説明

縦型攪拌粉砕機

【課題】粉砕媒体を用いた縦型攪拌粉砕機において、粉砕対象となる流動体の圧力上昇を防止する。
【解決手段】粉砕室2にて粉砕されて、ここより送り出される粉砕対象の流動体が、必ず、分離装置14の排出室15を通過するようにされる。排出室は、分離装置を構成する二重壁の中空フィルタリング部材14a,14bと、これら中空フィルタリング部材の壁の間を連結して閉じる連結部分14cにより囲まれた部分として形成される。流動体は、中空フィルタリング部材を通過して送り出され、粉砕媒体は、ここを通過できず粉砕室内に残留する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動体を粉砕(mill)するための粉砕媒体(補助的破砕物質:auxiliary grinding bodies)で部分的に満たされる破砕室を備えるタイプの縦型攪拌粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
スペイン特許第2245195号は、好ましい平均直径を0.7から1.2mmの範囲とする粉砕媒体を収容するように設計された縦型攪拌粉砕機に関する。この粉砕機は、固定された、概略円柱形の外側に配置された第一の受容器と内側に配置された第二の受容器を備え、これらの受容器は最上部において上蓋によって閉じられ、同軸上に配置され、2つの受容器の間には粉砕対象の流動体のための副室(prechamber)が形成され、粉砕対象の流動体は粉砕機の外から、この目的のために上蓋に設けられた流入導管を通過して入り込む。粉砕機はさらに内部ロータを備え、この内部ロータは、ロータとともに破砕室を形成する第二の受容器に関して長手方向にまた同軸に配置された中央軸によって駆動される。
【0003】
流動体および粉砕媒体が粉砕機内で再循環できるように、第二の受容器は、その基底部において、供給副室(feed prechamber)への少なくともひとつの連絡路を備え、またその上部において、これも供給副室と接続されている再循環路を備える。このように、粉砕対象の流動体は、供給副室からひとつまたは複数の連絡路を通って破砕室内に入り、破砕室内を上昇方向に循環する。第二の受容器の上部に配置された再循環路により、粉砕対象となる流動体と粉砕媒体が供給副室に再流入し、供給副室において、流動体と粉砕媒体は、流入導管から副室に入る流動体の流れによって引きずられる。
【0004】
粉砕機は、再循環路の位置にブレードの形状の引きずり手段(dragging means)を備え、これは、粉砕対象の流動体と粉砕媒体が上記の再循環路を通過するのを促進する。
【0005】
粉砕された流動体を引き出すために、粉砕機は、フィルタとして機能する分離装置を備え、粉砕された流動体は、この分離装置を通過され、流動体に浮遊状態で含まれる粉砕媒体の通過は阻止される。引き出し装置は上蓋とともに排出室を形成し、排出室は粉砕後の流動体が上記の上蓋から外部に出る出口を備える。
【0006】
分離装置は、上蓋に固定され、粉砕機の長手方向に延びる粉砕機のロータの軸と同軸の円筒形の本体で構成される。この装置は、底部終端において、ロータの軸が貫通する環状部分により閉じられている。
【0007】
ロータの軸と上蓋との間の機械的封止部材が分離装置の下流に配置されており、したがって粉砕媒体はここまで到達しないが、この粉砕機には、粉砕機内に収容される粉砕媒体の大きさが前述の数値より小さいと、いくつかの欠点がある。
【0008】
より徹底的な破砕を必要とする新製品が出現したことにより、現在の粉砕機は直径0.2から0.4mmの粉砕媒体を使用して動作できなければならない。
【0009】
上述のような粉砕機に関して、直径0.4mm未満の粉砕媒体を使用して動作させると、粉砕機内部の温度は、これより大きなサイズの粉砕媒体を使って動作させた場合の通常温度より高くなることが観察されている。粉砕対象の流動体の温度上昇が最終製品に損害を与える可能性があることから、この欠点を解消する必要がある。
【0010】
粉砕機内の温度上昇は、その中で粉砕される流動体の圧力の上昇に起因する。この圧力上昇の大きな原因は、分離装置において、その中を粉砕媒体が通過しないように設計された開口部が小さくなると、粉砕対象の流動体が通過するための有効表面に損失が生じることである。
【0011】
同時に、分離装置の環状閉鎖部分(これは粉砕機の固定部品である)とロータの軸(これは可動部品である)との間に必要な分離距離も、粉砕媒体の通過を防止し、その排出室への進入を妨げるために、小さくしなければならない。しかしながら、粉砕機の構成部品とその後の接合に必要な複雑な設置物との間に誤差が存在することにより、この距離を、小さな径の粉砕媒体の大きさに相当する0.2mm未満に常に保つことができると保証することは困難である。
【0012】
【特許文献1】スペイン特許第2245195号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、直径が0.4mmと0.2mmの間にある粉砕媒体を使った動作に適し、最終製品の損傷の原因となる粉砕機内の被粉砕流動体の圧力上昇が防止されること、また、粉砕機の機械的封止部材に上記粉砕媒体が届かない状態を保つことの少なくとも一方が解決された粉砕機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による縦型攪拌粉砕機は、粉砕媒体を収容した破砕室を備えるタイプのものである。この攪拌粉砕機は、概略円筒形の外側受容器と、外側受容器を閉じ、粉砕対象の流動体が外側受容器の内部に入るため、および粉砕後の流動体が外側受容器から出るためのそれぞれ流入および流出導管を有する上蓋と、外側受容器と同軸で、粉砕対象の流動体を攪拌するための手段を有し、上蓋を貫通する中央軸によって作動される内部ロータと、粉砕された流動体を流出導管の方向に通過させ、粉砕媒体がその中を通過するのを防止するよう設計された分離装置とを備える。
【0015】
上記粉砕機は、上記の分離装置が閉鎖された輪郭の断面を有する二重壁の中空のフィルタリング部材からなり、その2枚の壁は粉砕後の流動体のための排出室を画定し、粉砕後の流動体は粉砕機を出る前に必ずここを通過しなければならず、排出室は、その基底部において、中空の部材の2枚の壁を連結する狭い部分によって閉じられ、その最上部において、粉砕後の流動体が出る流出導管と連絡していることを特徴とする。
【0016】
本発明の別の態様によれば、分離装置を構成する本体は、環状のベースによるまっすぐな円筒であり、その内壁と外壁はどちらもフィルタ機能を有し、ロータの中央軸と同軸に配置されている。
【0017】
本発明の別の特徴によれば、上蓋は、排出室のすぐ上の領域において、隆起した中央部分を有し、ここには、ロータの軸が通るための穴と、概略環状のキャビティとが設けられ、さらに、流出導管が接続され、流出導管と排出室の上部とが連絡される。
【0018】
本発明のまた別の特徴によれば、ロータの中央軸と分離装置の内壁の外表面との間の空間に、中央軸に強固に接合されて配置された、粉砕対象の流動体と粉砕媒体を押し戻す設計の押し戻し手段を備える。
【0019】
好ましい別の態様において、押し戻し手段は、中央軸に強固に接合され、アルキメデスのねじポンプのように粉砕対象の流動体に作用する押し込みヘリカル部材(pushing helix)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
添付の図面は、本発明の縦型攪拌粉砕機の実施形態を、限定するためではなく、例として示す。図1に示す縦型攪拌粉砕機1は、外側に配置された第一の受容器(以下、外側受容器と記す。)4と内側に配置された第二の受容器(以下、内側受容器と記す。)5を備え、これらはどちらも、蓋18によって固定され、上部が閉じられている。2つの受容器は概略円筒形であり、同軸に配置され、両者の間に粉砕対象の流動体製品のための供給用副室6が形成されている。
【0021】
流動体製品は上部流入導管17から粉砕機1に入り、円周分配リング24から供給用副室6内で下降方向に導かれる。
【0022】
上記の供給用副室6は、外側受容器4を包む側方冷却室22と、外側受容器の基底部の下に配置された第二の冷却室である下方冷却室23によって冷却される。側方冷却室22と下方冷却室23は、粉砕機1に入る流動体を、それが供給用副室6を通過するときに冷却し、したがってその粘性を高め、その後の破砕工程に有利な状態とする。
【0023】
内側受容器5は、その基底部において、流動体を内側受容器5の内部に向かって通過させる連絡路8を備え、内側受容器5は内部ロータ10とともに破砕室2を画定する。
【0024】
ロータ10は、上蓋18を貫通し、内側受容器5と同軸の中央軸11によって作動される。このロータ10は、ロータ10に取り外し可能に連結された、放射状に外側に延びる一連のロッド12によって形成される攪拌手段を備える。
【0025】
同時に、内側受容器5の内表面もまた個別の固定ロッド12’を備え、ロータ10がそれに強固に連結されたロッド12を旋回させると、固定ロッド12’と粉砕媒体3が粉砕対象の流動体製品と相互作用し、流動体製品は破砕室2の中を上昇方向に循環する。
【0026】
流動体が破砕室2に進入する際に、流動体をよりよく分散させるために、ロータ10には、その下部において、連絡路8の上に配置され、流動体製品と流動体によって運ばれる粉砕媒体3とを破砕室2への進入時に分散、分配させるように設計された突片(flange)21が設けられている。
【0027】
破砕室2の上部において、粉砕機1は、断面の輪郭が閉じた二重壁の中空のフィルタリング部材からなる分離装置14を備え、その2枚の壁14a,14bは、粉砕後の流動体の排出室15を画定し、粉砕後の流動体は、上蓋18に設けられた流出導管16を通じて粉砕機1から出る前に、必ず排出室15を通過しなければならない。
【0028】
分離装置14、したがって排出室15を構成する中空のフィルタリング部材は、その基底部において、外壁14aと内壁14bの2枚の壁の間の、好ましくは、コスト上の理由から平板でなる連結部14cによって閉じられ、ここから、流動体と粉砕媒体3が排出室15に入ることはない。分離装置14の開いた上部は上蓋18によって閉じられているが、詳しくは後述するように、流出導管16は排出室15と連絡した状態のままである。
【0029】
図の例において、フィルタとして機能する分離装置14は、リングで構成されるまっすぐな円筒形の本体で形成され、その外壁14aと内壁14bの側壁は両方ともフィルタとしての機能を果たし、ロータ10の中央軸11と同軸に配置される。壁14a,14bの各々は、粉砕媒体3の通過を阻止するために、周知の方法で、平均0.2mm未満の間隔で、または0.2mm未満の間隔で隣接させて重ねたリングによって構成することができる。
【0030】
外壁14aと内壁14bが両方ともフィルタとしての機能を果たすという事実により、粉砕後の流動体が排出室15に入るための有効表面は、最先端技術に基づく分離装置の場合の通過表面と比較して、ほぼ二倍となる。そのため、破砕室2のこの地点において、圧力の過剰な上昇という好ましくない状況が回避される。
【0031】
分離装置14を構成する本体を実現するためのその他の方法も考案され、それによって、リングで構成されるまっすぐな円筒とは若干異なる形態も採用できる。それは、多角形ではない環形状を基本とした回転体で構成することが好ましいが、外壁14aと内壁14bは、平行である必要はない。たとえば、分離装置14を構成する本体の外壁14aは、逆円錐台形(inverted troncoconical)に構成してもよい。
【0032】
壁14a,14bの両方がフィルタ機能を有することが望ましいが、これらの壁の一方だけがフィルタ機能を持つ別の態様を選択することもできる。あるいは、外壁14aと内壁14bの間にあり、排出室15の基底部を閉じる連結部14cにもフィルタ機能を持たせてもよい。
【0033】
図1において、上蓋18は、排出室15のすぐ上の領域において、隆起した中央部25を有し、ここにはロータ10の中央軸11のための貫通穴29と概略環状のキャビティ28が設けられ、キャビティ28は流出導管16へと続き、その上部において、排出室15を気密状態に閉じ、排出室15は上記の流出導管16と連絡した状態となる。分離装置14の側壁14a,14bから排出室15の内部へと進む粉砕後の流動体はすべて、粉砕機1の内部が受ける圧力の影響でキャビティ28へと上昇し、ここから、上記の流出導管16を通って粉砕機1の外に引き出される。
【0034】
話は変わるが、ロータ10の中央軸11と分離装置14の内壁14bの外表面との間の空間には、中央軸11に強固に接合され、粉砕対象の流動体と粉砕媒体3を押し下げ、これらを上蓋18と中央軸11の間に挿置された機械的封止部材19から遠ざけるよう設計された押し戻し手段20が配置されている。図1の例において、これらの押し戻し手段20は、中央シャフト11に固定して接合された、アルキメデスのねじポンプのように流動体に作用する押し込みヘリカル部材でなる。
【0035】
この、破砕室2の上側領域において、ロータ10に強固に接合され、ブレードの形状に構成された引きずり手段13が、粉砕媒体3を内側受容器5の中に配置された再循環路9に向けて押し出し、この再循環路によって上記破砕物質3は供給用副室6に入ることができ、副室6において、同じ副室6に入り、その中で下降方向に循環する流動体製品の流れによって引きずられる。
【0036】
このように、粉砕機1の中の流動体の大きな流れの循環にかかわらず、流動体により運ばれる粉砕媒体3は分離装置14の周辺に集中せず、したがって、粉砕機1の内部の圧力と温度が上昇しないようにすることができる。
【0037】
引きずり手段13は、これらを容易に交換できるような方法でロータ10に取り外し可能に連結され、再循環路9と同等の位置に延び、金属、セラミックあるいは、特殊な高分子量ポリエチレン等のプラスチック材料で構成することができる。
【0038】
図2において、引きずり手段を構成するブレードは4本で、径方向に関して若干傾斜して配置され、これらがロータ10の旋回の向きと反対向きに延びている。当然、ブレードの数と再循環路9の数はどちらも、粉砕対象の流動体の種類と粉砕機1の大きさに応じて変えることができる。
【0039】
分離装置14の、排出室15を画定する外壁14aと内壁14bを分離する距離は、最適な流動体流出量を実現するように設計される。
【0040】
排出室15の基底部を閉じる、粉砕機1の固定部品である連結部14cと、可動部品であるロータ10の上部との間の距離が十分に広いために、粉砕機1の構成部品の取り付けにおける問題が発生せず、この距離によって流動体と粉砕媒体3が中央軸11の方向に通過できることにかかわらず、押し込み手段20の作用により、機械的封止部材19は、上記の粉砕媒体3の衝撃から保護される。
【0041】
粉砕機1の冷却を改善するために、図1では、粉砕機1の上蓋18にも冷却室27が設けられ、中央軸11には、図の導管のうちの一方によってロータ10のロータ内キャビティ26の中に導入され、もう一方の導管によってロータ内キャビティ26から引き出される冷却液を導くように設計された独立した2つの内部導管が設置されていることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態の縦型攪拌粉砕機の正面断面図である。
【図2】図1の縦型攪拌粉砕機のAA’で切った上面断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 粉砕機、2 破砕室、3 粉砕媒体、4 外側受容器、5 内側受容器、6 供給副室、8 連絡路、9 再循環路、10 内部ロータ、11 中央軸、12 ロッド、13 引きずり手段、14 分離装置、14a 外壁、14b 内壁、14c 連結部、15 排出室、16 流出導管、17 流入導管、18 蓋、19 機械的封止部材、20 押し戻し手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕媒体を収容した破砕室を備える縦型攪拌粉砕機であって、
略円筒形状の外側受容器と、
粉砕対象の流動体が外側受容器の内側に進入するときに通る流入導管と、粉砕後の流動体が外側受容器から出るときに通る流出導管とを備え、外側受容器を閉鎖する上蓋と、
外側受容器と同軸に配置され、粉砕対象の流動体を攪拌する攪拌手段を有し、前記上蓋を貫通する中央軸によって作動される内部ロータと、
粉砕後の流動体を流出導管に向けて通過させ、粉砕媒体の通過を阻止する分離装置とを備え、
分離装置は、断面の輪郭が閉じた二重壁の中空フィルタリング部材でなり、その2枚の壁は、粉砕後の流動体のための排出室を画定し、粉砕後の流動体は、粉砕機から出る前に必ずこの排出室を通過しなければならず、排出室はその下側部分において、中空部材の両方の壁の間の狭い連結部分で閉じられている、
縦型攪拌粉砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の縦型攪拌粉砕機であって、
分離装置を構成する中空フィルタリング部材は、環状のまっすぐな円筒であり、その外側壁と内側壁はどちらもフィルタ機能を有し、ロータの中央軸と同軸である、
縦型攪拌粉砕機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の縦型攪拌粉砕機であって、
上蓋は、排出室のすぐ上の領域において、中央隆起部分を有し、ここには、ロータの中央軸が貫通する貫通穴と略環状のキャビティが設けられ、中央隆起部分にて排出室の上部を流出導管と連絡させる、
縦型攪拌粉砕機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の縦型攪拌粉砕機であって、
ロータの中央軸と分離装置の内壁の外表面との間の空間に、中央軸に強固に接合され、粉砕対象の流動体と粉砕媒体を押し戻すように設計された押し戻し手段が設けられている、
縦型攪拌粉砕機。
【請求項5】
請求項4に記載の縦型攪拌粉砕機であって、
押し戻し手段は、中央軸に強固に接合された、アルキメデスのねじポンプのように流動体に作用する押し込みヘリカル部材である、
縦型攪拌粉砕機。

【図1】
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【図2】
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