説明

縦手すり

【課題】滑り難さを確保しつつも清掃が容易な縦手すりを提供すること。
【解決手段】縦手すり100によれば、親指の第1関節を折り曲げて第1角部14に掛止できると共に親指以外の少なくとも1指の第1関節を折り曲げて第2角部15に掛止できるので、安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。更に、対向面部11は、外方へ凸の円弧状に形成されているので、対向面部11への手の平の接触面積を大きく確保でき、支持部材1と手の平との間に生じる摩擦力を高めることができる。このように、安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができると共に支持部材1と手の平との間に生じる摩擦力を高めることができるので、滑り難さを確保できる。また、支持部材1の表面に凹凸を設けなくとも滑り難さを確保できるので、滑り難さを確保しつつも清掃を容易とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型の縦手すりに関し、特に、滑り難さを確保しつつも清掃が容易な縦手すりに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ又は浴室あるいは洗面所などには、使用者の動作を補助する補助具として、縦型の縦手すりが設置されている。この種の縦手すりでは、使用者が手で握って体重を支えるために、滑り難さの確保が必要とされている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、表面に凹凸加工を施して滑り止めを付与した縦手すりが開示されている。また、特許文献2には、回転体状に形成される多数の握り部を結合して手すり本体を構成し、手すり本体の表面に凹凸を設けた縦手すりが開示されている。
【特許文献1】特開平9−192053号公報
【特許文献2】特開2007−70936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に開示される縦手すりでは、表面に凹凸が生じるので、滑り難さを確保できる反面、清掃が困難となるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、滑り難さを確保しつつも清掃が容易な縦手すりを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載の縦手すりは、垂直に延設される支持部材を備え、使用者が前記支持部材を握って体重を支えるものであって、前記支持部材は、その支持部材の一側面をなす側面部と、その側面部に対向すると共に前記支持部材の長手方向と直交する断面において外方へ凸の円弧状に形成され前記使用者の手の平で覆われる対向面部と、前記側面部に交差する第1交差面部と、その第1交差面部に対向して前記側面部に交差する第2交差面部と、前記側面部および前記第1交差面部が交差する角部であって前記使用者の親指の第1関節が掛止される第1角部と、前記側面部および前記第2交差面部が交差する角部であって前記使用者の親指以外の少なくとも1指の第1関節が掛止される第2角部とを備えている。
【0007】
請求項2記載の縦手すりは、請求項1記載の縦手すりにおいて、前記第1角部および前記第2角部は、前記支持部材の長手方向と直交する断面においていずれも外方へ凸の円弧状に形成されている。
【0008】
請求項3記載の縦手すりは、請求項1又は2に記載の縦手すりにおいて、前記対向面部は、前記第1交差面部に連設される第1円弧部と、前記第2交差面部に連設される第2円弧部とを備え、前記第1円弧部および前記第2円弧部は、前記支持部材の長手方向と直交する断面において前記第1円弧部の円弧半径が前記第2円弧部の円弧半径よりも小さく構成されている。
【0009】
請求項4記載の縦手すりは、請求項1から3のいずれかに記載の縦手すりにおいて、前記側面部は、平坦面状に形成され、前記第1交差面部および前記第2交差面部は、いずれも平坦面状に形成されると共に前記側面部に対して傾斜するように構成され、前記第1交差面部は、前記側面部とのなす角度が鈍角とされる一方、前記第2交差面部は、前記側面部とのなす角度が鋭角とされている。
【0010】
請求項5記載の縦手すりは、請求項1又は2に記載の縦手すりにおいて、前記第1交差面部および前記第2交差面部は、前記支持部材の長手方向と直交する断面においていずれも外方へ凸の円弧状に形成されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の縦手すりによれば、使用者が支持部材を握った場合には、対向面部が手の平で覆われ、第1角部に親指の第1関節が掛止されると共に第2角部に親指以外の少なくとも1指の第1関節が掛止される。よって、親指の第1関節を折り曲げて第1角部に掛止できると共に親指以外の少なくとも1指の第1関節を折り曲げて第2角部に掛止できるので、支持部材への親指および親指以外の少なくとも1指の引っ掛かりを良くできると共に指先に力を入れて支持部材を握ることができ、安定した状態でしっかりと支持部材を握ることができる。更に、対向面部は、支持部材の長手方向と直交する断面において外方へ凸の円弧状に形成されているので、手の平を沿わせ易く、その分、対向面部への手の平の接触面積を大きく確保できる。これにより、支持部材と手の平との間に生じる摩擦力を高めることができる。
【0012】
このように、本発明によれば、使用者が支持部材を握って体重を支える場合に、安定した状態でしっかりと支持部材を握ることができると共に支持部材と手の平との間に生じる摩擦力を高めることができるので、滑り難さを確保できるという効果がある。また、支持部材の表面に凹凸を設けなくとも滑り難さを確保できるので、従来の手すりのように清掃が困難となることはなく、滑り難さを確保しつつも清掃を容易とすることができるという効果がある。
【0013】
請求項2記載の縦手すりによれば、請求項1記載の縦手すりの奏する効果に加え、第1角部および第2角部は、支持部材の長手方向と直交する断面においていずれも外方へ凸の円弧状に形成されているので、親指の第1関節および親指以外の少なくとも1指の第1関節をそれぞれ密着させ易く、その分、より安定した状態でしっかりと支持部材を握ることができるという効果がある。従って、滑り難さを一層確保できる。
【0014】
請求項3記載の縦手すりによれば、請求項1又は2に記載の縦手すりの奏する効果に加え、対向面部の第1円弧部および第2円弧部は、支持部材の長手方向と直交する断面において第1円弧部の円弧半径が第2円弧部の円弧半径よりも小さく構成されているので、親指の付け根付近で覆われる第1円弧部の円弧半径を小さくできる分、支持部材を手の平で深く包み込むことができる。よって、より安定した状態でしっかりと支持部材を握ることができるという効果がある。従って、滑り難さを一層確保できる。
【0015】
請求項4記載の縦手すりによれば、請求項1から3のいずれかに記載の縦手すりの奏する効果に加え、第1交差面部および第2交差面部は、いずれも側面部に対して傾斜するように構成され、第1交差面部は、側面部とのなす角度が鈍角とされているので、第1交差面部に親指を沿わせ易くできる。即ち、使用者は、第1角部に親指の第1関節を掛止するために、通常、第1角部側から支持部材にアプローチする(支持部材を握る)ので、第1交差面部と側面部とのなす角度を鈍角とし、使用者が支持部材にアプローチする側へ第1交差面部を傾斜させることで、親指を無理に曲げなくとも第1交差面部に沿わせることができる。
【0016】
一方、第2交差面部は、側面部とのなす角度が鋭角とされているので、親指以外の少なくとも1指の第1関節を鋭角に折り曲げて第2角部に掛止でき、第2角部への親指以外の少なくとも1指の引っ掛かりをより良くできる。よって、親指を第1交差面部に沿わせ易くできると共に第2角部への親指以外の少なくとも1指の引っ掛かりをより良くできるので、より安定した状態でしっかりと支持部材を握ることができる。従って、滑り難さを一層確保できる。
【0017】
請求項5記載の縦手すりによれば、請求項1又は2に記載の縦手すりの奏する効果に加え、第1交差面部および第2交差面部は、支持部材の長手方向と直交する断面においていずれも外方へ凸の円弧状に形成されているので、対向面部を手の平で覆った状態から親指および親指以外の指を無理に曲げなくとも第1交差面部および第2交差面部にそれぞれ沿わせることができる。よって、親指および親指以外の指を第1交差面部および第2交差面部に沿わせ易く、その分、より安定した状態でしっかりと支持部材を握ることができる。従って、滑り難さを一層確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1から図3を参照して、本発明の第1実施の形態における縦手すり100について説明する。図1は、第1実施の形態における縦手すり100の斜視図であり、図2は、図1のII−II線における縦手すり100の断面図である。また、図3(a)及び(b)は、縦手すり100の使用方法を説明する図である。なお、図1から図3では、縦手すり100がトイレTに設置された状態を示している。
【0019】
まず、図1を参照して、縦手すり100の概略構成について説明する。縦手すり100は、例えば、足腰の弱った高齢者や足の不自由な身障者(以下「使用者」と称す)の立ち上がり動作を補助する補助具としてトイレTに設置されるものであり、図1に示すように、使用者が握って体重を支えるための支持部材1と、その支持部材1を支持してトイレTの壁面Wに固定するための固定部材2とを備えて構成されている。
【0020】
支持部材1は、トイレTの壁面Wに沿って垂直に延設される部材であり、図1に示すように、棒状に構成されている。なお、垂直とは、支持部材1の延設方向が水平方向と直交する場合のみを限定するものではなく、支持部材1の延設方向が垂直方向に対して所定角度(例えば、±5°)以内で傾斜する場合を含む趣旨である。
【0021】
固定部材2は、ねじ等(図示せず)によりトイレTの壁面Wに取り付けられる部材であり、図1に示すように、支持部材1を上下両端2か所で支持するように構成されている。なお、固定部材2による支持部材1の支持位置は、必ずしも上下両端2か所に限られるものではなく、例えば、長手方向の全域を固定部材2で支持するように構成しても良い。
【0022】
次いで、図2を参照して、支持部材1の詳細構成について説明する。なお、図2では、支持部材1の長手方向と直交する断面を示しており、図中の矢印F−B及びL−Rは、使用者Pから縦手すり100を視た場合の左右方向および前後方向をそれぞれ表している。また、図2では、使用者Pの手を二点鎖線で図示し、使用者Pが支持部材1を握った状態を示している。
【0023】
図2に示すように、支持部材1は、長手方向と直交する断面において、側面部10と、その側面部10に対向する対向面部11と、側面部10に交差する第1交差面部12と、その第1交差面部12に対向して側面部10に交差する第2交差面部13と、側面部10及び第1交差面部12が交差する角部をなす第1角部14と、側面部10及び第2交差面部13が交差する角部をなす第2角部15とを主に備えて構成されている。なお、支持部材1は、長手方向と直交する断面が長手方向の全域で一様とされている。
【0024】
側面部10は、支持部材1の側面(使用者Pから縦手すり100を視た場合に左右方向を向く面)のうち使用者Pに近い側(矢印L側)の側面をなす部位であり、図2に示すように、平坦面状に形成されている。また、対向面部11は、支持部材1の側面のうち使用者Pから遠い側(矢印R側)の側面をなす部位であり、図2に示すように、外方へ凸の円弧状に形成されている。この対向面部11は、後述するように、使用者Pが支持部材1を握った場合には、通常、手の平で覆われる部位となる。
【0025】
第1交差面部12は、支持部材1の後面(使用者Pから縦手すり100を視た場合に後方を向く面)をなす部位であり、図2に示すように、平坦面状に形成され、対向面部11の端部に連設されている。この第1交差面部12は、図2の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部11を手の平で覆うようにして支持部材1を握った場合には、親指が接する部位となる。また、第2交差面部13は、支持部材1の前面(使用者Pから縦手すり100を視た場合に前方を向く面)をなす部位であり、図2に示すように、平坦面状に形成され、対向面部11の端部であって第1交差面部12が連設される側とは反対側の端部に連設されている。この第2交差面部13は、図2の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部11を手の平で覆うようにして支持部材1を握った場合には、親指以外の指(人指し指から小指までの4本の指)が接する部位となる。
【0026】
第1角部14は、上述したように、側面部10及び第1交差面部12が交差する角部をなす部位であり、図2に示すように、外方へ凸の円弧状に形成されている。これにより、図2の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部11を手の平で覆うようにして支持部材1を握った場合には、親指の第1関節を折り曲げて第1角部14に掛止できる。よって、支持部材1への親指の引っ掛かりを良くできると共に指先に力を入れて支持部材1を握ることができ、安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。また、第1角部14は、外方へ凸の円弧状に形成されているので、親指の第1関節を密着させ易く、その分、より安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。
【0027】
第2角部15は、上述したように、側面部10及び第2交差面部13が交差する角部をなす部位であり、図2に示すように、外方へ凸の円弧状に形成されている。これにより、図2の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部11を手の平で覆うようにして支持部材1を握った場合には、親指以外の少なくとも1指(図2では中指)の第1関節を折り曲げて第2角部15に掛止できる。よって、支持部材1への親指以外の少なくとも1指の引っ掛かりを良くできると共に指先に力を入れて支持部材1を握ることができ、安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。また、第2角部15は、外方へ凸の円弧状に形成されているので、親指以外の少なくとも1指の第1関節を密着させ易く、その分、より安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。
【0028】
また、図2に示すように、上述した第1交差面部12及び第2交差面部13は、いずれも側面部10に対して傾斜するように構成され、第1交差面部12は、側面部10とのなす角度αが鈍角とされている。これにより、第1交差面部12に親指を沿わせ易くできる。即ち、使用者Pは、図2の二点鎖線で示すように、縦手すり100の後方側(矢印B側)から支持部材1にアプローチする(支持部材1を握る)ので、第1交差面部12と側面部10とのなす角度αを鈍角とし、使用者Pが支持部材1にアプローチする側へ第1交差面部12を傾斜させることで、親指を無理に曲げなくとも第1交差面部12に沿わせることができる。一方、第2交差面部13は、側面部10とのなす角度βが鋭角とされている。これにより、親指以外の少なくとも1指の第1関節を鋭角に折り曲げて第2角部15に掛止でき、第2角部15への親指以外の少なくとも1指の引っ掛かりをより良くできる。よって、親指を第1交差面部12に沿わせ易くできると共に第2角部15への親指以外の少なくとも1指の引っ掛かりをより良くできるので、より安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。
【0029】
また、図2に示すように、上述した対向面部11は、第1交差面部12の端部であって側面部10側とは反対側に連設される第1円弧部11aと、第2交差面部13の端部であって側面部10とは反対側に連設される第2円弧部11bとを備え、それら第1円弧部11a及び第2円弧部11bは、第1円弧部11aの円弧半径R1が第2円弧部11bの円弧半径R2よりも小さく構成されている。これにより、親指の付け根付近で覆われる第1円弧部11aの円弧半径R1を小さくできるので、支持部材1を手の平で深く包み込むことができる。よって、より安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。ここで、本実施の形態のように、使用者Pが支持部材1にアプローチする側へ第1交差面部12を傾斜させる構成にあっては、特に対向面部11がアプローチ側へ張り出すので、親指の付け根付近で覆われる第1円弧部11aの円弧半径R1を小さくできることは、支持部材1を手の平で深く包み込むための有効な手段となる。
【0030】
なお、本実施の形態では、第1交差面部12と側面部10とのなす角度αが120°に、第2交差面部13と側面部10とのなす角度βが80°に、第1円弧部11aの円弧半径R1が14mmに、第2円弧部11bの円弧半径R2が25mmに、それぞれ設定されると共に、支持部材1の周長(外周の長さ)が略145mmとされている。但し、支持部材1の周長は、必ずしもこれに限られるものではなく、親指の先端と人差し指の先端とが触れる状態で円を作った場合に、その円の直径が成人男女において最大となる49mmでの周長、即ち、略154mm以下であって、且つ、かかる円の直径の2.5パーセンタイル値(高齢男女では10パーセンタイル値)となる33mmでの周長、即ち、略103mm以上であることが望ましい。これにより、安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。なお、パーセンタイル値とは、データの分布(ばらつき)を小さい方から並べてパーセントで表した数値であり、上記の場合では、かかる円の直径が100人中2.5番目に小さい人のデータに相当する。
【0031】
次いで、図3を参照して、上述したように構成される縦手すり100の使用方法について説明する。なお、図3では、使用者Pを二点鎖線で図示し、使用者Pが便器Sに座った状態から縦手すり100を使用して立ち上がる様子を示している。
【0032】
使用者Pは、便器Sに座った状態から立ち上がろうとする場合、まず、図3(a)に示すように、便器Sに座ったまま片手で支持部材1を握る。この場合、使用者Pは、通常、縦手すり100に近い側の手で支持部材1を握るので、使用者Pから遠い側の側面となる対向面部11が手の平で覆われる。
【0033】
次いで、使用者Pは、図3(b)に示すように、支持部材1を握って体重を支えつつ便器Sに座った状態から立ち上がる。この場合、使用者Pは、第1角部14に親指の第1関節を掛止すると共に第2角部15に親指以外の少なくとも1指の第1関節を掛止することで、上述したように、安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができる。また、手の平で覆われる対向面部11は、外方へ凸の円弧状に形成されているので、手の平を沿わせ易く、その分、支持部材1への手の平の接触面積を大きく確保できる。これにより、支持部材1と手の平との間に生じる摩擦力を高めることができる。
【0034】
このように、本実施の形態における縦手すり100によれば、使用者Pが支持部材1を握って体重を支える場合に、安定した状態でしっかりと支持部材1を握ることができると共に支持部材1と手の平との間に生じる摩擦力を高めることができるので、滑り難さを確保できる。また、支持部材1の表面に凹凸を設けなくとも滑り難さを確保できるので、滑り難さを確保しつつも清掃を容易とすることができる。
【0035】
次いで、図4を参照して、第2実施の形態における縦手すり200について説明する。第2実施の形態における縦手すり200は、第1実施の形態における縦手すり100の支持部材1を変更したものである。以下、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。図4は、第2実施の形態における縦手すり200の断面図である。なお、図4では、縦手すり200がトイレTに設置された状態を示している。
【0036】
まず、第2実施の形態における縦手すり200の概略構成について説明する。縦手すり200は、使用者が握って体重を支えるための支持部材201と、その支持部材201を支持してトイレTの壁面Wに固定するための固定部材2(図1参照)とを備えて構成されている。支持部材201は、トイレTの壁面Wに沿って垂直に延設される部材であり、第1実施の形態における縦手すり100の支持部材1と同様に、棒状に構成されている。
【0037】
次いで、図4を参照して、支持部材201の詳細構成について説明する。なお、図4では、支持部材201の長手方向と直交する断面を示しており、図中の矢印F−B及びL−Rは、使用者Pから縦手すり200を視た場合の左右方向および前後方向をそれぞれ表している。また、図4では、使用者Pの手を二点鎖線で図示し、使用者Pが支持部材201を握った状態を示している。
【0038】
図4に示すように、支持部材201は、長手方向と直交する断面において、側面部210と、その側面部210に対向する対向面部211と、側面部210に交差する第1交差面部212と、その第1交差面部212に対向して側面部210に交差する第2交差面部213と、側面部210及び第1交差面部212が交差する角部をなす第1角部214と、側面部210及び第2交差面部213が交差する角部をなす第2角部215とを主に備えて構成されている。なお、支持部材201は、長手方向と直交する断面が長手方向の全域で一様とされている。
【0039】
側面部210は、支持部材201の側面(使用者Pから縦手すり200を視た場合に左右方向を向く面)のうち使用者Pに近い側(矢印L側)の側面をなす部位であり、図4に示すように、外方へ凸の円弧状に形成されている。また、対向面部211は、支持部材201の側面のうち使用者Pから遠い側(矢印R側)の側面をなす部位であり、図4に示すように、外方へ凸の円弧状に形成されている。この対向面部211は、使用者Pから遠い側の側面となるので、第1実施の形態で説明したのと同様に、使用者Pが支持部材201を握った場合には、通常、手の平で覆われる部位となる。
【0040】
第1交差面部212は、支持部材201の後面(使用者Pから縦手すり200を視た場合に後方を向く面)をなす部位であり、図4に示すように、外方へ凸の円弧状に形成され、その円弧半径がR3とされている。この第1交差面部212は、図4の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部211を手の平で覆うようにして支持部材201を握った場合には、親指が接する部位となる。また、第2交差面部213は、支持部材201の前面(使用者Pから縦手すり200を視た場合に前方を向く面)をなす部位であり、図4に示すように、外方へ凸の円弧状に形成され、その円弧半径がR4とされている。この第2交差面部213は、図4の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部211を手の平で覆うようにして支持部材201を握った場合には、親指以外の指が接する部位となる。
【0041】
第1角部214は、上述したように、側面部210及び第1交差面部212が交差する角部をなす部位であり、図4に示すように、外方へ凸の円弧状に形成されている。これにより、図4の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部211を手の平で覆うようにして支持部材201を握った場合には、親指の第1関節を折り曲げて第1角部214に掛止できる。よって、第1実施の形態における縦手すり100の場合と同様に、支持部材201への親指の引っ掛かりを良くできると共に指先に力を入れて支持部材201を握ることができ、安定した状態でしっかりと支持部材201を握ることができる。
【0042】
第2角部215は、上述したように、側面部210及び第2交差面部213が交差する角部をなす部位であり、図4に示すように、外方へ凸の円弧状に形成されている。これにより、図4の二点鎖線で示すように、使用者Pが対向面部211を手の平で覆うようにして支持部材201を握った場合には、親指以外の少なくとも1指(図4では人差し指)の第1関節を折り曲げて第2角部215に掛止できる。よって、第1実施の形態における縦手すり100の場合と同様に、支持部材201への親指の引っ掛かりを良くできると共に指先に力を入れて支持部材201を握ることができ、安定した状態でしっかりと支持部材201を握ることができる。
【0043】
また、図4に示すように、側面部210及び対向面部211は、対向面部211の円弧半径R5が側面部210の円弧半径R6よりも小さく構成されている。これにより、支持部材1を手の平で深く包み込むことができる。よって、より安定した状態でしっかりと支持部材201を握ることができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、第1交差面部212の円弧半径R3が55mmに、第2交差面部213の円弧半径R4が55mmに、対向面部211の円弧半径R5が14.5mmに、側面部210の円弧半径R6が25mmに、それぞれ設定されると共に、支持部材201の周長(外周の長さ)が略109mmとされている。但し、支持部材201の周長は、必ずしもこれに限られるものではなく、親指の先端と人差し指の先端とが触れる状態で円を作った場合に、その円の直径が成人男女において最大となる49mmでの周長、即ち、略154mm以下であって、且つ、かかる円の直径の2.5パーセンタイル値(高齢男女では10パーセンタイル値)となる33mmでの周長、即ち、略103mm以上であることが望ましい。これにより、安定した状態でしっかりと支持部材201を握ることができる。
【0045】
このように、本実施の形態における縦手すり200によれば、第1交差面部212及び第2交差面部213は、いずれも外方へ凸の円弧状に形成されているので、対向面部211を手の平で覆った状態から親指および親指以外の指を無理に曲げなくとも第1交差面部212及び第2交差面部213にそれぞれ沿わせることができる。よって、親指および親指以外の指を第1交差面部212及び第2交差面部213に沿わせ易く、その分、より安定した状態でしっかりと支持部材201を握ることができる。よって、使用者Pが支持部材201を握って体重を支える場合に、滑り難さを確保できる。また、支持部材201の表面に凹凸を設けなくとも滑り難さを確保できるので、滑り難さを確保しつつも清掃を容易とすることができる。
【0046】
ここで、上記各実施の形態において説明した平坦面状とは、表面に凹凸がなく、且つ、支持部材1,201の長手方向と直交する断面において表面が直線状に形成されていることを意味する。
【0047】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0048】
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(第1交差面部12と側面部10とのなす角度α、第2交差面部13と側面部10とのなす角度β、第1円弧部11aの円弧半径R1、第2円弧部11bの円弧半径R2、第1交差面部212の円弧半径R3、第2交差面部213の円弧半径R4、対向面部211の円弧半径R5及び側面部210の円弧半径R6)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0049】
上記各実施の形態では、縦手すり100,200がトイレTに設置される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、縦手すり100,200を浴室や洗面所などに設置しても良く、或いは、廊下や階段などの通路に沿って設置しても良い。
【0050】
上記各実施の形態では、縦手すり100,200がトイレTの壁面のうち使用者Pから視た場合に右側の壁面Wに固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、縦手すり100,200をトイレTの壁面のうち使用者Pから視た場合に前方の壁面に固定しても良い。
【0051】
上記各実施の形態では、支持部材1,201の長手方向と直交する断面が長手方向の全域で一様とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、支持部材1,201の長手方向と直交する断面を長手方向の位置に応じて変更し、長手方向の所定位置(例えば、通常、使用者Pによって握られる支持部材1,201略中央部)のみを上記各実施の形態で説明した断面形状としても良い。
【0052】
上記第1実施の形態では、支持部材1の長手方向と直交する断面において側面部10、第1交差面部12及び第2交差面部13がいずれも平坦面状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、側面部10、第1交差面部12及び第2交差面部13のいずれか又は全てを支持部材1の長手方向と直交する断面において外方へ凸の円弧状に形成しても良い。この場合には、支持部材1への親指および親指以外の指の接触面積をより大きく確保でき、支持部材1との間に生じる摩擦力を高めることができるので、滑り難さを一層確保できる。
【0053】
また、上記第2実施の形態では、支持部材201の長手方向と直交する断面において側面部210、第1交差面部212及び第2交差面部213がいずれも外方へ凸の円弧状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、側面部210、第1交差面部212及び第2交差面部213のいずれか又は全てを平坦面状に形成しても良い。
【0054】
上記第1実施の形態では、対向面部11の円弧半径が第1円弧部11aと第2円弧部11bとで変化するように構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、対向面部11の円弧半径を一定に構成しても良く、或いは、第1円弧部11aと第2円弧部11bとの間に平坦面状に形成される部位を設けても良い。
【0055】
また、上記第2実施の形態では、対向面部211の円弧半径が一定に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、対向面部211の円弧半径を第1交差面部212側と第2交差面部213側とで変化するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施の形態における縦手すりの斜視図である。
【図2】図1(a)のII−II線における縦手すりの断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、縦手すりの使用方法を説明する図である。
【図4】第2実施の形態における縦手すりの断面図である。
【符号の説明】
【0057】
100,200 縦手すり
1,201 支持部材
10,210 側面部
11,211 対向面部
11a 第1円弧部
11b 第2円弧部
12,212 第1交差面部
13,213 第2交差面部
14,214 第1角部
15,215 第2角部
P 使用者
R1 第1円弧部の円弧半径
R2 第2円弧部の円弧半径
R5 対向面部の円弧半径
R6 側面部の円弧半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に延設される支持部材を備え、使用者が前記支持部材を握って体重を支える縦手すりにおいて、
前記支持部材は、
その支持部材の一側面をなす側面部と、
その側面部に対向すると共に前記支持部材の長手方向と直交する断面において外方へ凸の円弧状に形成され前記使用者の手の平で覆われる対向面部と、
前記側面部に交差する第1交差面部と、
その第1交差面部に対向して前記側面部に交差する第2交差面部と、
前記側面部および前記第1交差面部が交差する角部であって前記使用者の親指の第1関節が掛止される第1角部と、
前記側面部および前記第2交差面部が交差する角部であって前記使用者の親指以外の少なくとも1指の第1関節が掛止される第2角部とを備えていることを特徴とする縦手すり。
【請求項2】
前記第1角部および前記第2角部は、前記支持部材の長手方向と直交する断面においていずれも外方へ凸の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の縦手すり。
【請求項3】
前記対向面部は、前記第1交差面部に連設される第1円弧部と、前記第2交差面部に連設される第2円弧部とを備え、
前記第1円弧部および前記第2円弧部は、前記支持部材の長手方向と直交する断面において前記第1円弧部の円弧半径が前記第2円弧部の円弧半径よりも小さく構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の縦手すり。
【請求項4】
前記側面部は、平坦面状に形成され、
前記第1交差面部および前記第2交差面部は、いずれも平坦面状に形成されると共に前記側面部に対して傾斜するように構成され、前記第1交差面部は、前記側面部とのなす角度が鈍角とされる一方、前記第2交差面部は、前記側面部とのなす角度が鋭角とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の縦手すり。
【請求項5】
前記第1交差面部および前記第2交差面部は、前記支持部材の長手方向と直交する断面においていずれも外方へ凸の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の縦手すり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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