締結具
【課題】ボルト又はナットが緩んでいることを確実に目視することができ、しかも、ボルト又はナットを締結する作業性を低下させない締結具を提供する。
【解決手段】本締結具は、軸11の一端に頭部12を有するボルト10、及び/又はボルト10に螺合するナット20、及びボルト10の座面又はナット20の座面に重ねられる座金30が備えられている。そして、ボルト10の座面、ナット20の座面、又は座金30に1個又は複数個の衝止部31が設けられ、座金30、ボルト10の座面、又はナット20の座面に1個又は複数個の衝止部31又は突起部21が設けられ、ボルト10又はナット20が締結され、前記突起部21が前記衝止部31の一端で衝止した状態で、ボルト10の頭部12の側面と座金30とに連続するライン状の目印14,32、及び/又はナット20の側面と座金30とに連続するライン状の目印22,32が設けられている。
【解決手段】本締結具は、軸11の一端に頭部12を有するボルト10、及び/又はボルト10に螺合するナット20、及びボルト10の座面又はナット20の座面に重ねられる座金30が備えられている。そして、ボルト10の座面、ナット20の座面、又は座金30に1個又は複数個の衝止部31が設けられ、座金30、ボルト10の座面、又はナット20の座面に1個又は複数個の衝止部31又は突起部21が設けられ、ボルト10又はナット20が締結され、前記突起部21が前記衝止部31の一端で衝止した状態で、ボルト10の頭部12の側面と座金30とに連続するライン状の目印14,32、及び/又はナット20の側面と座金30とに連続するライン状の目印22,32が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやナットのような締結具に関し、詳しくは、ボルトやナットが締結された後に緩んでいることを確実に目視できるようにした締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトに締結されたナットの緩み、あるいは締め込んだボルトの緩みを、トルクレンチなどの特殊計測工具を使用することなく検知することができるようにしたねじの緩み検知器についての発明が特許文献1に記載されている。
【0003】
このねじの緩み検知器は、図10及び図11に示すように、ナット110に設けられた目印111と、基準片121を有する基準部材120とからなり、基準部材120がボルトのねじ部130に着脱自在に取り付けられ、ナット110の緩みを基準片121からの目印111の変位に基づいて検知することを特徴としている。
【0004】
前記ナット110に設ける目印111としては、ナット110の表面に設けた溝や窪み、突起部とされる。また、前記基準部材120は、例えば、基台122をクリップ状の締結部材で形成し、その基台122に目印111に対向する基準片121を取り付けたものとされている。基台122の締結部材は、ボルトのねじ部130に取り付けられたとき、容易に回転移動しない強度で取り付けられ、かつ、ボルトのねじ部130から適宜、取り外すことができるようにされている。
【0005】
そのため、基準部材120は、図示したように、基台122がバネ性を有し、内径をボルトのねじ部130の外径よりも若干小さく、つまみ片123,123を握って拡開し、つまみ片123,123を離すと、ボルトのねじ部130に硬く締結するようにされている。あるいは、基準部材120は、図示しないが、スリットを有し、かつ、基準片121を固着した金属製ベルトの一端にねじを取り付け、ベルトを環状にして他端のスリットをねじに噛み合わせることで、ボルトのねじ部130に固定するようにされている。
【0006】
このようなねじの緩み検知器を使用するには、ナット110をボルトのねじ部130に所定のトルクで締結した後、ナット110から突出したボルトのねじ部130に基準部材120を取り付ける。このとき、基準部材120の基準片121がナット110の目印111と合うようにする。
【0007】
そして、ナット110が緩むと、ナット110の目印111が基準部材120の基準片121からずれる。換言すれば、このねじの緩み検知器は、基準片121と目印111との位置ずれを目視することで、ナット110の緩みを確認することができるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−233289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたねじの緩み検知器は、基準部材120をボルトのねじ部130に回転移動しないように取り付けるため、基準部材120の基台122がバネ性を有するものとされたり、ねじを締め付けたりするものとされている。
【0010】
しかし、バネ性を有する基準部材120にあっては、バネ力の低下などによって締結力が弱まり、回転移動してしまうことによってナット110の緩みを正確に確認できないことがある。また、ねじを締め付ける基準部材120にあっては、作業性がよいものとなっていない。
【0011】
そこで、本発明は、ボルト又はナットが緩んでいることを確実に目視することができ、しかも、ボルト又はナットを締結する作業性を低下させない締結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る締結具は、軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、ボルトの座面、ナットの座面、又は座金に1個又は複数個の突起部又は衝止部が設けられ、座金、ボルトの座面、又はナットの座面に1個又は複数個の衝止部又は突起部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴としている。
【0013】
この締結具によれば、ボルトの座面、ナットの座面、又は座金に1個又は複数個の突起部又は貫通穴や窪み状の衝止部が設けられ、座金、ボルトの座面、又はナットの座面に1個又は複数個の衝止部又は突起部が設けられ、ボルト又はナットが締結されることによって、突起部が衝止部の一端で衝止し、ボルトの頭部の側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続し、又はナットの側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続するようにされている。
【0014】
そして、締結されたボルト又はナットが緩むと、ボルトの頭部の目印と座金の目印とがずれて不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とがずれて不連続となる。換言すると、この締結具は、ボルトとナットとを締結した後に、ボルトの頭部の目印と座金の目印とが不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とが不連続となっていることを目視することで、ボルト又はナットが緩んでいることを確認することができる。
【0015】
また、前記と異なる本発明に係る締結具は、軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、ボルトの頭部の側面及び/又はナットの側面に1個又は複数個の突起部が設けられ、座金がボルトの座面及び/又はナットの座面に重なる表面に前記突起部を係入する窪んだ衝止部又は前記突起部を衝止する突出した衝止部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴としている。
【0016】
この締結具によれば、ボルトの頭部の側面及び/又はナットの側面に1個又は複数個の突起部が設けられ、座金がボルトの座面及び/又はナットの座面に重なる表面に窪んだ衝止部又は前記突起部を衝止する突出した衝止部が設けられ、ボルトとナットが締結されることによって、突起部が衝止部の一端で衝止し、ボルトの頭部の側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続し、又はナットの側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続するようにされている。
【0017】
そして、締結されたボルト又はナットが緩むと、ボルトの頭部の目印と座金の目印とがずれて不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とがずれて不連続となる。換言すると、この締結具は、ボルトとナットとを締結した後に、ボルトの頭部の目印と座金の目印とが不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とが不連続となっていることを目視することで、ボルト又はナットが緩んでいることを確認することができる。
【0018】
なお、前記2つのいずれの本発明に係る締結具も、ボルトのみ又はナットのみ備えたものであってもよく、あるいはボルトとナットの両方を備えていても、いずれかにのみ、あるいは両方に突起部と衝止部、目印を設けたものとしてもよい。
【0019】
また、前記本発明に係る締結具において、前記座金には、ボルト又はナットの座面と重ならない裏面に滑止め加工が施されていることが好ましい。
【0020】
この締結具によれば、座金の裏面に滑止め加工が施されていることにより、ボルト又はナットの緩みに伴って座金が回ることがないため、ボルト又はナットが緩んでいるにもかかわらず、目印が連続した状態を維持しないようにされ、あるいは、逆に、ボルト又はナットが緩んでいないにもかかわらず、座金が回ることで、両目印がずれて不連続となり、ボルト又はナットが緩んでいるという誤った認定をしないようにすることができる。
【0021】
また、前記本発明に係る締結具において、前記突起部は、第1の突起部と第2の突起部とを設けたものとされ、第1の突起部が衝止部の一端で衝止し、所定のトルクで締結されることによって破断した後、第2の突起部が衝止部の一端で衝止するように設けられていてもよい。
【0022】
この締結具によれば、第1の突起部と第2の突起部とが衝止部に衝止した状態でボルト及び/又はナットが回され、第1の突起部が衝止部の一端で衝止することによって、座金が共回りし、所定のトルクでボルトとナットとが締結されたときに、第1の突起部が破断し、第2の突起部が衝止部の一端で衝止するようにされているため、ボルト及び/又はナットを回す作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ボルト及び/又はナット、及び座金に1個又は複数個の突起部と衝止部とが設けられ、突起部が衝止部の一端で衝止した状態で連続する目印がボルト及び/又はナットの側面と座金とに設けられた締結具が提供されることにより、ボルト又はナットが締結された後に、緩んでいることを確実に目視することができ、しかも、ボルト又はナットを締結する作業性を低下させないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る締結具の第1の実施形態であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る締結具の第1の実施形態であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る締結具の第1の実施形態の変形例であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る締結具の第1の実施形態の変形例であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る締結具の第1の実施形態の別の変形例であって、(a)は締結される前の状態を示す平面図、(b)は締結された後の状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る締結具の第2の実施形態であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図7】本発明に係る締結具の第2の実施形態であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る締結具の第3の実施形態であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る締結具の第3の実施形態であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図10】従来のねじの緩み検知器を示す正面図である。
【図11】従来のねじの緩み検知器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1の実施形態〕
本発明に係る締結具の第1の実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。この締結具は、ボルト10、ナット20、及び座金30を備えたものとされている。なお、図1ないし図4は、実施の一例であって、実際には天地が逆転して実施される場合や縦向きの姿勢で実施される場合があることはいうまでもないが、ここでは図面に即して説明する。
【0026】
図1及び図2に示した締結具は図面において、貫通穴1を空けた被締結部材2の下側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が下端に位置し、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を上向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の上側で締結され、被締結部材2とナット20との間に座金30が挟まれる。そして、このナット20は、座面に突起部21を設けたものとされている。
【0027】
また、図3及び図4に示した締結具は、図面において、貫通穴1を設けた被締結部材2の上側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が上端に位置し、この頭部12と被締結部材2との間に座金30が挟まれ、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を下向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の下側で締結される。そして、ボルト10は、座面に突起部13を設けたものとされている。
【0028】
ナット20に設けられた突起部21及びボルト10に設けられた突起部13は、2個のみ図示されているが、1個でも3個でもよい。また、この突起部21,13は、ナット20の側面と側面との境界部又はボルト10の頭部12の側面と側面との境界部に設けたものを図示したが、側面の中間部に設けてもよい。いずれにしても、突起部21,13は、ナット20又はボルト10と一体成形してもよいし、ナット20又はボルト10の座面に小穴を設け、この小穴にピンを突き刺すことによって設けてもよい。
【0029】
そして、座金30には、突起部21,13を係入する円弧状で貫通した又は図示しないが窪んだ衝止部31が3か所に設けられている。
【0030】
そして、ナット20及びボルト10が回されることによって、突起部21,13も当然、回されるため、突起部21,13が係入している衝止部31は、突起部21,13が回る軌跡と一致する円弧状に設けられる。そして、突起部21,13の高さは、衝止部31を貫通したものとされている場合において、座金30の厚さよりも低くされ、衝止部31を窪んだものとされている場合において、窪みの深さよりも低くされている。
【0031】
また、突起部21,13は衝止部31よりも少なく、換言すれば、衝止部31は突起部21,13よりも多く設けられている。例えば、衝止部31が3か所に設けられる場合は、突起部21,13は3個以下、設けられる。
【0032】
また、ボルト10とナット20が所定のトルクで締結された状態で、突起部21,13が衝止部31の一端に位置し、ナット20と座金30とが位置決めされる。この位置において、ナット20の側面又はボルト10の側面と、座金30がナット20の座面又はボルト10の座面と重なる表面とには、連続するライン状の目印22,14,32が設けられている。目印22,14,32は、図示したような3本設けることによって、どの方向からも目視することができるようにされている。ただし、目印22,14,32は、1本設けてもよいし、六角ナット20や六角ボルト10の場合は6本以下の複数本設けてもよい。
【0033】
この目印22,14,32は、剥落しないインクを塗布するだけでもよいが、溝を形成し、この溝内にインクを塗布することにより、インクが剥落しにくく、また、剥落したとしても、溝によって目印22,14,32としての機能を維持することができるようにされていることが好ましい。
【0034】
なお、座金30は、被締結部材2と重なる裏面に微小な凹凸形状などの滑止め加工(図示せず)が施されていることが好ましい。
【0035】
ここで、この締結具の使用方法について説明する。図1に示すように突起部21をナット20に設けた締結具においては、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1及び被締結部材2上の座金30を貫通し、ナット20が締結される。また、図3に示すように突起部13をボルト10に設けた締結具においては、ボルト10の軸11が被締結部材2上の座金30及び被締結部材2の貫通穴1を貫通し、ナット20が締結される。
【0036】
ナット20の突起部21及びボルト10の突起部13は、当初、座金30から離間して締められるが、締結直前において、衝止部31内に係入する。そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結されると、突起部21,13が衝止部31の一端で衝止した状態となる。すると、図2に示すように、ナット20のライン状の目印22と座金30のライン状の目印32とが連続し、あるいは、図4に示すように、ボルト10のライン状の目印14と座金30のライン状の目印32とが連続する。
【0037】
そして、座金30が被締結部材2に例えば食い込んだ状態とされ、また滑止め加工されていることにより、座金30が被締結部材2に固定され、ナット20又はボルト10が緩んだとしても、共回りしないようにされている。
【0038】
したがって、ボルト10とナット20は、締結後の定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,14,32が連続していることを目視することにより、ナット20又はボルト10が緩んでいないことを確認することができる。換言すれば、定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,14,32がずれて不連続になっていることを目視すると、ナット20又はボルト10が緩んでいると判断することができる。
【0039】
ここで、第1の実施形態の変形例について図5を参照しながら説明する。この変形例は、第1の突起部21a,13aと第2の突起部21b,13bとを設けたことを特徴としている。図5(a)に示すように、第1の突起部21a,13aが衝止部31の一端で衝止している状態において、第2の突起部21b,13bが衝止部31の一端で衝止しないように設けられる。
【0040】
そして、ナット20又はボルト10を締結するときに、第1の突起部21a,13aが衝止部31の一端を引っ張る状態となって、ナット20又はボルト10と座金30とが共回りする。このようにすることによって、ナット20又はボルト10は、座金30の衝止部31の位置に関係なく、回すことができる。そして、所定のトルクで締結する直前において、図5(b)に示すように、第1の突起部21a,13aが破断し、第2の突起部21b,13bが衝止部31の一端で衝止し、2本のライン状の目印22,14,32が連続するようにされている。
【0041】
なお、前記の第1の実施形態では、ナット20又はボルト10に突起部21,13を設け、座金30に衝止部31を設けた場合について説明したが、座金30に突起部を設け、ナット20又はボルト10に衝止部を設けてもよい。
【0042】
〔第2の実施形態〕
本発明に係る締結具の第2の実施形態について図6及び図7を参照しながら説明する。この締結具も、ボルト10、ナット20、及び座金30を備えたものとされている。なお、図6及び図7も実施の一例であって、実際には天地が逆転して実施される場合や縦向きの姿勢で実施される場合があることはいうまでもないが、ここでは図面に即して説明する。
【0043】
また、図6及び図7に示した第2の実施形態は、貫通穴1を空けた被締結部材2の下側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が下端に位置し、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を上向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の上側で締結され、被締結部材2とナット20との間に座金30を挟んだ締結具であって、ナット20に突起部21を設けたものを示している。
【0044】
ただし、第2の実施形態においても、第1の実施の形態の図3及び図4に示したように、貫通穴1を空けた被締結部材2の上側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が上端に位置し、この頭部12と被締結部材2との間に座金30が挟まれ、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を下向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の下側で締結され、ボルト10の頭部12に突起部に設けた締結具とすることもできるが、この締結具についての図示は省略する。
【0045】
第2の実施形態は、突起部21をナット20の側面(又は図示しないボルト10の頭部12の側面)に設けたことを特徴としている。こうすることによって、突起部21を第1の実施形態よりも大きくし、強度を上げることができる。そして、この突起部21は、ナット20の座面又はボルト10の頭部12の座面よりも突出した拡大部21cを設けたものとされている。
【0046】
また、座金30には、ナット20の座面又はボルト10の座面と重なる表面に、前記突起部21の拡大部21cを係入する窪んだ衝止部31が設けられている。この衝止部31は、図示したような円弧形状ないしC字形状に設けられる。また、当然ながら、衝止部31の径方向の幅は、突起部21の突出した長さよりも長くされている。
【0047】
なお、この締結具においても、複数の突起部21を設け、この突起部21以上の数の衝止部31を設けてもよい。
【0048】
そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結されると、突起部21が衝止部31の一端で衝止され、ナット20と座金30とが位置決めされる。この位置において、ナット20の側面(又は図示しないボルト10の頭部12の側面)と、座金30がナット20の座面と重なる表面に連続するライン状の目印22,32が設けられている。目印22,32は、図示したような3本設けることによって、どの方向からも目視することができるようにされている。ただし、目印22,32は、1本設けてもよいし、複数本設けてもよい。
【0049】
その他、突起部21を設ける手段や目印22,32の形態、座金30の裏面の形態は、第1の実施形態と同じであるため、その説明は割愛し、次に使用方法について説明する。
【0050】
ナット20又はボルト10を回し、所定のトルクで締結される直前において、突起部21の拡大部21cが座金30の衝止部31に入る。そして、所定のトルクで締結された状態において、図7に示すように、突起部21の拡大部21cが衝止部31の一端に衝止する。この状態において、ナット20(又は図示しないボルト10)のライン状の目印22と座金30のライン状の目印32とが連続する。
【0051】
そして、座金30が被締結部材2に例えば食い込んだ状態とされ、また滑止め加工されていることにより、座金30は、被締結部材2に固定され、緩んだナット20又はボルト10と共回りしないようにされている。
【0052】
したがって、ボルト10とナット20は、締結後の定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32が連続していることを目視することにより、緩んでいないことを確認することができる。換言すれば、定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32がずれて不連続になっていることを目視すると、ナット20又はボルト10が緩んでいると判断することができる。
【0053】
なお、この第2の実施形態においても、図5に示した第1の実施形態の変形例のように、第1の突起部と第2の突起部とを設け、第1の突起部によって座金30が共回りし、所定のトルクが加えられる直前に第1の突起部が破断し、所定のトルクで締結された状態において、第2の突起部が衝止部31の一端で衝止するようにしてもよい。
【0054】
〔第3の実施形態〕
本発明に係る締結具の第3の実施形態について図8及び図9を参照しながら説明する。この締結具も、ボルト10、ナット20、及び座金30を備えたものとされている。なお、図8及び図9も実施の一例であって、実際には天地が逆転して実施される場合や縦向きの姿勢で実施される場合があることはいうまでもないが、ここでは図面に即して説明する。
【0055】
また、図8及び図9に示した第3の実施形態は、貫通穴1を空けた被締結部材2の下側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が下端に位置し、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を上向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の上側で締結され、被締結部材2とナット20との間に座金30を挟んだ締結具であって、ナット20に突起部21を設けたものを示している。
【0056】
ただし、第3の実施形態においても、第1の実施の形態の図3及び図4に示したように、貫通穴1を空けた被締結部材2の上側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が上端に位置し、この頭部12と被締結部材2との間に座金30が挟まれ、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を下向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の下側で締結され、ボルト10の頭部12に突起部に設けた締結具とすることもできるが、この締結具についての図示は省略する。
【0057】
第3の実施形態は、突起部21をナット20の側面(又は図示しないボルト10の頭部12の側面)に設けたことを特徴としている。こうすることによって、突起部21を第1の実施形態よりも大きくし、強度を上げることができる。ただし、第3の実施形態の突起部21は、第2の実施形態の突起部21と異なり、座面よりも突出しないようにされている。
【0058】
そして、座金30には、ナット20の座面(又は図示しないボルト10の座面)と重なる表面に、前記突起部21と衝止するように突出した衝止部31が設けられている。この衝止部31は、ナット20又はボルト10の締結の邪魔にならないようにできるだけ低く設けられることが好ましい。
【0059】
なお、この締結具においても、複数の突起部21を設け、この突起部21以上の数の衝止部31を設けてもよい。
【0060】
そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結された状態で、突起部21が衝止部31の一端(一方の端面)で衝止され、ナット20と座金30とが位置決めされる。この位置において、ナット20の側面と、座金30がナット20の座面と重なる表面に連続するライン状の目印22,32が設けられている。目印22,32は、図示したような3本設けることによって、どの方向からも目視することができるようにされている。ただし、目印22,32は、1本設けてもよいし、複数本設けてもよい。
【0061】
その他、突起部21を設ける手段や目印22,32の形態、座金30の裏面の形態は、第1の実施形態と同じであるため、その説明は割愛し、次に使用方法について説明する。
【0062】
ナット20又はボルト10は、締結のために回されるが、所定のトルクで締結される直前まで、突起部21が衝止部31に衝突しないようにされている。そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結された状態において、図9に示すように、突起部21が衝止部31の一端で衝止され、ナット20(又は図示しないボルト10の)ライン状の目印22と座金30のライン状の目印32とが連続する。
【0063】
そして、座金30が被締結部材2に例えば食い込んだ状態とされ、また滑止め加工されていることにより、座金30が被締結部材2に固定され、緩んだナット20又はボルト10と共回りしないようにされている。
【0064】
したがって、ボルト10とナット20は、締結後の定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32が連続していることを目視することにより、ナット20又はボルト10が緩んでいないことを確認することができる。換言すれば、定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32がずれていることを目視すると、ナット20又はボルト10が緩んでいると判断することができる。
【0065】
なお、この第3の実施形態においても、図5に示した第1の実施形態の変形例のように、第1の突起部と第2の突起部とを設け、第1の突起部によって座金30が共回りし、所定のトルクが加えられる直前に第1の突起部が破断し、所定のトルクで締結された状態において、第2の突起部が衝止部31の一端で衝止するようにしてもよい。
【0066】
〔他の実施形態〕
第1の実施形態ないし第3の実施形態において、座金30の裏面に滑止め加工が施されていると説明したが、座金30の裏面が重なる被締結部材2の摩擦抵抗が大きなものとされている場合は、座金30の裏面に滑止め加工していないものを使用してもよい。
【0067】
また、第1の実施形態ないし第3の実施形態において、ナット20又はボルト10の一方に突起部21,13を設けた締結具について説明したが、ナット20とボルト10の両方に突起部21,13を設けたものとしてもよい。
【0068】
また、ナット20は、狭義のボルト10でなく、ネジやビスなどに螺合されるものに使用することができ、ボルト10は、ナット20でなく、被締結部材2の貫通穴1に雌ネジを形成したものに螺合して使用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
10……ボルト
11……軸
12……頭部
13……突起部
13a…第1の突起部
13b…第2の突起部
14……目印
20……ナット
21……突起部
21a…第1の突起部
21b…第2の突起部
22……目印
30……座金
31……衝止部
32……目印
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやナットのような締結具に関し、詳しくは、ボルトやナットが締結された後に緩んでいることを確実に目視できるようにした締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトに締結されたナットの緩み、あるいは締め込んだボルトの緩みを、トルクレンチなどの特殊計測工具を使用することなく検知することができるようにしたねじの緩み検知器についての発明が特許文献1に記載されている。
【0003】
このねじの緩み検知器は、図10及び図11に示すように、ナット110に設けられた目印111と、基準片121を有する基準部材120とからなり、基準部材120がボルトのねじ部130に着脱自在に取り付けられ、ナット110の緩みを基準片121からの目印111の変位に基づいて検知することを特徴としている。
【0004】
前記ナット110に設ける目印111としては、ナット110の表面に設けた溝や窪み、突起部とされる。また、前記基準部材120は、例えば、基台122をクリップ状の締結部材で形成し、その基台122に目印111に対向する基準片121を取り付けたものとされている。基台122の締結部材は、ボルトのねじ部130に取り付けられたとき、容易に回転移動しない強度で取り付けられ、かつ、ボルトのねじ部130から適宜、取り外すことができるようにされている。
【0005】
そのため、基準部材120は、図示したように、基台122がバネ性を有し、内径をボルトのねじ部130の外径よりも若干小さく、つまみ片123,123を握って拡開し、つまみ片123,123を離すと、ボルトのねじ部130に硬く締結するようにされている。あるいは、基準部材120は、図示しないが、スリットを有し、かつ、基準片121を固着した金属製ベルトの一端にねじを取り付け、ベルトを環状にして他端のスリットをねじに噛み合わせることで、ボルトのねじ部130に固定するようにされている。
【0006】
このようなねじの緩み検知器を使用するには、ナット110をボルトのねじ部130に所定のトルクで締結した後、ナット110から突出したボルトのねじ部130に基準部材120を取り付ける。このとき、基準部材120の基準片121がナット110の目印111と合うようにする。
【0007】
そして、ナット110が緩むと、ナット110の目印111が基準部材120の基準片121からずれる。換言すれば、このねじの緩み検知器は、基準片121と目印111との位置ずれを目視することで、ナット110の緩みを確認することができるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−233289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたねじの緩み検知器は、基準部材120をボルトのねじ部130に回転移動しないように取り付けるため、基準部材120の基台122がバネ性を有するものとされたり、ねじを締め付けたりするものとされている。
【0010】
しかし、バネ性を有する基準部材120にあっては、バネ力の低下などによって締結力が弱まり、回転移動してしまうことによってナット110の緩みを正確に確認できないことがある。また、ねじを締め付ける基準部材120にあっては、作業性がよいものとなっていない。
【0011】
そこで、本発明は、ボルト又はナットが緩んでいることを確実に目視することができ、しかも、ボルト又はナットを締結する作業性を低下させない締結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る締結具は、軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、ボルトの座面、ナットの座面、又は座金に1個又は複数個の突起部又は衝止部が設けられ、座金、ボルトの座面、又はナットの座面に1個又は複数個の衝止部又は突起部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴としている。
【0013】
この締結具によれば、ボルトの座面、ナットの座面、又は座金に1個又は複数個の突起部又は貫通穴や窪み状の衝止部が設けられ、座金、ボルトの座面、又はナットの座面に1個又は複数個の衝止部又は突起部が設けられ、ボルト又はナットが締結されることによって、突起部が衝止部の一端で衝止し、ボルトの頭部の側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続し、又はナットの側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続するようにされている。
【0014】
そして、締結されたボルト又はナットが緩むと、ボルトの頭部の目印と座金の目印とがずれて不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とがずれて不連続となる。換言すると、この締結具は、ボルトとナットとを締結した後に、ボルトの頭部の目印と座金の目印とが不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とが不連続となっていることを目視することで、ボルト又はナットが緩んでいることを確認することができる。
【0015】
また、前記と異なる本発明に係る締結具は、軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、ボルトの頭部の側面及び/又はナットの側面に1個又は複数個の突起部が設けられ、座金がボルトの座面及び/又はナットの座面に重なる表面に前記突起部を係入する窪んだ衝止部又は前記突起部を衝止する突出した衝止部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴としている。
【0016】
この締結具によれば、ボルトの頭部の側面及び/又はナットの側面に1個又は複数個の突起部が設けられ、座金がボルトの座面及び/又はナットの座面に重なる表面に窪んだ衝止部又は前記突起部を衝止する突出した衝止部が設けられ、ボルトとナットが締結されることによって、突起部が衝止部の一端で衝止し、ボルトの頭部の側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続し、又はナットの側面に設けられたライン状の目印と座金に設けられたライン状の目印とが連続するようにされている。
【0017】
そして、締結されたボルト又はナットが緩むと、ボルトの頭部の目印と座金の目印とがずれて不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とがずれて不連続となる。換言すると、この締結具は、ボルトとナットとを締結した後に、ボルトの頭部の目印と座金の目印とが不連続となり、あるいはナットの目印と座金の目印とが不連続となっていることを目視することで、ボルト又はナットが緩んでいることを確認することができる。
【0018】
なお、前記2つのいずれの本発明に係る締結具も、ボルトのみ又はナットのみ備えたものであってもよく、あるいはボルトとナットの両方を備えていても、いずれかにのみ、あるいは両方に突起部と衝止部、目印を設けたものとしてもよい。
【0019】
また、前記本発明に係る締結具において、前記座金には、ボルト又はナットの座面と重ならない裏面に滑止め加工が施されていることが好ましい。
【0020】
この締結具によれば、座金の裏面に滑止め加工が施されていることにより、ボルト又はナットの緩みに伴って座金が回ることがないため、ボルト又はナットが緩んでいるにもかかわらず、目印が連続した状態を維持しないようにされ、あるいは、逆に、ボルト又はナットが緩んでいないにもかかわらず、座金が回ることで、両目印がずれて不連続となり、ボルト又はナットが緩んでいるという誤った認定をしないようにすることができる。
【0021】
また、前記本発明に係る締結具において、前記突起部は、第1の突起部と第2の突起部とを設けたものとされ、第1の突起部が衝止部の一端で衝止し、所定のトルクで締結されることによって破断した後、第2の突起部が衝止部の一端で衝止するように設けられていてもよい。
【0022】
この締結具によれば、第1の突起部と第2の突起部とが衝止部に衝止した状態でボルト及び/又はナットが回され、第1の突起部が衝止部の一端で衝止することによって、座金が共回りし、所定のトルクでボルトとナットとが締結されたときに、第1の突起部が破断し、第2の突起部が衝止部の一端で衝止するようにされているため、ボルト及び/又はナットを回す作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ボルト及び/又はナット、及び座金に1個又は複数個の突起部と衝止部とが設けられ、突起部が衝止部の一端で衝止した状態で連続する目印がボルト及び/又はナットの側面と座金とに設けられた締結具が提供されることにより、ボルト又はナットが締結された後に、緩んでいることを確実に目視することができ、しかも、ボルト又はナットを締結する作業性を低下させないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る締結具の第1の実施形態であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係る締結具の第1の実施形態であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る締結具の第1の実施形態の変形例であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る締結具の第1の実施形態の変形例であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る締結具の第1の実施形態の別の変形例であって、(a)は締結される前の状態を示す平面図、(b)は締結された後の状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る締結具の第2の実施形態であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図7】本発明に係る締結具の第2の実施形態であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る締結具の第3の実施形態であって、締結される前の状態を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る締結具の第3の実施形態であって、締結された後の状態を示す斜視図である。
【図10】従来のねじの緩み検知器を示す正面図である。
【図11】従来のねじの緩み検知器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1の実施形態〕
本発明に係る締結具の第1の実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。この締結具は、ボルト10、ナット20、及び座金30を備えたものとされている。なお、図1ないし図4は、実施の一例であって、実際には天地が逆転して実施される場合や縦向きの姿勢で実施される場合があることはいうまでもないが、ここでは図面に即して説明する。
【0026】
図1及び図2に示した締結具は図面において、貫通穴1を空けた被締結部材2の下側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が下端に位置し、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を上向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の上側で締結され、被締結部材2とナット20との間に座金30が挟まれる。そして、このナット20は、座面に突起部21を設けたものとされている。
【0027】
また、図3及び図4に示した締結具は、図面において、貫通穴1を設けた被締結部材2の上側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が上端に位置し、この頭部12と被締結部材2との間に座金30が挟まれ、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を下向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の下側で締結される。そして、ボルト10は、座面に突起部13を設けたものとされている。
【0028】
ナット20に設けられた突起部21及びボルト10に設けられた突起部13は、2個のみ図示されているが、1個でも3個でもよい。また、この突起部21,13は、ナット20の側面と側面との境界部又はボルト10の頭部12の側面と側面との境界部に設けたものを図示したが、側面の中間部に設けてもよい。いずれにしても、突起部21,13は、ナット20又はボルト10と一体成形してもよいし、ナット20又はボルト10の座面に小穴を設け、この小穴にピンを突き刺すことによって設けてもよい。
【0029】
そして、座金30には、突起部21,13を係入する円弧状で貫通した又は図示しないが窪んだ衝止部31が3か所に設けられている。
【0030】
そして、ナット20及びボルト10が回されることによって、突起部21,13も当然、回されるため、突起部21,13が係入している衝止部31は、突起部21,13が回る軌跡と一致する円弧状に設けられる。そして、突起部21,13の高さは、衝止部31を貫通したものとされている場合において、座金30の厚さよりも低くされ、衝止部31を窪んだものとされている場合において、窪みの深さよりも低くされている。
【0031】
また、突起部21,13は衝止部31よりも少なく、換言すれば、衝止部31は突起部21,13よりも多く設けられている。例えば、衝止部31が3か所に設けられる場合は、突起部21,13は3個以下、設けられる。
【0032】
また、ボルト10とナット20が所定のトルクで締結された状態で、突起部21,13が衝止部31の一端に位置し、ナット20と座金30とが位置決めされる。この位置において、ナット20の側面又はボルト10の側面と、座金30がナット20の座面又はボルト10の座面と重なる表面とには、連続するライン状の目印22,14,32が設けられている。目印22,14,32は、図示したような3本設けることによって、どの方向からも目視することができるようにされている。ただし、目印22,14,32は、1本設けてもよいし、六角ナット20や六角ボルト10の場合は6本以下の複数本設けてもよい。
【0033】
この目印22,14,32は、剥落しないインクを塗布するだけでもよいが、溝を形成し、この溝内にインクを塗布することにより、インクが剥落しにくく、また、剥落したとしても、溝によって目印22,14,32としての機能を維持することができるようにされていることが好ましい。
【0034】
なお、座金30は、被締結部材2と重なる裏面に微小な凹凸形状などの滑止め加工(図示せず)が施されていることが好ましい。
【0035】
ここで、この締結具の使用方法について説明する。図1に示すように突起部21をナット20に設けた締結具においては、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1及び被締結部材2上の座金30を貫通し、ナット20が締結される。また、図3に示すように突起部13をボルト10に設けた締結具においては、ボルト10の軸11が被締結部材2上の座金30及び被締結部材2の貫通穴1を貫通し、ナット20が締結される。
【0036】
ナット20の突起部21及びボルト10の突起部13は、当初、座金30から離間して締められるが、締結直前において、衝止部31内に係入する。そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結されると、突起部21,13が衝止部31の一端で衝止した状態となる。すると、図2に示すように、ナット20のライン状の目印22と座金30のライン状の目印32とが連続し、あるいは、図4に示すように、ボルト10のライン状の目印14と座金30のライン状の目印32とが連続する。
【0037】
そして、座金30が被締結部材2に例えば食い込んだ状態とされ、また滑止め加工されていることにより、座金30が被締結部材2に固定され、ナット20又はボルト10が緩んだとしても、共回りしないようにされている。
【0038】
したがって、ボルト10とナット20は、締結後の定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,14,32が連続していることを目視することにより、ナット20又はボルト10が緩んでいないことを確認することができる。換言すれば、定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,14,32がずれて不連続になっていることを目視すると、ナット20又はボルト10が緩んでいると判断することができる。
【0039】
ここで、第1の実施形態の変形例について図5を参照しながら説明する。この変形例は、第1の突起部21a,13aと第2の突起部21b,13bとを設けたことを特徴としている。図5(a)に示すように、第1の突起部21a,13aが衝止部31の一端で衝止している状態において、第2の突起部21b,13bが衝止部31の一端で衝止しないように設けられる。
【0040】
そして、ナット20又はボルト10を締結するときに、第1の突起部21a,13aが衝止部31の一端を引っ張る状態となって、ナット20又はボルト10と座金30とが共回りする。このようにすることによって、ナット20又はボルト10は、座金30の衝止部31の位置に関係なく、回すことができる。そして、所定のトルクで締結する直前において、図5(b)に示すように、第1の突起部21a,13aが破断し、第2の突起部21b,13bが衝止部31の一端で衝止し、2本のライン状の目印22,14,32が連続するようにされている。
【0041】
なお、前記の第1の実施形態では、ナット20又はボルト10に突起部21,13を設け、座金30に衝止部31を設けた場合について説明したが、座金30に突起部を設け、ナット20又はボルト10に衝止部を設けてもよい。
【0042】
〔第2の実施形態〕
本発明に係る締結具の第2の実施形態について図6及び図7を参照しながら説明する。この締結具も、ボルト10、ナット20、及び座金30を備えたものとされている。なお、図6及び図7も実施の一例であって、実際には天地が逆転して実施される場合や縦向きの姿勢で実施される場合があることはいうまでもないが、ここでは図面に即して説明する。
【0043】
また、図6及び図7に示した第2の実施形態は、貫通穴1を空けた被締結部材2の下側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が下端に位置し、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を上向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の上側で締結され、被締結部材2とナット20との間に座金30を挟んだ締結具であって、ナット20に突起部21を設けたものを示している。
【0044】
ただし、第2の実施形態においても、第1の実施の形態の図3及び図4に示したように、貫通穴1を空けた被締結部材2の上側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が上端に位置し、この頭部12と被締結部材2との間に座金30が挟まれ、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を下向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の下側で締結され、ボルト10の頭部12に突起部に設けた締結具とすることもできるが、この締結具についての図示は省略する。
【0045】
第2の実施形態は、突起部21をナット20の側面(又は図示しないボルト10の頭部12の側面)に設けたことを特徴としている。こうすることによって、突起部21を第1の実施形態よりも大きくし、強度を上げることができる。そして、この突起部21は、ナット20の座面又はボルト10の頭部12の座面よりも突出した拡大部21cを設けたものとされている。
【0046】
また、座金30には、ナット20の座面又はボルト10の座面と重なる表面に、前記突起部21の拡大部21cを係入する窪んだ衝止部31が設けられている。この衝止部31は、図示したような円弧形状ないしC字形状に設けられる。また、当然ながら、衝止部31の径方向の幅は、突起部21の突出した長さよりも長くされている。
【0047】
なお、この締結具においても、複数の突起部21を設け、この突起部21以上の数の衝止部31を設けてもよい。
【0048】
そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結されると、突起部21が衝止部31の一端で衝止され、ナット20と座金30とが位置決めされる。この位置において、ナット20の側面(又は図示しないボルト10の頭部12の側面)と、座金30がナット20の座面と重なる表面に連続するライン状の目印22,32が設けられている。目印22,32は、図示したような3本設けることによって、どの方向からも目視することができるようにされている。ただし、目印22,32は、1本設けてもよいし、複数本設けてもよい。
【0049】
その他、突起部21を設ける手段や目印22,32の形態、座金30の裏面の形態は、第1の実施形態と同じであるため、その説明は割愛し、次に使用方法について説明する。
【0050】
ナット20又はボルト10を回し、所定のトルクで締結される直前において、突起部21の拡大部21cが座金30の衝止部31に入る。そして、所定のトルクで締結された状態において、図7に示すように、突起部21の拡大部21cが衝止部31の一端に衝止する。この状態において、ナット20(又は図示しないボルト10)のライン状の目印22と座金30のライン状の目印32とが連続する。
【0051】
そして、座金30が被締結部材2に例えば食い込んだ状態とされ、また滑止め加工されていることにより、座金30は、被締結部材2に固定され、緩んだナット20又はボルト10と共回りしないようにされている。
【0052】
したがって、ボルト10とナット20は、締結後の定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32が連続していることを目視することにより、緩んでいないことを確認することができる。換言すれば、定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32がずれて不連続になっていることを目視すると、ナット20又はボルト10が緩んでいると判断することができる。
【0053】
なお、この第2の実施形態においても、図5に示した第1の実施形態の変形例のように、第1の突起部と第2の突起部とを設け、第1の突起部によって座金30が共回りし、所定のトルクが加えられる直前に第1の突起部が破断し、所定のトルクで締結された状態において、第2の突起部が衝止部31の一端で衝止するようにしてもよい。
【0054】
〔第3の実施形態〕
本発明に係る締結具の第3の実施形態について図8及び図9を参照しながら説明する。この締結具も、ボルト10、ナット20、及び座金30を備えたものとされている。なお、図8及び図9も実施の一例であって、実際には天地が逆転して実施される場合や縦向きの姿勢で実施される場合があることはいうまでもないが、ここでは図面に即して説明する。
【0055】
また、図8及び図9に示した第3の実施形態は、貫通穴1を空けた被締結部材2の下側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が下端に位置し、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を上向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の上側で締結され、被締結部材2とナット20との間に座金30を挟んだ締結具であって、ナット20に突起部21を設けたものを示している。
【0056】
ただし、第3の実施形態においても、第1の実施の形態の図3及び図4に示したように、貫通穴1を空けた被締結部材2の上側にボルト10が配置され、軸11の一端に設けられた頭部12が上端に位置し、この頭部12と被締結部材2との間に座金30が挟まれ、ボルト10の軸11が被締結部材2の貫通穴1を下向きに貫通し、ナット20が被締結部材2の下側で締結され、ボルト10の頭部12に突起部に設けた締結具とすることもできるが、この締結具についての図示は省略する。
【0057】
第3の実施形態は、突起部21をナット20の側面(又は図示しないボルト10の頭部12の側面)に設けたことを特徴としている。こうすることによって、突起部21を第1の実施形態よりも大きくし、強度を上げることができる。ただし、第3の実施形態の突起部21は、第2の実施形態の突起部21と異なり、座面よりも突出しないようにされている。
【0058】
そして、座金30には、ナット20の座面(又は図示しないボルト10の座面)と重なる表面に、前記突起部21と衝止するように突出した衝止部31が設けられている。この衝止部31は、ナット20又はボルト10の締結の邪魔にならないようにできるだけ低く設けられることが好ましい。
【0059】
なお、この締結具においても、複数の突起部21を設け、この突起部21以上の数の衝止部31を設けてもよい。
【0060】
そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結された状態で、突起部21が衝止部31の一端(一方の端面)で衝止され、ナット20と座金30とが位置決めされる。この位置において、ナット20の側面と、座金30がナット20の座面と重なる表面に連続するライン状の目印22,32が設けられている。目印22,32は、図示したような3本設けることによって、どの方向からも目視することができるようにされている。ただし、目印22,32は、1本設けてもよいし、複数本設けてもよい。
【0061】
その他、突起部21を設ける手段や目印22,32の形態、座金30の裏面の形態は、第1の実施形態と同じであるため、その説明は割愛し、次に使用方法について説明する。
【0062】
ナット20又はボルト10は、締結のために回されるが、所定のトルクで締結される直前まで、突起部21が衝止部31に衝突しないようにされている。そして、ナット20又はボルト10が所定のトルクで締結された状態において、図9に示すように、突起部21が衝止部31の一端で衝止され、ナット20(又は図示しないボルト10の)ライン状の目印22と座金30のライン状の目印32とが連続する。
【0063】
そして、座金30が被締結部材2に例えば食い込んだ状態とされ、また滑止め加工されていることにより、座金30が被締結部材2に固定され、緩んだナット20又はボルト10と共回りしないようにされている。
【0064】
したがって、ボルト10とナット20は、締結後の定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32が連続していることを目視することにより、ナット20又はボルト10が緩んでいないことを確認することができる。換言すれば、定期点検時などにおいて、このライン状の目印22,32がずれていることを目視すると、ナット20又はボルト10が緩んでいると判断することができる。
【0065】
なお、この第3の実施形態においても、図5に示した第1の実施形態の変形例のように、第1の突起部と第2の突起部とを設け、第1の突起部によって座金30が共回りし、所定のトルクが加えられる直前に第1の突起部が破断し、所定のトルクで締結された状態において、第2の突起部が衝止部31の一端で衝止するようにしてもよい。
【0066】
〔他の実施形態〕
第1の実施形態ないし第3の実施形態において、座金30の裏面に滑止め加工が施されていると説明したが、座金30の裏面が重なる被締結部材2の摩擦抵抗が大きなものとされている場合は、座金30の裏面に滑止め加工していないものを使用してもよい。
【0067】
また、第1の実施形態ないし第3の実施形態において、ナット20又はボルト10の一方に突起部21,13を設けた締結具について説明したが、ナット20とボルト10の両方に突起部21,13を設けたものとしてもよい。
【0068】
また、ナット20は、狭義のボルト10でなく、ネジやビスなどに螺合されるものに使用することができ、ボルト10は、ナット20でなく、被締結部材2の貫通穴1に雌ネジを形成したものに螺合して使用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
10……ボルト
11……軸
12……頭部
13……突起部
13a…第1の突起部
13b…第2の突起部
14……目印
20……ナット
21……突起部
21a…第1の突起部
21b…第2の突起部
22……目印
30……座金
31……衝止部
32……目印
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、
ボルトの座面、ナットの座面、又は座金に1個又は複数個の突起部又は衝止部が設けられ、座金、ボルトの座面、又はナットの座面に1個又は複数個の衝止部又は突起部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴とする締結具。
【請求項2】
軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、
ボルトの頭部の側面及び/又はナットの側面に1個又は複数個の突起部が設けられ、座金がボルトの座面及び/又はナットの座面に重なる表面に前記突起部を係入する窪んだ衝止部又は前記突起部を衝止する突出した衝止部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴とする締結具。
【請求項3】
前記座金には、ボルト又はナットの座面と重ならない裏面に滑止め加工が施されていることを特徴とする請求項1又は2記載の締結具。
【請求項4】
前記突起部は、第1の突起部と第2の突起部とを設けたものとされ、第1の突起部が衝止部の一端で衝止し、所定のトルクで締結されることによって破断した後、第2の突起部が衝止部の一端で衝止するように設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の締結具。
【請求項1】
軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、
ボルトの座面、ナットの座面、又は座金に1個又は複数個の突起部又は衝止部が設けられ、座金、ボルトの座面、又はナットの座面に1個又は複数個の衝止部又は突起部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴とする締結具。
【請求項2】
軸の一端に頭部を有するボルト、及び/又はボルトに螺合するナット、及びボルトの座面又はナットの座面に重ねられる座金が備えられている締結具において、
ボルトの頭部の側面及び/又はナットの側面に1個又は複数個の突起部が設けられ、座金がボルトの座面及び/又はナットの座面に重なる表面に前記突起部を係入する窪んだ衝止部又は前記突起部を衝止する突出した衝止部が設けられ、ボルト又はナットが締結され、前記突起部が前記衝止部の一端で衝止した状態で、ボルトの頭部の側面と座金とに連続するライン状の目印、及び/又はナットの側面と座金とに連続するライン状の目印が設けられていることを特徴とする締結具。
【請求項3】
前記座金には、ボルト又はナットの座面と重ならない裏面に滑止め加工が施されていることを特徴とする請求項1又は2記載の締結具。
【請求項4】
前記突起部は、第1の突起部と第2の突起部とを設けたものとされ、第1の突起部が衝止部の一端で衝止し、所定のトルクで締結されることによって破断した後、第2の突起部が衝止部の一端で衝止するように設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の締結具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−241865(P2011−241865A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112565(P2010−112565)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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