説明

縣濁混合装置および該装置を用いた固体高分子電解質燃料電池発電システム

【課題】相溶性のない液体を、化学物質を用いることなく、機械的に縣濁混合可能な縣濁混合装置と、該装置を用いた固体高分子電解質燃料電池発電システムを提供する。
【解決手段】相溶性を有しない2種以上の液体を機械的に縣濁混合する縣濁混合部と、前記縣濁混合部の入口側に取り付けられている相溶性を有しない液体のそれぞれの入口部と、前記縣濁混合部の出口側に取り付けられている縣濁混合液流出部とを有する装置を、水と油を縣濁状態に混合する縣濁混合装置として用いる。前記縣濁混合部を、2種以上の液体を混合しつつ噴霧する噴霧混合ノズルと、該噴霧混合ノズルの流入側に該流入側を覆うように設けられている流入側チャンバーと、前記噴霧混合ノズルの噴出側に該噴出側を覆うように設けられている流出側チャンバーとから構成し、前記流入側チャンバーには前記複数の入口部を取り付け、前記流出側チャンバーには前記縣濁混合液流出部を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油と水となどのように相溶性のない液体を、界面活性剤などの化学物質を用いることなく、機械的に縣濁状態に混合する縣濁混合装置に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、燃料電池などの燃料としての水素を生成する燃料改質器に燃料として灯油などの油と水との縣濁混合液を供給するシステムに用いて好適な縣濁混合装置および該装置を用いた固体高分子電解質燃料電池発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、注目を浴び始めた燃料電池や、水素燃料自動車用の水素供給スタンドに供給する水素燃料には、灯油や軽油などの油を燃料改質器によって改質して得られた水素を供給することが検討されている。
【0003】
図7は、従来の固体高分子電解質型燃料電池(PEFC)の発電システムを示す概念図である。
図に示すように、燃料電池1020に供給される燃料ガス(水素)1001は、燃料改質装置1006によって生成される。この燃料改質器1006に供給する原燃料1005としては、例えば天然ガス(都市ガス:例えば13A)、LPGなどの気体燃料、又は、アルコール(例えばメタノール等)灯油、軽油、石炭ガス、ナフサなどの液体燃料が用いられており、天然ガス及びLPG等を用いる場合には、含有するS成分を除去するために、脱硫器1007が設けられている。前記原燃料1005は、水蒸気1009と混合されて燃料改質装置1006に送られ、改質装置1006の内部の改質触媒層により燃料ガス(水素)1001に改質される。
【0004】
前記発電システムにおいて、原燃料として灯油や軽油を用いた場合において、原燃料油の温度が350℃以上になると、油が熱分解して炭化物が析出し、この炭化物によって管路が閉塞される等のトラブルが発生する虞があることが指摘されている。
【0005】
前記問題点を克服するための技術として、図8に示すような原燃料改質システムが提案されている(特許文献1)。このシステムは、図に示すように、油ポンプ2を介して供給された灯油1を脱硫する脱硫器3、水ポンプ7を介して供給された水から水蒸気を発生させる水蒸気発生器8、灯油を気化する気化器4、および灯油を改質する改質器5を有するシステムである。このシステムでは、灯油1の一部または全部を液相の状態で脱硫器3で脱硫した後、得られた脱硫灯油を気化器4において水蒸気発生器8で発生させた水蒸気と混合させて気化し、この気化した脱硫灯油と水蒸気との混合物を気相の状態で改質器5に送り、この改質器5において改質触媒と接触させて水素を取り出す。
【0006】
前記特許文献1に記載の技術では、水蒸気の温度を200℃〜340℃に制御しなければならない。水蒸気温度が200℃未満では、熱が不足して脱硫灯油を完全に気化することができず、340℃を超えると、灯油の炭化トラブルが発生する可能性があるからである。かかる温度範囲を維持するために、水蒸気搬送管路にヒータを取り付け、水蒸気温度を制御している。したがって、装置が煩雑になり、運転コストも低減できない。
【0007】
かかる温度制御にかかる問題点を回避するために、改質器に供給する原燃料の形態として水と油とを縣濁状態に混合した縣濁混合液にして供給する方法が考えられる。水と油とを縣濁混合した縣濁混合液には、水蒸気温度の制御は不要であり、前記温度制御の問題点を回避することができる。
【0008】
このような水と油との縣濁混合液を調製する方法としては、水と油とに界面活性剤を混合した後、ホモジナイザーなどの乳化装置で機械的に攪拌して混合することにより水/油縣濁混合液を得る方法が、知られている(特許文献2)。
【0009】
【特許文献1】特開2002−201478号公報
【特許文献2】特公昭57−017007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献2に開示の方法では、界面活性剤が必須であり、得られた水/油縣濁混合液を改質用の原燃料として用いるとすると、縣濁に用いた界面活性剤は、改質器にとって不純物成分となるため、改質器内の改質触媒を劣化させてしまう。すなわち、前記特許文献2に記載の技術を灯油などの油を改質器により改質して水素を得るために用いる場合の最大の問題点は、縣濁のために必須な界面活性剤が改質触媒を劣化させてしまうことにある。この問題点以外に、界面活性剤の添加にはコストがかかるという問題もある。さらに、ホモジナイザーの設置スペースが必要であり、ホモジナイザーを駆動するための動力が別途必要となるという問題もある。
【0011】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたもので、その課題は、油と水となどのように相溶性のない液体を、界面活性剤などの化学物質を用いることなく、機械的に縣濁状態に混合することのできる縣濁混合装置と、該縣濁混合装置を用いた固体高分子電解質燃料電池発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の請求項[1]にかかる縣濁混合装置は、相溶性を有しない少なくとも2種以上の液体を機械的に縣濁混合する縣濁混合部と、前記縣濁混合部の入口側に取り付けられている相溶性を有しない液体のそれぞれの入口部と、前記縣濁混合部の出口側に取り付けられている縣濁混合液流出部とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項[2]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[1]に記載の縣濁混合装置において、前記縣濁混合部が、2種以上の液体を混合しつつ噴霧する噴霧混合ノズルと、該噴霧混合ノズルの流入側に該流入側を覆うように設けられている流入側チャンバーと、前記噴霧混合ノズルの噴出側に該噴出側を覆うように設けられている流出側チャンバーとから構成され、前記流入側チャンバーには前記複数の入口部が取り付けられ、前記流出側チャンバーには前記縣濁混合液流出部が取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項[3]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[2]に記載の縣濁混合装置において、前記流出側チャンバー内に前記縣濁混合液流出部の開口端が突出し前記噴霧混合ノズルの噴出口に近接対向していることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項[4]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[2]または[3]に記載の縣濁混合装置において、前記相溶性を有しない液体が水と油であり、前記複数の入口部が油入口部と水入口部との2つの入口部から構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項[5]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[2]または[3]に記載の縣濁混合装置において、前記流入側チャンバー内に前記油入口部の開口端が突出するとともに、前記噴霧混合ノズルの流入側開口端に対向し、これらの油入口部の開口端と噴霧混合ノズルの流入側開口端との間に形成される流れ方向に直交するように前記水入口部の開口端が前記流入側チャンバー内に突出していることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項[6]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[4]または[5]に記載の縣濁混合装置において、前記油入口部の上流側に予備混合部が設けられ、前記水入口部の上流側に圧力調整弁が設けられるとともに、該圧力調整弁の上流に分岐流路が設けられ、該水分岐流路が前記予備混合部に連結され、前記圧力調整弁の下流の水流路が前記水入口部の替わりに設けられた第2の水入口部を介して前記流出側チャンバーに連結されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項[7]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[6]に記載の縣濁混合装置において、前記予備混合部が、一側面に流出口が形成され、他側面に内部にノズル口となって終端する第1の流入口が形成され、さらに前記流出口に対向する他の側面に第2の流入口が形成されてなる噴霧混合器から構成され、前記流出口が前記油入口部に連結され、前記第1の流入口が油の供給源に接続され、前記第2の流入口に水流路の分岐流路が接続されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項[8]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[4]または[5]に記載の縣濁混合装置において、前記水入口部に連結される水流路が分岐され、分岐された水分岐流路に圧力調整弁が介装され、該圧力調整弁の下流の水流路が第2の水入口部を介して前記流出側チャンバーに連結されていることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項[9]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[8]に記載の縣濁混合装置において、前記流出側チャンバー内の前記縣濁混合液流出部の開口端と前記噴霧混合ノズルの噴出口との間に形成される流れ方向に直交するように前記第2の水入口部の開口端が前記流入側チャンバー内に突出していることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項[10]にかかる縣濁混合装置は、前記請求項[4]〜[9]のいずれか1項に記載の縣濁混合装置において、前記油が灯油であることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項[11]は、固体高分子電解質燃料電池発電システムに関するもので、この発電システムは、固体高分子電解質燃料電池と、該燃料電池に燃料として水素を供給する燃料改質装置と、前記燃料改質装置の改質器に縣濁混合液を供給する前記請求項1〜10のいずれか1項に記載の縣濁混合装置とを有してなることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項[12]にかかる固体高分子電解質燃料電池発電システムは、前記請求項[11]に記載の固体高分子電解質燃料電池発電システムにおいて、前記縣濁混合液の縣濁混合状態が保持されている時間内に該縣濁混合液が前記燃料改質装置に供給可能な流路条件が設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる縣濁混合装置は、界面活性剤などの化学物質を添加することなく、灯油などの油と水とから機械的に水/油縣濁混合液を調製することができる。得られる水/油縣濁混合液は、界面活性剤を用いた化学的縣濁によるものではないので、その縣濁状態を長期に維持することはできないが、短期には縣濁状態を維持することができる。油を触媒を用いて改質することによって水素を生成する改質器に供給するに好適な水/油縣濁混合液は、原料である水と油以外に界面活性剤などの他の化学物質を含んでいないことが必要であるが、縣濁状態が長期に維持される必要はない。というのは、調製した水/油縣濁混合液を迅速に改質器に供給する流路条件の設定は可能であるからである。したがって、本発明の縣濁混合装置によれば、水素自動車用の水素供給ステーションや固体高分子電解質燃料電池発電システムなどに供給する燃料水素を、安価に効率よく生成することができ、ひいては、高性能な固体高分子電解質燃料発電システムや、高効率な水素供給ステーションを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる縣濁混合装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明を好適に説明するための例示であって、なんら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0026】
図1および図2は、本発明にかかる縣濁混合装置の第1の実施例を示すものである。図1に示すように、本実施例1の縣濁混合装置は、相溶性を有しない少なくとも2種以上の液体を機械的に縣濁混合する縣濁混合部11と、前記縣濁混合部11の入口側に取り付けられている相溶性を有しない液体のそれぞれの入口部12,13と、前記縣濁混合部の出口側に取り付けられている縣濁混合液流出部14とを有する。本実施例1では、前記相溶性を有しない液体は2種であり、一方は、灯油、軽油などの油であり、他方は、水である。前記油は、前記入口部(以下、油入口部と記す)12から縣濁混合部11に導入され、前記水は、前記入口部(以下、水入口部と記す)13から縣濁混合部11に導入される。
【0027】
前記縣濁混合部11は、図2に示すように、前記油入口部12から導入された油と、前記水入口部13から導入された水とを混合しつつ噴霧する噴霧混合ノズル15と、該噴霧混合ノズル15の流入側に該流入側を覆うように設けられている流入側チャンバー16と、前記噴霧混合ノズル15の噴出側に該噴出側を覆うように設けられている流出側チャンバー17とから構成されている。前記流入側チャンバー16には前記油入口部12と水入口部13とが取り付けられ、前記流出側チャンバー17には前記縣濁混合液流出部14が取り付けられている。
【0028】
前記流出側チャンバー17内において、前記縣濁混合液流出部14の開口端14aは、チャンバー内に突出しており、前記噴霧混合ノズル15の噴出口15aに近接対向している。前記縣濁混合液流出部14の開口端14aと前記噴霧混合ノズル15の噴出口15aとの間隔寸法Lは、縣濁混合液流出部14の口径や、前記流出側チャンバー17の内容積によって幾分変動する。例えば、縣濁混合液流出部14の口径が2〜6mmの範囲にあり、流出側チャンバー17の内容積が1〜5ccの範囲にある場合には、間隔寸法Lは1〜4mmが適当である。
【0029】
一方の流入側チャンバー16においても、前記油入口部12の開口端12aはチャンバー16内に突出するとともに、前記噴霧混合ノズル15の流入側開口端15bに対向している。そして、これらの油入口部12の開口端12aと噴霧混合ノズル15の流入側開口端15bとの間に形成される流れ方向に直交するように前記水入口部13の開口端13aがチャンバー16内に突出している。
【0030】
次ぎに、前記構成の縣濁混合装置の作用を説明する。
一般的に、噴霧ノズルに油を流入させた場合、灯油、軽油などの低粘性で表面張力の低い油は、噴霧化しにくく、霧状に発生しない。しかし、前記本発明の装置では、噴霧混合ノズル15に水と油とを一緒に流入させており、これにより、噴霧混合ノズル15に適度な圧損をかけることができ、その結果、油を水とともに噴霧化(微細化)することができる。このときの油粒子の状態は、例えば、数μm粒径の油粒子の周囲に数μmの水粒子が取り囲むコロイド状を形成しており、この状態では、油粒子は容易に水に分散する。
【0031】
したがって、本装置では、噴霧混合ノズル15の入口に油と水を同時に流入することで、ノズル15の噴出口から噴霧化させ、水/油コロイドを発生させ、流出側チャンバー17内で残りの水と混合させることで縣濁混合液を得る。この場合、噴霧混合ノズル15の噴出口15aの近傍に縣濁混合液流出部14の開口端14aを近接させているので、噴霧混合ノズル15からチャンバー17内に発生した油と水のコロイドと残りの水とが縣濁混合液流出部14の管内に圧入されることになり、縣濁混合液流出部14の開口端14aの狭い入口で強制的に均一に混合される。また、前述のように、縣濁混合液流出部14の開口端14aがチャンバー17内に突出しているため、この開口端14aの周りで乱流が形成される。その結果、チャンバー17内の水とコロイド粒子とは、チャンバー17内で充分に混合され、縣濁混合液流出部14に送り出されることになる。
【0032】
前記流出側チャンバー17内での構成と同様に、流入側チャンバー16内においても、前記油入口部12の開口端12aはチャンバー16内に突出するとともに、前記噴霧混合ノズル15の流入側開口端15bに近接対向している。そして、これらの油入口部12の開口端12aと噴霧混合ノズル15の流入側開口端15bとの間に形成される流れ方向に直交するように前記水入口部13の開口端13aがチャンバー16内に突出している。その結果、油と水とがチャンバー16内に同時に流入しても、比重差で水と油が上下に分布してしまうことがない。
【実施例2】
【0033】
図3は、本発明の実施例2を示すものであり、前記図2に示す装置における構成要素と同一構成要素には同一符号を付して説明を簡略化する。この実施例2にかかる縣濁混合装置では、前記油入口部12の上流側に予備混合部20が設けられている。一方の水供給流路には圧力調整弁30が設けられるとともに、該圧力調整弁30の上流に分岐流路40が設けられている。そして、前記水分岐流路40は前記予備混合部20に連結されている。また、前記圧力調整弁30の下流の水流路は、第2の水入口部62を介して前記流出側チャンバー17に連結されている。
【0034】
前記予備混合部20では、図4に示すように、一側面に流出口51が形成され、他側面に内部にノズル口52aとなって終端する第1の流入口52が形成されている。さらに前記流出口51に対向する他の側面に第2の流入口53が形成されてなる。すなわち、この予備混合部20は、一種の噴霧混合器である。前記流出口51が前記油入口部2に連結され、前記第1の流入口52が油の供給源に接続され、前記第2の流入口53に前記水流路の分岐流路40が接続されている。
【0035】
前記実施例1の装置の運用時に、油、水の流量が変動すると、噴霧混合ノズル15にかかる圧力が変化して安定した噴霧が形成できなくなる虞がある。供給する水流路に圧力調整弁(一定差圧が発生する弁)30を設置し、その圧力調整弁30の上流で分岐した分岐流路40から予備混合部20に水を流入させ、ここで、油と混合しつつ、噴霧混合ノズル15に水を供給する。そうすると噴霧混合ノズル15には、水の流量に関係なく、この圧力調整弁30で設定した圧力が加わり、安定した噴霧が可能となる。一方、圧力調整弁30を通過した残りの水は前記流入側チャンバー17に流入され、ノズル15に掛かる圧力を常に一定に保ち、ノズル15での水/灯油混合液の噴霧状態を安定させる役割を担い、ノズル15を通過した水/油混合液とともにチャンバー17内に流入され、混合される。
【実施例3】
【0036】
図5は、本発明の実施例3を示すものであり、前記図2に示す装置における構成要素と同一構成要素には同一符号を付して説明を簡略化する。この実施例3にかかる縣濁混合装置では、前記水入口部13に連結される水流路が分岐され、分岐された水分岐流路60に圧力調整弁61が介装されている。そして、この圧力調整弁61の下流の水流路が第2の水入口部62を介して前記流出側チャンバー17に連結されている。
【0037】
前記流出側チャンバー17内においては、前記縣濁混合液流出部14の開口端14aと前記噴霧混合ノズル15の噴出口15aとの間に形成される流れ方向に直交するように前記第2の水入口部62の開口端62aがチャンバー内に突出している。
【0038】
前述のように、実施例1の装置の運用時に、油、水の流量が変動すると、噴霧混合ノズル15にかかる圧力が変化して安定した噴霧が形成できなくなる虞がある。これに対して、本実施例3では、供給する水に圧力調整弁(一定差圧が発生する弁)61を設置し、その圧力調整弁61の入口から分配して、噴霧混合ノズル15に水を供給する。そうすると、噴霧混合ノズル15には、水の流量に関係なく、圧力調整弁61で設定した圧力がかかり安定した噴霧が可能となる。一方、噴霧混合ノズル15の噴出側のチャンバー17には、圧力調整弁61を通過した残りの水が流入し、この水と噴霧混合ノズル15から噴出された水/油コロイド液とが合流し、混合されて均一な縣濁混合液が調製される。
【実施例4】
【0039】
本実施例4は、本発明の縣濁混合装置を適用することのできる燃料電池の発電システムの一例を示すものである。図6は、本発明にかかる固体高分子電解質(PEFC型)燃料電池の発電システムを示す概念図である。
【0040】
図6に示すように、本実施例4に係るPEFC型燃料電池発電システム(PEFC発電システム)1000は、燃料ガス1001を供給する燃料極1002−1と、空気1003を供給する空気極1002−2と、冷媒1004を供給して作動時の電気化学反応に伴う発生熱を除去する冷却部1002−3とからなる燃料電池1002と、燃料極1002−1に供給する燃料ガス1001を原燃料1005から改質する燃料改質装置1006とを具備してなり、燃料極1002−1に供給した燃料により発電されて、燃料電池1002から直流電力1020を得ている。この発電システム1000は、図示しない制御システムにより、燃料電池の起動、発電、停止及び警報・保護を全自動で行うようにしている。
【0041】
前記改質装置による原燃料1005としては、灯油、軽油、石炭ガス、ナフサなどの液体燃料が用いられる。これら燃料を用いる場合、必要に応じて、含有するS成分を除去するために、脱硫器1007が設けられる。
【0042】
前記脱硫器1007から供給された油は水とともに前述の本発明にかかる縣濁混合装置70にて水/油縣濁混合液に調製され、燃料改質装置1006にて改質される。前記原燃料1005の改質は、主として、燃料改質装置1006の燃料改質器1006−1の改質器本体1006−1Aの改質触媒(図示せず)における水蒸気改質反応によって行われる。即ち、原燃料1005と水とが縣濁混合装置70により縣濁混合され、この縣濁混合液を改質触媒層に流通させ、改質器バーナ1006−1Bを用いて、例えば700〜800℃の温度で水蒸気改質反応(都市ガスを用いる場合にはCH4+H2O→CO+3H2)を起こさせることにより行われる。前記改質触媒としては、例えばRu/Al23等を例示することができるが、これに限定されるものではない。また、改質された燃料ガス1001は必要に応じてCO変成触媒部1006−2とPROx(PReferable Oxidization)触媒部1006−3とを通過させるようにしてもよい。
【0043】
また、前記冷媒1004の冷却ラインL1には、例えば水又は空気等を熱交する放熱部1010が設けられており、燃料電池発電における発熱の際に放熱するようにしている。
【0044】
図6のシステムにおいて、燃料電池発電の起動時の際には、改質器バーナ1006−1Bに原燃料1005を供給して改質器本体1006−1Aを昇温させて、水蒸気改質に適した所定の温度条件とした後、原燃料1005を供給して燃料ガス1001に改質する。その後、得られた燃料ガス1001は、必要に応じて更なる改質を経た後、燃料極1002−1に供給され、発電が開始される。前記燃料極1002−1からの排出ガスは、未反応ガスを利用するために、改質器バーナ1006−1Bに送られここで燃焼される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の縣濁混合装置により、界面活性剤などの不純物の混合もなく、また別の補機動力を必要とせず、液供給のポンプ動力を利用するのみで、灯油などの油と水の縣濁混合が可能となる。また、本発明の装置では、圧力調整弁を設置することで、油の流量が変化しても一定した圧力が噴霧混合ノズルにかかり、安定した噴霧がノズルから出て、油と水の混合が一定化される。
【0046】
したがって、本発明の縣濁混合装置によれば、水素自動車用の水素供給ステーションや固体高分子電解質燃料電池発電システムなどに供給する燃料水素を、安価に効率よく生成することができ、ひいては、高性能な固体高分子電解質燃料発電システムや、高効率な水素供給ステーションを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明にかかる縣濁混合装置の実施例1を示す装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した装置の要部の断面構成図である。
【図3】本発明にかかる縣濁混合装置の実施例2を示す装置の概略構成図である。
【図4】図3に示した装置の要部の概略構成図である。
【図5】本発明にかかる縣濁混合装置の実施例3を示す装置の概略構成図である。
【図6】本発明の実施例4を示すもので、本発明にかかる縣濁混合装置を用いた固体高分子電解質燃料電池発電システムの概略構成図である。
【図7】従来の固体高分子電解質燃料電池発電システムの概略構成図である。
【図8】改質器への従来の燃料供給方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
11 縣濁混合部
12 油入口部
12a 開口端
13 水入口部
13a 開口端
14 縣濁混合液流出部
14a 開口端
15 噴霧混合ノズル
15a 噴出口
15b 流入側開口端
16 流入側チャンバー
17 流出側チャンバー
20 予備混合部
30 圧力調整弁
40 分岐流路
51 流出口
52 第1の流入口
52a ノズル口
53 第2の流入口
60 水分岐流路
61 圧力調整弁
62 第2の水入口部
62a 開口端
1000 PEFC型燃料電池発電システム
1001 燃料ガス
1002 燃料電池
1002−1 燃料極
1002−2 空気極
1002−3 冷却部
1003 空気
1004 冷媒
1005 原燃料
1006 燃料改質装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相溶性を有しない少なくとも2種以上の液体を機械的に縣濁混合する縣濁混合部と、
前記縣濁混合部の入口側に取り付けられている相溶性を有しない液体のそれぞれの入口部と、前記縣濁混合部の出口側に取り付けられている縣濁混合液流出部とを有することを特徴とする縣濁混合装置。
【請求項2】
前記縣濁混合部が、2種以上の液体を混合しつつ噴霧する噴霧混合ノズルと、該噴霧混合ノズルの流入側に該流入側を覆うように設けられている流入側チャンバーと、前記噴霧混合ノズルの噴出側に該噴出側を覆うように設けられている流出側チャンバーとから構成され、前記流入側チャンバーには前記複数の入口部が取り付けられ、前記流出側チャンバーには前記縣濁混合液流出部が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の縣濁混合装置。
【請求項3】
前記流出側チャンバー内に前記縣濁混合液流出部の開口端が突出し前記噴霧混合ノズルの噴出口に近接対向していることを特徴とする請求項2に記載の縣濁混合装置。
【請求項4】
前記相溶性を有しない液体が水と油であり、前記複数の入口部が油入口部と水入口部との2つの入口部から構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の縣濁混合装置。
【請求項5】
前記流入側チャンバー内に前記油入口部の開口端が突出するとともに、前記噴霧混合ノズルの流入側開口端に対向し、これらの油入口部の開口端と噴霧混合ノズルの流入側開口端との間に形成される流れ方向に直交するように前記水入口部の開口端が前記流入側チャンバー内に突出していることを特徴とする請求項2または3に記載の縣濁混合装置。
【請求項6】
前記油入口部の上流側に予備混合部が設けられ、前記水入口部の上流側に圧力調整弁が設けられるとともに、該圧力調整弁の上流に分岐流路が設けられ、該水分岐流路が前記予備混合部に連結され、前記圧力調整弁の下流の水流路が前記水入口部の替わりに設けられた第2の水入口部を介して前記流出側チャンバーに連結されていることを特徴とする請求項4または5に記載の縣濁混合装置。
【請求項7】
前記予備混合部が、一側面に流出口が形成され、他側面に内部にノズル口となって終端する第1の流入口が形成され、さらに前記流出口に対向する他の側面に第2の流入口が形成されてなる噴霧混合器から構成され、前記流出口が前記油入口部に連結され、前記第1の流入口が油の供給源に接続され、前記第2の流入口に水流路の分岐流路が接続されていることを特徴とする請求項6に記載の縣濁混合装置。
【請求項8】
前記水入口部に連結される水流路が分岐され、分岐された水分岐流路に圧力調整弁が介装され、該圧力調整弁の下流の水流路が第2の水入口部を介して前記流出側チャンバーに連結されていることを特徴とする請求項4または5に記載の縣濁混合装置。
【請求項9】
前記流出側チャンバー内の前記縣濁混合液流出部の開口端と前記噴霧混合ノズルの噴出口との間に形成される流れ方向に直交するように前記第2の水入口部の開口端が前記流入側チャンバー内に突出していることを特徴とする請求項8に記載の縣濁混合装置。
【請求項10】
前記油が灯油であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の縣濁混合装置。
【請求項11】
固体高分子電解質燃料電池と、該燃料電池に燃料として水素を供給する燃料改質装置と、前記燃料改質装置の改質器に縣濁混合液を供給する前記請求項1〜10のいずれか1項に記載の縣濁混合装置とを有してなる固体高分子電解質燃料電池発電システム。
【請求項12】
前記縣濁混合液の縣濁混合状態が保持されている時間内に該縣濁混合液が前記燃料改質装置に供給可能な流路条件が設定されていることを特徴とする請求項11に記載の固体高分子電解質燃料電池発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−263656(P2006−263656A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88615(P2005−88615)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】