説明

練り製品用原料の練り方法およびその練り装置

【課題】 練り製品用原料の魚肉たんぱく質の溶出を促進することにある。
【解決手段】 ケーシング14内に間隙αを設けて配置した一対のパドル部材Aを互いに反対方向に回転させ、前記の間隙α内へ練り製品用原料Wを供給し、間隙αの通過時に練り製品用原料Wを圧縮し、通過後に圧縮状態を解除させて撹拌し、前記の工程を反復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、かまぼこ、ちくわ、魚肉ハム、ソーセージなどの練り製品の原料のうち、とりわけ、かまぼこ用原料の練り方法およびその練り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉練り製品の産業分野において、練り製品の原料の練り方法は、バチと言われる臼と杵を組み合わせた石臼らい潰機、サイレントカッター、真空高速カッターなどを使用するものがあった(非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】岡田稔著「かまぼこの科学」成山堂書店 平成12年7月18日 144頁〜149頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、石臼らい潰機による練り製品の原料の練り方法は、いわゆる塩ずりの作業が丁寧に、かつ、反復して施されるから、塩分の作用によるたんぱく質の溶出と相俟って、魚肉たんぱく質の溶出は好ましい点で評価できた。
一方、石臼らい潰機による処理方法では、知られるように処理能力が小さいという問題点があった。
そこで、サイレントカッターや真空高速カッターが開発され、処理能力の向上化が図られたが、これらの原料の処理方法は、基本的に細く切断された魚肉に塩分を添加して撹拌されるものの、撹拌装置が複雑であったり、しかも、撹拌機能が必ずしも十分とはいえなく、所望される魚肉たんぱく質の溶出の期待に応えていないという問題点があった。
【0004】
そこで、本発明は、魚肉たんぱく質の溶出の促進を図りつつ、しかも煩雑化しない練り製品用原料の練り制御により、処理能力の向上化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の課題解決手段は、
断面が円形であるシャフトと、円筒体を略半截することにより形成される両側の略半截面、外側の円弧面および内側の円弧面を備えた略半截状の分割円筒体からなり、該分割円筒体の内側の円弧面を該シャフトの周囲の一部に当接させて該分割円筒体が該シャフトに結合されるとともに、該略半截面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が設けられ、一方の該パドル部材の該分割円筒体の外側の円弧面と他方の該パドル部材の該シャフトの外周面が間隙を隔ててケーシング内に配置され、前記の一対のパドル部材を互いに反対方向に回転させ、前記の一対のパドル部材の回転に追従して回転する前記の該略半截面により、ケーシング内へ搬入させた練り製品用原料を前記の両パドル部材間の間隙へ供給し、該間隙へ供給した練り製品用原料を前記の一対のパドル部材の回転作用により該間隙を通過させるとともにその通過時に練り製品用原料を圧縮し、圧縮した練り製品用原料を該間隙から前記の一対のパドル部材の回転作用により、ケーシング内に解放して圧縮状態を解除し、圧縮状態を解除することにより、膨張した練り製品用原料を回転する一対の該パドル部材によりケーシング内で撹拌し、前記の各工程を反復することを特徴とする練り製品用原料の練り方法である。
【0006】
本発明の第2の課題解決手段は、
円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた大径の第1の主体部と円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた小径の第2の主体部からなり、第1の主体部と第2の主体部がそれぞれの該円弧面を外側に向けて一体に設けられ、第1の主体部と第2の主体部の境において、第1の主体部の非円弧面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が設けられ、一方の該パドル部材の第1の主体部の外側の円弧面と他方の該パドル部材の第2の主体部の円弧面が間隙を隔ててケーシング内に配置され、前記の一対のパドル部材を互いに反対方向に回転させ、 前記の一対のパドル部材の回転に追従して回転する前記の該非円弧面により、ケーシング内へ搬入させた練り製品用原料を前記の両パドル部材間の間隙へ供給し、該間隙へ供給した練り製品用原料を前記の一対のパドル部材の回転作用により該間隙を通過させるとともにその通過時に練り製品用原料を圧縮し、圧縮した練り製品用原料を該間隙から前記の一対のパドル部材の回転作用により、ケーシング内に解放して圧縮状態を解除し、圧縮状態を解除することにより、膨張した練り製品用原料を回転する一対の該パドル部材によりケーシング内で撹拌し、前記の各工程を反復することを特徴とする練り製品用原料の練り方法である。
【0007】
本発明の第3の課題解決手段は
断面が円形であるシャフトと、円筒体を略半截することにより形成される両側の略半截面、外側の円弧面および内側の円弧面を備えた略半截状の分割円筒体からなり、 該分割円筒体の内側の円弧面を該シャフトの周囲の一部に当接させて該分割円筒体が該シャフトに結合されるとともに、該略半截面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が互いに反対方向に回転自在に設けられ、一方の該パドル部材の該分割円筒体の外側の円弧面と他方の該パドル部材の該シャフトの外周面が間隙を隔ててケーシング内に配置されてなることを特徴とする練り製品用原料の練り装置である。
【0008】
本発明の第4の課題解決手段は、
円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた大径の第1の主体部と円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた小径の第2の主体部からなり、第1の主体部と第2の主体部がそれぞれの該円弧面を外側に向けて一体に設けられ、第1の主体部と第2の主体部の境において、第1の主体部の非円弧面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が互いに反対方向に回転自在に設けられ、一方の該パドル部材の第1の主体部の外側の円弧面と他方の該パドル部材の第2の主体部の円弧面が間隙を隔ててケーシング内に配置されてなることを特徴とする練り製品用原料の練り装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の課題解決手段は、上記の構成であるから以下の作用効果を奏する。
係る工程は、分割円筒体の略半截面を利用して反対方向に回転する一対のパドル部材間の間隙に向けて練り製品用原料を反復供給することから装置自体が大幅に簡素化できる。
また、この課題解決手段では、シャフトや分割円筒体を得るのに、市販の材料を利用できるから、経済性に富み、かつ、加工し易い利点がある。
【0010】
その上、練り製品用原料はケーシング内で、供給→圧縮→膨張→撹拌という工程を反復させることで攪拌混合することから、従来、経験しなかった原料の処理を行うことができる。
とりわけ、反復して供給された原料を圧縮し、圧縮した原料の体積を疑似の原状態に復元するように膨張させ、かつ、撹拌する工程を反復させるから、間隙を通過した原料にはケーシング内で乱流が発生し、剪断され、練り製品用原料はあらゆる角度から圧力を受けるので、背景技術と比較して塩分の作用と相俟って魚肉たんぱく質の溶出の促進を顕著に期待できる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段は、上記の構成であるから、第1の課題解決手段と共通の作用効果を奏する。
また、パドル部材は鋼材を切削加工することにより手軽に得られる。
【0012】
本発明の第3の課題解決手段は、本発明の第1の課題解決手段と共通な作用効果を奏する。
【0013】
本発明の第4の課題解決手段は、本発明の第2の課題解決手段と共通な作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
練り製品用原料から魚肉タンパク質の溶出を充分に図ることができるなどのほか、練り製品用原料の供給手段の簡素化を図るという目的を、最小の部品点数で、練り製品用原料の物性を損なわず実現した。
【実施例1】
【0015】
実施例1を、練り製品用原料の練り方法をその装置と併せ図面を参照して説明する。
この発明の実施例において、魚肉すり身(具体的にはイトヨリの冷凍すり身)に食塩と水を混合させたものを練り製品用原料(以下、原料Wという。)とした。
尚、実施例1においては、ゲル強度の優位性を見るため便宜上、魚肉すり身に食塩と水を添加したものを使用したが、これに限られるものではない。
本願発明の本来の練り方法が対象とする練り製品用原料は、魚肉すり身に食塩や水、砂糖、澱粉等を添加したものを基本とするものである。
本願発明は、「塩ずり」と「本ずり」の機能を同時に行うことを発明のテーマとしているものの、以下に説明するようにこの発明は、いわゆる「空ずり」や「本ずり」について転用できるものである。
ここで「空ずり」とは食塩を添加する前に魚肉を攪拌して細かくすることをいい、「本ずり」とは魚肉すり身に食塩を加え塩ずりした後に副原料を添加して攪拌、混合することをいう。
【0016】
この発明は、以下に説明するパドル部材Aの一対を互いに反対方向に回転することを基本的構成とするものであるが、一対のパドル部材Aの構成はそっくり共通するから、一方のパドル部材Aについて説明し、他方のパドル部材Aの構成の説明は省略し、一方のパドル部材Aの説明を援用する。
【0017】
そこで、一方のパドル部材Aについて説明すると(図1を参照)、パドル部材Aは、断面が円形であるシャフト10と略半截状の分割円筒体12が組み合わせて構成されている。
シャフト10は、パドル部材Aを回転させるとともにパドル部材A自体の一部を構成するものである。
図示の例では、中空のスリーブによる断面が円形であるシャフト10であり、内側に図示を省略した駆動源に接続される駆動軸16が装着されている。
【0018】
シャフト10は前記した中空のスリーブに代えて非中空のものでもよく、図示を省略したが、駆動源に接続される駆動軸をシャフト10の長手方向の両側に設けることも予定されている。
【0019】
パドル部材Aを構成する別の部品として、円筒体を略半截することにより形成される両側の略半截面12aを備え、さらに、外側の円弧面12bおよび内側の円弧面12cを備えた略半截状の分割円筒体12が設けられている。
【0020】
そして、前記の分割円筒体12の内側の円弧面12cがシャフト10の周囲の一部に当接され、分割円筒体12がシャフト10に結合されている。
この場合、本発明の特徴の一つとして工夫が凝らされ、原料Wをケーシング14内で供給することを目的として、前記の両側の略半截面12aが原料Wの供給手段として構成されている。
そして、原料Wをケーシング14内で滞留させることなく充分な混合攪拌を行うとともに、後述する間隙αを設けて原料Wを強制的に押し出すことができるようにするため、略半截面12aと内側の円弧面12cの間の角度が略75度に設けられている。
なお、略半截面12aと内側の円弧面12cの間の角度は、この角度に限定されるものではなく、略70度〜略90度の間に設けられることが望ましい。
【0021】
原料Wを反復して供給する供給手段を構成する前記の両側の略半截面12aは、円筒体を略半截することにより、容易に加工することができるから、原料Wの供給手段を大幅に簡素化でき、経済性にも富んでいる。
ここにいう、原料Wは、先に説明した「空ずり」(食塩非混合)後の魚肉に食塩と水が混合されたものである。
【0022】
パドル部材Aを構成する分割円筒体12が回転し、その回転に支配される前記の略半截面12aも必然的に回転することにより、この略半截面12aはケーシング14内の原料Wを次工程に向けて強制的に押出す効果を奏するものである。
【0023】
前記したパドル部材Aの一対が設けられ、一方の該パドル部材Aの該分割円筒体12の外側の円弧面12bと他方の該パドル部材Aの該シャフト10の外周面10aが間隙αを隔ててケーシング14内に配置され、このパドル部材Aが一対となってケーシング14内に収容され、一方のパドル部材Aの分割円筒体12の外側の円弧面12bがケーシング14の内周面14aに面しているとき、他方のパドル部材Aの分割円筒体12の外側の円弧面12bは、一方のパドル部材Aのシャフト10の外周面10aに面するように常に回転することで、この発明の練り製品用原料の練り装置20の基本が構成されている。
【0024】
前記した間隙αの具体例として発明者らは実験的に1mm程度に設定したが、もとより1mm程度に制約する趣旨ではなく、原料Wを圧縮できる効果を奏する限り、変化を問わない。
間隙αを1mm程度に設定することにより、原料Wが略半截面12aを介して強制的に押出される結果、魚肉すり身中のたんぱく質の溶出の促進を意図して、原料Wを間隙αにより圧縮しつつ、また、剪断できることを可能とする。
【0025】
原料Wの間隙αの通過時の流れの速さについては、間隙αの中央部が最大に早く、外側の円弧面12b側が次ぎに早く、シャフト10の外周面10a側が遅い。
これらの速度の差は、外側の円弧面12bとシャフト10の外周面10a径の大小の差による応力差が原料Wに影響するものと考えられるが、速度の較差により、原料Wに互いに逆向きの力が加わる結果、間隙αの通過時に剪断が行われると考えられる。
【0026】
そして、背景技術のように、剪断が刃物により単に細かく切断するものと相違し、原料Wを薄いシート状のものに圧縮して変化させる作用を奏すると考えられるから、従来、経験しなかった剪断による作用効果を期待できたといえる。
【0027】
ケーシング14の内周面14aの断面形態を前記の一対のパドル部材Aの該分割円筒体12の外側の円弧面12bに対応させ、かつ、前記の外側の円弧面12bとケーシング14の内周面14aが一定の間隙βを隔てて設けられている(図1を参照)。
前記の間隙βは、外側の円弧面12bとシャフト10の外周面10aの間隙αと同様に具体例として発明者らは実験的に1mm程度の設定を試みた。
ケーシング14の内周面14aの断面形態が分割円筒体12の外側の円弧面12bに対応されていることにより、ケーシング14内で反復移動される原料Wは負荷を受けることなく、円滑に移動される。
従って、このことでケーシング14内の原料Wの攪拌混合が充分に行うことができる。
【0028】
さらに、図示を省略したが、ケーシング14の一方に搬入用ポンプに接続された原料搬入口を、他方に原料搬出口を設けることにより、ケーシング14内で処理された原料Wをケーシング14外へ連続的に搬出できることも予定されている。
【0029】
そこで、この発明の実施例の方法の発明をさらに、前記した練り製品用原料の練り装置20の作用と併せ説明すると、まず、前記の一対のパドル部材Aを互いに反対方向に回転させる。
【0030】
次いで、一対のパドル部材Aの回転に追従して回転する前記の該略半截面12aにより、ケーシング14内の原料Wを図1の左側のパドル部材Aにより矢印Xに示すように前記の両パドル部材A間の間隙αへ強制的に押し出すようにして供給する。
左側のパドル部材Aにより矢印Xのように原料Wは押し出される。
【0031】
間隙αへ供給した原料Wを前記の一対のパドル部材Aの回転作用により該間隙αを通過させるとともにその通過時に原料Wを圧縮する。
この工程時に前記したように間隙αを1mm程度に設定した場合、とりわけ、原料Wが略半截面12aを介して強制的に押し出され、原料Wを間隙αにより圧縮しつつ剪断できることにより、原料のたんぱく質の溶出の促進を一層期待できる。
【0032】
圧縮した原料Wを該間隙αから前記の一対のパドル部材Aの回転作用により、ケーシング14内に解放して圧縮状態を解除し、圧縮状態を解除することにより、膨張した原料Wを回転する一対の該パドル部材Aによりケーシング14内で乱流を発生させて撹拌し、前記の各工程を反復する(図2を参照)。
【0033】
さらに、ケーシング14の内周面14aの断面形態を前記の一対のパドル部材Aの該分割円筒体12の外側の円弧面12bに対応させ、負荷なく原料Wを再び原位置に戻し、先の各工程が、反復されることにより一層たんぱく質の溶出の促進が行われる。
すなわち、この効果はケーシング14内に供給された原料Wは、シャフト10が回転すると一方のパドル部材Aを構成する分割円筒体12の回転方向に直面した略半截面12aにより押し出され、該パドル部材Aのシャフト10の外周面10aと他方のパドル部材Aの分割円筒体12の外側の円弧面12bにより構成される間隙αを通過することで圧縮され、その直後回転方向に背面した該パドル部材Aの分割円筒体12の略半截面12aとケーシング14内にできる空間に開放される一連の動作が反復して行われることで充分な攪拌ができることによるものである。
【0034】
かくして、原料Wはケーシング内で、供給→圧縮→膨張→撹拌という工程を反復させるから、従来経験しなかった原料の処理を行うことができる。
とりわけ、原料Wを圧縮し、かつ、撹拌し、剪断するから、圧縮した原料Wの体積を疑似の原状態に復元するように膨張させる工程を反復させるので、背景技術と比較してたんぱく質の溶出の促進が顕著に期待できる。
【実施例2】
【0035】
先に説明した実施例1に記載されたパドル部材Aの構成は、略半截状の分割円筒体12とシャフト10の組み合わせによるであるが、この実施例では、第1の主体部12Bと第2の主体部10Bが一体のもので鋼材などの材料が切削加工されたものである。
そして、一対のパドル部材Aの採用による練り製品用原料の練り方法やその装置についても変化はない。
したがって、生産技術上の相違に止まり、パドル部材Aとしての機能上の相違はないといえる。
【0036】
この実施例では、円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面12dが備えられた大径の第1の主体部12Bと円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面10bが備えられた小径の第2の主体部10Bが設けられている。
第1の主体部12Bと第2の主体部10Bがそれぞれの該円弧面12d、10bを外側に向けて一体に設けられている。
第1の主体部12Bと第2の主体部10Bの境において、第1の主体部12Bの非円弧面12eを練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材Aの一対が設けられている。
そして、原料Wをケーシング14内で滞留させることなく充分な混合攪拌を行うとともに、後述する間隙αを設けて原料Wを強制的に押し出すことができるようにするため、非円弧面12eと円弧面10bの間の角度が略105度に設けられている。
なお、非円弧面12eと円弧面10bの間の角度は、この角度に限定されるものではなく、略90度〜略110度の間に設けられることが望ましい。
【0037】
円柱の鋼材を切削加工することにより、材料の両側に非円弧面12eを鋼材の長手方向に向けて設けることや、第2の主体部10Bの径を第1の主体部12Bの径に比較して小さく加工することに格別の困難性はない。
【0038】
一方の該パドル部材Aの第1の主体部12Bの外側の円弧面12dと他方の該パドル部材Aの第2の主体部10Bの円弧面10bが間隙αを隔ててケーシング14内に配置されることによりこの練り製品用原料の練り装置20が得られる。
【0039】
そこで、該装置20に基づき、練り製品用原料の練り方法について説明すると、基本的に実施例1と相違しないが、前記の一対のパドル部材Aを互いに反対方向に回転させる。
【0040】
前記の一対のパドル部材Aの回転に追従して回転する前記の該非円弧面12eにより、ケーシング14内へ搬入させた原料Wを前記の両パドル部材A間の間隙αへ供給する。
【0041】
該間隙αへ供給した原料Wを前記の一対のパドル部材Aの回転作用により該間隙αを通過させるとともにその通過時に原料Wを圧縮する。
【0042】
圧縮した原料Wを該間隙αから前記の一対のパドル部材Aの回転作用により、ケーシング14内に解放して圧縮状態を解除する。
【0043】
圧縮状態を解除することにより、膨張した原料Wを回転する一対の該パドル部材Aによりケーシング14内で撹拌し、前記の各工程を反復するものである。
【0044】
発明者らは、本発明による該装置と背景技術の一例であるステファンカッター(UM?5)により原料の加工処理を比較実験したので次にその処理方法およびその比較データをあげる。
【0045】
(1)あらかじめサイレントカッターにより、イトヨリの冷凍すり身を3mm程度に細断し、塩分を含まない「空ずり」を実施した(本発明と背景技術は共通である)。
【0046】
【表1】

【0047】
(2)空ずり後のイトヨリの冷凍すり身100重量%、食塩3重量%、水25重量%を上記の(表1)に示すように混合した(本発明と背景技術は共通である)。
【0048】
(3)A 本発明の場合では、上記の混合物をケーシングに入れ、一対のパドル部材を30rpmで、30分間撹拌した(本発明)。
【0049】
(3)B 一方、ステファンカッターの場合では、上記の混合物を容器に入れ、その容器を3000rpmで、5分間撹拌した(背景技術)。
【0050】
(4)A 攪拌・混合してできた生身を本発明の場合、ステファンカッターに入れ、真空下で30秒間脱気処理した後、30mmφのケーシングチューブに入れ、90℃にて30分加熱した後、冷却したものを本発明用のテスト用サンプルに採用した(本発明)。
【0051】
(4)B 一方、ステファンカッターの場合では、前記の混合物をステファンカッターに入れ、真空下で撹拌混合した。
このときの混合の終了時は、本発明の練り装置により出来上がった生身をステファンカッターに入れ、真空下で30秒間脱気処理した後の温度と同じ温度になった時点とした。
そして、30mmφのケーシングチューブに入れ、90℃にて30分加熱した後、冷却したものをステファンカッター用のテスト用サンプルに採用した(背景技術)。
【0052】
前記の両者のテスト用サンプルをそれぞれ13mmの厚さに切り、株式会社サン科学の総合物性測定装置(CR?200Dレオメータ)にてMODE4、SPEED60mm、SET10g、径1mmのくさび型プランジャーにより、破断強度および破断距離を測定した結果、次の(表2)に示されるように本発明用のサンプルではステファンカッター用のサンプルと比較して高い物性が得られた。
【0053】
【表2】

【0054】
さらにまた、実施例2として、次(表3)に示すようにかまぼこを生産する材料(練り製品用原料)を配合して(表1)と同じ方法により比較測定した。
【0055】
【表3】

【0056】
その結果、(表2)と同様に、以下の(表4)のとおり、本発明用のサンプルから高い物性を得ることができた。
【0057】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】練り製品用原料の練り装置の実施例を示した断面図である。
【図2】練り製品用原料の練り装置の実施例を示した別の断面図である。
【図3】練り製品用原料の練り装置の他の実施例を示した断面図である。
【図4】練り製品用原料の練り装置の実施例を示した要部の斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
10 シャフト
10a 外周面
10b 円弧面
10B 第2の主体部
12 分割円筒体
12a 略半截面
12b 外側の円弧面
12c 内側の円弧面
12d 円弧面
12e 非円弧面
12B 第1の主体部
14 ケーシング
14a ケーシングの内周面
16 駆動軸
20 練り製品用原料の練り装置
A パドル部材
X 練り製品用原料の乱流方向
α 一方のパドル部材の分割円筒体の外側の円弧面と他方のパドル部材のシャフトの外周面間の間隙
β 分割円筒体の外側の円弧面とケーシングの内周面間の間隙
W 練り製品用原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が円形であるシャフトと、
円筒体を略半截することにより形成される両側の略半截面、外側の円弧面および内側の円弧面を備えた略半截状の分割円筒体からなり、
該分割円筒体の内側の円弧面を該シャフトの周囲の一部に当接させて該分割円筒体が該シャフトに結合されるとともに、該略半截面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が設けられ、
一方の該パドル部材の該分割円筒体の外側の円弧面と他方の該パドル部材の該シャフトの外周面が間隙を隔ててケーシング内に配置され、
前記の一対のパドル部材を互いに反対方向に回転させ、
前記の一対のパドル部材の回転に追従して回転する前記の該略半截面により、ケーシング内へ搬入させた練り製品用原料を前記の両パドル部材間の間隙へ供給し、
該間隙へ供給した練り製品用原料を前記の一対のパドル部材の回転作用により該間隙を通過させるとともにその通過時に練り製品用原料を圧縮し、
圧縮した練り製品用原料を該間隙から前記の一対のパドル部材の回転作用により、ケーシング内に解放して圧縮状態を解除し、
圧縮状態を解除することにより、膨張した練り製品用原料を回転する一対の該パドル部材によりケーシング内で撹拌し、
前記の各工程を反復することを特徴とする練り製品用原料の練り方法。
【請求項2】
円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた大径の第1の主体部と円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた小径の第2の主体部からなり、
第1の主体部と第2の主体部がそれぞれの該円弧面を外側に向けて一体に設けられ、
第1の主体部と第2の主体部の境において、第1の主体部の非円弧面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が設けられ、
一方の該パドル部材の第1の主体部の外側の円弧面と他方の該パドル部材の第2の主体部の円弧面が間隙を隔ててケーシング内に配置され、
前記の一対のパドル部材を互いに反対方向に回転させ、
前記の一対のパドル部材の回転に追従して回転する前記の該非円弧面により、ケーシング内へ搬入させた練り製品用原料を前記の両パドル部材間の間隙へ供給し、
該間隙へ供給した練り製品用原料を前記の一対のパドル部材の回転作用により該間隙を通過させるとともにその通過時に練り製品用原料を圧縮し、
圧縮した練り製品用原料を該間隙から前記の一対のパドル部材の回転作用により、ケーシング内に解放して圧縮状態を解除し、
圧縮状態を解除することにより、膨張した練り製品用原料を回転する一対の該パドル部材によりケーシング内で撹拌し、
前記の各工程を反復することを特徴とする練り製品用原料の練り方法。
【請求項3】
断面が円形であるシャフトと、
円筒体を略半截することにより形成される両側の略半截面、外側の円弧面および内側の円弧面を備えた略半截状の分割円筒体からなり、
該分割円筒体の内側の円弧面を該シャフトの周囲の一部に当接させて該分割円筒体が該シャフトに結合されるとともに、該略半截面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が互いに反対方向に回転自在に設けられ、
一方の該パドル部材の該分割円筒体の外側の円弧面と他方の該パドル部材の該シャフトの外周面が間隙を隔ててケーシング内に配置されてなることを特徴とする練り製品用原料の練り装置。
【請求項4】
円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた大径の第1の主体部と円柱体が略半截状にされ、外側に円弧面が備えられた小径の第2の主体部からなり、
第1の主体部と第2の主体部がそれぞれの該円弧面を外側に向けて一体に設けられ、
第1の主体部と第2の主体部の境において、第1の主体部の非円弧面を練り製品用原料の供給手段として構成してなるパドル部材の一対が互いに反対方向に回転自在に設けられ、
一方の該パドル部材の第1の主体部の外側の円弧面と他方の該パドル部材の第2の主体部の円弧面が間隙を隔ててケーシング内に配置されてなることを特徴とする練り製品用原料の練り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−187973(P2008−187973A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27215(P2007−27215)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(391008283)高浜工業株式会社 (12)
【出願人】(000141509)株式会社紀文食品 (39)
【Fターム(参考)】