説明

線量分布測定装置

【課題】放射線ビームの線量分布測定を高精度に行うことを目的とする。
【解決手段】平行平板電離箱104の複数を積層状に保持するホルダー108を備え、ホルダー108は、平行平板電離箱104のそれぞれの間に空間を形成するスペーサ120を有し、平行平板電離箱104は、その内部に電離箱空洞202を形成する電離箱ケース201と、電離箱空洞202に接する電離箱ケース201の内面に形成された電離箱電極203とを有し、電離箱電極203は、信号が入力される信号電極203aと高圧電位が入力される高圧電極203bを有し、これらの複数の平行平板電離箱とホルダーは水103中に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、がんの放射線治療などに利用される放射線ビームの線量分布を測定する線量分布測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、がんの放射線治療では、治療に用いるX線、電子線、粒子線などの放射線ビームのエネルギーや形状を確認するため、患者にビームを照射する前に、人体を模擬した水ファントム中における線量分布を測定する。また、加速器などの放射線照射装置の調整、および、患者ごとに異なるビームエネルギー分布および形状の確認のため、放射線ビームの品質管理として日常的に線量分布の測定を行う。
【0003】
従来の線量分布測定装置は、例えば特許文献1に記載されているように、複数枚のアクリル樹脂のプレートを積層して支持し、各プレートの間に放射線検知フィルムを挟んで保持するフィルムホルダーを備えている。そして、このフィルムホルダーを、内部が蒸留水等で満たされる中空構造の球体容器内に取り付けて、複数の断面箇所で放射線量分布の測定を行えるようにする。この構造により、一度の測定で三次元での線量分布のデータを取得できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3096924号公報(0011段乃至0016段)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の線量分布測定装置は、センサである放射線検知フィルムの周辺部材が水ではなくアクリル樹脂で構成されているため、人体組織である水とは異なる。そのため、水中での測定が必要ながん治療の線量分布測定では測定精度が低下する。特に陽子線や炭素線などを用いる粒子線治療では、放射線に対する物理特性が水とアクリル樹脂では無視できない程度となるため、高精度な線量分布測定ができなかった。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、放射線ビームの線量分布測定を高精度に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
平行平板電離箱の複数を積層状に保持するホルダーを備え、ホルダーは、平行平板電離箱のそれぞれの間に空間を形成するスペーサを有し、平行平板電離箱は、その内部に電離箱空洞を形成する電離箱ケースと、電離箱空洞に接する電離箱ケースの内面に形成された電離箱電極とを有し、電離箱電極は、信号が入力される信号電極と高圧電位が入力される高圧電極を有する。これらの複数の平行平板電離箱とホルダーは水ファントム中に配置される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る線量分布測定装置は、水ファントム中に配置される際に平行平板電離箱間に水を介在させるので、装置全体として放射線の吸収特性を水、すなわち、人体組織に極めて近くすることができ、放射線ビームの線量分布測定を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1による線量分布測定装置を示す図である。
【図2】図1の平行平板型電離箱の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2の平行平板型電離箱の信号電極側の電離箱ケースを示す図である。
【図4】図2の平行平板型電離箱の高圧電極側の電離箱ケースを示す図である。
【図5】図3及び図4のA−Aで切断した平行平板型電離箱の断面図である。
【図6】図3及び図4のB−Bで切断した平行平板型電離箱の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2による線量分布測定装置の要部及び校正方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による線量分布測定装置を示す図である。水槽102の内部に水103が貯留されており、人体組織と等価である「水ファントム」を形成している。線量分布測定装置1は、平行平板型電離箱104(適宜、電離箱104と省略する)と、平行平板型電離箱104を支持する支持棒110と、支持棒110が固定された支持板111と、平行平板型電離箱104を駆動する駆動装置112と、駆動装置112により回転され支持板111を移動するボールねじ113を備える。駆動装置112は、水槽102の駆動装置設置部114に設置される。平行平板型電離箱104は、電離箱ケース201と、電離箱空洞202と、電離箱電極203を有する。電離箱空洞202は電離箱ケース201により形成する。なお、図1において、平行平板型電離箱104は断面を示しており、ホルダー108は放射線ビーム101の進行方向から見ると、⊃形状(U字の横向き形状)にとなっている。
【0011】
患者に照射する前に、この水ファントムに向けて、例えば、X線、電子線、粒子線などの治療用の放射線ビーム101を照射し、水中に位置決めした複数の平行平板型電離箱104を用いて水ファントム中の線量分布を測定することにより、放射線ビーム101のエネルギーおよびビームプロファイルが適正であるか否かを確認することができる。次に線量分布測定装置1の概略とこの発明の意義について説明する。
【0012】
各平行平板型電離箱104は、各電離箱104の間に水103が介在できるようにスペーサ120を設けたホルダー108により積層状に保持される。スペーサ120は電離箱104のそれぞれの間に空間を形成する。平行平板型電離箱104は、主として、側壁を有する電離箱ケース201とその内面に形成された電離箱電極203、および電離箱空洞202からなり、2つの電離箱電極203の間には直流電圧が印加されている。電離箱空洞202は気体が封入されるが、通常空気が封入される。放射線ビーム101が入射し、2つの対向する電極203の間の空気にエネルギーが付与されると、空気の一部が放射線の電離作用により電子とイオンに電離する。電離した電子とイオンは2つの対向する電極203の間にかかっている電場により互いに反対方向に流動し、電流として観測される。この電流値は、単位時間当たりに放射線により空気に付与されたエネルギーに比例するので、平行平板型電離箱104の電離箱出力である電流値、または電流の積分値である電荷量を測定することによって、線量率または線量を知ることができる。この平行平板型電離箱104を複数個、所定の間隔で配置して同時に測定することにより、水ファントム中の線量分布を短時間に測定することができる。
【0013】
なお、複数の平行平板型電離箱104は放射線ビーム101の進行方向と同一方向に積層配置されれば、ビーム101の深さ方向の線量分布、すなわち深部線量分布を測定することになる。深部線量分布は放射線ビーム101のエネルギー、粒子線治療装置の散乱体やフィルタの厚さ、形状などに大きく依存し、がんの放射線治療におけるビーム101の品質管理上、重要な情報となる。したがって、深部線量分布測定の精度を確保することは治療の品質を向上する上で不可欠である。
【0014】
深部線量分布は、人体組織と等価である水中の線量分布を指す。ところが、水中に水以外の物質があれば不均質な媒質となるので、放射線の吸収特性が水の場合と異なるものとなってしまい、正確な水中の線量分布を得ることができない。したがって、多数の電離箱を配置し同時測定により線量分布の高速測定を行う場合、媒質の不均一性を極力小さくして水等価に近づけて、測定精度を確保する必要がある。
【0015】
そこで、本発明による線量分布測定装置1では、図1に示すように、平行平板型電離箱104と平行平板型電離箱104の間に水103を介在させた。すなわち、平行平板型電離箱104と平行平板型電離箱104の間にある空間の大部分を水とした。そして、電離箱ケース201は、放射線に対する物理特性が水に近い合成樹脂からなり、放射線ビーム101が通過するその壁厚は極力薄いものとなっている。なお、この放射線に対する物理特性が水に近い合成樹脂とは、密度が約1、実効原子番号が約7のものを指し、例えばアクリル、ポリスチレン、ポリエチレンなどが該当する。また、電離箱ケース201の内面に形成されている電離箱電極203はグラファイトからなり、通常の電離箱で使用される金属電極と比較してはるかに水の特性に近く、さらに電極厚は非常に薄く、例えば薄膜である。また、電離箱空洞202内の空気は水と比較すると密度が約1000分の1であり、放射線に対する影響は水の0.1%程度と無視できるレベルである。このような構造により、放射線ビーム101が進行する経路上では大部分が水となるので、多数の電離箱による同時測定により高速化ができると同時に、線量分布の測定精度を確保することができる。
【0016】
以下、放射線ビーム101が進行する経路上の大部分を水とし、水以外の構造物を少なく(薄く)するための構成について述べる。図2は1つの平行平板型電離箱104の概略構成を示す斜視図である。図3は平行平板型電離箱の信号電極側の電離箱ケースを示す図であり、図4は平行平板型電離箱の高圧電極側の電離箱ケースを示す図である。平行平板型電離箱104の外壁は、電離箱ケース201aと201bからなり、その外周部は電離箱内部への水の浸入を防ぐため接合部が図示しない樹脂やOリング等で封止されている。電離箱ケース201aと201bの内側には電離箱空洞202がある。電離箱ケース201aの内面には、電離箱の電離箱電極203のうち、信号が入力される信号電極203a、およびリード部分である信号リード線パターン204aが薄く形成されている。電離箱ケース201bの内面には電離箱の電離箱電極203のうち、高圧電位が入力される高圧電極203b、およびリード部分である高圧リード線パターン204bが薄く形成されている。
【0017】
電極203a、203b、リード線パターン204a、204bは、例えばケース201aおよび201bの内側壁面上にグラファイトや導電性カーボンペーストを薄く塗布するなどして形成する。そして、リード線パターン204a、204bは、信号線および高圧線を電離箱の外部に取出すためのリード線205a、205bに接続されている。ここで、信号用リード線205aと高圧側リード線205bは、電極203aや203bが配置された面を重ねて投射した場合における投射面において、それぞれ別々の位置に設ける。このような構成にすることにより、リード線205a、205bを外部に取出すのに必要な空間を確保しつつ、電離箱全体として薄型の構造とすることができる。さらに接地電位に近い信号線と高電圧がかかっている高圧線とを互いに離すことができるので、絶縁距離を確保することができ、絶縁破壊に対する信頼性向上と、漏れ電流の減少によるノイズ低減を実現することができる。
【0018】
図3において、信号電極203aと信号リード線パターン204aと接続部215の周囲にはガード電極207とリード線用ガードパターン208と接続部214が形成されている。さらに、信号線リードパターン204aは、接続部215を介して信号線用リード
線205aと電気的に接続されている。また、リード線用ガードパターン208は、接続部214を介して接続部信号用シールド210aと電気的に接続されている。また、信号線用シールド210aは接地されている(図示せず)。なお、図3では信号線シールド210aは信号用リード線205aに並行する配置として記載しているが、シールド性能をより強化するために信号用リード線205aを芯線、信号線シールド210aを周囲部とする同軸ケーブルの形態が望ましい。このようにしてガード電極207を設けて接地することにより、リード線用ガードパターン208とガード電極207が同電位に維持される。ガード部であるガード電極207及びリード線用ガードパターン208は、信号電極203aと信号リード線パターン204aの周りのほぼ全てを囲んでいるため、電離箱空洞202を形成する電離箱ケース201aの内面(電離箱空洞202に接する内面)における表面を流れる漏れ電流のほとんどはガード部に流れ込み、信号電極203aへの流入を遮断できる。これにより、平行平板型電離箱104の信号が流れる信号ライン(信号電極203a、リード線パターン204a)に混入する漏れ電流が起因のノイズを低く抑えることができ、測定精度を向上することができる。
【0019】
また、図4において、高圧電極203bと高圧リード線パターン204bは接続部217を介して高圧用リード線205bに電気的に接続されている。高圧用シールド210bは接地されており(図示せず)、高圧部である高圧電極203bと高圧リード線パターン204bが保護され絶縁の安全性を確保している。図4では高圧用リード線205bに並行する配置として記載しているが、図3の信号線の場合と同様、シールド性能をより強化するために高圧用リード線205bを芯線、高圧用シールド210bを周囲部とする同軸ケーブルの形態が望ましい。また、図3のガード部207、208は接続部211aまで延伸され、図4の接続部211bおよび高圧用シールド210bと電気的に接続されている。
【0020】
図5は図3及び図4のA−Aで切断した平行平板型電離箱の断面図であり、図6は図3及び図4のB−Bで切断した平行平板型電離箱の断面図である。図5では高圧用リード線205bと高圧用シールド210bが、電離箱ケース201bの内部に形成された管212の中に通されている。このような構造であるので、絶縁を確保し、かつ、電離箱104全体を薄くすることができる。また、図6における接続部211aと211bは金属部品や導電性ペースト等の接続体218で電気的に接続される。これにより、信号線(信号用リード線205a)と高圧線(高圧用リード線205b)はガード部に接続されたグランド電位(接地電位)のシールド線(信号用シールド210a、高圧用シールド210b)により囲まれているため、測定精度を向上し安全性を確保できる。
【0021】
なお、この平行平板型電離箱104は図1に示すように水中に配置される。ケース201aおよび201bにおける放射線ビーム101が進行する経路上の壁は極力薄く形成されているため、水圧によるたわみが発生して有感部分の体積が変化し、測定精度に影響を及ぼす可能性がある。これを避けるためは、電離箱ケース201内に封入される空気等の気体の圧力を、電離箱空洞202の水深における水圧と同程度まで高くすることで対処すればよい。これにより電離箱の有感部分の体積変動を抑えることができるため、測定精度を確保することができる。また、図2乃至図4に示すように、電離箱空洞202の内部に支柱206を設け、電離箱ケース201a及び201bの内面同士を押圧することにより、たわみを極力抑える構造とする。これにより電離箱の有感部分の体積変動を抑えることができるため、測定精度を確保することができる。
【0022】
以上に述べた構造により、実施の形態1の線量分布測定装置1は、放射線ビーム101が進行する経路上の大部分を水とし、水以外の部分である、ケース201aおよび201bにおける放射線ビーム101が進行する経路上の壁、電離箱電極203、電離箱空洞202を極力薄くすることができ、同時に測定精度の向上と絶縁性・安全性を確保することが可能となる。
【0023】
また、信号電極203aおよび高圧電極203bは、電離箱空洞202の上下面(ケース201aおよび201bにおける放射線ビーム101が進行する経路上の壁面)よりも小さい寸法としている。対向する電極面の間の空間が電離箱104の有感部となるので、有感部が電離箱空洞202全体よりも小さくなる。このような構成にすることにより、電離箱104の出力は、放射線ビームが電離箱ケース201aおよび201bの側壁部で散乱することにより生じる線量分布の歪の影響を受けることがないので、高精度な測定ができる。
【0024】
図1に示すように、複数の平行平板電離箱104とホルダー108によって一体化された構造体は、支持棒110および支持板111などの移動ステージに接続され、移動ステージはボールねじ113を介して駆動装置112に接続する構成とした。これにより、水槽内の任意の位置の線量分布を測定することができる。また、駆動装置112の移動ステップを電離箱104の設置間隔よりも小さくすることにより、実質的な空間分解能を高くすることも可能である。なお、移動ステージ及び駆動装置112に接続する構成を有しない場合であっても、線量分布測定装置1は装置全体として放射線の吸収特性を水、すなわち、人体組織に極めて近くすることができ、放射線ビームの線量分布測定を高精度に行うことができる。
【0025】
以上のように、実施の形態1の線量分布測定装置1は、平行平板電離箱104の複数を積層状に保持するホルダー108を備え、ホルダー108は、平行平板電離箱104のそれぞれの間に空間を形成するスペーサ120を有し、平行平板電離箱104は、その内部に電離箱空洞202を形成する電離箱ケース201と、電離箱空洞202に接する電離箱ケース201の内面に形成された電離箱電極203とを有し、電離箱電極203は、信号が入力される信号電極203aと高圧電位が入力される高圧電極203bを有するので、水ファントム中に配置される際に平行平板電離箱間に水を介在させることができ、装置全体として放射線の吸収特性を水、すなわち、人体組織に極めて近くすることができ、放射線ビームの線量分布測定を高精度に行うことができる。
【0026】
実施の形態2.
図7は本発明の実施の形態2による線量分布測定装置の要部の構造及び校正方法を説明する図である。まず、構造について説明する。平行平板型電離箱104とホルダー108の部分以外の構成は実施の形態1と同じであるので説明は省略する。本発明の実施の形態2では、複数の平行平板型電離箱104a、104b、104c、104d、104e、104i、104j、104kのうち、放射線ビーム101の進行方向の上流側に位置する平行平板型電離箱104aの部分が着脱可能な構造となっている。すなわち、平行平板型電離箱104aはホルダー108に着脱可能に保持される。平行平板型電離箱104a、104b、104c、104d、104e、104i、104j、104kは所定の間隔であるセルピッチLで配置される。このようにする理由は以下のとおりである。
【0027】
一般に、多数の検出器セル(本発明の平行平板型電離箱104に相当)を持つ線量分布測定装置は、各セルの感度ばらつきや経年変化ばらつきを補正するための校正作業が必須である。実施の形態2では、平行平板型電離箱104の校正作業を短時間で行うことができ、多セル検出器の相対校正作業を大幅に省力化できるようにした。
【0028】
次に、線量分布測定装置の校正方法を説明する。図7は、その校正作業の一例を示したものである。図7(a)は1回目の測定を説明する図であり、図7(b)は2回目の測定を説明する図である。放射線ビーム101は時間的に変化がない実質的に定常なビームとする。このとき、物理的に同一の体系であれば、放射線ビーム101がつくる空間線量場
も時間的に変化がないものとなる。校正作業では、放射線ビーム101を複数回照射し、各回の照射において、電離箱の位置を所定の位置に移動して測定を行う。まず、1回目の測定にて、各々の平行平板型電離箱(検出器セル)104では、ある測定値が得られる。検出器セルである平行平板型電離箱104a、104b、104c、104d、104e、104i、104j、104kの1回目の測定結果をそれぞれ、M1a、M1b、M1c、M1d、M1e、M1i、M1j、M1kとする。
【0029】
次に、平行平板型電離箱104aのみホルダー108から取り外し、検出器位置をセルピッチLと同一距離だけビーム101の上流側にずらし、2回目の測定を行う。このとき、1回目の平行平板型電離箱104aの位置と、2回目の平行平板型電離箱104bは同一位置となる。同様に平行平板型電離箱104bの下流側の検出器セルについても、2回目の位置は、1回目における上流側の1つ前の検出器セルの位置と同一となる。平行平板型電離箱104bの上流側には別の検出器セルは無く、また、放射線ビーム101がつくる空間線量場は時間的に変化がないので、1回目の平行平板型電離箱104aが受ける線量と、2回目の平行平板型電離箱104bが受ける線量は同一になる。
【0030】
2回目の照射による平行平板型電離箱104b、104c、104d、104e、104i、104j、104kの測定結果をそれぞれ、M2b、M2c、M2d、M2e、M2i、M2j、M2kとすると、M1aとM2bは全く同一線量場で測定された結果であるので、平行平板型電離箱104aに対する104bの相対感度k(ba)は、式(1)のように表わされる。
k(ba)=M2b/M1a ・・・(1)
【0031】
さらに他の各検出器セルに対しても同様に考えることができ、例えば平行平板型電離箱104bに対する104cの相対感度k(cb)は、式(2)のように表わされる。
k(cb)=M2c/M1b ・・・(2)
【0032】
このように、各検出器セルの隣同士の相対感度を求めることができるので、これを順番に全検出器セルに対して行えば、全検出器セルの相対感度を求めることができる。各検出器セルの校正定数は、上記のようにして求めた相対感度の逆数となるので、全セルの校正を行うことができる。例えば、平行平板型電離箱104aは他の方法により校正済であるとする。検出器セル104bは1/k(ba)倍になるように校正すればよい。検出器セル104cは、1/(k(cb)×k(ba))倍になるように校正すればよい。同様に、他の検出器セルである検出器セル104jは1/K倍になるように校正すればよい。ここでKは、検出器セル104jまでの相対感度kを全て乗算したものである。
【0033】
以上により、実施の形態2の線量分布測定装置1は、平行平板型電離箱104aの部分が着脱可能な構造となっているので、検出器位置をセルピッチLと同一距離だけずらし平行平板型電離箱104の数よりも少ない測定回数、例えば2回測定を行うだけで全検出器セルの校正を短時間で行うことができ、多セル検出器の相対校正作業を大幅に省力化できる。なお、放射線ビーム101の照射と検出器の駆動および測定回数は上記で述べた2回に限らず、さらに多くの回数とすることにより校正データの確からしさや信頼性を向上することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…線量分布測定装置、104、104a、104b、104c、104d、104e、104i、104j、104k…平行平板型電離箱、108…ホルダー、112…駆動装置、120、120a、120b、120c、120d、120e、120i、120j…スペーサ、201、201a、201b…電離箱ケース、202…電離箱空洞、203…電離箱電極、203a…信号電極、203b…高圧電極、204…リード線パターン、204a…信号リード線パターン、204b…高圧リード線パターン、205a…信号用リード線、205b…高圧用リード線、206…支柱、207…ガード電極、208…リード線用ガードパターン、210a…信号用シールド、210b…高圧用シールド、212…管、L…セルピッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ファントム中に配置される複数の平行平板電離箱を有する線量分布測定装置であって、
前記平行平板電離箱の複数を積層状に保持するホルダーを備え、
前記ホルダーは、前記平行平板電離箱のそれぞれの間に空間を形成するスペーサを有し、前記平行平板電離箱は、その内部に電離箱空洞を形成する電離箱ケースと、前記電離箱空洞に接する前記電離箱ケースの内面に形成された電離箱電極とを有し、
前記電離箱電極は、信号が入力される信号電極と高圧電位が入力される高圧電極を有する線量分布測定装置。
【請求項2】
前記電離箱ケースは、合成樹脂からなり、
前記電離箱電極はグラファイト薄膜であることを特徴とする請求項1記載の線量分布測定装置。
【請求項3】
前記信号電極に信号リード線パターンが接続され、前記高圧電極に高圧リード線パターンが接続され、前記信号リード線パターンと、前記高圧リード線パターンとは、前記信号電極が配置された面及び前記高圧電極が配置された面を重ねて投射した場合における投射面において、それぞれ別々の位置に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の線量分布測定装置。
【請求項4】
前記信号電極の周りにガード電極が配置され、前記信号リード線パターンの周りにガードパターンが配置されたことを特徴とする請求項3記載の線量分布測定装置。
【請求項5】
前記信号リード線パターンに接続された信号用リード線の周りに信号用シールドが配置され、前記高圧リード線パターン接続された高圧用リード線の周りに高圧用シールドが配置され、
前記信号用シールドは前記高圧用シールドと電気的に接続されたことを特徴とする請求項3または4に記載の線量分布測定装置。
【請求項6】
前記信号用シールド及び前記信号用リード線は、前記電離箱ケースに形成された第1の管に配置され、
前記高圧用シールド及び前記高圧用リード線は、前記電離箱ケースに形成された第2の管に配置されたことを特徴とする請求項5記載の線量分布測定装置。
【請求項7】
前記電離箱電極は、当該電離箱電極が形成される前記電離箱ケースの内面よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の線量分布測定装置。
【請求項8】
前記電離箱空洞に封入される気体の圧力は、前記水ファントム中に配置された際の前記電離箱空洞の水深における水圧と同程度であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の線量分布測定装置。
【請求項9】
前記電離箱電極が形成される前記電離箱ケースの2つの内面同士を押圧する支柱を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の線量分布測定装置。
【請求項10】
前記平行平板電離箱の複数が前記ホルダーに保持された構造体を移動させる駆動装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の線量分布測定装置。
【請求項11】
前記平行平板電離箱の一つは、前記ホルダーに着脱可能に保持されたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の線量分布測定装置。
【請求項12】
前記平行平板電離箱は、互いに所定の間隔で配置されることを特徴とする請求項11記載の線量分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−42415(P2012−42415A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186036(P2010−186036)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】