説明

編地編成方法

【課題】 柄出しの可能性を広げることができる編地編成方法を提供する。
【解決手段】 地編地2と柄パターン4,5とを有する編地を編成するための方法であって、柄パターン4,5が少なくとも1つの柄糸3によって編成され、柄糸3が複数の位置で地編地2に編込まれ、少なくとも第1位置と第1位置6に続く第2位置7との間で柄糸3が地編地2に編込まれず、柄糸3が第1位置6と第2位置7との間で延長されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの柄糸によって柄が編成され、柄糸が複数の位置で地編地に編込まれ、少なくとも第1位置と第1位置に続く第2位置との間で前記柄糸が地編地に編込まれない、地編地と柄とを有する編地を編成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柄出し編地を編成するとき、一般的に地編地は、例えば鎖編み‐挿入編み組織によって編成される。地編地の編成時、付加的に1つまたは複数の柄糸が使用され、この柄糸は、柄ガイドバーによって給糸されて、地編地に柄を形成する。(例えば特許文献1及び2参照)
【特許文献1】独国特許発明10142948号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0530632号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
柄パターンが編地編成方向において相互に間隔をあけて配置される場合、柄糸が編成されない2つの柄パターンの間において、柄糸が編込まれないようにしなければならない。柄糸が地編地に編込まれないための1つの方法としては、対応する柄糸を第1柄パターンの終端で切断し、それに続く第2柄パターンの初端にて再び柄糸を地編地に編込む方法がある。しかしながらこのような方法は、比較的手間がかかる。また別の方法として、第1柄パターン及び第2柄パターンの両方の位置の間、つまり第1柄パターンの終端と第2柄パターンの初端との間で、これら2つの柄パターンを形成する柄糸を浮かせることも知られている。この場合、対応する柄糸は、地編地の表面に現れるが、地編地から再び取り除くのにかなり高いコストがかかる。
【0004】
本発明の課題は、柄出しの可能性を広げることができる編地編成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、冒頭に指摘した種類の方法において、柄糸は、第1位置と第2位置との間で延長されることによって解決される。
【0006】
つまり、柄糸は、第1位置と第2位置との間で、通常の組織編成時に柄糸がわたされる長さよりも長く残される。基本的に柄糸は、通常の長さで地編地に編成されるものであるが、本発明では柄糸が長めに取られる、つまり延長されることにより、柄糸が地編地から明確に浮かび上がり、これによりもはや柄糸が地編地に編み込まれない。そのことから、柄の造形に使用して、別の視覚的印象を生じさせる。
【0007】
主に、前記柄糸は、編込み後に前記第1位置で固定保持され、その後前記柄糸は、前記第2位置で前記地編地に編込まれることが好ましい。地編地が第1位置と第2位置との間で編地編成方向に前進しながら編成されるので、柄糸が固定保持されることにより該柄糸が自動的に延長される。これは、第1位置及び第2位置の間に配置される柄糸部分を比較的長く延長するのに、特別簡単な方法である。
【0008】
その際、好ましくは、前記柄糸は、締付けられて固定保持されることが好ましい。締付けて固定保持することにより、柄糸に比較的強い力がかかると、柄糸が固定保持される位置から外れる。締付けて固定保持されることにより、柄糸が徐々にその固定保持位置から外れ、所定の過剰長さに達すると、付加的措置を講ずることなく、柄糸が固定保持されている状態から解放される。
【0009】
好ましくは、前記柄糸は、グリッパーで締付機構に引き入れられ、その後に前記グリッパーから外されることである。つまり、グリッパーの役目は、柄糸を延長しかつ締付機構内に引き入れることである。その後、柄糸が締付機構内で締付けて固定保持されると、グリッパーによる固定保持は、もはや必要でなくなる。最も単純な場合、グリッパーは、フックとして構成しておくことができ、柄糸は、このフックの周りに柄ガイドバーによって給糸される。柄糸は、締付機構内で固定保持されたとき、柄糸は、グリッパーの比較的単純な動きによって、グリッパーから外れることができる。
【0010】
好ましい1つの構成として、前記第1位置及び第2位置は、隣接するコース内に存在していることである。その場合、いわば2つのコースの間にループが形成される。こうして、2つの独立する柄パターンの間の距離が最短距離、つまり1コースの距離を実現することもできる。そのことからごく繊細な引き外しが可能となり、こうして柄出しの可能性が広がる。
【0011】
主に、前記延長された柄糸は、前記第1位置及び第2位置において切断されることが好ましい。これにより柄糸が橋絡されていない領域が生じて、各柄パターンが互いに分離された編地を簡単に実現することができる。第1位置及び第2位置の間で柄糸が延長されているので、切断することは比較的簡単である。例えば、空気流を地編地に通して、延長された柄糸の部分を地編地から浮かび上がらせることができる。こうしてから地編地のすぐ上に案内された切断機構によって、柄糸を第1位置及び第2位置において切断することができる。このような切断方法の代わりに、前記柄糸を備えた地編地を方向転換ロールに巻掛けることもでき、方向転換ロールの領域に対応する切断工具を配置して、延長された柄糸は、方向転換時に方向転換ロールによってその半径方向外方に動かされ、延長された柄糸は切断工具によって切断することができる。これらすべてのことから、比較的僅かな追加コストで新たな柄形成の可能性が得られる。
【0012】
前記柄糸は、前記第2位置で編込み後、前記第2位置から1コース以上離間した第3位置で編込まれ、切断後に前記柄糸が前記第2位置において前記地編地から外されるようにすることが好ましい。こうして柄糸の一部分が第2位置と第3位置との間で独立する。なお1つの位置、つまり第2位置で地編地に編込まれているだけの柄糸は、一般に僅かな力で保持されるだけであり、この柄糸は、地編地から容易に引き出すことができる。これにより地編地から一部分が浮いた比較的長い柄糸が提供される。この柄糸の一部分は、第2位置から第3位置に至る距離に一致した長さを有する。この柄糸の一部分は、もはや長さを長くしておく必要はないが、しかし長めに形成することもできる。その場合、柄糸の一部分は、なお片側だけで、つまり第3位置で保持されるので、柄糸の一部分は、他の柄形成のために使用することができる。
【0013】
その際、好ましくは、前記柄糸は、前記第3位置において切断されることである。いずれにしても柄糸は、なおその一部分の終端だけで保持されるので、柄糸の一部は、地編地から容易に浮かび上げることができ、切断工具を食い込ませるのに十分な空間が用意されることになる。
【0014】
主に、延長させた前記柄糸の長さは、15mm以上40mm以下の範囲内であることが好ましい。20mm以上30mm以下の範囲内の延長は、しばしば、両方の位置の間における糸の切断を簡単にするのに十分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面と合せて好ましい実施例に基づいて本発明が詳しく説明される。
【0016】
図1が示す編地1は、鎖編み‐挿入編み組織によって形成される地編地2を有する。この地編地2の編成するために、以下の組織で作動する2つの地ガイドバーが使用される。
地ガイドバー1:1‐0/0‐1
地ガイドバー2:0‐0/2‐2
地編地2の編成時、編地編成方向において、相互に距離をあけて連続する柄パターン4,5を形成するために複数の柄糸が一緒に編込まれる。柄パターン4,5は、半ピッチまたは全ピッチにおいて、ジャカードガイドバーの地編地(地組織)で、例えばトリコット編または平編、開き目または閉じ目、ステッチまたはループを用いて形成される。幾つかの柄パターン4,5は、ジャカードガイドバーなしでも、つまり柄ガイドバーだけで編成することができる。
【0017】
柄パターン4の形成後、柄糸3は、オーバーラップされるのでなく、地編地2に対し浮かされる(浮き部分A)。この動作は、ジャカードガイドバーでは、それ自体公知のオーバーラップと逆の動きによって実現され、柄ガイドバーだけで形成する場合、オーバーラップを一時的に止める(つまりアンダーラップさせる)ことによって実現される。
【0018】
柄出しを再び開始して柄パターン5を形成する前に、柄糸3は、グリッパーによって把持されて延長(引き出され)され、そして締付機構に引き入れられる(浮き部分B)。なおグリッパーは、例えば最も簡単なフックで構成される。グリッパーへの柄糸3の挿入は、ジャカードガイドバー(又は柄ガイドバー)のアンダーラップ変位で行うことができる。柄糸3は、グリッパーの動作によって一定の長さ、例えば25mmだけ引き出される。ただしこの長さに限定するものではなく、15mm以上40mm以下の範囲内が好ましく、特に好ましいのは、20mm以上30mm以下の範囲内である。
【0019】
柄出しに必要な柄糸3は、オーバーラップを実行し、地編地2に再び編込まれる。グリッパーの前記把持によって、柄糸3の浮き糸部分の長さが長くなる(変位D)。つまり、図1に示す柄糸3の第1位置6(本実施形態では柄パターン4の終端位置)と第2位置7(本実施形態では柄パターン5の初端位置)とで柄糸3が地編地2に編込まれ、それらの間では柄糸3が地編地2に編込まれず、第1位置6と第2位置7との間において、柄糸3が通常の組織を編成するときに必要とする柄糸3の長さに比べて長くなるように形成(つまり延長)されており、例えば前記25mmだけ長くなっていることが分かる。
【0020】
第2位置7において柄糸3を地編地2に編込んだ後、柄糸3がグリッパーから外され、柄パターン5が形成される。この柄パターン5は、柄糸3浮き糸部分が形成されるように引き出した後に柄糸3が締付機構によって締付けて固定保持され、前記柄糸3を地編地2に編込んだ後にグリッパーを動かしてグリッパーから引き出すことによって簡単に実現することができる。締付機構で挟み込まれた柄糸は、地編地2を通って編地編成方向に強制的に地編地2から引き出されるまで、なお幾つかのコースにわたって締付機構内で保持される。このように締付けて固定保持されることにより、柄糸3が徐々にその固定保持位置から外れ、所定の過剰長さに達すると、付加的措置を講ずることなく、柄糸が固定保持されている状態から解放される。また何コースにわたって締付けて固定保持することにより、柄糸3、つまり柄糸3によって形成される「ループ」が編成工程で不所望に編込まれることが防止される。
【0021】
グリッパーの把持動作によってコース毎にループ(C)を形成することも可能である。これにより、独立した柄パターン4,5の間において最短距離、つまり1コースの距離で柄糸3の延長を実現することができる。ループCと延長された柄糸3の浮き部分Aとは、地編地2から明確に浮かび上がる。従って、柄パターン4,5間の柄糸3は、もはや地編地2に当接しない。このように編組織を編成することにより、付加的な作業工程において、空気流を地編地2に通して柄糸3の延長された部分を地編地2から浮かび上がらせ、地編地2のすぐ上に案内された切断機構によって、この地編地2から浮いた柄糸3の部分を切断して切り離して(切断箇所E)、独立した柄パターン4,5を得るか、又はこの切り離した部分を柄効果として利用することができる。柄を形成するのに有意義である場合、延長された柄糸3の浮き部分AまたはループCを切り離すことなく、地編地2に残すことも可能である。
【0022】
図2に示すように、柄糸を選択的に給糸して形成される柄組織で常にループCを形成することもでき、その際、柄糸3は、ループCが形成されることにより延長される。前述した形態と同様に、これらの柄組織は、付加的な作業工程で、形成されたループCを切り離す際に利用することができる。必要である場合、そのときには、浮いた柄糸3の浮き部分Aを地編地2から引き出す、又は切断する代わりに、そのまま残して柄効果として利用することができる。浮き出した柄糸3の浮き部分Aは、切断箇所EにおいてループCの切断後、事実上の各柄パターン4,5の終端で、地編地2に単純な結合だけで保持されるので、柄糸3の浮き部分Aは、比較的簡単に引き出すことができる。
【0023】
つまり、ここでも柄糸3は、それが地編地2に編込まれる第1位置6と第2位置7との間において地編地2に別段編込まれない。ループCを形成することによって、柄糸3は、第1位置6(本実施形態では柄パターン4の終端位置)と第2位置7(本実施形態では柄パターン5の初端位置)との両方の間で延長され、切断箇所Eで問題なく切断することができる。
【0024】
図3に示す組織では、柄糸3が地編地2に編込まれる第1位置6(本実施形態では柄パターン4の終端位置)と第2位置7(本実施形態では第1位置6と後述する第3位置8との間の位置)との間で、柄糸3が長めに給糸されてループCとされ、このループCにより柄糸3の長さが延長される。ループCにおいて延長された柄糸3は、次に(二箇所の)切断箇所Eで問題なく切断することができる。これにより延長されない部分Aが残り、この部分は、第3位置8(本実施形態では柄パターン5の初端位置)まであり、柄糸3はこの第3位置8で再び地編地2に編込まれている。第3位置8と第2位置7との間に一般に複数のコースが介在している。
【0025】
柄糸3が切断箇所Eで切断された後に、柄糸3がループCから切り離されている場合、延長されない浮き部分Aは第2位置7において問題なく地編地2から外すことができる。その後、柄糸3は(柄パターン4,5における残りの結合を除けば)、基本的になお第3位置8で地編地2と結合されているだけである。その場合、延長されない部分Aは、第2位置7において問題なく地編地2から引き出され、第3位置8で地編地2と結合して柄出し用の他の造形の可能性をもたらすか、または位置Fで切断されて、隣接する柄パターン4,5を互いに分離させるかのいずれかとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】柄を有する第1編地の編組織図である。
【図2】柄を有する第2編地の編組織図である。
【図3】柄を有する第3編地の編組織図である。
【符号の説明】
【0027】
1 編地
2 地編地
3 柄糸
4 柄パターン
5 柄パターン
6 第1位置
7 第2位置
8 第3位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの柄糸によって柄が編成され、柄糸が複数の位置で地編地に編込まれ、少なくとも第1位置と第1位置に続く第2位置との間で前記柄糸が地編地に編込まれない、地編地と柄とを有する編地を編成するための方法であって、
前記柄糸は、前記第1位置と前記第2位置との間で延長されることを特徴とする編地編成方法。
【請求項2】
前記柄糸は、編込み後に前記第1位置で固定保持され、その後前記柄糸は、前記第2位置で前記地編地に編込まれることを特徴とする、請求項1に記載の編地編成方法。
【請求項3】
前記柄糸は、締付けられて固定保持されることを特徴とする、請求項2に記載の編地編成方法。
【請求項4】
前記柄糸は、グリッパーで締付機構に引き入れられ、その後に前記グリッパーから外されることを特徴とする、請求項3に記載の編地編成方法。
【請求項5】
前記第1位置及び第2位置は、隣接するコース内に存在していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の編地編成方法。
【請求項6】
前記延長された柄糸は、前記第1位置及び第2位置において切断されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の編地編成方法。
【請求項7】
前記柄糸は、前記第2位置で編込み後、第2位置から1コース以上離間した第3位置で再び編込まれ、切断後に前記柄糸が前記第2位置において前記地編地から外されることを特徴とする、請求項6に記載の編地編成方法。
【請求項8】
前記柄糸は、前記第3位置において切断されることを特徴とする、請求項7に記載の編地編成方法。
【請求項9】
延長させた前記柄糸の長さは、15mm以上40mm以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の編地編成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−127738(P2008−127738A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302442(P2007−302442)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(591008465)カール マイヤー テクスティルマシーネンファブリーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフツング (45)
【氏名又は名称原語表記】KARL MAYER TEXTILMASCHINENFABRIK GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【Fターム(参考)】