説明

縁部絶縁部材及びその製造方法

【課題】絶縁部材本体と端部被覆部材とを強固に連結できるとともに、これらの内部に電解液が浸入するようなことが防止され、長期に亘り安定して電解精錬工程に用いることができる縁部絶縁部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】金属の電解精錬工程に用いられる電極板1の縁部に取り付ける縁部絶縁部材10であって、棒状をなし、その長手方向に沿って延びる装着溝14を有する絶縁部材本体11と、前記絶縁部材本体11の長手方向の端部に配置される端部被覆部材12と、を備え、前記端部における外面及び前記装着溝14のうち少なくとも一方には、被係合部16が形成されており、前記端部被覆部材12は、溶融した樹脂材料が前記端部に固化し一体に形成されているとともに、前記被係合部16の形状に対応して形成された係合部17を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の電解精製や電解採取などの電解精錬工程において使用される電極板の縁部に取り付ける縁部絶縁部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属の電解精錬においては、ステンレス鋼等の金属からなる電極板を陰極とし、これを精錬する金属からなる陽極とともに電解槽に収容して電解液に浸漬し、電解を行って電極板の両表面に金属を析出させ、これを剥離することで板状精製物を得る方法が適用されている。
【0003】
従来、銅の電解精錬では、例えば、ステンレス鋼からなる電極板を陰極として比較的短時間の電解を行い、厚さ0.5mmから1.0mm程度の銅の種板を得た後、この種板を陰極として再度電解を行い、種板の表面に銅を析出させるコンベンショナル法が用いられていた。
【0004】
一方、近年では、ステンレス鋼製の電極板を陰極として長時間の電解を行い、厚さ8mmから10mm程度の銅板を直接得るパーマネントカソード法が導入されている。パーマネントカソード法では、従来の種板を用いる場合に比べて電極板の厚さを確保でき、電極板の懸垂性(垂直性)が改善されるため、陰極と陽極との間の距離を短くして電流密度を上げることができる。これにより、生産性が大きく向上するとともに、不純物が少なく異常析出がない高品質の電気銅を得ることができるものである。
【0005】
上記のような種板や銅板を、ステンレス鋼等で構成された電極板の両面に電着析出させた場合には、電着した金属を剥離する必要があるが、電極板の縁部(特に側縁部)に銅が電着して表裏両面の種板同士又は銅板同士が連結された場合には、種板や銅板を剥ぎ取ることが困難となってしまう。そこで、電極板の縁部への銅の電着を防止するための縁部絶縁部材が提供されている(例えば、特許文献1、2参照)。縁部絶縁部材は、一般に、エンジニアリングプラスチック等の樹脂材料を用いて形成される。
【0006】
特許文献1に示されるエッジストリップ(縁部絶縁部材)は、棒状をなし鉛直方向に延びるとともに断面U字状に形成されたチャネル部材(絶縁部材本体)と、このチャネル部材の下端部に配置されるエンドキャップ(端部被覆部材)と、を有している。チャネル部材には、その長手方向に沿って溝が設けられており、この溝内に陰極板(電極板)の側縁部が嵌入されるようになっている。すなわち、チャネル部材が陰極板の側縁部を被覆するようにして装着されることにより、側縁部に銅が電着されないようになっている。
【0007】
また、エンドキャップは、チャネル部材の溝内に収容された前記側縁部の下端面が電解液に露出しないようにするためのものである。すなわち、前記下端面が電解液に露出してこの部分に銅が電着すると、陰極板の表裏両面に電着された種板や銅板が陰極板から剥がれにくくなって製品の品質を低下させたり、エッジストリップが破損したりするので、エンドキャップを設けることによりこのような不具合を防止している。エンドキャップは、一般に、超音波接着や溶媒接着等を用いてチャネル部材に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−502511号公報
【特許文献2】特開2007−2282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、エンドキャップとチャネル部材とが、超音波接着や溶媒接着等を用いて接着されると、互いの接着面積を充分に確保することができず、接着面に隙間が生じることがある。そして、電解の際、この隙間から電解液がエッジストリップの内部に浸入し銅が析出して、エッジストリップが破損してしまうことがあった。また、エンドキャップとチャネル部材との接着強度が充分に確保できないことから、繰り返し使用するうちに接着面が剥離して、エンドキャップがチャネル部材から脱落することがあった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、絶縁部材本体と端部被覆部材とを強固に連結できるとともに、これらの内部に電解液が浸入するようなことが防止され、長期に亘り安定して電解精錬工程に用いることができる縁部絶縁部材及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、金属の電解精錬工程に用いられる電極板の縁部に取り付ける縁部絶縁部材であって、棒状をなし、その長手方向に沿って延びる装着溝を有する絶縁部材本体と、前記絶縁部材本体の長手方向の端部に配置される端部被覆部材と、を備え、前記端部における外面及び前記装着溝のうち少なくとも一方には、被係合部が形成されており、前記端部被覆部材は、溶融した樹脂材料が前記端部に固化し一体に形成されているとともに、前記被係合部の形状に対応して形成された係合部を有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る縁部絶縁部材によれば、端部被覆部材は、溶融した樹脂材料が絶縁部材本体の端部において固化し一体に形成されている。すなわち、端部被覆部材は、射出成形等により絶縁部材本体に一体成形されているので、互いの間に隙間を生じさせるようなことがなく、充分に密着性が確保されているとともに、接合面積が確保されている。
【0013】
従って、これら絶縁部材本体と端部被覆部材との間から電解液が浸入するようなことが確実に防止される。すなわち、従来では、絶縁部材本体と端部被覆部材とを超音波接着や溶剤接着等を用いて接着していたので、互いの接着面に隙間が生じることになり、該隙間から縁部絶縁部材の内部に電解液が浸入するとともに内部で金属が析出し、該縁部絶縁部材を破損させてしまうようなことがあった。一方、本発明によれば、前記隙間が発生しないことから、電解液の浸入を防止でき、前述の破損の虞が生じない。
【0014】
また、一体成形により、絶縁部材本体と端部被覆部材との接合面積が充分に確保されることから、これら絶縁部材本体と端部被覆部材とが強固に連結され、互いの接合強度が大幅に高められている。さらに、この一体成形の際、溶融した樹脂材料が被係合部の形状に対応して固化することで係合部が形成されている。従って、被係合部と係合部との係合が確実になされることになり、かつ、絶縁部材本体と端部被覆部材との接合面積がより増大される。
【0015】
このような構成により、縁部絶縁部材は、絶縁部材本体と端部被覆部材とを相対的に変位させるような外力に対して、機械的強度が充分に確保される。ここで、被係合部と係合部との係合には、例えば、凹部と凸部による係合や、表面粗さを用いた係合などの3次元的な係合が考えられることから、絶縁部材本体と端部被覆部材とが単に2次元的に平面同士で接合されているような構成に対比して、種々の方向から加えられる前記外力に対する剛性が高められている。
【0016】
さらに、これら被係合部と係合部とが形成されていることにより、端部被覆部材を固化させた際の冷却による引け(熱変形)も抑制される。
【0017】
また、例えば、銅の電解精錬工程においては、硫酸銅溶液中におけるヒートサイクルが考えられるが、本発明の縁部絶縁部材によれば、前述した一体成形及び係合によって、絶縁部材本体と端部被覆部材との密着性が高められているとともに、熱応力に対する機械的強度も確保されているので、耐蝕性、耐熱性が向上し、長期に亘り安定して電解精錬工程に用いることができる。
【0018】
また、本発明に係る縁部絶縁部材において、前記被係合部は、有底穴、貫通孔及び溝のいずれかであることとしてもよい。
【0019】
本発明に係る縁部絶縁部材によれば、被係合部が、有底穴、貫通孔及び溝のいずれかに形成されているので、被係合部を比較的容易に形成できる。すなわち、例えば、絶縁部材本体を押出し加工により形成した後、この絶縁部材本体の端部に穿設加工や切削加工を行って、簡便に被係合部を形成できる。
【0020】
また、このように被係合部が形成されていることで、端部被覆部材を成形する際、溶融した樹脂材料が被係合部に充填されやすくなり、精度よく係合部が形成されることから、比較的容易に、かつ、安定して被係合部と係合部との係合が行える。
【0021】
また、本発明に係る縁部絶縁部材において、前記装着溝には、弾性材料からなるシール膜が形成されており、前記絶縁部材本体と前記シール膜とが、二色成形法により一体成形されていることとしてもよい。
【0022】
本発明に係る縁部絶縁部材によれば、装着溝内に嵌入された電極板の縁部は、弾性材料からなるシール膜に密着されて絶縁部材本体に被覆されることになる。従って、縁部絶縁部材が、電極板に対して位置ずれしたり脱落したりすることなく、安定して該電極板に支持されるとともに、電極板の縁部とシール膜との間から装着溝内に電解液が浸入するようなことが防止される。
【0023】
さらに、絶縁部材本体とシール膜とが二色成形法により一体に成形されているので、これら絶縁部材本体とシール膜との間に電解液が入り込むようなこともない。従って、装着溝の内部に金属が析出して該装着溝が押し広げられ、縁部絶縁部材が電極板から外れたりずれたりするようなことがより確実に防止される。
【0024】
また、本発明は、金属の電解精錬工程に用いられる電極板の縁部に取り付ける縁部絶縁部材の製造方法であって、押出し成形により、棒状の絶縁部材本体を成形する工程と、前記絶縁部材本体の長手方向の端部に、被係合部を形成する工程と、射出成形により、前記端部に端部被覆部材を一体成形するとともに、前記被係合部に係合する係合部を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る縁部絶縁部材の製造方法によれば、絶縁部材本体が押出し成形により成形されているので、該絶縁部材本体の形状や寸法の設定に対する自由度が増し、縁部絶縁部材に対する種々の要求に比較的容易に対応できる。
【0026】
すなわち、本発明によれば、例えば、縁部絶縁部材の全体を射出成形により形成するような手法に対比して、設備費用が大幅に削減されるとともに、大量生産のみならず多品種少量生産にも柔軟に対応することができる。また、縁部絶縁部材の全体を射出成形により成形しようとした場合には、残留熱応力による変形の虞があるが、本発明によれば、押出し成形を用いて絶縁部材本体を成形することから前述の変形の虞が生じない。
【0027】
また、端部被覆部材が、絶縁部材本体の端部に射出成形により一体成形されているとともに、該端部の被係合部に係合する係合部が形成されるようになっている。従って、端部被覆部材と絶縁部材本体との間に隙間が生じるようなことがなく、充分に密着性が確保されるとともに接合面積が確保される。よって、これら絶縁部材本体と端部被覆部材との間から電解液が浸入するようなことが確実に防止され、内部で金属が析出して縁部絶縁部材を破損させてしまうような虞がない。
【0028】
また、従来の製造方法において、絶縁部材本体と端部被覆部材とを溶媒接着を用いて接着する場合には、有機溶媒による作業環境の不善が考えられたが、本発明では、絶縁部材本体と端部被覆部材とが射出成形を用いて一体とされていることから、前述の作業環境の不善の虞がない。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る縁部絶縁部材及びその製造方法によれば、絶縁部材本体と端部被覆部材とを強固に連結できるとともに、これらの内部に電解液が浸入するようなことが防止され、長期に亘り安定して電解精錬工程に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材を電極板に装着した状態を示す正面図である。
【図2】図1の縁部絶縁部材における端部を拡大して示す正面図である。
【図3】図2の矢視Aを示す底面図である。
【図4】図2のB−B断面を示す図である。
【図5】図2のC−C断面を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材の製造手順において、絶縁部材本体の製造を説明する図である。
【図7】図6のD−D断面を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材の製造手順において、端部被覆部材の製造を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材の製造手順において、端部被覆部材の製造を説明する図である。
【図10】図9のE−E断面を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材を電極板に装着する手順を説明する図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材を電極板に装着する手順を説明する図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材を電極板に装着する手順を説明する図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材における被係合部の変形例を示す(a)断面図、及び、(b)正面図である。
【図15】本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材における被係合部の変形例を示す(a)断面図、及び、(b)F−F断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材は、金属の電解精製や電解採取などの電解精錬工程において使用する電極板の縁部に取り付けられるものであり、本実施形態においては、銅の電解精錬に用いられている。
【0032】
図1に示すように、この銅の電解精錬では、電解槽に貯留された硫酸銅溶液からなる電解液S内に、ステンレス鋼製の電極板1を浸漬するとともに、この電極板1を陰極として用いる。そして、この電極板1の表裏両面に銅を電着させて、厚さ8mmから10mm程度の銅板を得るパーマネントカソード法を採用している。
【0033】
電極板1は、矩形板状をなし、その上縁部(図1における上側)に一対の吊り手2が取り付けられている。また、これらの吊り手2は、水平方向に延びる角棒状のハンガーバー3に支持されている。また、電極板1の下縁部には、図示しないV字溝が形成されている。本実施形態の縁部絶縁部材10は、この電極板1の左右の側縁部に着脱可能に取り付けられるものである。
【0034】
縁部絶縁部材10は、プラスチック等の樹脂材料から形成される。本実施形態では、縁部絶縁部材10を、絶縁性、耐熱性及び耐酸性を有するエンジニアリングプラスチックで構成している。このように、エンジニアリングプラスチックを採用することにより、縁部絶縁部材10が電解液Sに長時間浸漬された場合でも、劣化が防止される。
【0035】
このエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、シリコン樹脂(SI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリカーボネイト(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリサルフォン(PSF)、ポリフェニルサルフォン(PPSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニルエーテル(PPE)等が挙げられる。
【0036】
ここで、縁部絶縁部材10の材質は、要求される耐熱性、耐酸性、浸漬される電解液等によって異なるため、電解液を構成する酸や温度等を考慮して、好適な材料を選定することが好ましい。例えば、本実施形態における銅の電解精錬では、電解液Sが硫酸で構成されて約60℃に維持されているので、硫酸に対する耐酸性を有するとともに、60℃で軟化や変質が生じない程度の耐熱性を有するポリフェニルエーテル(PPE)を使用することが好ましい。
【0037】
縁部絶縁部材10は、棒状をなす絶縁部材本体11と、この絶縁部材本体11の長手方向の端部に配置される略直方体状の端部被覆部材12と、絶縁部材本体11に沿うようにして着脱可能に装着される丸棒状の締め付けロッド13と、を備えている。
【0038】
縁部絶縁部材10は、電極板1の両側縁部に一対設けられており、絶縁部材本体11の長手方向は、鉛直方向に沿うようにして配置されている。また、端部被覆部材12は、絶縁部材本体11の下端部に配置されている。端部被覆部材12の下端面は、電極板1の下端面よりも下方へ突出し配置されている。また、絶縁部材本体11の上端部は、電解液Sの液面よりも上方に配置されている。
【0039】
図2乃至図5に示すように、絶縁部材本体11において電極板1側を向く側面(以下「一側面」)には、該絶縁部材本体11の長手方向に沿って延びる装着溝14が形成されている。図4において、装着溝14は、その長手方向に直交する断面が略U字状をなしており、前記一側面に開口し形成されている。
【0040】
また、装着溝14の開口幅は、電極板1の厚さ寸法と略同一に設定されており、装着溝14の深さは、例えば18mm程度に設定されている。このような設定により、装着溝14は、ISA法で使用される電極板1の縁部に形成された穴部(不図示)を塞ぐことができるようにされている。
【0041】
また、装着溝14には、熱可塑性エラストマ等の弾性材料からなるシール膜14Aが形成されている。シール膜14Aは、装着溝14に沿うように前記長手方向に沿って延在しており、その前記断面が略U字状に形成されている。
【0042】
シール膜14Aを構成する熱可塑性エラストマとしては、長時間電解液Sに浸漬されていても劣化することがないものが用いられる。このような熱可塑性エラストマとして、例えば、スチレン系(SBC)、オレフィン系(TPO)、ウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE)や、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0043】
詳しくは、スチレン系(SBC)として、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
【0044】
また、オレフィン系(TPO)として、ポリプロピレン(PP)の中に各種ゴム材を微分散させた、PP−EPM、PP−EPDM、PP−NBR、PP−IRや、ポリエチレン(PE)の中にエチレンプロピレンゴムを微分散させたPE−EPDMなどが挙げられる。
【0045】
また、ウレタン系(TPU)として、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール(PBA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(PHC)などが挙げられる。
【0046】
また、ポリエステル系(TPEE)として、ポリブチレンテレフタレート−ポリカプロラクトン(PBT−PCL)、ポリブチレンアジテート(PBA)などが挙げられる。
【0047】
本実施形態では、シール膜14Aとして、スチレン系エラストマの一種であるスチレンエチレンブチレンブロック共重合体(SEBS)が用いられている。そして、このシール膜14Aの硬さは、タイプAデュロメータでA30からA90の範囲内となるように設定されており、本実施形態ではA82とされている。
【0048】
また、絶縁部材本体11とシール膜14Aとは、二色成形法によって一体成形されている。つまり、絶縁部材本体11を構成するポリフェニルエーテルと、シール膜14Aを構成するスチレンエチレンブチレンブロック共重合体とを、同じ金型内に充填して一体に成形している。このような構成により、シール膜14Aと絶縁部材本体11との間には、接着部材などの接合層が形成されていない。
【0049】
また、絶縁部材本体11において、装着溝14の開口する一側面とは反対側を向く側面(以下「他側面」)には、該絶縁部材本体11の長手方向に沿って延びるロッド嵌合溝15が形成されている。ロッド嵌合溝15は、その長手方向に直交する断面が円の一部を切り欠いた円弧状又は略C字状をなしており、前記他側面に開口し形成されている。
【0050】
このロッド嵌合溝15には、締め付けロッド13が嵌合される。締め付けロッド13は、長尺の円柱状をなしており、その外径が、ロッド嵌合溝15の断面がなす円弧の径よりも僅かに大きくなるように形成されている。つまり、ロッド嵌合溝15に締め付けロッド13を嵌合させることによって、該ロッド嵌合溝15が押し広げられるように変形させられるのである。
【0051】
また、絶縁部材本体11の長手方向に沿う下端部には、被係合部16が形成されている。被係合部16は、前記下端部における該絶縁部材本体11の外面及び装着溝14のうち少なくとも一方に形成されている。
【0052】
図5に示すように、本実施形態では、被係合部16は、絶縁部材本体11をその正面から裏面へ向けた厚さ方向(図5における上下方向)に貫通する円柱孔状の貫通孔に形成されている。すなわち、この被係合部16は、絶縁部材本体11の下端部において、該絶縁部材本体11の外面及び装着溝14を連通させるようにして、両方に形成されている。
【0053】
また、絶縁部材本体11の下端部において、他側面側のロッド嵌合溝15に対応する部分には、絶縁部材本体11の下端部側から上端部側へ向かうに連れ漸次一側面側から他側面側へ向かうように傾斜する面取り部11Bが形成されている。
【0054】
また、絶縁部材本体11の長手方向に沿う上端部には、該絶縁部材本体11を前記厚さ方向に貫通する固定孔11Aが形成されている。固定孔11Aは、絶縁部材本体11を電極板1に固定するために設けられるものであり、図1に示すように、電解精錬の際は電解液Sの液面よりも上方に配置される。
【0055】
また、端部被覆部材12は、絶縁部材本体11の下端部に、モールド成形(射出成形)を用いて一体成形されている。すなわち、端部被覆部材12は、溶融したエンジニアプラスチック(樹脂材料)が前記下端部において固化することにより一体に形成されている。また、図2及び図3に示すように、端部被覆部材12は、その下端面が絶縁部材本体11の下端面よりも下方に配置されているとともに、該絶縁部材本体11の装着溝14の開口下部を被覆するように形成されている。
【0056】
また、図5に示すように、端部被覆部材12は、絶縁部材本体11の下端部における外面及び装着溝14内にも形成されている。さらに、端部被覆部材12は、絶縁部材本体11の被係合部16の形状に対応して該被係合部16内にも充填され形成されており、この被係合部16に対応する部分が係合部17とされている。
【0057】
詳しくは、端部被覆部材12は、図2及び図3に示すように、全体の外観としては、略直方体状に形成されている。また、図5に示すように、端部被覆部材12において絶縁部材本体11の外面及び装着溝14内に配置される部分は、夫々矩形板状に形成されているとともに、これらの矩形板状の部分同士は、円柱状の係合部17により互いに連結されている。このように、端部被覆部材12は、絶縁部材本体11に一体とされている。
【0058】
また、端部被覆部材12の材質としては、絶縁部材本体11と同一のエンジニアリングプラスチック等の樹脂材料を用いることができる。本実施形態では、端部被覆部材12として、絶縁部材本体11と同一のポリフェニルエーテルを用いている。
【0059】
尚、端部被覆部材12として、絶縁部材本体11の材質とは異なる材質の樹脂材料を用いても構わない。この場合、端部被覆部材12に用いる樹脂材料の融点が、絶縁部材本体11を構成する樹脂材料の融点以上に設定されていることが望ましい。これにより、後述のモールド成形の際、溶融した端部被覆部材12により絶縁部材本体11の表面が加熱され溶けるので、互いの接合がより強固になるのである。
【0060】
さらに、端部被覆部材12の材質として、ポリフェニルエーテル以外のポリフェニルサルフォン(PPSF)などの耐衝撃性に優れる樹脂材料を用いることとしてもよく、この場合、電極板1を床等に載置する際に該縁部絶縁部材10が受ける衝撃に対して、機械的強度が充分に確保されることになる。
【0061】
次に、縁部絶縁部材10を製造する手順について、図6乃至図10を用いて説明する。
【0062】
図6及び図7に示すように、まず、押出し成形により、絶縁部材本体11を成形する。詳しくは、二色成形法を用いて、絶縁部材本体11を構成するポリフェニルエーテルと、シール膜14Aを構成するスチレンエチレンブチレンブロック共重合体とを、同じ金型内に充填して一体に押出し成形する。
【0063】
次いで、絶縁部材本体11を前記厚さ方向に貫通するようにして、固定孔11A及び被係合部16を夫々穿設する。これらの固定孔11A及び被係合部16は、装着溝14のシール膜14Aに開口するように夫々形成される。
【0064】
また、切削加工により、図6に示すように、絶縁部材本体11の下端部(図6における左側)における他側面側のロッド嵌合溝15に対応する部分に、面取り部11Bを形成する。
【0065】
次いで、図8乃至図10に示すように、モールド成形(射出成形)により、絶縁部材本体11の下端部に端部被覆部材12を一体成形するとともに、被係合部16に係合する係合部17を形成する。詳しくは、図8に示すように、射出成形装置20を用い、絶縁部材本体11の下端部をこの射出成形装置20の金型内に配置する。そして、金型内を高圧状態として、前記下端部に向けて溶融した樹脂材料を射出するとともに金型内に充填し、端部被覆部材12の形状に固化させる。
【0066】
この際、図10に示すように、絶縁部材本体11の下端部に形成された被係合部16内にも溶融した樹脂材料が充填される。詳しくは、金型内において、絶縁部材本体11の下端部のうち、前記厚さ方向の外方を向く両端面、及び、これらの間に配置された装着溝14内に、溶融した樹脂材料が夫々充填されるとともに、これら両端面及び装着溝14に開口された被係合部16内にも、前記樹脂材料が充填される。
【0067】
尚、この射出成形の際、絶縁部材本体11において金型内に配置された部分が、加熱により僅かにその表面が溶融される程度の設定(温度、材料選定)である場合、該絶縁部材本体11と端部被覆部材12との接合強度がより高められることから好ましい。また、絶縁部材本体11よりも低融点のシール膜14Aは、その金型内に配置された部分が確実に溶融することになる。これにより、装着溝14内においても、絶縁部材本体11と端部被覆部材12との間に隙間が生じず、密着力のある接合がなされるようになっている。
【0068】
また、特に図示しないが、締め付けロッド13は、押出し成形により成形する。締め付けロッド13の材料としては、例えば、絶縁部材本体11に用いられる樹脂材料と同一のものを用いるか、又はそれ以上の硬度を有するものを用いることが好ましい。
【0069】
次に、このように製造された縁部絶縁部材10を電極板1に装着する手順について、図11乃至図13を用いて説明する。
【0070】
まず、図11に示すように、絶縁部材本体11の装着溝14に、電極板1の側縁部を嵌入させることにより、この電極板1に縁部絶縁部材10を装着する。ここで、図中に符号1Aで示すものは、電極板1の側縁部の下端において、端部被覆部材12の装着溝14内の形状に対応して形成された矩形状の切り欠き部であり、前述の装着により、この切り欠き部1Aと端部被覆部材12とが、互いに密着される。
【0071】
この際、図4に示すように、電極板1の側縁部の端面は、装着溝14の最奥部の底面(すなわち一側面側を向く面)に突き当てられる。また、電極板1の切り欠き部1Aにおいて、その側方を向く面は、図5に示すように、端部被覆部材12の装着溝14内に配置される部分のうち一側面側を向く端面に当接される。また、電極板1の切り欠き部1Aにおいて、その下方を向く面は、図2に示すように、端部被覆部材12の装着溝14内に配置される部分のうち上端部側を向く端面に当接される。
【0072】
次いで、図12及び図13に示すように、絶縁部材本体11のロッド嵌合溝15に、締め付けロッド13を嵌入する。具体的には、締め付けロッド13を、縁部絶縁部材10の長手方向に沿って下端部側から上端部側へ向け、面取り部11Bからロッド嵌合溝15内に挿入していく。このように、締め付けロッド13を絶縁部材本体11の他側面側のロッド嵌合溝15に嵌合することで、一側面側の装着溝14の溝幅(すなわち前記厚さ方向の内寸)が減少されるとともに、シール膜14Aが電極板1に対してより強固に密着されるようになっている。
【0073】
縁部絶縁部材10が電極板1に装着された後は、この電極板1を陰極とし、粗銅からなる陽極とともに電解液S内に浸漬させ、図1に示す状態で、例えば160時間以上の長時間の電解を行う。すると、電極板1の両表面に厚さ8mmから10mmの銅が析出し、これらを剥離することで純度の高い銅板が得られるのである。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る縁部絶縁部材10によれば、端部被覆部材12は、溶融した樹脂材料が絶縁部材本体11の下端部において固化し一体に形成されている。すなわち、端部被覆部材12は、モールド成形により絶縁部材本体11に一体成形されているので、互いの間に隙間を生じさせるようなことがなく、充分に密着性が確保されているとともに、接合面積が確保されている。
【0075】
従って、これら絶縁部材本体11と端部被覆部材12との間から電解液Sが浸入するようなことが確実に防止される。すなわち、従来では、絶縁部材本体とキャップ状の端部被覆部材とを超音波接着や溶剤接着等を用いて接着していたので、互いの接着面に隙間が生じることになり、該隙間から縁部絶縁部材の内部に電解液Sが浸入するとともに内部で銅が析出し、該縁部絶縁部材を破損させてしまうようなことがあった。一方、本実施形態の縁部絶縁部材10によれば、前記隙間が発生しないことから、電解液Sの浸入を防止でき、前述の破損の虞が生じない。
【0076】
また、一体成形により、絶縁部材本体11と端部被覆部材12との接合面積が充分に確保されることから、これら絶縁部材本体11と端部被覆部材12とが強固に連結され、互いの接合強度が大幅に高められている。さらに、この一体成形の際、溶融した樹脂材料が被係合部16の形状に対応して固化することで係合部17が形成されている。従って、被係合部16と係合部17との係合が確実になされることになり、かつ、絶縁部材本体11と端部被覆部材12との接合面積がより増大される。
【0077】
このような構成により、縁部絶縁部材10は、絶縁部材本体11と端部被覆部材12とを相対的に変位させるような外力に対して、機械的強度が充分に確保される。また、被係合部16と係合部17との係合は、貫通孔とその内部に充填され固化した柱状部材とによる3次元的な係合であることから、絶縁部材本体11と端部被覆部材12とが単に2次元的に平面同士で接合されているような構成に対比して、種々の方向から加えられる前記外力に対する剛性が大幅に高められている。
【0078】
さらに、これら被係合部16と係合部17とが形成されていることにより、端部被覆部材12を固化させた際の冷却による引け(熱変形)も抑制される。
【0079】
また、本実施形態で説明したような銅の電解精錬工程においては、硫酸銅溶液(電解液S)中におけるヒートサイクルが考えられるが、この縁部絶縁部材10によれば、前述した一体成形及び係合によって、絶縁部材本体11と端部被覆部材12との密着性が高められているとともに、熱応力に対する機械的強度も確保されているので、耐蝕性、耐熱性が向上し、長期に亘り安定して電解精錬工程に用いることができる。
【0080】
また、絶縁部材本体11の被係合部16が貫通孔で形成されているので、穿設加工等の簡便な加工によって、該被係合部16を比較的容易に形成できる。
【0081】
また、被係合部16が貫通孔で形成されていることで、端部被覆部材12を成形する際、溶融した樹脂材料が被係合部16に充填されやすくなり、精度よく係合部17が形成されることから、比較的容易に、かつ、安定して被係合部16と係合部17との係合が行える。
【0082】
また、装着溝14には、弾性材料からなるシール膜14Aが形成されており、装着溝14内に嵌入された電極板1の側縁部は、シール膜14Aに密着されて絶縁部材本体11に被覆されることになる。従って、縁部絶縁部材10が、電極板1に対して位置ずれしたり脱落したりすることなく、安定して該電極板1に支持されるとともに、電極板1の側縁部とシール膜14Aとの間から装着溝14内に電解液Sが浸入するようなことが防止される。
【0083】
さらに、絶縁部材本体11とシール膜14Aとが二色成形法により一体に成形されているので、これら絶縁部材本体11とシール膜14Aとの間に電解液Sが入り込むようなこともない。従って、装着溝14の内部に銅が析出して該装着溝14が押し広げられ、縁部絶縁部材10が電極板1から外れたりずれたりするようなことが、より確実に防止される。
【0084】
また、本実施形態では、シール膜14Aを、熱可塑性エラストマであるスチレンエチレンブチレンブロック共重合体で構成しているので、約60℃に保持された電解液Sの中に長時間浸漬された場合であっても、シール膜14Aが劣化することがなく、電極板1と縁部絶縁部材10とが強固に固定され、電解中に縁部絶縁部材10が電極板1から外れたりずれたりすることを防止できる。
【0085】
さらに、シール膜14Aの硬さが、タイプAデュロメータでA82とされているので、電極板1とシール膜14Aとの密着性が確実に高められる。また、ISA法に使用されている電極板1のように穴部が形成されている場合には、この穴部にシール膜14Aが弾性変形し入り込んで、穴部に入り込んだシール膜14Aがアンカー効果を奏するので、縁部絶縁部材10を電極板1にさらに強固に固定できる。
【0086】
また、絶縁部材本体11及び端部被覆部材12を、絶縁性、耐衝撃性、耐熱性、耐酸性に優れたポリフェニルエーテルで構成することにより、縁部絶縁部材10が硫酸で構成された60℃の電解液Sに長時間浸漬された場合でも、絶縁部材本体11及び端部被覆部材12の劣化を防止することができる。
【0087】
また、この縁部絶縁部材10は、締め付けロッド13をロッド嵌合溝15に嵌合したり外したりすることで、電極板1への取り付け及び取り外しが行えるようになっている。従って、縁部絶縁部材10の電極板1への取り付け及び取り外し作業を簡単に行うことができる。また、締め付けロッド13の前述の嵌合により、シール膜14Aが電極板1表面に強く密着するので、電極板1との間に電解液Sが浸入することがなく、電極板1に析出した銅板を簡単に剥離することができる。
【0088】
また、前述の縁部絶縁部材10の製造方法によれば、絶縁部材本体11が押出し成形により成形されているので、該絶縁部材本体11の形状や寸法の設定に対する自由度が増し、縁部絶縁部材10に対する種々の要求に比較的容易に対応できる。
【0089】
すなわち、本実施形態によれば、例えば、縁部絶縁部材10の全体を射出成形により形成するような手法に対比して、設備費用が大幅に削減されるとともに、大量生産のみならず多品種少量生産にも柔軟に対応することができる。また、縁部絶縁部材10の全体を射出成形により成形しようとした場合には、残留熱応力による変形の虞があるが、本実施形態によれば、押出し成形を用いて絶縁部材本体11を成形することから前述の変形の虞が生じない。
【0090】
また、従来の製造方法において、例えば、絶縁部材本体11と端部被覆部材12とを溶媒接着を用いて接着する場合には、有機溶媒による作業環境の不善が考えられたが、本実施形態では、絶縁部材本体11と端部被覆部材12とが射出成形を用いて一体とされていることから、前述の作業環境の不善の虞がない。
【0091】
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0092】
例えば、前述の実施形態においては、絶縁部材本体11の被係合部16が円柱孔状の貫通孔で形成されていることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、被係合部16は、円柱孔状以外の角柱孔状やそれ以外の形状であっても構わない。また、被係合部16に対応し形成される係合部17の形状も、前述の実施形態に限定されるものではない。
【0093】
また、被係合部16及び係合部17は、夫々複数形成されていてもよい。
【0094】
また、図14及び図15は、前述の実施形態で説明した被係合部16の変形例を示している。図示するように、絶縁部材本体11の被係合部として、前述した被係合部16の代わりに、有底穴からなる被係合部26や、溝からなる被係合部36を形成することとしてもよい。
【0095】
詳しくは、図14に示すように、被係合部26、36を、絶縁部材本体11の下端部における外面にのみ形成することとしてもよい。図示の例では、被係合部26、36は、絶縁部材本体11の前記厚さ方向の外方を向く一対の面のうち少なくとも一方に形成されている。
【0096】
また、図15に示すように、被係合部26、36を、絶縁部材本体11の下端部における装着溝14にのみ形成することとしてもよい。図示の例では、被係合部26、36は、装着溝14において前記厚さ方向の内方(中央)を向く一対の面のうち少なくとも一方に形成されている。
【0097】
また、被係合部26、36を、絶縁部材本体11の下端部における外面及び装着溝14の両方に形成することとしてもよい。
また、被係合部26、36の形状、配置、数量は、図示の例に限定されるものではない。
【0098】
また、前述した被係合部16、26、36以外にも、絶縁部材本体11の被係合部として、前記外面や装着溝14から突出する凸部や、ブラスト処理等を用い表面粗さが設定された凹凸部を用いてもよい。
【0099】
このように、被係合部の形状が種々に設定されても、端部被覆部材12の係合部は、前記被係合部の形状に対応して隙間なく形成されるようになっている。
【0100】
また、前述の実施形態では、絶縁部材本体11及び端部被覆部材12を、ポリフェニルエーテルで構成したもので説明したが、これに限定されることはなく、他の樹脂材料であってもよい。ただし、電極板1が浸漬される電解液Sの成分、温度、時間を考慮して、耐酸性、耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックを選定することが好ましい。
【0101】
また、装着溝14のシール膜14Aを構成する熱可塑性エラストマとして、スチレン系であるスチレンエチレンブチレンブロック共重合体(SEBS)を使用したもので説明したが、これに限定されることはなく、他の熱可塑性エラストマであってもよい。ただし、ウレタン系(TPU)のものは耐酸性が劣り、ポリエステル系のものは耐温水性に劣るため、特にスチレン系(SBC)、オレフィン系(TPO)の熱可塑性エラストマで構成することがより好ましい。
【0102】
また、絶縁部材本体11とシール膜14Aとが、二色成形法により一体成形されていることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、絶縁部材本体11とシール膜14Aとが、夫々別に作製されたのち、接着剤等の接着部材により一体に連結されていても構わない。ただし、前述の実施形態で説明したように、二色成形法を用いることにより、シール膜14Aと絶縁部材本体11との間に接着部材からなる接合層を形成することがなくなることから、望ましい。
【0103】
また、図14、図15に示すように、装着溝14にシール膜14Aが形成されていなくとも構わない。
【0104】
また、前述の実施形態においては、パーマネントカソード法による銅の電解精錬について説明したが、これに限定されることはなく、他の金属、例えばNi、Znなどの電解精製、電解採取に使用される電極板1に取り付ける縁部絶縁部材10であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 電極板
10 縁部絶縁部材
11 絶縁部材本体
12 端部被覆部材
14 装着溝
14A シール膜
16、26、36 被係合部
17 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の電解精錬工程に用いられる電極板の縁部に取り付ける縁部絶縁部材であって、
棒状をなし、その長手方向に沿って延びる装着溝を有する絶縁部材本体と、
前記絶縁部材本体の長手方向の端部に配置される端部被覆部材と、を備え、
前記端部における外面及び前記装着溝のうち少なくとも一方には、被係合部が形成されており、
前記端部被覆部材は、溶融した樹脂材料が前記端部に固化し一体に形成されているとともに、前記被係合部の形状に対応して形成された係合部を有することを特徴とする縁部絶縁部材。
【請求項2】
請求項1に記載の縁部絶縁部材であって、
前記被係合部は、有底穴、貫通孔及び溝のいずれかであることを特徴とする縁部絶縁部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の縁部絶縁部材であって、
前記装着溝には、弾性材料からなるシール膜が形成されており、
前記絶縁部材本体と前記シール膜とが、二色成形法により一体成形されていることを特徴とする縁部絶縁部材。
【請求項4】
金属の電解精錬工程に用いられる電極板の縁部に取り付ける縁部絶縁部材の製造方法であって、
押出し成形により、棒状の絶縁部材本体を成形する工程と、
前記絶縁部材本体の長手方向の端部に、被係合部を形成する工程と、
射出成形により、前記端部に端部被覆部材を一体成形するとともに、前記被係合部に係合する係合部を形成する工程と、を備えることを特徴とする縁部絶縁部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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