説明

締結具を駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)のための燃料カートリッジ組立体、燃料カートリッジおよび手持ち工具

【課題】内燃機関式の手持ち工具の燃料カートリッジの充填レベルを知ること。
【解決手段】締結具を駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)のための燃料カートリッジ組立体(30)において、カートリッジ内の燃料の複数の異なる充填率について燃料(38)の温度変化に対する圧力変化を示す複数の曲線(F1〜F5)を含むノモグラムを実装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具に収納された燃料カートリッジから内燃機関の燃焼室内へ駆動用燃料を輸送し、該燃料を燃焼室内で点火して締結具を支持材内に打込むための内燃機関式の手持ち工具に関する。この種の工具は、例えば、釘打ち機やステープル打ち機を含む。
【背景技術】
【0002】
この種の工具の1の問題は、燃料カートリッジの充填レベルを知ることである。
一般的に、こうしたカートリッジは、燃料を充填するための内袋を有している。内袋から燃料を排出するために、内袋は開いており、かつ、該内袋に圧力を印加する推進液体に一部が浸漬され、燃料が流出するようになっている。一例として、推進液体による圧力は4気圧とすることができよう。本質的に液体の上方は1気圧の空気となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
充填レベルの問題の解決を試みた発明者は、内袋内に燃料が無い場合には1気圧であるが、内袋に一層多量の燃料を充填すると、それだけ高い空気圧が内腔に作用することを見出した。内袋に燃料が充填されると、空気の体積が低下し、その圧力が増加する。従って、内袋に作用する圧力は、内袋が空のときの5(4+1)気圧から、内袋が満たされているときの8(4+(1×4))気圧の範囲となり、内袋から駆動用燃料が無くなると5気圧の圧力低下が生じる。
【0004】
こうした状況で、発明者は、一定の体積の下で流体の圧力と温度は一定の比率となるとのマリオットの法則から発明を思いついた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は締結具を駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)のための燃料カートリッジ組立体(30)において、カートリッジ内の燃料の複数の異なる充填率について燃料(38)の温度変化に対する圧力変化を示す複数の曲線(F1〜F5)を含むノモグラムを実装した燃料カートリッジ組立体を要旨とする。
【0006】
既知の燃料について、カートリッジ内の圧力と温度を知ることによって、カートリッジの燃料充填率を知ることが可能となる。
前記カートリッジ内に充填可能な異なる燃料に関連して複数のノモグラムは容易に準備することができよう。
【0007】
上記発明に密接に関連して、本発明は、また、締結具を駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)のための燃料カートリッジ(30)において、前記カートリッジ(30)内の燃料の圧力を測定する圧力センサー(70)を具備することを特徴とする燃料カートリッジを要旨とする。
温度が分かれば本発明のノモグラムと組合せることによって、カートリッジの燃料充填率を容易に知ることが可能となる。
【0008】
本発明によれば、更に、締結具を支持材内へ駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)の燃料カートリッジ(30)から燃焼室(C)に燃料を輸送するための装置(60)において、燃料の圧力を測定するセンサー(71)を具備することを特徴とする装置が提供される。
【0009】
輸送装置の温度に加えて同輸送装置内の圧力が分かれば、カートリッジ内の圧力を知ることができ、従って、カートリッジの燃料充填率を知ることが可能となる。
輸送装置は、ソレノイドバルブまたは圧電式噴射装置を含む。
【0010】
本発明によれば、更に、支持材内へ締結具を駆動するための内燃機関式の手持ち工具(10)において、駆動用燃料(38)のためのカートリッジ(30)を受容するハウジング(29)と、前記カートリッジ(30)から前記駆動用燃料(38)を受入れる燃焼室(C)であって、該燃焼室内の燃料を点火する手段(14、16、18、24)を備えた燃焼室と、該手持ち工具に設けた温度センサー(80)と、燃料を輸送するための通路(42)を介して前記カートリッジのための前記ハウジング(29)に接続され、前記カートリッジ(30)から前記燃焼室(C)へ燃料を輸送するための装置(60)とを具備し、
前記通路(42)において、燃焼室輸送装置(60)と、前記カートリッジ(30)のための前記ハウジング(29)との間に燃料圧力を測定するための圧力センサー(72)を配設したことを特徴とする手持ち工具が提供される。
【0011】
温度に加えて、カートリッジと輸送装置との間の燃料圧力を知ることによって、カートリッジ内の圧力を知ることができ、従って、カートリッジの燃料充填率を知ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】燃料カートリッジと共に示す内燃機関式の手持ち工具の縦断面図である。
【図2】満杯の燃料カートリッジの断面図である。
【図3】殆ど空の状態のカートリッジの断面図である。
【図4a】燃料カートリッジと、図1の工具の燃焼室へ燃料を輸送するためのソレノイドバルブとから成る組立体の略図である。
【図4b】燃料カートリッジと、図1の工具の燃焼室へ燃料を輸送するためのソレノイドバルブとから成る組立体の略図である。
【図4c】燃料カートリッジと、図1の工具の燃焼室へ燃料を輸送するためのソレノイドバルブとから成る組立体の略図である。
【図5】カートリッジ内に配設された圧力センサーと共に示す図2、3の燃料カートリッジの断面図である。
【図6】圧力センサーを組込んだソレノイドバルブの側面図である。
【図7】カートリッジの充填率を変えて示す圧力p−温度θ線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して説明する本発明の実施形態から本発明を一層理解することができよう。なお、添付図面において、同様の構成要素には同じ参照番号が付されている。
【0014】
図1を参照すると、内燃機関式の手持ち工具10は、バッテリー(図示せず)に加えて、点火システムを具備している。該点火システムは、ヘッドスイッチ14とトリガースイッチ16を含む。燃料供給システムが点火システムと協働し、ヘッドスイッチ14がオンされた後所定時間後に工具10の燃焼室Cに燃料を流入可能とし、そして、トリガースイッチ16がオンされた後所定時間後に燃焼室Cに燃料が流入するようにしている。
【0015】
ヘッドスイッチ14は常開のスイッチであり、周知のように、締結具が打込まれる支持材に周知のタイプのセンサーの接触部材が当接されたときに、周知タイプの移動部材18によって閉成されるようになっている。センサーが当接すると、移動部材18によって燃焼室Cは閉じ、該燃焼室内で周知のタイプのファン22が起動可能となる。好ましくは、ヘッドスイッチ14は光電式スイッチである。
【0016】
工具には温度センサー80が配設されている。本例では、該温度センサーは、工具のハウジング、つまり、カートリッジハウジングのシェル40においてカートリッジの近傍に配置されている。また、本例では、該温度センサーはサーミスターである。
【0017】
点火システムによって、燃焼室Cに流入した燃料に点火できるように、トリガースイッチ16はヘッドスイッチ14が閉成したときに閉成可能となる。トリガースイッチ16を閉成するために、トリガー24が設けられている。
【0018】
本例では、燃料は、工具10において周知のタイプの加圧されたカートリッジ30から液体状態で流出する炭化水素である。カートリッジ30は、出口部材32を有している。該出口部材32を積極的に押下することによって、燃料が該出口部材を通じてカートリッジ30から流出可能となる。
【0019】
工具10は、カートリッジ30が工具10に装着されると、出口部材32が押下されるようになっている。そのために、工具10は、カートリッジ30を収納するハウジング29を有したシェル40を具備している。シェル40は、燃料噴射装置60、本例ではソレノイドバルブを収容する凹部46を有している。シェル40は、出口部材32を通じてカートリッジ30から流出した炭化水素燃料を流通させる通路42、44を有している。カートリッジ30が工具10に装着されると、出口部材32が通路42内に開口する。通路44を介してシェル40の通路42は噴射装置60に連通する。噴射装置60は保持室48を有しており、保持室に通路44が開校している。保持室48はノズル50を介して燃焼室Cに連通している。前記ノズル内にニードルを配設してもよい。
【0020】
燃料供給システムは、凹部46内に取付けられた燃料噴射装置60を具備している。燃料噴射装置60は、所定時間間隔で燃焼室C内に燃料を噴射し、以て噴射する燃料の体積を制御するようになっている。該時間間隔は、室温や室内圧力によって変化する。
【0021】
図2、3を参照すると、カートリッジ30は円筒形状のシェル31を具備しており、該シェル内に柔軟な内袋33が配設されている。該内袋は燃料38が充填される。該内袋には締切機構34が取付けられており、該締切機構内に、出口部材32がバネにより付勢され摺動自在に配設されている。該出口部材は、カップ部35から突出しており、該カップ部は、リム39においてシェル31にかしめられている。シェル31内おいて、内袋33の周囲の空間の一部には、内袋33に圧力を印加する推進液体36が貯留されており、推進液体36の上方の空間には空気37が充満されている。推進液体36の上方の空気には、また、推進液体の蒸気が含まれている。出口部材32が締切機構34内に押下されると、推進液体36および空気37の圧力の作用によって、燃料38が、カートリッジ30から通路44を介してソレノイドバルブ60へ流出する。内袋33が空になると、該内袋の周囲の空間が増加し、推進液体36の一部が気体36′に相変化する。
【0022】
カートリッジ30の内袋33内の燃料のために、図7のノモグラムが実装されている。図7のノモグラムは、複数の、この例では5つの異なる充填率について温度変化に対する内袋内の圧力を示す複数の曲線を含んでいる。
【0023】
一番上の第1の曲線F1は内袋33が満杯(図2)を示しており、F2からF5へ充填率が所定の差分で低減しており、一番下の曲線F5は、内袋が概ね空の状態(図3)となっている。
【0024】
センサー80は、カートリッジ30、ソレノイドバルブ60および接続する通路の温度を提供する。カートリッジ内の圧力およびセンサー80による温度を得ることによって、曲線F1〜F5から充填率を得ることが可能となる。
【0025】
カートリッジ内の燃料圧力を得るために、複数の方法が考え得る。図4〜図6を参照すると、圧力センサー70をカートリッジ30内に直接配設することができよう。また、噴射装置60に圧力センサー71を配設してもよい(図4b、6)。更に、手持ち工具10において、カートリッジ30を噴射装置60に接続する通路42に圧力センサー72を配設してもよい(図4c)。カートリッジ30のセンサー70が、該カートリッジ30の推進剤(液体(36)および/または気体(37))に浸漬されている場合には、RFチップ75によって信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 工具
14 ヘッドスイッチ
16 トリガースイッチ
18 移動部材
22 ファン
24 トリガー
29 ハウジング
30 カートリッジ
31 シェル
32 出口部材
33 内袋
34 締切機構
35 カップ部
36 推進液体
36 気体
37 空気
38 燃料
39 リム
40 シェル
42 通路
44 通路
46 凹部
48 保持室
50 ノズル
60 燃料噴射装置(ソレノイドバルブ)
70 圧力センサー
70 センサー
71 圧力センサー
72 圧力センサー
75 チップ
80 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結具を駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)のための燃料カートリッジ組立体(30)において、カートリッジ内の燃料の複数の異なる充填率について燃料(38)の温度変化に対する圧力変化を示す複数の曲線(F1〜F5)を含むノモグラムを実装した燃料カートリッジ組立体。
【請求項2】
前記ノモグラムは、前記カートリッジ内に充填可能な異なる燃料に関連した複数のノモグラムを含む請求項1に記載の燃料カートリッジ組立体。
【請求項3】
締結具を駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)のための燃料カートリッジ(30)において、前記カートリッジ(30)内の燃料の圧力を測定する圧力センサー(70)を具備することを特徴とする燃料カートリッジ。
【請求項4】
締結具を支持材内へ駆動する内燃機関式の手持ち工具(10)の燃料カートリッジ(30)から燃焼室(C)に燃料を輸送するための装置(60)において、燃料の圧力を測定するセンサー(71)を具備することを特徴とする装置。
【請求項5】
ソレノイドバルブ(60)である燃料輸送装置。
【請求項6】
支持材内へ締結具を駆動するための内燃機関式の手持ち工具(10)において、
駆動用燃料(38)のためのカートリッジ(30)を受容するハウジング(29)と、
前記カートリッジ(30)から前記駆動用燃料(38)を受入れる燃焼室(C)であって、該燃焼室内の燃料を点火する手段(14、16、18、24)を備えた燃焼室と、
該手持ち工具に設けた温度センサー(80)と、
燃料を輸送するための通路(42)を介して前記カートリッジのための前記ハウジング(29)に接続され、前記カートリッジ(30)から前記燃焼室(C)へ燃料を輸送するための装置(60)とを具備し、
前記通路(42)において、燃焼室輸送装置(60)と、前記カートリッジ(30)のための前記ハウジング(29)との間に燃料圧力を測定するための圧力センサー(72)を配設したことを特徴とする手持ち工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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