締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法
【課題】潜水作業の容易化、単純化及び短縮化が図れ、工期を短縮することができる締切用止水壁体を提供する。
【解決手段】締切用止水壁体は、構造物の水面下にある台座上に囲壁状に設置された止水構造の床台11と、この床台11上に所定の間隔で立設された支柱16を有する内部フレームと、これらの支柱16間にそれぞれ挿入又は外装される複数の分割止水プレート19で構成される止水壁を備える。締結手段で床台11と分割止水プレート19間、及び支柱16と分割止水プレート19間の少なくとも一方を止水用のシール材20−1、20−2を介在して締結し、水圧による外圧を受けた分割止水プレート19でシール材を圧縮することで止水効果を発揮することを特徴とする。
【解決手段】締切用止水壁体は、構造物の水面下にある台座上に囲壁状に設置された止水構造の床台11と、この床台11上に所定の間隔で立設された支柱16を有する内部フレームと、これらの支柱16間にそれぞれ挿入又は外装される複数の分割止水プレート19で構成される止水壁を備える。締結手段で床台11と分割止水プレート19間、及び支柱16と分割止水プレート19間の少なくとも一方を止水用のシール材20−1、20−2を介在して締結し、水圧による外圧を受けた分割止水プレート19でシール材を圧縮することで止水効果を発揮することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や河口の水中、海中の構造物、例えば橋梁の橋脚等の耐震補強等を行う際、水中にある橋脚の周囲を締切り、その内部の水を排除して補強及び/又は補修作業を大気中で行うための締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震国である我が国では、大地震時の安全確保の観点から、既存の大型構造物の耐震補強が急務とされている。例えば鉄筋コンクリート製の橋脚の耐震補強方法としては、橋脚の周囲に鉄筋コンクリート又は鋼板等を外装して合成構造とする補強及び/又は補修方法が提案されている。
【0003】
この種の補強及び/又は補修作業を行う現場が水上である場合、すなわち、河川や海、湖等の水面下にある台座(基礎、フーチング)に橋脚等の被作業構造物が立設されて水面上に突出している場合には、この被作業構造物の周囲に締切用止水壁体を囲壁状に形成し、この締切用止水壁体の内周側の水を排水(ドライアップ)して、被作業構造物の周囲に乾燥した作業場を形成し、補強及び/又は補修作業を行う。
【0004】
締切用止水壁体の形成例としては、被作業構造物の周囲に多数のシートパイルを打ち込んで取り囲むものが考えられる。しかし、シートパイル間やシートパイル継施工部、シートパイルと台座間の止水性に難がある上に、水圧や波浪等による変形の問題があり、採用が困難である。しかも、橋脚のように、シートパイルを建て込むための空頭が極端に少ない場合には適用し難い。また、継施工が多い場合にはシートパイルの再使用が困難であり、不経済となる。更に、シートパイルの建て込みにバイブロハンマー等の振動機械を使用する場合には、周辺環境に悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
その上、シートパイルを水底に打ち込む必要があるため、橋脚のように台座(基礎、フーチング)の上面が比較的広い面積を有している場合には、台座全体を取り囲むように広範囲に締切用止水壁体を形成しなければならず、これによりシートパイルを打ち込む本数や打ち込む範囲が増えて工数及び工期、締切のために占有する面積が増大し、上述した漏水や変形、河積を阻害する範囲の増大も顕著になるという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1に開示されているように、複数に縦割りした浮力調整可能な分割函体の一方側をヒンジで開閉自在に連結したものを開閉操作して橋脚等の被作業構造物に外装して沈降し、この分割函体の下端部を台座上面に弾接させ、この部分に止水グラウトを充填して止水するようにした締切用ケーソンがある。
【0007】
また、特許文献2に開示されているように、被作業構造物の鉛直方向及び周方向に沿って分断され、円弧状に屈曲した同一構成の複数のプレキャストパネルを、被作業構造物に円筒状に外装して沈降させ、このプレキャストパネルの下端と台座上面との間に止水モルタルを充填して止水するようにした仮締切構造体がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1の締切用ケーソン及び特許文献2の仮締切構造体にあっても、複数の分割函体やプレキャストパネルといった分割体の接合部、下端部、ヒンジ部の止水性が確立されていない。更に、被作業構造物の、例えば橋脚の桁下の空頭や周囲の水深が充分に確保されていない場合には、水上における運搬、設置、撤去も困難で採用が難しい。
【0009】
また、特許文献1の締切用ケーソンは、沈設時の注排水によるコントロールの方法が確立されていない。更に、締切用ケーソンは重量物となり、製作、運搬、設置、撤去もコスト高で採用が難しい。一方、特許文献2の仮締切構造体は、着座部の設置工程が煩雑な上に、着座部を固定するコンクリートが水中に漏出して水質を汚濁する。更に、特許文献1の場合と同様に、鋼製パネルが重量物となり、製作、運搬、設置、撤去もコスト高で採用が難しい。
【0010】
そこで本出願人は、特許文献3において、水中に建造された被作業構造物の周囲を、空頭や水深に影響されることなく、簡易な工程で、しかも高い止水性を確保して締め切ることができる締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法を提案した。
【0011】
この特許文献3に開示されている技術によれば、締切用止水壁体を構成する分割体を小型に形成できるため、締切用止水壁体の製作や陸上及び水上における運搬が容易になると同時に、空頭や水深に影響されることなく、簡易な工程と簡易なクレーンその他の荷役機械で締切用止水壁体を構築することができる。また、簡素な構造により、高い止水性を確保しながら、分割止水函体を水中に沈降及び浮上可能にして、水上における分割止水函体の運搬及び設置、解体、撤去を容易に行うことができる。更に、水中での設置時には締切用函体ユニットの姿勢を略水平に保ち、設置後には締切用函体ユニットの上面を水平面にして、その上に設置される締切用止水壁体の構築を容易にすることができる。
【0012】
しかも、横方向に並ぶ複数の縦貯水系統に貯水する水の量を適宜調整することにより、水中における締切用函体ユニットの姿勢を水平に保つことができ、これにより、水中に建造された被作業構造物の周囲を、空頭や水深に影響されることなく、簡易な工程で、しかも高い止水性を確保して締切ることができる。加えて、水上における分割壁体の運搬、設置、解体、撤去を容易に行うことができる。
【0013】
更に、複数の分割止水函体を互いに連結して被作業構造物の周囲に締切用函体ユニットを環状に構築してから、この締切用函体ユニットを水中に沈降させて台座上面に着座、設置するため、被作業構造物の周囲の空頭や水深等に影響されることなく、簡易な工程で締切用止水壁体を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第2829362号公報
【特許文献2】特開平11−117315号公報
【特許文献3】特開2011−26802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献3の締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法は、上述したような種々の利点を有しているものの、下記(1)〜(11)のような点においてまだ改良の余地がある。
【0016】
(1)特許文献3の段落[0045]及び図2〜図4に示されているように、締切用壁体ユニット12を構成するには、複数の分割止水プレート43、44を水平に配置し、これらを水密的に連結し、水深に応じて1段から数段水密的に積み重ねるため、潜水作業が多くなり、作業者の潜水時間も長く必要になる。
【0017】
(2)段落[0046]に記載されているように、上部接合板46と下部接合板47がそれぞれ板状であるため、接合面の止水性を確保するためには、接合面に止水パッキングを挿入し、ボルトにより締結して圧縮させる必要があり、水中でのボルト締結作業が多い。
【0018】
(3)段落[0047]及び図2に示されているように、それぞれの分割止水プレート43、44の、互いに対面する妻板48同士の間がシール連結構造53を介して水平方向に連結されるため、連結面が多く、止水パッキングの取り付けが不十分であると漏水が発生し易くなる。しかも、水中でのボルト締結作業も多い。
【0019】
(4)段落[0048]に記載されているように、分割止水プレート43、44の下部接合板47が、最上段の締切用函体ユニット11を構成する分割止水函体13、14の天板16上の最外側部に固着された鉄骨状、且つ略Γ字形の断面形状を持つ接続部材51の上面に、同じくシール連結構造53を介して着脱可能に固定されるため、作業スペースが狭隘で、ボルト固定作業が煩雑となる。
【0020】
(5)段落[0049]に記載されているように、下の段の分割止水プレート43、44の上部接合板46の上に、上の段の分割止水プレート43、44の下部接合板47が重ねられ、これら上下の接合板46、47の間が同じくシール連結構造53を介して連結されるため、分割止水プレートを固定するための支持材がないため、ボルト固定作業が煩雑となる。
【0021】
(6)段落[0050]及び図7(A)、(B)に示されているように、水平方向に隣接する分割止水プレート43(44)の妻板48同士の間のシール連結構造、及び最上段の締切用函体ユニット11(接続部材51)と1段目の締切用函体ユニット12(分割止水プレート43、44の下部接合板47)との間のシール連結構造についても同様な構造であるため、分割止水プレートを固定するための支持材がないため、ボルト固定作業が煩雑となる。
【0022】
(7)段落[0051]に記載されているように、接合板46、47、48、51を互いに対面させてボルト孔54にボルト55を挿通し、ナット56で締結することにより、各分割止水プレート43、44間及び、これらと接続部材51間が連結される。このため、連結するためのボルト数が多すぎて作業が手間取る。
【0023】
(8)段落[0052]及び図7(A)に示されているように、互いに対面して止水を要する二面S4、S5間には、シール連結構造30と同様に、これら二面S4、S5間の間隔を所定間隔に保つ非弾性の間隔保持部材58と、この間隔保時部材よりも厚くて弾性があるシール材59とが併設され、縦横方向に厚くて弾性があるシール材が並設されているため、分割止水プレートのボルト連結が手間取る。
【0024】
(9)段落[0053]に記載されているように、間隔保持部材58の厚みt5は例えば10mmであり、シール材59の厚みt2は例えば20mmでt5<t2である。この場合、シール材59をt2−t5以上圧縮しないと漏水する可能性がある。また、締切壁体ユニット1の寸法に誤差が生ずる。
【0025】
(10)段落[0054]及び図7(B)に示されているように、各接合板46、47(48、51)の間をボルト55とナット56で締結するため、締結作業が煩雑で手間取る。
【0026】
(11)段落[0088]及び図7に示されているように、連結構造53は、ボルト55、ナット56により固定、止水されるため、水中でのボルト締結作業が増える。
【0027】
上述した(1)〜(11)に加えて、下記(12)〜(14)のような点にも考慮の余地がある。
【0028】
(12)十分な空頭が確保できクレーン等の荷役機械が使用できる場合は、浮体構造にする必要がないため、函体ユニットは必要性がない。
【0029】
(13)潜水作業者は、締結ボルトとナットを別々の入れ物に入れて、身体に携帯して潜水し、所定の個所で締結作業することになる。この際、先ず締結する二つのフランジ(つまりパネルを微調整して)の孔を合わせ、ボルトをボルト袋から取り出して、孔にボルトを挿入し、ナット袋からナットを取り出してボルトに嵌め、ナットを回転して締結する、という一連の作業を締結箇所毎に繰り返す必要があり、潜水作業が煩雑で潜水時間も長くなる。
【0030】
(14)潜水作業者の身体には、水中作業のためのウエイトの他にボルトとナットの重量が加算されるので水中での動作が緩慢になる。しかも、この種の工事は河川の下流や河口付近で行われるので、水中が濁っている事が多く、視界不良が起きやすくボルト孔の合わせ等の細かい作業は難渋する。
【0031】
このように、本出願人の先願である特許文献3の締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法は、潜水作業に着目すると作業が煩雑で潜水時間も長く必要であり、工期の長期化を招く一つの要因となるため、その対策が望まれている。
【0032】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、締切用止水壁体を簡単且つ容易に水中又は海中で組み立て、補強及び/又は補修作業の終了後に簡単に解体でき、潜水作業の容易化、単純化及び短縮化が図れ、工期を短縮することができる締切用止水壁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の締切用止水壁体は、水中又は海中にある構造物の周囲を締切り、その内部の水又は海水を排除して、前記構造物の補強及び/又は補修作業を大気中で行う締切用止水壁体において、前記構造物の水面下にある台座上に囲壁状に設置された止水構造の床台11と、この床台11上に所定の間隔で立設された支柱16を有する内部フレームと、これらの支柱16間にそれぞれ挿入又は外装される複数の分割止水プレート19で構成される止水壁と、前記床台11と前記分割止水プレート19間、及び前記支柱16と前記分割止水プレート19間の少なくとも一方を締結する締結手段30と、前記床台11と前記分割止水プレート19間、及び前記支柱16と前記分割止水プレート19間にそれぞれ介在され、水圧による外圧を受けた前記分割止水プレート19により圧縮されることで止水効果を発揮する止水用のシール材20−1、20−2とを具備することを特徴とする。
【0034】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の締切用止水壁体において、前記締結手段30は、ロットボルト31aと、前記床台11、前記分割止水プレート19、及び前記内部フレームのいずれかに装着され、前記ロットボルト31aの一端側の孔を回動自在に軸支する取付具32と、前記ロットボルト31aの他端側が挿脱自在に収納される溝36を有する固定フランジ35cと、前記ロットボルト31aの他端側を前記固定フランジ35cに係止するナット31bとを備えることを特徴とする。
【0035】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の締切用止水壁体において、前記締結手段30は、前記支柱16に装着される締結ボルト54を備え、この締結ボルト54をねじ込むことで前記分割止水プレート19の前記シール材20−1に対向する面を締付けて固定することを特徴とする。
【0036】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の締切用止水壁体において、前記締結手段30は、一端側が前記床台11、前記分割止水プレート19、前記内部フレームのいずれかに装着される取付具50と、この取付具50に回動自在に軸支された一対の脚部51と、これらの脚部51を連結する連結部材52と、前記連結部材52にねじ込まれ、固定具49を前記取付具50に向かって押圧する締付ボルト53とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項1乃至4に係る発明によれば、止水構造の床台と、この床台上に所定の間隔で立設された支柱を有する内部フレームと、各支柱間にそれぞれ挿入又は外装される分割止水プレートとを、締結手段で緊張締結して締切用止水壁体を構成するので、締切用止水壁体を簡単に容易に水中又は海中で組立て、補強及び/又は補修作業が終了すれば簡単に解体できる。また、内部フレームによる梁構造で水圧を支え、分割止水プレートを水圧で支柱に押し付けて固定する。しかも、締結手段は、予め床台、内部フレームあるいは分割止水プレートに装着されており、簡単な作業で緊張締結できるので、潜水作業が容易になり短くてすみ、安全性も高くなるので、本出願人の先願である特許文献3に比較して工期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体の一部を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う締切用止水壁体の横断面図である。
【図4】図2のIV部を拡大した締切用止水壁体の拡大縦断面図及び支柱周辺の平面図である。
【図5】図4のV矢視による締切用止水壁体の側面図及び平面図である。
【図6】図4のVI矢視による締切用止水壁体の側面図及び平面図である。
【図7】締結金具の一例を示す断面図及び平面図である。
【図8】分割止水プレートを支柱に設置する部分の拡大断面図である。
【図9】上下に隣接する分割止水プレートを緊張締結する部分の拡大断面図及び平面図である。
【図10】上下に隣接する分割止水プレートを緊張締結する部分の他の構成例を示す拡大断面図である。
【図11】上下に隣接する分割止水プレートを緊張締結する部分の更に他の構成例を示す拡大断面図及び平面図である。
【図12】床台と分割止水プレートの接合部の拡大断面図である。
【図13】床台と分割止水プレートの接合部の他の構成例を示す拡大断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図である。
【図15】図14のIII−III線に沿う締切用止水壁体の横断面図である。
【図16】図15における分割止水プレートを支柱に設置する部分の拡大断面図である。
【図17】図15における分割止水プレートを隅支柱に設置する部分の拡大断面図である。
【図18】分割止水プレートの隅部の他の構成例を示す拡大断面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る締切用止水壁体について説明するためのもので、締切用止水壁体の一部の断面図である。
【図20】締結金具の他の例を示す断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体の一部を概略的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿う締切用止水壁体の横断面図である。なお、本例では締切用止水壁体の平面形状が矩形を呈す場合について説明する。
【0041】
図2に示すように、締切用止水壁体1を用いて補強及び/又は補修作業がなされる被作業構造物としての橋脚2は、例えば鉄筋コンクリート構造であり、水面下の地盤中に埋設された複数の基礎杭3と、これらの基礎杭3の上に形成されて水面下に位置する台座としてのフーチング4と、フーチング4の上面4aに立設されて水面上に突出する円柱、楕円柱、あるいは角柱状等のピア部分5と、このピア部分5の上端に形成された張出し梁6とを備え、張出し梁6の上面には間隔梁部材7を介して道路や鉄道等の床部分となる橋脚上部工8が載置された一般的な構造のものである。
【0042】
締切用止水壁体1は、フーチング4の上面4aに、ピア部分5の周囲に所定の間隔を持って矩形の囲壁状に設置され、その内側の水を排水して乾燥した作業場を形成することにより、ピア部分5の耐震補強作業や塗装作業といった各種作業を容易に実施可能にするものである。
【0043】
上記締切用止水壁体1は、床台(又は函体)11と、この床台11上に設置された締切用壁体12とで構成される。床台11は、構造物の周囲の水中又は海中にあるピア部分5の周囲を囲むように、フーチング4の上面4aに略水平に沈設される。この床台11の下面には、フーチング4と床台11との間の水密性を確保する封、いわゆる止水パッキングやシール材(以下、これらをシール材と総称する)13、及び締切用止水壁体1を支持する支承14が配置されている。
【0044】
また、図2及び図3に示すように、上記締切用壁体12とピア部分5との間(必要があれば上記床台11とピア部分5との間も同様)にはそれぞれ、水圧を支えるための切梁15a、15bが設置されている。これらの切梁15a、15bと締切用壁体12との間には、横桁18a、18bが介在されている。また、必要に応じて切梁15a、15bと床台11との間にも横桁18a、18bを介在させても良い。さらにフーチング4の平面形状や現場施工条件により、切梁を省ける場合がある。
【0045】
上記床台11は、締切用止水壁体1の水平性や変形量を許容値内に収め、締切用止水壁体1全体の構造的な強度と水密性を確保するため、現場条件に応じた必要な剛性を有する構造と共に、床台11自身が止水構造であり、桁構造や箱構造等、用途や水深、場所により適宜、その高さや幅及び板厚等を設計する。必要に応じて上記特許文献3と同様な浮体構造にしても良いのはもちろんであり、図3では複数の分割止水函体11−1、11−2、…を水平方向に配列し、これらを水密的に連結して床台11を構成した例を示している。
【0046】
一方、締切用壁体12は、上記床台11上に設置され、H形鋼等から成る支柱16、隅支柱17、及び上記横桁18a、18b等の部材から構成される内部フレームと、この内部フレームに取り付けられる複数の分割止水プレート19(19−1〜19−5)から成る止水壁とで形成される。すなわち、図1に示すように、床台11の天端に支柱16が鉛直に所定の間隔で立設され、各支柱16間における上フランジと下フランジの間に分割止水プレート19を挿入していくことで平面形状が略円形又は略長方形又は略小判形に組み立て、締切用壁体12を構築する。
【0047】
上記支柱16は、床台11の最上段に溶接等により直接取り付けるか、又は床台11の最上段に接続部材を設けてボルト等により取り付けて固定する。この際、支柱16の継手を少なくするために、空頭を考慮して可能な範囲で1本の支柱16を長くすると良い。
【0048】
図3に示す例では、隅支柱17を一点鎖線で円形に囲んで示すように、2本のH形鋼の一方のフランジを90°の角度で溶接、又はシール材を介して接合して形成した場合を示しており、横桁18bの端部がこれらのH形鋼の接合部に溶接等で接続されている。
【0049】
なお、上記支柱16はH形鋼が好適であるが、締切用止水壁体1にかかる水圧等の外力を支持できれば必ずしもH形鋼にこだわる必要はない。また、橋脚2の高さ等の条件により支柱16を複数段にしても良い。
【0050】
図1に示したように、締切用壁体12の内側の上記支柱(H形鋼等)16のフランジ内面には止水用のシール材20−1が装着されており、このシール材20−1が分割止水プレート19と支柱16のフランジ内面との間に介在される。また、上記床台11の上面11aにおける上記支柱16のフランジに対応する位置には、床台リブ(床台ガイド板)21が上記支柱16のフランジ内面と面一に設けられており、この床台リブ21の内面にも止水用のシール材20−2が装着されている。前記シール材20−1、20−2は、水圧などによる外圧を受けた分割止水プレート19により押し潰されることで、止水効果を発揮する。また、必要に応じて間隔保持部材が設けられる。
【0051】
そして、上記分割止水プレート19を各支柱16間における上フランジと下フランジの間に挿入し、これら分割止水プレート19を上記シール材20−1、20−2を介して締結金具(後述する)で床台11と支柱16にそれぞれ緊張締結する。
【0052】
このようにして、各支柱16間に複数の分割止水プレート19を水平方向に配列し、これらを水密的に連結することができる。この水平方向の配列を1ユニットとし、この1ユニットを水深に応じて床台11の上に1段〜数段、水密的に積み重ね、最上部の分割止水プレート19(図2では19−5)の少なくとも上部が水面上に突出するように高さを設定する。
【0053】
その後、締切用壁体12の内側の水又は海水を排水することで、締切用壁体12の外側から水圧がかかり、分割止水プレート19がシール材20−1、20−2を介して支柱16と床台リブ21に圧着されることで止水される。
【0054】
上記のような構成の締切用壁体12では、上記各分割止水プレート19を各支柱16間における上フランジと下フランジの間に挿入する際、支柱16のH形鋼フランジの間に上から挿入されるので取り付けガイドとなり、分割止水プレート19の取付作業が容易になる。
【0055】
図4(a)は図2のIV部を拡大した締切用止水壁体1の拡大縦断面図、図4(b)は図4(a)の支柱近傍の平面図である。また、図5(a)は図4(a)のV矢視による締切用止水壁体1の側面図、図5(b)はその平面図、図6(a)は同じく図4(a)のVI矢視による締切用止水壁体1の側面図、図6(b)は図6(a)のA−A線矢示断面図、図6(c)は図6(a)のB−B線矢示断面図である。
【0056】
図4に示すように、フーチング4の上面4aに、床台(又は函体)11が支承14とシール材13を介して設置され、この床台11の上に締切用壁体12が設置されている。本例では床台11上に接続部材としての架台(接続架台)22が設けられており、この接続架台22上に、締切用壁体12が碇着用固定金具23で固定されている。また、上下に隣接する分割止水プレート19同士の接合面にシール材26と間隔保持部材27が設置され、このシール材26と間隔保持部材27を介して引寄せ用固定金具28−1、28−2で上下に隣接する分割止水プレート19(19−1〜19−5)同士が固定される。更に、上記各分割止水プレート19(19−1〜19−5)は、引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…で支柱16に引き寄せられて固定されている。
【0057】
図5及び図6に示すように、各分割止水プレート19(19−1、19−2、…)は略長方形を呈し、鋼板や型鋼等で形成される。例えば上下面、側面、内外面の6面を鋼板により構成し、それぞれは溶接等で固着する。又は内外面のどちらか一方がない5面を鋼板により構成し、それぞれは溶接等で固着する。また、上記分割止水プレート19(19−1、19−2、…)の内部は必要によりリブ等を設置して補強を行う。設計条件により内部に浮力構造を形成することもできる。
【0058】
そして、水平方向は引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…で引き寄せて固定し、水圧で圧縮して止水する。一方、鉛直方向は、分割止水プレート19の自重と分割止水プレート19−1、19−2の接合面近くに取り付けた固定具としての鋼材やフランジを引寄せ用固定金具28−1、28−2で引き寄せて締め付けることにより止水を行う。これにより、締結金具の本数を減じることができ、水中における作業時間(潜水時間)を削減できる。また、分割止水プレート19−1、19−2の1段当たりの高さを大きくして水平接合面を減じることで、漏水と水中における作業時間(潜水作業)を短縮できるが、製作、運搬、構築、解体等も考慮して設定すると良い。
【0059】
上記シール材26は、間隔保持部材27の厚みをt5、シール材26の厚みをt2としたとき、水圧等の圧縮力でt2−t5以上の圧縮が期待できる材料を使用し、接合面に間隔保持部材27を設置することでシール材26が均一に圧縮されて漏水が減り、締切用壁体12の形状寸法が確保できる。
【0060】
なお、支柱16と分割止水プレート19、各分割止水プレート19間の接合面においては、間隔保持部材27がなくても止水できる場合は取り外しても良い。また、空頭に制限がない場合は、着座部と間隔保持部材27を有する接続架台22上に、クレーン等の荷役機械を使用して分割止水プレート19を支柱16間に順次挿入して設置することで作業性を向上できる。
【0061】
図7(a)、(b)はそれぞれ、上記図4乃至図6に示した床台11と分割止水プレート19間を緊張締結する碇着用固定金具23、支柱16と分割止水プレート19間を緊張締結する引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…、及び隣接する分割止水プレート19間をそれぞれ緊張締結する引寄せ用固定金具28−1、28−2の構成例を示す断面図及び平面図である。
【0062】
本例では、これらの締結用の固定金具(以下、締結金具と称する)30を、締結具31、取付具32及び固定具35で形成している。上記締結具31には、例えばロットボルト31a、ナット31b及び座金(ワッシャー)31cを用いる。ロットボルト31aとは、ボルトの先端に円形有孔のリング材が一体で形成されたボルトである。このロットボルト31aは、鋼材、ステンレス、鋳鋼、ガラス繊維補強プラスチック、炭素繊維とプラスチックの組み合わせ等、種々の材質ものが適用できる。また、リング材の形状としては、ドーナッツ状、矩形状、馬蹄形等を問わない。
【0063】
取付具32は、このロットボルト31aを分割止水プレート19や床台11及び支柱16に取り付けるものである。この取付具32は、取付プレート33aと、この取付プレート33aから突設された軸受け33bと、この軸受け33bに設けられた回転輪(中空円筒形の金物)33cに挿入された支持軸(例えばボルト34aとナット34b)33dとで構成されている。上記取付プレート33aと軸受け33bの厚みは、ロットボルト31aとナット31bの締付け力により決定され、必要に応じて補強リブ等を設けることがある。
【0064】
上記ロットボルト31aは、一端側の孔が支持軸33dで回動自在に軸支される。このロットボルト31aの他端側には、座金31cを介してナット31bが予めねじ込まれている。そして、ロットボルト31aを取付プレート33a側に倒伏させておき、締結時に起立させて上記床台11、上記分割止水プレート19、あるいは内部フレームの対応する位置に設けられた固定具(図示せず)に係止し、ナット31bを座金31cを介して締め付け方向にねじ込むことで緊張締結するようになっている。
【0065】
図8は、分割止水プレート19を支柱16に設置する部分(引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…の周辺に対応する)の拡大断面図であり、図7に示した締結金具30を用いて分割止水プレート19を支柱16に設置した状態を示している。本例では、固定具35を支柱16の一方のフランジに設置した固定プレート35aと、この固定プレート35aを補強する補強プレート35bと、ロットボルト31aを起立状態で固定する固定フランジ35cとで構成している。この固定フランジ35cには、ロットボルト31aの他端側が挿脱自在に収納される例えば半長円形の溝36が形成されている。そして、ロットボルト31aを倒伏した状態から回動させて起立させ、固定フランジ35cの溝36に嵌め込み、ナット31bを座金31cを介して締め付けようにねじ込むことで緊張締結する。したがって、従来のものに比べ作業性が格段に良く、特に水中での作業に好適である。
【0066】
図9(a)、(b)はそれぞれ、上下に隣接する分割止水プレート19−1、19−2を緊張締結する部分(引寄せ用固定金具28−1、28−2の周辺に対応する)の拡大断面図及び平面図である。本例では、分割止水プレート19−1、19−2の両側面であって、下部の分割止水プレート19−1の上端付近に締結金具30−1、30−2を取り付けている。そして、下部の分割止水プレート19−1の上端と上部の分割止水プレート19−2の下端に、上記締結金具30−1、30−2のロットボルト31a−1、30a−2を受入れて固定する固定具として固定フランジ37−1、37−2を取り付ける。
【0067】
すなわち、下部の分割止水プレート19−1にロットボルト31a−1、31a−2の一端が軸支されて装着されており、上部の分割止水プレート19−2と下部の分割止水プレート19−1との接合部に固定フランジ37−1、37−2が設けられている。この固定フランジ37−1、37−2には、図9(b)に示すようにロットボルト31a−1、31a−2を受入れる半長円形の溝38−1、38−2が設けられており、ロットボルト31a−1、31a−2の他端側が挿脱自在に収容される。
【0068】
そして、上部及び下部の分割止水プレート19−1、19−2が適位置に設置されたら、下方向に倒伏状態にあるロットボルト31a−1、31a−2を回動させて上方向に倒伏させ、上部の分割止水プレート19−2の固定フランジの半長円形の溝38−1、38−2に嵌め、予めねじ込んでおいたナット31b−1、31b−2で座金31c−1、31c−2を介して締め付ける。この際、上部及び下部の分割止水プレート19−1、19−2の位置出しを、固定フランジ37−1、37−2で行うことができる。
【0069】
図10は、上下に隣接する分割止水プレート19−1、19−2を緊張締結する部分の他の構成例を示す拡大断面図である。本例は、分割止水プレート19−1、19−2の接合面が互いに嵌合するように、いわゆる相欠矧ぎにし、接合面にシール材26と間隔保持部材27を介在させたものである。締結金具30−1、30−2の構成は、図9と同様であるので同一部分に同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0070】
このような構成によれば、図9に示した構造に比べて水圧等の外圧を利用して止水性を高めることができる。すなわち、水圧等の外圧が分割止水プレート19−2にかかるとシール材26が押し潰されることで止水性が発揮されるので好適である。相欠矧ぎに限らず他の嵌合構造等であっても良いのはもちろんである。
【0071】
図11(a)、(b)はそれぞれ、上下に隣接する分割止水プレート19−1、19−2を緊張締結する部分の更に他の構成例を示す拡大断面図及び平面図である。上記図9に示した例ではロットボルト31a−1、31a−2が起立、倒伏状態に回動したのに対し、分割止水プレート19−1、19−2の表面に沿って回動するようになっている。換言すれば、図9に示した例ではロットボルト31a−1、31a−2の回転軸が分割止水プレート19−1、19−2の表面と平行な方向であるのに対し、分割止水プレート19−1、19−2の表面に垂直な方向になっている。このような構成であっても、回動方向が異なるのみであり、図9に示した例と実質的に同様な作用効果が得られる。
【0072】
なお、潜水作業でのナット31b−1、31b−2の締め付けを考えると、図9乃至図11に示したように、ロットボルト31a−1、31a−2の回動方向は上向き又は水平方向が好適であるが、下向きに回動させて締結することもできる。
【0073】
図12は、床台11と分割止水プレート19−1の接合部(碇着用固定金具23−1、23−2の周辺に対応する)の拡大断面図である。本例では、接続架台22を使用せずに床台11の上面11aに直接分割止水プレート19−1を設置する場合を示しているが、接続架台22上に分割止水プレート19−1を設置する場合も同様である。すなわち、水平碇着用固定金具として働く締結金具30を最下部の分割止水プレート19−1の下端付近に倒伏自在に軸支して取り付ける。
【0074】
一方、床台11の上面11aには、例えば半長円形の溝36が形成された固定具39を溶接やボルト等で固定する。そして、上記固定具39に締結金具30としてのロットボルト31a−1を溝36内に挿入して係止し、予め装着しておいたナット31b−1を座金31c−1を介してねじ込むことで分割止水プレート19−1を床台ガイド板21に引き寄せて固定する。
【0075】
また、分割止水プレート19−1を碇着する取付具32を、床台11の上面11aにおける外水側に溶接等で固定し、対応する最下部の分割止水プレート19−1に固定具35を取り付ける。この固定具35としては、取付具32に軸支されたロットボルト31a−2を受入れる固定フランジを用いている。そして、上記固定具35に締結金具30としてのロットボルト31a−2を溝内に挿入して係止し、予め装着しておいたナット31b−2を座金31c−2を介してねじ込むことで分割止水プレート19−1を床台11に引き寄せて固定する。
【0076】
図13は、床台11と分割止水プレート19−1の接合部の他の構成例を示す拡大断面図である。本例では、最下部の分割止水プレート19−1を碇着用固定金具23−1、23−2として働く締結金具30を使って床台11上に固定するもので、床台11に設置された分割止水プレート19−1の両側に締結金具30を取り付けている。
【0077】
分割止水プレート19−1を碇着する取付具32は床台11に溶接等で固定し、対応する最下部の分割止水プレート19−1に固定具35を取り付けている。この固定具35としては、取付具32に軸支されたロットボルト31aを受入れる固定フランジを用いている。他の構成は図12と同様である。
【0078】
上記のような構成の締切用止水壁体では、止水構造の床台11と、この床台11上に所定の間隔で立設された支柱16を有する内部フレームと、各支柱16間にそれぞれ挿入される分割止水プレート19−1とを、締結金具30で緊張締結して締切用止水壁体1を構成するので、締切用止水壁体1を簡単に容易に水中又は海中で組立て、補強及び/又は補修作業が終了すれば簡単に解体できる。また、内部フレームによる梁構造で水圧を支え、分割止水プレート19−1を水圧で支柱に押し付けて固定する。しかも、締結金具30は取付具32、締結具31及び固定具35で構成され、予め床台11、内部フレームあるいは分割止水プレート19−1に装着されており、簡単な作業で緊張締結できるので、潜水作業が容易になり短くてすみ、安全性も高くなるので、本出願人の先願である特許文献3に比較して工期の短縮を図ることができる。
【0079】
次に、上記締切用止水壁体1を用いた締切工法の作業手順の一例を概略的に説明する。床台(又は函体)11、内部フレーム及び分割止水プレート19は、工場(被作業構造物である橋脚2の近傍の陸地等でも良い)において予め製造する。
【0080】
そして、橋脚2のフーチング4が水底で地盤中に埋没している場合には、少なくともフーチング4の上面4aが水中に露呈するまで地盤を掘削する。
【0081】
次に、床台11を組立て枠型に形成する。そして、フーチング4の上面4aに床台11を水平に沈設する。ここまでの工程は、本出願人の先願である特許文献3と同様にすることもできる。
【0082】
その後、沈設した床台11の上面11a、あるいはこの床台11上に設置した接続架台22上に溶接やボルト締結等の方法で支柱16を立設する。この際、支柱16は橋脚2の高さ等の条件により複数段にしても良い。引き続き、横桁18a、18bを設置した後、切梁15a、15bを設置する。この横桁18a、18b及び切梁15a、15bの設置は、潮流等の条件により内部水を排水するまでに行っても良い。
【0083】
次に、各支柱16間に分割止水プレート19を挿入する。そして、上下段の分割止水プレート19−1、19−2、…を重ねるごとに、上下を締結するための引寄せ用固定金具28−1、28−2としての締結金具30を締めて上下の分割止水プレート19−1、19−2、…を締結する。
【0084】
その後、碇着用固定金具23−1としての締結金具30を締込み、最下段の分割止水プレート19−1は床台リブ21に密着させて固定する。次に、支柱16及び隅支柱17と分割止水プレート19−1の引寄せ固定金具24−1、24−2、24−3としての締結金具30を締め付けて水密性を確保する。又、引寄せ用固定金具28−1、28−2と碇着用固定金具23および引寄せ固定金具24−1、24−2、24−3の前記に示した締結作業順序は、現場条件により適宜変更することや各々を徐々に締付けるなど繰り返し行うことでも良い。
【0085】
次に、分割止水プレート19を水平に微移動させて支柱16に密着させる。各分割止水プレート19間は間隔保持部材27及びシール材26で水密性を確保する。
【0086】
なお、最下段の碇着用固定金具23−1は特別に必要とはしないが、引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3のみで締め込むよりも安全、確実で好適である。
【0087】
次に、締切用止水壁体1の内部の水又は海水を排水する。内部の水を排除すると、外水圧により分割止水プレート19が支柱16に押し付けられ、シール材20−1、20−2により水密性が確保される。
【0088】
最後に、外水圧により分割止水プレート19が支柱16に押し付けられて変形するので、引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…のナットを再度締込む。
【0089】
本発明に係る締切工法によれば、締結金具30のロットボルト31aを倒伏させた状態で分割止水プレート19を建て込むことができるので、水中での分割止水プレート19の設置が容易となる。このように特殊な締結金具(分割止水プレートの固定金具)で締結することにより、ボルト孔合わせ、ボルト挿入、ナット装着、ナット締付け等というボルト、ナットの締結作業を無くし、ロットボルト31aのナット31bを回動させて固定具に締結するという単純作業化できるので、水中における潜水作業時間を短くできる。このように、作業内容が変わり作業が単純化され、作業の安全性の向上や工期短縮も期待できる。
【0090】
また、潜水作業者は、ボルトとナットを携帯することなく、ナット回転治具のみ携帯すれば良く、先願である特許文献3の技術に比べて身軽となり作業性が一段と向上する。これによって、工期短縮に貢献できる。しかも、床台11に止水壁を固定する時にも、この締結金具を使用するので、締結や水平引寄せの調整作業が簡単になる。
【0091】
[実施の形態2]
図14は、本発明の実施の形態2に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図であり、図15は、図14のIII−III線に沿う締切用止水壁体1の他の構成例を示す横断面図である。本実施の形態2が上述した実施の形態1と異なるのは、分割止水プレート19を支柱(H形鋼等)16の外水側に外装して設置する点である。図14及び図15において、図2及び図3と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0092】
すなわち、図14及び図15に示すように、締切用壁体12とピア部分5との間にそれぞれ、水圧を支えるための切梁15a、15bが横桁18a、18bを介在して設置されている。また、必要に応じて床台11とピア部分5との間にも切梁15a、15bを設置しても良い。上記床台11は止水構造であり、実施の形態1と同様に桁構造や箱構造等、用途や水深、場所により適宜設計変更できる。
【0093】
締切用壁体12の内側の上記支柱(H形鋼等)16の外水側のフランジ外面には、止水用のシール材20−1が装着されており、分割止水プレート19と支柱16のフランジ外面との間に介在されている。また、上記床台11の上面11aにおける上記支柱16のフランジ外面に対応する位置には、床台リブ(床台ガイド板)が上記支柱16のフランジ外面と面一に設けられており、この床台リブの内面にも止水用のシール材が装着されている。これらの分割止水プレート19で形成される止水壁は、支柱16を支点とする連続梁構造にすることにより断面力とたわみを低減して材料を節約することができる。しかし、水深が浅い場合や、ピア部分5の面積が小さい場合等、条件によっては2つの支柱16に支持された単純梁構造としても良い。
【0094】
そして、上記分割止水プレート19を、上記シール材20−1を介して上述した締結金具30で床台11と支柱16に緊張締結し、水圧で圧縮することで床台11又は支柱16と分割止水プレート19間の止水を行う。
【0095】
すなわち、分割止水プレート19を各支柱16間における外水側に配置し、分割止水プレート19を締結金具で床台11と支柱16に緊張締結して外装した後、締切用壁体12の内側の水又は海水を排水することで、締切用壁体12の外側から水圧がかかり、支柱16と床台リブに分割止水プレート19が圧着される。
【0096】
このようにして、各支柱16間に複数の分割止水プレート19を水平方向に配列し、これらを水密的に連結することができる。この水平方向の配列を一つのユニットとし、このユニットを水深に応じて床台11の上に1段〜数段、水密的に積み重ね、最上部の分割止水プレート19の少なくとも上部が水面上に突出するように高さを設定する。
【0097】
図16は、分割止水プレート19を支柱16に設置する部分の水平方向に切断した拡大断面図である。H形鋼等からなる支柱16の外水側のフランジ外面に、縦ガイド板45を介在して水平方向に隣接する2つの分割止水プレート19が設置され、締結金具30によって支柱16に緊張締結して外装される。上記分割止水プレート19と支柱16との間にはシール材20−1、20−1が介在されている。上記締結金具30には、図7に示したロットボルトを用い、支柱16のフランジ外面に溶接等で設置した固定フランジ46に締結固定する。この固定フランジ46には、半長円形の溝が設けられており、ロットボルトの他端側が挿脱自在に収容されるようになっている。ここで、ロットボルトを固定フランジ46を設けずに支柱16のフランジに直接固定しても良い。
【0098】
図17は、分割止水プレート19を隅支柱17に設置する部分の拡大断面図である。隅支柱17は、本例では中空で角柱状の鋼材によって形成されており、分割止水プレート19の接合部にはガイド板(隅ガイド)40が設けられ、固定フランジ42−1、42−2は隅支柱17の角部近傍に設けられている。上記分割止水プレート19と隅支柱17との間にはシール材20−1、20−1が介在されている。
【0099】
そして、ロットボルト31a−1、31a−2が分割止水プレート19側に倒伏した状態から回動させて起立させ、固定フランジ42−1、42−2の溝43−1、43−2に嵌め込み、予め装着しておいたナット31b−1、31b−2を座金31c−1、31c−2を介して締め付ける方向にねじ込むことで緊張締結する。
【0100】
分割止水プレート19を隅支柱17に固定する固定金具であるロットボルト31a−1の先端やナット31b−1と、ロットボルト31a−2の先端やナット31b−2が干渉するような場合には、鉛直軸に対して同一平面には設置しないようにする必要がある。しかし、干渉しない場合には同一平面にあっても構わない。
【0101】
また、平面形状が略矩形を示す分割止水プレート19に対し、図18(a)に示すように隅部の分割止水プレート19aや図18(b)に示すように円弧を含むなど特殊形状の分割止水プレート19bの使用により、隅支柱17を用いる事無く支柱はすべて支柱16を用いて組み立てるのも好適であり、実施の形態1や実施の形態3にも適用できる。
【0102】
止水壁は複数の支柱16間に掛け渡すことで、連続梁として応力計算が可能となり、部材を節約できるので資源の有効活用となる。もちろん、支柱16間の梁構造も可能である。加えて、水面から橋脚の張出梁までの空頭が小さい場合でも、分割止水プレート19は略水平方向から設置することができるので、作業が可能になる。
【0103】
締切用止水壁体1を構成する分割止水プレート19を小型に形成できるため、この部材の陸上又は水上における運搬が容易になると同時に、橋脚等の空頭が少ない場合や、水深が浅い場合でも、沈設位置まで容易に運搬することができ、これにより、簡易な工程と、簡易なクレーンその他の荷役機械で締切用止水壁体1を構築することができ、その工期も著しく短縮することができる。
【0104】
[実施の形態3]
図19は、本発明の実施の形態3に係る締切用止水壁体1の一部の断面図である。本実施の形態3では、分割止水プレート19を、上記実施の形態1と同様にH形鋼等から成る支柱16の上下フランジ間に設置し、このH形鋼のフランジに設けた雌ネジのネジ切り孔、又はフランジに設けた孔にナットを締結したボルト孔を取付具として利用して締結する。他の基本的な構成並びに工法は実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0105】
すなわち、支柱16の一方のフランジの内面に、シール材20−1を介して分割止水プレート19の端部が挿入されており、この分割止水プレート19のシール材20−1に対向する面を締結ボルト54で締付ける。締結ボルト54をネジ切り孔又はナットを締結したボルト孔にねじ込むことで分割止水プレート19をシール材20−1を圧縮する方向に押し付けて固定する。なお、47は分割止水プレート19の補強リブである。
【0106】
このような構成であっても、実施の形態1と同様な作用効果が得られる。また、H形鋼のフランジに設けた雌ネジのネジ切り孔又はナットを締結したボルト孔に、予め締結ボルト54をねじ込んで装着しておくことで、潜水作業者は締結ボルトとナットを携帯する必要がなく、締結作業だけで済む。
【0107】
上記実施の形態1〜3では、締結金具にロットボルトやボルトを用いる場合を例に取って説明したが、締結を目的とする部材であればロットボルトやボルトに限られるものではない。図20(a)、(b)は、締結金具の他の構成例を示す断面図及び平面図である。この締結金具30は、締結具48、固定具49及び取付具50で構成される。締結具48は一端側が取付具50に回動自在に軸支された一対の脚部51と、これらの脚部51を連結する連結部材52と、この連結部材52にねじ込まれ、固定具49を取付具50に向かって押圧する締付ボルト53とで構成される。
【0108】
上記のような構成において、締付ボルト53を固定具49に向かって締め込むと、連結部材52を介して脚部51、及び取付具50が引き寄せられる。これによって、ロットボルトと同様な締結ができる。また他の締結手段として、旅行鞄に用いられる回動自在に軸支された締結具と固定具及び取付具が鞄本体と一体化されているバックルのような金具や、多く考案されている簡易継手を用いることも好適である。
【0109】
なお、締切用止水壁体及びこれを構成する各部分の形状は、上記実施の形態1〜3に記載されたものに限らず、異なる形状にしても良い。また、本発明に係る締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法は、橋脚のピア部分に限らず、水中或いは地下に建造された他の構造物に適用しても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0110】
1 締切用止水壁体
2 橋脚
3 基礎杭
4 フーチング
4a フーチングの上面
5 ピア部分
6 張出し梁
7 間隔梁部材
8 橋脚上部工
11 床台(又は函体)
11−1、11−2、… 分割止水函体
11a 床台の上面
12 締切用壁体
13 シール材
14 支承
15a、15b 切梁
16 支柱(H形鋼等)
17 隅支柱
18a、18b 横桁
19、19−1、19−2、… 分割止水プレート
19a 隅部の分割止水プレート
19b 円弧を含むなど特殊形状の分割止水プレート
20−1、20−2 シール材
21 床台リブ(床台ガイド板)
22 接続架台
23−1、23−2 碇着用固定金具(締結手段)
24−1、24−2、24−3、24−4、… 引寄せ用固定金具(締結手段)
26 シール材
27 間隔保持部材
28−1、28−2 引寄せ用固定金具(締結手段)
30、30−1、30−2 締結金具(締結手段)
31 締結具
31a、31a−1、31a−2 ロットボルト
31b、31b−1、31b−2、31b−3、31b−4 ナット
31c、31c−1、31c−2、31c−3、31c−4 座金(ワッシャー)
32 取付具
33a 取付プレート
33b 軸受け
33c 回転輪(中空円筒形の金物)
33d 支持軸
34a ボルト
34b ナット
35 固定具
35a 固定プレート
35b 補強プレート
35c 固定フランジ
36 溝
37−1、37−2 固定フランジ
38−1、38−2 半長円形の溝
39 固定具
40 ガイド板(隅ガイド)
41−1、41−2 固定具
42−1、42−2 固定フランジ
43−1、43−2 溝
44−1、44−2 取付具
45 縦ガイド板
46 固定フランジ
47 補強リブ
48 締結具
49 固定具
50 取付具
51 脚部
52 連結部材
53 締付ボルト
54 締結ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や河口の水中、海中の構造物、例えば橋梁の橋脚等の耐震補強等を行う際、水中にある橋脚の周囲を締切り、その内部の水を排除して補強及び/又は補修作業を大気中で行うための締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震国である我が国では、大地震時の安全確保の観点から、既存の大型構造物の耐震補強が急務とされている。例えば鉄筋コンクリート製の橋脚の耐震補強方法としては、橋脚の周囲に鉄筋コンクリート又は鋼板等を外装して合成構造とする補強及び/又は補修方法が提案されている。
【0003】
この種の補強及び/又は補修作業を行う現場が水上である場合、すなわち、河川や海、湖等の水面下にある台座(基礎、フーチング)に橋脚等の被作業構造物が立設されて水面上に突出している場合には、この被作業構造物の周囲に締切用止水壁体を囲壁状に形成し、この締切用止水壁体の内周側の水を排水(ドライアップ)して、被作業構造物の周囲に乾燥した作業場を形成し、補強及び/又は補修作業を行う。
【0004】
締切用止水壁体の形成例としては、被作業構造物の周囲に多数のシートパイルを打ち込んで取り囲むものが考えられる。しかし、シートパイル間やシートパイル継施工部、シートパイルと台座間の止水性に難がある上に、水圧や波浪等による変形の問題があり、採用が困難である。しかも、橋脚のように、シートパイルを建て込むための空頭が極端に少ない場合には適用し難い。また、継施工が多い場合にはシートパイルの再使用が困難であり、不経済となる。更に、シートパイルの建て込みにバイブロハンマー等の振動機械を使用する場合には、周辺環境に悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
その上、シートパイルを水底に打ち込む必要があるため、橋脚のように台座(基礎、フーチング)の上面が比較的広い面積を有している場合には、台座全体を取り囲むように広範囲に締切用止水壁体を形成しなければならず、これによりシートパイルを打ち込む本数や打ち込む範囲が増えて工数及び工期、締切のために占有する面積が増大し、上述した漏水や変形、河積を阻害する範囲の増大も顕著になるという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1に開示されているように、複数に縦割りした浮力調整可能な分割函体の一方側をヒンジで開閉自在に連結したものを開閉操作して橋脚等の被作業構造物に外装して沈降し、この分割函体の下端部を台座上面に弾接させ、この部分に止水グラウトを充填して止水するようにした締切用ケーソンがある。
【0007】
また、特許文献2に開示されているように、被作業構造物の鉛直方向及び周方向に沿って分断され、円弧状に屈曲した同一構成の複数のプレキャストパネルを、被作業構造物に円筒状に外装して沈降させ、このプレキャストパネルの下端と台座上面との間に止水モルタルを充填して止水するようにした仮締切構造体がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1の締切用ケーソン及び特許文献2の仮締切構造体にあっても、複数の分割函体やプレキャストパネルといった分割体の接合部、下端部、ヒンジ部の止水性が確立されていない。更に、被作業構造物の、例えば橋脚の桁下の空頭や周囲の水深が充分に確保されていない場合には、水上における運搬、設置、撤去も困難で採用が難しい。
【0009】
また、特許文献1の締切用ケーソンは、沈設時の注排水によるコントロールの方法が確立されていない。更に、締切用ケーソンは重量物となり、製作、運搬、設置、撤去もコスト高で採用が難しい。一方、特許文献2の仮締切構造体は、着座部の設置工程が煩雑な上に、着座部を固定するコンクリートが水中に漏出して水質を汚濁する。更に、特許文献1の場合と同様に、鋼製パネルが重量物となり、製作、運搬、設置、撤去もコスト高で採用が難しい。
【0010】
そこで本出願人は、特許文献3において、水中に建造された被作業構造物の周囲を、空頭や水深に影響されることなく、簡易な工程で、しかも高い止水性を確保して締め切ることができる締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法を提案した。
【0011】
この特許文献3に開示されている技術によれば、締切用止水壁体を構成する分割体を小型に形成できるため、締切用止水壁体の製作や陸上及び水上における運搬が容易になると同時に、空頭や水深に影響されることなく、簡易な工程と簡易なクレーンその他の荷役機械で締切用止水壁体を構築することができる。また、簡素な構造により、高い止水性を確保しながら、分割止水函体を水中に沈降及び浮上可能にして、水上における分割止水函体の運搬及び設置、解体、撤去を容易に行うことができる。更に、水中での設置時には締切用函体ユニットの姿勢を略水平に保ち、設置後には締切用函体ユニットの上面を水平面にして、その上に設置される締切用止水壁体の構築を容易にすることができる。
【0012】
しかも、横方向に並ぶ複数の縦貯水系統に貯水する水の量を適宜調整することにより、水中における締切用函体ユニットの姿勢を水平に保つことができ、これにより、水中に建造された被作業構造物の周囲を、空頭や水深に影響されることなく、簡易な工程で、しかも高い止水性を確保して締切ることができる。加えて、水上における分割壁体の運搬、設置、解体、撤去を容易に行うことができる。
【0013】
更に、複数の分割止水函体を互いに連結して被作業構造物の周囲に締切用函体ユニットを環状に構築してから、この締切用函体ユニットを水中に沈降させて台座上面に着座、設置するため、被作業構造物の周囲の空頭や水深等に影響されることなく、簡易な工程で締切用止水壁体を構築することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第2829362号公報
【特許文献2】特開平11−117315号公報
【特許文献3】特開2011−26802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献3の締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法は、上述したような種々の利点を有しているものの、下記(1)〜(11)のような点においてまだ改良の余地がある。
【0016】
(1)特許文献3の段落[0045]及び図2〜図4に示されているように、締切用壁体ユニット12を構成するには、複数の分割止水プレート43、44を水平に配置し、これらを水密的に連結し、水深に応じて1段から数段水密的に積み重ねるため、潜水作業が多くなり、作業者の潜水時間も長く必要になる。
【0017】
(2)段落[0046]に記載されているように、上部接合板46と下部接合板47がそれぞれ板状であるため、接合面の止水性を確保するためには、接合面に止水パッキングを挿入し、ボルトにより締結して圧縮させる必要があり、水中でのボルト締結作業が多い。
【0018】
(3)段落[0047]及び図2に示されているように、それぞれの分割止水プレート43、44の、互いに対面する妻板48同士の間がシール連結構造53を介して水平方向に連結されるため、連結面が多く、止水パッキングの取り付けが不十分であると漏水が発生し易くなる。しかも、水中でのボルト締結作業も多い。
【0019】
(4)段落[0048]に記載されているように、分割止水プレート43、44の下部接合板47が、最上段の締切用函体ユニット11を構成する分割止水函体13、14の天板16上の最外側部に固着された鉄骨状、且つ略Γ字形の断面形状を持つ接続部材51の上面に、同じくシール連結構造53を介して着脱可能に固定されるため、作業スペースが狭隘で、ボルト固定作業が煩雑となる。
【0020】
(5)段落[0049]に記載されているように、下の段の分割止水プレート43、44の上部接合板46の上に、上の段の分割止水プレート43、44の下部接合板47が重ねられ、これら上下の接合板46、47の間が同じくシール連結構造53を介して連結されるため、分割止水プレートを固定するための支持材がないため、ボルト固定作業が煩雑となる。
【0021】
(6)段落[0050]及び図7(A)、(B)に示されているように、水平方向に隣接する分割止水プレート43(44)の妻板48同士の間のシール連結構造、及び最上段の締切用函体ユニット11(接続部材51)と1段目の締切用函体ユニット12(分割止水プレート43、44の下部接合板47)との間のシール連結構造についても同様な構造であるため、分割止水プレートを固定するための支持材がないため、ボルト固定作業が煩雑となる。
【0022】
(7)段落[0051]に記載されているように、接合板46、47、48、51を互いに対面させてボルト孔54にボルト55を挿通し、ナット56で締結することにより、各分割止水プレート43、44間及び、これらと接続部材51間が連結される。このため、連結するためのボルト数が多すぎて作業が手間取る。
【0023】
(8)段落[0052]及び図7(A)に示されているように、互いに対面して止水を要する二面S4、S5間には、シール連結構造30と同様に、これら二面S4、S5間の間隔を所定間隔に保つ非弾性の間隔保持部材58と、この間隔保時部材よりも厚くて弾性があるシール材59とが併設され、縦横方向に厚くて弾性があるシール材が並設されているため、分割止水プレートのボルト連結が手間取る。
【0024】
(9)段落[0053]に記載されているように、間隔保持部材58の厚みt5は例えば10mmであり、シール材59の厚みt2は例えば20mmでt5<t2である。この場合、シール材59をt2−t5以上圧縮しないと漏水する可能性がある。また、締切壁体ユニット1の寸法に誤差が生ずる。
【0025】
(10)段落[0054]及び図7(B)に示されているように、各接合板46、47(48、51)の間をボルト55とナット56で締結するため、締結作業が煩雑で手間取る。
【0026】
(11)段落[0088]及び図7に示されているように、連結構造53は、ボルト55、ナット56により固定、止水されるため、水中でのボルト締結作業が増える。
【0027】
上述した(1)〜(11)に加えて、下記(12)〜(14)のような点にも考慮の余地がある。
【0028】
(12)十分な空頭が確保できクレーン等の荷役機械が使用できる場合は、浮体構造にする必要がないため、函体ユニットは必要性がない。
【0029】
(13)潜水作業者は、締結ボルトとナットを別々の入れ物に入れて、身体に携帯して潜水し、所定の個所で締結作業することになる。この際、先ず締結する二つのフランジ(つまりパネルを微調整して)の孔を合わせ、ボルトをボルト袋から取り出して、孔にボルトを挿入し、ナット袋からナットを取り出してボルトに嵌め、ナットを回転して締結する、という一連の作業を締結箇所毎に繰り返す必要があり、潜水作業が煩雑で潜水時間も長くなる。
【0030】
(14)潜水作業者の身体には、水中作業のためのウエイトの他にボルトとナットの重量が加算されるので水中での動作が緩慢になる。しかも、この種の工事は河川の下流や河口付近で行われるので、水中が濁っている事が多く、視界不良が起きやすくボルト孔の合わせ等の細かい作業は難渋する。
【0031】
このように、本出願人の先願である特許文献3の締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法は、潜水作業に着目すると作業が煩雑で潜水時間も長く必要であり、工期の長期化を招く一つの要因となるため、その対策が望まれている。
【0032】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、締切用止水壁体を簡単且つ容易に水中又は海中で組み立て、補強及び/又は補修作業の終了後に簡単に解体でき、潜水作業の容易化、単純化及び短縮化が図れ、工期を短縮することができる締切用止水壁体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するために、請求項1に係る本発明の締切用止水壁体は、水中又は海中にある構造物の周囲を締切り、その内部の水又は海水を排除して、前記構造物の補強及び/又は補修作業を大気中で行う締切用止水壁体において、前記構造物の水面下にある台座上に囲壁状に設置された止水構造の床台11と、この床台11上に所定の間隔で立設された支柱16を有する内部フレームと、これらの支柱16間にそれぞれ挿入又は外装される複数の分割止水プレート19で構成される止水壁と、前記床台11と前記分割止水プレート19間、及び前記支柱16と前記分割止水プレート19間の少なくとも一方を締結する締結手段30と、前記床台11と前記分割止水プレート19間、及び前記支柱16と前記分割止水プレート19間にそれぞれ介在され、水圧による外圧を受けた前記分割止水プレート19により圧縮されることで止水効果を発揮する止水用のシール材20−1、20−2とを具備することを特徴とする。
【0034】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の締切用止水壁体において、前記締結手段30は、ロットボルト31aと、前記床台11、前記分割止水プレート19、及び前記内部フレームのいずれかに装着され、前記ロットボルト31aの一端側の孔を回動自在に軸支する取付具32と、前記ロットボルト31aの他端側が挿脱自在に収納される溝36を有する固定フランジ35cと、前記ロットボルト31aの他端側を前記固定フランジ35cに係止するナット31bとを備えることを特徴とする。
【0035】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の締切用止水壁体において、前記締結手段30は、前記支柱16に装着される締結ボルト54を備え、この締結ボルト54をねじ込むことで前記分割止水プレート19の前記シール材20−1に対向する面を締付けて固定することを特徴とする。
【0036】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の締切用止水壁体において、前記締結手段30は、一端側が前記床台11、前記分割止水プレート19、前記内部フレームのいずれかに装着される取付具50と、この取付具50に回動自在に軸支された一対の脚部51と、これらの脚部51を連結する連結部材52と、前記連結部材52にねじ込まれ、固定具49を前記取付具50に向かって押圧する締付ボルト53とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項1乃至4に係る発明によれば、止水構造の床台と、この床台上に所定の間隔で立設された支柱を有する内部フレームと、各支柱間にそれぞれ挿入又は外装される分割止水プレートとを、締結手段で緊張締結して締切用止水壁体を構成するので、締切用止水壁体を簡単に容易に水中又は海中で組立て、補強及び/又は補修作業が終了すれば簡単に解体できる。また、内部フレームによる梁構造で水圧を支え、分割止水プレートを水圧で支柱に押し付けて固定する。しかも、締結手段は、予め床台、内部フレームあるいは分割止水プレートに装着されており、簡単な作業で緊張締結できるので、潜水作業が容易になり短くてすみ、安全性も高くなるので、本出願人の先願である特許文献3に比較して工期の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体の一部を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う締切用止水壁体の横断面図である。
【図4】図2のIV部を拡大した締切用止水壁体の拡大縦断面図及び支柱周辺の平面図である。
【図5】図4のV矢視による締切用止水壁体の側面図及び平面図である。
【図6】図4のVI矢視による締切用止水壁体の側面図及び平面図である。
【図7】締結金具の一例を示す断面図及び平面図である。
【図8】分割止水プレートを支柱に設置する部分の拡大断面図である。
【図9】上下に隣接する分割止水プレートを緊張締結する部分の拡大断面図及び平面図である。
【図10】上下に隣接する分割止水プレートを緊張締結する部分の他の構成例を示す拡大断面図である。
【図11】上下に隣接する分割止水プレートを緊張締結する部分の更に他の構成例を示す拡大断面図及び平面図である。
【図12】床台と分割止水プレートの接合部の拡大断面図である。
【図13】床台と分割止水プレートの接合部の他の構成例を示す拡大断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図である。
【図15】図14のIII−III線に沿う締切用止水壁体の横断面図である。
【図16】図15における分割止水プレートを支柱に設置する部分の拡大断面図である。
【図17】図15における分割止水プレートを隅支柱に設置する部分の拡大断面図である。
【図18】分割止水プレートの隅部の他の構成例を示す拡大断面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る締切用止水壁体について説明するためのもので、締切用止水壁体の一部の断面図である。
【図20】締結金具の他の例を示す断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体の一部を概略的に示す斜視図である。また、図2は、本発明の実施の形態1に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図であり、図3は、図2のIII−III線に沿う締切用止水壁体の横断面図である。なお、本例では締切用止水壁体の平面形状が矩形を呈す場合について説明する。
【0041】
図2に示すように、締切用止水壁体1を用いて補強及び/又は補修作業がなされる被作業構造物としての橋脚2は、例えば鉄筋コンクリート構造であり、水面下の地盤中に埋設された複数の基礎杭3と、これらの基礎杭3の上に形成されて水面下に位置する台座としてのフーチング4と、フーチング4の上面4aに立設されて水面上に突出する円柱、楕円柱、あるいは角柱状等のピア部分5と、このピア部分5の上端に形成された張出し梁6とを備え、張出し梁6の上面には間隔梁部材7を介して道路や鉄道等の床部分となる橋脚上部工8が載置された一般的な構造のものである。
【0042】
締切用止水壁体1は、フーチング4の上面4aに、ピア部分5の周囲に所定の間隔を持って矩形の囲壁状に設置され、その内側の水を排水して乾燥した作業場を形成することにより、ピア部分5の耐震補強作業や塗装作業といった各種作業を容易に実施可能にするものである。
【0043】
上記締切用止水壁体1は、床台(又は函体)11と、この床台11上に設置された締切用壁体12とで構成される。床台11は、構造物の周囲の水中又は海中にあるピア部分5の周囲を囲むように、フーチング4の上面4aに略水平に沈設される。この床台11の下面には、フーチング4と床台11との間の水密性を確保する封、いわゆる止水パッキングやシール材(以下、これらをシール材と総称する)13、及び締切用止水壁体1を支持する支承14が配置されている。
【0044】
また、図2及び図3に示すように、上記締切用壁体12とピア部分5との間(必要があれば上記床台11とピア部分5との間も同様)にはそれぞれ、水圧を支えるための切梁15a、15bが設置されている。これらの切梁15a、15bと締切用壁体12との間には、横桁18a、18bが介在されている。また、必要に応じて切梁15a、15bと床台11との間にも横桁18a、18bを介在させても良い。さらにフーチング4の平面形状や現場施工条件により、切梁を省ける場合がある。
【0045】
上記床台11は、締切用止水壁体1の水平性や変形量を許容値内に収め、締切用止水壁体1全体の構造的な強度と水密性を確保するため、現場条件に応じた必要な剛性を有する構造と共に、床台11自身が止水構造であり、桁構造や箱構造等、用途や水深、場所により適宜、その高さや幅及び板厚等を設計する。必要に応じて上記特許文献3と同様な浮体構造にしても良いのはもちろんであり、図3では複数の分割止水函体11−1、11−2、…を水平方向に配列し、これらを水密的に連結して床台11を構成した例を示している。
【0046】
一方、締切用壁体12は、上記床台11上に設置され、H形鋼等から成る支柱16、隅支柱17、及び上記横桁18a、18b等の部材から構成される内部フレームと、この内部フレームに取り付けられる複数の分割止水プレート19(19−1〜19−5)から成る止水壁とで形成される。すなわち、図1に示すように、床台11の天端に支柱16が鉛直に所定の間隔で立設され、各支柱16間における上フランジと下フランジの間に分割止水プレート19を挿入していくことで平面形状が略円形又は略長方形又は略小判形に組み立て、締切用壁体12を構築する。
【0047】
上記支柱16は、床台11の最上段に溶接等により直接取り付けるか、又は床台11の最上段に接続部材を設けてボルト等により取り付けて固定する。この際、支柱16の継手を少なくするために、空頭を考慮して可能な範囲で1本の支柱16を長くすると良い。
【0048】
図3に示す例では、隅支柱17を一点鎖線で円形に囲んで示すように、2本のH形鋼の一方のフランジを90°の角度で溶接、又はシール材を介して接合して形成した場合を示しており、横桁18bの端部がこれらのH形鋼の接合部に溶接等で接続されている。
【0049】
なお、上記支柱16はH形鋼が好適であるが、締切用止水壁体1にかかる水圧等の外力を支持できれば必ずしもH形鋼にこだわる必要はない。また、橋脚2の高さ等の条件により支柱16を複数段にしても良い。
【0050】
図1に示したように、締切用壁体12の内側の上記支柱(H形鋼等)16のフランジ内面には止水用のシール材20−1が装着されており、このシール材20−1が分割止水プレート19と支柱16のフランジ内面との間に介在される。また、上記床台11の上面11aにおける上記支柱16のフランジに対応する位置には、床台リブ(床台ガイド板)21が上記支柱16のフランジ内面と面一に設けられており、この床台リブ21の内面にも止水用のシール材20−2が装着されている。前記シール材20−1、20−2は、水圧などによる外圧を受けた分割止水プレート19により押し潰されることで、止水効果を発揮する。また、必要に応じて間隔保持部材が設けられる。
【0051】
そして、上記分割止水プレート19を各支柱16間における上フランジと下フランジの間に挿入し、これら分割止水プレート19を上記シール材20−1、20−2を介して締結金具(後述する)で床台11と支柱16にそれぞれ緊張締結する。
【0052】
このようにして、各支柱16間に複数の分割止水プレート19を水平方向に配列し、これらを水密的に連結することができる。この水平方向の配列を1ユニットとし、この1ユニットを水深に応じて床台11の上に1段〜数段、水密的に積み重ね、最上部の分割止水プレート19(図2では19−5)の少なくとも上部が水面上に突出するように高さを設定する。
【0053】
その後、締切用壁体12の内側の水又は海水を排水することで、締切用壁体12の外側から水圧がかかり、分割止水プレート19がシール材20−1、20−2を介して支柱16と床台リブ21に圧着されることで止水される。
【0054】
上記のような構成の締切用壁体12では、上記各分割止水プレート19を各支柱16間における上フランジと下フランジの間に挿入する際、支柱16のH形鋼フランジの間に上から挿入されるので取り付けガイドとなり、分割止水プレート19の取付作業が容易になる。
【0055】
図4(a)は図2のIV部を拡大した締切用止水壁体1の拡大縦断面図、図4(b)は図4(a)の支柱近傍の平面図である。また、図5(a)は図4(a)のV矢視による締切用止水壁体1の側面図、図5(b)はその平面図、図6(a)は同じく図4(a)のVI矢視による締切用止水壁体1の側面図、図6(b)は図6(a)のA−A線矢示断面図、図6(c)は図6(a)のB−B線矢示断面図である。
【0056】
図4に示すように、フーチング4の上面4aに、床台(又は函体)11が支承14とシール材13を介して設置され、この床台11の上に締切用壁体12が設置されている。本例では床台11上に接続部材としての架台(接続架台)22が設けられており、この接続架台22上に、締切用壁体12が碇着用固定金具23で固定されている。また、上下に隣接する分割止水プレート19同士の接合面にシール材26と間隔保持部材27が設置され、このシール材26と間隔保持部材27を介して引寄せ用固定金具28−1、28−2で上下に隣接する分割止水プレート19(19−1〜19−5)同士が固定される。更に、上記各分割止水プレート19(19−1〜19−5)は、引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…で支柱16に引き寄せられて固定されている。
【0057】
図5及び図6に示すように、各分割止水プレート19(19−1、19−2、…)は略長方形を呈し、鋼板や型鋼等で形成される。例えば上下面、側面、内外面の6面を鋼板により構成し、それぞれは溶接等で固着する。又は内外面のどちらか一方がない5面を鋼板により構成し、それぞれは溶接等で固着する。また、上記分割止水プレート19(19−1、19−2、…)の内部は必要によりリブ等を設置して補強を行う。設計条件により内部に浮力構造を形成することもできる。
【0058】
そして、水平方向は引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…で引き寄せて固定し、水圧で圧縮して止水する。一方、鉛直方向は、分割止水プレート19の自重と分割止水プレート19−1、19−2の接合面近くに取り付けた固定具としての鋼材やフランジを引寄せ用固定金具28−1、28−2で引き寄せて締め付けることにより止水を行う。これにより、締結金具の本数を減じることができ、水中における作業時間(潜水時間)を削減できる。また、分割止水プレート19−1、19−2の1段当たりの高さを大きくして水平接合面を減じることで、漏水と水中における作業時間(潜水作業)を短縮できるが、製作、運搬、構築、解体等も考慮して設定すると良い。
【0059】
上記シール材26は、間隔保持部材27の厚みをt5、シール材26の厚みをt2としたとき、水圧等の圧縮力でt2−t5以上の圧縮が期待できる材料を使用し、接合面に間隔保持部材27を設置することでシール材26が均一に圧縮されて漏水が減り、締切用壁体12の形状寸法が確保できる。
【0060】
なお、支柱16と分割止水プレート19、各分割止水プレート19間の接合面においては、間隔保持部材27がなくても止水できる場合は取り外しても良い。また、空頭に制限がない場合は、着座部と間隔保持部材27を有する接続架台22上に、クレーン等の荷役機械を使用して分割止水プレート19を支柱16間に順次挿入して設置することで作業性を向上できる。
【0061】
図7(a)、(b)はそれぞれ、上記図4乃至図6に示した床台11と分割止水プレート19間を緊張締結する碇着用固定金具23、支柱16と分割止水プレート19間を緊張締結する引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…、及び隣接する分割止水プレート19間をそれぞれ緊張締結する引寄せ用固定金具28−1、28−2の構成例を示す断面図及び平面図である。
【0062】
本例では、これらの締結用の固定金具(以下、締結金具と称する)30を、締結具31、取付具32及び固定具35で形成している。上記締結具31には、例えばロットボルト31a、ナット31b及び座金(ワッシャー)31cを用いる。ロットボルト31aとは、ボルトの先端に円形有孔のリング材が一体で形成されたボルトである。このロットボルト31aは、鋼材、ステンレス、鋳鋼、ガラス繊維補強プラスチック、炭素繊維とプラスチックの組み合わせ等、種々の材質ものが適用できる。また、リング材の形状としては、ドーナッツ状、矩形状、馬蹄形等を問わない。
【0063】
取付具32は、このロットボルト31aを分割止水プレート19や床台11及び支柱16に取り付けるものである。この取付具32は、取付プレート33aと、この取付プレート33aから突設された軸受け33bと、この軸受け33bに設けられた回転輪(中空円筒形の金物)33cに挿入された支持軸(例えばボルト34aとナット34b)33dとで構成されている。上記取付プレート33aと軸受け33bの厚みは、ロットボルト31aとナット31bの締付け力により決定され、必要に応じて補強リブ等を設けることがある。
【0064】
上記ロットボルト31aは、一端側の孔が支持軸33dで回動自在に軸支される。このロットボルト31aの他端側には、座金31cを介してナット31bが予めねじ込まれている。そして、ロットボルト31aを取付プレート33a側に倒伏させておき、締結時に起立させて上記床台11、上記分割止水プレート19、あるいは内部フレームの対応する位置に設けられた固定具(図示せず)に係止し、ナット31bを座金31cを介して締め付け方向にねじ込むことで緊張締結するようになっている。
【0065】
図8は、分割止水プレート19を支柱16に設置する部分(引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…の周辺に対応する)の拡大断面図であり、図7に示した締結金具30を用いて分割止水プレート19を支柱16に設置した状態を示している。本例では、固定具35を支柱16の一方のフランジに設置した固定プレート35aと、この固定プレート35aを補強する補強プレート35bと、ロットボルト31aを起立状態で固定する固定フランジ35cとで構成している。この固定フランジ35cには、ロットボルト31aの他端側が挿脱自在に収納される例えば半長円形の溝36が形成されている。そして、ロットボルト31aを倒伏した状態から回動させて起立させ、固定フランジ35cの溝36に嵌め込み、ナット31bを座金31cを介して締め付けようにねじ込むことで緊張締結する。したがって、従来のものに比べ作業性が格段に良く、特に水中での作業に好適である。
【0066】
図9(a)、(b)はそれぞれ、上下に隣接する分割止水プレート19−1、19−2を緊張締結する部分(引寄せ用固定金具28−1、28−2の周辺に対応する)の拡大断面図及び平面図である。本例では、分割止水プレート19−1、19−2の両側面であって、下部の分割止水プレート19−1の上端付近に締結金具30−1、30−2を取り付けている。そして、下部の分割止水プレート19−1の上端と上部の分割止水プレート19−2の下端に、上記締結金具30−1、30−2のロットボルト31a−1、30a−2を受入れて固定する固定具として固定フランジ37−1、37−2を取り付ける。
【0067】
すなわち、下部の分割止水プレート19−1にロットボルト31a−1、31a−2の一端が軸支されて装着されており、上部の分割止水プレート19−2と下部の分割止水プレート19−1との接合部に固定フランジ37−1、37−2が設けられている。この固定フランジ37−1、37−2には、図9(b)に示すようにロットボルト31a−1、31a−2を受入れる半長円形の溝38−1、38−2が設けられており、ロットボルト31a−1、31a−2の他端側が挿脱自在に収容される。
【0068】
そして、上部及び下部の分割止水プレート19−1、19−2が適位置に設置されたら、下方向に倒伏状態にあるロットボルト31a−1、31a−2を回動させて上方向に倒伏させ、上部の分割止水プレート19−2の固定フランジの半長円形の溝38−1、38−2に嵌め、予めねじ込んでおいたナット31b−1、31b−2で座金31c−1、31c−2を介して締め付ける。この際、上部及び下部の分割止水プレート19−1、19−2の位置出しを、固定フランジ37−1、37−2で行うことができる。
【0069】
図10は、上下に隣接する分割止水プレート19−1、19−2を緊張締結する部分の他の構成例を示す拡大断面図である。本例は、分割止水プレート19−1、19−2の接合面が互いに嵌合するように、いわゆる相欠矧ぎにし、接合面にシール材26と間隔保持部材27を介在させたものである。締結金具30−1、30−2の構成は、図9と同様であるので同一部分に同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0070】
このような構成によれば、図9に示した構造に比べて水圧等の外圧を利用して止水性を高めることができる。すなわち、水圧等の外圧が分割止水プレート19−2にかかるとシール材26が押し潰されることで止水性が発揮されるので好適である。相欠矧ぎに限らず他の嵌合構造等であっても良いのはもちろんである。
【0071】
図11(a)、(b)はそれぞれ、上下に隣接する分割止水プレート19−1、19−2を緊張締結する部分の更に他の構成例を示す拡大断面図及び平面図である。上記図9に示した例ではロットボルト31a−1、31a−2が起立、倒伏状態に回動したのに対し、分割止水プレート19−1、19−2の表面に沿って回動するようになっている。換言すれば、図9に示した例ではロットボルト31a−1、31a−2の回転軸が分割止水プレート19−1、19−2の表面と平行な方向であるのに対し、分割止水プレート19−1、19−2の表面に垂直な方向になっている。このような構成であっても、回動方向が異なるのみであり、図9に示した例と実質的に同様な作用効果が得られる。
【0072】
なお、潜水作業でのナット31b−1、31b−2の締め付けを考えると、図9乃至図11に示したように、ロットボルト31a−1、31a−2の回動方向は上向き又は水平方向が好適であるが、下向きに回動させて締結することもできる。
【0073】
図12は、床台11と分割止水プレート19−1の接合部(碇着用固定金具23−1、23−2の周辺に対応する)の拡大断面図である。本例では、接続架台22を使用せずに床台11の上面11aに直接分割止水プレート19−1を設置する場合を示しているが、接続架台22上に分割止水プレート19−1を設置する場合も同様である。すなわち、水平碇着用固定金具として働く締結金具30を最下部の分割止水プレート19−1の下端付近に倒伏自在に軸支して取り付ける。
【0074】
一方、床台11の上面11aには、例えば半長円形の溝36が形成された固定具39を溶接やボルト等で固定する。そして、上記固定具39に締結金具30としてのロットボルト31a−1を溝36内に挿入して係止し、予め装着しておいたナット31b−1を座金31c−1を介してねじ込むことで分割止水プレート19−1を床台ガイド板21に引き寄せて固定する。
【0075】
また、分割止水プレート19−1を碇着する取付具32を、床台11の上面11aにおける外水側に溶接等で固定し、対応する最下部の分割止水プレート19−1に固定具35を取り付ける。この固定具35としては、取付具32に軸支されたロットボルト31a−2を受入れる固定フランジを用いている。そして、上記固定具35に締結金具30としてのロットボルト31a−2を溝内に挿入して係止し、予め装着しておいたナット31b−2を座金31c−2を介してねじ込むことで分割止水プレート19−1を床台11に引き寄せて固定する。
【0076】
図13は、床台11と分割止水プレート19−1の接合部の他の構成例を示す拡大断面図である。本例では、最下部の分割止水プレート19−1を碇着用固定金具23−1、23−2として働く締結金具30を使って床台11上に固定するもので、床台11に設置された分割止水プレート19−1の両側に締結金具30を取り付けている。
【0077】
分割止水プレート19−1を碇着する取付具32は床台11に溶接等で固定し、対応する最下部の分割止水プレート19−1に固定具35を取り付けている。この固定具35としては、取付具32に軸支されたロットボルト31aを受入れる固定フランジを用いている。他の構成は図12と同様である。
【0078】
上記のような構成の締切用止水壁体では、止水構造の床台11と、この床台11上に所定の間隔で立設された支柱16を有する内部フレームと、各支柱16間にそれぞれ挿入される分割止水プレート19−1とを、締結金具30で緊張締結して締切用止水壁体1を構成するので、締切用止水壁体1を簡単に容易に水中又は海中で組立て、補強及び/又は補修作業が終了すれば簡単に解体できる。また、内部フレームによる梁構造で水圧を支え、分割止水プレート19−1を水圧で支柱に押し付けて固定する。しかも、締結金具30は取付具32、締結具31及び固定具35で構成され、予め床台11、内部フレームあるいは分割止水プレート19−1に装着されており、簡単な作業で緊張締結できるので、潜水作業が容易になり短くてすみ、安全性も高くなるので、本出願人の先願である特許文献3に比較して工期の短縮を図ることができる。
【0079】
次に、上記締切用止水壁体1を用いた締切工法の作業手順の一例を概略的に説明する。床台(又は函体)11、内部フレーム及び分割止水プレート19は、工場(被作業構造物である橋脚2の近傍の陸地等でも良い)において予め製造する。
【0080】
そして、橋脚2のフーチング4が水底で地盤中に埋没している場合には、少なくともフーチング4の上面4aが水中に露呈するまで地盤を掘削する。
【0081】
次に、床台11を組立て枠型に形成する。そして、フーチング4の上面4aに床台11を水平に沈設する。ここまでの工程は、本出願人の先願である特許文献3と同様にすることもできる。
【0082】
その後、沈設した床台11の上面11a、あるいはこの床台11上に設置した接続架台22上に溶接やボルト締結等の方法で支柱16を立設する。この際、支柱16は橋脚2の高さ等の条件により複数段にしても良い。引き続き、横桁18a、18bを設置した後、切梁15a、15bを設置する。この横桁18a、18b及び切梁15a、15bの設置は、潮流等の条件により内部水を排水するまでに行っても良い。
【0083】
次に、各支柱16間に分割止水プレート19を挿入する。そして、上下段の分割止水プレート19−1、19−2、…を重ねるごとに、上下を締結するための引寄せ用固定金具28−1、28−2としての締結金具30を締めて上下の分割止水プレート19−1、19−2、…を締結する。
【0084】
その後、碇着用固定金具23−1としての締結金具30を締込み、最下段の分割止水プレート19−1は床台リブ21に密着させて固定する。次に、支柱16及び隅支柱17と分割止水プレート19−1の引寄せ固定金具24−1、24−2、24−3としての締結金具30を締め付けて水密性を確保する。又、引寄せ用固定金具28−1、28−2と碇着用固定金具23および引寄せ固定金具24−1、24−2、24−3の前記に示した締結作業順序は、現場条件により適宜変更することや各々を徐々に締付けるなど繰り返し行うことでも良い。
【0085】
次に、分割止水プレート19を水平に微移動させて支柱16に密着させる。各分割止水プレート19間は間隔保持部材27及びシール材26で水密性を確保する。
【0086】
なお、最下段の碇着用固定金具23−1は特別に必要とはしないが、引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3のみで締め込むよりも安全、確実で好適である。
【0087】
次に、締切用止水壁体1の内部の水又は海水を排水する。内部の水を排除すると、外水圧により分割止水プレート19が支柱16に押し付けられ、シール材20−1、20−2により水密性が確保される。
【0088】
最後に、外水圧により分割止水プレート19が支柱16に押し付けられて変形するので、引寄せ用固定金具24−1、24−2、24−3、24−4、…のナットを再度締込む。
【0089】
本発明に係る締切工法によれば、締結金具30のロットボルト31aを倒伏させた状態で分割止水プレート19を建て込むことができるので、水中での分割止水プレート19の設置が容易となる。このように特殊な締結金具(分割止水プレートの固定金具)で締結することにより、ボルト孔合わせ、ボルト挿入、ナット装着、ナット締付け等というボルト、ナットの締結作業を無くし、ロットボルト31aのナット31bを回動させて固定具に締結するという単純作業化できるので、水中における潜水作業時間を短くできる。このように、作業内容が変わり作業が単純化され、作業の安全性の向上や工期短縮も期待できる。
【0090】
また、潜水作業者は、ボルトとナットを携帯することなく、ナット回転治具のみ携帯すれば良く、先願である特許文献3の技術に比べて身軽となり作業性が一段と向上する。これによって、工期短縮に貢献できる。しかも、床台11に止水壁を固定する時にも、この締結金具を使用するので、締結や水平引寄せの調整作業が簡単になる。
【0091】
[実施の形態2]
図14は、本発明の実施の形態2に係る締切用止水壁体を橋梁の橋脚に設置した場合の縦断面図であり、図15は、図14のIII−III線に沿う締切用止水壁体1の他の構成例を示す横断面図である。本実施の形態2が上述した実施の形態1と異なるのは、分割止水プレート19を支柱(H形鋼等)16の外水側に外装して設置する点である。図14及び図15において、図2及び図3と同一構成部には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0092】
すなわち、図14及び図15に示すように、締切用壁体12とピア部分5との間にそれぞれ、水圧を支えるための切梁15a、15bが横桁18a、18bを介在して設置されている。また、必要に応じて床台11とピア部分5との間にも切梁15a、15bを設置しても良い。上記床台11は止水構造であり、実施の形態1と同様に桁構造や箱構造等、用途や水深、場所により適宜設計変更できる。
【0093】
締切用壁体12の内側の上記支柱(H形鋼等)16の外水側のフランジ外面には、止水用のシール材20−1が装着されており、分割止水プレート19と支柱16のフランジ外面との間に介在されている。また、上記床台11の上面11aにおける上記支柱16のフランジ外面に対応する位置には、床台リブ(床台ガイド板)が上記支柱16のフランジ外面と面一に設けられており、この床台リブの内面にも止水用のシール材が装着されている。これらの分割止水プレート19で形成される止水壁は、支柱16を支点とする連続梁構造にすることにより断面力とたわみを低減して材料を節約することができる。しかし、水深が浅い場合や、ピア部分5の面積が小さい場合等、条件によっては2つの支柱16に支持された単純梁構造としても良い。
【0094】
そして、上記分割止水プレート19を、上記シール材20−1を介して上述した締結金具30で床台11と支柱16に緊張締結し、水圧で圧縮することで床台11又は支柱16と分割止水プレート19間の止水を行う。
【0095】
すなわち、分割止水プレート19を各支柱16間における外水側に配置し、分割止水プレート19を締結金具で床台11と支柱16に緊張締結して外装した後、締切用壁体12の内側の水又は海水を排水することで、締切用壁体12の外側から水圧がかかり、支柱16と床台リブに分割止水プレート19が圧着される。
【0096】
このようにして、各支柱16間に複数の分割止水プレート19を水平方向に配列し、これらを水密的に連結することができる。この水平方向の配列を一つのユニットとし、このユニットを水深に応じて床台11の上に1段〜数段、水密的に積み重ね、最上部の分割止水プレート19の少なくとも上部が水面上に突出するように高さを設定する。
【0097】
図16は、分割止水プレート19を支柱16に設置する部分の水平方向に切断した拡大断面図である。H形鋼等からなる支柱16の外水側のフランジ外面に、縦ガイド板45を介在して水平方向に隣接する2つの分割止水プレート19が設置され、締結金具30によって支柱16に緊張締結して外装される。上記分割止水プレート19と支柱16との間にはシール材20−1、20−1が介在されている。上記締結金具30には、図7に示したロットボルトを用い、支柱16のフランジ外面に溶接等で設置した固定フランジ46に締結固定する。この固定フランジ46には、半長円形の溝が設けられており、ロットボルトの他端側が挿脱自在に収容されるようになっている。ここで、ロットボルトを固定フランジ46を設けずに支柱16のフランジに直接固定しても良い。
【0098】
図17は、分割止水プレート19を隅支柱17に設置する部分の拡大断面図である。隅支柱17は、本例では中空で角柱状の鋼材によって形成されており、分割止水プレート19の接合部にはガイド板(隅ガイド)40が設けられ、固定フランジ42−1、42−2は隅支柱17の角部近傍に設けられている。上記分割止水プレート19と隅支柱17との間にはシール材20−1、20−1が介在されている。
【0099】
そして、ロットボルト31a−1、31a−2が分割止水プレート19側に倒伏した状態から回動させて起立させ、固定フランジ42−1、42−2の溝43−1、43−2に嵌め込み、予め装着しておいたナット31b−1、31b−2を座金31c−1、31c−2を介して締め付ける方向にねじ込むことで緊張締結する。
【0100】
分割止水プレート19を隅支柱17に固定する固定金具であるロットボルト31a−1の先端やナット31b−1と、ロットボルト31a−2の先端やナット31b−2が干渉するような場合には、鉛直軸に対して同一平面には設置しないようにする必要がある。しかし、干渉しない場合には同一平面にあっても構わない。
【0101】
また、平面形状が略矩形を示す分割止水プレート19に対し、図18(a)に示すように隅部の分割止水プレート19aや図18(b)に示すように円弧を含むなど特殊形状の分割止水プレート19bの使用により、隅支柱17を用いる事無く支柱はすべて支柱16を用いて組み立てるのも好適であり、実施の形態1や実施の形態3にも適用できる。
【0102】
止水壁は複数の支柱16間に掛け渡すことで、連続梁として応力計算が可能となり、部材を節約できるので資源の有効活用となる。もちろん、支柱16間の梁構造も可能である。加えて、水面から橋脚の張出梁までの空頭が小さい場合でも、分割止水プレート19は略水平方向から設置することができるので、作業が可能になる。
【0103】
締切用止水壁体1を構成する分割止水プレート19を小型に形成できるため、この部材の陸上又は水上における運搬が容易になると同時に、橋脚等の空頭が少ない場合や、水深が浅い場合でも、沈設位置まで容易に運搬することができ、これにより、簡易な工程と、簡易なクレーンその他の荷役機械で締切用止水壁体1を構築することができ、その工期も著しく短縮することができる。
【0104】
[実施の形態3]
図19は、本発明の実施の形態3に係る締切用止水壁体1の一部の断面図である。本実施の形態3では、分割止水プレート19を、上記実施の形態1と同様にH形鋼等から成る支柱16の上下フランジ間に設置し、このH形鋼のフランジに設けた雌ネジのネジ切り孔、又はフランジに設けた孔にナットを締結したボルト孔を取付具として利用して締結する。他の基本的な構成並びに工法は実施の形態1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0105】
すなわち、支柱16の一方のフランジの内面に、シール材20−1を介して分割止水プレート19の端部が挿入されており、この分割止水プレート19のシール材20−1に対向する面を締結ボルト54で締付ける。締結ボルト54をネジ切り孔又はナットを締結したボルト孔にねじ込むことで分割止水プレート19をシール材20−1を圧縮する方向に押し付けて固定する。なお、47は分割止水プレート19の補強リブである。
【0106】
このような構成であっても、実施の形態1と同様な作用効果が得られる。また、H形鋼のフランジに設けた雌ネジのネジ切り孔又はナットを締結したボルト孔に、予め締結ボルト54をねじ込んで装着しておくことで、潜水作業者は締結ボルトとナットを携帯する必要がなく、締結作業だけで済む。
【0107】
上記実施の形態1〜3では、締結金具にロットボルトやボルトを用いる場合を例に取って説明したが、締結を目的とする部材であればロットボルトやボルトに限られるものではない。図20(a)、(b)は、締結金具の他の構成例を示す断面図及び平面図である。この締結金具30は、締結具48、固定具49及び取付具50で構成される。締結具48は一端側が取付具50に回動自在に軸支された一対の脚部51と、これらの脚部51を連結する連結部材52と、この連結部材52にねじ込まれ、固定具49を取付具50に向かって押圧する締付ボルト53とで構成される。
【0108】
上記のような構成において、締付ボルト53を固定具49に向かって締め込むと、連結部材52を介して脚部51、及び取付具50が引き寄せられる。これによって、ロットボルトと同様な締結ができる。また他の締結手段として、旅行鞄に用いられる回動自在に軸支された締結具と固定具及び取付具が鞄本体と一体化されているバックルのような金具や、多く考案されている簡易継手を用いることも好適である。
【0109】
なお、締切用止水壁体及びこれを構成する各部分の形状は、上記実施の形態1〜3に記載されたものに限らず、異なる形状にしても良い。また、本発明に係る締切用止水壁体及びこれを用いた締切工法は、橋脚のピア部分に限らず、水中或いは地下に建造された他の構造物に適用しても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0110】
1 締切用止水壁体
2 橋脚
3 基礎杭
4 フーチング
4a フーチングの上面
5 ピア部分
6 張出し梁
7 間隔梁部材
8 橋脚上部工
11 床台(又は函体)
11−1、11−2、… 分割止水函体
11a 床台の上面
12 締切用壁体
13 シール材
14 支承
15a、15b 切梁
16 支柱(H形鋼等)
17 隅支柱
18a、18b 横桁
19、19−1、19−2、… 分割止水プレート
19a 隅部の分割止水プレート
19b 円弧を含むなど特殊形状の分割止水プレート
20−1、20−2 シール材
21 床台リブ(床台ガイド板)
22 接続架台
23−1、23−2 碇着用固定金具(締結手段)
24−1、24−2、24−3、24−4、… 引寄せ用固定金具(締結手段)
26 シール材
27 間隔保持部材
28−1、28−2 引寄せ用固定金具(締結手段)
30、30−1、30−2 締結金具(締結手段)
31 締結具
31a、31a−1、31a−2 ロットボルト
31b、31b−1、31b−2、31b−3、31b−4 ナット
31c、31c−1、31c−2、31c−3、31c−4 座金(ワッシャー)
32 取付具
33a 取付プレート
33b 軸受け
33c 回転輪(中空円筒形の金物)
33d 支持軸
34a ボルト
34b ナット
35 固定具
35a 固定プレート
35b 補強プレート
35c 固定フランジ
36 溝
37−1、37−2 固定フランジ
38−1、38−2 半長円形の溝
39 固定具
40 ガイド板(隅ガイド)
41−1、41−2 固定具
42−1、42−2 固定フランジ
43−1、43−2 溝
44−1、44−2 取付具
45 縦ガイド板
46 固定フランジ
47 補強リブ
48 締結具
49 固定具
50 取付具
51 脚部
52 連結部材
53 締付ボルト
54 締結ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中又は海中にある構造物の周囲を締切り、その内部の水又は海水を排除して、前記構造物の補強及び/又は補修作業を大気中で行う締切用止水壁体において、
前記構造物の水面下にある台座上に囲壁状に設置された止水構造の床台(11)と、
この床台(11)上に所定の間隔で立設された支柱(16)を有する内部フレームと、
これらの支柱(16)間にそれぞれ挿入又は外装される複数の分割止水プレート(19)で構成される止水壁と、
前記床台(11)と前記分割止水プレート(19)間、及び前記支柱(16)と前記分割止水プレート(19)間の少なくとも一方を締結する締結手段(30)と、
前記床台(11)と前記分割止水プレート(19)間、及び前記支柱(16)と前記分割止水プレート(19)間にそれぞれ介在され、水圧による外圧を受けた前記分割止水プレート(19)により圧縮されることで止水効果を発揮する止水用のシール材(20−1、20−2)と
を具備することを特徴とする締切用止水壁体。
【請求項2】
前記締結手段(30)は、ロットボルト(31a)と、前記床台(11)、前記分割止水プレート(19)、及び前記内部フレームのいずれかに装着され、前記ロットボルト(31a)の一端側の孔を回動自在に軸支する取付具(32)と、前記ロットボルト(31a)の他端側が挿脱自在に収納される溝(36)を有する固定フランジ(35c)と、前記ロットボルト(31a)の他端側を前記固定フランジ(35c)に係止するナット(31b)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の締切用止水壁体。
【請求項3】
前記締結手段(30)は、前記支柱(16)に装着される締結ボルト(54)を備え、この締結ボルト(54)をねじ込むことで前記分割止水プレート(19)の前記シール材(20−1)に対向する面を締付けて固定することを特徴とする請求項1に記載の締切用止水壁体。
【請求項4】
前記締結手段(30)は、一端側が前記床台(11)、前記分割止水プレート(19)、及び前記内部フレームのいずれかに装着される取付具(50)と、この取付具(50)に回動自在に軸支された一対の脚部(51)と、これらの脚部(51)を連結する連結部材(52)と、前記連結部材(52)にねじ込まれ、固定具(49)を前記取付具(50)に向かって押圧する締付ボルト(53)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の締切用止水壁体。
【請求項1】
水中又は海中にある構造物の周囲を締切り、その内部の水又は海水を排除して、前記構造物の補強及び/又は補修作業を大気中で行う締切用止水壁体において、
前記構造物の水面下にある台座上に囲壁状に設置された止水構造の床台(11)と、
この床台(11)上に所定の間隔で立設された支柱(16)を有する内部フレームと、
これらの支柱(16)間にそれぞれ挿入又は外装される複数の分割止水プレート(19)で構成される止水壁と、
前記床台(11)と前記分割止水プレート(19)間、及び前記支柱(16)と前記分割止水プレート(19)間の少なくとも一方を締結する締結手段(30)と、
前記床台(11)と前記分割止水プレート(19)間、及び前記支柱(16)と前記分割止水プレート(19)間にそれぞれ介在され、水圧による外圧を受けた前記分割止水プレート(19)により圧縮されることで止水効果を発揮する止水用のシール材(20−1、20−2)と
を具備することを特徴とする締切用止水壁体。
【請求項2】
前記締結手段(30)は、ロットボルト(31a)と、前記床台(11)、前記分割止水プレート(19)、及び前記内部フレームのいずれかに装着され、前記ロットボルト(31a)の一端側の孔を回動自在に軸支する取付具(32)と、前記ロットボルト(31a)の他端側が挿脱自在に収納される溝(36)を有する固定フランジ(35c)と、前記ロットボルト(31a)の他端側を前記固定フランジ(35c)に係止するナット(31b)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の締切用止水壁体。
【請求項3】
前記締結手段(30)は、前記支柱(16)に装着される締結ボルト(54)を備え、この締結ボルト(54)をねじ込むことで前記分割止水プレート(19)の前記シール材(20−1)に対向する面を締付けて固定することを特徴とする請求項1に記載の締切用止水壁体。
【請求項4】
前記締結手段(30)は、一端側が前記床台(11)、前記分割止水プレート(19)、及び前記内部フレームのいずれかに装着される取付具(50)と、この取付具(50)に回動自在に軸支された一対の脚部(51)と、これらの脚部(51)を連結する連結部材(52)と、前記連結部材(52)にねじ込まれ、固定具(49)を前記取付具(50)に向かって押圧する締付ボルト(53)とを備えることを特徴とする請求項1に記載の締切用止水壁体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−108316(P2013−108316A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255839(P2011−255839)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)
【Fターム(参考)】
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