説明

縦続接続昇圧型スイッチング電源回路

【課題】適切なる段数を有する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を提供する。
【解決手段】複数個の昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路において、出力電力と入力電力との比を電力効率ηとし、最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値をrnnとし、出力側に接続される等価負荷抵抗の値をRとし、出力される電圧の値をEとし、入力される電圧の値をEとし、下記式1を満たし、下記式2で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数の昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続した。
=(T/Toffn×E×[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}]・・・・・・・式1
η=1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}・・・・・・・式2

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源回路に関し、特に、電圧を昇圧する昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続した縦続接続昇圧型スイッチング電源回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、昇圧型スイッチング電源回路が知られている(特許文献1、特許文献2を参照)。これらの昇圧型スイッチング電源回路の基本回路は図35で示される。図35に示す昇圧型スイッチング電源回路は、スイッチ素子S、インダクタL、ダイオードD、コンデンサCを備えている。図35に示す昇圧型スイッチング電源回路では、スイッチ素子S、インダクタL、ダイオードD、コンデンサCの各々に損失が無い理想状態の回路(理想昇圧型スイッチング電源回路)とされている。理想昇圧型スイッチング電源回路では、入力電圧E(入力電圧Eの値(電圧値)はEである。以下同様)と出力電圧E(出力電圧Eの値(電圧値)はEである。以下同様)の比は、数式(51)で表されることが知られている。ここで、Tはスイッチ素子Sがオン(on)とオフ(off)とを繰り返す一周期の時間、Toffはスイッチ素子Sがオフである時間である。
【0003】

/E=T/Toff (51)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−261040号公報
【特許文献2】特開2009−118552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような昇圧型スイッチング電源回路を、1段ではなく2段以上縦続接続して所望の出力電圧を得ることが考えられるが、このようにして縦続接続された縦続接続昇圧型スイッチング電源回路がどのような場合に有利な効果を生ずるかについては未だ知られていない。
【0006】
発明が解決しようとする課題は、昇圧型スイッチング電源回路を2段以上縦続接続して構成する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路であって、入力電圧と出力電圧との電圧比に応じて、適切なる縦続接続段数を有する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インダクタの一端とスイッチ素子の一端とダイオードの一端とを接続し、前記インダクタの他端と前記スイッチ素子の他端とを入力側とし、前記ダイオードの他端と前記スイッチ素子の他端との間にコンデンサを接続し、前記コンデンサの両端を出力側として形成される昇圧型スイッチング電源回路を複数個有し、前記複数個の前記昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路であって、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の出力側に出力される出力電力と前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電力との比を電力効率ηとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の前記最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値をrnnとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続される等価負荷抵抗の値をRとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値をEとし、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値をEとし、
前記スイッチ素子のオン・オフの繰り返しの周期をTとし、前記スイッチ素子のオフの時間をToffnとし、
下記式1を満たし、下記式2で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続するものである。
=(T/Toffn×E×[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}]・・・・・・・式1
η=1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}・・・・・・・式2
【0008】
また、前記スイッチ素子のオフの時間である時間Toffnの長さは、予め定める固定値としても良く、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側から検出される前記出力電圧の値Eに応じた長さとしても良いものである。
【0009】
また、(整数n−整数j;ただし、n>j)で与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路の各スイッチ素子である(n−j)個のスイッチ素子は、前記式1および前記式2から求められる時間Toffnの間オフとされ、
前記整数jで与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路の各スイッチ素子であるj個のスイッチ素子は、可変時間の間オフとされ、
前記可変時間は、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側から検出される前記出力電圧の値Eに応じた長さとして、前記出力電圧を制御するようにしても良いものである。
【0010】
また、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値Eが一定値であり、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値Eが可変値である場合に、
前記入力側に入力される入力電圧の値Eの最小値において、前記式1を満たし、前記式2で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を構成し、
前記入力側に入力される入力電圧の値Eに応じて、下記式3を満たし、下記式4で表される電力効率ηの値が最大となる整数kで与えられる数を求め、k個のスイッチ素子をオン・オフ制御し、(n−k)個(ただし、n>k)のスイッチ素子を常時オフとする制御をおこなうようにしても良いものである。
=(T/Toffk×E×[1/{1+(T/Toffk×(rnn/R)}]・・・・・・・式3
η=1/{1+(T/Toffk×(rnn/R)}・・・・・・・式4
【0011】
また、前記整数nより小さな整数を整数iとし、前記整数nより大きな整数を整数pとし、予め与える、効率の許容される所定減少量を許容減少量εとして、i段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の電力効率ηまたはp段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の電力効率ηが、電力効率η−電力効率η<許容減少量ε、または、電力効率η−電力効率η<許容減少量ε、となるように縦続接続の数を設定しても良いものである。
【0012】
また、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の奇数段のスイッチ素子のオン・オフの制御タイミングと偶数段のスイッチ素子のオン・オフの制御タイミングとが180度の位相差を有するようにしても良いものである。
【0013】
また、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の、各段のコンデンサに対してm個の昇圧型スイッチング電源回路が並列接続されて形成され、前記並列接続されたm個の昇圧型スイッチング電源回路のスイッチ素子のオン・オフの制御タイミングが(360/m)度ずつ位相差を有するようにしても良いものである。
【0014】
また別の本発明は、インダクタの一端とスイッチ素子の一端とダイオードの一端とを接続し、前記インダクタの他端と前記スイッチ素子の他端とを入力側とし、前記ダイオードの他端と前記スイッチ素子の他端との間にコンデンサを接続し、前記コンデンサの両端を出力側として形成される昇圧型スイッチング電源回路を複数個有し、前記複数個の前記昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路であって、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の出力側に出力される出力電力と前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電力との比を電力効率ηとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の前記最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値をrnnとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続される等価負荷抵抗の値をRとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値をEとし、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値をEとし、
下記式5を満たす電力効率ηとする実数nを求め、前記実数nを切捨て、四捨五入、または切上げて得られる整数と等しい個数の前記昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続するものである。
∂η/∂n=∂〔1/《1+〈[1−{1−4×(rnn/R)×(E/E2/n1/2]/{2×(rnn/R)×(E/E1/n}〉×(rnn/R)》〕/∂n=0・・・・・・・式5
【発明の効果】
【0015】
本発明の昇圧型スイッチング電源回路によれば、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力電圧と出力電圧との電圧比に応じて、適切なる縦続接続段数を有する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】回路損失がある場合の1段の昇圧型スイッチング電源回路の等価回路を示す図である。
【図2】図1に示す等価回路をスイッチ素子のオンの状態とオフの状態とに応じた2つの等価回路で表す図である。
【図3】図2(a)に示すスイッチ素子のオンの等価回路と図2(b)に示すスイッチ素子のオフの等価回路をひとつの等価回路で表す過程において導入される等価回路を示す図である。
【図4】図3(a)に示す回路と図3(b)に示す回路をひとつの回路にまとめた等価回路を示す図である。
【図5】図4に示す等価回路をさらに変形して等価負荷抵抗Rの側から見た等価回路を示す図である。
【図6】図5に示す等価回路から得られる定常状態における等価回路を示す図である。
【図7】図1に示す回路とトポロジーが同一の回路を2段縦続接続した縦続接続スイッチング電源回路を示す図である。
【図8】図1に示す回路とトポロジーが同一の回路を3段縦続接続した縦続接続スイッチング電源回路を示す図である。
【図9】図1に示す回路とトポロジーが同一の回路をn段縦続接続した縦続接続スイッチング電源回路を示す図である。
【図10】同一の入力電圧から同一の出力電圧を得る場合における、1段のオフ時間、2段縦続接続のオフ時間、3段縦続接続のオフ時間が、どのような関係となるかを模式的に示す図である。
【図11】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.01、出力電圧・入力電圧の昇圧比が1.5〜5の範囲における効率を示す図である。
【図12】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.01、出力電圧・入力電圧の昇圧比が6〜10の範囲における効率を示す図である。
【図13】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.01、出力電圧・入力電圧の昇圧比が11〜15の範囲における効率を示す図である。
【図14】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.01、出力電圧・入力電圧の昇圧比が16〜20の範囲における効率を示す図である。
【図15】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.01、出力電圧・入力電圧の昇圧比が21〜25の範囲における効率を示す図である。
【図16】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.01、出力電圧・入力電圧の昇圧比が26〜30の範囲における効率を示す図である。
【図17】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.01、出力電圧・入力電圧の昇圧比が31〜35の範囲における効率を示す図である。
【図18】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.005、出力電圧・入力電圧の昇圧比が1.5〜5の範囲における効率を示す図である。
【図19】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.005、出力電圧・入力電圧の昇圧比が6〜10の範囲における効率を示す図である。
【図20】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.005、出力電圧・入力電圧の昇圧比が11〜15の範囲における効率を示す図である。
【図21】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.005、出力電圧・入力電圧の昇圧比が16〜20の範囲における効率を示す図である。
【図22】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.005、出力電圧・入力電圧の昇圧比が21〜25の範囲における効率を示す図である。
【図23】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.005、出力電圧・入力電圧の昇圧比が26〜30の範囲における効率を示す図である。
【図24】損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比が0.005、出力電圧・入力電圧の昇圧比が31〜35の範囲における効率を示す図である。
【図25】実施例の電力システムのブロック図である。
【図26】図25に示す太陽電池から得られる電圧を昇圧する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の回路図である。
【図27】図8に示す回路におけるスイッチ素子S〜スイッチ素子Sを駆動するタイミングを図10に示すものと別のタイミングとする実施形態を示す図である。
【図28】図8に示す回路におけるスイッチ素子S〜スイッチ素子Sを駆動するタイミングを図10、図27に示すものと別のタイミングとする実施形態を示す図である。
【図29】縦続接続のみではなく、同一構成の各段を並列接続する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を示す図である。
【図30】並列接続された各段におけるスイッチ素子のオン・オフのタイミングの位相を異なるものとする例をタイミングチャートで示す図である。
【図31】図26に示す回路におけるスイッチ素子を駆動するタイミングを図10、図27、図28に示すものと別のタイミングとする実施形態を示す図である。
【図32】図8に示す回路におけるスイッチ素子を駆動するタイミングを図10、図27、図28に示すものと別のタイミングとする実施形態を示す図である。
【図33】複数の異なる電圧に対応する負荷を有する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を示す図である。
【図34】複数の異なる電圧に対応する負荷を有する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を示す図である。
【図35】背景技術の昇圧型スイッチング電源回路の基本回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路は、昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続して構成されるものであり、入力電圧と出力電圧との電圧比に応じて、縦続接続する昇圧型スイッチング電源回路の段数を適切なものとするものである。
【0018】
発明を実施するための形態では、インダクタの一端とスイッチ素子の一端とダイオードの一端とを接続し、インダクタの他端とスイッチ素子の他端とを入力側とし、ダイオードの他端とスイッチ素子の他端との間にコンデンサを接続し、コンデンサの両端を出力側として形成される昇圧型スイッチング電源回路を複数個有し、複数個の昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を構成する。そして、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電力と縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電力との比である効率(電力効率)と、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値と出力側に接続される等価負荷抵抗の値との比と、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される電圧の値と、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値と、の関係から電力効率の値が最大となる整数nで与えられる数の昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続するものである。
【0019】
発明を実施するための別の形態では、上述したように電力効率の値が最大となる整数nで与えられる数の昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続して構成され、そのn段の各々に対応するn個のスイッチ素子の中で(n−j)個のスイッチ素子は、予め定める固定時間の間オフとされ、j個のスイッチ素子は、可変時間の間オフとされ、可変時間を制御して、出力電圧を制御するものである。ここで、整数jは0から整数nまでの任意の整数として設定することができる。整数jが0の場合には、n段の昇圧型スイッチング電源回路のn個のスイッチ素子のすべてを、予め定める固定時間の間、オフとする制御がおこなわれる。整数jが整数nの場合には、n段の昇圧型スイッチング電源回路のn個のスイッチ素子のすべてを、出力電圧に応じて変化する可変時間の間、オフとする制御がおこなわれる。整数jが1ないし(n−1)の範囲の場合には、(n−j)個のスイッチ素子を、予め定める固定時間の間、オフとし、j個のスイッチ素子を、出力電圧に応じて変化する可変時間の間、オフとする制御がおこなわれる。
【0020】
発明を実施するためのまた別の形態では、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力電圧の値が変化する場合において、入力電圧が最も低い電圧に対する効率が最も良好となる段数を有するように、昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の数を予め設定しておき、入力電圧に応じて、常時オフとなるスイッチ素子の個数を変化させるものである。
【0021】
発明を実施するための、さらに別の形態では、整数nとは異なる整数を整数i(i<n)または整数p(p>n)とし、予め与える、所定の効率の許容の減少量を許容減少量εとして、i段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の電力効率ηまたはp段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の電力効率ηが、電力効率η−電力効率η<許容減少量ε、または、電力効率η−電力効率η<許容減少量ε、となるように縦続接続の数を設定するものである。
【0022】
発明を実施するための、さらにまた別の形態では、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路において、電力効率の値が最大となる昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の数を求めるに際して、電力効率を縦続接続の数nで表す関数を与える。そして、電力効率を数nで偏微分して電力効率が最大となる実数nを求め、さらに、切捨て、四捨五入、切上げ、の各演算のいずれかをおこなうことによって実数nを整数化して、電力効率の値が最大となる昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の数を求めるものである。
【0023】
以下に具体的な実施形態について説明をする。一般的なn段縦続接続された昇圧型スイッチング電源回路(n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路)について説明をするに際して、以下の順番で説明をする。まず、回路損失がある場合の1段の昇圧型スイッチング電源回路について説明をする。次に、回路損失がある場合の2段縦続接続された昇圧型スイッチング電源回路(2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路)について説明をする。さらに、回路損失がある場合の3段縦続接続された昇圧型スイッチング電源回路(3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路)について説明をする。そして、最後に、回路損失がある場合のn段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路について説明をする。以下では、nが実数である旨を明記する以外は、nは正の整数を指すものである。
【0024】
(回路損失がある場合の昇圧型スイッチング電源回路)
まず、回路損失がある場合の1段の昇圧型スイッチング電源回路について説明をする。
【0025】
図35に示す回路においては表現されていないが、昇圧型スイッチング電源回路で生じる損失は、スイッチ素子Sの順方向電圧降下損、スイッチ素子Sのスイッチング損、インダクタLの銅損、インダクタLの鉄損、ダイオードDの順方向電圧降下損、ダイオードDのスイッチング損、コンデンサCの誘電体損が、主なるものである。このような、回路損失がある場合の昇圧型スイッチング電源回路の等価回路については、従来、あまり検討をされてこなかった。その理由は、1段の昇圧型スイッチング電源回路では、損失をどのように等価回路として置き換えようとも回路解析に大きな影響は生じなかったからである。しかしながら、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路については、回路損失を考慮に入れなければ正確な解析は困難である。回路損失がある場合の解析に適した、1段の昇圧型スイッチング電源回路、2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路、3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の等価回路について説明をした後に、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路に拡張をした等価回路について説明をする。
【0026】
図1は回路損失がある場合の1段の昇圧型スイッチング電源回路の等価回路を示す図である。つまり、図1に示す等価回路は、損失がない場合の等価回路(図35を参照)に対する損失がある場合の等価回路である。図1では、スイッチ素子Sの順方向電圧降下損、スイッチ素子Sのスイッチング損、インダクタL11の銅損、インダクタL11の鉄損、ダイオードDの順方向電圧降下損、ダイオードDのスイッチング損、コンデンサC11の誘電体損のすべてを含む損失を損失抵抗r11として表すものである。また、負荷については、抵抗負荷のみならず、電子回路が負荷である場合にも、負荷に印加される出力電圧を負荷に流れる電流で割ることによって得られる値に対応した、抵抗値Rを有する等価負荷抵抗Rとして以下では取扱う。
【0027】
図2は図1に示す等価回路をスイッチ素子の状態によって2つの等価回路で表す図である。図2(a)は、図1に示す回路のスイッチ素子Sがオン(on)のときの等価回路である。このとき、スイッチ素子Sはオン(on)であり導通しており、ダイオードDはオフ(off)であり非導通であるので図1に示す回路は、図2(a)に示すように、2つの分離した回路として表される。ここで、スイッチ素子S、ダイオードDは、いずれも、理想的なスイッチ素子として扱われている。
【0028】
図2(b)は、図1に示す回路のスイッチ素子Sがオフ(off)のときの等価回路である。このとき、スイッチ素子Sはオフ(off)であり非導通であり、ダイオードDはオン(on)であり導通であるので図1に示す回路は図2(b)に示すように、ひとつの回路として表される。
【0029】
図3は、図2(a)に示す等価回路と図2(b)に示す等価回路をひとつの等価回路で表す過程において導入される等価回路を示す図である。図3(a)はスイッチ素子Sがオン(on)のときの等価回路であり、図3(b)はスイッチ素子Sがオフ(off)のときの等価回路である。図3(a)と図3(b)との違いは、理想トランスの巻線比が図3(a)では1:0であるのに対して、理想トランスの巻線比が図3(b)では1:1である点である。
【0030】
図4は、図3に示す等価回路を変形して図3(a)に示す回路と図3(b)に示す回路をひとつの回路にまとめた等価回路の図である。ここで、Tはスイッチ素子Sがオン(on)の区間とオフ(off)の区間とを有する一周期の時間であり、この一周期が連続して繰り返される。Toff1はスイッチ素子Sがオフである時間である。一周期の間の状態平均を取ると、図4に示す等価回路が得られる。図4に示す一周期の間の状態平均の等価回路では、理想トランスの巻線比は1:Toff1/Tである。
【0031】
図5は、図4に示す等価回路をさらに変形して等価負荷抵抗Rの側から見た等価回路を示す図である。即ち、等価負荷抵抗Rの側から見ると、入力電圧の値は(T/Toff1)×Eであり、損失の値は(T/Toff1×r11であり、インダクタL11のインダクタンスの値は(T/Toff1×L11である。この等価回路において等価負荷抵抗Rの側の素子である、コンデンサC11のキャパシタンスの値はC11、等価負荷抵抗Rの抵抗の値はRであり、図1におけると同じ値である。
【0032】
図6は、図5に示す等価回路から得られる定常状態における等価回路を示す図である。定常状態においては、インダクタL11とコンデンサC11とが関与しないので、出力電圧Eと入力電圧Eとの関係は、数式(1)で表される。
【0033】

=(T/Toff1)×E×[1/{1+(T/Toff1×(r11/R)}]
(1)

【0034】
数式(1)から、等価負荷抵抗R(抵抗値はR)で消費される電力(負荷電力)と損失抵抗r11(抵抗値はr11)で消費される電力(損失電力)とを求めると、効率ηは数式(2)で表される。
【0035】

η=負荷電力/(負荷電力+損失電力)
=R×(負荷電流)/{R×(負荷電流)+(T/Toff1×r11×(負荷電流)
=R/{R+(T/Toff1×r11
=1/{1+(T/Toff1×(r11/R)} (2)

【0036】
また、数式(1)と数式(2)より、数式(3)が得られる。
【0037】

=(T/Toff1)×E×η(3)

【0038】
つまり、損失抵抗r11の値が0である場合(効率ηが1(100%)の場合)には、数式(3)で得られるEの値は、E=(T/Toff1)×Eとなって、数式(51)と一致することとなる。
【0039】
後述する本実施形態の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路は、複数個の同一トポロジーの1段の昇圧型スイッチング電源回路を複数個縦続接続して得られるものである。ここで、同一トポロジーとは、回路素子の種類が同一で同一の接続であることをいうものである。縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の各段は、図1に示すような、インダクタL11の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタL11の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側として、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサC11を接続し、コンデンサC11の両端を出力側として形成される昇圧型スイッチング電源回路と同一トポロジーとされている。
【0040】
このような昇圧型スイッチング電源回路においては、損失は等価的に損失抵抗r11に置きかえられ、出力側に接続される負荷は等価的に等価負荷抵抗Rに置きかえられる。損失抵抗r11の値をr11とし、等価負荷抵抗Rの値をRとし、1周期の時間をTとし、1周期毎にオン・オフ制御されるスイッチ素子Sのオフ時間をToff1とすれば、(r11/R)と(T/Toff1)とが効率ηに関係をする。
【0041】
そして、(r11/R)と出力電圧の値であるEと入力電圧の値であるEとが与えられれば、数式(1)に示す関係式から、(T/Toff1)の値が求まり、数式(2)に示す関係式に(r11/R)の値と(T/Toff1)の値とを代入して、効率ηの値を求めることができることとなる。
【0042】
(回路損失がある場合の2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路)
次に、回路損失がある場合の2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路について説明をする。
【0043】
図7は、図1に示す回路とトポロジーが同一の回路を2段縦続接続した回路である2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を示す図である。スイッチ素子Sとスイッチ素子Sは、一周期におけるオフ(off)の時間が同一の値となるように制御される。ここで、一周期をT、オフ(off)の時間をToff2として、スイッチ素子Sとスイッチ素子Sとが制御されるものである。入力電圧がE、出力電圧がEであり、等価負荷抵抗R(抵抗値はR)を有する2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路について、効率ηを求める。効率ηを求めるに際して、まず、出力電圧E、電圧E、入力電圧E、の関係式を以下に示すようにして求める。ここで、電圧Eは、最も入力側に近い1段目の出力電圧であり、同時に2段目の入力電圧でもある。
【0044】
図7に示す回路の定常状態における、出力電圧Eと電圧Eの関係は数式(4)で表される。また、電圧Eと入力電圧Eとの定常状態における関係は数式(5)で表される。ここで、r21は、1段目の昇圧型スイッチング電源回路(入力側に接続される昇圧型スイッチング電源回路)の損失を抵抗に置き換えたものであり、r22は2段目の昇圧型スイッチング電源回路(出力側に接続される昇圧型スイッチング電源回路)の損失を抵抗に置き換えたものであり、R21は1段目の昇圧型スイッチング電源回路の定常状態における等価負荷抵抗である。
【0045】

=(T/Toff2)×E×[1/{1+(T/Toff2×(r22/R)}] (4)
=(T/Toff2)×E×[1/{1+(T/Toff2×(r21/R21)}] (5)

【0046】
数式(4)と数式(5)から、電圧Eを消去して、数式(6)に示すように、出力電圧Eと入力電圧Eとの関係式を得る。
【0047】

=(T/Toff2×E×[1/{1+(T/Toff2×(r21/R21)}]×[1/{1+(T/Toff2×(r22/R)}] (6)

【0048】
数式(6)より、回路損失がある場合の2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率ηは数式(7)によって与えられる。
【0049】

η=[1/{1+(T/Toff2×(r21/R21)}]×[1/{1+(T/Toff2×(r22/R)}] (7)

【0050】
ここで、数式(7)の右辺の第1項は1段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η21であり、数式(7)の右辺の第2項は2段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η22である。効率η=η21×η22で表される。
【0051】
等価負荷抵抗Rに供給される電力をWとすると、2段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失W22は数式(8)で求められ、1段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失W21は数式(9)で求められる。
【0052】

22=W×(1−η22)/η22 (8)
21=W×(1−η21)/(η21×η22 (9)

【0053】
数式(8)と数式(9)より、数式(10)を得る。
【0054】

21/W22={W×(1−η21)/(η21×η22)}/{W×(1−η22)/η22}=(1−η22)×η21/(1−η21) (10)

【0055】
ここで、数式(7)において、(r21/R21)=(r22/R)である場合には、1段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η21と2段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η22が等しいものとなる。
【0056】
そして、数式(8)〜数式(9)が示すように、厳密には、より前段の昇圧型スイッチング電源回路の損失がより大きくなるが、η21=η22≒1の場合(即ち、r22<<R、r21<<R21で、(r21/R21)=(r22/R)である場合)においては、1段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失W21と2段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失W22とを略等しいものとできる。このようにして、各段における損失を略同じものとすることは、各段における発熱を略均一として熱集中を防ぐ意味から好ましい。
【0057】
(r21/R21)=(r22/R)とする場合には、数式(6)から、(r21/R21)を消去して、数式(11)を得ることができる。ここで、R21=(Toff2/T×Rであり、r21=(Toff2/T×r22であることは、図7に示す等価回路から明らかである。
【0058】

=(T/Toff2×E×[1/{1+(T/Toff2×(r22/R)}] (11)

【0059】
数式(11)より、回路損失がある場合の2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率ηは数式(12)によって与えられる。
【0060】

η=[1/{1+(T/Toff2×(r22/R)}]
=1/{1+(T/Toff2×(r22/R)} (12)

【0061】
要するに、本実施形態の2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路は、2個の昇圧型スイッチング電源回路を2段縦続接続して得られるものである。この2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の1段目(前段)は、インダクタL21の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタL21の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサC21を接続し、コンデンサC21の両端を出力側として形成されるものである。また、損失は等価的に損失抵抗r21に置きかえられる。
【0062】
また、この2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の2段目(後段)は、インダクタL22の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタL22の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサC22を接続し、コンデンサC22の両端を出力側として形成されるものである。そして、損失は等価的に損失抵抗r22に置きかえられ、出力側に接続される負荷は等価的に等価負荷抵抗Rに置きかえられる。
【0063】
損失抵抗r22の値をr22とし、等価負荷抵抗Rの値をRとし、1周期の時間をTとし、1周期毎にオン・オフ制御されるスイッチ素子S、スイッチ素子Sのオフ時間をToff2とすれば、(r22/R)と(T/Toff2)とが効率ηに関係をする。ここで、1段目の昇圧型スイッチング電源回路から見た定常状態における等価負荷抵抗R21の値をR21とし、1段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失に応じた損失抵抗r21の値をr21とする。各段の効率が等しいとすると、(r22/R)=(r21/R21)の関係が成立する。
【0064】
そして、(r22/R)と出力電圧の値であるEと入力電圧の値であるEとが与えられれば、数式(11)に示す関係式から、(T/Toff2)の値が求まり、数式(12)に示す関係式に(r22/R)の値と(T/Toff2)の値とを代入して効率ηの値を求めることができる。
【0065】
(回路損失がある場合の3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路)
さらに、回路損失がある場合の3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路について説明をする。
【0066】
図8は、図1に示す回路とトポロジーが同一の回路を3段縦続接続した回路を示す図である。スイッチ素子Sとスイッチ素子Sとスイッチ素子Sは、一周期におけるオフ(off)の時間が同一の値となるように制御される。ここで、一周期をT、オフ(off)の時間をToff3として制御されるものとして、入力電圧の値としてE、入力電圧の値としてEを有する回路について、効率ηを求める。効率ηを求めるに際して、出力電圧E、電圧E、電圧E、入力電圧E、の関係式を以下に示すようにしてまず求める。
【0067】
図8に示す回路の定常状態における、出力電圧Eと電圧Eの関係は、数式(13)で表される。また、電圧Eと電圧Eとの定常状態における関係は数式(14)で表される。また、電圧Eと入力電圧Eとの定常状態における関係は数式(15)で表される。ここで、r31は1段目の昇圧型スイッチング電源回路(入力側に接続される昇圧型スイッチング電源回路)の損失を抵抗に置き換えたものであり、r32は2段目の昇圧型スイッチング電源回路(中間に接続される昇圧型スイッチング電源回路)の損失を抵抗に置き換えたものであり、r33は3段目の昇圧型スイッチング電源回路(出力側に接続される昇圧型スイッチング電源回路)の損失を抵抗に置き換えたものであり、R31は1段目の昇圧型スイッチング電源回路から見た定常状態における等価負荷抵抗であり、R32は2段目の昇圧型スイッチング電源回路から見た定常状態における等価負荷抵抗である。
【0068】

=(T/Toff3)×E×[1/{1+(T/Toff3×(r33/R)}] (13)

=(T/Toff3)×E×[1/{1+(T/Toff3×(r32/R32)}] (14)

=(T/Toff3)×E×[1/{1+(T/Toff3×(r31/R31)}] (15)

【0069】
数式(13)〜数式(15)から、電圧E、電圧Eを消去して、数式(16)に示す、出力電圧Eと入力電圧Eとの関係式を得る。
【0070】

=(T/Toff3×E×[1/{1+(T/Toff3×(r31/R31)}]×[1/{1+(T/Toff3×(r32/R32)}]×[1/{1+(T/Toff3×(r33/R)}] (16)

【0071】
数式(16)より、回路損失がある場合の3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率ηは数式(17)によって与えられる。
【0072】

η=[1/{1+(T/Toff3×(r31/R31)}]×[1/{1+(T/Toff3×(r32/R32)}]×[1/{1+(T/Toff3×(r33/R)}] (17)

【0073】
ここで、数式(17)の右辺の第1項は1段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η31であり、数式(17)の右辺の第2項は2段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η32であり、数式(17)の右辺の第3項は3段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η33である。効率η=η31×η32×η33で表される。
【0074】
等価負荷抵抗Rに供給される電力をWとすると、3段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失W33は数式(18)で求められ、2段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失W32は数式(19)で求められ、1段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失W31は数式(20)で求められる。
【0075】

33=W×(1−η33)/η33 (18)
32=W×(1−η32)/(η32×η33 (19)
31=W×(1−η31)/(η31×η32×η33 (20)

【0076】
数式(18)〜数式(20)より、数式(21)〜数式(23)を得る。

33/W=(1−η33)/η33 (21)

32/W33=(1−η32)/{(1−η33)×η32} (22)

31/W32=(1−η31)/{(1−η32)×η31} (23)

【0077】
ここで、1段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η31と2段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η32と3段目の昇圧型スイッチング電源回路の効率η33が等しい場合には、数式(17)において、(r31/R31)=(r32/R32)=(r33/R)と置くことができる。
【0078】
そして、数式(18)〜数式(20)が示すように、厳密には、より前段の昇圧型スイッチング電源回路の損失がより大きくなるが、η31=η32=η33≒1の場合(即ち、r33<<R、r32<<R32、r31<<R31の場合)においては、1段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失W31と2段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失W32と、3段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失W33と、を略等しいものとできる。このようにして、各段における損失を略同じものすることは、各段の発熱を略均一として熱集中を防ぐ意味からも好ましい。
【0079】
(r31/R31)=(r32/R32)=(r33/R)とする場合には、数式(16)から、(r31/R31)、(r32/R32)を消去して、数式(24)を得ることができる。ここで、R32=(Toff3/T×Rであり、R31=(Toff3/T×R32であり、r32=(Toff3/T×r33であり、r31=(Toff3/T×r32であることは、2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路におけると同様に明らかである。
【0080】

=(T/Toff3×E×[1/{1+(T/Toff3×(r33/R)}](24)

【0081】
数式(24)より、回路損失がある場合の3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率ηは数式(25)によって与えられる。
【0082】

η=[1/{1+(T/Toff3×(r33/R)}]
=1/{1+(T/Toff3×(r33/R)}(25)

【0083】
要するに、本実施形態の3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路は、3個の昇圧型スイッチング電源回路を、3段縦続接続して得られるものである。この3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の1段目(前段)は、インダクタL31の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタL31の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサC31を接続し、コンデンサC31の両端を出力側として形成されるものである。また、損失は等価的に損失抵抗r31に置きかえられる。
【0084】
また、この3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の2段目(中段)は、インダクタL32の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタL32の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサC32を接続し、コンデンサC32の両端を出力側として形成されるものである。そして、損失は等価的に損失抵抗r32に置きかえられ、出力側に接続される負荷は等価的に等価負荷抵抗R32に置きかえられる。そして、昇圧型スイッチング電源回路の2段目(中段)の入力側は昇圧型スイッチング電源回路の1段目(前段)の出力側に接続され、昇圧型スイッチング電源回路の2段目(中段)の出力側は昇圧型スイッチング電源回路の3段目(中段)の入力側に接続される。
【0085】
また、この3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の3段目(後段)は、インダクタL33の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタL33の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサC33を接続し、コンデンサC33の両端を出力側として形成されるものである。そして、損失は等価的に損失抵抗r33に置きかえられ、出力側に接続される負荷は等価負荷抵抗Rである。そして、昇圧型スイッチング電源回路の3段目の入力側は昇圧型スイッチング電源回路の2段目(中段)の出力側に接続される。
【0086】
損失抵抗r33の値をr33とし、等価負荷抵抗Rの値をRとし、1周期の時間をTとし、1周期毎にオン・オフ制御されるスイッチ素子S、スイッチ素子S、スイッチ素子Sのオフ時間をToff3とすれば、(r33/R)と(T/Toff3)とが効率ηに関係をする。ここで、1段目の昇圧型スイッチング電源回路から見た定常状態における等価負荷抵抗R31の値をR31、2段目の昇圧型スイッチング電源回路から見た定常状態における等価負荷抵抗R32の値をR32、1段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失に応じた損失抵抗r31の値をr31、2段目の昇圧型スイッチング電源回路の損失に応じた損失抵抗r32の値をr32とする。この場合に各段における効率が等しい場合には、(r33/R)=(r31/R31)=(r32/R32)が成立する。
【0087】
そして、(r33/R)と出力電圧の値であるEと入力電圧の値であるEとが与えられれば、数式(24)に示す関係式から、(T/Toff3)の値が求まり、数式(25)に示す関係式に(r33/R)の値と(T/Toff3)の値とを代入して効率ηの値を求めることができる。
【0088】
(回路損失がある場合のn段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路)
上述した、2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路および3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の解析手法を一般的なn段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路に拡張する。図9は、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を示す図である。図9では、2段目から(n−1)段目までの昇圧型スイッチング電源回路については、記載が省略されている。
【0089】
数式(16)をn段に拡張した場合について数式(26)を得、数式(17)をn段に拡張した場合について数式(27)を得ることができる。
【0090】

=(T/Toffn×E×[1/{1+(T/Toffn×(rn1/Rn1)}]×[1/{1+(T/Toffn×(rn2/Rn2)}]・・・・×[1/{1+(T/Toffn×(rnm/Rnm)}]・・・・・×[1/{1+(T/Toffn×(rnn−1/Rnn−1)}]×[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}] (26)

η=[1/{1+(T/Toffn×(rn1/Rn1)}]×[1/{1+(T/Toffn×(rn2/Rn2)}]・・・・×[1/{1+(T/Toffn×(rnm/Rnm)}]・・・・・×[1/{1+(T/Toffn×(rnn−1/Rnn−1)}]×[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}] (27)

【0091】
数式(26)、数式(27)を整理して、出力電圧E、効率ηは各々、数式(28)、数式(29)によって与えられる。
【0092】

=(T/Toffn×E×[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}](28)

η=[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}]
=1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}(29)

【0093】
要するに、本実施形態のn段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路は、n個の昇圧型スイッチング電源回路を、n段縦続接続して得られるものである。このn段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側の1段目(最前段の昇圧型スイッチング電源回路)は、インダクタLn1の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタLn1の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサCn1(最前段のコンデンサ)を接続し、コンデンサCn1の両端を出力側として形成されるものである。また、損失は等価的に損失抵抗rn1に置きかえられる。
【0094】
また、このn段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の2段目は、インダクタLn2(図示せず)の一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタLn2の他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサCn2(図示せず)を接続し、コンデンサCn2の両端を出力側として形成されるものである。そして、損失は等価的に損失抵抗rn2(図示せず)に置きかえられ、出力側に接続される負荷は等価的に等価負荷抵抗Rn2(図示せず)に置きかえられる。そして、昇圧型スイッチング電源回路の2段目の入力側は昇圧型スイッチング電源回路の1段目の出力側に接続され、昇圧型スイッチング電源回路の2段目の出力側は昇圧型スイッチング電源回路の3段目の入力側に接続される。同様にして、各昇圧型スイッチング電源回路の入力側は一段前段の昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続され、各昇圧型スイッチング電源回路の出力側は一段後段の入力側に接続されて、連鎖状に縦続接続される。
【0095】
また、このn段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路のn段目は、インダクタLnnの一端とスイッチ素子Sの一端とダイオードDの一端とを接続し、インダクタLnnの他端とスイッチ素子Sの他端とを入力側とする。そして、ダイオードDの他端とスイッチ素子Sの他端との間にコンデンサCnnを接続し、コンデンサCnnの両端を出力側として形成されるものである。そして、損失は等価的に損失抵抗rnnに置きかえられる。そして、n段目の昇圧型スイッチング電源回路の入力側は(n−1)段目の昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続され、n段目の昇圧型スイッチング電源回路の出力側は等価負荷抵抗Rに接続される。
【0096】
n番目の昇圧型スイッチング電源回路の損失抵抗rnn(損失に対応する抵抗)の値をrnnとし、等価負荷抵抗Rの値をRとし、1周期の時間をTとし、1周期毎にオン・オフ制御されるスイッチ素子S、スイッチ素子S・・・・スイッチ素子Sのオフ時間をToffnとすれば、(rnn/R)と(T/Toffn)とが効率ηに関係をする。ここで、1段目の昇圧型スイッチング電源回路から見た定常状態における等価負荷抵抗Rn1の値をRn1、2段目の昇圧型スイッチング電源回路から見た定常状態における等価負荷抵抗Rn2の値をRn2、・・・・(n−1)段目の昇圧型スイッチング電源回路の等価負荷抵抗R(n−1)1の値をR(n−1)1、とし、・・・・、n段目の昇圧型スイッチング電源回路の等価負荷抵抗Rの値をRとする。また、1段目からn段目までの各々の昇圧型スイッチング電源回路の損失に応じた抵抗の値をrn1、rn2、・・・・r(n−1)1、rn1とする。この場合に、各段の効率が等しいものであるとすると、(rnn/R)=(rn1/Rn1)=・・・・・・=(r(n−1)1/R(n−1)1)が成立する。
【0097】
この場合には、(rnn/R)と出力電圧の値であるEと入力電圧の値であるEとが与えられれば、数式(28)に示す関係式から、(T/Toffn)の値が求まり、数式(29)に示す関係式に(rnn/R)の値と(T/Toffn)の値とを代入して効率ηの値を求めることができる。または、数式(28)と数式(29)より、(T/Toffn)を含まない数式を求め、直接に、出力電圧E、入力電圧E、(rnn/R)の各値を代入して効率ηの値を求めることができる。
【0098】
(昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の段数nとオフ時間Toffnの関係)
図10は、1段の昇圧型スイッチング電源回路ないし3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路について、それらの各々における入力電圧Eの値を同一として、各々から同一の出力電圧Eを得る場合における、1段の昇圧型スイッチング電源回路のオフ時間Toff1、2段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路のオフ時間Toff2、3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路のオフ時間Toff3が、どのような関係となるかを模式的に示す図である。
【0099】
ここで、説明を簡単にするために、効率η、効率η、効率ηの各々が1である場合(r11=0、r22=0、r33=0である損失がない場合)についてまず説明をする。この場合には、Toff1は数式(30)、Toff2は数式(31)、Toff3は数式(32)で表せる。また、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路については、効率ηが1である場合には数式(33)で表される。
【0100】

off1=T×(E/E) (30)

off2=T×(E/E1/2 (31)

off3=T×(E/E1/3 (32)

offn=T×(E/E1/n (33)

【0101】
図1、図7、図8、図9に示す昇圧型スイッチング電源回路では、E/E<1であるので、数式(30)〜数式(33)より、Toff1<Toff2<Toff3の関係が成立する。また、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路におけるスイッチ素子がオフ(off)となる時間の一般的関係は、Toff1<Toff2<Toff3・・・・・<Toffn(ただし、Toffnはnが4以上に対応するオフ時間)が成立する。なお、r11≠0、r22≠0、r33≠0である場合(損失が有る場合)にも、各段の効率が等しい場合には、Toff1<Toff2<Toff3の関係が成立する。そして、r11≠0、r22≠0、r33≠0・・・・・rnn≠0である場合にも、Toff1<Toff2<Toff3・・・・・<Toffnの一般的関係が成立する。
【0102】
(昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の段数nと効率ηの関係)
n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率ηは、数式(29)に示すように、T/Toffn(周期・オフ時間の時間比)とrnn/R(最終段の昇圧型スイッチング電源回路の損失抵抗・等価負荷抵抗の抵抗比)との関数として表される。ここで、数式(28)に示すように、T/Toffnは、E/E(出力電圧・入力電圧の昇圧比)とrnn/Rとの関数として表されるので、結局、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率ηは、E/Eとrnn/Rの関数として表されることとなる。
【0103】
要するに、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電力と入力側に入力される入力電力との比を(電力)効率ηとし、縦続接続の数をnとして、効率ηを最大にする整数nは以下のようにして求められる。
【0104】
n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値をrnnとし、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続される等価負荷抵抗の値をRとし、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値をEoとし、n段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値をEとする。この場合に、上述した数式(28)を満たし、上述した数式(29)で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数が効率を最大とする縦続接続の数である。よって、昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路が最も効率が良いこととなる。
【0105】
上述した数式(28)を満たし、上述した数式(29)で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数を求める、2元連立方程式の解法の過程を以下に示す。各数式の標記を簡略化するために、M=E/Eと置き、k=T/Toffnと置き、b=rnn/Rと置く。このようにして、数式(28)から数式(34)を得る。
【0106】

M=k{1/(1+k×b)}={k/(1+k×b)}(34)

【0107】
数式(34)は、kについての2次方程式であるので、2次方程式の根の公式より、数式(35)を得ることができる。
【0108】

={1±(1−4×b×M2/n1/2}/(2×b×M1/n) (35)

【0109】
ここで、数式(35)の意味を検討する。数式(35)は、数式(36)と数式(37)の2式から成立している。
【0110】

={1−(1−4×b×M2/n1/2}/(2×b×M1/n) (36)

={1+(1−4×b×M2/n1/2}/(2×b×M1/n) (37)
【0111】
まず、数式(36)について検討をする。b=rnn/Rが0に近づく極限値(b−>0)、即ち、損失がなく効率が1となる場合における、k=T/Toffnは、数式(38)で表される。
【0112】

=M1/n (b−>0)
=T/Toffn=(E/E1/n (38)

【0113】
また、数式(33)で示される、損失がなく効率が1となる場合における、関係式を変形すると、数式(39)が得られる。
【0114】

/Toffn=(E/E1/n (39)

【0115】
つまり、数式(38)と数式(39)とは一致することから、数式(36)に示す、k={1−(1−4×b×M2/n1/2}/(2×b×M1/n)は、物理現象と合致する有意な解であることが確認される。
【0116】
一方、数式(37)の場合について検討をする。b=rnn/Rが0に近づく極限値は、数式(40)で表される
【0117】

=∞ (b−>0) (40)

【0118】
つまり、数式(40)と数式(39)とは一致せず、数式(37)に示す、k={1+(1−4×b×M2/n1/2}/(2×b×M1/n)は、物理現象と合致する有意な解ではないことが確認される。
【0119】
数式(36)で得られた、kを数式(29)に代入して、T/Toffnを消去して、数式(41)を得ることができる。そして、再び、演算の簡単化のために導入した、MをE/Eに戻し、bをrnn/Rに戻して、数式(41)、数式(42)を得ることができる。
【0120】

η=1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}
=1/{1+(k×b}
=1/〈1+[{1−(1−4×b×M2/n1/2}/(2×b×M1/n)]×b〉 (41)

η=1/《1+〈[1−{1−4×(rnn/R)×(E/E2/n1/2]/{2×(rnn/R)×(E/E1/n}〉×(rnn/R)》(42)

【0121】
(計算例)
図11〜図24は、E/Eとrnn/Rとを媒介変数として、昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の段数nに対する効率ηの関係を示すグラフである。即ち、横軸は縦続接続の段数nの値、縦軸は段数nの縦続接続された昇圧型スイッチング電源回路の全体の効率である。この各グラフは、数式(28)および数式(29)、または、数式(42)から計算によって求められたものである。
【0122】
図11〜図17は、rnn/R=0.01、E/Eが1.5〜35の範囲における効率を、昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の段数を1〜10の間で変化させて計算した結果を示すものである。また、図18〜図24は、rnn/R=0.005、E/Eが1.5〜35の範囲における効率を、昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の段数を1〜10の間で変化させて計算した結果を示すものである。
【0123】
図11は、rnn/R=0.01、E/Eが1.5〜5の範囲における効率を示す図である。図12は、rnn/R=0.01、E/Eが6〜10の範囲における効率を示す図である。図13は、rnn/R=0.01、E/Eが11〜15の範囲における効率を示す図である。
【0124】
図14は、rnn/R=0.01、E/Eが16〜20の範囲における効率を示す図である。図15は、rnn/R=0.01、E/Eが21〜25の範囲における効率を示す図である。図16は、rnn/R=0.01、E/Eが26〜30の範囲における効率を示す図である。図17は、rnn/R=0.01、E/Eが31〜35の範囲における効率を示す図である。
【0125】
図18は、rnn/R=0.005、E/Eが1.5〜5の範囲における効率を示す図である。図19は、rnn/R=0.005、E/Eが6〜10の範囲における効率を示す図である。図20は、rnn/R=0.005、E/Eが11〜15の範囲における効率を示す図である。図21は、rnn/R=0.005、E/Eが16〜20の範囲における効率を示す図である。図22は、rnn/R=0.005、E/Eが21〜25の範囲における効率を示す図である。図23は、rnn/R=0.005、E/Eが26〜30の範囲における効率を示す図である。図24は、rnn/R=0.005、E/Eが31〜35の範囲における効率を示す図である。
【0126】
図11〜図24の各横軸の縦続接続の段数nの値(Number of converters n)の1、2・・・10は、縦続接続された昇圧型スイッチング電源回路の数を示す。E/Eが1.5〜35の範囲で変化した場合に、任意の段数nにおいて、縦軸に示す効率η(Efficiency)の値は、昇圧比E/Eの値が小さい程大きくなることが見て取れる。なお、一般的に、昇圧型スイッチング電源回路では、入力電圧Eは制約の下に得られる所定範囲内の電圧値を有する電圧であり、出力電圧Eは所望の電圧とされている。つまり、昇圧型スイッチング電源回路は、所望の昇圧比E/Eを得て、所望の出力電圧を得ることを目的とするものである。
【0127】
抵抗比rnn/R=0.01の場合には、図11〜図17から以下の結果が見て取れる。昇圧比E/Eの値が1.5、2の場合には段数n=1で効率が最大となる(図11を参照)。昇圧比E/Eの値が3の場合には段数n=2で効率が最大となる(図11を参照)。昇圧比E/Eの値が4、5の場合には段数n=3で効率が最大となる(図11を参照)。昇圧比E/Eの値が6〜9の場合には段数n=4で効率が最大となる(図12を参照)。昇圧比E/Eの値が10〜15の場合には段数n=5で効率が最大となる(図12、図13を参照)。昇圧比E/Eの値が16〜22の場合には段数n=6で効率が最大となる(図14、図15を参照)。昇圧比E/Eの値が23〜35の場合には段数n=7で効率が最大となる(図15、図16、図17を参照)。
【0128】
抵抗比rnn/R=0.005の場合には、図18〜図24から以下の結果が見て取れる。昇圧比E/Eの値が1.5の場合には段数n=1で効率が最大となる(図18を参照)。昇圧比E/Eの値が2の場合には段数n=2で効率が最大となる(図18を参照)。昇圧比E/Eの値が3、〜5の場合には段数n=3で効率が最大となる(図18を参照)。昇圧比E/Eの値が6〜9の場合には段数n=4で効率が最大となる(図19を参照)。昇圧比E/Eの値が10〜15の場合には段数n=5で効率が最大となる(図19、図20を参照)。昇圧比E/Eの値が16〜23の場合には段数n=6で効率が最大となる(図21、図22を参照)。昇圧比E/Eの値が24〜35の場合には段数n=7で効率が最大となる(図22、図23、図24を参照)。
【0129】
図11を参照して、いくつかの具体例を引用して説明をする。抵抗比rnn/R=0.01の場合には、以下の効率が見て取れる。昇圧比E/Eの値が1.5の場合の効率最大値は、n=1で生じ、その値は、略98%(計算値では97.7%、ただし有効数字を3桁とする場合、有効数字は以下同様)である。昇圧比E/Eの値が2の場合の効率最大値は、n=1で生じ、その値は、略96%(計算値では95.8%)である。昇圧比E/Eの値が3の場合の効率最大値は、n=2で生じ、その値は、略94%(計算値では93.9%)である。昇圧比E/Eの値が4の場合の効率最大値は、n=3で生じ、その値は、略92%(計算値では92.4%)である。昇圧比E/Eの値が5の場合の効率最大値は、n=3で生じ、その値は、略91%(計算値では91.2%)である。
【0130】
図12を参照して、いくつかの具体例を引用して説明をする。抵抗比rnn/R=0.01の場合の以下の効率が見て取れる。昇圧比E/Eの値が6の場合の効率最大値は、n=4で生じ、その値は、略90%(計算値では90.3%)である。昇圧比E/Eの値が7の場合の効率最大値は、n=4で生じ、その値は、略90%(計算値では89.6%)である。昇圧比E/Eの値が8の場合の効率最大値は、n=4で生じ、その値は、略89%(計算値では88.8%)である。昇圧比E/Eの値が9の場合の効率最大値は、n=5で生じ、その値は、略88%(計算値では88.2%)である。昇圧比E/Eの値が10の場合の効率最大値は、n=5で生じ、その値は、略88%(計算値では87.8%)である。以下、同様にして図13〜図17から、昇圧比E/Eの値が10〜35の各々についての効率最大値が読み取れる。
【0131】
図18〜図21を参照して、いくつかの具体例を引用して説明をする。抵抗比rnn/R=0.005の場合の以下の効率が見て取れる。昇圧比E/Eの値が1.5の場合の効率最大値は、n=1で生じ、その値は、略99%(計算値では98.9%)である。昇圧比E/Eの値が3の場合の効率最大値は、n=3で生じ、その値は、略97%(計算値では96.9%)である。昇圧比E/Eの値が6の場合の効率最大値は、n=4で生じ、その値は、略95%(計算値では95.1%)である。昇圧比E/Eの値が10の場合の効率最大値は、n=5で生じ、その値は、略94%(計算値では93.8%)である。昇圧比E/Eの値が20の場合の効率最大値は、n=6で生じ、その値は、略92%(計算値では92.0%)である。
【0132】
図22〜図24を参照して、いくつかの具体例を引用して説明をする。抵抗比rnn/R=0.005の場合の以下の効率が見て取れる。昇圧比E/Eの値が25の場合の効率最大値は、n=7で生じ、その値は、略91%(計算値では91.4%)である。昇圧比E/Eの値が30の場合の効率最大値は、n=7で生じ、その値は、略91%(計算値では91.0%)である。昇圧比E/Eの値が35の場合の効率最大値は、n=7で生じ、その値は、略91%(計算値では91.6%)である。
【0133】
抵抗比rnn/R=0.01、抵抗比rnn/R=0.005、抵抗比rnn/R=0.001(図11〜図24には示さない)について、最大効率となる段数を表1にまとめる。表1において最も左側の列は、昇圧比E/Eである。2列目は、抵抗比rnn/R=0.01における、最も効率が良好となる段数nの数であり、3列目は、2列目で示す段数における効率である。4列目は、抵抗比rnn/R=0.005における、最も効率が良好となる段数nの数であり、5列目は、4列目で示す段数における効率である。6列目は、抵抗比rnn/R=0.001における、最も効率が良好となる段数nの数であり、7列目は、6列目で示す段数における効率である。
【0134】
【表1】

【0135】
上述したように、昇圧比E/Eの値、抵抗比rnn/Rの値、を媒介変数として、n(整数)を順次変化させて、数式(28)および数式(29)、または、数式(42)から、昇圧比E/Eを固定して、nを変化させて対応する効率ηを求めて、さらに、最も効率が良好となる段数nを求めることができる。しかしながら、このようにする場合には、一つの昇圧比E/Eに対応して段数nの値を変化させて繰り返し計算をして、初めて表1の一行の結果を得ることができるものである。そこで、以下の数式(43)に示すように、効率ηを段数nで偏微分した結果が0となる極値、即ち、最高効率となる効率ηに対応する実数nを直接に求めることもできる。ここで、段数nは整数のみが意味があるので、数式(43)によって求めたn(実数)を、切捨て、切上げ、四捨五入、のいずれかによって整数化することによって、昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の段数であるn(整数)を求める。例えば、数式(43)で得られるn(実数)の値として3.3が得られた場合には、切捨て、四捨五入によれば、n(整数)の値として3が得られ、段数として3段が望ましい段数であることが解る。また、切上げによれば、n(整数)の値として4が得られ、段数として4段が望ましい段数であることが解る。
【0136】

∂η/∂n=∂〔1/《1+〈[1−{1−4×(rnn/R)×(E/E2/n1/2]/{2×(rnn/R)×(E/E1/n}〉×(rnn/R)》〕/∂n=0 (43)

【0137】
(実施例)
上述した、図11〜図24、表1に示す結果をどのようにして用いるかについて、実施例を示して説明をする。
【0138】
図25は、実施例の電力システム1のブロック図である。電力システム1は、通信機器17を動作させるためのシステムである。電力源としては、太陽電池10、商用電力系統14、バッテリー13が用いられている。また、これらの機器を冷却するためのエアコン(エアコンディショナー)18がDC(直流)400V(ボルト)のバスラインに接続されている。
【0139】
太陽電池10から得られるのは、日光の光量に応じて電圧値がDC70V〜300Vの範囲で変化する直流電力である。バッテリー13から得られるのはDC48Vの直流電力である。商用電力系統14から得られるのはAC(交流)200Vの交流電力である。
【0140】
太陽電池10から得られる電圧はDC70V〜300Vの範囲で変化するが、入力電圧EがDC70V〜300Vの範囲で変化しても出力電圧Eを400Vに保つ縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11が用いられる。バッテリー13から得られるのはDC48Vの直流電力であるので、入力電圧EがDC48Vで出力電圧Eが400Vとなる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路12が用いられる。また、図25には図示しないが、DC400Vのバスラインとバッテリー13との間にバッテリー13を充電するための降圧型スイッチング電源回路も併用される。また、通信機器17はDC48Vで動作するので、DC400Vのバスラインと通信機器17との間に降圧型スイッチング電源回路16が用いられる。
【0141】
(縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11について)
縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11としては、複数の昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続した縦続接続昇圧型スイッチング電源回路が用いられる。ここで、太陽電池10から得られる電圧がDC70V(ボルト)、所望の出力電圧を400Vとする場合には、昇圧比E/E=400V/70V=5.7である。よって、図12、図19、または表1から、効率が最大となる縦続接続の段数nの値は4である。一方、太陽電池10から得られる電圧がDC300Vの場合には、昇圧比E/E=400V/300V=1.3であるので、図11、図18または表1から、効率が最大となる縦続接続の段数nの値は1である。そして、上述したように、昇圧比E/E=400V/70V=5.7である場合には効率が最大となるように、縦続接続の段数nの値は4に設定し、昇圧比E/E=400V/300V=1.3である場合には効率が最大となるように、縦続接続の段数nの値は1に設定すれば良いこととなる。
【0142】
このように、入力電圧Eが固定ではなく変化する場合、つまり、入力電圧の最小値に対応する効率が最も良くなる段数と入力電圧の最大値に対応する効率が最も良くなる段数とが異なる場合には、縦続接続の段数nの値を入力電圧Eに応じて変化させることが効率を最大とする観点から望ましい。以下にどのようにして、縦続接続の段数nの値を入力電圧Eに応じて変化させるかについて説明をする。
【0143】
図26は太陽電池10から得られる電圧を昇圧する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11の回路図である。スイッチ素子制御回路111は、スイッチ素子S、スイッチ素子S、スイッチ素子S、スイッチ素子Sを制御する。また、電圧検出回路112は、太陽電池10からの電圧を検出して、昇圧比E/E=400V/(太陽電池10からの電圧の値)を検出して、効率が最大となる縦続接続の段数nの値を検出する。段数nの値と太陽電池10からの電圧との関係は、予め図示しないロム(ROM)に記憶しておくことによって、容易に検出できる。また、縦続接続の段数は、昇圧比E/E=400V/(太陽電池10からの電圧の最小値)に応じた段数、例えば、(太陽電池10からの電圧の最小値)が70Vである場合には4段の、昇圧型スイッチング電源回路を予め備えておく。
【0144】
例えば、(太陽電池10からの電圧の値)が300Vであり、電圧検出回路112が、段数nの値として1を選択する場合には、スイッチ素子制御回路111はスイッチ素子Sのみがスイッチング動作(周期内のオン・オフ動作)をするようにして、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sは常時オフとする制御をおこなう。この場合には、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sのスイッチング損失、ダイオードD〜ダイオードDのスイッチング損失は発生しないので、2段目、3段目、4段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失は非常に小さなものとなる。よって、等価的には、1段目の昇圧型スイッチング電源回路のみが昇圧に寄与するので、数式(3)に示すようにして出力電圧Eとして400Vを得ることができる。このときの効率は、略、数式(2)で示すものとなる。
【0145】
同様にして、電圧検出回路112が、段数nの値として2を選択する場合には、例えば、スイッチ素子制御回路111はスイッチ素子Sとスイッチ素子Sがスイッチング動作をするようにして、スイッチ素子Sとスイッチ素子Sは常時オフとする制御をおこなう。この場合には、スイッチ素子Sとスイッチ素子Sのスイッチング損失、ダイオードDとダイオードDのスイッチング損失は発生しないので、3段目、4段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失は非常に小さなものとなる。
【0146】
同様にして、電圧検出回路112が、段数nの値として3を選択する場合には、例えば、スイッチ素子制御回路111はスイッチ素子Sとスイッチ素子Sとスイッチ素子Sがスイッチング動作をするようにして、スイッチ素子Sは常時オフとする制御をおこなう。この場合には、スイッチ素子Sのスイッチング損失、ダイオードDのスイッチング損失は発生しないので、4段目の昇圧型スイッチング電源回路における損失は非常に小さなものとなる。
【0147】
同様にして、電圧検出回路112が、段数nの値として4を選択する場合には、スイッチ素子制御回路111はスイッチ素子S〜スイッチ素子Sがスイッチング動作をするようにする。
【0148】
なお、段数nの値が1の場合には、スイッチング動作させるスイッチ素子は、スイッチ素子Sに限ることなく、他のスイッチ素子S〜スイッチ素子Sのいずれか1つとしても良い。また、段数nの値が2の場合には、スイッチング動作させるスイッチ素子は、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sの任意の2つとしても良い。また、段数nの値が3の場合には、スイッチング動作させるスイッチ素子は、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sの任意の3つとしても良い。
【0149】
ここで、出力の電圧値の制御は以下のようにしておこなわれる。スイッチ素子制御回路111は、等価負荷抵抗Rが接続される出力側から出力の電圧を検出する。また、スイッチ素子制御回路111は、基準電圧ERefを検出する。そしてフィードバック制御によって、出力電圧値Eが基準電圧ERefと一致するように、または、出力電圧値Eを分圧した値が基準電圧ERefの値と一致するように制御される。
【0150】
なお、出力電圧の厳密な定電圧特性が要求されない場合には、フィードバック制御を用いずに、スイッチ素子制御回路は、各スイッチ素子のオフの時間を、既知の入力電圧Eと所望の出力電圧Eとの比に応じた予め定める固定値となるようにフィードフォワード制御して、出力電圧Eを所望の電圧とする制御をするようにしても良い。
【0151】
図26において、第1段目の昇圧型スイッチング電源回路は、スイッチ素子S、インダクタL41、ダイオードD、コンデンサC41を有して構成されている。また、第2段目の昇圧型スイッチング電源回路は、スイッチ素子S、インダクタL42、ダイオードD、コンデンサC42を有して構成されている。また、第3段目の昇圧型スイッチング電源回路は、スイッチ素子S、インダクタL43、ダイオードD、コンデンサC43を有して構成されている。また、第4段目(最後段)の昇圧型スイッチング電源回路は、スイッチ素子S、インダクタL44、ダイオードD、コンデンサC44を有して構成されている。
【0152】
要は、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11では、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値Eが一定値であり、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値Eが可変値である場合に、入力側に入力される入力電圧の最小値において、上述した数式(28)を満たし、かつ、数式(29)で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数、または、数式(42)で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数の昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を構成しておくものである。
【0153】
そして、入力電圧Eが固定ではなく、変化する場合には、入力側に入力される入力電圧の値Eに応じて、以下の数式(44)を満たし、以下の数式(45)で表される電力効率ηの値が最大となる整数kで与えられる数を求め、または、数式(42)から得られる整数を求め、k個のスイッチ素子をオン・オフ制御し、(n−k)個のスイッチ素子を常時オフとする制御をおこなうものである。
【0154】

=(T/Toffk×E×[1/{1+(T/Toffk×(rnn/R)}] (44)
η=(T/Toffk×1/{1+(T/Toffk×(rnn/R)} (45)

【0155】
(縦続接続昇圧型スイッチング電源回路12について)
次に、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路12(図25を参照)について説明をする。バッテリー13から得られる電圧を昇圧する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路12は縦続接続された昇圧型スイッチング電源回路が用いられる。ここで、バッテリー13から得られる電圧がDC48Vの一定値であり、入力電圧Eの値が固定値である。そして、昇圧比E/E=400V/48V=8.3であるので、図12、図19または表1から見て取れるように、効率が最大となる縦続接続の段数nの値は4である。
【0156】
従って、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路12は、図26に示す縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11と同様の4段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を用い、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sのすべてをスイッチング周期でオン・オフとする制御して、最も効率を高くして、DC48VからDC400Vを得ることができる。ここで、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11における太陽電池10に替えて、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路12ではバッテリー13が用いられる。
【0157】
なお、図12、図19から見て取れるように、昇圧比E/E=400V/48V=8.3の場合には、縦続接続の段数nの値を3としても、段数nの値を4とする場合に比べて効率の減少は僅か(1%以内)であるので、回路規模を小さくして装置のコストダウンを図るために4段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路に替えて3段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を用いることができる。
【0158】
また、表1に示したように、rnn/R=0.01、rnn/R=0.005、rnn/R=0.001と変化しても、rnn/Rの値によって、最も効率が良くなる縦続接続の段数の値は大きく異なるものではないことが分かる。よって、少なくとも、抵抗比rnn/R=0.01〜抵抗比rnn/R=0.001の範囲において各段の効率がばらつく場合であっても最大効率となる段数に大きな異なりがないことが分る。
【0159】
上述した、実施例は実施形態の一例であり、出力電圧E、入力電圧E、rnn/R、昇圧比E/Eの各値が実施例とは異なる場合にも、同一の技術的思想の範囲で適用が可能である。また、現実の回路では、縦続接続される各段の効率を厳密に一致させることは困難であり、ばらつきが生じるが、各段の効率がばらつく場合においても同一の技術的思想の範囲で実施形態の適用が可能である。
【0160】
(実施形態の変形例)
図27、図28、図29、図30、図31、図32、図33、図34、を参照して、また、図を参照することなく、実施形態の種々の変形例を以下に示す。
【0161】
(実施形態の第1の変形例)
図27は、図8に示す回路におけるスイッチ素子S〜スイッチ素子Sを駆動するタイミングを図10に示すものと別のタイミングとする実施形態を示す図である。図10では、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sは同じタイミングで駆動されるものとされていた。図27に示すスイッチ素子S〜スイッチ素子Sは、周期Tを、n分割、この場合には3分割し、位相を順次(360/3)°(度)=120°(度)、ずらした信号(オン状態またはオフ状態が開始するタイミングをT/3に相当する時間ずつずらした信号)によってスイッチ素子S〜スイッチ素子Sの各々を駆動するものである。つまり、スイッチ素子Sを第1の駆動信号(図27の符号Sを参照)で駆動し、スイッチ素子Sを第2の駆動信号(図27の符号Sを参照)で駆動し、スイッチ素子Sを第3の駆動信号(図27の符号Sを参照)で駆動する。このようにすることによって、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sが同時にオンとなる重なりの時間をずらすことができ、等価負荷抵抗Rの両端に生じるリップル電圧の量を少なくすることができる。
【0162】
図27を引用して、段数nが3段の場合を説明したが、一般的なn段の場合には、(360/n)度ずつ、各スイッチのオン・オフのタイミングの位相をずらすこと(オン状態またはオフ状態が開始するタイミングをT/nに相当する時間ずつずらすこと)によって、等価負荷抵抗Rの両端に生じるリップル電圧の量を少なくする効果が得られる。
【0163】
(実施形態の第2の変形例)
図28は、図8に示す回路におけるスイッチ素子S〜スイッチ素子Sを駆動するタイミングを図10、図27に示すものと別のタイミングとする実施形態を示す図である。各スイッチ素子については、奇数段のスイッチ素子と偶数段のスイッチ素子とでは、オンとオフを逆にする。即ち、1段目の昇圧型回路のスイッチ素子Sと3段目の昇圧型回路のスイッチ素子Sとがオンである時に、2段目の昇圧型回路のスイッチ素子Sをオフとするように制御している。これにより、隣接する段におけるスイッチ素子が同時にオンとなることがない。その結果、各段のインダクタンスの値及びキャパシタンスの値を小さくすることができる。
【0164】
具体的には、段数nが3段の場合に、図28に示すように、奇数段のスイッチ素子Sとスイッチ素子Sとは同相の信号(第1の駆動信号)で駆動され、偶数段のスイッチ素子Sは奇数段のスイッチ素子を駆動する信号に対して位相が180度ずれた信号(第2の駆動信号)によって駆動される。このようにすることによって、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sが同時にオンとなる重なりの時間が生じないようにすることができ、各段のインダクタンス値及びキャパシタンス値が小さくても等価負荷抵抗Rの両端に生じるリップル電圧の量を少なくすることができる。
【0165】
また、段数nが4段の場合、例えば、図26に示す縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11では、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sの各々を同じ信号で駆動するのみならず、スイッチ素子Sとスイッチ素子Sとを同じ信号(第1の駆動信号)で駆動するとともにスイッチ素子Sとスイッチ素子Sとを第1の駆動信号とは180度位相が異なる第2の駆動信号で駆動するようにすることができる。
【0166】
図28を引用して、段数が3段の場合、図26を引用して、段数が4段の場合について説明をしたが、一般的には、段数がn段の場合には、奇数段(縦続接続された順番が奇数段目の段)のスイッチ素子の駆動信号と、偶数段(縦続接続された順番が偶数段目の段)のスイッチ素子の駆動信号との位相を180度ずらして駆動される。即ち、1段目、3段目、・・・の昇圧型回路のスイッチがオンである時に、2段目、4段目、・・・の昇圧型回路のスイッチをオフとするように制御している。
【0167】
(実施形態の第3の変形例)
図29は縦続接続のみではなく、同一構成の各段を並列接続して形成される縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を示す図である。即ち、ダイオードD11のカソードとダイオードD12のカソードとダイオードD13のカソードとが接続され、ダイオードD21のカソードとダイオードD22のカソードとダイオードD23のカソードとが接続されている。つまり、同一段のコンデンサ(C311とC312とC313、C321とC322とC323、C331とC332とC333、の各々)が並列に接続されている。このようして、並列にする個数に応じて等価負荷抵抗Rに供給する電力を増加させることができる。ここで、並列接続された各段のスイッチ素子(例えば、スイッチ素子S11とスイッチ素子S12とスイッチ素子S13)の1周期毎のオン・オフのタイミングは同一としても良いが、各段の並列方向におけるスイッチ素子のオン・オフのタイミングの位相を異なるものとすることによって、各段のインダクタンス値及びキャパシタンス値が小さくても等価負荷抵抗Rの両端に生じるリップル電圧の量を少なくすることができる。
【0168】
図30は並列接続された各段におけるスイッチ素子S11、スイッチ素子S12、スイッチ素子S13(いずれも、図29を参照)のオン・オフのタイミングの位相を異なるものとする例をタイミングチャートで示す図である。図30に示すように、周期Tを3分割し、120度ずつ位相を順次ずらした信号(オン状態またはオフ状態が開始するタイミングをT/3ずつずらした信号)によってスイッチ素子S11〜スイッチ素子S13の各々を駆動している。つまり、スイッチ素子S12のオンの立上タイミングは、スイッチ素子S11のオンの立上タイミングよりも120°遅れるようにし、スイッチ素子S13のオンの立上タイミングは、スイッチ素子S12のオンの立上タイミングよりも120°遅れるようにしている。このようにすることによって、スイッチ素子S11〜スイッチ素子S13が同時にオンとなる重なりの時間をずらして、等価負荷抵抗Rの両端に生じるリップル電圧の量を少なくすることができる。ここで、スイッチ素子S11がオフとなる時間長off31、スイッチ素子S12がオフとなる時間長off32、スイッチ素子S11がオフとなる時間長off33、は同じ時間とされている。
【0169】
また、スイッチ素子S21、スイッチ素子S22、スイッチ素子S23の組、スイッチ素子S31、スイッチ素子S32、スイッチ素子S33の組、についても、各組内で120度ずつ位相を順次ずらした信号によってスイッチ素子を駆動してリップル電圧の量を少なくすることができる。
【0170】
図29、図30を参照して、並列接続の数が3個の場合について説明をしたが、一般的に、並列接続の数がmの場合には、(360/m)度ずつ、並列方向の各スイッチ素子を駆動する信号の位相をずらすことによって、等価負荷抵抗Rの両端に生じるリップル電圧の量を少なくする効果が得られる。
【0171】
要するに、縦続接続された昇圧型スイッチング電源回路の直列方向に各スイッチのオン・オフのタイミングの位相をずらし、並列接続された昇圧型スイッチング電源回路の並列方向に各スイッチのオン・オフのタイミングの位相をずらして、等価負荷抵抗に供給される電力を増加させるとともに、リップル電圧の量を少なくすることができる。つまり、昇圧型スイッチング電源回路の直列・並列接続によって、各段のインダクタンス値及びキャパシタンス値が小さくても等価負荷抵抗の両端に生じるリップル電圧の量を少なくすることができる。
【0172】
(実施形態の第4の変形例)
上述したように、効率に注目した場合には、数式(29)、または、数式(42)に基づき、最も効率が良好なる適切な縦続接続の段数を求めることができる。しかしながら、スイッチング電源回路の装置価格の面からは、段数が少ない程価格を安いものとできる。そこで、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率と装置価格とのバランスを考慮して、既に述べた数式(29)、以下の、数式(46)、数式(47)に基づき、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を構成することもできる。ここで、iは、i<nなる整数であり、ηは、縦続接続の段数がi段の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率である。また、許容減少量εは、効率の許容の減少量であり、予め定めるものである。ここで、所定の効率の許容減少量εの値は、望ましくは、1%であり、最も望ましくは、0.5%である。この程度の減少量であれば、各段の損失量に大きな異なりが生じることもなく、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率を良好なものとする目的を逸脱するものでもない。なお、riiは、i段目の等価損失抵抗である。
【0173】

η=1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}(29)

η=1/{1+(T/Toffi×(rii/R)} (46)

η−η<ε (47)

【0174】
つまり、第4の変形例の縦続接続スイッチング電源回路は、効率を最大とする縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の段数をnとするのに対して、許容の所定範内の効率の低減を許す、i段(i<n)の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路とするものである。このようにすれば、効率と価格とのバランスを最適なものとすることができる。
【0175】
(実施形態の第5の変形例)
図26で示す上述した縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11では、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sのすべてのオフの時間を出力電圧に応じて制御するようにしたが、等価負荷抵抗Rの変化に応じた、T/Toffnの変化の量が小さい場合には、スイッチ素子S〜スイッチ素子Sのすべてを負荷の変化に応じた電圧制御に用いるのではなく、その一部のスイッチ素子を負荷の変化に応じた電圧の制御に用いるようにできる。このようにしても、すべてスイッチ素子のオフの時間を出力電圧に応じて制御するようにした縦続接続昇圧型スイッチング電源回路11におけると同様の作用と効果を生じるものとできる。
【0176】
図31に示す駆動信号は、図26に示す回路を駆動する別の駆動信号を示すものである。図31に示すように、4個のスイッチ素子であるスイッチ素子S〜スイッチ素子Sの中で、3個のスイッチ素子(例えば、スイッチ素子S〜スイッチ素子S)を等価負荷抵抗Rの変動によらず固定幅(図31の符号Tfixを参照)の駆動信号で駆動するようにする。そして、1個のスイッチ素子(例えば、最終段のスイッチ素子S)を駆動する駆動信号のみは等価負荷抵抗Rの変動に応じて、可変幅(図31の符号Tvarを参照)で制御するものである。ここで、固定幅の信号のオフの時間Tfixとしては、例えば、数式(29)で得られる時間Toffnを用いるようにしても良く、可変幅の信号のオフの時間Tvarと長さが近い信号を適宜に選択しても良い。
【0177】
このような制御は、スイッチ素子制御回路111(図26を参照)に替えて、図示しない別のスイッチ素子制御回路を採用することによって可能となる。別のスイッチ素子制御回路では、固定幅の時間Tfix(固定幅Tfix)の駆動信号を発生するとともに、フィードバック制御によって出力電圧値Eが基準電圧ERefと一致するようにする可変幅の時間Tvar(可変幅Tfix)を有する駆動信号を発生させる。なお、図31に示す駆動信号は、奇数段の駆動信号と偶数段の駆動信号との位相差を180°(度)異なるようにしたが、同位相の信号でスイッチ素子S〜スイッチ素子Sを駆動するようにしても良い。
【0178】
このように、オフ時間として固定幅Tfixを有する駆動信号とオフ時間として可変幅Tvarを有する駆動信号を併用することによって、スイッチ素子制御回路の構成を簡単なものとできる。さらに、制御ループの特性については、次数を少なくすることができるので、制御特性の安定化を図ることができる。
【0179】
(実施形態の第6の変形例)
実施形態の第1の変形例では、奇数段のスイッチ素子は同相の信号で駆動され、偶数段のスイッチ素子は奇数段のスイッチ素子を駆動する信号に対して位相が180度ずれた信号によって駆動されるようにして、隣接するスイッチ素子がオンとなる時間が重ならないようにした。しかしながら、(T/Toff)が2以下となる場合(負荷が極度に大きくなった場合、または、電源効率が悪い場合にこのような場合が生じることがある)には、隣接するスイッチ素子がオンとなる時間が重なる事態が生じてしまう。このような場合に効果があるのが、実施形態の第6の変形例である。
【0180】
上述したように、昇圧比E/Eを一定とする場合には、Toff1<Toff2<Toff3・・・・・<Toffn(ただし、Toffnはnが4以上に対応するオフ時間)が成立する。そこで、隣接するスイッチ素子がオンとなる時間が重なることがないようにして各段のインダクタンスの値及びキャパシタンスの値を小さくする目的と、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率とのバランスを考慮して、既に述べた数式(28)、数式(29)、数式(48)、さらに以下の、数式(49)に基づき、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を構成することもできる。ここで、pは、p>nなる整数であり、ηは、縦続接続の段数がp段の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率である。また、許容減少量εは、効率の許容の減少量であり、予め定めるものである。ここで、所定の効率の許容減少量εの値は、望ましくは、1%であり、最も望ましくは、0.5%である。この程度の減少量であれば、各段の損失量に大きな異なりが生じることもなく、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の効率を良好なものとする目的を逸脱するものでもない。なお、rppは、p段目の等価損失抵抗である。また、実施形態の第4の変形例では、i<nであるのに対して、実施形態の第6の変形例では、p>nである点で両者は異なる。
【0181】

=(T/Toffn×E×[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}](28)

η=1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}(29)

η=1/{1+(T/Toffp×(rpp/R)} (48)

η−η<ε (49)

【0182】
即ち、実施形態の第6の変形例では、インダクタの一端とスイッチ素子の一端とダイオードの一端とを接続し、インダクタの他端とスイッチ素子の他端とを入力側とし、ダイオードの他端とスイッチ素子の他端との間にコンデンサを接続し、コンデンサの両端を出力側として形成される昇圧型スイッチング電源回路を複数個有し、複数個の昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路であって、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の出力側に出力される出力電力と前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電力との比を電力効率ηとし、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値をrnnとし、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続される等価負荷抵抗の値をRとし、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値をEoとし、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値をEとし、予め与える所定の効率の許容の減少量を許容減少量εとして、数式(28)を満たし、数式(29)で表される電力効率ηの値が最大となる整数nよりも大きな正数pに対応する、p段縦続接続段数を有している。そして、電力効率ηとp段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の電力効率ηとの差は、許容減少量εよりも小さなものとされている。
【0183】
さらに、数式(29)、数式(48)、数式(49)に加えて、等価負荷抵抗Rの大きさが予想される最小量において(負荷に供給される電力量が予想される最大量において)、隣接する2つの段の2つのスイッチ素子が同時にオンとなることがないように、数式(50)の条件が加重されることが望ましい。この場合には、スイッチ素子制御回路は、T/Toffpの大きさを監視して、T/Toffp>2の条件が満たされるまで、制御される段数pを増加させることとなる。なお、昇圧型スイッチング電源回路の縦続接続の数は、予め、p段以上に設定をしておき、必要とされる段数に対応する数以上のスイッチ素子はオフの状態で用いることとなる。
【0184】

/Toffp>2 (50)

【0185】
(実施形態の第7の変形例)
図32は、図8に示す回路におけるスイッチ素子を駆動するタイミングを図10、図27、図28に示すものと別のタイミングとする実施形態を示す図である。図32は、n段縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路における、任意の段数である、隣接する2段である(q−1)段目とq段目についてのスイッチ素子のオンとオフとのタイミングを示す図である。
【0186】
図32では、(q−1)段目のスイッチ素子Sq−1のオン・オフのタイミングを上段に示し、q段目のスイッチ素子Sのオン・オフのタイミングを下段に示す。図32では図示しないスイッチ素子制御回路が、スイッチ素子Sq−1のオフのタイミングを検出している。そして、スイッチ素子制御回路は、スイッチ素子Sq−1がオフとなってから、時間Tが経過した後に、スイッチ素子Sをオンとするようにしている。このように、隣接する前段のスイッチ素子がオフとされた後の所定の時間Tが経過した後に次段のスイッチ素子をオンとすることにより、隣接する段のスイッチ素子が遅延特性を有する場合にもスイッチ素子Sq−1とスイッチ素子Sが同時にオンとならないようにしている。
【0187】
(実施形態の第8の変形例)
図33、図34は、複数の異なる電圧に対応する負荷を有する縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を示す図である。図33では、入力電圧をEとして、負荷131に供給する出力電圧がEo1の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路101と、負荷132に供給する出力電圧がEo2の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路102と、負荷133に供給する出力電圧がEo3の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路103と、を備える。図34では、入力電圧をEとして、負荷131に供給する出力電圧がEo1の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路201と、負荷132に供給する出力電圧がEo2の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路202と、負荷133に供給する出力電圧がEo3の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路203と、を備える。図33、図34に示す回路では、出力電圧Eo1<出力電圧Eo2<出力電圧Eo3の関係が成立している。基準電圧ERef1は出力電圧Eo1に対応し、基準電圧ERef2は出力電圧Eo2に対応し、基準電圧ERef3は出力電圧Eo3に対応している。
【0188】
図33に示す回路では、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路101は、入力電圧Eと出力電圧Eo1とに応じて、効率が最大となる段数とされ、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路102は、出力電圧Eo1と出力電圧Eo2とに応じて、効率が最大となる段数とされ、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路103は、出力電圧Eo2と出力電圧Eo3とに応じて、効率が最大となる段数とされている。
【0189】
図34に示す回路では、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路201は、入力電圧Eと出力電圧Eo1とに応じて、効率が最大となる段数とされ、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路202は、入力電圧Eと出力電圧Eo2とに応じて、効率が最大となる段数とされ、縦続接続昇圧型スイッチング電源回路203は、入力電圧Eと出力電圧Eo3とに応じて、効率が最大となる段数とされている。
【0190】
上述した、種々の実施形態を2以上組み合わせるようにした、新たな実施形態を採用することも当然に可能である。
【符号の説明】
【0191】
1 電力システム、 10 太陽電池、 11、12、101、102、103、201、202、203 縦続接続昇圧型スイッチング電源回路、 13 バッテリー、 14 商用電力系統、 16 降圧型スイッチング電源回路、 17 通信機器、 18 エアコン、 111、121、122、123、141、142、143 スイッチ素子制御回路、 112 電圧検出回路、 C11、C21、C22、C31、C32、C33、C41、C42、C43、C44、Cn1、Cn2、Cnn コンデンサ(キャパシタンスの値)、 D、D11、D12、D13、D、D21、D22、D23、D、D ダイオード、 E、E、 電圧、 E 入力電圧(入力電圧値)、 E、Eo1、Eo2、Eo3 出力電圧(出力電圧値)、 E/E 昇圧比、 L、L11、L21、L22、L31、L32、L33、L41、L42、L43、L44 インダクタ、 R 等価負荷抵抗、r11、r21、r22、r31、r32、r33、r41、r42、r43、r44、rnn (損失)抵抗、 rnn/R 抵抗比、 ERef、ERef1、ERef2、ERef3 基準電圧、 S、S11、S12、S13、S、S21、S22、S23、S、S31、S32、S33、S スイッチ素子、 Toff1、Toff2、Toff3、fix、var、 オフ時間、 T 周期

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタの一端とスイッチ素子の一端とダイオードの一端とを接続し、前記インダクタの他端と前記スイッチ素子の他端とを入力側とし、前記ダイオードの他端と前記スイッチ素子の他端との間にコンデンサを接続し、前記コンデンサの両端を出力側として形成される昇圧型スイッチング電源回路を複数個有し、前記複数個の前記昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路であって、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の出力側に出力される出力電力と前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電力との比を電力効率ηとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の前記最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値をrnnとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続される等価負荷抵抗の値をRとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値をEとし、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値をEとし、
前記スイッチ素子のオン・オフの繰り返しの周期をTとし、前記スイッチ素子のオフの時間をToffnとし、
下記式1を満たし、下記式2で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続した縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
=(T/Toffn×E×[1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}]・・・・・・・式1
η=1/{1+(T/Toffn×(rnn/R)}・・・・・・・式2
【請求項2】
(前記整数n−整数j;ただし、n>j)で与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路の各スイッチ素子である(n−j)個のスイッチ素子は、前記式1および前記式2から求められる時間Toffnの間オフとされ、
前記整数jで与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路の各スイッチ素子であるj個のスイッチ素子は、可変時間の間オフとされ、
前記可変時間は、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側から検出される前記出力電圧の値Eに応じた長さとして、前記出力電圧を制御する請求項1に記載の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項3】
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される電圧の値が400ボルトであり、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値が48ボルトであり、前記整数nの値が3または4とされる、請求項1または請求項2に記載の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項4】
前記出力電圧の値Eが一定値となるように、前記スイッチ素子のオフの時間Toffnを制御する請求項1に記載の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項5】
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値Eが一定値であり、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値Eが可変値である場合に、
前記入力側に入力される入力電圧の値Eの最小値において、前記式1を満たし、前記式2で表される電力効率ηの値が最大となる整数nで与えられる数の前記昇圧型スイッチング電源回路をn段縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路を構成し、
前記入力側に入力される入力電圧の値Eに応じて、下記式3を満たし、下記式4で表される電力効率ηの値が最大となる整数kで与えられる数を求め、前記整数kと同数のk個のスイッチ素子をオン・オフ制御し、(n−k)個(ただし、n>k)のスイッチ素子を常時オフとする制御をおこなう、請求項1に記載の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
=(T/Toffk×E×[1/{1+(T/Toffk×(rnn/R)}]・・・・・・・式3
η=1/{1+(T/Toffk×(rnn/R)}・・・・・・・式4
【請求項6】
前記整数nより小さな整数を整数iとし、前記整数nより大きな整数を整数pとし、予め与える、所定の効率の減少量を許容減少量εとして、i段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の電力効率ηまたはp段縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の電力効率ηが、電力効率η−電力効率η<許容減少量ε、または、電力効率η−電力効率η<許容減少量ε、となるように縦続接続の数を設定する、請求項1に記載の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項7】
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の奇数段のスイッチ素子のオン・オフの制御タイミングと偶数段のスイッチ素子のオン・オフの制御タイミングとが180度の位相差を有する、請求項1ないし請求項6に記載の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項8】
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の、各段のコンデンサに対してm個の昇圧型スイッチング電源回路が並列接続されて形成され、
前記並列接続されたm個の昇圧型スイッチング電源回路のスイッチ素子のオン・オフの制御タイミングが(360/m)度ずつ位相差を有する、請求項1ないし請求項6に記載の縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
【請求項9】
インダクタの一端とスイッチ素子の一端とダイオードの一端とを接続し、前記インダクタの他端と前記スイッチ素子の他端とを入力側とし、前記ダイオードの他端と前記スイッチ素子の他端との間にコンデンサを接続し、前記コンデンサの両端を出力側として形成される昇圧型スイッチング電源回路を複数個有し、前記複数個の前記昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続して得られる縦続接続昇圧型スイッチング電源回路であって、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の最後段の出力側に出力される出力電力と前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電力との比を電力効率ηとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の前記最後段の昇圧型スイッチング電源回路の損失に対応する抵抗の値をrnnとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に接続される等価負荷抵抗の値をRとし、
前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の出力側に出力される出力電圧の値をEとし、前記縦続接続昇圧型スイッチング電源回路の入力側に入力される入力電圧の値をEとし、
下記式5を満たす、電力効率ηを最大とする実数nを求め、前記実数nを切捨て、四捨五入、または切上げて得られる整数の値と等しい個数の前記昇圧型スイッチング電源回路を縦続接続した縦続接続昇圧型スイッチング電源回路。
∂η/∂n=∂〔1/《1+〈[1−{1−4×(rnn/R)×(E/E2/n1/2]/{2×(rnn/R)×(E/E1/n}〉×(rnn/R)》〕/∂n=0・・・・・・・式5

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−211769(P2011−211769A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74226(P2010−74226)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(510086855)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】