説明

線量分布測定装置およびセンサ校正方法

【課題】少ない測定回数で、高精度な線量分布測定が可能な線量分布測定装置を提供する。
【解決手段】水タンク14内に照射される粒子線ビーム13の深さ方向の線量分布を計測するための線量分布測定装置において、複数のセンサ1〜10を、水中の仮想円筒形11の周囲に等角度間隔で、等間隔の深さとなる位置に配置し、1度の計測によって得る測定点をセンサ数に応じた数とする。仮想円筒形11の中心軸12に沿って照射される粒子線ビーム13が、一つのセンサに入射して散乱する影響を、他のセンサが受けないように、センサ深さに応じて、照射方向に垂直な面内でのセンサ間の距離を所定値以上確保する。センサ校正時は、センサ群20を同一深さに移動後、所定条件下での一度目の線量計測を行い、次に、Z軸12を中心として周方向に1間隔分回転させたセンサ配置で二度目の線量計測を行い、二度の測定結果を比較することでセンサ校正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームによる治療前に、実際の荷電粒子ビームの線量分布を確認するために水中で線量分布を測定する線量分布測定装置に関するものであり、更に、線量分布測定装置を構成するセンサの校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の線量分布測定装置は、患者を模擬した水槽と、水槽中に設置した一個の線量測定センサである電離箱と、電離箱を水槽において、その深さ位置を変更するための駆動モータなどから構成され、粒子線などの放射線が水面に対して、垂直に入射し、水槽中で所定の3次元線量分布が形成されていた。この従来技術によれば、一個の電離箱の位置をスキャンしながら、水中における深さ(深部)方向の線量分布を測定していた。また、水中線量を測定するセンサには、電離箱以外に、半導体検出器、シンチレタ検出器、フィルムなど様々なものを用いることが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、従来の多センサの感度校正方法では、分布測定するために、直線上に配置したセンサアレイを用いていた。センサアレイの相対感度を校正する際には、センサアレイを所定位置に設置し、所定の校正場を用いてセンサアレイの出力を測定し、記録する第一回目の測定の後、次のステップで、センサアレイをセンサ1個分だけ直線移動させ、第二回目の測定を行なう。このように、センサの直線移動前後における第一回目、第二回目の測定結果からセンサ間の相対感度校正を行うという校正方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3203211号公報
【特許文献2】特許第3317178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粒子線を用いた照射装置では、水中において、深さ範囲が最大30cmの範囲に渡って高線量領域を形成できる。従来の分布測定装置では、事前検証のために、放射線照射によって形成された線量分布の深さ方向の線量分布を、1個の電離箱を用いて、深さ方向における位置をスキャンしながら測定していた。ここで、測定ピッチを2mmにして、30cmの範囲を測定する場合、最大150個の測定点が必要であるため、従来技術の分布測定装置を用いた場合は、1個の電離箱を深さ方向において150回動かして150回もの測定を繰返す必要があった。そのため、分布測定の所要時間は数十分を要する場合もあり、また、毎回の測定において、ほぼ同じ放射線の量を照射することから、測定に要する放射線の総量も照射回数に比例して大きくなってしまうという問題もあった。このよう問題は粒子線照射装置における所謂3次元照射法を用いた場合により顕著となっていた。
【0006】
また、従来の直線上に配置したセンサアレイでは、粒子線などの放射線の照射方向と垂直する平面内の横方向線量分布を測定することは可能であるが、放射線の照射方向と同じ方向における深さ方向線量分布を測定する場合、センサの存在が元の線量分布を乱してしまう可能性があった。特に、粒子線を用いた照射装置の場合、センサを通過した粒子線の運動エネルギーと方向が大きく影響を受ける。従って、従来技術の直線上に配列したセンサアレイの分布測定装置とその校正方法は、粒子線などの照射装置において、高精度な深部方向線量分布の測定に用いることができなかった。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題としてなされたものであり、粒子線照射装置などにおいて、深さ方向の線量分布を短時間で測定でき、元の線量分布を乱さずに精度の良い測定が可能な線量分布測定装置を提供すること、さらに、上記の線量分布測定装置を構成するセンサの効率の良い校正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる線量分布測定装置は、水が貯蔵され、放射線が照射される水タンク、上記水タンク内の上記放射線の照射方向を軸として伸びる仮想円筒形の外周外側に配置される複数のセンサを備え、複数の上記センサは、それぞれ上記軸上の異なる位置において上記放射線の線量を測定することを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明に係わるセンサ校正方法は、水が貯蔵された水タンク内に照射される放射線の線量分布を、複数のセンサによって上記放射線の照射方向に沿った軸上の異なる位置で測定する線量分布測定装置のセンサ校正方法であって、上記軸を中心として伸びる仮想円筒形の周囲に等角度間隔で配置される複数の上記センサを、上記軸上の同一位置に配置するステップ、上記放射線を上記軸に沿うように所定量Aだけ照射するとともに複数の上記センサによって上記所定量Aの放射線量を計測し、第一の計測値を得るステップ、上記仮想円筒形の軸周りに、複数の上記センサを回転させ、複数の上記センサを上記仮想円筒形の周方向に1間隔分だけずらせた配置とするステップ、上記軸に沿うように上記放射線を所定量Bだけ照射するとともに複数の上記センサによって上記所定量Bの放射線量を計測し、第二の計測値を得るステップ、上記第一、第二の計測値を用いて、複数の上記センサの相対感度を計算するステップを含むものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の線量分布測定装置によれば、複数のセンサが放射線の照射方向を軸とする仮想円筒形の周囲に配置されるため、元の放射線の線量分布を、センサの存在によって乱すことがないように構成でき、さらに、軸上の異なる位置で、複数のセンサによって線量を測定するため、一度の測定で、複数の測定点を得ることができるため、水タンク内で、軸方向の線量分布を精度良く、効率良く測定できるという効果がある。
【0011】
また、この発明のセンサ校正方法によれば、放射線の照射方向に沿った軸を中心として伸びる仮想円筒形の周囲に等角度間隔で複数のセンサを配置した線量分布測定装置に適したセンサ校正を効率良く実施できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における深さ方向の線量分布測定装置の構成概念図である。
【図2】本発明の実施の形態1の複数のセンサが2本のらせん状に配置されたことを示す斜視図および仮想円筒展開センサ配置図である。
【図3】本発明の実施の形態1の複数のセンサの配置を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1の複数のセンサの配置を示す投影平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1の説明に必要な粒子線ビームの散乱状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2の複数のセンサが1本のらせん状に配置されたことを示す斜視図ならびに仮想円筒展開センサ配置図である。
【図7】本発明の実施の形態2の複数のセンサの投影平面図である。
【図8】本発明の実施の形態3のセンサ移動装置およびセンサ回転装置を含む構成概念図である。
【0013】
【図9】本発明の実施の形態3のセンサ校正配置を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態3のセンサ移動装置の構成を示す要部断面図である。
【図11】本発明の実施の形態3の説明に必要な線量の水中深さ依存性を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3の説明に必要な線量の水中深さ依存性を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4のセンサ移動装置を含む線量分布測定装置の構成を示す要部側面図である。
【図14】本発明の実施の形態4のセンサ校正配置時の線量分布測定装置の要部側面図である。
【図15】本発明の実施の形態4のセンサ回転装置の概略平面図である。
【図16】本発明の実施の形態5のセンサ校正方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
次に、本発明の実施の形態1による線量分布測定装置の構成と動作を、図1〜図5を用いて説明する。
図1は本発明による線量分布測定装置を示す構成概念図である。図1に示すように、治療等のために放射線として粒子線ビーム13が用いられる。粒子線ビーム13は、図示しない照射ヘッドから、照射ヘッドの下方に配置された人体を模した水タンク14に鉛直方向下向きに照射される。なお、粒子線ビーム13は完全に平行(横方向に対して均一)なビームではなく、放射状に広がりのあるビームである(emittance>0のため。)。
【0015】
この線量分布測定装置では、水が貯蔵された水タンク14内の水面14a下に、複数のセンサ(線量分布測定センサ。例えば電離箱センサよりなる。)1〜10よりなるセンサ群20が配置され、センサ1〜10はそれぞれ、センサ配置中心軸(Z軸または中心軸。)12を中心とした仮想円筒形11の周囲(外周外側)の異なる高さに配置され、Z軸12に沿うように照射される粒子線ビーム13の線量を、Z軸12上の異なる位置において、一度にセンサ数に相当する測定点だけ測定できるように構成されている。
【0016】
また、センサ群20は、仮想円筒形11の外周外側の所定位置に配置される第一のセンサ1、所定位置からの回転角度が最も180度に近い値となる位置に配置される第二のセンサ10を含んでおり、第一のセンサ1と第二のセンサ10は、Z軸12方向において最も離れた位置で計測を行うように、第一のセンサ1が仮想円筒形11の上端部に、第二のセンサ10が仮想円筒形11の下端部にそれぞれ配置されている。
【0017】
さらに、図2(a)にセンサ配置を示す斜視図を、図2(b)に、仮想円筒形11を展開した場合のセンサ配置図を示す。複数のセンサ1〜10は、仮想円筒形11の外周上で、かつ、Z軸12方向に沿って、第一のセンサ1から第二のセンサ10に向って、時計回りおよび反時計回り方向に、2本のらせん状に振り分けられて配置されており、第一のセンサ1から第二のセンサ10に向って、Z軸12上での深さが段階的に深くなるように、番号が大きいほど深部に配置されている。
【0018】
図2(b)の仮想円筒展開センサ配置図中に、黒丸で各センサの配置を示すとともに、一点鎖線で第一のらせんを、破線で第二のらせんを示す。図2の例では、センサの配置角度は、センサ1を基準とし、センサ2の方向(反時計回り方向)に角度が増すものとして考える。ここで、第一のらせんは、円筒座標系において、第一のセンサ1から反時計回りに、センサ2、センサ4、センサ6、センサ8を経て第二のセンサ10に至る経路(配置角度0度〜180度)であり、第一のらせん上には、偶数の番号を付したセンサが配置される。第二のらせんは、円筒座標系において第一のセンサ1から時計回りに、センサ3、センサ5、センサ7、センサ9を経て第二のセンサ10に至る経路(配置角度360度〜180度)であり、第二のらせん上には、奇数の番号を付したセンサが配置される。
なお、個々のセンサのヘッド(感知部分)はZ軸12に向って設けられ、Z軸12に垂直となる方向からZ軸12上の線量を計測するよう配置される。
【0019】
図1および図2に示すように、Z軸12上において、複数のセンサ1から10の中で、水タンク14中の深さ方向における最も浅い位置に配置される第一のセンサ1と、最も深い位置に配置される第二のセンサ10の間に、深さ方向の異なる位置に等間隔となるように、浅い位置から深い位置にかけて他のセンサ2〜9を順次配置することで、深さ方向に等間隔のピッチで粒子線ビーム13の線量分布を測定することができる。なお、センサ配置を深さ方向に等間隔ピッチで配置する以外に、任意の間隔毎に配置する方法もあり、測定対象となる放射線の種類や、センサ設置条件等によって使い分けが可能であることは言うまでもない。
また、センサ1〜10は、仮想円筒形11の周囲に、等角度間隔でZ軸12に向けて配置されており、センサ群20が10個のセンサよりなる場合は、Z軸12を中心とした角度で、36度回転する毎に1個のセンサが配置されている。なお、ここで言う角度は、第一のセンサ1が配置される所定位置を基準とした相対角度である。
【0020】
なお、センサ設置数nが偶数である場合、n番目のセンサ(第二のセンサ)は第一のセンサ1に対して180度離れた位置(正反対)に配置されることになり、円周上へ投影された状態で、センサ1とセンサnとを結ぶ線の左右でセンサの配置数(配置角度についても同様)は相互に同一にすることができる。一方、センサ設置数nが奇数である場合、n番目のセンサをセンサ1に対して180度離れた位置に配置することを条件にすれば、センサ1とセンサnとを結ぶ線の左右でセンサの配置数を相互に同一とすることができず、数にして1個だけ異なる配置となってしまう。全センサ相互間の配置角度を等しくして配置していけば、n番目のセンサはセンサ1に対して180度離れた位置から若干外れた位置(センサが配置される角度のうち、180度に最も近い値となる位置。)に配置されることになる。いずれにしてもn番目のセンサはセンサ1に対して180度離れた位置か、それに近い位置に配置されることになり、どちらの配置であっても許容しうる。
【0021】
また、図1に示すように、線量分布測定装置を構成するセンサ群20は、センサ保持部材16によって全センサが一体として保持され、センサ移動方向(Z軸12方向に同じ。)24に沿って水タンク14の上端部から水タンク14内へと下向きに伸びるガイド部材17に沿って、センサ保持部材16を移動させて、センサ群20の水タンク14内での深さを変えるように構成されている。ここで、センサ保持部材16は、センサ移動装置40によって駆動されるものであり、センサ移動装置40は、モータ等よりなる駆動装置を備えている。また、センサ1〜10およびセンサ移動装置40、放射線照射装置等は、制御装置41によって統括的に制御がなされている。なお、制御装置41は、各装置またはセンサ毎に機能を分担するように複数箇所に設置されいても良く、複数に分けられた制御装置間で相互にデータを通信できるよう構成されていれば、その設置数についての制約はない。
【0022】
図3に、本発明の線量分布測定装置のセンサ配置例を示す。図3において、一番浅い位置にある第一のセンサ1と一番深い位置にある第二のセンサ10間の深さ方向(Z軸12方向)における距離(深さ方向測定範囲であり、仮想円筒形11の長さに相当する。)を符号11aで示し、複数のセンサ1〜10が囲む仮想円筒形11の直径を符号11bで示す。深さ方向測定範囲11aの大きさは、測定したい深さ方向分布の範囲または、必要な測定距離ピッチによって決まるが、粒子線治療装置関連の分布測定では、数mmから数十センチである。例えば、10個のセンサを用いて、ピッチ1mmで測定したい場合では、図3の配置では深さ方向測定範囲11aは約9mmとなる。炭素線粒子のブラッグピークの線量分布測定においては、ピッチは0.2mm程度となる場合もあり、その際のセンサ群20の深さ方向測定範囲11aは約2mm弱となる。
【0023】
深さ方向測定範囲11aが小さくなる場合、センサ1〜10の筐体の大きさによっては、隣接するセンサ間に距離が確保できず、干渉することも考えられるため、センサ同士が干渉しない配置とする必要がある。図4に、センサ1〜10のZ軸12方向と垂直する平面における投影平面図を示す。図4の例では、センサ数が10個であり、円筒座標系で等角度間隔配置されたセンサ間の角度ステップ26は約36度である。ここで、センサ間の干渉を排除するための条件について示す。各々のセンサ(外形は円筒形と考える。)が皆同じ直径D0を有していると仮定し、仮想円筒形11の直径11bはD1とする。そして、図4に示した、隣あったセンサの先端(仮想円筒形11に近い側)の間の距離をs(s>0)とする。すると、以下の関係(式1)が成り立つ。なお、図4は平面図であるため、図中には距離sの平面方向の成分s1を示し、深さ方向の成分は示さないものとする。
π*D1> n*(D0+s) (式1)
【0024】
上記の不等式(式1)に従って、仮想円筒形11の直径D1を選択すれば、図3で示す深さ方向測定範囲11aが約2mmと小さい場合においても、問題なく、上記に説明したようにセンサ1〜10を配置することができる。
なお、図4に、後述するセンサ校正時におけるセンサ群の回転方向(仮想円筒形11の軸を中心とする回転方向)を符号25で示す。
【0025】
なお、実際の深さ方向線量測定では、D1(仮想円筒形11の直径11b)をなるべく小さくする必要がある。その理由は、線量は横方向に必ずしも均一ではなく、この横方向の線量不均一性の影響を極力小さくするためである。しかし、あまりD1の値が小さくなり過ぎると、センサの軸方向投影図で見た場合に相互に重なり部を生じる。この重なり部がある場合、または重なり部がない場合でも、センサ間の空隙があまりにも小さい場合、後述するように、照射方向下流側センサが、上流側センサによる線量場の乱れの影響を、その重なりの程度に応じて直接被ることになり、線量分布の評価精度が劣化することになるため、小さすぎるD1もまた問題がある。D1の適当な値は、センサの種類、サイズ、粒子線エネルギー等に依存するため、その時々で評価する必要がある。
【0026】
上述したように、D1をあまり小さくすると、センサ1を通過した粒子線は、センサ10の深さ位置まで到達する間に受ける散乱によって、センサ10の有感領域に再び入ってしまい、センサ10が正確な線量を測定できなくなってしまう可能性がある。その理由を図5の粒子線散乱モデル図を用いて説明する。図5は、水タンク14中のセンサ1に、粒子線ビーム13が鉛直方向下向き入射し、粒子線ビーム13がセンサ1を通過した際に散乱した状態を示しており、散乱した粒子線30が広がる水平方向(深さ方向に対して垂直な方向)距離30aと深さ方向距離30bとの関係を示している。
【0027】
図5に示すように、センサ1に当たった粒子線ビーム13は散乱し、散乱した粒子線30は矢印方向に、センサ1に入射するまでの方向とは異なる方向へ進む状態となる。また、粒子線ビーム13がセンサ1を通過した後に、下流側に配置されたセンサnに達するまでに、元の横方向位置から逸れた距離が水平方向距離30bに相当する。図5から分かるように、逸れる距離30bはセンサ間の深さ距離30aに比例して大きくなる。従って、センサ1より深い位置に配置されるセンサ2〜nが、センサ1を通過し、散乱した粒子線30の影響を受けないようにするには、センサ1との深さ方向における距離に比例して、センサ1から横(水平)方向に、散乱する粒子線30との干渉を避けるための間隔を空けるべきである。
【0028】
従って、センサ配置の基準として仮定してきた仮想円筒形11の直径D1は、センサ1とセンサn(本例ではn=10)の間の深さ方向測定範囲11aと散乱した粒子線30の方向(散乱角または角度ずれの度合い。)によって決める必要がある。ここで、粒子線が陽子線である場合、水中で20cm進んだ時の平均角度ずれは約1度である。粒子線が炭素線の場合、この角度は更に小さい。但し、実際の粒子線を用いた照射装置では、粒子線ビーム13は斜めにセンサ1に入射する場合もあり、また典型的な散乱の角度は約4度以下である。この角度の大きい方を用いると、粒子線が水中で30cm進むと、横方向における位置の逸れは約2mmとなる。従って、仮想円筒形11の直径D1は約3mm以上あれば、センサ1を通過した粒子線30は再びセンサnの有感領域を通過することがないと考えられる。
【0029】
実際、ケース1として、深さ方向におけるセンサ配置ピッチは、センサの筐体(円筒形近似)の直径D0より大きくしておけば、仮想円筒形11の直径D1は3mmもしくは4mmにできる計算になる。但し、その場合、センサ群20を平面に投影するとセンサ投影像間の距離は離れていない状態となる(s1<0)。しかし、3次元的には十分配置可能であるから、深さ方向のピッチ条件を満たせば配置上の問題はない。また、ケース2として、深さ方向におけるセンサ配置ピッチを、センサの筐体の直径D0より小さくした場合、仮想円筒形11の直径D1は前記(式1)に従って決めればよい。
また、一般に用いられる照射野形成方法として、ブロードビーム照射法とスキャニング照射法があるが、本願のように複数のセンサをらせん状となるように配置した場合であっても、仮想円筒形11の直径D1を数ミリ以下の値とすれば、線量分布測定を行う上で精度上の問題はない。
【0030】
このように、本発明の線量分布測定装置は、線量測定対象となる放射線として粒子線ビーム13が用いられ、この粒子線ビーム13は、水タンク14の上方向から下方向に向って、Z軸12方向に沿って照射されるものであり、これら複数のセンサ1〜n(10)は、Z軸12方向の所定範囲内において略等間隔(所定深さ毎)に配置されており、さらに、Z軸方向に垂直な方向において、各々のセンサは所定直径を有する仮想円筒形11に沿ってその中心軸からほぼ同じ所定距離を離れて配置されている。かつ、前記センサは前記仮想円筒形11の周囲において、前記センサの位置座標に関して、円筒座標系でいう角度がお互いに略同じ角度だけ離れて等角度間隔となるように配置されたことと、前記センサの内、Z軸12方向における位置がお互いに最も離れた2つのセンサ(第一のセンサ1と第二のセンサ10)は仮想円筒形11を挟んでお互いに略正反対側に配置され、前記最も離れた2つのセンサ以外のセンサ2〜9については、Z軸12方向に向かって、Z軸12における座標値が増大する順に、円筒座標系でいう角度が、時計周りと反時計周り順に交互に増大するように配置されて構成されている。
【0031】
以下に、本発明の実施の形態1による線量分布測定装置の動作を説明する。線量分布測定装置を用いた深さ方向の線量分布測定では、まず、センサ保持部材16によって一体として保持されたセンサ群20を所定水中深さ位置に、センサ移動装置40によって移動させる。その際、センサ保持部材16をセンサ移動方向(深さ方向)24に沿って伸びるガイド部材17に噛み合せた状態で駆動装置の駆動によって移動させる。これらの指令は、制御装置41から出される。センサ1〜n(10)の配置は、制御装置41内のセンサ配置記憶部(図示せず)に記憶される。センサ配置記憶部では、センサ1〜10の仮想円筒形11の外周上における配置角度情報と、水タンク14内のZ軸12方向における位置情報等を記録する。
【0032】
次に、制御装置41内の線量分布測定制御部(図示せず)からの指令により、計画した条件にて粒子線ビーム13の照射を行い、水タンク14に貯蔵した水体積領域に所定3次元線量分布を形成する。前記照射が行なわれている際には、センサ群20による計測が行われ、センサ群20の各々のセンサ出力値(センサが電離箱などの場合)は、測定回路を経由して、制御装置41内のセンサ出力記録部に記録される。照射終了後、深さ位置が異なる位置に配置したセンサ1〜10によって測定した線量値(センサ出力記録部に記録)は、制御装置41内で、センサ配置記憶部に保存されたセンサ配置の情報が加味され、深さ位置の関数として得られ、制御装置41内の所定記憶部に保存される。
【0033】
このようにして、粒子線ビーム13の照射によって形成した3次元線量分布のうち、Z軸12の近傍における深さ方向分布D(z)が深さ範囲11aに渡って、所定深さピッチにおいてn(10)点の測定ポイントが一括して得られる。そして、センサ群20全体を深さ方向に必要距離だけ移動した後、異なる深さ範囲にて上記のような線量分布測定を繰り返す。このようにして、必要深さ範囲内の、必要ピッチでの深さ方向の線量分布を得ることができる。
【0034】
前記測定の際に、最も浅く配置されたセンサ1と最も深く配置されたセンサ10は、図1〜4に示したように、お互いの平面投影像が最も離れた配置となるため、センサ1を通過した粒子線が再びセンサ10に入射することが殆どなく、センサ10で測定した線量値は他のセンサ1〜9が配置されなかった際に測定される線量値とほぼ変わらない値として計測することが可能となる。また、センサ2からセンサ9までのセンサも深さ順に、センサ1との相対角度が次第に大きくなるように配置したため、各々のセンサの測定値は他のセンサの影響を受けることが殆どなく、精度の良い深さ方向の線量分布を得ることができる効果がある。
【0035】
また、一回の測定において、10点の深さ位置の線量値を測定できるので、分布測定に要する時間を大幅に削減できる。更に、線量分布確認に必要となる粒子線の照射総量も、一個電離箱による測定と比べて際、大幅に削減できる。これは、粒子線治療施設などで、一週間に於ける最大照射可能粒子線の量の制限を満たす意味では、大きいメリットがある。
本発明の深部線量分布測定装置は、1回の安定した分布を形成するのに、数分掛かるスキャニング照射、積層原体照射などの高度3次元照射法を用いる場合に、特に有効である。
【0036】
なお、この実施の形態1では、センサを電離箱とした場合について説明したが、実際、これに限ることがなく、他の線量センサであっても、基本的な効果は同様である。センサ材料の違い、より詳細に言えば、人体構成材料と原子番号、密度の相違により、吸収や平均的な散乱角の様相が異なるため、それに応じてセンサ相互の配置関係は異なるものにしなければならないが、センサ配置を相互の影響を極力小さくするような3次元配置にするという点では共通しており、その意味で基本的な効果は同様であると言える。要は、センサが人体等価材料で作られていればこのような問題(センサはブラッグ空洞原理から外れる状況を作るものであるという問題。)は生じないので、センサとして例えばプラスチックシンチレータのようなものを採用することが人体の吸収線量測定という観点から適していると言える。また、本発明において、センサ電極、壁材(筐体)の他に、センサ方式(半導体、ポリマーゲル、など。)も含めて、人体の吸収線量測定に適したものを採用することが有効である。
【0037】
また、この実施の形態1では、センサ群20を水中に入れた場合(水ファントム)について説明したが、水ファントムだけに限ることがなく、固体ファントム中に同様にセンサ群を配置して、深さ方向線量分布を測定しても同様の効果を得ることができる。
なお、粒子線ビーム13が水面14aに対し垂直に入射する例を示したが、患者に対して斜め方向にビームを照射する場合もあることから、水面14aに対して斜め方向から粒子線ビーム13を照射して線量分布を計測する場合も生じる。その場合、水への入射位置から照射方向に沿って進んだ距離を、水中深さとして、水面14aに垂直にビームが入射される場合と同様に線量分布を得ることができる(センサ群20の配置中心軸12を斜めに設定することは言うまでもない。)。極端な例として、粒子線ビーム13が真横から入射する場合もありうる。その際、水タンクの側面から粒子線ビーム13が入射し、水中で3次元線量分布を形成することになる。
【0038】
なお、上記の例では、センサ1〜10の配置を、円筒座標系で、等角度間隔に、かつ、深さ方向に等間隔で配置する場合について示したが、等間隔以外の配置も可能であることは言うまでもなく、例えば、複数のセンサのうちの一部を、小さいピッチで配置し、他を大きなピッチで配置するというように、配置場所や、測定対象となるビームの特性に合わせて調整して用いることも可能である。その場合においても、仮想円筒形11の周囲に配置したセンサ群によって、深さ方向の異なる複数位置の線量分布を一回の測定によって得ることができ、また、他のセンサの存在によって散乱した粒子線の影響を受けることなく、精度の良い線量測定が可能となる。
【0039】
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、センサ1〜10が2本のらせん状となるように振り分けて配置された例を示したが、この実施の形態2では、図6および図7にセンサ配置を示すように、複数のセンサ1〜10を1本のらせん状となるように配置する例について、図6(a)にセンサ配置斜視図を、図6(b)に仮想円筒展開センサ配置図を示して説明する。なお、センサの配置角度は、センサ1からセンサ2の方向(時計回り方向)へ、角度が36度づつ増すものとして考える。また、センサの配置角度は深さと共に増大し、図7のセンサ配置投影平面図に示すように、一番深い位置、つまりセンサ1から最も深さ方向に離れた位置にあるセンサ10は、センサ1と隣り合う配置関係となる。従って、この一本のらせん状となるようにセンサを配置する場合は、図1〜図4の二本らせん配置に比べ、仮想円筒形11の直径26bを相対的に大きくすることで散乱光の影響を排除するよう対策するものとする。なお、センサ直径D0が十分小さい場合、この配置を採用しても一定のメリットを得ることができる。
【0040】
実施の形態3.
次に、図8〜図12を用いて、本発明による実施の形態3の線量分布測定装置について説明する。上述の実施の形態1では複数のセンサよりなるセンサ群20を一体として、一つのセンサ保持部材16で支持し、センサ保持部材16の深さ方向への移動で、センサ群20の深さ方向の配置を変更する例を示したが、この実施の形態3では、複数のセンサが個別に深さ方向の配置を変更できる構成について説明する。
【0041】
図8に、線量分布測定装置の要部構成概念図を、一部のセンサ(センサ5、センサ10)に着目して示す(他のセンサについては記載を省略する。)。図8に例示するように、センサ5は、センサ保持部材16aに取り付けられ、他のセンサも同様に、個別の保持部材に取り付けられる。センサ保持部材16aは、各々、センサ配置の移動を深さ方向にガイドするガイド部材17aに個別に取り付けられている。さらに、センサ群20を支持する支持台21上にガイド部材17a等が固定されている。ガイド部材17aに沿ってセンサ保持部材16aを移動させる機構であるセンサ深さ切り替え装置(センサ移動装置の一つに相当する。)50aは、図示しない制御装置内のピッチ変更制御部からの指令によってセンサ5をZ軸12上の異なる二つの配置のいずれかに切替える(変更する)ことができる。なお、センサ5(10)の深さ方向のセンサ移動範囲19a(19b)の上限と下限は、位置決めストッパー15aと18aによって規制される。
【0042】
また、センサ群20を支持する支持台21は、Z軸12に沿って伸びる支持軸22を回転軸として回転させることができ、また、支持軸22を深さ方向24に沿って移動させることで、センサ群20を深さ方向に移動させることが可能である。支持軸22の回転と深さ方向への移動は、駆動装置23によって行うことができる。
ここで、例えば、センサ移動範囲19a(19b)の上端部に相当する位置を、線量分布測定時のポジションとし、下端部を後述するセンサ校正時のポジションとすることができる。校正時におけるセンサ1〜10の配置状態の斜視図を図9に示す。
【0043】
なお、図8のセンサ深さ切替装置50aは、各センサが深さ方向に二つの配置をとることができることを表現したイメージ図である。具体的なセンサ深さ切替装置50aの2種類のセンサ配置ピッチの切り替え機構例を、図10(a)、図10(b)の要部断面図に示す。図10(a)は、センサ5が、センサ移動範囲19aの下端部に配置された状態を示しており、図10(b)は、センサ5が、同範囲19aの上端部に配置された状態を示している。
【0044】
図10(a)および図10(b)に示すように、センサ5を保持するセンサ保持部材60(上述の符号16aのものに相当する。)は、横方向に突き出し、センサ5を支持する枝部61と、深さ方向に伸びるように配置された筒体(ケース)39(17aに相当する。)内に移動可能に保持された幹体62と、下端側に突出するように設けられた突起部63が結合されてなる部材であり、幹体62が筒体39内を深さ方向に移動することでセンサ5の位置を移動できるように構成されている。筒体39内上部には、線量測定時(第一配置)にセンサ保持部材60の幹体62上端部が接触する位置決めストッパー15aが、筒体39内下部には、校正時または第一配置とは異なるピッチの線量測定時(第二配置)にセンサ保持部材60の幹体62下方部段差部分が接触する位置決めストッパー18aが配置されている。
【0045】
また、筒体39内の上部には、バネ36が配置され、下部には後述する風船37が配置されて、バネ36と風船37との間に、センサ保持部材60の幹体62が挟まれて、バネ36の弾性力と風船37の膨らみとによってセンサ保持部材60の深さ方向における位置が調整される。なお、バネ36は別の弾性体を用いてもよく、風船37は外部から外形寸法調節可能な別の構造体であってもよい。また、バネ36と風船37を上下逆に配置することも可能であり、センサ保持部材60を深さ方向の二つの配置に変更できる構造であれば、図10の構造に限られるものではない。
【0046】
ここで、センサ保持部材60の幹体62下方部は、位置決めストッパー18aに接触する外周部がクランクとして形成されており、幹体62の軸心部分は、第二配置で位置決めストッパー18aよりも下方に突き出す突起部63を形成しており、この突起部63が筒体39内の底部に収納された風船37に接触している。風船37には、パイプ38が繋げられ、パイプ38を介して流体が風船37内に出し入れされる構造である。位置決めストッパー15a、18aは、筒体39内壁に部分的な突起部を設けることでも形成することができる。
【0047】
図10(a)に示すように、センサ5が第二配置をとる場合は、風船37内の流体が外部に排出されて風船37はしぼみ、下方部の位置決めストッパー18aにセンサ保持部材60が接触する位置にセンサ5は保持される。
また、図10(b)に示すように、センサ5が第一配置をとる場合は、風船37内に流体が外部から送り込まれて風船37は膨らみ、センサ保持部材60の幹体62を押し上げ、幹体62上端部が筒体39内の位置決めストッパー15aに接触する位置まで移動し、センサ5が保持される。図中に第二配置でのセンサ5の位置を破線で示す。
なお、上述したような第一、第二配置の切替えが可能なセンサにおいて、第二配置をセンサ校正時の配置とするのではなく、第一配置とは異なるピッチのセンサ測定配置とすることも可能である。
【0048】
次に、図11に、粒子線治療装置で用いる炭素線粒子による水中深さ方向の線量分布の例を示す。図11に示すように、炭素線による線量分布では、所定水中深さまでは線量が一定値となる平坦領域部70を形成し、所定深さにおいて線量が急峻に変化するピーク領域部71を形成する。また、図12に、粒子線治療の際に患部形状に合わせて形成される拡大ブラッグピークによる深さ方向の線量分布例を示す。図12では、所定の水中深さまで平坦領域部70aが続き、ピーク領域部71aで線量は急峻に増大し、その線量が平坦領域部70bの深さ範囲で保持され、より深い位置でのピーク領域部71bで線量が急峻に減少することが例示されている。
【0049】
この実施の形態3では、図8に示したように、各々のセンサは深さ距離19a(または19b等)だけ離れた二つの配置位置のいずれかに切り替えることができる。配置の切り替えは、例えば、図10(a)、図10(b)に示したセンサ深さ切替装置(センサ移動装置の一つ。)50a(50b等)によって行う。また、この二つの配置は、センサ1〜10の深さ方向への配置ピッチの相違によって生じるものであり、センサ間の相対配置で規制される。また、この二つのセンサ配置は、第一と第二の深さピッチで、実施の形態1または実施の形態2のようにらせん状に配置される第一配置と第二配置をとる第一のケースと、第二配置だけは図9に示したように、全てのセンサが同じ深さに配置されるセンサ校正配置である第二のケースがある。
【0050】
まず、上記第一ケースにおける線量分布測定装置の動作を説明する。
図8に示したように、センサ5またはセンサ10または他のセンサはそれぞれ、二つの深さピッチ(配置ピッチ)をとりうる。そして、第一配置にセンサがある場合は、例えばセンサは実施の形態1と同じ配置で深さピッチが5mmであるように各センサの位置が決まっている。第二配置では、センサ配置形態はらせん状であり、その深さ方向における配置ピッチだけが第一配置と異なり、例えば、0.2mmのピッチで配置されている。そして、この2種類の深さピッチの切り替えは、例えば、図10(a)、図10(b)に示した機構で実現できる。
【0051】
深さ方向の線量分布を測定する際は、まず、センサ群20の位置を図11に示す平坦領域部70に示す深さ位置に移動させる。平坦領域部70では、線量が水中深さにほとんど依存せず、変動量が小さい。そこで、センサ群20の配置はピッチの大きい第一配置にセットする。この状態で、粒子線ビーム13を所定計画通りに照射し、線量の計測を行う。
この第一配置では、測定される点のピッチは5mmになる。
【0052】
次に、センサ群20を図11に示すピーク領域部71の深さ位置に移動させる。ピーク領域部71では、線量が急峻に変化するピーク部があり、水中深さに依存した線量の変化が大きい。この位置で、図10(a)に示したパイプ38を経由して圧力空気を風船37に充填し、バネ36が収縮し、センサ保持部材60は上昇し、位置きめストッパー15aに当接し、図10(b)に示した状態で止まる。この切り替えが、第一、第二配置で移動をともなわないセンサ(5)以外のすべてのセンサについて実施される。これにより、センサ群20の配置は第二配置に切り替えられる。この第二配置では、深さ方向のピッチが例えば0.2mmと、第一配置よりも小さいピッチとなる。このセンサ配置において、センサ群20の深さ位置を図11に示すピーク領域部71にあわせるようにスキャンし、深さ方向の線量分布を測定する。図12の線量分布の場合、平坦領域部70a、70bは、ピッチの大きい第一配置で、ピーク領域部71a、71bはピッチの小さい第二配置で測定する。
【0053】
この実施の形態3によれば、分布の急峻度に応じて、センサの配置ピッチを容易に切り替えることができ、線量分布測定を行なうようにしたので、より短時間に効率よく、測定精度維持したまま、複雑な深さ方向の線量分布を測定できるという効果が得られる。
【0054】
次に、本発明による実施の形態3の上記第二ケースについて、線量分布測定装置の動作を説明する。第二ケースの第一配置では、第一ケースと同様に所定配置ピッチでの深さ方向線量分布を測定できる。一方、第二ケースの第二配置は、全てのセンサが同一深さのセンサ校正配置であり、センサ間の深さ方向の配置ピッチが0mmの状態となる。センサ校正時には、図10(a)、図10(b)で示すようなセンサ深さ切替装置50a(50b等)を用い、センサ群20を第二配置つまり、センサ校正配置に切り替え、粒子線を所定条件と所定量を照射し、各センサの出力を記録する。
【0055】
続いて、センサ回転装置(センサ群回転手段)23を用いて、全センサをZ軸12周りに所定角度(図9の符号26で示す角度ステップに相当する角度。)だけ回転させ、全てのセンサを、回転前の隣のセンサの位置と重なるように配置する。この状態で、第二回目の測定を行なう。この第二回目の測定では、回転する前に行なった照射と全く同じ条件で行なうのが望ましい。照射によって形成される線量分布は均一ではなくても後述校正が可能である。そして、この第二回目のセンサ出力を記録する。このようにして、センサ校正配置において行なった2回の測定結果から、各々のセンサ感度の相対校正を簡単な比例計算で求めることができる。
このように、本発明による実施の形態3の第二ケースに示したように計測を行うことで、線量測定センサの相対感度を容易に校正できるという効果が得られる。
【0056】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4について、図13〜15を用いて線量分布測定装置の構成と動作を説明する。上述の実施の形態3では、複数のセンサを水タンク14の下方部の支持台21から上向きに突出するガイド部材17aに嵌合させて保持した例を示したが、この実施の形態4では、水タンク14の上方部から水タンク14内下方へ沈下させたガイド部材17bにセンサ1(〜n)を保持させた場合について説明する。
【0057】
この実施の形態4の線量分布測定装置においては、複数のセンサ1〜n(10)よりなるセンサ群20の配置は上述の実施の形態1、2と同様のらせん配置である。図13、14では第一のセンサ1と第二のセンサ10のみを例示している。センサ1はセンサ保持部材16bに固定され、センサ保持部材16bは、深さ方向に沿ってセンサ1の移動をガイドするガイド部材17bに支持されている。ガイド部材17bは、上述したように水タンク14上方部に固定され、下端が水中に沈下された状態である。また各センサ毎に、深さ方向にセンサを移動させるセンサ移動装置40が水タンク14の上方縁部に設けられ、センサ移動範囲19a(センサ10に対応するのは19c。)内において任意の深さ位置に停止させて配置することができる。上述の実施の形態3では、一つのセンサは、配置ピッチの切り替えで二つの深さのいずれかに変更できることを示したが、この実施の形態4では、定められたセンサ移動範囲19a(19c等)内の任意の深さにセンサを配置することが可能である。
【0058】
なお、複数のセンサはZ軸12周りに、ほぼ等円周角間隔で配置されている。例えば、センサ数が10個の場合は、隣あったセンサ間は約36度だけ離れた配置となっている。さらに、図13の線量分布測定装置には、Z軸12周りにセンサ群20を1間隔に相当する角度だけ回転させる回転機構(図示せず)が設けられている。
【0059】
測定配置をとる場合、図13に示すように、センサ移動装置40によって、第一のセンサ1は一番浅い位置に設定され、第二のセンサ10は一番深い位置に設定されている。センサ1とセンサ10はその配置角度が約180度異なる。センサ1とセンサ10以外のセンサは前記図2等に示したように、深さ順にセンサ1との相対角度が次第に増大するように配置される。この測定配置に対応してセンサ深さ位置情報と配置角度情報は、制御装置41内に設けられたセンサ配置記憶部に記憶される。なお、図13、14では、センサを移動させるための駆動装置は略記している。また、センサ校正配置をとる場合、図14に示すように、センサ移動装置40によって、すべてのセンサが同一深さに移動される。計測時と同様に、このセンサ校正配置に対応した深さ位置情報は制御装置のセンサ配置記憶部に記憶される。
【0060】
次に、本発明による実施の形態4の線量分布測定装置の動作を説明する。測定を開始する前は、図13に示したように、制御装置40のセンサ記憶部に記録されたセンサ測定配置情報(Z軸12方向ピッチを含む、Z軸上配置情報。)に従って、制御装置40内のピッチ変更制御部から指令が出され、すべてのセンサ1〜n(10)が各々のセンサ移動装置40によって移動され、上記測定配置に設定される。次に、制御装置41から指令が出され、粒子線ビーム13が計画した条件に従って照射される。各々のセンサ出力値は制御装置41の所定記憶装置に記憶される。これで、所定深さ範囲内の10箇所の深さ位置における線量が測定される。続いて、必要に応じて、制御装置41はすべてのセンサの深さ位置を同じ量だけ深くまたは浅くなる方向へ移動するよう、センサ移動装置40を制御し、異なる深さ領域の線量分布を測定する。これを繰返して、必要深さ範囲の線量分布を得ることができる。
【0061】
また、測定点数または測定ピッチの異なる複数の測定位置配置情報を制御装置41の所定記憶媒体に記憶し、測定時に選択的に呼び出して、深さ方向線量分布を測定してもよい。その結果、図11と図12に例示したような線量分布を測定する際に、線量変化度合いに応じて測定ピッチを自在に調整し、変更することができるという効果があり、より高精度な測定結果を得ることができる。
【0062】
次に図14を用いて、この実施の形態4によるセンサ校正方法を説明する。制御装置41内の所定記憶媒体に記憶したセンサ校正配置情報に基づき、すべてのセンサを図14に示すように、同じ深さに設定する。そして、粒子線ビーム13を計画した条件(条件Aとする)に従って照射する。そして、各センサの出力{Ci,i=1,2,…,n;n=10}を記憶装置に記録する。
【0063】
続いて、後述するセンサ回転装置を用いて、すべてのセンサをZ軸12周りに約36度(1間隔分)だけ回転させる。この状態において、粒子線ビーム13を前記条件Aと同じ条件で照射する。この2回目の照射で得られた各センサの出力{Di,i=1,2,…,n;n=10}を制御装置41の記憶媒体に記憶させる。このようにして、例えば、センサ10とセンサ9は同じ深さ位置と同じ角度位置で同じ照射条件Aにおいて線量を測定したことになる。なお、回転方向が逆の場合は、センサ10とセンサ1の測定値を比較する。同じ位置で計測した測定値は同じであるべきとういう条件の下、それぞれの出力値(C10とD)を用いれば、センサ10とセンサ9の相対感度係数が求められる。同様に、他の隣あったセンサについても同様のことが言える。このようにして、必要に応じて、センサ1〜10の相対感度係数を2回の測定によって得ることができ、個別のセンサ毎に校正を行う場合と比較して、センサ校正に要する時間を大幅に短縮できるという効果が得られる。
【0064】
なお、センサ校正の際、センサをZ軸12周りに回転させる手段として、各々のセンサに付いているセンサ移動装置40とガイド部材17bを一体にして、複数のセンサ移動装置40を個別にZ軸12周りの任意の角度に回転させる回転装置を設ける以外に、全センサを一つの回転駆動機構で回転させる回転装置を設けることもできる。なお、一つの回転装置でセンサ群を回転させる場合は、個々のセンサ毎に回転装置を設ける場合よりも低コストな回転装置とすることができる。
【0065】
また、別の回転装置として、図15にセンサおよび水タンク14の概略平面図を示すように、複数のセンサ移動装置40(センサおよびその支持移動機構よりなるセンサ部42が固定されている。)を水タンク14に固定して一体とし、Z軸12の周りに、水タンク14自体を回転させるタンク回転装置43を設けても良い。なお、水タンク14を回転させる際は、水タンク14の水を減らした状態で行い、回転後に再び必要な水を蓄えるようにして回転時に生じる負荷を低減することも可能である。このように構成することで、センサ回転装置は低トルクなもので足りるという効果がある。
また、粒子線治療装置の場合、患者を載せるための治療台が設けられているため、その治療台付属の回転機構を用いて、センサの回転を行う構成とすることもできる。この場合、深さ方向の線量分布測定装置を低コストで構成できるというメリットがある。
【0066】
実施の形態5.
次に、本発明による線量分布測定装置のセンサ校正方法について図16のフローチャートを用いて説明する。
まず、第一ステップ51において、実施の形態1、2、4に示したセンサ移動装置40を用いてセンサ群20をセンサ校正配置に移動させる。このセンサ校正配置では、すべてのセンサは同じ深さ位置に配置される。なお、センサ群20を制御するための制御装置41には、センサの仮想円筒形11の外周上における配置角度情報ならびに、水タンク14内のZ軸12方向おける位置(深さ)情報を記録するセンサ配置記憶部が設けられており、センサの配置情報と、後述するセンサの計測結果とを対応させて処理するように構成されている。
【0067】
次に、第二ステップ52において、制御装置41から指令を出し、粒子線ビーム13を照射する。この時の照射条件を条件Aとする。照射条件Aは例えば、粒子線のビームエネルギー、電流値、照射野形成条件などを含む。更に、照射条件Aには、照射する総粒子数も含まれることが望ましい。また、同じ条件下で照射を繰返した際に、水中において、2パーセント以内でほぼ同じ線量分布を形成できるような条件が望ましい。
【0068】
次に、第三ステップ53において、前記第二ステップ52で照射した粒子線ビーム13をセンサ群20によって測定し、測定結果を得る。ここで、例えばセンサ群20はセンサ1〜10の10個であり、測定結果であるセンサ出力{Ci,i=1,2,…n;n=10}(第一の計測値に相当する。)は制御装置41内の測定値記録部に記録される。
【0069】
次に、第四ステップ54において、前記第三ステップ53が終わると、センサ群20をセンサ群回転手段(例えば図15のセンサ回転装置43。)を用いてZ軸12周りで約36度(複数のセンサが等角度間隔で配置された時の1間隔分に相当する角度。)だけ回転させる。センサ群回転手段の制御は、制御装置内の回転角度制御部によってなされる。ここで、10個のセンサはほぼ等角度間隔で配置しているため、回転後は全てのセンサが隣あったセンサの回転前角度位置に移動される。実施の形態1で示したセンサの二本らせん配置の場合、図9のセンサ校正配置において、第四ステップ54での回転によって、センサ10→センサ9へ、センサ9→センサ7へ、センサ7→センサ5へ、センサ5→センサ3へ、センサ3→センサ1へ、センサ1→センサ2へ、センサ2→センサ4へ、センサ4→センサ6へ、センサ6→センサ8、センサ8→センサ10へと回転する。
【0070】
次に、第五ステップ55において、前記第二ステップ52と同じ照射条件(条件A)にて、粒子線ビーム13を照射する(第二回目)。粒子線ビーム13によって水中で形成される線量分布がセンサ1〜センサ10によって測定される。
次に、第六ステップ56において、前記第五ステップ55の測定で得られる各センサの出力{Di,i=1,2,…n}を制御装置41の測定値記録部に記録させる。
【0071】
次に、第七ステップ57において、前記第三ステップ53と前記第六ステップ56で記録したセンサの出力{Ci,i=1,2,…,n}と{Di,i=1,2,…n}を用いて、センサの相対感度係数{Gij,i=1,2,…,n、j=1,2,…,n}を計算する。各センサのゲインを{Gi,i=1,2,…,n}と、回転前の各センサ位置で形成した線量値を{Si,i=1,2,…,n}とした場合、センサ10は回転した後、回転前のセンサ9と同じ位置にあるため、次の式(式2、式3)が成り立つ。
10=G10*S9 (式2)
9=G9*S9 (式3)
【0072】
従って、G10/G9=D10/C9またはGij(i=10,j=9)=D10/C9となり、他のセンサに対しても同様に、Gij=Di/Cjの関係が得られる。
但し、jは センサ校正配置においてiの隣のセンサを指す。
このようにして、全てのセンサ間の相対感度係数を得ることができる。なお、Siはセンサ校正配置のセンサがある平面内における線量分布を表している。本発明による線量分布測定装置のセンサ校正法において、この{Si}は必ずしも均一分布である必要がなくビーム形成上の許容度が大きい。そのため、深さ方向の線量分布測定装置の複数個センサの相対校正を簡単に行うことが可能となる。
【0073】
また、図16においては示していないが、第七ステップ57で求めた相対校正係数の正確性を確認するため、最後に、得られた校正係数Gijを用いて各センサを校正した後に、前記第三ステップ53と前記第六ステップ56で記録したセンサ出力CiとDj(jはセンサ校正配置においてiの隣のセンサを指す。)が所定精度(例えば1%〜2%)内で等しいかをチェックするステップを設けることが有効である。このようなステップを設けることで、本発明による線量分布測定装置のセンサ校正方法の前提である前記2回の照射において、ほぼ同じ線量分布を形成するということを確認できる。そして、分布測定で非常に重要であるセンサ校正定数を常に正しく得ることを保証し易くなるという効果が得られる。
【0074】
なお、複数のセンサ1〜10よりなるセンサ群20を、センサ校正配置に配置する方法は、上述した実施の形態1、2、4において示すように様々であり、個々のセンサの深さ方向における配置ピッチを変更し、深さ方向の位置を決めて、センサ間ピッチを0mm(同一深さ配置)とすることで校正配置とする場合や、個々のセンサをセンサ群全体の中間の深さに配置(図14参照)させることで校正配置とする場合などがある。
【0075】
また、実施の形態3の深さ方向の配置ピッチを切替えるタイプの線量分布測定装置にも、上述のセンサ校正方法を適用させることが可能であることは言うまでもない。その場合、センサの深さ方向の移動は、センサ深さ切替装置50a(50b)によって行うものとする。また、センサの回転は、支持台21を回転軸22中心に回転させて行う。このように、センサの移動手段、回転手段によらず、図16に示した校正フローを、本願発明の線量分布測定装置のセンサ校正に適用することができる。
【0076】
いずれにしても、水が貯蔵された水タンク14内に照射される放射線の線量分布を、複数のセンサによって上記放射線の照射方向に沿った軸上の異なる位置で測定する線量分布測定装置のセンサ校正方法において、上記軸を中心として伸びる仮想円筒形の周囲に等角度間隔で配置される複数の上記センサを、上記軸上の同一位置に配置するステップ、上記放射線を上記軸に沿って所定量Aだけ照射するとともに複数の上記センサによって上記所定量Aの放射線量を計測し、第一の計測値を得るステップ、上記仮想円筒形の軸周りに、複数の上記センサを回転させ、複数の上記センサを上記仮想円筒形の周方向に1間隔分だけずらせた配置とするステップ、上記軸に沿って上記放射線を所定量Bだけ照射するとともに複数の上記センサによって上記所定量B(上記の説明ではAと同じ条件として例示したが、異なる線量を選択することも可能である。その場合、線量の相違に基づく補正が必要となる。)の放射線量を計測し、第二の計測値を得るステップ、上記第一、第二の計測値を用いて、複数の上記センサの相対感度を計算するステップを含むため、深さ方向の線量分布測定装置の複数個のセンサの相対校正を簡単に行うことが可能となる。
【0077】
実施の形態6.
上述の実施の形態1等では、多数のセンサ(例えば10個)を、直径3mm以上の仮想円筒形に対して所定方法で配置し、深部方向の線量分布装置を構成する例について説明した。この実施の形態6では、よりセンサ数を少なくした場合において、仮想円筒形の径(直径)をゼロ(D1=0)とした場合について示す。
センサ数を2個とし、径が0である仮想円筒形(つまり、放射線が照射される軸に相当する。)の外周に、それらのセンサをらせん状となるように、角度および深さを振り分けて配置し、深部方向の線量分布を計測した場合、測定しようとしている元の深部線量分布を誤差1%程度の精度で測定できる場合があることを、発明者らは実験によって確かめることができた。センサ数が10個と多数である場合に、仮想円筒径形の径0近辺におけるセンサ配置では誤差が大きくなり問題となっても、少数のセンサ数であれば、その誤差を1%以下に抑えることが可能となる。この際、異なる深さ位置にあるセンサが皆D1=0における線量を測定できるので、D1=0の軸上の深部線量分布により近い測定結果を得られる効果がある。
【0078】
なお、構成する線量測定センサの有感部の周りの部材を、炭素など水に近い固体ファントムと呼ばれる素材で作成した場合、上記のセンサの有感部を同じ横方向位置(深さ方向と垂直する方向の位置)に配置した場合でも、センサを配置しなかった場合の線量分布とほぼ同じ分布を得ることが可能である。この場合、本発明のらせん状のセンサ配置を採用することで、センサ有感部に接続するリード線、高圧ケーブル、センサ支持部などはビームの照射方向から見て、十分離れた状態となり、センサ有感部で測定しようとしている部分の線量分布に対する干渉を抑えることができる。したがって、深部線量分布を精度よく測定できる効果が期待できる。
【0079】
また、上述の実施の形態1等では、センサを水を蓄えた容器の中に配置しているとして発明の説明を行ったが、実際、これに限ることがなく、センサを上記のような固体ファントムの中に配置しても、同様に深部線量分布を精度よく測定できる。その場合、センサの回転動作については、固体ファントムと固体ファントム中に配置したセンサらを一体にしてビーム入射方向軸(D1=0の軸)を中心にして回転させれば、上述の実施の形態と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0080】
1〜10 センサ(1:第1のセンサ、10:第二のセンサ)、
11 仮想円筒形 11a 深さ方向測定範囲、
11b 仮想円筒直径 12 センサ配置中心軸(Z軸)、
13 粒子線ビーム 14 水タンク、
14a 水面 15a、18a 位置決めストッパー、
16、16a、16b、60 センサ保持部材、
17、17a、17b ガイド部材 19a、19b、19c センサ移動範囲、20 センサ群 21 支持台、
22 回転軸 23 駆動装置、
24 センサ移動方向 25 センサ回転方向、
26 角度ステップ 30 散乱した粒子線、
30a 深さ方向距離 30b 水平方向距離、
36 バネ 37 風船、
38 パイプ 39 筒体、
40 センサ移動装置 41 制御装置、
42 センサ部 43 タンク回転装置、
50a、50b センサ深さ切替装置 61 枝体、
62 幹体 63 突起部、
70、70a、70b 平坦領域部 71、71a、71b ピーク領域部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射方向を軸として伸びる仮想円筒形の外周外側に配置される複数のセンサを備え、複数の上記センサは、それぞれ上記軸上の異なる位置において上記放射線の線量を測定することを特徴とする線量分布測定装置。
【請求項2】
複数の上記センサは、上記仮想円筒形の外周外側の所定位置に配置される第一のセンサ、上記所定位置からの回転角度が最も180度に近い値となる位置に配置される第二のセンサを含み、上記第一のセンサと上記第二のセンサは、上記軸方向において最も離れた位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の線量分布測定装置。
【請求項3】
複数の上記センサは、上記仮想円筒形の外周上で、かつ、上記軸方向に沿って、上記第一のセンサから上記第二のセンサに向って、時計回りおよび反時計回り方向に、2本のらせん状に振り分けられて配置されることを特徴とする請求項2記載の線量分布測定装置。
【請求項4】
複数の上記センサは、上記軸方向において、等間隔のピッチで上記放射線の線量分布を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の線量分布測定装置。
【請求項5】
複数の上記センサは、上記仮想円筒形の軸を中心として、等角度間隔で配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の線量分布測定装置。
【請求項6】
上記センサを上記軸方向に沿って移動させるためのセンサ移動装置を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の線量分布測定装置。
【請求項7】
上記センサを制御する制御装置を備え、上記制御装置は、上記軸方向に等間隔のピッチで配置される複数の上記センサの配置ピッチを変更するように上記センサ移動装置を制御するピッチ変更制御部を有することを特徴とする請求項6記載の線量分布測定装置。
【請求項8】
複数の上記センサを、上記仮想円筒形の軸周りに回転させるためのセンサ回転装置を備えたことを特徴とする請求項1または請求項5記載の線量分布測定装置。
【請求項9】
上記センサを制御する制御装置を備え、上記制御装置は、上記仮想円筒形の軸を中心として等角度間隔で配置される複数の上記センサが上記軸上の同一位置に配置される場合に、複数の上記センサが1間隔分に相当する角度だけ回転するように上記センサ回転装置を制御する回転角度制御部を有することを特徴とする請求項8記載の線量分布測定装置。
【請求項10】
上記センサを制御する制御装置を備え、上記制御装置は、上記センサの上記仮想円筒形の外周上における配置角度情報および軸上における位置情報を記録するセンサ配置記憶部を備えたことを特徴とする請求項1記載の線量分布測定装置。
【請求項11】
上記センサは、水が貯蔵される水タンクの中に配置されたことを特徴とする請求項1記載の線量分布測定装置。
【請求項12】
上記放射線の照射方向は、鉛直方向下向きであり、上記放射線は、上記仮想円筒形の軸に沿うように、水が貯蔵される水タンク内に照射され、上記センサは、上記放射線の上記水タンク内における深さ方向の線量分布を測定することを特徴とする請求項1記載の線量分布測定装置。
【請求項13】
上記仮想円柱形の径がゼロとなるように上記センサが配置されたことを特徴とする請求項1〜3、5、8〜10、12のいずれか一項記載の線量分布測定装置。
【請求項14】
放射線の線量分布を、複数のセンサによって上記放射線の照射方向に沿った軸上の異なる位置で測定する線量分布測定装置のセンサ校正方法であって、上記軸を中心として伸びる仮想円筒形の周囲に等角度間隔で配置される複数の上記センサを、上記軸上の同一位置に配置するステップ、上記放射線を上記軸に沿うように所定量Aだけ照射するとともに複数の上記センサによって上記所定量Aの放射線量を計測し、第一の計測値を得るステップ、上記仮想円筒形の軸周りに、複数の上記センサを回転させ、複数の上記センサを上記仮想円筒形の周方向に1間隔分だけずらせた配置とするステップ、上記軸に沿うように上記放射線を所定量Bだけ照射するとともに複数の上記センサによって上記所定量Bの放射線量を計測し、第二の計測値を得るステップ、上記第一、第二の計測値を用いて、複数の上記センサの相対感度を計算するステップを含むセンサ校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−44057(P2010−44057A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161737(P2009−161737)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】