緩衝装置
【課題】取付けスペースを小さくできる緩衝装置を得る。
【解決手段】ピストンシリンダー20の先端部20Cに荷重が作用して押圧されると、ケース14に対してピストンシリンダー20が矢印B方向へ移動する。このとき、ピストンロッド24の鍔部34はケース14のロッドストッパ当接部14Eに当接し移動が停止し、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向に移動するようになっている。一方、スライダー36の先端部36Cに荷重が作用して押圧されると、ケース14に対してピストンロッド24が矢印A方向へ移動する。このとき、ピストンシリンダー20の段差部30はケース14のシリンダーストッパ当接部14Dに当接し移動が停止し、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向に移動するようになっている。
【解決手段】ピストンシリンダー20の先端部20Cに荷重が作用して押圧されると、ケース14に対してピストンシリンダー20が矢印B方向へ移動する。このとき、ピストンロッド24の鍔部34はケース14のロッドストッパ当接部14Eに当接し移動が停止し、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向に移動するようになっている。一方、スライダー36の先端部36Cに荷重が作用して押圧されると、ケース14に対してピストンロッド24が矢印A方向へ移動する。このとき、ピストンシリンダー20の段差部30はケース14のシリンダーストッパ当接部14Dに当接し移動が停止し、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向に移動するようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉等の開閉体を開閉する際の衝撃をやわらげるための緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、扉等の開閉体を開閉する際の衝撃をやわらげるための緩衝装置としては、例えば、ピストンダンパーが使用されている。この場合、開閉体を開ける際の衝撃をやわらげるためのピストンダンパーと、開閉体を閉める際の衝撃をやわらげるためのピストンダンパーと、の2つピストンダンパーが必要になる。なお、特許文献1には、ロッド本体が、互いに軸方向へ並んだ第一ロッド及び第二ロッドと、これら第一ロッド及び第二ロッドを互いに軸方向伸縮動作可能に連結する伸縮機構部とからなり、伸縮機構部が、第一ロッド及び第二ロッドのうち、一方のロッドの軸端に設けられたシリンダと、他方のロッドの軸端に設けられると共にシリンダの内周に軸方向所定範囲内で摺動体を介して摺動可能に密嵌されたピストンとを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−275746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開閉体を開閉する際の衝撃をやわらげるための緩衝装置として2つのダンパーを使用すると取付けスペースが大きくなる。なお、特許文献1の装置を使用する場合には、第一ロッド及び第二ロッドを、被取付体と被取付体に取付けられた開閉体とに連結する必要がある。このため、開閉体の開き量が、ロッドのストロークによって制限されてしまうため使用できない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、取付けスペースを小さくできる緩衝装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の緩衝装置は、外周部にシリンダーストッパを設けたピストンシリンダーと、前記ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンと、前記ピストンに連結され外周部にロッドストッパを設けたピストンロッドと、前記ピストンシリンダー中に設けられ前記ピストンを前記ピストンロッドが前記ピストンシリンダーから突出する方向へ付勢するスプリングと、を備えた緩衝手段と、前記緩衝手段を荷重の作用方向に移動可能に収納する緩衝手段支持部材と、前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の一端部側に設けられ、前記シリンダーストッパに当接して、前記ピストンシリンダーの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンシリンダーの移動を止めるためのシリンダーストッパ当接部と、前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の他端部側に設けられ、前記ロッドストッパに当接して、前記ピストンロッドの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンロッドの移動を止めるためのロッドストッパ当接部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の発明の緩衝装置では、緩衝手段が緩衝手段支持部材に荷重の作用方向に移動可能に収納されている。このため、一部が緩衝手段支持部材から突出したピストンシリンダーに荷重が作用した場合には、緩衝手段は緩衝手段支持部材に対して荷重の作用方向に移動する。この際、ピストンロッドの外周部に設けたロッドストッパが、緩衝手段支持部材における緩衝手段の移動方向の一端部側に設けられたロッドストッパ当接部に当接して、ピストンロッドの一部を緩衝手段支持部材から突出させた状態でピストンロッドの移動を止める。この結果、ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンに連結されたピストンロッドに対して、ピストンシリンダーが圧縮方向へスプリングの付勢力に抗して移動する。このため、ピストンシリンダー側に作用する衝撃を緩和できる。
【0008】
一方、一部が緩衝手段支持部材から突出したピストンロッドに荷重が作用した場合には、緩衝手段は緩衝手段支持部材に対して荷重の作用方向に移動する。この際、ピストンシリンダーの外周部に設けたシリンダーストッパが、緩衝手段支持部材における緩衝手段の移動方向の他端部側に設けられたシリンダーストッパ当接部に当接して、ピストンシリンダーの一部を緩衝手段支持部材から突出させた状態でピストンシリンダーの移動を止める。この結果、ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンに連結されたピストンロッドが、ピストンシリンダーに対して圧縮方向へスプリングの付勢力に抗して移動する。このため、ピストンロッド側に作用する衝撃を緩和できる。
【0009】
従って、一つの緩衝手段で、ピストンロッド側に発生する衝撃とピストンシリンダー側に発生する衝撃とを緩和できる。このため、2つの緩衝装置を使用する場合に比べて緩衝装置の取付けスペースを小さくできる。
【0010】
請求項2に記載の発明は請求項1記載の緩衝装置において、前記シリンダーストッパは前記ピストンシリンダーの小径部と大径部との段差部であって、前記緩衝手段支持部材から前記ピストンシリンダーの小径部が突出する。
【0011】
請求項2に記載の発明の緩衝装置では、シリンダーストッパがピストンシリンダーの小径部と大径部との段差部であって、ピストンシリンダーの小径部が突緩衝手段支持部材から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンシリンダーを突緩衝手段支持部材から突出させることができ、緩衝装置の生産性が向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の緩衝装置において、前記ロッドストッパは鍔部であって、前記緩衝手段支持部材から突出する前記ピストンロッドの一部は前記鍔部に連動するスライダーである。
【0013】
請求項3に記載の発明の緩衝装置では、ロッドストッパが鍔部であって、鍔部に連動するスライダーが突緩衝手段支持部材から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンロッドの一部を突緩衝手段支持部材から確実に突出させることができ、緩衝装置の生産性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明の緩衝装置は、上記構成としたので、取付けスペースを小さくできる。
【0015】
請求項2に記載の本発明の緩衝装置は、上記構成としたので、生産性を向上できる。
【0016】
請求項3に記載の本発明の緩衝装置は、上記構成としたので、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る緩衝装置を示す一部を断面とした斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る緩衝装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された引き戸を示す側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された引き戸の閉状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された引き戸の開状態を示す側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された戸枠と引き戸を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る緩衝装置について図1及び図2に従って説明する。また、図中矢印FRは緩衝装置の前方方向を、矢印UPは緩衝装置の上方方向を示す。
【0019】
(緩衝装置)
図1及び図2に示すように、本実施形態の緩衝装置10は、緩衝手段としてのピストンダンパー12と、このピストンダンパー12を収納する緩衝手段支持部材としてのケース14と、を備えている。また、ケース14はピストンダンパー12を荷重の作用方向となるピストンダンパー12の軸方向(図1の矢印A方向及び矢印B方向)へ移動可能に収納している。
【0020】
図1に示すように、ケース14は内部に円柱形状の空間15が形成された本体部14Aと、本体部14Aの上部に形成された取付部14Bと、を備えている。また、図2に示すように、ケース14の取付部14Bの幅方向(図2の矢印W1方向)の両端部は本体部14Aから幅方向外側へ突出した結合部14Cとなっている。なお、ケース14は取付部14Bの結合部14Cがビス等の固定部材(図示省略)または接着等によって支持部材に固定されるようになっている。
【0021】
図1に示すように、ケース14の本体部14Aにおけるピストンダンパー12の移動方向の一端部はシリンダストッパ当接部14Dとなっており、このシリンダストッパ当接部14Dの中央部には、円形の貫通孔16が形成されている。一方、ケース14の本体部14Aにおけるピストンダンパー12の移動方向の他端部はロッドストッパ当接部14Eとなっており、このロッドストッパ当接部14Eの中央部には、円形の貫通孔18が形成されている。
【0022】
ピストンダンパー12は、円柱形状とされたピストンシリンダー20と、ピストンシリンダー20の内部にピストンシリンダー20の軸方向へ移動可能に挿入されたピストン22と、ピストン22に一方の端部が連結されピストンロッド24と、ピストンシリンダー20の内部に設けられたスプリング26とを備えている。また、スプリング26はピストン22をピストンロッド24がピストンシリンダー20から突出する方向(図1の矢印B方向)へ付勢している。なお、ピストンシリンダー20の内部にはダンパーオイル等が充填されていてもよく、ピストンダンパー12は、ピストンシリンダー20とピストンロッド24とが圧縮方向へ相対移動することで衝撃を緩和するようになっている。
【0023】
ピストンシリンダー20の外周部の軸方向中間部には、シリンダーストッパとしての段差部30が形成されている。この段差部30は、ピストンシリンダー20におけるピストンロッド24の挿入側の大径部20Aと反対側の小径部20Bとの境に形成されており、大径部20Aの外径は小径部20Bの外径に比べて大きく(太く)なっている。
【0024】
また、段差部30は、ケース14に対してピストンシリンダー20が後方(図1の矢印A方向)へ移動した場合に、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接するようになっている。従って、ピストンシリンダー20の段差部30が、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接することで、ピストンシリンダー20の図1の矢印A方向への移動が停止するようになっている。また、この停止状態で、ピストンシリンダー20の小径部20Bがケース14のシリンダストッパ当接部14Dから所定長さ突出するようになっている。
【0025】
なお、ピストンシリンダー20における段差部30から小径部20B側へ所定距離離間した部位には、リング状の凸部32が形成されている。
【0026】
一方、ピストンロッド24の外周部の軸方向中間部には、ロッドストッパとしての鍔部34が形成されている。また、ピストンロッド24の鍔部34より前方の部位は、ピストンロッド24の一部を構成するスライダー36となっている。より具体的に説明すると、スライダー36の根元部36Aは鍔部34に連結(一体化)され、スライダー36はピストンロッド24と連動するようになっている。また、スライダー36の中間部36Bは、ケース14のロッドストッパ当接部14Eに形成した貫通孔18を貫通しており、スライダー36の先端部36Cは円盤状となっている。なお、スライダー36はピストンロッド24と別体としてもよい。この場合には、スライダー36の根元部36Aとピストンロッド24の鍔部34とを接離可能とし、スライダー36がピストンロッド24によって図1の矢印B方向へ押圧されることで、スライダー36がピストンロッド24と連動すると共に、スライダー36の根元部36Aが貫通孔18から抜け落ちないようにスライダー36の根元部36Aを円盤状のストッパーとする。
【0027】
また、ピストンロッド24の鍔部34は、ケース14に対してピストンロッド24が前方(図1の矢印B方向)へ移動した場合に、ロッドストッパ当接部14Eに当接するようになっている。従って、鍔部34がロッドストッパ当接部14Eに当接することで、ピストンロッド24の図1の矢印B方向への移動が停止するようになっている。また、この停止状態で、ピストンロッド24のスライダー36がケース14のロッドストッパ当接部14Eから所定長さ突出するようになっている。
【0028】
従って、図1に示す状態において、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dから突出したピストンシリンダー20の先端部20Cが前方(図1の矢印C方向)へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンダンパー12のピストンシリンダー20が図1の矢印B方向へ移動するようになっている。また、ピストンロッド24の鍔部34は、ケース14のロッドストッパ当接部14Eに当接し、ピストンロッド24の図1の矢印B方向への移動が停止するようになっている。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する衝撃を緩和できるようになっている。
【0029】
一方、図1に示す状態において、ケース14のロッドストッパ当接部14Eから突出したスライダー36の先端部36Cが後方(図1の矢印D方向)へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンダンパー12のピストンロッド24が図1の矢印D方向へ移動するようになっている。また、ピストンシリンダー20の段差部30は、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接し、ピストンシリンダー20の後方への移動が停止するようになっている。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する衝撃を緩和できるようになっている。
【0030】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
本実施形態の緩衝装置10では、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dから突出したピストンシリンダー20の先端部20Cに荷重が作用して、ピストンシリンダー20の先端部20Cが図1の矢印C方向へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンシリンダー20が図1の矢印C方向へ移動する。このとき、ピストンロッド24の鍔部34は、ケース14のロッドストッパ当接部14Eに当接し、ピストンロッド24の図1の矢印B方向への移動が停止する。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する衝撃を緩和できる。
【0031】
一方、ケース14のロッドストッパ当接部14Eから突出したスライダー36の先端部36Cに荷重が作用して、スライダー36の先端部36Cが図1の矢印D方向へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンロッド24が図1の矢印D方向へ移動する。このとき、ピストンシリンダー20の段差部30は、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接し、ピストンシリンダー20の後方への移動が停止する。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する衝撃を緩和できる。
【0032】
従って、本実施形態では、一つの緩衝装置10で、ピストンロッド24側に発生する衝撃とピストンシリンダー20側に発生する衝撃とを緩和できる。このため、2つの緩衝装置を使用する場合に比べて緩衝装置10の取付けスペースを小さくできる。
【0033】
また、本実施形態では、シリンダーストッパがピストンシリンダー20の大径部20Aと小径部20Bとの境に形成された段差部30であって、ピストンシリンダー20の小径部20Bがケース14から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンシリンダー20の小径部20Bをケース14から突出させることができる。この結果、緩衝装置10の生産性を向上できる。
【0034】
また、本実施形態では、ロッドストッパがピストンロッド24の鍔部34であって、鍔部34に連結されたスライダー36がケース14から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンロッド24の一部をケース14から確実に突出させることができる。この結果、緩衝装置10の生産性を向上できる。
【0035】
(引き戸への適用)
次に、本実施形態の緩衝装置10を支持部材としての引き戸に取付けた構成について図3〜図6に従って説明する。
図3に示すように、本実施形態の緩衝装置10は、戸枠40に設けられた引き戸42に設けられている。全体の図示を省略したが戸枠40は矩形の枠状となっており、図示を省略した戸枠40の下枠の上面には、下枠の長手方向に沿ってレールが形成されている。一方、全体の図示を省略したが引き戸42は矩形の板状となっており、図示を省略した引き戸42の下面に設けられた車輪が、戸枠40に形成されたレール上に位置している。従って、引き戸42は戸枠40に形成されたレールに沿って、閉方向(図3の矢印E方向)と開方向(図3の矢印F方向)とへ移動可能となっている。
【0036】
なお、図4に示すように、引き戸42を閉位置側へ移動すると、引き戸42の閉方向側縁部42Aが、戸枠40の閉方向側縦枠40Aに接近するようになっている。
【0037】
また、図5に示すように、引き戸42を開位置側へ移動すると、引き戸42の開方向側縁部42Bが、戸枠40の開方向側縦枠40Bに接近するようになっている。
【0038】
図6に示すように、引き戸42の上面42Cの幅方向中央部には、引き戸42の移動方向に沿って溝46が形成されている。また、引き戸42の上面42Cにおける閉方向側縁部42A側の端部には緩衝装置10の取付凹部48が形成されており、取付凹部48と溝46とは連通している。
【0039】
取付凹部48の幅W1は溝46の幅W2より広くなっており、取付凹部48の開口部の幅方向両端部には段部49が形成されている。また、取付凹部48の各段部49には、ケース14における取付部14Bの結合部14Cがそれぞれビス等の固定部材(図示省略)または接着等によって固定されている。
【0040】
戸枠40における上枠40Cの下面40Dには、ストッパー50が取付けられている。ストッパー50は、矩形板状の取付部50Aと、取付部50Aの幅方向中央部から下方へ向かって突出した側面視三角形状の当接部50Bとを備えている。ストッパー50の取付部50Aは戸枠40の上枠40Cの下面40Dにビス等の固定部材(図示省略)または接着等によって固定されている。また、ストッパー50の当接部50Bは、引き戸42が戸枠40の開方向側縦枠40Bの方向へ移動した際に溝46の内部に入るようになっている。
【0041】
図3に示すように、引き戸42が閉位置と開位置との中間にある場合には、緩衝装置10のピストンダンパー12のピストンシリンダー20が、ケース14から戸枠40の閉方向側縦枠40A側に向かって所定長さ突出すると共に、引き戸42の閉方向側縁部42Aからも突出するようになっている。また、緩衝装置10のピストンダンパー12のスライダー36がケース14からストッパー50の当接部50Bに向かって所定長さ突出するようになっている。
【0042】
従って、図4に示すように、引き戸42が閉位置に接近すると、ピストンシリンダー20の先端部20Cが戸枠40の閉方向側縦枠40Aに当接し、ピストンシリンダー20が図4の矢印C方向へ押込まれるようになっている。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する引き戸42の閉時の衝撃を緩和できるようになっている。
【0043】
一方、図5に示すように、引き戸42が開位置に接近すると、スライダー36の先端部36Cがストッパー50の当接部50Bに当接し、スライダー36が図5の矢印D方向へ押込まれるようになっている。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する引き戸42の開時の衝撃を緩和できるようになっている。
【0044】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、図3に示すように、引き戸42が閉位置と開位置との中間にある場合には、緩衝装置10のピストンダンパー12のピストンシリンダー20が、引き戸42の閉方向側縁部42Aから所定長さ突出していると共に、ピストンダンパー12のスライダー36がケース14からストッパー50の当接部50Bに向かって所定長さ突出している。
【0045】
従って、図4に示すように、引き戸42が閉位置に接近すると、ピストンシリンダー20の先端部20Cが戸枠40の閉方向側縦枠40Aに当接し、ピストンシリンダー20が図4の矢印C方向へ押込まれる。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する引き戸42の閉時の衝撃を緩和できる。
【0046】
一方、図5に示すように、引き戸42が開位置に接近すると、スライダー36の先端部36Cがストッパー50の当接部50Bに当接し、スライダー36が図5の矢印D方向へ押込まれる。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する引き戸42の開時の衝撃を緩和できる。
【0047】
よって、本実施形態では、一つの緩衝装置10で、引き戸42の開閉時の衝撃を緩和できる。この結果、2つの緩衝装置を使用する場合に比べて緩衝装置10の取付けスペースを小さくでき、引き戸42の上部に容易に取付けることができる。
【0048】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、緩衝手段支持部材のケース14の形状は、上記実施形態の形状に限定されず、他の形状としても良いし、支持部材と一体構造としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、本発明の緩衝装置を引き戸42に適用したが、本発明の緩衝装置は引き戸以外の他の開閉装置、例えば、引出しの前部に設けられ、ヒンジにより開位置と閉位置とへ回転移動する前板等にも適用可能である。
【0050】
また、本発明の緩衝装置は開閉装置に限定されず、一方向とその逆方向とに移動する他の移動装置にも使用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 緩衝装置
12 ピストンダンパー
14 ケース(緩衝手段支持部材)
14D シリンダーストッパ当接部
14E ロッドストッパ当接部
20 ピストンシリンダー
20C ピストンシリンダーの先端部
22 ピストン
24 ピストンロッド
26 スプリング
30 ピストンシリンダーの段差部(シリンダーストッパ)
34 鍔部(ロッドストッパ)
36 スライダー(ピストンロッドの一部)
36C スライダーの先端部
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉等の開閉体を開閉する際の衝撃をやわらげるための緩衝装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、扉等の開閉体を開閉する際の衝撃をやわらげるための緩衝装置としては、例えば、ピストンダンパーが使用されている。この場合、開閉体を開ける際の衝撃をやわらげるためのピストンダンパーと、開閉体を閉める際の衝撃をやわらげるためのピストンダンパーと、の2つピストンダンパーが必要になる。なお、特許文献1には、ロッド本体が、互いに軸方向へ並んだ第一ロッド及び第二ロッドと、これら第一ロッド及び第二ロッドを互いに軸方向伸縮動作可能に連結する伸縮機構部とからなり、伸縮機構部が、第一ロッド及び第二ロッドのうち、一方のロッドの軸端に設けられたシリンダと、他方のロッドの軸端に設けられると共にシリンダの内周に軸方向所定範囲内で摺動体を介して摺動可能に密嵌されたピストンとを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−275746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開閉体を開閉する際の衝撃をやわらげるための緩衝装置として2つのダンパーを使用すると取付けスペースが大きくなる。なお、特許文献1の装置を使用する場合には、第一ロッド及び第二ロッドを、被取付体と被取付体に取付けられた開閉体とに連結する必要がある。このため、開閉体の開き量が、ロッドのストロークによって制限されてしまうため使用できない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、取付けスペースを小さくできる緩衝装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の緩衝装置は、外周部にシリンダーストッパを設けたピストンシリンダーと、前記ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンと、前記ピストンに連結され外周部にロッドストッパを設けたピストンロッドと、前記ピストンシリンダー中に設けられ前記ピストンを前記ピストンロッドが前記ピストンシリンダーから突出する方向へ付勢するスプリングと、を備えた緩衝手段と、前記緩衝手段を荷重の作用方向に移動可能に収納する緩衝手段支持部材と、前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の一端部側に設けられ、前記シリンダーストッパに当接して、前記ピストンシリンダーの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンシリンダーの移動を止めるためのシリンダーストッパ当接部と、前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の他端部側に設けられ、前記ロッドストッパに当接して、前記ピストンロッドの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンロッドの移動を止めるためのロッドストッパ当接部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の発明の緩衝装置では、緩衝手段が緩衝手段支持部材に荷重の作用方向に移動可能に収納されている。このため、一部が緩衝手段支持部材から突出したピストンシリンダーに荷重が作用した場合には、緩衝手段は緩衝手段支持部材に対して荷重の作用方向に移動する。この際、ピストンロッドの外周部に設けたロッドストッパが、緩衝手段支持部材における緩衝手段の移動方向の一端部側に設けられたロッドストッパ当接部に当接して、ピストンロッドの一部を緩衝手段支持部材から突出させた状態でピストンロッドの移動を止める。この結果、ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンに連結されたピストンロッドに対して、ピストンシリンダーが圧縮方向へスプリングの付勢力に抗して移動する。このため、ピストンシリンダー側に作用する衝撃を緩和できる。
【0008】
一方、一部が緩衝手段支持部材から突出したピストンロッドに荷重が作用した場合には、緩衝手段は緩衝手段支持部材に対して荷重の作用方向に移動する。この際、ピストンシリンダーの外周部に設けたシリンダーストッパが、緩衝手段支持部材における緩衝手段の移動方向の他端部側に設けられたシリンダーストッパ当接部に当接して、ピストンシリンダーの一部を緩衝手段支持部材から突出させた状態でピストンシリンダーの移動を止める。この結果、ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンに連結されたピストンロッドが、ピストンシリンダーに対して圧縮方向へスプリングの付勢力に抗して移動する。このため、ピストンロッド側に作用する衝撃を緩和できる。
【0009】
従って、一つの緩衝手段で、ピストンロッド側に発生する衝撃とピストンシリンダー側に発生する衝撃とを緩和できる。このため、2つの緩衝装置を使用する場合に比べて緩衝装置の取付けスペースを小さくできる。
【0010】
請求項2に記載の発明は請求項1記載の緩衝装置において、前記シリンダーストッパは前記ピストンシリンダーの小径部と大径部との段差部であって、前記緩衝手段支持部材から前記ピストンシリンダーの小径部が突出する。
【0011】
請求項2に記載の発明の緩衝装置では、シリンダーストッパがピストンシリンダーの小径部と大径部との段差部であって、ピストンシリンダーの小径部が突緩衝手段支持部材から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンシリンダーを突緩衝手段支持部材から突出させることができ、緩衝装置の生産性が向上する。
【0012】
請求項3に記載の発明は請求項1または請求項2に記載の緩衝装置において、前記ロッドストッパは鍔部であって、前記緩衝手段支持部材から突出する前記ピストンロッドの一部は前記鍔部に連動するスライダーである。
【0013】
請求項3に記載の発明の緩衝装置では、ロッドストッパが鍔部であって、鍔部に連動するスライダーが突緩衝手段支持部材から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンロッドの一部を突緩衝手段支持部材から確実に突出させることができ、緩衝装置の生産性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明の緩衝装置は、上記構成としたので、取付けスペースを小さくできる。
【0015】
請求項2に記載の本発明の緩衝装置は、上記構成としたので、生産性を向上できる。
【0016】
請求項3に記載の本発明の緩衝装置は、上記構成としたので、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る緩衝装置を示す一部を断面とした斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る緩衝装置を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された引き戸を示す側断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された引き戸の閉状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された引き戸の開状態を示す側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る緩衝装置が適用された戸枠と引き戸を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る緩衝装置について図1及び図2に従って説明する。また、図中矢印FRは緩衝装置の前方方向を、矢印UPは緩衝装置の上方方向を示す。
【0019】
(緩衝装置)
図1及び図2に示すように、本実施形態の緩衝装置10は、緩衝手段としてのピストンダンパー12と、このピストンダンパー12を収納する緩衝手段支持部材としてのケース14と、を備えている。また、ケース14はピストンダンパー12を荷重の作用方向となるピストンダンパー12の軸方向(図1の矢印A方向及び矢印B方向)へ移動可能に収納している。
【0020】
図1に示すように、ケース14は内部に円柱形状の空間15が形成された本体部14Aと、本体部14Aの上部に形成された取付部14Bと、を備えている。また、図2に示すように、ケース14の取付部14Bの幅方向(図2の矢印W1方向)の両端部は本体部14Aから幅方向外側へ突出した結合部14Cとなっている。なお、ケース14は取付部14Bの結合部14Cがビス等の固定部材(図示省略)または接着等によって支持部材に固定されるようになっている。
【0021】
図1に示すように、ケース14の本体部14Aにおけるピストンダンパー12の移動方向の一端部はシリンダストッパ当接部14Dとなっており、このシリンダストッパ当接部14Dの中央部には、円形の貫通孔16が形成されている。一方、ケース14の本体部14Aにおけるピストンダンパー12の移動方向の他端部はロッドストッパ当接部14Eとなっており、このロッドストッパ当接部14Eの中央部には、円形の貫通孔18が形成されている。
【0022】
ピストンダンパー12は、円柱形状とされたピストンシリンダー20と、ピストンシリンダー20の内部にピストンシリンダー20の軸方向へ移動可能に挿入されたピストン22と、ピストン22に一方の端部が連結されピストンロッド24と、ピストンシリンダー20の内部に設けられたスプリング26とを備えている。また、スプリング26はピストン22をピストンロッド24がピストンシリンダー20から突出する方向(図1の矢印B方向)へ付勢している。なお、ピストンシリンダー20の内部にはダンパーオイル等が充填されていてもよく、ピストンダンパー12は、ピストンシリンダー20とピストンロッド24とが圧縮方向へ相対移動することで衝撃を緩和するようになっている。
【0023】
ピストンシリンダー20の外周部の軸方向中間部には、シリンダーストッパとしての段差部30が形成されている。この段差部30は、ピストンシリンダー20におけるピストンロッド24の挿入側の大径部20Aと反対側の小径部20Bとの境に形成されており、大径部20Aの外径は小径部20Bの外径に比べて大きく(太く)なっている。
【0024】
また、段差部30は、ケース14に対してピストンシリンダー20が後方(図1の矢印A方向)へ移動した場合に、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接するようになっている。従って、ピストンシリンダー20の段差部30が、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接することで、ピストンシリンダー20の図1の矢印A方向への移動が停止するようになっている。また、この停止状態で、ピストンシリンダー20の小径部20Bがケース14のシリンダストッパ当接部14Dから所定長さ突出するようになっている。
【0025】
なお、ピストンシリンダー20における段差部30から小径部20B側へ所定距離離間した部位には、リング状の凸部32が形成されている。
【0026】
一方、ピストンロッド24の外周部の軸方向中間部には、ロッドストッパとしての鍔部34が形成されている。また、ピストンロッド24の鍔部34より前方の部位は、ピストンロッド24の一部を構成するスライダー36となっている。より具体的に説明すると、スライダー36の根元部36Aは鍔部34に連結(一体化)され、スライダー36はピストンロッド24と連動するようになっている。また、スライダー36の中間部36Bは、ケース14のロッドストッパ当接部14Eに形成した貫通孔18を貫通しており、スライダー36の先端部36Cは円盤状となっている。なお、スライダー36はピストンロッド24と別体としてもよい。この場合には、スライダー36の根元部36Aとピストンロッド24の鍔部34とを接離可能とし、スライダー36がピストンロッド24によって図1の矢印B方向へ押圧されることで、スライダー36がピストンロッド24と連動すると共に、スライダー36の根元部36Aが貫通孔18から抜け落ちないようにスライダー36の根元部36Aを円盤状のストッパーとする。
【0027】
また、ピストンロッド24の鍔部34は、ケース14に対してピストンロッド24が前方(図1の矢印B方向)へ移動した場合に、ロッドストッパ当接部14Eに当接するようになっている。従って、鍔部34がロッドストッパ当接部14Eに当接することで、ピストンロッド24の図1の矢印B方向への移動が停止するようになっている。また、この停止状態で、ピストンロッド24のスライダー36がケース14のロッドストッパ当接部14Eから所定長さ突出するようになっている。
【0028】
従って、図1に示す状態において、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dから突出したピストンシリンダー20の先端部20Cが前方(図1の矢印C方向)へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンダンパー12のピストンシリンダー20が図1の矢印B方向へ移動するようになっている。また、ピストンロッド24の鍔部34は、ケース14のロッドストッパ当接部14Eに当接し、ピストンロッド24の図1の矢印B方向への移動が停止するようになっている。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する衝撃を緩和できるようになっている。
【0029】
一方、図1に示す状態において、ケース14のロッドストッパ当接部14Eから突出したスライダー36の先端部36Cが後方(図1の矢印D方向)へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンダンパー12のピストンロッド24が図1の矢印D方向へ移動するようになっている。また、ピストンシリンダー20の段差部30は、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接し、ピストンシリンダー20の後方への移動が停止するようになっている。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する衝撃を緩和できるようになっている。
【0030】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果を説明する。
本実施形態の緩衝装置10では、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dから突出したピストンシリンダー20の先端部20Cに荷重が作用して、ピストンシリンダー20の先端部20Cが図1の矢印C方向へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンシリンダー20が図1の矢印C方向へ移動する。このとき、ピストンロッド24の鍔部34は、ケース14のロッドストッパ当接部14Eに当接し、ピストンロッド24の図1の矢印B方向への移動が停止する。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する衝撃を緩和できる。
【0031】
一方、ケース14のロッドストッパ当接部14Eから突出したスライダー36の先端部36Cに荷重が作用して、スライダー36の先端部36Cが図1の矢印D方向へ押圧されると、支持部材に固定されたケース14に対して、ピストンロッド24が図1の矢印D方向へ移動する。このとき、ピストンシリンダー20の段差部30は、ケース14のシリンダストッパ当接部14Dに当接し、ピストンシリンダー20の後方への移動が停止する。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する衝撃を緩和できる。
【0032】
従って、本実施形態では、一つの緩衝装置10で、ピストンロッド24側に発生する衝撃とピストンシリンダー20側に発生する衝撃とを緩和できる。このため、2つの緩衝装置を使用する場合に比べて緩衝装置10の取付けスペースを小さくできる。
【0033】
また、本実施形態では、シリンダーストッパがピストンシリンダー20の大径部20Aと小径部20Bとの境に形成された段差部30であって、ピストンシリンダー20の小径部20Bがケース14から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンシリンダー20の小径部20Bをケース14から突出させることができる。この結果、緩衝装置10の生産性を向上できる。
【0034】
また、本実施形態では、ロッドストッパがピストンロッド24の鍔部34であって、鍔部34に連結されたスライダー36がケース14から突出する構成となっている。このため、簡単な構成でピストンロッド24の一部をケース14から確実に突出させることができる。この結果、緩衝装置10の生産性を向上できる。
【0035】
(引き戸への適用)
次に、本実施形態の緩衝装置10を支持部材としての引き戸に取付けた構成について図3〜図6に従って説明する。
図3に示すように、本実施形態の緩衝装置10は、戸枠40に設けられた引き戸42に設けられている。全体の図示を省略したが戸枠40は矩形の枠状となっており、図示を省略した戸枠40の下枠の上面には、下枠の長手方向に沿ってレールが形成されている。一方、全体の図示を省略したが引き戸42は矩形の板状となっており、図示を省略した引き戸42の下面に設けられた車輪が、戸枠40に形成されたレール上に位置している。従って、引き戸42は戸枠40に形成されたレールに沿って、閉方向(図3の矢印E方向)と開方向(図3の矢印F方向)とへ移動可能となっている。
【0036】
なお、図4に示すように、引き戸42を閉位置側へ移動すると、引き戸42の閉方向側縁部42Aが、戸枠40の閉方向側縦枠40Aに接近するようになっている。
【0037】
また、図5に示すように、引き戸42を開位置側へ移動すると、引き戸42の開方向側縁部42Bが、戸枠40の開方向側縦枠40Bに接近するようになっている。
【0038】
図6に示すように、引き戸42の上面42Cの幅方向中央部には、引き戸42の移動方向に沿って溝46が形成されている。また、引き戸42の上面42Cにおける閉方向側縁部42A側の端部には緩衝装置10の取付凹部48が形成されており、取付凹部48と溝46とは連通している。
【0039】
取付凹部48の幅W1は溝46の幅W2より広くなっており、取付凹部48の開口部の幅方向両端部には段部49が形成されている。また、取付凹部48の各段部49には、ケース14における取付部14Bの結合部14Cがそれぞれビス等の固定部材(図示省略)または接着等によって固定されている。
【0040】
戸枠40における上枠40Cの下面40Dには、ストッパー50が取付けられている。ストッパー50は、矩形板状の取付部50Aと、取付部50Aの幅方向中央部から下方へ向かって突出した側面視三角形状の当接部50Bとを備えている。ストッパー50の取付部50Aは戸枠40の上枠40Cの下面40Dにビス等の固定部材(図示省略)または接着等によって固定されている。また、ストッパー50の当接部50Bは、引き戸42が戸枠40の開方向側縦枠40Bの方向へ移動した際に溝46の内部に入るようになっている。
【0041】
図3に示すように、引き戸42が閉位置と開位置との中間にある場合には、緩衝装置10のピストンダンパー12のピストンシリンダー20が、ケース14から戸枠40の閉方向側縦枠40A側に向かって所定長さ突出すると共に、引き戸42の閉方向側縁部42Aからも突出するようになっている。また、緩衝装置10のピストンダンパー12のスライダー36がケース14からストッパー50の当接部50Bに向かって所定長さ突出するようになっている。
【0042】
従って、図4に示すように、引き戸42が閉位置に接近すると、ピストンシリンダー20の先端部20Cが戸枠40の閉方向側縦枠40Aに当接し、ピストンシリンダー20が図4の矢印C方向へ押込まれるようになっている。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する引き戸42の閉時の衝撃を緩和できるようになっている。
【0043】
一方、図5に示すように、引き戸42が開位置に接近すると、スライダー36の先端部36Cがストッパー50の当接部50Bに当接し、スライダー36が図5の矢印D方向へ押込まれるようになっている。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する引き戸42の開時の衝撃を緩和できるようになっている。
【0044】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、図3に示すように、引き戸42が閉位置と開位置との中間にある場合には、緩衝装置10のピストンダンパー12のピストンシリンダー20が、引き戸42の閉方向側縁部42Aから所定長さ突出していると共に、ピストンダンパー12のスライダー36がケース14からストッパー50の当接部50Bに向かって所定長さ突出している。
【0045】
従って、図4に示すように、引き戸42が閉位置に接近すると、ピストンシリンダー20の先端部20Cが戸枠40の閉方向側縦枠40Aに当接し、ピストンシリンダー20が図4の矢印C方向へ押込まれる。このため、ピストンロッド24に対してピストンシリンダー20が圧縮方向(図1の矢印B方向)に移動して、ピストンシリンダー20の先端部20Cに作用する引き戸42の閉時の衝撃を緩和できる。
【0046】
一方、図5に示すように、引き戸42が開位置に接近すると、スライダー36の先端部36Cがストッパー50の当接部50Bに当接し、スライダー36が図5の矢印D方向へ押込まれる。このため、ピストンシリンダー20に対してピストンロッド24が圧縮方向(図1の矢印A方向)に移動して、スライダー36の先端部36Cに作用する引き戸42の開時の衝撃を緩和できる。
【0047】
よって、本実施形態では、一つの緩衝装置10で、引き戸42の開閉時の衝撃を緩和できる。この結果、2つの緩衝装置を使用する場合に比べて緩衝装置10の取付けスペースを小さくでき、引き戸42の上部に容易に取付けることができる。
【0048】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、緩衝手段支持部材のケース14の形状は、上記実施形態の形状に限定されず、他の形状としても良いし、支持部材と一体構造としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、本発明の緩衝装置を引き戸42に適用したが、本発明の緩衝装置は引き戸以外の他の開閉装置、例えば、引出しの前部に設けられ、ヒンジにより開位置と閉位置とへ回転移動する前板等にも適用可能である。
【0050】
また、本発明の緩衝装置は開閉装置に限定されず、一方向とその逆方向とに移動する他の移動装置にも使用可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 緩衝装置
12 ピストンダンパー
14 ケース(緩衝手段支持部材)
14D シリンダーストッパ当接部
14E ロッドストッパ当接部
20 ピストンシリンダー
20C ピストンシリンダーの先端部
22 ピストン
24 ピストンロッド
26 スプリング
30 ピストンシリンダーの段差部(シリンダーストッパ)
34 鍔部(ロッドストッパ)
36 スライダー(ピストンロッドの一部)
36C スライダーの先端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部にシリンダーストッパを設けたピストンシリンダーと、前記ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンと、前記ピストンに連結され外周部にロッドストッパを設けたピストンロッドと、前記ピストンシリンダー中に設けられ前記ピストンを前記ピストンロッドが前記ピストンシリンダーから突出する方向へ付勢するスプリングと、を備えた緩衝手段と、
前記緩衝手段を荷重の作用方向に移動可能に収納する緩衝手段支持部材と、
前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の一端部側に設けられ、前記シリンダーストッパに当接して、前記ピストンシリンダーの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンシリンダーの移動を止めるためのシリンダーストッパ当接部と、
前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の他端部側に設けられ、前記ロッドストッパに当接して、前記ピストンロッドの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンロッドの移動を止めるためのロッドストッパ当接部と、
を有する緩衝装置。
【請求項2】
前記シリンダーストッパは前記ピストンシリンダーの小径部と大径部との段差部であって、前記緩衝手段支持部材から前記ピストンシリンダーの小径部が突出する請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記ロッドストッパは鍔部であって、前記緩衝手段支持部材から突出する前記ピストンロッドの一部は前記鍔部に連動するスライダーである請求項1または請求項2に記載の緩衝装置。
【請求項1】
外周部にシリンダーストッパを設けたピストンシリンダーと、前記ピストンシリンダーに移動可能に挿入されたピストンと、前記ピストンに連結され外周部にロッドストッパを設けたピストンロッドと、前記ピストンシリンダー中に設けられ前記ピストンを前記ピストンロッドが前記ピストンシリンダーから突出する方向へ付勢するスプリングと、を備えた緩衝手段と、
前記緩衝手段を荷重の作用方向に移動可能に収納する緩衝手段支持部材と、
前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の一端部側に設けられ、前記シリンダーストッパに当接して、前記ピストンシリンダーの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンシリンダーの移動を止めるためのシリンダーストッパ当接部と、
前記緩衝手段支持部材における、前記緩衝手段の移動方向の他端部側に設けられ、前記ロッドストッパに当接して、前記ピストンロッドの一部を前記緩衝手段支持部材から突出させた状態で前記ピストンロッドの移動を止めるためのロッドストッパ当接部と、
を有する緩衝装置。
【請求項2】
前記シリンダーストッパは前記ピストンシリンダーの小径部と大径部との段差部であって、前記緩衝手段支持部材から前記ピストンシリンダーの小径部が突出する請求項1に記載の緩衝装置。
【請求項3】
前記ロッドストッパは鍔部であって、前記緩衝手段支持部材から突出する前記ピストンロッドの一部は前記鍔部に連動するスライダーである請求項1または請求項2に記載の緩衝装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−21559(P2012−21559A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158948(P2010−158948)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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