説明

編成部材のかしめ構造

【課題】かしめ固定による凹溝部内での基部の上下方向の位置ずれを防止して精度を向上させることができる編成部材のかしめ構造を提供する。
【解決手段】針本体11の一側面に設けた凹溝部14に対しこの凹溝部14の上下幅よりも上下幅が小さい羽根2の基部21を嵌め込み、凹溝部14の上端縁及び下端縁に対し凹凸状部分W1,W11により段差を有するかしめ具Wによって、凹溝部14の上端縁を凸状部分W1の押圧により塑性変形させて基部21の下端を凹溝部14の下端に押し付けた状態で基部21の上端をかしめ固定するとともに、基部21の下端を、凹溝部14の下端縁を凹状部分W11の押圧により塑性変形させてかしめ固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針床上に収容されて編針の編成を行う編成部材の構成要素同士をかしめ固定するかしめ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、横編機において基体側部材に対して板状部材がかしめ固定された編成部材が使用されている。具体的には、特許文献1に示すように、べら針の針本体(基体側部材)に設けた凹溝部に対し、羽根(板状部材)の基部を嵌め込んでかしめ固定したものがある。また、特許文献2に示すように、複合針の針本体にスライド自在に支持されるスライダー本体(基体側部材)に設けた凹溝部に対し、ブレード(板状部材)の基端を嵌め込んでかしめ固定したスライダーがある。更に、特許文献3に示すように、トランスファージャック本体(基体側部材)に設けた凹溝部に対し、編地のループを係止する係止片(板状部材)の基部を嵌め込んでかしめ固定したトランスファージャックなどもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−161873号公報
【特許文献2】特許2946323号公報
【特許文献3】特許2604677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したような板状部材の基部は、基体側部材に設けられる凹溝部に対し円滑に嵌め込まれるように、凹溝部の幅よりも幅が若干(実質的には公差の範囲程度)小さめに形成されている。このため、基部の幅方向一側端を凹溝部の幅方向一側端に位置決めした状態で、凹溝部の幅方向一側縁及び幅方向他側縁をかしめ具の押圧により同時に塑性変形させて基部の幅方向一側端及び幅方向他側端をかしめ固定すると、板状部材の取付位置にばらつきが生じ、編成部材の精度が悪化してしまう。これは、凹溝部の幅方向一側縁及び幅方向他側縁が同時に塑性変形するため、凹溝部の幅方向一側縁での塑性変形によって基部の幅方向一側端が凹溝部の幅方向一側端から離れて位置ずれしてしまうからである。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、かしめ固定による凹溝部内での基部の幅方向の位置ずれを防止して精度を向上させることができる編成部材のかしめ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、ニードルベッド又は補助ベッドに収容されて編成に用いられる編成部材の基体側部材に設けられた凹溝部に対し当該凹溝部の幅よりも幅が小さい板状部材の基部を嵌め込んだ状態で、当該基部の幅方向一側端及び幅方向他側端をそれぞれかしめ固定する編成部材のかしめ構造を前提とする。そして、前記基部を嵌め込んだ前記凹溝部の幅方向一側縁及び幅方向他側縁に対し凹凸状部分により段差を有するかしめ具によって、前記凹溝部の幅方向他側縁を前記凸状部分の押圧により塑性変形させて前記基部の幅方向一側端を前記凹溝部の幅方向一側端に押し付けた状態で前記基部の幅方向他側端をかしめ固定するとともに、前記基部の幅方向一側端を、前記凹溝部の幅方向一側縁を前記凹状部分の押圧により塑性変形させてかしめ固定することを特徴としている。
【0007】
また、前記基部の幅方向一側端のかしめ固定部を、その幅方向他側端のかしめ固定部における前記凹溝部の長さ方向の他側かしめ領域よりも短い一側かしめ領域に設定するとともに、前記一側かしめ領域における前記凹溝部の幅方向と直交する長さ方向の中心を通る中心線に対して前記他側かしめ領域を線対称に設定していてもよい。
【0008】
更に、前記基部に、前記凹溝部の長さ方向一側に向かって延びる第1基部部分と、この第1基部部分の先端より前記凹溝部の幅方向一側へ延びる第2基部部分と、この第2基部部分の先端より前記凹溝部の長さ方向他側に向かって反転する第3基部部分とを設ける。そして、前記基部のかしめ固定部を、前記凹溝部の長さ方向他側端に設けられたガイド面に前記第2基部部分を当接させた状態で、前記第1基部部分の基端を前記凹溝部の長さ方向他側端においてかしめ固定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上、要するに、基部を嵌め込んだ凹溝部の幅方向他側縁をかしめ具の凸状部分によって塑性変形させて基部の幅方向一側端を凹溝部の幅方向一側端に押し付けた状態で基部の幅方向他側端をかしめ固定するとともに、凹溝部の幅方向一側縁をかしめ具の凹状部分によって塑性変形させて基部の幅方向一側端をかしめ固定している。これにより、かしめ固定する際に基部の幅方向一側端が凹溝部の幅方向一側縁の塑性変形によって凹溝部の幅方向一側端から離れることがなく、凹溝部内でのかしめ固定による基部の幅方向の位置ずれを防止して編成部材の精度を向上させることができる。
【0010】
また、基部の幅方向一側端の一側かしめ領域よりも長い幅方向他側端の他側かしめ領域を、長さ方向の中心線に対して線対称に設定することで、他側かしめ領域を塑性変形した際に基部の幅方向一側端が凹溝部の幅方向一側端に集中的に押し付けられ、かしめ領域が短い基部の幅方向一側端を精度よくかしめ固定することができる。
【0011】
更に、基端を凹溝部の長さ方向他側端でかしめ固定した第1基部部分の先端より凹溝部の幅方向へ延びる第2基部部分を凹溝部の長さ方向他側端のガイド面に当接させることで、長さ方向のかしめ領域が短い基部の幅方向一側端を支点とする回転をガイド面との当接により規制しつつ当該基部を精度よくかしめ固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る編成部材のかしめ構造を用いたべら針の針本体の歯口側部分を一側方から見た側面図である。
【図2】図1の針本体の歯口側部分を下方から見た一部切り欠き底面図である。
【図3】図1の羽根の基部の前側部分を一側方から見た拡大側面図である。
【図4】図3の羽根の基部の前側部分でのかしめ具によるかしめ固定の直前状態を示す縦断正面図である。
【図5】図3の羽根の基部の前側部分でのかしめ具によるかしめ固定状態を示す縦断正面図である。
【図6】図3の羽根の基部の前側部分でのかしめ具によるかしめ固定を終えた状態を示す縦断正面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る編成部材のかしめ構造を用いた複合針のスライダー本体の歯口側部分を一側方から見た側面図である。
【図8】図7の複合針の歯口側部分を上方から見た平面図である。
【図9】図7のブレードの基部付近を一側方から見た側面図である。
【図10】図9の基部の第1基部部分付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の横編機の好適な実施の形態を図面と共に以下詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る編成部材のかしめ構造を用いたべら針の針本体の歯口側部分を側方から見た側面図、図2は針本体の歯口側部分を下方から見た一部切り欠き底面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、編針としてのべら針1は、図示しない針溝内において進退自在に収容されている。このべら針1の針本体11(基体側部材)の進退方向前端部(図1及び図2では右端部)にはフック12が設けられ、針本体11の歯口g側(図1及び図2では右側)への進出により編糸の供給を受ける。フック12は、べら13によって開閉される。針本体11のフック12から少し後退した位置には、目移し時に編目渡し側で編目を保持する板状部材としての羽根2が設けられている。この羽根2と針本体11とによって編成部材が構成されている。なお、以降の説明において、進退方向を前後方向と称することとする。
【0016】
羽根2は、針本体11の前後方向に長い薄板部材よりなり、その一端部(図1及び図2では左端部)に矩形状の基部21を有している。この羽根2の他端部には、針本体11の一側側面(図2では上側面)に対し前後方向中間部が離反するように湾曲する先部22が設けられ、その先端が針本体11の一側面(図2では上側面)に圧接している。また、針本体11の一側面には、基部21を嵌め込む凹溝部14が前後方向へ延びて設けられている。基部21の上端縁には略U字状の切欠23が設けられている一方、この切欠23に上下摺動自在に嵌合する略真円形状の嵌合具15が凹溝部14に設けられている。そして、基部21は、凹溝部14の上下幅よりも上下幅が若干小さく設定され、凹溝部14に嵌め込まれた際に、凹溝部14の上端に隙間S(図3に表れる)が存在している。この隙間Sは、実質的には公差の範囲程度である。また、基部21は、凹溝部14に嵌め込まれた際に、嵌合具15に切欠23が嵌合して凹溝部14内での基部21の前後方向(図3では左右方向)への位置合わせがなされる。
【0017】
また、基部21は、凹溝部14に嵌め込まれた状態で、凹溝部14の前後両側における上下両端縁の上下のかしめ固定部16U,16Dを、後述する凹凸状部分W1、W11により段差を有するかしめ具Wによって、それぞれ塑性変形させてかしめ固定されている。
【0018】
ここで、羽根2の基部21をかしめる手順の一例を図3〜図6に基づいて説明する。
【0019】
図3は羽根2の基部21の前側部分を一側方から見た拡大側面図、図4は羽根2の基部21の前側部分でのかしめ具によるかしめ固定の直前状態を示す縦断正面図、図5は羽根2の基部21の前側部分でのかしめ具によるかしめ固定状態を示す縦断正面図、図6は羽根2の基部21の前側部分でのかしめ具によるかしめ固定を終えた状態を示す縦断正面図である。
【0020】
まず、羽根2の基部21(同一構成となるので、図3では前側部分についてのみ示す)をかしめ固定するに当たり、図4に示すように、基部21を、凹溝部14に嵌め込んだ際に、嵌合具15に切欠23を嵌合させて前後方向へ位置合わせしておく。
【0021】
そして、かしめ固定に用いられるかしめ具Wは、凹溝部14側から見て略矩形状を呈している。また、かしめ具Wは、凹溝部14の前後の上端縁に対して当接する凸状部分W1と、この凸状部分W1より凹設され、凹溝部14の前後の下端縁に対して当接する凹状部分W11とで段差状に一体的に形成されている。凹溝部14の前後の下端縁に対する凹状部分W11の当接が、凹溝部14の前後の上端縁に対する凸状部分W1の当接よりも若干遅れるようになっている。
【0022】
すなわち、図5に示すように、かしめ具Wを進出させた際に、凸状部分W1が凹溝部14の前後の上端縁に先に当接して上側かしめ固定部16Uを押圧により塑性変形させ、この塑性変形によって基部21の下端を凹溝部14の下端に押し付けた状態で基部21の上端をかしめ固定する。このとき、基部21の下端が凹溝部14の下端に押し付けられるので、凹溝部14の下端に対する基部21の下端の位置決めが不要となる。そして、上側かしめ固定部16Uの塑性変形から若干遅れて凹状部分W11が凹溝部14の前後の下端縁に当接し、下側かしめ固定部16Dを押圧により塑性変形させて基部21の下端をかしめ固定する。これにより、かしめ固定する際に基部21の下端が凹溝部14の下端の塑性変形によって凹溝部14の下端から離れることがなく、凹溝部14内でのかしめ固定による基部21の上下方向の位置ずれを防止して羽根2の精度を向上させることができる。
【0023】
その後、図6に示すように、かしめ具Wを後退させ、凸状部分W1及び凹状部分W11によるかしめ固定を終了する。このとき、凸状部分W1及び凹状部分W11は上下のかしめ固定部16U,16Dから同時に離反し、上下のかしめ固定部16U,16Dには、凸状部分W1及び凹状部分W11の当接による凹凸差が生じている。
【0024】
次に、本発明の第2の実施の形態を図7〜図10に基づいて説明する。
図7は編成部材のかしめ構造を用いた複合針のスライダー本体の歯口側部分を一側方から見た側面図、図8はスライダー本体の歯口側部分を上方から見た平面図、図9はブレードの基部付近を一側方から見た側面図、図10はブレードの基部の第1基部部分付近の拡大図である。
【0025】
すなわち、図示しない針溝内において進退自在に収容された編針としての複合針は、図示しない針本体と、図7に示すスライダー4(編成部材)とを備えている。針本体は、その前端部にフック(図示せず)を備えている。また、図8に示すように、スライダー4は、基体側部材としてのスライダー本体41と、針本体の前後方向に延びる溝(図示せず)の内部に摺動自在に支持され、前後方向に長い略同一形状の2枚の弾性板材を重ね合わせた板状部材としてのブレード42a,42bとを備えている。また、ブレード42a,42bの前端部(図7及び図8では右端部)は、針本体のフックの先端に当接するタング43a,43bを有し、フックの先端に対するタング43a,43bの接離によってフックを開閉させている。
【0026】
そして、スライダー本体41の一側面(図7では手前側面)には、前後方向へ延びる凹溝部45が設けられている。この凹溝部45の後端には、当該凹溝部45を連通させるように下方へ切欠いた切欠46が設けられている。この切欠46は、後述する第2基部部分44e,44fの前後方向の幅よりも若干大きな幅に形成されている。
【0027】
また、図9に示すように、ブレード42a,42bの後部に位置する基部44a,44bは、凹溝部45に沿って後方(図9では左方)へ延び、凹溝部45に嵌め込まれる第1基部部分44c,44dと、この第1基部部分44c,44dの先端(図9では左端)より凹溝部45の下方へ延び、切欠46を介して凹溝部45外に導出される第2基部部分44e,44fと、この第2基部部分44e,44fの下端より前方へ向かって反転する第3基部部分44g,44hとを備えている。第2基部部分44e,44fは、凹溝部45の後端に設けられたガイド部50のガイド面50aに当接している。この実施の形態においても、第1基部部分44c,44dは、凹溝部45の上下幅よりも上下幅が若干小さく設定され、凹溝部14に嵌め込まれた際に、凹溝部14の上端に隙間S(図9及び図10に表れる)を存在させている。
【0028】
凹溝部45には、この凹溝部45に沿って前後方向に延び、かつ前後方向中間部に行くに従い凹溝部45から離反するように湾曲する湾曲部材49が収容されている。この湾曲部材49は、その上下幅が第1基部部分44c,44dと同様に凹溝部45の上下幅よりも若干小さめに形成されている。そして、ブレード42a,42bの基部44a,44bは、その第1基部部分44c,44dの間に湾曲部材49の基部49aを挟んだ状態で凹溝部45に嵌め込まれる。この場合、湾曲部材49は、スライダー4に取り付けられた際に、針溝を構成するニードルプレート(図示せず)に対し摺動抵抗を付与してスライダー4の妄動を規制するようにしている。
【0029】
また、第1基部部分44c,44dは、凹溝部45に嵌め込まれた際に第2基部部分44e,44fを切欠46を介してガイド部50のガイド面50aに当接させることによって前後方向への位置合わせがなされる。そして、凹溝部45に基部44a,44bの第1基部部分44c,44dを嵌め込んだ状態で、第1基部部分44c,44dの基端位置の上下に対応する凹溝部45の上下両端縁の上下のかしめ固定部47U,47Dをそれぞれ塑性変形させることで、基部44a,44bの第1基部部分44c,44dのかしめ固定がなされている。また、図10に示すように、下側かしめ固定部47Dは、第1基部部分44c,44dの基端位置の下端が円弧状に形成されて凹溝部45の下端に対し点接触していることにより、上側かしめ固定部47Uの前後方向の上側かしめ領域よりも下側かしめ固定部47Dの前後方向の下側かしめ領域が短くなっている。そして、下側かしめ固定部47Dの下側かしめ領域における凹溝部45の上下方向と直交する前後方向の中心を通る中心線Xに対して上側かしめ固定部47Uの上側かしめ領域が線対称に設定されている。これにより、上側かしめ固定部47Uを塑性変形した際に下側かしめ固定部47Dが凹溝部45の下端に集中的に押し付けられ、かしめ領域が短い第1基部部分44c,44dの基端位置の下端を精度よくかしめ固定できる。
【0030】
ここで、本実施の形態のかしめる手順を具体的に説明する。
まず、ブレード42a,42bの基部44a,44bを、その第1基部部分44c,44dの間に湾曲部材49の基部49aを挟んだ状態で凹溝部45に嵌め込み、第2基部部分44e,44fを切欠46を介してガイド部50のガイド面50aに当接させて前後方向へ位置合わせしておく。これにより、かしめ領域が短い第1基部部分44c,44dの基端位置の下端を支点とする回転をガイド面50aとの当接により規制しつつ当該第1基部部分44c,44dの基端位置を精度よくかしめ固定することが可能となる。
【0031】
そして、かしめ具(図示せず)を用いてかしめ固定する。このかしめ具としては、凹溝部45の下端縁に対し当接する凹状部分と凹溝部45の上端縁に対し当接する凸状部分とが凹凸状を呈して段差状に一体的に形成されたものが用いられ、凹状部分が凸状部分よりも表面積の小さなものとする。
【0032】
つまり、かしめ具を進出させると、凸状部分が凹溝部45の上端縁に先に当接して上側かしめ固定部47Uを押圧により塑性変形させ、この塑性変形によって第1基部部分44c,44dの基端位置の下端を凹溝部45の下端に対し押し付けた状態で第1基部部分44c,44dの上端をかしめ固定する。このとき、第1基部部分44c,44dの基端位置の下端を凹溝部45の下端に対し押し付けることで、凹溝部45の下端に対する第1基部部分44c,44dの基端位置の下端の位置決めが不要となる。そして、上側かしめ固定部47Uの塑性変形から若干遅れて凹状部分が凹溝部45の下端縁に当接し、下側かしめ固定部47Dを押圧により塑性変形させて第1基部部分44c,44dの下端をかしめ固定する。これにより、かしめ固定する際に第1基部部分44c,44dの基端位置の下端が凹溝部45の下端の塑性変形によって凹溝部45の下端から離れることがなく、凹溝部45内でのかしめ固定による基部44a,44bの上下方向の位置ずれを防止してスライダー4の精度を向上させることができる。
【0033】
その後、かしめ具を後退させ、凸状部分及び凹状部分によるかしめ固定を終了する。このとき、凸状部分及び凹状部分は上下のかしめ固定部47U,47Dから同時に離反し、上下のかしめ固定部47U,47Dにおいても、凸状部分及び凹状部分の当接による凹凸差が生じている。
【0034】
なお、前記各実施の形態では、羽根2の基部21を針本体11の凹溝部14に対しかしめ固定したり、ブレード42a,42bの基部44a,44bをスライダー本体41の凹溝部45に対しかしめ固定する場合について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、基体側部材としてのトランスファージャック本体に形成された凹溝部に対し、編地のループを係止する板状部材としての係止片の基部がかしめ固定されてなるトランスファージャック(編成部材)に適用してもよい。
【0035】
また、前記各実施の形態では、羽根2の基部21の下端を針本体11の凹溝部14の下端に、ブレード42a,42bの第1基部部分44c,44dの下端をスライダー本体41の凹溝部45の下端に、それぞれ押し付けた状態でかしめ固定する場合について述べたが、羽根の基部の上端を針本体の凹溝部の上端に、ブレードの第1基部部分の上端をスライダー本体の凹溝部の上端に、それぞれ押し付けた状態でかしめ固定する場合に適用してもよい。その場合には、凹溝部の下側かしめ固定部を塑性変形させて凹溝部の上端に基部の上端を押し付けた状態で基部の下端又は第1基部部分の下端をかしめ固定するとともに、凹溝部の上側かしめ固定部を塑性変形させて基部の上端又は第1基部部分の上端をかしめ固定すればよい。
更に、基部を嵌め込んだ凹溝部の前後方向他側縁を押圧により塑性変形させて凹溝部の前後方向一側端に基部の前後方向一側端を押し付けた状態で基部の前後方向他側端をかしめ固定するとともに、凹溝部の前後方向一側縁を押圧により塑性変形させて基部の前後方向一側端をかしめ固定してもよいのはいうまでもない。
【0036】
また、前記各実施の形態では、かしめ具Wを凸状部分W1と凹状部分W11とで段差状に一体的に形成したが、凸状部分と凹状部分とが段差状に別体で形成されたかしめ具が用いられていてもよい。この場合には、かしめ固定する際の凸状部分と凹状部分との凹溝部の縁部に対するストローク量を同一に設定する必要がある。
【0037】
更に、前記第2の実施の形態では、上側かしめ固定部47Uよりも下側かしめ固定部47Dの前後方向のかしめ領域を短くしたが、上側かしめ固定部を中心線に対して線対称となるように前後方向に複数に分割し、その分割した各上側かしめ固定部を合算する上側かしめ領域が下側かしめ固定部の下側かしめ領域よりも長ければよい。
【符号の説明】
【0038】
1 べら針
11 針本体
14 凹溝部
16U 上側かしめ固定部
16D 下側かしめ固定部
2 羽根
21 基部
4 スライダー
41 スライダー本体
42a,42b ブレード
44a,44b 基部
44c,44d 第1基部部分
44e,44f 第2基部部分
44g,44h 第3基部部分
45 凹溝部
50a ガイド面
47U 上側かしめ固定部
47D 下側かしめ固定部
W かしめ具
W1 凸状部分
W11 凹状部分
X 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードルベッド又は補助ベッドに収容されて編成に用いられる編成部材の基体側部材に設けられた凹溝部に対し当該凹溝部の幅よりも幅が小さい板状部材の基部を嵌め込んだ状態で、当該基部の幅方向一側端及び幅方向他側端をそれぞれかしめ固定する編成部材のかしめ構造であって、
前記基部を嵌め込んだ前記凹溝部の幅方向一側縁及び幅方向他側縁に対し凹凸状部分により段差を有するかしめ具によって、前記凹溝部の幅方向他側縁を前記凸状部分の押圧により塑性変形させて前記基部の幅方向一側端を前記凹溝部の幅方向一側端に押し付けた状態で前記基部の幅方向他側端がかしめ固定されているとともに、前記基部の幅方向一側端が、前記凹溝部の幅方向一側縁を前記凹状部分の押圧により塑性変形させてかしめ固定されていることを特徴とする編成部材のかしめ構造。
【請求項2】
前記基部の幅方向一側端のかしめ固定部が、その幅方向他側端のかしめ固定部における前記凹溝部の長さ方向の他側かしめ領域よりも短い一側かしめ領域に設定されているとともに、前記一側かしめ領域における前記凹溝部の幅方向と直交する長さ方向の中心を通る中心線に対して前記他側かしめ領域が線対称に設定されている請求項1に記載の編成部材のかしめ構造。
【請求項3】
前記基部は、前記凹溝部の長さ方向一側に向かって延びる第1基部部分と、この第1基部部分の先端より前記凹溝部の幅方向一側へ延びる第2基部部分と、この第2基部部分の先端より前記凹溝部の長さ方向他側に向かって反転する第3基部部分とを備えており、
前記基部のかしめ固定部が、前記凹溝部の長さ方向他側端に設けられたガイド面に前記第2基部部分を当接させた状態で、前記第1基部部分の基端を前記凹溝部の長さ方向他側端においてかしめ固定するものである請求項2に記載の編成部材のかしめ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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