときに、軌道回路受信電圧を測定するものである。
ここで、図2(b)に基づき、軌道回路受信電圧の測定方法について説明する。図2(b)に示すように、2本のレールにより形成されるある軌道回路の一端(送信端)のレール間に発振器62を取り付け、一定振幅の交流電圧をレール間に印加する。
【0059】
また、他端(受信端)のレール間の電圧を時系列に測定することができる電圧測定器64を取り付け、レール間の電圧を測定する。このとき測定される電圧を「軌道回路受信電圧」と呼ぶ。
【0060】
このようにすると、車両7がその軌道回路に進入したときには、車両7の車軸でレール間が短絡されるので、軌道回路受信電圧は低下することになるが、車軸などの抵抗があるため、0にはならない。
【0061】
そして、車両7が軌道回路を移動(送信側から受信側或いは受信側から送信側へ移動)する。その際、新型の鉄道車両は、軽量化される傾向にあるので、軌道回路受信電圧(残留電圧)への影響があったり、レール表面に錆や汚れの被膜があると、地点ごとにその影響があったりする。
【0062】
したがって、車両7の移動に伴い、軌道回路受信電圧が変化することになる。よって、電圧測定器64で時系列に測定すれば、軌道回路受信電圧を測定することができる。
地上記憶装置70は、大容量のハードディスク装置などの記憶装置であり、軌道回路受信電圧測定部60で測定した軌道回路受信電圧を、車両7が軌道回路に進入してから退出するまでの経過時間に対応付けて格納するものである。
【0063】
また、地上記憶装置70には、線路のキロ程及び軌道回路の開始点と終点のキロ程が予め格納されている。
地上記憶装置70に格納される時刻、経過時間及び軌道回路受信電圧のイメージを図5(a)に示す。
【0064】
地上処理部80は、図示しないCPU、ROM、RAM及びI/Oを備え、I/O部分に車上記憶装置20が着脱可能となるインターフェースを有し、また、現在時刻を得ることができる時計機能を有している。
【0065】
そして、車上記憶装置20が装着された状態で、車上記憶装置20から、車両7の運転状況を示す情報とその情報を取得した時刻などの情報を読み出すことができるようになっている。
【0066】
また、地上処理部80は、以下の(ア)〜(ケ)に示す処理を実行する。
(ア)車上記憶装置20に格納した車両7の運転状況を示す情報とその情報を取得した時刻を車上記憶装置20から取得する。
【0067】
(イ)(ア)において取得した、車両7の運転状況を示す情報のうち車両7の速度と速度を取得した時刻に基づいて、線路上において基準となる地点から情報を取得した時刻における車両7の走行距離を算出する。
【0068】
(ウ)(イ)で算出した車両7の走行距離を、地上記憶装置70に格納されているキロ程に対応させる。
(エ)(ウ)において算出した車両7の走行したキロ程及び時刻と、地上記憶装置70に格納されている軌道回路の開始点と終点のキロ程と、に基づき、車両7が軌道回路を通過したときの在線時間を算出する。
【0069】
(オ)地上記憶装置70に格納された経過時間に対応する軌道回路受信電圧を(エ)において算出した在線時間に対応するキロ程に対応させて、地上記憶装置70に格納する。
(カ)線路情報データベース90から、キロ程に対する線路の状態を示す情報を取得する。
【0070】
(キ)(カ)において取得した線路の状態を示す情報をキロ程と対応付けて、地上記憶装置70に格納された軌道回路受信電圧とともに地上記憶装置70に格納する。
(ク)(ア)において取得した、車両7の運転状況を示す情報を、キロ程に基づいて(キ)において格納したデータとともに地上記憶装置70に格納する。
【0071】
(ケ)(ク)において地上記憶装置に格納した情報を出力装置100に出力する。
線路情報データベース90は、ハードディスク装置、CD−ROM或いはDVDなどの記憶媒体に格納された、線路上のキロ程に対する線路の状態を示す情報のデータベースである。
【0072】
線路情報データベース90に格納されている情報としては、キロ程に対する線路の曲率、傾斜角、勾配及び駅その他の構造物などである。
出力装置100は、地上記憶装置70に格納された、線路のキロ程、キロ程に対応付けられた軌道回路受信電圧及び線路の状態を示す情報を目視可能な状態で出力するための装置である。
【0073】
具体的には、それらの情報を画面表示できるパソコン或いはパソコンに接続され、表示画面をプリントアウトするためのプリンタ或いはメモリハイコーダなどである。
(車上処理部における車上処理)
次に、図3に基づいて、車上システム3の車上処理部30において実行される車上処理について説明する。図3は、車上処理の流れを示すフローチャートである。
【0074】
車上処理は、プログラムとして車上処理部30のROMに格納されており、CPUがROMから読み出して実行するものであり、車両7の乗員の起動操作、例えば、運行指令等が記録されているICカードを車上処理部30に挿入するなどの操作を行ったときに処理が開始される。
【0075】
処理が開始されると、S100において、CPUが初期設定を行う。つまり、使用者が起動操作を行った時点を距離算出の基準点とする。
続くS105では、CPUが、運転情報取得部10から、その時刻における運転情報を取得する。つまり、運転情報取得部10を構成する速度センサ12から車両7の速度、力行ノッチカウンタ14から力行ノッチ数、ブレーキノッチカウンタ16からブレーキノッチ数を取得する。
【0076】
続くS110では、S105において取得した各時刻の運転情報を、CPUが車上記憶装置20に格納する。車上記憶装置20に格納される運転情報のイメージを図6(a)に示す。
【0077】
(地上処理部80における地上算出処理)
次に、図4に基づいて、地上システム5の地上処理部80において実行される地上算出処理について説明する。図4は、地上算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0078】
地上算出処理は、プログラムとして地上処理部80のROMに格納されており、CPUがROMから読み出して実行するものであり、使用者の起動操作或いは地上システム5の電源オンとともに処理が開始される。
【0079】
処理が開始されると、S200において、CPUが、車上記憶装置20に、図6(a)に示すように格納されているデータから時刻とその時刻に対応する運転状況を示す情報、つまり、車両7の速度、力行ノッチ、ブレーキノッチを取得する。
【0080】
続くS205では、S200において取得した各時刻における車両7の速度から、CPUが、基準点からの走行距離を算出し、時刻に対応付けて、地上記憶装置70に格納する。
【0081】
つまり、図3に示すS100において初期設定が終わった時刻を基準点とし、その基準点が距離0であるとして、車両7の速度を時間積算することにより基準点からの車両7の走行距離を算出し、算出結果を時刻に対応付けて地上記憶装置70に格納するのである。
【0082】
続くS210では、CPUが、地上記憶装置70からキロ程情報を取得し、続くS215では、S205において算出した車両7の走行距離を、CPUが、キロ程に変換し、地上記憶装置70に格納する。
【0083】
つまり、キロ程情報に基づき、走行距離の基準点のキロ程を求め、その基準点のキロ程に対して走行距離のキロ程を換算することにより、走行距離をキロ程に変換し、変換したキロ程を地上記憶装置70に格納するのである。このとき地上記憶装置70に格納されるキロ程のイメージを図6(b)に示す。
【0084】
続くS220では、CPUが、地上記憶装置70から軌道回路のキロ程、つまり、軌道回路の開始点のキロ程と終点のキロ程を取得する。
続くS225では、CPUが、在線時間を算出し、地上記憶装置70に格納する。つまり、S215において変換したキロ程と時刻、S220において取得した軌道回路の開始点キロ程と終点のキロ程から、車両7が軌道回路に進入してから退出するまでに経過した在線時間を算出し、地上記憶装置70に格納する。このとき地上記憶装置70に格納される在線時間のイメージを図6(c)に示す。
【0085】
続くS230では、CPUが、地上記憶装置70に格納されている、経過時間に対応する軌道回路受信電圧(図5(a)参照)を取得する。
続くS235では、CPUが、S230において取得した経過時間に対応する軌道回路受信電圧を、S225において算出した在線時間に対応するキロ程(図5(b)参照。ただし、図5(b)は、図6(c)と同じ図である)に対応付けて、地上記憶装置70に格納する。このとき地上記憶装置70に格納されるキロ程に対応付けられた在線時間のイメージを図5(c)に示す。
【0086】
ここで、地上記憶装置70に格納された「経過時間」と「在線時間」とは、いずれも、車両7が軌道回路を通過する際に要する時間であり、同じものである。したがって、経過時間に対応する軌道回路受信電圧を、在線時間に対応するキロ程に対応させることにより、地上システム5において取得された軌道回路受信電圧を、線路におけるキロ程に対応付けることが可能となる。
【0087】
続くS240では、CPUが、線路情報データベース90から、車両7が走行する線路の状態を示す情報を取得する。つまり、キロ程に対する線路の曲率、傾斜角、勾配及び駅その他の構造物などの情報を取得する。
【0088】
続くS245では、CPUが、S235において地上記憶装置70に格納した軌道回路受信電圧及びキロ程を読み出し、S240において取得した線路の状態を示す情報を、キロ程を介して軌道回路受信電圧と対応付けて地上記憶装置70に格納する。
【0089】
続くS250では、CPUが、S200において地上記憶装置70から取得した、車両7の運転状況を示す情報をキロ程に対応付けて、地上記憶装置70に格納する。
続くS255では、CPUが、S250において地上記憶装置70に格納したすべての情報を出力装置100に出力した後、処理をS200に戻し、地上算出処理を繰り返す。
【0090】
なお、車上算出処理は、使用者の終了操作又は地上システム5の電源オフにより終了となる。
以上の、車上算出処理及び地上算出処理が行われた結果、地上記憶装置70に記憶された情報が出力装置100に時系列データとして出力される。その出力のイメージを図7及び図8に示す。
【0091】
図7において、Aで示すグラフは、軌道回路受信電圧を示し、Bで示すグラフは、線路の曲率を示し、Cで示すグラフは、線路の勾配を示し、Dで示すグラフは、構造物の種類を示している。
【0092】
また、図8において、Aで示すグラフは、軌道回路受信電圧を示し、Eで示すグラフは、力行ノッチ及びブレーキノッチの状態を示している。
(線路測定データ分析システム1の特徴)
以上に説明した線路測定データ分析システム1によれば、軌道回路受信電圧がキロ程と対応付けて地上記憶装置70に記憶されるとともに、出力装置100に目視可能な状態で出力される。
【0093】
したがって、車両7が走行した場合、どのキロ程においてどのような軌道回路受信電圧が得られているかが容易に分かるようになる。
さらに、そのキロ程における線路の状態を示す情報、つまり、線路の曲率、勾配、傾斜角などとともに、車両7の運転状況を示す情報、つまり、力行ノッチ数、ブレーキノッチ数なども地上記憶装置70に記憶されるとともに、出力装置100に目視可能な状態で出力される。
【0094】
つまり、キロ程に対する各種のデータが出力装置100に時系列データとして出力されるので、線路の状態、例えば、あるキロ程における力行状態と曲率及び軌道回路受信電圧の関係が明らかになる。したがって、車両7の走行状態別に軌道回路の短絡状態を総合的に分析・評価することが容易にできるようになる。
【0095】
また、車上システム3と地上システム5の間で情報の授受する方法として、車上記憶装置20を、車上システム3から着脱可能に構成している。また、車上記憶装置20が着脱可能となるように地上処理部80を構成している。
【0096】
そして、地上処理部80に車上記憶装置20が装着された状態で、車上記憶装置20から車両7の運転状況を示す情報及びそれを取得した時刻を取得するようしている。つまり、小型ハードディスク装置やUSBメモリなど着脱可能な記憶装置を用いて、簡単に車両7の運転状況を示す情報及びそれを取得した時刻を授受できるので便利である。
【0097】
また、車上システム3及び地上システム5における相対的な時間である在線時間と経過時間を対応させて、キロ程に対する軌道回路受信電圧を算出している。したがって、車上システム3における時刻と地上システム5における時刻に誤差があっても、その誤差がキロ程に対する軌道回路受信電圧の算出に影響を与えないので、キロ程に対する軌道回路受信電圧を正確に評価することができる。
[第2実施形態]
次に、図9及び図10に基づき、第2実施形態における線路測定データ分析システム2について説明する。図9は、線路測定データ分析システム2の概略の構成を示すブロック図であり、図10は、線路測定データ分析システム2の地上システム5の地上処理部80における地上算出処理の流れを示すフローチャートである。
(構成の説明)
線路測定データ分析システム2は、線路上において車両7の走行距離の算出の基準となる地点のキロ程及び線路上のキロ程に対する線路の状態を示す情報を使用者が手動で入力するようにしたものである。
【0098】
なお、第2実施形態における線路測定データ分析システム2は、構成品及び処理内容が第1実施形態における線路測定データ分析システムと同じ部分が多いため、同じ構成品及び処理には同じ符号を付し、その説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0099】
線路測定データ分析システム2は、図9に示すように、地上システム5において、線路情報データベース90の代わりに入力装置92を備えている。
入力装置92は、キーボードやスキャナなど、使用者の入力操作によりデータ入力を行う装置であり、線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を、線路のキロ程が記載されている帳票などを見ながら使用者が入力するためのものである。
【0100】
また、入力装置92からは、線路上において車両7の走行距離の算出の基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程が使用者によって入力される。
なお、第2実施形態における線路測定データ分析システム2では、地上記憶装置70に、線路上において車両7の走行距離の算出の基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程は格納されていない。
(車上処理の説明)
第1実施形態における線路測定データ分析システム1では、車上処理のS210(図4参照)において、CPUが、地上記憶装置70からキロ程情報を取得していたが、第2実施形態における車上処理では、図10に示すように、S210の代わりにS212として、入力装置92からキロ程情報(線路上において車両7の走行距離の算出の基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程)を取得する。
【0101】
また、第1実施形態における車上処理のS240(図4参照)において、CPUが、線路情報データベース90から、車両7が走行する線路の状態を示す情報を取得していたが、第2実施形態における車上処理では、図10に示すように、S240の代わりにS242として、入力装置92から車両7が走行する線路の状態を示す情報を取得している。
(線路測定データ分析システム2の特徴)
線路測定データ分析システム2は、線路測定データ分析システム1と同様の特徴を有している。また、線路上において基準となる地点のキロ程及び所定の区間の開始点と終点のキロ程、或いは、線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報をキーボードなどの入力装置から入力することができるので、線路測定データ分析システム2を簡易な構成とすることができる。
【0102】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
【0103】
(1)上記実施形態では、車上システム3と地上システム5との間の情報の授受を着脱可能な記憶装置を用いていたが、記憶装置の代わりに、送受信機を用いてもよい。
つまり、車上システム3では、車上記憶装置20に無線送信機などのようなデータ送信機能を設け、格納している情報を通信にて出力可能にする。また、地上システム5では、地上処理部80に、無線受信器などのようなデータ受信機能を設け、車上記憶装置20から通信出力される情報を受信可能にする。
【0104】
そして、車上記憶装置20から車両7の運転状況を示す情報及びそれを取得した時刻を通信にて取得するようにしてもよい。このようにすると、無線通信により車両7の運転状況を示す情報及びそれを取得した時刻をリアルタイムで授受できるようになるので、線路の状態を速やかに分析・評価できるようになる。
【0105】
(2)上記実施形態では、基準点からの車両7の走行距離及びキロ程を地上処理部80で算出し、地上記憶装置70に格納していたが、車上処理部30で算出し、算出した走行距離を時刻に対応付けて、車上記憶装置20に格納するようにしてもよい。
【0106】
そして、地上処理部80では、車両7の走行距離の算出に代えて、車上記憶装置20から車両7の走行距離を取得して、地上算出処理を行うようにするのである。このようにしても、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0107】
また、このようにすると、上記(1)に記載のように、車上システム3と地上システム5との間の情報伝送を無線送受信機によって行うようにした場合には、車両7の運転状況を示す情報及びそれを取得した時刻に加え、キロ程をリアルタイムで授受できるようになるので、線路の状態を速やかに分析・評価できるようになる。
(3)上記実施形態では、軌道回路を所定の区間とし、軌道回路受信電圧を線路データとして説明したが、他の区間や線路データを用いてもよい。
【0108】
例えば、電流センサで取得した帰線電流、変位センサで取得した電車線の押上量・歪量、振動センサで取得した線路・沿線設備の振動、騒音センサで取得した騒音、応力センサで取得したレール輪重・横圧を線路データとして用いてもよい。
【0109】
なお、この場合、振動データを取得する区間の開始点及び終点のキロ程を地上記憶装置70に予め格納しておく必要がある。
【符号の説明】
【0110】
1,2…線路測定データ分析システム、3…車上システム、5…地上システム、7…車両、10…運転情報取得部、12…速度センサ、14…力行ノッチカウンタ、16…ブレーキノッチカウンタ、20…車上記憶装置、30…車上処理部、50…軌道リレー、60…軌道回路受信電圧測定部、62…発振器、64…電圧測定器、70…地上記憶装置、80…地上処理部、90…線路情報データベース、92…入力装置、100…出力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車上システム及び地上に設置された地上システムを備えた線路測定データ分析システムであって、
前記車上システムは、
少なくとも前記車両の移動情報を含む前記車両の運転状況を示す情報を取得する運転情報取得手段と、
前記運転情報取得手段で取得した前記車両の運転状況を示す情報を、該情報を取得した時刻とともに格納するための運転情報格納手段と、
前記運転情報取得手段で取得した前記車両の運転状況を示す情報を、該情報を取得した時刻とともに前記運転情報格納手段に格納する車上処理手段と、
を備え、
前記地上システムは、
所定の区間への前記車両の進入と退出を検出するための車両入出検出手段と、
前記車両が前記所定の区間を通過しているときに、線路上で取得可能な線路データを取得する線路データ取得手段と、
前記線路データ取得手段で取得した線路データを、前記車両が前記所定の区間に進入してから退出するまでの経過時間に対応付けて格納するための地上情報格納手段と、
前記運転情報格納手段に格納した前記車両の移動情報と該情報を取得した時刻に基づいて、線路上において基準となる地点から前記情報を取得した時刻における前記車両の走行距離を算出し、該算出した走行距離を、前記時刻と対応付ける走行距離算出手段と、
前記走行距離算出手段における前記線路上において基準となる地点のキロ程及び前記所定の区間の開始点と終点のキロ程を入力するためのキロ程入力手段と、
前記走行距離算出手段で算出した前記車両の走行距離を、前記キロ程入力手段から入力された前記線路における基準となる地点のキロ程に対応付けて変換する走行キロ程変換手段と、
前記走行キロ程変換手段で変換した前記車両の走行したキロ程及び時刻と、前記キロ程入力手段から入力された前記所定区間の開始点と終点のキロ程と、に基づき、前記車両が前記所定の区間を通過したときの在線時間を算出する在線時間算出手段と、
前記地上情報格納手段に格納された前記経過時間に対応する前記線路データを、前記在線時間算出手段で算出した前記在線時間に対応するキロ程に対応させて、前記地上情報格納手段に格納する線路データ抽出手段と、
を備えたことを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記キロ程入力手段は、
使用者の入力操作により、前記線路上において基準となる地点のキロ程及び前記所定の区間の開始点と終点のキロ程を入力可能に構成されていることを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記キロ程入力手段は、
前記線路上において基準となる地点のキロ程及び前記所定の区間の開始点と終点のキロ程を予め格納しておくキロ程格納手段を備え、
該キロ程格納手段から前記線路上において基準となる地点のキロ程及び前記所定の区間の開始点と終点のキロ程を入力することを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記地上システムは、
前記地上情報格納手段に格納された、前記線路のキロ程及び該キロ程に対応付けられた前記線路データを読み出し、目視可能な状態で出力する出力手段を備えたことを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項5】
請求項4に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記地上システムは、
前記線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を入力するための線路状態入力手段を備え、
前記線路データ抽出手段は、
前記線路状態入力手段から、前記線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を取得し、該取得した線路の状態を示す情報を、前記地上情報格納手段に格納された前記線路データに加え、前記線路のキロ程に対応付けて前記地上情報格納手段に格納し、
前記出力手段は、
前記地上情報格納手段に格納された、前記線路のキロ程、該キロ程に対応付けられた前記線路データ及び前記線路の状態を示す情報を目視可能な状態で出力することを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項6】
請求項5に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記線路状態入力手段は、
使用者の入力操作により、前記線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を入力可能に構成されていることを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項7】
請求項5に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記線路状態入力手段は、
線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を予め格納した線路情報データベースを備え、
該線路情報データベースから前記線路のキロ程に対する線路の状態を示す情報を入力することを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項8】
請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記出力手段は、
前記地上情報格納手段に格納された、前記線路のキロ程、該キロ程に対応付けられた前記線路データ及び前記線路の状態を示す情報に加え、前記車両の運転状況を示す情報を読み出し、目視可能な状態で出力する出力手段を備えたことを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記運転情報格納手段は、
前記車上システムから着脱可能に構成され、
前記線路データ抽出手段は、
前記運転情報格納手段が着脱可能に構成され、前記運転情報格納手段が装着された状態で、該運転情報格納手段から前記車両の運転状況を示す情報を取得することを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記運転情報格納手段は、
格納している情報を通信にて出力可能に構成され、
前記線路データ抽出手段は、
前記運転情報格納手段から通信出力される情報を受信可能に構成され、前記運転情報格納手段に格納されている前記車両の運転状況を示す情報を通信にて取得することを特徴とする線路測定データ分析システム。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の線路測定データ分析システムにおいて、
前記所定の区間は、軌道回路であり、前記線路データは、前記軌道回路における軌道回路受信電圧であることを特徴とする線路測定データ分析システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−126158(P2012−126158A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276922(P2010−276922)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】