縫合装置用ハンドル
生物組織内の切開部を閉鎖するための方法及び装置が提供される。一実施例では、例えば、器官や血管などの生物組織を縫合するための装置及び方法が提供される。縫合装置は、カテーテル手技後の、大腿動脈などの動脈中に作られた切開部を縫合するために特によく適している。本装置は、長時間にわたり患者の大腿部に圧力を加える必要性をなくし、また血栓パッチの生成に関連する多くの合併症及びコストを排除する。さらに、本装置は、医師が縫合糸を迅速かつ容易に適用できるようにする改良されたハンドル部分を有する。ハンドル部分は、非常に信頼性が高く、かつ容易に操作できる。既存のカテーテルシース導入器と組み合わせて縫合を使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年9月27日出願の米国仮特許出願第60/613,636号の優先権の利益を主張するものであり、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概ね、縫合装置に関する。より詳細には、本発明は、医師が直接アクセスできない可能性のある生物組織内に縫合糸を適用するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医師は、血管など、人体の様々な生物組織における切断部、穿刺部、切開部、及び他の開口部を閉鎖するために、しばしば、縫合糸を使用する。
【0004】
動脈カテーテル手技では、大腿動脈又は他の動脈で比較的小さな経皮切開が行われる。カテーテルは、切開部を通って挿入され、動脈経路に沿って心臓などの標的部位に送られて、血管形成術又は血管造影などの1つ以上の手技を行う。これらの手技は、比較的迅速な「外来患者」手技であるように意図されている。
【0005】
カテーテル手技が完了すると、医師は、通常、患者の大腿部に直接圧力を加えて「血栓パッチ」を生成し、切開部周囲の血液を凝固させる。加えられた圧力が、大腿動脈を通る血流を妨げないことが非常に重要である。その結果、手技の後、最初の20分間は医師が手で直接圧力を加えることが普通である。その間、医師は、動脈が閉塞されていないことを保証する脈拍を感ずることができる。その後、医師は、通常、助手に担当を移し、次いで、助手は、砂袋、鉗子、又は他の装置を用いて直接圧力を加える。この手法に関する重要な問題は、24時間又はそれ以上になるなど、長時間にわたって圧力を加えることが必要となる頻度が高いことである。
【0006】
血栓パッチに関する他の問題は、大腿部に圧力が直接加えられている間に、又は直接の圧力が除去された後に、動脈中の高血圧により血栓パッチが裂け、又は破裂するおそれのあることである。それは、再度、プロセス全体を開始することが必要となる。パッチが裂けて、それが迅速に復元されない場合、かなりの出血を生ずる可能性があり、致命的な結果となるおそれがある。血栓パッチは破裂する頻度が高いので、患者は、観察のために、一晩中、病院又はカテーテル検査室に置かれることになる。その結果、単に血栓パッチがしばしば信頼性がない及び/又は生成が困難であるという理由で、これらの「外来患者」手技が「入院患者」手技になる。病院に滞在することは、患者の不快さ及び病院費用を増加させ、それは、実施された実際の医療手技に対して、しばしば、不釣り合いのものとなる。
【0007】
さらに、血栓パッチが適切に形成できなかった場合、医師は、患者を麻酔し、動脈への血流を閉塞する必要があり得る。この時点で、医師は、針を用いて従来の縫合ができるように大腿部に大きな切開を作り、従来手段で動脈を縫合し、動脈への血流を回復させ、また大腿の切開部を縫合する必要がある。それは、患者に対してさらに不快さ及び費用を追加することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題は、カテーテル手技後、直ぐに血管を縫合することにより回避される可能性があるが、動脈のサイズ及び位置が縫合を極めて困難なものとしている。より具体的には、大腿部における開口部は、従来方法を用いて動脈の縫合するための十分な作業スペースを提供するには、しばしば、小さ過ぎかつ深過ぎることである。したがって、従来方法を用いて血管を縫合するために、大腿における開口部をかなり拡大させる必要があり、それにより、回復期間がさらに長くなり、またさらなる不快さ、望ましくない傷跡、感染の可能性、及び他の健康リスクを患者に課することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
生物組織内の切開部を閉鎖するための方法及び装置が提供される。一実施例では、例えば、器官や血管などの生物組織を縫合するための装置及び方法が提供される。本装置は、カテーテル手技後の、大腿動脈などの動脈中に作られた切開部を縫合するために特によく適している。本装置は、長時間にわたり患者の大腿部に圧力を加える必要性をなくし、また血栓パッチの生成に関連する多くの合併症及びコストを排除する。1つの特徴として、本装置は、医師が縫合糸を迅速かつ効率よく使用できるようにする改良されたハンドル部分を有している。ハンドル部分は、動作させるのが簡単であり、それにより、使用時における人的エラーの可能性を低減し又は除去することができる。さらに、ハンドル部分の作動機構により、医師は、縫合糸を使用している間、装置を安定した位置に維持できるようになる。
【0010】
好ましい一実施例では、縫合装置は、細長い本体と、その細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームとを有している。アームは、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有して形成される。縫合装置はさらに、遠位端を有する針を有し、その針は、細長い本体に対して移動するように取り付けられている。ハンドルは、細長い本体に取り付けられ、またカム駆動する表面を有する作動子と、カム駆動される表面を有する従動子とを有している。従動子は、針を移動させるように接続され、カム駆動する表面及びカム駆動される表面は、作動子の移動に応じて相互作用し、従動子を駆動して針を移動させる。
【0011】
一変形形態では、ハンドルは長手方向軸線を有し、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、その軸線に対して約35°以上傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°以上傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約41°で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約35°〜約45°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約39°〜約43°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°〜約42°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動する表面は湾曲している。
【0012】
他の好ましい実施例では、縫合装置は細長い本体を有し、アームがその細長い本体に対して移動するように取り付けられている。アームは、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有する。遠位端を有する針が、細長い本体に対して移動するように取り付けられており、針の遠位端は可動である。ハンドルは細長い本体に取り付けられている。ハンドルは、従動子の移動量と等しく針を移動させるように接続された作動子及び従動子を有し、ユーザは従動子の移動量を見ることができる。したがって、針の移動量は、針を直接見ないで監視することができる。
【0013】
一変形形態では、ハンドルは、透明材料からなるハウジング部分を有し、ユーザは、透明材料を通して従動子を見ることができる。他の変形形態では、針は、作動子の移動に応じて開始位置から終了位置まで移動し、ハンドルは、針が終了位置にあるときの従動子の位置を少なくとも示す標識を含んでいる。所望の場合、標識はさらに、針が開始位置にあるときの従動子位置を示すこともできる。他の好ましい実施例では、針を直接見ないで針の移動量を監視できるように、1つ又は両方の従動子部材の一部分は、視認可能であり及び/又は主ハウジングを通って延びることができる。
【0014】
他の好ましい実施例では、縫合装置は、細長い本体と、その細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームとを有している。アームは、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有して形成されている。縫合装置はさらに、遠位端を有する針を有し、針は、細長い本体に対して移動するように取り付けられている。ハンドルは細長い本体に取り付けられ、カム駆動する表面を有する作動子、及びカム駆動される表面を有する従動子を有している。従動子は、遠位方向への従動子の移動が針を遠位方向に駆動し、また従動子の近位方向への移動が針を近位方向に駆動するように針を移動させるように接続されている。従動子は、近位方向にばねで付勢されており、また移動範囲を有することが好ましい。カム駆動する表面及びカム駆動される表面は相互作用して、従動子を、移動範囲の少なくともその実質的な部分の間で遠位方向に駆動する。
【0015】
一変形形態では、作動子は、第1の終了位置を有し、カム駆動される表面とカム駆動する表面の相互作用は第1の終了位置で解放され、したがって、ばねによる付勢が従動子を近位方向に駆動し、それにより、作動子を第1の終了位置から後退させることなく、自動的に針を近位方向に後退させることができる。作動子はまた、ばねによる付勢が針をさらに後退させる第2の終了位置を有することができる。第1の終了位置に達した後の速度よりも、第2の終了位置に達した後の速度の方が従動子を大幅に速く近位方向に駆動するように、作動子及び従動子は相対的に構成されている。
【0016】
他の変形形態では、作動子は、針の移動範囲の遠位端に針がある終了位置を有している。作動子の終了位置からの後退に応じて、従動子のばねによる付勢が針を近位方向に後退させる。
【0017】
他の好ましい実施例では、開口部に縫合糸を適用する方法が提供される。本方法は、開口部中に細長い本体を挿入すること、次いで、開口部の遠位側における細長い本体から、少なくとも1つのアームを延ばすこと、少なくとも1つのアームが縫合糸部分を保持することを含む。細長い本体部分から少なくとも1つの針を前進させて、開口部の近位側から開口部に隣接する組織を通り、少なくとも1つのアームにより保持された縫合糸部分と係合させる。作動子を第1の位置から第2の位置に移動させることによって針が前進させられ、また針がその第1の位置に後退させるように付勢されている。少なくとも1つの針は、次いで、遠位から近位方向に後退させられて、縫合糸部分を開口部を通して近位方向に引っ張る。一変形形態では、針を前進させるために作動子が押下される。他の変形形態では、作動子をその第1の位置に戻るように解放することにより針が後退させられる。他の変形形態では、針は、作動子をさらに押下することにより自動的に後退させられる。さらに他の変形形態では、針は、その第1の位置に戻るようにばねにより付勢されている。
【0018】
さらに他の好ましい実施例では、開口部に縫合糸を適用する方法が提供される。本方法は、細長い本体を開口部中に挿入することを含み、細長い本体が、複数の作動子を有するハンドルに接続される。第1の作動子が押下されて、少なくとも1つのアームを第1の位置から第2の位置に延ばし、その第2の位置にあるアームが、開口部の遠位側で細長い本体から延びており、少なくとも1つのアームが縫合糸部分を保持する。第2の作動子を押下して細長い本体から少なくとも1つの針を前進させて、開口部の近位側から開口部に隣接する組織を通り、少なくとも1つのアームにより保持された縫合糸部分と係合させる。少なくとも1つの針を遠位から近位方向に後退させて、縫合糸部分を開口部を通して近位方向に引っ張り、またアームをその第1の位置に後退させる。一変形形態では、少なくとも1つのアームを、その第2の位置からその第1の位置に戻すために第3の作動子を押下する。他の変形形態では、針を、第2の作動子をその最初の位置に戻すことにより後退させる。さらに他の変形形態では、針は、その最初の位置に戻るようにばねにより付勢される。
【0019】
さらに他の好ましい実施例では、針を前進させる方法は、押下することができる作動子を提供すること、及び角度が付けられた表面を有する従動子を提供することを含み、従動子が針と接続され、また角度が付けられた表面が作動子の表面と係合可能である。作動子が押下されて針を前進させ、針の移動距離が、角度が付けられた表面の角度に比例する。
【0020】
さらに、他の好ましい実施例では、針を前進させる方法は、ハンドル部分及び細長い本体を有する縫合装置を提供することを含み、細長い本体が、血管壁を通して挿入できるサイズの遠位端部分を有し、縫合装置が、縫合糸の端部を保持するための2つの展開可能な縫合糸アームと、縫合糸の端部をアームから掴むための2つの延長可能な針とを有する。細長い本体は、血管壁中の切開部を通り前進する。血管内で縫合糸アームを展開するために、ハンドル部分上の第1の作動子が押下される。血管壁を通して針を延ばすために、ハンドル部分上の第2の作動子を押下して、縫合糸の端部を縫合糸アームから掴む。針を引き抜くために、また血管壁を通して縫合糸の端部を引っ張るために、第2の作動子が解放される。縫合糸アームを後退させるために、第1の作動子が解放される。縫合装置は、体から引き抜かれ、縫合糸の端部は、切開部を閉鎖するために結ばれる。一変形形態では、第1の作動子は、押下された位置で解放可能に固定可能である。他の変形形態では、第1の従動子部材は、作動ロッドにより縫合糸アームに結合され、第1の作動子を押下すると、第1の従動子部材をハンドル部分内で長手方向に移動させてアームを展開させる。他の変形形態では、第2の従動子部材は針に結合され、第1の作動子を押下することにより、第2の従動子部材をハンドル部分内で長手方向に移動させて針を延長させる。
【実施例】
【0021】
以下で説明する本発明の好ましい諸実施例は、特に、生物組織内の切開部を閉鎖することに関する。その説明は、様々な諸実施例及び特有の詳細を述べるが、説明は例示的なものに過ぎず、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。さらに、当業者で行うことができる本発明の様々な応用、及びその変更はまた、以下で述べる全体の概念により包含される。
【0022】
図1を次に参照すると、切開部を閉鎖するための1つの好ましいアセンブリ4が例示の使用環境で示されている。アセンブリ4は、概ね、縫合装置6及びカテーテルシース導入器(CSI)8を有している。縫合装置6は、血管造影、血管形成術、又は他の手技など、侵襲性のカテーテル手技の後に、血管を密封するために使用することができる。図2を次に参照すると、治療部位の拡大図が示されている。この図では、医師が、患者2の上側大腿部位12に最初の切開部10を作ることが分かる。次いで、医師は、針が大腿動脈14を貫通してそこに血管切開部16を創成するように、切開部10中に針を(図示せず)挿入する。血液がその挿入部から戻って出血する場合、医師は、針が大腿動脈14に入ったことが分かる。医師は、次いで、針を介して動脈14中にガイド・ワイヤ(図示せず)を挿入する。医師は、ガイド・ワイヤが定位置になった後、針を取り出し、ガイド・ワイヤの上にプラスチック針(図示せず)を挿入することができる。次いで、ガイド・ワイヤは取り出される。
【0023】
プラスチック針が配置されると、医師はCSI8を挿入することができる。CSI8は、通常、その近位端上に位置するバルブを有する単一管腔のカテーテルである。バルブは、余分な出血を阻止し、及び/又は患者の体に薬物を導入するように構成されている。血管切開部16は、医療器具及びプローブに対して動脈血管14の内側へのアクセスを提供する。治療カテーテルなどの器具は、体内で手技を実施するために、CSI8を介して動脈14を通り、前進することができる。
【0024】
医療手技が完了し、また器具(例えば、治療カテーテルなど)が除去された後、医師は縫合装置6をCSI8を通して挿入し、したがって、中空の細長い本体32の遠位端に取り付けられた縫合糸導入器ヘッド20が、第1の切開部10に入り、患者の大腿部12の組織18を通過し、血管切開部16を通って大腿動脈14に入る。この時点で、縫合糸アーム24、24’が展開され、縫合装置の導入器ヘッド20が引き戻され、縫合糸アームが大腿動脈14の内壁22に接触する。以下でさらに詳細に説明するように、針は、導入器ヘッドから広がって、切開部16に隣接する大腿動脈14の壁を貫通する。針は、縫合糸アームからの縫合糸端部を捕捉し、次いで、大腿動脈の壁を通って縫合糸端部を引き抜くために針は後退させられる。次いで、アームが後退し、縫合装置全体が引き抜かれ、縫合糸端部が共に結ばれて切開部を閉鎖することができる。
【0025】
図3を次に参照すると、縫合装置6の好ましい実施例がより詳細に説明されている。動作のさらなる詳細及び方法は、本出願人の米国特許第6,245,079号及び第6,562,052号に記載されており、それぞれを、参照によってその全体を本明細書に援用し、また本明細書の一部として見なす。さらに、これらの特許のそれぞれを付録として添付する。装置6は、血管壁22を縫合するために使用されるのが好ましいが、装置6は、例として、動脈管開存、卵円孔開存(PFO)、心臓欠陥、刺創など他の組織を縫合するために使用できることを理解されたい。
【0026】
図3に示す実施例では、縫合装置6は、概ね、細長い本体32、導入器ヘッド20、及びハンドル部分100を有している。ハンドル部分100により、医師は、縫合糸を、非常に迅速かつ容易に切開部に使用できるように縫合装置を動作させることができる。ハンドル部分は、使用中、非常にわずかな操作でよく、また必要な場合は、片手で動作させることができる。縫合装置は、長時間にわたり圧力を加えることを必要とせずに、患者の組織内(例えば大腿動脈中)に深く位置する切開部を閉鎖するのに使用することができる。その結果、縫合装置は、医療手技後の回復期間を大幅に低減し、それにより、患者をより速やかに退院させ、またコストも大幅に低減することができる。縫合装置6の寸法は、縫合部位及び縫合される対象の生物組織に従って変化し得る。一構成では、縫合糸導入器ヘッド20は、約0.267cm(0.105インチ)の直径を有し、また中空の細長い本体32は、約0.249cm(0.098インチ)の直径を有する。
【0027】
ハンドル部分100は、主ハウジング102、アーム・トリガ104、針トリガ106、及びアーム解放ボタン108を有している。アーム・トリガ及び針トリガは、主ハウジング内の内部構成要素の移動を生成するための作動子を提供し、作動子は、治療部位に縫合糸を適用するために、少なくとも1つのアーム及び針を移動させる。以下でより詳細に説明するように、アーム・トリガ104、針トリガ106、及びアーム解放ボタン108を、医師が特定の順番で押下して延長、後退させ、縫合糸アーム及び針を導入器ヘッド20に沿って協動させて切開部に縫合糸を適用するようにハンドル部分は構成されている。
【0028】
アーム・トリガ及び針トリガは、医師により押下されると回転するように、主ハウジング102にピン110回りに枢動可能に結合されることが好ましい。以下でより詳細に説明するように、枢動回転は、主ハウジングの内部構成要素とトリガとの間でのカム様相互作用を促進する。後退時に針が組織中で動かなくなった場合、針を手動で後退できるように、開口部112が、主ハウジング102に沿って設けられている。こうすることにより、縫合装置の針が、延長された位置で止まらないように保証する安全機構を提供する。一実施例では、針の後退を助ける力を加えるために、ツール(図示せず)が主ハウジング102中の開口部112を通して挿入される。
【0029】
図3Aを参照すると、アーム・トリガ104が、単独で示されている。主ハウジング中にピン110を受け入れるために、アーム・トリガの遠位端に沿って、ループ114、116が設けられている。アーム・トリガの近位端部分に沿った底部コーナ部分120は、主ハウジング中の第1の摺動可能な従動子部材に係合するためのカム駆動する表面を提供する突起部120aを有して形成されている。突起部はまた、アームを展開された状態に固定するために、アーム・トリガを押下位置で保持するようにすることができる。アーム・トリガの上部表面118は、医師の親指又は指と係合するように形成されている。
【0030】
図3Bを参照すると、針トリガ106が、単独で示されている。主ハウジング中にピン110を受け入れるために、針トリガの近位端に沿って、ループ122が設けられている。このループは、アーム・トリガ104のループ114、116(図3Aを参照のこと)の間の間隙内に嵌合するように形成されている。針トリガの遠位端部分に沿った底部コーナ部分130は、主ハウジング中の第2の摺動可能な従動子部材と係合するためのカム駆動する表面を提供している。針トリガの上部表面128は、医師の親指又は指と係合するように形成されている。
【0031】
ハンドル部分100の好ましい内部構成要素を、次にさらに詳細に説明する。内部構成要素は、縫合糸を適用する間、アーム及び針の移動を行うために、アーム・トリガ104及び針トリガ106(即ち、作動子)及びアーム解放ボタン108と協動する。より具体的には、主ハウジング内に含まれる内部構成要素の移動を行うことにより、アーム・トリガ及び針トリガはアーム及び針を作動させる。前述のように、アーム・トリガ及び針トリガはそれぞれ、主ハウジング中の第1及び第2の摺動可能な従動子部材と相互作用をするカム駆動する表面で形成されたコーナ部分120、130を有することが好ましい。医師により、アーム・トリガ及び針トリガが押下されると、従動子部材は長手方向に移動する。
【0032】
図4を次に参照すると、例示のために、ハンドル部分100の側面断面図が示されている。第1の従動子部材140が、主ハウジング102の内部に摺動可能に配設されていることが分かる。第1の従動子部材140は、好ましくは、以下で説明する駆動ワイヤ・タブ156を介して、作動ロッドの近位端に接続され、作動ロッドは、各アームと接続するために、主ハウジング及び細長い本体を通り遠位方向に延びている。図4に示すように、第1の従動子部材140が遠位位置にある場合、アームは、導入器ヘッド内に完全に含まれている。しかし、第1の従動子部材140が、アーム・トリガ104により、近位方向に移動したとき(図5では矢印で示されている)、各アームは、導入器ヘッドの側部の開口を通して外方向に展開する(アーム及び針の動作は、以下でさらに詳細に述べる)。したがって、主ハウジングに対する第1の従動子部材140の長手方向移動は、アームの位置を制御する。アームばね144は、外部入力が何もない場合、第1の従動子部材140を遠位位置に維持するための付勢力を提供する。アームばねの一タイプが、例示のため示されているが、第1の従動子部材140を遠位位置に維持するために、知られた任意の付勢機構を使用することができる。
【0033】
第1の従動子部材140は、遠位面に沿って傾斜した「カム駆動される」表面142を有して形成されていることが分かる。図4で示すように、傾斜したカム駆動される表面は、アーム・トリガ104のコーナ部分120に沿ったカム駆動する表面と係合するように構成される。アーム・トリガ104が押下されると、アーム・トリガ104のコーナ部分120が第1の従動子部材140の傾斜表面142に沿って押す。傾斜表面に作用する下向きの力により、第1の従動子部材の長手方向移動が得られる。長手方向力は、主ハウジング内で、第1の従動子部材を近位方向(即ち、後方向)に摺動させる。第1の従動子部材が後方向に摺動すると、作動ロッドが近位方向に引っ張られ、それにより、ポートを介してアームを外方向に展開させる。
【0034】
アーム・トリガ104は、アームを展開された状態で固定するために、完全に押下された状態で解放可能に固定できることが好ましい。その結果、縫合アームを展開された状態に維持するために、医師がアーム・トリガ104に対して一定の力を加えている必要がなくなる。前に述べたように、アーム・トリガのコーナ部分120は、突起部120Aを有して形成されることが好ましい。図7は、突起部120aを含むコーナ部分120の拡大図を提供する。突起部は、アーム・トリガ104が完全に押下されたとき、第1の従動子部材140の下に捕捉されかつ保持されるように形成される。前に論じたように、アームばね144は、第1の従動子部材がアーム・トリガに当接し、突起部をしっかりと保持するように、第1の従動子部材を前方向に(遠位方向に)押し付ける。したがって、突起部と第1の従動子部材との協動により、戻り止め機構が作成されて、押下位置でアーム・トリガが選択的に維持される。図10は、アーム・トリガのコーナ部分の他の斜視図を提供する。
【0035】
図4を再度参照すると、展開可能なアームを後退させることが望ましい場合、突起部を解放するように、アーム解放ボタン108が構成されている。図示のように、アーム解放ボタン108は、主ハウジング102の近位端に沿って設けられ、アーム・トリガ104と係合するように構成されることが好ましい。アーム解放ばね144は、外部入力がない場合、アーム解放ボタン108を非押下状態に維持するように設けられる。したがって、アーム解放ボタンは、アーム付勢ばね144の付勢力に打ち勝つのに十分な力が加えられたとき、アーム・トリガに対して作用することができるだけである。図8を次に参照すると、アーム解放ボタン108が単独で示されている。アーム解放ボタンは、アーム・トリガが完全に押下された状態に保持されている場合、アーム・トリガのコーナ部分に接触するように構成された細長い部材108aを有している。より具体的には、細長い部材108aは、突起部が第1の従動子部材から解放されるように、アーム・トリガを遠位方向に押すように構成される。図9は、代替のアーム・トリガを示す横断面図であり、コーナ部分の一部が、アーム解放ボタンを作動させた後アーム・トリガの解放を容易にするために切断されている。アーム・トリガを解放するために、代替の方法を使用することができることも理解されたい。例えば、アーム・トリガが、その上部表面上にリップ部を有することができ、作動子を使用してそのリップ部に係合させ、アーム・トリガをその最初の位置に引き戻すことができる。
【0036】
第2の従動子部材150は、第1の従動子部材140に対して遠位の位置で、主ハウジングの内部に摺動可能に配設されている。第2の従動子部材150は、細長い針70、70’の近位端に接続されている。したがって、主ハウジング102に対する第2の従動子部材150の長手方向移動により針が配置される。第2の従動子部材150は、(図4及び図5に示すように)針が後退した(非押下状態の)近位位置を有する。針付勢ばね154は、外部入力が何もない場合、第2の従動子部材を近位位置に維持するように、第2の従動子部材に係合している。例示のために、針付勢ばね154の特定の一実施例が示されているが、第2の従動子部材を近位位置に付勢するために、多種多様の異なる付勢機構を使用することができる。
【0037】
第2の従動子部材150は、第1の従動子部材と実質的に類似した態様で針トリガ106のコーナ部分130に沿ってカム駆動する表面と協動するように、近位面に沿って傾斜した「カム駆動される」表面152を有している。さらに具体的には、図5で示すように、傾斜表面は、針トリガ106のカム駆動する表面と摺動可能に係合するように形成されている。
【0038】
図6Aの横断面図で示すように、針トリガ106が押下されると、針トリガのコーナ部分130に沿ったカム駆動する表面が第2の従動子部材150の傾斜表面152を押す。針トリガからの力は、その結果の長手方向力を第2の従動子部材上に生成し、それにより、第2の従動子部材は主ハウジングに対して遠位方向に摺動する。第2の従動子部材が、(図6Aの矢印で示すように)ハウジング内で遠位方向に移動すると、針70、70’が遠位方向に押され、それにより、針の遠位端部分は、縫合糸アームと係合するために、導入器ヘッドから外方向に延びる。導入器ヘッドからの針の伸展は以下でより詳細に説明する。好ましい諸実施例では、第2の従動子部材150は、第1の従動子部材と一体の本体部分内に収容されている。本体部分は、第2の従動子部材が、使用中に、近位方向及び遠位方向にガイドされ得るように、細長い溝が付けられたトラックを提供する。したがって、第1及び第2の従動子部材は、互いに摺動可能に結合されることが好ましい。第2の従動子部材は、作動ロッド58を摺動可能に受け入れるための長手方向管腔を有して形成できることもまた留意すべきである。したがって、作動ロッド58は、第2の従動子部材を妨げることなく、第1の従動子部材の移動により、長手方向に摺動することができる。図6Bは、傾斜表面152を有する第2の従動子部材150の斜視図を提供する。第2の従動子部材の下側部分が、より薄い構造になっていることが分かる。薄い部分は、上記のように、第2の従動子部材の移動をガイドするために、本体部分中の溝の内部に嵌合するように構成されている。第2の従動子部材はまた、主ハウジング102(図3)中の窓112を通してツールを受け入れるためのスロット160を有して形成されている。ツールは、窓を通してスロット中へと挿入することができる。ツールは、第2の従動子部材が動かなくなった場合に摺動させるために使用することができ、それにより、前に述べた安全機構を提供することができる。
【0039】
第1及び第2の従動子部材のカム駆動される表面は、アーム・トリガ及び針トリガの作動に応じて、それぞれ、所望の動きを生成するように形成されている。好ましい一実施例では、第2の従動子部材のカム駆動される表面の少なくとも一部分は、長手方向軸線に対して、約35°以上で傾斜している。図6Aでは、傾斜角は、記号α(アルファ)によって示されている。他の実施例では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°以上で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約41°で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約35°〜約45°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約39°〜約43°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°〜約42°の間で傾斜している。さらに他の変形形態では、カム駆動する表面は湾曲している。同様の好ましい範囲が、第1の従動子部材のカム駆動される表面に対しても適用される。針の移動に対するトリガの移動の比は、傾斜表面の角度に比例することが理解されよう。上記の角度は、ハンドル部分の直径を最小化しつつ、優れた性能を提供することが見出された。例えば、低い角度では、摩擦力のため従動子部材を移動させることがより困難になる。他方で、高い角度では、同じ量の長手方向移動を生成するためには、より大きな従動子部材を必要とし、それにより、より大きな(例えば、より大きな直径)ハンドル部分が必要になるはずである。さらに、実質的に一定な角度で形成された傾斜表面は、トリガの移動と針の移動の間で、実質的に、直接比例する関係を提供することが見出された。その結果、医師は、針トリガの移動を制御することにより、高精度に、かつ高い予測可能性を用いて、針を前進させまた後退させることができる。
【0040】
図4から図6を再度参照すると、主ハウジング内の構成要素の移動が医師に見えるように、主ハウジング102は、プラスチックなどの半透明又は透明な材料で構成されることが好ましい。その透明性は、縫合装置の動作に関して、医師に視覚的なフィードバックを提供するので有利である。所望の場合は、使用中に針の位置を容易に知覚できるように、マーキング又は他の標識を設けることができる。代替として、内部の構成要素の移動を観察するために窓を設けることができ、或いは1つ又は複数の内部構成要素の一部分を、視認するために、主ハウジングを通って外部表面へと延ばすこともできる。
【0041】
図11Aから図11Cを参照すると、縫合装置の遠位端部分が、次にさらに詳細に説明される。図示された遠位端部分は、前に述べた改良されたハンドル部分を用いて動作できる好ましい一実施例を提供する。図示のように、遠位端部分は、縫合糸導入器ヘッド20、一対の縫合糸アーム24、24’、一対の縫合糸留め具56、56’、一対の縫合糸アーム開口50、50’、一対の湾曲した若しくは傾斜した針ガイド48、48’、一対の針開口30、30’、遠位端54、穴46、縫合糸52、及び作動ロッド58を有している。遠位端部分はさらに、一対の針70、70’を有している(図13から図15を参照のこと)。縫合糸アーム24、24’が縫合糸アーム開口50、50’中に後退し、また針70、70’が針開口30、30’中に後退したとき、アーム24、24’及び針70、70’は、図11Aに示すように、縫合糸導入器ヘッド20内に組み込まれる。こうすることにより、遠位端部分が生物学的構造を通過する間に、アーム24、24’及び針70、70’が、組織損傷を生ずることのないようにする。
【0042】
図11B及び図11Cは、縫合糸アーム24、24’がその組み込まれた位置から外方向に部分的に展開された装置6(図3)の遠位端部分を示す。図4から図6を参照して、前に説明したように、このような展開は、アーム・トリガ104を部分的に押下することにより達成される。アーム・トリガ104を押下すると、第1の従動子部材140(図4)及び作動ロッド58を近位方向に移動させ、それにより、縫合糸アーム24、24’が、縫合糸アーム開口50、50’の一対の近位の内側縁部78、78’と接触する。アーム・トリガがさらに押下されると、近位の内側縁部78、78’は、縫合糸アーム24、24’を強制して展開状態にする。一実施例では、縫合糸アーム24、24’は、図15に示すように、縫合糸アーム24、24’が互いに実質的に平行で、かつ縫合糸導入器ヘッド20の長手方向軸線に対して実質的に直角をなすまで、半径方向に展開し続ける。他の諸実施例では、縫合糸アーム24、24’は、互いに鋭角、又は鈍角に達したときに、「完全に」展開され得る。
【0043】
図11Bで最も明確に示すように、各縫合糸アーム24、24’は、縫合糸52の端部を保持する縫合糸留め具56、56’を有している。各縫合糸アーム24、24’には、動作の前に、縫合糸52の端部が事前に装着されている。縫合糸52の端部は、次いで、縫合糸留め具56、56’から穴46へと通り、それにより、縫合糸52の端部が、縫合糸導入器ヘッド20に入り、中空の細長い本体32を介して近位方向に通される。図11Bに示す実施例では、縫合糸52の各端部は、縫合糸留め具56、56’の端部に結ばれるループを有する捕捉部分を有している。しかし、捕捉部分は、結ばれるループだけに限定するものではなく、例えば、球形や嵌め輪など他のタイプの捕捉部分を利用できることも企図されている。
【0044】
図12Aは、縫合糸52の端部が、穴又はアイレット95を有する平坦化された遠位領域93を有する捕捉部分の他の実施例を示す。図12Aに示す実施例では、縫合糸52は、好ましくは、Deklene(Genzyme(ゲンザイム社)より)、Prolene(Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン社)より)、又はNylon(Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン社)より)などの単繊維である変形可能材料の糸91を含む。一実施例では、糸91は、有利には、約0.0254cm(0.010インチ)の太さであり、縫合手技で使用するのに適切な長さを有している。
【0045】
平坦化された遠位部分93の形成において、糸91の遠位端は、遠位端が溶けるまで加熱され、或いは、その他の方法で塑性変形又は熱変形されて、少なくとも一部の寸法が糸91の残部よりも広い(即ち、糸91の少なくとも一部の寸法が増加される)、(小球などの)局所的に変形された領域を形成している。変形された領域が形成された後、糸91を冷却することができ、次いで、変形された領域は、型を使用することにより平坦化される。型は、糸91及び変形された領域を受け入れるための浮彫り又は凹部分を有することが好ましい。好ましくは、凹部分と組み合わされる凹部分をさらに有するブロックが、次いで、変形された領域の上に配置される。変形された領域は、次いで、型とブロックの間で締め付けられて、その結果、図12Aで示す平坦化された遠位部分93が形成される。平坦化された遠位部分93は、糸91の残部とマッチする太さを有することが好ましい。平坦化された遠位部分93の縁部は、次いで、削って形が整えられ平滑な円板部分を形成することができ、縫合手技中にかかる縁部が血管壁上に引っかかるリスクを低減する。
【0046】
図12Aで示すように、アイレット95は、平坦化された遠位部分93内に形成される。ハイポチューブ(hypotube)などの穴開け具(図示せず)を用いて、平坦化された遠位部分93を突いて貫通させ、それにより、平坦化された遠位部分93内にアイレット95を設けることができる。アイレット95は、縫合手技中に、外科手術用フック又は針がアイレット95を通過できるように形成されている。平坦化された遠位部分93は、フック又は針に対する接続子として働き、糸91をフック又は針によって取り出すことができる。平坦化された遠位部分93の形成を含む、ここで述べたアイレット95を形成する方法は、(平坦化された遠位部分93における材料を含めた)糸91全体の材料が、実質的に一様な機械強度を有し、糸91の機械的強度における顕著な低下を生ずることがなく有利である。平坦化された遠位部分93を形成する方法は、「SUTURING DEVICE AND METHOD(縫合装置及び方法)」と題する本出願人の前述の米国特許第6,562,052号でより詳細に論じられている。
【0047】
図12Aに示す縫合糸の実施例は、縫合糸91の外形を増加させる、又は、使用中に縫合糸52が引っかかりやすくなる可能性のある結び目がそこに形成されないので有利である。このプロセスは、有利には、糸91の近位端で繰り返すことができ、図12Bで示すように、糸91の両端でアイレット95、95’が得られる。糸91の1つ又は複数の端部における平坦化された遠位部分93は、糸91の残部に関してある角度で曲げることができ(図示せず)、アイレット95を介して外科手術用の針を容易にガイドすることができる。
【0048】
図11Cは、5つの管腔を備える中空の細長い本体32の好ましい一構成を示す。2つの管腔60、60’は、針70、70’を収容するために使用される。図11B及び図11Cを参照して(また以下でより詳細に)論じたように、縫合糸アーム24、24’が展開された後、針トリガ106(図3)が押下されて、縫合糸導入器ヘッド20内の凹んだ位置から遠位方向に延びた位置へと、針70、70’を前進させることができる(図15を参照のこと)。一実施例では、針70、70’は、実質的に同時に遠位方向に移動する。他の実施例では、針70、70’は、その一方が、他方が進む前に前進するように別個に作動させることができる。
【0049】
2つの針70、70’が遠位方向に移動したとき、図15で示すように、針ガイド48、48’は、縫合糸導入器ヘッド20の長手方向軸線に対してある角度で、針開口30、30’の外に針70、70’を導く。針70、70’は、可撓性があり、SUPERFLEX NITINOL(商標)など、形状記憶を有する材料から作成されることが好ましい。代替的には、針70、70’は、ばね鋼、外科手術用ステンレス鋼、又はその任意のバリエーションから構成することができる。各針70、70’は、約0.0483cm(0.019インチ)の直径を有することが好ましいが、他の直径を有する針を、企図される特定の医療手技に従って使用することもできる。
【0050】
前に述べたように、針70、70’が遠位方向に進んだとき、針ガイド48、48’は、針70、70’を半径方向外側に曲げるようにする。図15で最も明確に示すように、針70、70’が縫合糸アーム24、24’の一対の角度が付けられた表面57、57’と接触すると、さらに外側に半径方向曲げが針70、70’に加えられることが好ましい。針70、70’が針管腔60、60’中に後退された場合、針70、70’は、その弾力性の結果、真っ直ぐな形状を取り戻す。図11Aから図15の実施例は、展開中に曲がる可撓性のある針70、70’を有することが好ましいが、他の諸実施例では、有利には、恒久的に真っ直ぐな又は湾曲してもよい剛性針を含み得ることが企図される。
【0051】
図11Cを再度参照すると、中空の細長い本体32は、作動ロッド58を収容するのに使用される中心管腔64を含む。他の管腔62は、縫合糸52を収容するために使用され、縫合糸52が絡むのを阻止している。代替的には、縫合糸52は、作動ロッド58と共に中心管腔64を通過することができる。
【0052】
第5の管腔62’は、医師が、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54が動脈14内に配置されたかどうか判定することを可能にする「ブリード・バック」のために使用されることが好ましい。ブリード・バックは、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54における穴46、縫合糸アーム開口50、50’、及び縫合糸導入器ヘッド20中の他の任意の開口部を通して行われる。ブリード・バックのための血流方向は、図13で3つの破線の矢印で示される。縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54が動脈14内に配置された場合、穴46中に入る血液による血圧は、遠位端54が動脈14内にない場合よりもはるかに大きくなる。一実施例では、管腔62’は、装置6の近位部分におけるポート(図示せず)へと延びており、それにより、医師は、ポートからの血流を監視することによってブリード・バック管腔62’内の血圧を判定することができる。例えば、管腔62’を、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54が血管14中に挿入されたとき膨張するバルーンに取り付けることができる。他の実施例では、圧力センサを管腔62’に結合して、医師に数値的な血圧の読取りを提供することができる。代替的には、管腔62’を、薬物注入のために、又は診断目的に使用することもできる。
【0053】
好ましい実施例では、中空の細長い本体32の外部上にマーク付けされた2本の細いストライプ66(図11Cでは1本だけが示されている)が、中空の細長い本体32の長さ全体に沿って延びている。ストライプ66は、中空の細長い本体32に対して針70、70’の円周方向位置の視覚的な指示を提供する。ストライプ66は、針70、70’を血管14の軸線と容易に位置合わせできるようにし、したがって、針70、70’により血管壁22中に形成された針の切開部80、80’(図15を参照のこと)が、動脈14内の血流に対して横方向の寸法に沿って位置合わせされる。こうすることにより、医師は、縫合糸52が血流に対して横方向に切開部16を閉鎖するように、血管壁22内に縫合糸52を配置することができる。それは、切開部16を閉鎖するために最も効率のよい方向である。針70、70’を適正に挿入することは、血管壁22への損傷リスクを低減する。代替的には、中空の細長い本体32は、2つの針70、70’の一方の円周方向位置を示す1本のストライプ66だけを有することもできる。針70、70’は、縫合糸導入器ヘッド20の両側から展開しているので、一方の針の位置を知ることにより、医師は、他方の針の位置を知ることになる。
【0054】
図11Cで示すように、中空の細長い本体32の外部表面は、近位位置を示すマーカ68を含み、(縫合装置6の遠位部分26が血管14中に挿入された後)CSI8を、針の開口30、30’を露出させるために、そのマーカまで部分的に引き抜くべきである。CSI8の部分的な引抜きは、「SUTURING DEVICE AND METHOD(縫合装置及び方法)」と題する本出願人の前述の米国特許第6,562,052号で詳細に論じられている。マーカ68は、視覚的なマーカとして示されているが、さらに、又は代替的に、隆起、溝、又はCSI8の対応する構造と相互作用して、医師が感覚を用いてCSI8を位置決めできる他の物理的な構造の形式とすることができる。例えば、CSI8及び中空の細長い本体32は、CSI8が細長い本体32に沿って所定の位置に達したとき、互いに解放可能に係合し、又は連結されるように構成することもできる。特別に形成されたCSI8がこのような連結構造を有し、また本発明の範囲に含まれることが企図される。縫合糸アーム24、24’がCSI8の外側に露出される位置など、細長い本体32に対するCSI8の他の位置を示すために、有利には、マーカ68に対して遠位に1つ又は複数のさらなるマーカ(図示せず)を中空の細長い本体32の長さに沿って提供できることもさらに企図される。
【0055】
縫合装置の使用法及び動作を、図3から図15を参照して次に説明する。以下の説明から、ハンドル部分100は、外科手術手技後、血管壁を閉鎖するためなど、切開部に縫合糸を適用するための縫合装置の構成要素を迅速に、かつ容易に作動させる改良された機構を提供することが理解されよう。
【0056】
手技前に、縫合糸アーム24、24’には、例えば、ポリプロピレン縫合糸などの縫合糸端部が事前に装着される。具体的には、縫合糸の各端部は、ループ、球形、又は嵌め輪から構成された捕捉部分を有する。一実施例では、ループ、球形、又は嵌め輪は、縫合糸の長さと同じ縫合糸材料で(例えば、熱成形により)形成することができる。他の実施例では、そのループ、球形、又は嵌め輪は、縫合糸の長さの各端部上に取り付けられた(例えば、成形、接着などにより)別個の部品とすることができる。ループ、球形、又は嵌め輪は、アーム24、24’の各縫合糸端部サポートに装着される。縫合糸の残りの長さは、中空の細長い本体を通って延びることが好ましい。CSI8が患者の動脈14中に延びている状態で、医師は、次いで、縫合糸導入器ヘッド20をCSI8を通して動脈14中に挿入する。次いで、CSI8は、中空の細長い本体32に沿って部分的に引き抜かれて、図13に示すように、動脈14からCSI8を取り外し、針開口30、30’を露出する。中空の細長い本体32の外部表面上のマーカ68(図11C)は、医師が、針開口30、30’を露出するためにCSI8をどの程度引き抜くべきかを示す。
【0057】
縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54は、縫合糸導入器ヘッド20が動脈14中に挿入されたとき、反対側の血管壁22への損傷を防ぐ平滑で丸味のある表面を有する。さらに、縫合糸導入器ヘッド20は、動脈14を閉塞しないので、動脈14内の血流が妨害されることはない。医師は、縫合糸導入器ヘッド20がいつ動脈14中に入ったかを判定するために、穴46及び管腔62’(図11C)を介するブリード・バックを用いることができる。
【0058】
動脈への挿入中は、アーム・トリガ104及び針トリガ106はそれぞれ、図4で示すように非押下位置にある。その結果、第1の従動子は、縫合糸アームが後退した状態にあるように遠位位置に配置されている。さらに、第2の従動子は、針が後退した状態にあるように近位位置にある。
【0059】
図13で示すように、縫合糸導入器ヘッド20が動脈14中に挿入される間、作動ロッド58は、縫合糸アーム24、24’を、縫合糸導入器ヘッド20内に組み込まれた状態に保持する。作動ロッド58は下方向力を加えるが、縫合糸導入器ヘッド20の一対の偏向表面67、67’は、各縫合糸アーム24、24’に対して、それぞれ内側方向力を加える。これらの2つの力の組合せは、縫合糸アーム24、24’を、縫合糸導入器ヘッド20の縫合糸アーム開口50、50’内に保持する。各縫合糸留め具56、56’は、図11Aから図11Cで示すように、縫合糸52のループ端部を保持する角度の付けられたスロットを有している。縫合糸52のループ端部は、縫合糸留め具56、56’によってしっかりと保持されるが、針70、70’の先端における一対の縫合糸キャッチ72、72’により容易に取り外せるように配置される。
【0060】
装置6の遠位部分26が適正に動脈14内に配置された後、医師は、アーム・トリガ104(図3)を押下して、図14に示すように、縫合糸アーム24、24’を展開する。主ハウジング102中の第1の従動子部材140に対して、アーム・トリガの下方向移動が作用し、それにより、第1の従動子部材を近位方向に移動させて、ロッドを近位方向に引っ張る。アーム・トリガ104のコーナ部分120は、第1の従動子部材140上の傾斜したカム駆動される表面に係合するカム駆動する表面を提供する。このアクション中、アーム・トリガに対して加えられる力は、アームばね144の付勢力に打ち勝つのに十分なものでなければならない。第1の従動子部材140の移動により、作動ロッド58は近位方向に移動され、それが、作動ロッド58により加えられていた下方向力を解放し、したがって、偏向表面67、67’により縫合糸アーム24、24’に加えられた内側方向力も解放する。こうすることにより、縫合糸アーム24、24’は、図14に示す部分的に展開した状態をとることができる。医師が、アーム・トリガ104を押下し続けると、作動ロッド58は、近位方向に移動し続けて、縫合糸アーム24、24’を近位の内側縁部78、78’と接触させる。近位の内側縁部78、78’は、各縫合糸アーム24、24’に対して、それぞれ下方向力を加え、それにより、図15で示すように、縫合糸アーム24、24’を強制して完全に展開された状態にする。
【0061】
図5を次に参照すると、アーム・トリガ104が完全に押下されると、アーム・トリガ104のコーナ部分120に沿った突起部120Aが、第1の従動子本体140の下に進む。この位置では、アーム・トリガ104は、第1の従動子本体をアーム・トリガに押し付けているアームばね144の力により、完全に押下された位置に維持される。したがって、アーム・トリガと第1の従動子本体との間の協動により、アーム・トリガを押下された位置に保持するための解放可能な戻り止め機構が提供されるので有利である。アーム・トリガが完全に押下された状態で保持されたとき、縫合糸アーム24、24’は、完全に展開された状態に固定される。
【0062】
固定された状態では、縫合糸アーム24、24’は、図15で示すように、完全に延ばされた位置に達しており、また互いに長手方向に整合されていることが好ましい。縫合糸アーム24、24’が完全に延ばされた位置にあるとき、医師は、縫合装置6を近位方向に徐々に摺動させて、縫合糸アーム24、24’を血管壁22の内部表面に接触させることができる。
【0063】
この重要な時点で、医師は、ハンドル部分100上の針トリガ106を押下して、針70、70’を遠位方向に進ませ、縫合糸留め具56、56’から縫合糸52の端部を捕捉する。図5は、非押下位置にある針トリガを示す。図6は、完全に押下された位置にある針トリガを示す。針トリガの下方向への押下中に、針トリガ106のコーナ部分130に沿ったカム駆動する表面は、第2の従動子部材150のカム駆動される表面に係合し、それに沿って摺動し、それにより、第2の従動子部材を、遠位方向へと主ハウジング102内で長手方向に摺動させる。このアクション中、針トリガ106に対して加えられる力は、針付勢ばね154の付勢力に打ち勝つように十分でなければならない。針トリガがさらに押下されると、第2の従動子部材が遠位方向に摺動し続けて、それにより、針を、主ハウジングを通り中空の細長い本体を通って遠位方向に進ませる。第1及び第2の針が遠位方向に進むと、針の遠位端は、アームと係合するために外側方向へと延びる。
【0064】
針70、70’がとる経路は、図15に示されている。針70、70’は、針管腔60、60’に沿って摺動し、針開口30、30’をそれぞれ通って縫合装置6の外に出る。針70、70’は、針挿入ガイド48、48’と接触すると、半径方向外側に曲がり始める。針70、70’が外に出ると、それらは、針挿入ガイド48、48’により、作動ロッド58から離れる方向に鋭角に、半径方向外側にガイドされる。針の偏向角は、約13.2度であることが好ましい。約10度と約15度の間の偏向角、及び約5度と約20度の間の偏向角もまた企図される。
【0065】
針70、70’は、前進中に、ある角度で血管壁22を貫通し、それにより、切開部16の両側に針切開部80、80’を創成する。前に述べたように、針70、70’はまた、縫合糸アーム24、24’と接触したとき、わずかに(半径方向外側に)曲がることが好ましい。縫合糸留め具56、56’の角度が付けられた表面57、57’、及び縫合糸キャッチ72、72’は、針70、70’が中を通過する間、ループ端部が縫合糸留め具56、56’に結合されたままであるように、縫合糸52の各ループ端部上に力を加える。
【0066】
医師は、針70、70’の縫合糸キャッチ72、72’が、縫合糸留め具56、56’に係合し、縫合糸52のループ端部を捕捉するまで、針トリガ106を押下する。図15に示すように、針70、70’が、血管壁22を貫通して、縫合糸導入器ヘッド20の周囲の外側で縫合糸52のループ端部を捕捉するように、縫合糸アーム24、24’は縫合糸52のループ端部を縫合糸導入器ヘッド20から離れる方向に保持する。針70、70’が、縫合糸留め具56、56’に最適に係合した後、機械的な制限により、針トリガ106のさらなる移動は阻止される。このような抵抗は、針70、70’が、縫合糸留め具56、56’内の最適な所定の位置に達したことを医師に知らせる。
【0067】
縫合糸留め具56、56’内の最適な所定の位置に針70、70’を進ませた後、医師は針トリガ106上の圧力を解放し、それにより、ハンドル部分100(図4〜図6を参照のこと)内の針付勢ばね154が、針70、70’を近位方向に後退させることができる。その動きにより、縫合糸52のループ端部を縫合糸キャッチ72、72’に取り付けた状態で、針70、70’を針管腔60、60’中に引き抜く。縫合糸キャッチ72、72’は、縫合糸留め具56、56’により保持された縫合糸52のループ端部を捕捉し、針70、70’が近位方向に後退すると、針切開部80、80’を介してループ端部を引き上げる。針70、70’が縫合糸52のループ端部を近位方向に引くと、縫合糸52の張力により、縫合糸52のさらなるセグメントが、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54における穴46を通して動脈14中に、針切開部80、80’を通して送られる。この実施例では、医師は、針トリガの移動速度を制御することにより、針の移動速度を調整することができる。上記のことから、針の位置は、針トリガの位置に、実質的に直接比例することが分かる。したがって、針トリガの位置を感知することにより、任意の所与の時間に、針の位置の信頼できる指示が医師に提供される。
【0068】
前述の実施例では、医師は、針トリガ104を押下し、また解放することによって針70、70’の位置を制御するので有利である。針を前進させることは、制御された方法で針トリガを押下することにより達成されるが、一方、後退させることは、医師が針トリガを用いて後退速度を調整しながら、針のばねで針を後退させることによって達成される。針70、70’が、針管腔60、60’中に後退した後、医師は、アーム・トリガ104を解放するために、アーム解放ボタン108(図3)を押下する。アーム解放ボタンは、突起部120Aが第1の従動子部材140から解放されるように、アーム・トリガ104のコーナ部分120を遠位方向に押し、それにより、アーム・トリガ104をばねで上方向に戻すことができる。
【0069】
アーム・トリガ104が解放された後、アーム付勢ばね144は、第1の従動子部材140を遠位方向に押し、それにより、作動ロッド58を遠位方向に移動させる。こうすることにより、近位の内側縁部78、78’によって縫合糸アーム24、24’に加えられていた力が解放され、縫合糸アーム24、24’は、図14に示すように弛緩した状態をとることができる。第1の従動子部材140がさらに遠位に移動すると、縫合糸アーム24、24’は、偏向表面67、67’に接触するまで遠位方向に移動する。偏向表面67、67’と併せて、作動ロッド58の下方向力により、縫合糸アーム24、24’を、図13で示すように、縫合糸導入器ヘッド20内に組み込まれた状態へと後退させることができる。組み込まれた状態では、縫合糸アーム24、24’は、中空の細長い本体32と実質的に平行であり、また縫合糸アーム24、24’の外部表面は、導入器ヘッド20の外部表面と実質的に同一面である。それは、縫合糸アーム24、24’が、引抜き中に、血管壁22若しくは肉部18に引っかかる、又は捕捉される可能性を低減する。縫合糸アーム24、24’及び針70、70’が組み込まれた状態に戻ると、装置6は、動脈14から取り外せる状態になる。
【0070】
図1を再度参照すると、医師は、次いで、装置6を動脈14から引き抜き、また患者の大腿部12の組織18の外に引き抜く。装置6が完全に引き抜かれた後(CSI8がまだ組織18中にある状態で)、医師は、縫合糸52の端部を徐々に引いて血管切開部16を閉鎖する。縫合糸52が針切開部80、80’を通過する実施例では、縫合糸52の端部が引っ張られると、縫合糸52中の張力により血管切開部16が閉鎖される。次いで、医師は、縫合糸52の端部で少なくとも1つの結び目、好ましくは、てぐす結び又は改良されたクリンチ結びを結び、その結び目をCSI8を通して血管切開部16へと摺動させ又は押し込む。医師は、参照によってその全体を本明細書に援用されている、2001年8月6日出願の第09/923,108号、「METHOD AND APPARATUS FOR TYING SUTURE KNOT(縫合糸の結び目を結ぶための方法及び装置)」と題する本出願人の米国出願中に開示された装置を含む、適切な任意の縫合糸の結び目を結ぶ装置及び/又は締め付ける装置を用いることにより、結び目を結び、押し込むことができる。代替的には、医師は、少なくとも1つの結び目を手で結び、次いで、参照によってその全体を本明細書に援用されている、2000年5月15日出願の第09/571,759号、「KNOT PUSHER(結び目押し込み具)」と題する本出願人の米国出願により教示される装置など、結び目の締付け装置を用いることにより結び目を締め付けることができる。さらに、医師は、縫合糸52の端部に、小さく、円形又は平らなステンレス鋼クリップ(図示せず)を固定し、そのクリップをCSI8を通して血管切開部16へと摺動させて切開部16を閉鎖することを選択できる。結び目を結び、配置するための他の諸実施例は、2004年9月27日出願の第60/613,636号、「HANDLE FOR SUTURING APPARATUS(縫合装置用ハンドル)」、及び2005年5月23日出願の第60/683,701号、「METHOD AND APPARATUS FOR HOLDING SUTURE ENDS TO FACILITATE TYING OF KNOTS(結び目を容易に作るために縫合糸の端部を保持する方法及び装置)」と題する本出願人の米国仮出願中に述べられており、その全体が共に参照によって本明細書に援用される。医師は、次いで、縫合糸52の未使用の端部(余分の長さ)を切断し、切断された部分を取り除く。次いで、医師は、患者の大腿部12からCSI8を取り外す。
【0071】
代替の一実施例では、縫合装置には、ガイド・ワイヤを摺動可能に受け入れるための管腔が設けられている。一実施例では、ガイド・ワイヤ管腔は、ブリード・バック管腔と組み合わせることができる。ガイド・ワイヤ管腔は、患者中への縫合装置の挿入中に医師を助けるために、また治療部位の方向に装置を前進させるために提供される。
【0072】
図16から図20を次に参照すると、1つの代替の針作動機構が提供されている。図16を特に参照すると、針トリガ206は、第1及び第2のピン208、210、及びその間に間隙を有して形成されている。針トリガは、図20で示す従動子部材250と協動するように構成されている。この実施例では、針トリガ206のピン208、210は、最初は、従動子部材250の傾斜表面252に沿って乗っており、それにより、針を延長するために従動子部材を遠位方向に移動させる。しかし、針トリガが終了(即ち、完全に押下された)位置に達すると、ピンは、傾斜表面の底面縁部を越えて延び、それにより、従動子部材に対する力が解放され、従動子部材は近位方向に急速に戻ることができる。それは、針トリガを完全に押下された状態に維持している間に行われる。したがって、針は、まず完全に延ばされ、次いで、針トリガが第1の終了(即ち、完全に押下された)位置に達したとき、自動的に急速に戻る。針は、従動子部材のばね付勢により急速に戻る。針トリガが解放されると、ピンは、スロット256を介して開始位置へと上方に戻る。図17は、このサイクル中のピンの例示的な経路を示す。図18及び図19は、アーム・トリガ及び針トリガを開始位置に戻すように付勢するためのばね機構258又は260を示す。
【0073】
所望の場合、針トリガと従動子部材の間の関係は、針が、第1の速度で第1の終了位置から後退し、次いで、より速い速度で第2の終了位置から後退するように構成することができる。それは、従動子部材上に(図9に示すものなど)切断部分を提供することにより達成することができる。ゆっくりした速度の後に速い速度で針を後退させることは、針が、縫合糸の端部を最初はゆっくりと引き、次いでより速く引くように、縫合糸に「初期張力」を与えるので有利である。最初のゆっくりした引っ張りにより、縫合糸の端部を、組織を通して引き抜かれる前によりよく位置合わせすることができる。
【0074】
図21を次に参照すると、押出しクランプ180の好ましい一実施例が示されている。クランプは、ハンドル部分100と細長い本体との間の遷移を提供する。クランプは、作動ロッド及び針を受け入れるための中心管腔182を含む。クランプはまた、針付勢ばね154を配置するための凹部を含む。
【0075】
他の代替の実施例では、図22に示すように、針トリガ106aには、医師の親指又は指を受け入れるように構成されたループ部分が設けられている。ループ部分は、医師が、針トリガを起こすために付勢ばね力に頼らずに針トリガを上方向に引くことができ有利である。この実施例では、医師が針の移動を十分に制御できるようになる。
【0076】
他の代替の実施例では、アーム解放ボタンのない縫合装置を提供することができる。正確には、アーム・トリガを、最初の押下により、固定された位置にアーム・トリガを移動させるように構成することができる。アーム・トリガを再度押すことにより、アーム・トリガが解放され上昇して元に戻る。当技術分野で知られたタイプの任意の解放機構を、この目的のために使用することができる。
【0077】
代替の他の実施例では、第1及び第2の従動子部材を移動させるために、ハンドル部分に沿って第1及び第2のサム・ホイールを提供することが企図される。サム・ホイールと従動子部材の間の相互作用は、当技術分野で知られたタイプのラック・ピニオン・システムを使用することが好ましい。この実施例では、医師は縫合糸アーム及び針の位置をさらに十分に制御できるようになる。
【0078】
図23〜図27は、縫合装置300の代替の実施例を示しており、解放ボタン108は、近位端から軸線方向に延びるのではなく、主ハウジング102の側部に沿って設けられている。縫合装置300は、概ね、前に説明した細長い本体32及び導入器ヘッド20、及び、さらに以下で説明するハンドル部分100’を有している。
【0079】
図23で示すように、ハンドル部分100’は、前に述べた主ハウジング102、アーム・トリガ104、及び針トリガ106、さらにアーム解放ボタン108’を有している。アーム・トリガ、針トリガ、及びアーム解放ボタン108’は、トリガが作動される順番を示すためのマーキングを含むことが好ましく、例えばアーム・トリガ104には「1」がラベル付けされ、針トリガ106には「2」がラベル付けされ、またアーム解放ボタン108’には「3」がラベル付けされる。
【0080】
図24で示されるように、アーム・トリガ及び針トリガは、医師により押下されるとトリガが回転するように、ピン110周りで主ハウジング102に枢動可能に結合されることが好ましい。アーム・トリガ104が押下されると、それは、主ハウジング102中に摺動可能に受け入れられた第1の従動子部材140’と係合する。図25及び図26でより具体的に示す第1の従動子部材140’は、近位端304及び遠位端306を有する細長い本体302を有し、スロット308が、細長い本体を通り、その上部側に沿って長手方向に延びている。近位端304で、細長い本体302は、部分的に円形の横断面を有し、スロットの近位端310が、押下されたときアーム・トリガ104を受け入れる。細長い本体302の中間部分では、針トリガ106を、押下されたとき部分的に受け入れるスロットの中間部分312が設けられている。細長い本体302の遠位部分では、針トリガ106を、押下されたとき部分的に受け入れ、また第2の従動子部材150も受け入れるスロットの遠位部分314が設けられ、それを以下でさらに説明する。スロット部分312及び310に隣接する細長い本体の両側部に沿って、以下でさらに説明する、アーム・ロックアウト・ワイヤ330を受け入れるための長手方向溝316が設けられている。アーム・トリガ104に係合するために、前述のものなどの傾斜斜面142’がスロットの部分310内に設けられている。
【0081】
上記の諸実施例でも説明されている駆動ワイヤ・タブ156は、穴158を通るピンによるなど、第1の従動子部材140’の遠位端に固定されることが好ましい。タブ156は、押出しクランプ180の中心管腔182を通して延びる作動ロッド58に固定されている。
【0082】
図27は、第1の従動子部材140’を取り外したハンドル100’を示している。下方向に延びる脚336が、針トリガ106の下側表面から延びている。第1の従動子部材140’がその最初の構成にあるとき、図26に示す第1の従動子部材上の棚338は脚336の下に位置し、針トリガ106が押下されるのを阻止する。第1の従動子部材140’が近位方向に移動されたとき、棚338はまた、近位方向に移動して、針トリガ106の下方向移動を可能にする。こうすることにより、アーム・トリガ104の押下によるアームの展開後まで、針トリガ106の作動が阻止される。
【0083】
針トリガ106は、押下されたとき、第2の従動子部材150のカム駆動される表面152に係合し、前述のように、第2の従動子部材150に針付勢ばね154を圧縮させる。第2の従動子部材150は、スロット308の遠位部分314に設けられ、第1の従動子部材に対して摺動することができる。第1の従動子部材140’の近位には、アームばね14があり、またアームばね14の近位には、アーム解放ボタン108’と係合する傾斜表面322を有する第3の従動子部材320がある。第3の従動子部材は、以下で説明するアーム・ロックアウト・ワイヤ330を受け入れるために、その両側部に長手方向溝324を有する。細長い部材108A’は、アームばね144の下の第3の従動子部材320から遠位方向に延びる。
【0084】
図24で示すように、アーム・ロックアウト・ワイヤ330は、第2の従動子部材150の一方の側部から近位方向に延び、第1の従動子部材140’の細長い本体302の一方の側部上の長手方向溝316を通り、第3の従動子部材320の一方の側部上の長手方向溝324を通り、第3の従動子部材の近位端を回って、ハウジングの反対側の側部上の溝324及び316を通って戻り、第2の従動子部材150と接続している。第2の従動子部材150が遠位方向に移動したとき、アーム・ロックアウト・ワイヤ330もまた遠位方向に移動し、アーム解放ボタン108’の下に配置される。こうすることにより、針が作動されている間は、第2の従動子部材がその最初の位置に戻るまで、アーム解放ボタン108’の押下が阻止される。
【0085】
図23で示すように、ハンドル部分100’の主ハウジングは、針を手動で後退させるために、前述した安全開口部又は窓112を含む。主ハウジングはまた、アームを手動で後退させるための安全開口部又は窓113を含む。開口部112は、第2の従動子部材150中の開口部332と協動して、ピンを開口部中に挿入し第2の従動子部材をその最初の構成に手動で戻すことができる。開口部113は、同様の目的で、第1の従動子部材140’中の開口部334と協動する。
【0086】
図23〜図27に示す縫合アセンブリ300の動作は、アセンブリを適切に配置した後、「1」にラベル付けされたアーム・トリガ104を押下することにより、まず開始される。アーム・トリガ104を押下することにより、第1の従動子部材140’をハウジング102内で近位方向に移動させ、アームばね144を圧縮し、また作動ロッド58を移動させて、前述のアーム24、24’を展開させる。アーム・トリガ104は、前に図7の実施例で述べたものなど、それが下方位置で固定又はロックされるまで押下できることが好ましい。
【0087】
次に、「2」にラベル付けされた針トリガ106を押下することにより、第2の従動子部材150を第1の従動子部材140’のスロット内で遠位方向に摺動させ、針付勢ばね154を圧縮し、針70及び70’を細長い本体32から外側に開くようにする。針トリガ106は、上記の図16に関して述べたものなどのように構成することができる。より具体的には、針トリガ106は、最初は第2の従動子部材150の傾斜表面に沿って乗るピン208、210を有し、それにより、従動子部材を遠位方向に移動させて針を延ばす。針トリガ106が終了(即ち、完全に押下された)位置に達すると、ピンは、傾斜表面底部の縁部を越えて延び、それにより、従動子部材に対する力を解放させて、従動子部材を近位方向に急速に戻すようにする。それは、針トリガを完全に押下された状態に維持している間に行われる。したがって、針は、まず完全に延ばされ、次いで、針トリガが第1の終了位置(即ち、完全に押下された位置)に達したとき、自動的に急速に戻る。
【0088】
図23〜図27の実施例では、第2の従動子部材150がその元の構成に急速に戻った後、針トリガは、その押下された構成のまま留まってもよいが、或いは、自動的にその最初の構成に戻ってもよい。針トリガ106が、自動的にその最初の構成に戻らない場合、操作者は、ピンが再度傾斜表面の上に乗るまで針トリガを第2の従動子部材の本体に沿って上方向に単に引っ張り、ピン208、210間の間隙を広げるだけでよい。
【0089】
アーム24、24’を後退させるためには、操作者は、「3」にラベル付けされたアーム解放ボタン108’を押下する。それにより、第3の従動子部材320を遠位方向に移動させ、また細長い部材108a’をアーム・トリガ104のコーナ部分に接触させて、アーム・トリガを遠位方向に押し付け、第1の従動子部材140’から解放されるようにする。
【0090】
上記で論じた方法及び装置のいくつかの変形形態及び変更形態は、当業者にとって自然に考え付くものであることを理解されたい。この開示の範囲は、本発明の例示又は前述の記述により限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】例示の使用環境における縫合装置及び関連のアセンブリの一実施例を示す図である。
【図2】患者の大腿部など、例示の使用環境における縫合装置の拡大された横断面図である。
【図3】改良されたハンドル部分を用いて形成された縫合装置の斜視図である。
【図3A】図3の縫合装置のハンドル部分の一部を形成するアーム・トリガの斜視図である。
【図3B】図3の縫合装置のハンドル部分の一部を形成する針トリガの斜視図である。
【図4】アーム・トリガ及び針トリガが非押下位置にある、ハンドル部分の側面部分断面図である。
【図5】縫合糸アームを展開状態で固定するためにアーム・トリガが完全に押下された、ハンドル部分の側面部分断面図である。
【図6】縫合糸アームにより保持された縫合糸端部に係合するように針を延ばすために、アーム・トリガと針トリガが共に完全に押下された、ハンドル部分の側面部分断面図である。
【図6A】ハンドル部分における針トリガと第2の従動子部材との間の関係を示す側面図である。
【図6B】第2の従動子部材の斜視図である。
【図7】コーナ部分がカム駆動する表面を備えるアーム・トリガの好ましいコーナ部分を示す斜視図である。
【図8】アーム・トリガを解放し、それにより縫合糸アームを後退させるための解放ボタンの好ましい実施例を示す側面図である。
【図9】アーム・トリガの解放を容易にするために、一部が切断されたアーム・トリガのコーナ部分の代替実施例を示す側面図である。
【図10】コーナ部分がカム駆動する表面を有するアーム・トリガの好ましいコーナ部分を示す他の斜視図である。
【図11A】図3の縫合装置の遠位端部分の拡大された斜視図である。
【図11B】一対の縫合糸アームが部分的に展開された、図11Aの遠位端部分の斜視図である。
【図11C】一対の縫合糸アームが部分的に展開された、図11Aの遠位端部分の背面斜視図である。
【図12A】アイレットを有する平坦化された遠位部分を有する縫合糸端部の斜視図である。
【図12B】アイレットを有する平坦化された遠位部分をそれぞれが有する縫合糸の遠位及び近位端の斜視図である。
【図13】遠位端部分が動脈壁を通して挿入された、図3の縫合装置の横断面図である。
【図14】遠位端部分が動脈壁を通って挿入され、また一対の縫合糸アームが部分的に展開された、図3の縫合装置の横断面図である。
【図15】一対の縫合糸アームが完全に展開され、また一対の針が縫合糸アームに係合している、図3の縫合装置の横断面図である。
【図16】カム駆動する表面が、間隙をその間に有する一対の対向するピンにより提供される、針トリガの代替の実施例を示す斜視図である。
【図17】針の展開及び自動的な後退中における、図6のカム駆動する表面の例示的な経路を示す図である。
【図18】トリガを非押下位置へと付勢するために圧縮ばねが提供されたアーム・トリガ及び針トリガの代替の構成を示す側面図である。
【図19】圧縮ばねを異なる場所に有するアーム・トリガ及び針トリガの他の代替の構成を示す側面図である。
【図20】従動子部材が、傾斜面と、対向するピンを開始位置に戻すようにガイドするための戻りスロットとを有する、図16の針トリガと係合するように構成された従動子部材の代替の実施例を示す斜視図である。
【図21】細長い本体をハンドル部分に固定するための押出しクランプの好ましい一実施例を示す斜視図である。
【図22】針トリガがループ部分を含む、改良されたハンドル部分を有する縫合装置の代替の実施例を示す斜視図である。
【図23】縫合装置の他の実施例を示す斜視図である。
【図24】ハンドルのハウジングの一部が取り外された、図23の縫合装置のハンドルの側面図である。
【図25】図24のハウジングから取り外された第1の従動子の斜視図である。
【図26】上から見た図25の第1の従動子部材の斜視図である。
【図27】第1の従動子が取り外された、図23の縫合装置のハンドルの斜視図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年9月27日出願の米国仮特許出願第60/613,636号の優先権の利益を主張するものであり、その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概ね、縫合装置に関する。より詳細には、本発明は、医師が直接アクセスできない可能性のある生物組織内に縫合糸を適用するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医師は、血管など、人体の様々な生物組織における切断部、穿刺部、切開部、及び他の開口部を閉鎖するために、しばしば、縫合糸を使用する。
【0004】
動脈カテーテル手技では、大腿動脈又は他の動脈で比較的小さな経皮切開が行われる。カテーテルは、切開部を通って挿入され、動脈経路に沿って心臓などの標的部位に送られて、血管形成術又は血管造影などの1つ以上の手技を行う。これらの手技は、比較的迅速な「外来患者」手技であるように意図されている。
【0005】
カテーテル手技が完了すると、医師は、通常、患者の大腿部に直接圧力を加えて「血栓パッチ」を生成し、切開部周囲の血液を凝固させる。加えられた圧力が、大腿動脈を通る血流を妨げないことが非常に重要である。その結果、手技の後、最初の20分間は医師が手で直接圧力を加えることが普通である。その間、医師は、動脈が閉塞されていないことを保証する脈拍を感ずることができる。その後、医師は、通常、助手に担当を移し、次いで、助手は、砂袋、鉗子、又は他の装置を用いて直接圧力を加える。この手法に関する重要な問題は、24時間又はそれ以上になるなど、長時間にわたって圧力を加えることが必要となる頻度が高いことである。
【0006】
血栓パッチに関する他の問題は、大腿部に圧力が直接加えられている間に、又は直接の圧力が除去された後に、動脈中の高血圧により血栓パッチが裂け、又は破裂するおそれのあることである。それは、再度、プロセス全体を開始することが必要となる。パッチが裂けて、それが迅速に復元されない場合、かなりの出血を生ずる可能性があり、致命的な結果となるおそれがある。血栓パッチは破裂する頻度が高いので、患者は、観察のために、一晩中、病院又はカテーテル検査室に置かれることになる。その結果、単に血栓パッチがしばしば信頼性がない及び/又は生成が困難であるという理由で、これらの「外来患者」手技が「入院患者」手技になる。病院に滞在することは、患者の不快さ及び病院費用を増加させ、それは、実施された実際の医療手技に対して、しばしば、不釣り合いのものとなる。
【0007】
さらに、血栓パッチが適切に形成できなかった場合、医師は、患者を麻酔し、動脈への血流を閉塞する必要があり得る。この時点で、医師は、針を用いて従来の縫合ができるように大腿部に大きな切開を作り、従来手段で動脈を縫合し、動脈への血流を回復させ、また大腿の切開部を縫合する必要がある。それは、患者に対してさらに不快さ及び費用を追加することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題は、カテーテル手技後、直ぐに血管を縫合することにより回避される可能性があるが、動脈のサイズ及び位置が縫合を極めて困難なものとしている。より具体的には、大腿部における開口部は、従来方法を用いて動脈の縫合するための十分な作業スペースを提供するには、しばしば、小さ過ぎかつ深過ぎることである。したがって、従来方法を用いて血管を縫合するために、大腿における開口部をかなり拡大させる必要があり、それにより、回復期間がさらに長くなり、またさらなる不快さ、望ましくない傷跡、感染の可能性、及び他の健康リスクを患者に課することになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
生物組織内の切開部を閉鎖するための方法及び装置が提供される。一実施例では、例えば、器官や血管などの生物組織を縫合するための装置及び方法が提供される。本装置は、カテーテル手技後の、大腿動脈などの動脈中に作られた切開部を縫合するために特によく適している。本装置は、長時間にわたり患者の大腿部に圧力を加える必要性をなくし、また血栓パッチの生成に関連する多くの合併症及びコストを排除する。1つの特徴として、本装置は、医師が縫合糸を迅速かつ効率よく使用できるようにする改良されたハンドル部分を有している。ハンドル部分は、動作させるのが簡単であり、それにより、使用時における人的エラーの可能性を低減し又は除去することができる。さらに、ハンドル部分の作動機構により、医師は、縫合糸を使用している間、装置を安定した位置に維持できるようになる。
【0010】
好ましい一実施例では、縫合装置は、細長い本体と、その細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームとを有している。アームは、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有して形成される。縫合装置はさらに、遠位端を有する針を有し、その針は、細長い本体に対して移動するように取り付けられている。ハンドルは、細長い本体に取り付けられ、またカム駆動する表面を有する作動子と、カム駆動される表面を有する従動子とを有している。従動子は、針を移動させるように接続され、カム駆動する表面及びカム駆動される表面は、作動子の移動に応じて相互作用し、従動子を駆動して針を移動させる。
【0011】
一変形形態では、ハンドルは長手方向軸線を有し、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、その軸線に対して約35°以上傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°以上傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約41°で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約35°〜約45°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約39°〜約43°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°〜約42°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動する表面は湾曲している。
【0012】
他の好ましい実施例では、縫合装置は細長い本体を有し、アームがその細長い本体に対して移動するように取り付けられている。アームは、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有する。遠位端を有する針が、細長い本体に対して移動するように取り付けられており、針の遠位端は可動である。ハンドルは細長い本体に取り付けられている。ハンドルは、従動子の移動量と等しく針を移動させるように接続された作動子及び従動子を有し、ユーザは従動子の移動量を見ることができる。したがって、針の移動量は、針を直接見ないで監視することができる。
【0013】
一変形形態では、ハンドルは、透明材料からなるハウジング部分を有し、ユーザは、透明材料を通して従動子を見ることができる。他の変形形態では、針は、作動子の移動に応じて開始位置から終了位置まで移動し、ハンドルは、針が終了位置にあるときの従動子の位置を少なくとも示す標識を含んでいる。所望の場合、標識はさらに、針が開始位置にあるときの従動子位置を示すこともできる。他の好ましい実施例では、針を直接見ないで針の移動量を監視できるように、1つ又は両方の従動子部材の一部分は、視認可能であり及び/又は主ハウジングを通って延びることができる。
【0014】
他の好ましい実施例では、縫合装置は、細長い本体と、その細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームとを有している。アームは、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有して形成されている。縫合装置はさらに、遠位端を有する針を有し、針は、細長い本体に対して移動するように取り付けられている。ハンドルは細長い本体に取り付けられ、カム駆動する表面を有する作動子、及びカム駆動される表面を有する従動子を有している。従動子は、遠位方向への従動子の移動が針を遠位方向に駆動し、また従動子の近位方向への移動が針を近位方向に駆動するように針を移動させるように接続されている。従動子は、近位方向にばねで付勢されており、また移動範囲を有することが好ましい。カム駆動する表面及びカム駆動される表面は相互作用して、従動子を、移動範囲の少なくともその実質的な部分の間で遠位方向に駆動する。
【0015】
一変形形態では、作動子は、第1の終了位置を有し、カム駆動される表面とカム駆動する表面の相互作用は第1の終了位置で解放され、したがって、ばねによる付勢が従動子を近位方向に駆動し、それにより、作動子を第1の終了位置から後退させることなく、自動的に針を近位方向に後退させることができる。作動子はまた、ばねによる付勢が針をさらに後退させる第2の終了位置を有することができる。第1の終了位置に達した後の速度よりも、第2の終了位置に達した後の速度の方が従動子を大幅に速く近位方向に駆動するように、作動子及び従動子は相対的に構成されている。
【0016】
他の変形形態では、作動子は、針の移動範囲の遠位端に針がある終了位置を有している。作動子の終了位置からの後退に応じて、従動子のばねによる付勢が針を近位方向に後退させる。
【0017】
他の好ましい実施例では、開口部に縫合糸を適用する方法が提供される。本方法は、開口部中に細長い本体を挿入すること、次いで、開口部の遠位側における細長い本体から、少なくとも1つのアームを延ばすこと、少なくとも1つのアームが縫合糸部分を保持することを含む。細長い本体部分から少なくとも1つの針を前進させて、開口部の近位側から開口部に隣接する組織を通り、少なくとも1つのアームにより保持された縫合糸部分と係合させる。作動子を第1の位置から第2の位置に移動させることによって針が前進させられ、また針がその第1の位置に後退させるように付勢されている。少なくとも1つの針は、次いで、遠位から近位方向に後退させられて、縫合糸部分を開口部を通して近位方向に引っ張る。一変形形態では、針を前進させるために作動子が押下される。他の変形形態では、作動子をその第1の位置に戻るように解放することにより針が後退させられる。他の変形形態では、針は、作動子をさらに押下することにより自動的に後退させられる。さらに他の変形形態では、針は、その第1の位置に戻るようにばねにより付勢されている。
【0018】
さらに他の好ましい実施例では、開口部に縫合糸を適用する方法が提供される。本方法は、細長い本体を開口部中に挿入することを含み、細長い本体が、複数の作動子を有するハンドルに接続される。第1の作動子が押下されて、少なくとも1つのアームを第1の位置から第2の位置に延ばし、その第2の位置にあるアームが、開口部の遠位側で細長い本体から延びており、少なくとも1つのアームが縫合糸部分を保持する。第2の作動子を押下して細長い本体から少なくとも1つの針を前進させて、開口部の近位側から開口部に隣接する組織を通り、少なくとも1つのアームにより保持された縫合糸部分と係合させる。少なくとも1つの針を遠位から近位方向に後退させて、縫合糸部分を開口部を通して近位方向に引っ張り、またアームをその第1の位置に後退させる。一変形形態では、少なくとも1つのアームを、その第2の位置からその第1の位置に戻すために第3の作動子を押下する。他の変形形態では、針を、第2の作動子をその最初の位置に戻すことにより後退させる。さらに他の変形形態では、針は、その最初の位置に戻るようにばねにより付勢される。
【0019】
さらに他の好ましい実施例では、針を前進させる方法は、押下することができる作動子を提供すること、及び角度が付けられた表面を有する従動子を提供することを含み、従動子が針と接続され、また角度が付けられた表面が作動子の表面と係合可能である。作動子が押下されて針を前進させ、針の移動距離が、角度が付けられた表面の角度に比例する。
【0020】
さらに、他の好ましい実施例では、針を前進させる方法は、ハンドル部分及び細長い本体を有する縫合装置を提供することを含み、細長い本体が、血管壁を通して挿入できるサイズの遠位端部分を有し、縫合装置が、縫合糸の端部を保持するための2つの展開可能な縫合糸アームと、縫合糸の端部をアームから掴むための2つの延長可能な針とを有する。細長い本体は、血管壁中の切開部を通り前進する。血管内で縫合糸アームを展開するために、ハンドル部分上の第1の作動子が押下される。血管壁を通して針を延ばすために、ハンドル部分上の第2の作動子を押下して、縫合糸の端部を縫合糸アームから掴む。針を引き抜くために、また血管壁を通して縫合糸の端部を引っ張るために、第2の作動子が解放される。縫合糸アームを後退させるために、第1の作動子が解放される。縫合装置は、体から引き抜かれ、縫合糸の端部は、切開部を閉鎖するために結ばれる。一変形形態では、第1の作動子は、押下された位置で解放可能に固定可能である。他の変形形態では、第1の従動子部材は、作動ロッドにより縫合糸アームに結合され、第1の作動子を押下すると、第1の従動子部材をハンドル部分内で長手方向に移動させてアームを展開させる。他の変形形態では、第2の従動子部材は針に結合され、第1の作動子を押下することにより、第2の従動子部材をハンドル部分内で長手方向に移動させて針を延長させる。
【実施例】
【0021】
以下で説明する本発明の好ましい諸実施例は、特に、生物組織内の切開部を閉鎖することに関する。その説明は、様々な諸実施例及び特有の詳細を述べるが、説明は例示的なものに過ぎず、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。さらに、当業者で行うことができる本発明の様々な応用、及びその変更はまた、以下で述べる全体の概念により包含される。
【0022】
図1を次に参照すると、切開部を閉鎖するための1つの好ましいアセンブリ4が例示の使用環境で示されている。アセンブリ4は、概ね、縫合装置6及びカテーテルシース導入器(CSI)8を有している。縫合装置6は、血管造影、血管形成術、又は他の手技など、侵襲性のカテーテル手技の後に、血管を密封するために使用することができる。図2を次に参照すると、治療部位の拡大図が示されている。この図では、医師が、患者2の上側大腿部位12に最初の切開部10を作ることが分かる。次いで、医師は、針が大腿動脈14を貫通してそこに血管切開部16を創成するように、切開部10中に針を(図示せず)挿入する。血液がその挿入部から戻って出血する場合、医師は、針が大腿動脈14に入ったことが分かる。医師は、次いで、針を介して動脈14中にガイド・ワイヤ(図示せず)を挿入する。医師は、ガイド・ワイヤが定位置になった後、針を取り出し、ガイド・ワイヤの上にプラスチック針(図示せず)を挿入することができる。次いで、ガイド・ワイヤは取り出される。
【0023】
プラスチック針が配置されると、医師はCSI8を挿入することができる。CSI8は、通常、その近位端上に位置するバルブを有する単一管腔のカテーテルである。バルブは、余分な出血を阻止し、及び/又は患者の体に薬物を導入するように構成されている。血管切開部16は、医療器具及びプローブに対して動脈血管14の内側へのアクセスを提供する。治療カテーテルなどの器具は、体内で手技を実施するために、CSI8を介して動脈14を通り、前進することができる。
【0024】
医療手技が完了し、また器具(例えば、治療カテーテルなど)が除去された後、医師は縫合装置6をCSI8を通して挿入し、したがって、中空の細長い本体32の遠位端に取り付けられた縫合糸導入器ヘッド20が、第1の切開部10に入り、患者の大腿部12の組織18を通過し、血管切開部16を通って大腿動脈14に入る。この時点で、縫合糸アーム24、24’が展開され、縫合装置の導入器ヘッド20が引き戻され、縫合糸アームが大腿動脈14の内壁22に接触する。以下でさらに詳細に説明するように、針は、導入器ヘッドから広がって、切開部16に隣接する大腿動脈14の壁を貫通する。針は、縫合糸アームからの縫合糸端部を捕捉し、次いで、大腿動脈の壁を通って縫合糸端部を引き抜くために針は後退させられる。次いで、アームが後退し、縫合装置全体が引き抜かれ、縫合糸端部が共に結ばれて切開部を閉鎖することができる。
【0025】
図3を次に参照すると、縫合装置6の好ましい実施例がより詳細に説明されている。動作のさらなる詳細及び方法は、本出願人の米国特許第6,245,079号及び第6,562,052号に記載されており、それぞれを、参照によってその全体を本明細書に援用し、また本明細書の一部として見なす。さらに、これらの特許のそれぞれを付録として添付する。装置6は、血管壁22を縫合するために使用されるのが好ましいが、装置6は、例として、動脈管開存、卵円孔開存(PFO)、心臓欠陥、刺創など他の組織を縫合するために使用できることを理解されたい。
【0026】
図3に示す実施例では、縫合装置6は、概ね、細長い本体32、導入器ヘッド20、及びハンドル部分100を有している。ハンドル部分100により、医師は、縫合糸を、非常に迅速かつ容易に切開部に使用できるように縫合装置を動作させることができる。ハンドル部分は、使用中、非常にわずかな操作でよく、また必要な場合は、片手で動作させることができる。縫合装置は、長時間にわたり圧力を加えることを必要とせずに、患者の組織内(例えば大腿動脈中)に深く位置する切開部を閉鎖するのに使用することができる。その結果、縫合装置は、医療手技後の回復期間を大幅に低減し、それにより、患者をより速やかに退院させ、またコストも大幅に低減することができる。縫合装置6の寸法は、縫合部位及び縫合される対象の生物組織に従って変化し得る。一構成では、縫合糸導入器ヘッド20は、約0.267cm(0.105インチ)の直径を有し、また中空の細長い本体32は、約0.249cm(0.098インチ)の直径を有する。
【0027】
ハンドル部分100は、主ハウジング102、アーム・トリガ104、針トリガ106、及びアーム解放ボタン108を有している。アーム・トリガ及び針トリガは、主ハウジング内の内部構成要素の移動を生成するための作動子を提供し、作動子は、治療部位に縫合糸を適用するために、少なくとも1つのアーム及び針を移動させる。以下でより詳細に説明するように、アーム・トリガ104、針トリガ106、及びアーム解放ボタン108を、医師が特定の順番で押下して延長、後退させ、縫合糸アーム及び針を導入器ヘッド20に沿って協動させて切開部に縫合糸を適用するようにハンドル部分は構成されている。
【0028】
アーム・トリガ及び針トリガは、医師により押下されると回転するように、主ハウジング102にピン110回りに枢動可能に結合されることが好ましい。以下でより詳細に説明するように、枢動回転は、主ハウジングの内部構成要素とトリガとの間でのカム様相互作用を促進する。後退時に針が組織中で動かなくなった場合、針を手動で後退できるように、開口部112が、主ハウジング102に沿って設けられている。こうすることにより、縫合装置の針が、延長された位置で止まらないように保証する安全機構を提供する。一実施例では、針の後退を助ける力を加えるために、ツール(図示せず)が主ハウジング102中の開口部112を通して挿入される。
【0029】
図3Aを参照すると、アーム・トリガ104が、単独で示されている。主ハウジング中にピン110を受け入れるために、アーム・トリガの遠位端に沿って、ループ114、116が設けられている。アーム・トリガの近位端部分に沿った底部コーナ部分120は、主ハウジング中の第1の摺動可能な従動子部材に係合するためのカム駆動する表面を提供する突起部120aを有して形成されている。突起部はまた、アームを展開された状態に固定するために、アーム・トリガを押下位置で保持するようにすることができる。アーム・トリガの上部表面118は、医師の親指又は指と係合するように形成されている。
【0030】
図3Bを参照すると、針トリガ106が、単独で示されている。主ハウジング中にピン110を受け入れるために、針トリガの近位端に沿って、ループ122が設けられている。このループは、アーム・トリガ104のループ114、116(図3Aを参照のこと)の間の間隙内に嵌合するように形成されている。針トリガの遠位端部分に沿った底部コーナ部分130は、主ハウジング中の第2の摺動可能な従動子部材と係合するためのカム駆動する表面を提供している。針トリガの上部表面128は、医師の親指又は指と係合するように形成されている。
【0031】
ハンドル部分100の好ましい内部構成要素を、次にさらに詳細に説明する。内部構成要素は、縫合糸を適用する間、アーム及び針の移動を行うために、アーム・トリガ104及び針トリガ106(即ち、作動子)及びアーム解放ボタン108と協動する。より具体的には、主ハウジング内に含まれる内部構成要素の移動を行うことにより、アーム・トリガ及び針トリガはアーム及び針を作動させる。前述のように、アーム・トリガ及び針トリガはそれぞれ、主ハウジング中の第1及び第2の摺動可能な従動子部材と相互作用をするカム駆動する表面で形成されたコーナ部分120、130を有することが好ましい。医師により、アーム・トリガ及び針トリガが押下されると、従動子部材は長手方向に移動する。
【0032】
図4を次に参照すると、例示のために、ハンドル部分100の側面断面図が示されている。第1の従動子部材140が、主ハウジング102の内部に摺動可能に配設されていることが分かる。第1の従動子部材140は、好ましくは、以下で説明する駆動ワイヤ・タブ156を介して、作動ロッドの近位端に接続され、作動ロッドは、各アームと接続するために、主ハウジング及び細長い本体を通り遠位方向に延びている。図4に示すように、第1の従動子部材140が遠位位置にある場合、アームは、導入器ヘッド内に完全に含まれている。しかし、第1の従動子部材140が、アーム・トリガ104により、近位方向に移動したとき(図5では矢印で示されている)、各アームは、導入器ヘッドの側部の開口を通して外方向に展開する(アーム及び針の動作は、以下でさらに詳細に述べる)。したがって、主ハウジングに対する第1の従動子部材140の長手方向移動は、アームの位置を制御する。アームばね144は、外部入力が何もない場合、第1の従動子部材140を遠位位置に維持するための付勢力を提供する。アームばねの一タイプが、例示のため示されているが、第1の従動子部材140を遠位位置に維持するために、知られた任意の付勢機構を使用することができる。
【0033】
第1の従動子部材140は、遠位面に沿って傾斜した「カム駆動される」表面142を有して形成されていることが分かる。図4で示すように、傾斜したカム駆動される表面は、アーム・トリガ104のコーナ部分120に沿ったカム駆動する表面と係合するように構成される。アーム・トリガ104が押下されると、アーム・トリガ104のコーナ部分120が第1の従動子部材140の傾斜表面142に沿って押す。傾斜表面に作用する下向きの力により、第1の従動子部材の長手方向移動が得られる。長手方向力は、主ハウジング内で、第1の従動子部材を近位方向(即ち、後方向)に摺動させる。第1の従動子部材が後方向に摺動すると、作動ロッドが近位方向に引っ張られ、それにより、ポートを介してアームを外方向に展開させる。
【0034】
アーム・トリガ104は、アームを展開された状態で固定するために、完全に押下された状態で解放可能に固定できることが好ましい。その結果、縫合アームを展開された状態に維持するために、医師がアーム・トリガ104に対して一定の力を加えている必要がなくなる。前に述べたように、アーム・トリガのコーナ部分120は、突起部120Aを有して形成されることが好ましい。図7は、突起部120aを含むコーナ部分120の拡大図を提供する。突起部は、アーム・トリガ104が完全に押下されたとき、第1の従動子部材140の下に捕捉されかつ保持されるように形成される。前に論じたように、アームばね144は、第1の従動子部材がアーム・トリガに当接し、突起部をしっかりと保持するように、第1の従動子部材を前方向に(遠位方向に)押し付ける。したがって、突起部と第1の従動子部材との協動により、戻り止め機構が作成されて、押下位置でアーム・トリガが選択的に維持される。図10は、アーム・トリガのコーナ部分の他の斜視図を提供する。
【0035】
図4を再度参照すると、展開可能なアームを後退させることが望ましい場合、突起部を解放するように、アーム解放ボタン108が構成されている。図示のように、アーム解放ボタン108は、主ハウジング102の近位端に沿って設けられ、アーム・トリガ104と係合するように構成されることが好ましい。アーム解放ばね144は、外部入力がない場合、アーム解放ボタン108を非押下状態に維持するように設けられる。したがって、アーム解放ボタンは、アーム付勢ばね144の付勢力に打ち勝つのに十分な力が加えられたとき、アーム・トリガに対して作用することができるだけである。図8を次に参照すると、アーム解放ボタン108が単独で示されている。アーム解放ボタンは、アーム・トリガが完全に押下された状態に保持されている場合、アーム・トリガのコーナ部分に接触するように構成された細長い部材108aを有している。より具体的には、細長い部材108aは、突起部が第1の従動子部材から解放されるように、アーム・トリガを遠位方向に押すように構成される。図9は、代替のアーム・トリガを示す横断面図であり、コーナ部分の一部が、アーム解放ボタンを作動させた後アーム・トリガの解放を容易にするために切断されている。アーム・トリガを解放するために、代替の方法を使用することができることも理解されたい。例えば、アーム・トリガが、その上部表面上にリップ部を有することができ、作動子を使用してそのリップ部に係合させ、アーム・トリガをその最初の位置に引き戻すことができる。
【0036】
第2の従動子部材150は、第1の従動子部材140に対して遠位の位置で、主ハウジングの内部に摺動可能に配設されている。第2の従動子部材150は、細長い針70、70’の近位端に接続されている。したがって、主ハウジング102に対する第2の従動子部材150の長手方向移動により針が配置される。第2の従動子部材150は、(図4及び図5に示すように)針が後退した(非押下状態の)近位位置を有する。針付勢ばね154は、外部入力が何もない場合、第2の従動子部材を近位位置に維持するように、第2の従動子部材に係合している。例示のために、針付勢ばね154の特定の一実施例が示されているが、第2の従動子部材を近位位置に付勢するために、多種多様の異なる付勢機構を使用することができる。
【0037】
第2の従動子部材150は、第1の従動子部材と実質的に類似した態様で針トリガ106のコーナ部分130に沿ってカム駆動する表面と協動するように、近位面に沿って傾斜した「カム駆動される」表面152を有している。さらに具体的には、図5で示すように、傾斜表面は、針トリガ106のカム駆動する表面と摺動可能に係合するように形成されている。
【0038】
図6Aの横断面図で示すように、針トリガ106が押下されると、針トリガのコーナ部分130に沿ったカム駆動する表面が第2の従動子部材150の傾斜表面152を押す。針トリガからの力は、その結果の長手方向力を第2の従動子部材上に生成し、それにより、第2の従動子部材は主ハウジングに対して遠位方向に摺動する。第2の従動子部材が、(図6Aの矢印で示すように)ハウジング内で遠位方向に移動すると、針70、70’が遠位方向に押され、それにより、針の遠位端部分は、縫合糸アームと係合するために、導入器ヘッドから外方向に延びる。導入器ヘッドからの針の伸展は以下でより詳細に説明する。好ましい諸実施例では、第2の従動子部材150は、第1の従動子部材と一体の本体部分内に収容されている。本体部分は、第2の従動子部材が、使用中に、近位方向及び遠位方向にガイドされ得るように、細長い溝が付けられたトラックを提供する。したがって、第1及び第2の従動子部材は、互いに摺動可能に結合されることが好ましい。第2の従動子部材は、作動ロッド58を摺動可能に受け入れるための長手方向管腔を有して形成できることもまた留意すべきである。したがって、作動ロッド58は、第2の従動子部材を妨げることなく、第1の従動子部材の移動により、長手方向に摺動することができる。図6Bは、傾斜表面152を有する第2の従動子部材150の斜視図を提供する。第2の従動子部材の下側部分が、より薄い構造になっていることが分かる。薄い部分は、上記のように、第2の従動子部材の移動をガイドするために、本体部分中の溝の内部に嵌合するように構成されている。第2の従動子部材はまた、主ハウジング102(図3)中の窓112を通してツールを受け入れるためのスロット160を有して形成されている。ツールは、窓を通してスロット中へと挿入することができる。ツールは、第2の従動子部材が動かなくなった場合に摺動させるために使用することができ、それにより、前に述べた安全機構を提供することができる。
【0039】
第1及び第2の従動子部材のカム駆動される表面は、アーム・トリガ及び針トリガの作動に応じて、それぞれ、所望の動きを生成するように形成されている。好ましい一実施例では、第2の従動子部材のカム駆動される表面の少なくとも一部分は、長手方向軸線に対して、約35°以上で傾斜している。図6Aでは、傾斜角は、記号α(アルファ)によって示されている。他の実施例では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°以上で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約41°で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約35°〜約45°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約39°〜約43°の間で傾斜している。他の変形形態では、カム駆動される表面の少なくとも一部分は、軸線に対して約40°〜約42°の間で傾斜している。さらに他の変形形態では、カム駆動する表面は湾曲している。同様の好ましい範囲が、第1の従動子部材のカム駆動される表面に対しても適用される。針の移動に対するトリガの移動の比は、傾斜表面の角度に比例することが理解されよう。上記の角度は、ハンドル部分の直径を最小化しつつ、優れた性能を提供することが見出された。例えば、低い角度では、摩擦力のため従動子部材を移動させることがより困難になる。他方で、高い角度では、同じ量の長手方向移動を生成するためには、より大きな従動子部材を必要とし、それにより、より大きな(例えば、より大きな直径)ハンドル部分が必要になるはずである。さらに、実質的に一定な角度で形成された傾斜表面は、トリガの移動と針の移動の間で、実質的に、直接比例する関係を提供することが見出された。その結果、医師は、針トリガの移動を制御することにより、高精度に、かつ高い予測可能性を用いて、針を前進させまた後退させることができる。
【0040】
図4から図6を再度参照すると、主ハウジング内の構成要素の移動が医師に見えるように、主ハウジング102は、プラスチックなどの半透明又は透明な材料で構成されることが好ましい。その透明性は、縫合装置の動作に関して、医師に視覚的なフィードバックを提供するので有利である。所望の場合は、使用中に針の位置を容易に知覚できるように、マーキング又は他の標識を設けることができる。代替として、内部の構成要素の移動を観察するために窓を設けることができ、或いは1つ又は複数の内部構成要素の一部分を、視認するために、主ハウジングを通って外部表面へと延ばすこともできる。
【0041】
図11Aから図11Cを参照すると、縫合装置の遠位端部分が、次にさらに詳細に説明される。図示された遠位端部分は、前に述べた改良されたハンドル部分を用いて動作できる好ましい一実施例を提供する。図示のように、遠位端部分は、縫合糸導入器ヘッド20、一対の縫合糸アーム24、24’、一対の縫合糸留め具56、56’、一対の縫合糸アーム開口50、50’、一対の湾曲した若しくは傾斜した針ガイド48、48’、一対の針開口30、30’、遠位端54、穴46、縫合糸52、及び作動ロッド58を有している。遠位端部分はさらに、一対の針70、70’を有している(図13から図15を参照のこと)。縫合糸アーム24、24’が縫合糸アーム開口50、50’中に後退し、また針70、70’が針開口30、30’中に後退したとき、アーム24、24’及び針70、70’は、図11Aに示すように、縫合糸導入器ヘッド20内に組み込まれる。こうすることにより、遠位端部分が生物学的構造を通過する間に、アーム24、24’及び針70、70’が、組織損傷を生ずることのないようにする。
【0042】
図11B及び図11Cは、縫合糸アーム24、24’がその組み込まれた位置から外方向に部分的に展開された装置6(図3)の遠位端部分を示す。図4から図6を参照して、前に説明したように、このような展開は、アーム・トリガ104を部分的に押下することにより達成される。アーム・トリガ104を押下すると、第1の従動子部材140(図4)及び作動ロッド58を近位方向に移動させ、それにより、縫合糸アーム24、24’が、縫合糸アーム開口50、50’の一対の近位の内側縁部78、78’と接触する。アーム・トリガがさらに押下されると、近位の内側縁部78、78’は、縫合糸アーム24、24’を強制して展開状態にする。一実施例では、縫合糸アーム24、24’は、図15に示すように、縫合糸アーム24、24’が互いに実質的に平行で、かつ縫合糸導入器ヘッド20の長手方向軸線に対して実質的に直角をなすまで、半径方向に展開し続ける。他の諸実施例では、縫合糸アーム24、24’は、互いに鋭角、又は鈍角に達したときに、「完全に」展開され得る。
【0043】
図11Bで最も明確に示すように、各縫合糸アーム24、24’は、縫合糸52の端部を保持する縫合糸留め具56、56’を有している。各縫合糸アーム24、24’には、動作の前に、縫合糸52の端部が事前に装着されている。縫合糸52の端部は、次いで、縫合糸留め具56、56’から穴46へと通り、それにより、縫合糸52の端部が、縫合糸導入器ヘッド20に入り、中空の細長い本体32を介して近位方向に通される。図11Bに示す実施例では、縫合糸52の各端部は、縫合糸留め具56、56’の端部に結ばれるループを有する捕捉部分を有している。しかし、捕捉部分は、結ばれるループだけに限定するものではなく、例えば、球形や嵌め輪など他のタイプの捕捉部分を利用できることも企図されている。
【0044】
図12Aは、縫合糸52の端部が、穴又はアイレット95を有する平坦化された遠位領域93を有する捕捉部分の他の実施例を示す。図12Aに示す実施例では、縫合糸52は、好ましくは、Deklene(Genzyme(ゲンザイム社)より)、Prolene(Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン社)より)、又はNylon(Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン社)より)などの単繊維である変形可能材料の糸91を含む。一実施例では、糸91は、有利には、約0.0254cm(0.010インチ)の太さであり、縫合手技で使用するのに適切な長さを有している。
【0045】
平坦化された遠位部分93の形成において、糸91の遠位端は、遠位端が溶けるまで加熱され、或いは、その他の方法で塑性変形又は熱変形されて、少なくとも一部の寸法が糸91の残部よりも広い(即ち、糸91の少なくとも一部の寸法が増加される)、(小球などの)局所的に変形された領域を形成している。変形された領域が形成された後、糸91を冷却することができ、次いで、変形された領域は、型を使用することにより平坦化される。型は、糸91及び変形された領域を受け入れるための浮彫り又は凹部分を有することが好ましい。好ましくは、凹部分と組み合わされる凹部分をさらに有するブロックが、次いで、変形された領域の上に配置される。変形された領域は、次いで、型とブロックの間で締め付けられて、その結果、図12Aで示す平坦化された遠位部分93が形成される。平坦化された遠位部分93は、糸91の残部とマッチする太さを有することが好ましい。平坦化された遠位部分93の縁部は、次いで、削って形が整えられ平滑な円板部分を形成することができ、縫合手技中にかかる縁部が血管壁上に引っかかるリスクを低減する。
【0046】
図12Aで示すように、アイレット95は、平坦化された遠位部分93内に形成される。ハイポチューブ(hypotube)などの穴開け具(図示せず)を用いて、平坦化された遠位部分93を突いて貫通させ、それにより、平坦化された遠位部分93内にアイレット95を設けることができる。アイレット95は、縫合手技中に、外科手術用フック又は針がアイレット95を通過できるように形成されている。平坦化された遠位部分93は、フック又は針に対する接続子として働き、糸91をフック又は針によって取り出すことができる。平坦化された遠位部分93の形成を含む、ここで述べたアイレット95を形成する方法は、(平坦化された遠位部分93における材料を含めた)糸91全体の材料が、実質的に一様な機械強度を有し、糸91の機械的強度における顕著な低下を生ずることがなく有利である。平坦化された遠位部分93を形成する方法は、「SUTURING DEVICE AND METHOD(縫合装置及び方法)」と題する本出願人の前述の米国特許第6,562,052号でより詳細に論じられている。
【0047】
図12Aに示す縫合糸の実施例は、縫合糸91の外形を増加させる、又は、使用中に縫合糸52が引っかかりやすくなる可能性のある結び目がそこに形成されないので有利である。このプロセスは、有利には、糸91の近位端で繰り返すことができ、図12Bで示すように、糸91の両端でアイレット95、95’が得られる。糸91の1つ又は複数の端部における平坦化された遠位部分93は、糸91の残部に関してある角度で曲げることができ(図示せず)、アイレット95を介して外科手術用の針を容易にガイドすることができる。
【0048】
図11Cは、5つの管腔を備える中空の細長い本体32の好ましい一構成を示す。2つの管腔60、60’は、針70、70’を収容するために使用される。図11B及び図11Cを参照して(また以下でより詳細に)論じたように、縫合糸アーム24、24’が展開された後、針トリガ106(図3)が押下されて、縫合糸導入器ヘッド20内の凹んだ位置から遠位方向に延びた位置へと、針70、70’を前進させることができる(図15を参照のこと)。一実施例では、針70、70’は、実質的に同時に遠位方向に移動する。他の実施例では、針70、70’は、その一方が、他方が進む前に前進するように別個に作動させることができる。
【0049】
2つの針70、70’が遠位方向に移動したとき、図15で示すように、針ガイド48、48’は、縫合糸導入器ヘッド20の長手方向軸線に対してある角度で、針開口30、30’の外に針70、70’を導く。針70、70’は、可撓性があり、SUPERFLEX NITINOL(商標)など、形状記憶を有する材料から作成されることが好ましい。代替的には、針70、70’は、ばね鋼、外科手術用ステンレス鋼、又はその任意のバリエーションから構成することができる。各針70、70’は、約0.0483cm(0.019インチ)の直径を有することが好ましいが、他の直径を有する針を、企図される特定の医療手技に従って使用することもできる。
【0050】
前に述べたように、針70、70’が遠位方向に進んだとき、針ガイド48、48’は、針70、70’を半径方向外側に曲げるようにする。図15で最も明確に示すように、針70、70’が縫合糸アーム24、24’の一対の角度が付けられた表面57、57’と接触すると、さらに外側に半径方向曲げが針70、70’に加えられることが好ましい。針70、70’が針管腔60、60’中に後退された場合、針70、70’は、その弾力性の結果、真っ直ぐな形状を取り戻す。図11Aから図15の実施例は、展開中に曲がる可撓性のある針70、70’を有することが好ましいが、他の諸実施例では、有利には、恒久的に真っ直ぐな又は湾曲してもよい剛性針を含み得ることが企図される。
【0051】
図11Cを再度参照すると、中空の細長い本体32は、作動ロッド58を収容するのに使用される中心管腔64を含む。他の管腔62は、縫合糸52を収容するために使用され、縫合糸52が絡むのを阻止している。代替的には、縫合糸52は、作動ロッド58と共に中心管腔64を通過することができる。
【0052】
第5の管腔62’は、医師が、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54が動脈14内に配置されたかどうか判定することを可能にする「ブリード・バック」のために使用されることが好ましい。ブリード・バックは、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54における穴46、縫合糸アーム開口50、50’、及び縫合糸導入器ヘッド20中の他の任意の開口部を通して行われる。ブリード・バックのための血流方向は、図13で3つの破線の矢印で示される。縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54が動脈14内に配置された場合、穴46中に入る血液による血圧は、遠位端54が動脈14内にない場合よりもはるかに大きくなる。一実施例では、管腔62’は、装置6の近位部分におけるポート(図示せず)へと延びており、それにより、医師は、ポートからの血流を監視することによってブリード・バック管腔62’内の血圧を判定することができる。例えば、管腔62’を、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54が血管14中に挿入されたとき膨張するバルーンに取り付けることができる。他の実施例では、圧力センサを管腔62’に結合して、医師に数値的な血圧の読取りを提供することができる。代替的には、管腔62’を、薬物注入のために、又は診断目的に使用することもできる。
【0053】
好ましい実施例では、中空の細長い本体32の外部上にマーク付けされた2本の細いストライプ66(図11Cでは1本だけが示されている)が、中空の細長い本体32の長さ全体に沿って延びている。ストライプ66は、中空の細長い本体32に対して針70、70’の円周方向位置の視覚的な指示を提供する。ストライプ66は、針70、70’を血管14の軸線と容易に位置合わせできるようにし、したがって、針70、70’により血管壁22中に形成された針の切開部80、80’(図15を参照のこと)が、動脈14内の血流に対して横方向の寸法に沿って位置合わせされる。こうすることにより、医師は、縫合糸52が血流に対して横方向に切開部16を閉鎖するように、血管壁22内に縫合糸52を配置することができる。それは、切開部16を閉鎖するために最も効率のよい方向である。針70、70’を適正に挿入することは、血管壁22への損傷リスクを低減する。代替的には、中空の細長い本体32は、2つの針70、70’の一方の円周方向位置を示す1本のストライプ66だけを有することもできる。針70、70’は、縫合糸導入器ヘッド20の両側から展開しているので、一方の針の位置を知ることにより、医師は、他方の針の位置を知ることになる。
【0054】
図11Cで示すように、中空の細長い本体32の外部表面は、近位位置を示すマーカ68を含み、(縫合装置6の遠位部分26が血管14中に挿入された後)CSI8を、針の開口30、30’を露出させるために、そのマーカまで部分的に引き抜くべきである。CSI8の部分的な引抜きは、「SUTURING DEVICE AND METHOD(縫合装置及び方法)」と題する本出願人の前述の米国特許第6,562,052号で詳細に論じられている。マーカ68は、視覚的なマーカとして示されているが、さらに、又は代替的に、隆起、溝、又はCSI8の対応する構造と相互作用して、医師が感覚を用いてCSI8を位置決めできる他の物理的な構造の形式とすることができる。例えば、CSI8及び中空の細長い本体32は、CSI8が細長い本体32に沿って所定の位置に達したとき、互いに解放可能に係合し、又は連結されるように構成することもできる。特別に形成されたCSI8がこのような連結構造を有し、また本発明の範囲に含まれることが企図される。縫合糸アーム24、24’がCSI8の外側に露出される位置など、細長い本体32に対するCSI8の他の位置を示すために、有利には、マーカ68に対して遠位に1つ又は複数のさらなるマーカ(図示せず)を中空の細長い本体32の長さに沿って提供できることもさらに企図される。
【0055】
縫合装置の使用法及び動作を、図3から図15を参照して次に説明する。以下の説明から、ハンドル部分100は、外科手術手技後、血管壁を閉鎖するためなど、切開部に縫合糸を適用するための縫合装置の構成要素を迅速に、かつ容易に作動させる改良された機構を提供することが理解されよう。
【0056】
手技前に、縫合糸アーム24、24’には、例えば、ポリプロピレン縫合糸などの縫合糸端部が事前に装着される。具体的には、縫合糸の各端部は、ループ、球形、又は嵌め輪から構成された捕捉部分を有する。一実施例では、ループ、球形、又は嵌め輪は、縫合糸の長さと同じ縫合糸材料で(例えば、熱成形により)形成することができる。他の実施例では、そのループ、球形、又は嵌め輪は、縫合糸の長さの各端部上に取り付けられた(例えば、成形、接着などにより)別個の部品とすることができる。ループ、球形、又は嵌め輪は、アーム24、24’の各縫合糸端部サポートに装着される。縫合糸の残りの長さは、中空の細長い本体を通って延びることが好ましい。CSI8が患者の動脈14中に延びている状態で、医師は、次いで、縫合糸導入器ヘッド20をCSI8を通して動脈14中に挿入する。次いで、CSI8は、中空の細長い本体32に沿って部分的に引き抜かれて、図13に示すように、動脈14からCSI8を取り外し、針開口30、30’を露出する。中空の細長い本体32の外部表面上のマーカ68(図11C)は、医師が、針開口30、30’を露出するためにCSI8をどの程度引き抜くべきかを示す。
【0057】
縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54は、縫合糸導入器ヘッド20が動脈14中に挿入されたとき、反対側の血管壁22への損傷を防ぐ平滑で丸味のある表面を有する。さらに、縫合糸導入器ヘッド20は、動脈14を閉塞しないので、動脈14内の血流が妨害されることはない。医師は、縫合糸導入器ヘッド20がいつ動脈14中に入ったかを判定するために、穴46及び管腔62’(図11C)を介するブリード・バックを用いることができる。
【0058】
動脈への挿入中は、アーム・トリガ104及び針トリガ106はそれぞれ、図4で示すように非押下位置にある。その結果、第1の従動子は、縫合糸アームが後退した状態にあるように遠位位置に配置されている。さらに、第2の従動子は、針が後退した状態にあるように近位位置にある。
【0059】
図13で示すように、縫合糸導入器ヘッド20が動脈14中に挿入される間、作動ロッド58は、縫合糸アーム24、24’を、縫合糸導入器ヘッド20内に組み込まれた状態に保持する。作動ロッド58は下方向力を加えるが、縫合糸導入器ヘッド20の一対の偏向表面67、67’は、各縫合糸アーム24、24’に対して、それぞれ内側方向力を加える。これらの2つの力の組合せは、縫合糸アーム24、24’を、縫合糸導入器ヘッド20の縫合糸アーム開口50、50’内に保持する。各縫合糸留め具56、56’は、図11Aから図11Cで示すように、縫合糸52のループ端部を保持する角度の付けられたスロットを有している。縫合糸52のループ端部は、縫合糸留め具56、56’によってしっかりと保持されるが、針70、70’の先端における一対の縫合糸キャッチ72、72’により容易に取り外せるように配置される。
【0060】
装置6の遠位部分26が適正に動脈14内に配置された後、医師は、アーム・トリガ104(図3)を押下して、図14に示すように、縫合糸アーム24、24’を展開する。主ハウジング102中の第1の従動子部材140に対して、アーム・トリガの下方向移動が作用し、それにより、第1の従動子部材を近位方向に移動させて、ロッドを近位方向に引っ張る。アーム・トリガ104のコーナ部分120は、第1の従動子部材140上の傾斜したカム駆動される表面に係合するカム駆動する表面を提供する。このアクション中、アーム・トリガに対して加えられる力は、アームばね144の付勢力に打ち勝つのに十分なものでなければならない。第1の従動子部材140の移動により、作動ロッド58は近位方向に移動され、それが、作動ロッド58により加えられていた下方向力を解放し、したがって、偏向表面67、67’により縫合糸アーム24、24’に加えられた内側方向力も解放する。こうすることにより、縫合糸アーム24、24’は、図14に示す部分的に展開した状態をとることができる。医師が、アーム・トリガ104を押下し続けると、作動ロッド58は、近位方向に移動し続けて、縫合糸アーム24、24’を近位の内側縁部78、78’と接触させる。近位の内側縁部78、78’は、各縫合糸アーム24、24’に対して、それぞれ下方向力を加え、それにより、図15で示すように、縫合糸アーム24、24’を強制して完全に展開された状態にする。
【0061】
図5を次に参照すると、アーム・トリガ104が完全に押下されると、アーム・トリガ104のコーナ部分120に沿った突起部120Aが、第1の従動子本体140の下に進む。この位置では、アーム・トリガ104は、第1の従動子本体をアーム・トリガに押し付けているアームばね144の力により、完全に押下された位置に維持される。したがって、アーム・トリガと第1の従動子本体との間の協動により、アーム・トリガを押下された位置に保持するための解放可能な戻り止め機構が提供されるので有利である。アーム・トリガが完全に押下された状態で保持されたとき、縫合糸アーム24、24’は、完全に展開された状態に固定される。
【0062】
固定された状態では、縫合糸アーム24、24’は、図15で示すように、完全に延ばされた位置に達しており、また互いに長手方向に整合されていることが好ましい。縫合糸アーム24、24’が完全に延ばされた位置にあるとき、医師は、縫合装置6を近位方向に徐々に摺動させて、縫合糸アーム24、24’を血管壁22の内部表面に接触させることができる。
【0063】
この重要な時点で、医師は、ハンドル部分100上の針トリガ106を押下して、針70、70’を遠位方向に進ませ、縫合糸留め具56、56’から縫合糸52の端部を捕捉する。図5は、非押下位置にある針トリガを示す。図6は、完全に押下された位置にある針トリガを示す。針トリガの下方向への押下中に、針トリガ106のコーナ部分130に沿ったカム駆動する表面は、第2の従動子部材150のカム駆動される表面に係合し、それに沿って摺動し、それにより、第2の従動子部材を、遠位方向へと主ハウジング102内で長手方向に摺動させる。このアクション中、針トリガ106に対して加えられる力は、針付勢ばね154の付勢力に打ち勝つように十分でなければならない。針トリガがさらに押下されると、第2の従動子部材が遠位方向に摺動し続けて、それにより、針を、主ハウジングを通り中空の細長い本体を通って遠位方向に進ませる。第1及び第2の針が遠位方向に進むと、針の遠位端は、アームと係合するために外側方向へと延びる。
【0064】
針70、70’がとる経路は、図15に示されている。針70、70’は、針管腔60、60’に沿って摺動し、針開口30、30’をそれぞれ通って縫合装置6の外に出る。針70、70’は、針挿入ガイド48、48’と接触すると、半径方向外側に曲がり始める。針70、70’が外に出ると、それらは、針挿入ガイド48、48’により、作動ロッド58から離れる方向に鋭角に、半径方向外側にガイドされる。針の偏向角は、約13.2度であることが好ましい。約10度と約15度の間の偏向角、及び約5度と約20度の間の偏向角もまた企図される。
【0065】
針70、70’は、前進中に、ある角度で血管壁22を貫通し、それにより、切開部16の両側に針切開部80、80’を創成する。前に述べたように、針70、70’はまた、縫合糸アーム24、24’と接触したとき、わずかに(半径方向外側に)曲がることが好ましい。縫合糸留め具56、56’の角度が付けられた表面57、57’、及び縫合糸キャッチ72、72’は、針70、70’が中を通過する間、ループ端部が縫合糸留め具56、56’に結合されたままであるように、縫合糸52の各ループ端部上に力を加える。
【0066】
医師は、針70、70’の縫合糸キャッチ72、72’が、縫合糸留め具56、56’に係合し、縫合糸52のループ端部を捕捉するまで、針トリガ106を押下する。図15に示すように、針70、70’が、血管壁22を貫通して、縫合糸導入器ヘッド20の周囲の外側で縫合糸52のループ端部を捕捉するように、縫合糸アーム24、24’は縫合糸52のループ端部を縫合糸導入器ヘッド20から離れる方向に保持する。針70、70’が、縫合糸留め具56、56’に最適に係合した後、機械的な制限により、針トリガ106のさらなる移動は阻止される。このような抵抗は、針70、70’が、縫合糸留め具56、56’内の最適な所定の位置に達したことを医師に知らせる。
【0067】
縫合糸留め具56、56’内の最適な所定の位置に針70、70’を進ませた後、医師は針トリガ106上の圧力を解放し、それにより、ハンドル部分100(図4〜図6を参照のこと)内の針付勢ばね154が、針70、70’を近位方向に後退させることができる。その動きにより、縫合糸52のループ端部を縫合糸キャッチ72、72’に取り付けた状態で、針70、70’を針管腔60、60’中に引き抜く。縫合糸キャッチ72、72’は、縫合糸留め具56、56’により保持された縫合糸52のループ端部を捕捉し、針70、70’が近位方向に後退すると、針切開部80、80’を介してループ端部を引き上げる。針70、70’が縫合糸52のループ端部を近位方向に引くと、縫合糸52の張力により、縫合糸52のさらなるセグメントが、縫合糸導入器ヘッド20の遠位端54における穴46を通して動脈14中に、針切開部80、80’を通して送られる。この実施例では、医師は、針トリガの移動速度を制御することにより、針の移動速度を調整することができる。上記のことから、針の位置は、針トリガの位置に、実質的に直接比例することが分かる。したがって、針トリガの位置を感知することにより、任意の所与の時間に、針の位置の信頼できる指示が医師に提供される。
【0068】
前述の実施例では、医師は、針トリガ104を押下し、また解放することによって針70、70’の位置を制御するので有利である。針を前進させることは、制御された方法で針トリガを押下することにより達成されるが、一方、後退させることは、医師が針トリガを用いて後退速度を調整しながら、針のばねで針を後退させることによって達成される。針70、70’が、針管腔60、60’中に後退した後、医師は、アーム・トリガ104を解放するために、アーム解放ボタン108(図3)を押下する。アーム解放ボタンは、突起部120Aが第1の従動子部材140から解放されるように、アーム・トリガ104のコーナ部分120を遠位方向に押し、それにより、アーム・トリガ104をばねで上方向に戻すことができる。
【0069】
アーム・トリガ104が解放された後、アーム付勢ばね144は、第1の従動子部材140を遠位方向に押し、それにより、作動ロッド58を遠位方向に移動させる。こうすることにより、近位の内側縁部78、78’によって縫合糸アーム24、24’に加えられていた力が解放され、縫合糸アーム24、24’は、図14に示すように弛緩した状態をとることができる。第1の従動子部材140がさらに遠位に移動すると、縫合糸アーム24、24’は、偏向表面67、67’に接触するまで遠位方向に移動する。偏向表面67、67’と併せて、作動ロッド58の下方向力により、縫合糸アーム24、24’を、図13で示すように、縫合糸導入器ヘッド20内に組み込まれた状態へと後退させることができる。組み込まれた状態では、縫合糸アーム24、24’は、中空の細長い本体32と実質的に平行であり、また縫合糸アーム24、24’の外部表面は、導入器ヘッド20の外部表面と実質的に同一面である。それは、縫合糸アーム24、24’が、引抜き中に、血管壁22若しくは肉部18に引っかかる、又は捕捉される可能性を低減する。縫合糸アーム24、24’及び針70、70’が組み込まれた状態に戻ると、装置6は、動脈14から取り外せる状態になる。
【0070】
図1を再度参照すると、医師は、次いで、装置6を動脈14から引き抜き、また患者の大腿部12の組織18の外に引き抜く。装置6が完全に引き抜かれた後(CSI8がまだ組織18中にある状態で)、医師は、縫合糸52の端部を徐々に引いて血管切開部16を閉鎖する。縫合糸52が針切開部80、80’を通過する実施例では、縫合糸52の端部が引っ張られると、縫合糸52中の張力により血管切開部16が閉鎖される。次いで、医師は、縫合糸52の端部で少なくとも1つの結び目、好ましくは、てぐす結び又は改良されたクリンチ結びを結び、その結び目をCSI8を通して血管切開部16へと摺動させ又は押し込む。医師は、参照によってその全体を本明細書に援用されている、2001年8月6日出願の第09/923,108号、「METHOD AND APPARATUS FOR TYING SUTURE KNOT(縫合糸の結び目を結ぶための方法及び装置)」と題する本出願人の米国出願中に開示された装置を含む、適切な任意の縫合糸の結び目を結ぶ装置及び/又は締め付ける装置を用いることにより、結び目を結び、押し込むことができる。代替的には、医師は、少なくとも1つの結び目を手で結び、次いで、参照によってその全体を本明細書に援用されている、2000年5月15日出願の第09/571,759号、「KNOT PUSHER(結び目押し込み具)」と題する本出願人の米国出願により教示される装置など、結び目の締付け装置を用いることにより結び目を締め付けることができる。さらに、医師は、縫合糸52の端部に、小さく、円形又は平らなステンレス鋼クリップ(図示せず)を固定し、そのクリップをCSI8を通して血管切開部16へと摺動させて切開部16を閉鎖することを選択できる。結び目を結び、配置するための他の諸実施例は、2004年9月27日出願の第60/613,636号、「HANDLE FOR SUTURING APPARATUS(縫合装置用ハンドル)」、及び2005年5月23日出願の第60/683,701号、「METHOD AND APPARATUS FOR HOLDING SUTURE ENDS TO FACILITATE TYING OF KNOTS(結び目を容易に作るために縫合糸の端部を保持する方法及び装置)」と題する本出願人の米国仮出願中に述べられており、その全体が共に参照によって本明細書に援用される。医師は、次いで、縫合糸52の未使用の端部(余分の長さ)を切断し、切断された部分を取り除く。次いで、医師は、患者の大腿部12からCSI8を取り外す。
【0071】
代替の一実施例では、縫合装置には、ガイド・ワイヤを摺動可能に受け入れるための管腔が設けられている。一実施例では、ガイド・ワイヤ管腔は、ブリード・バック管腔と組み合わせることができる。ガイド・ワイヤ管腔は、患者中への縫合装置の挿入中に医師を助けるために、また治療部位の方向に装置を前進させるために提供される。
【0072】
図16から図20を次に参照すると、1つの代替の針作動機構が提供されている。図16を特に参照すると、針トリガ206は、第1及び第2のピン208、210、及びその間に間隙を有して形成されている。針トリガは、図20で示す従動子部材250と協動するように構成されている。この実施例では、針トリガ206のピン208、210は、最初は、従動子部材250の傾斜表面252に沿って乗っており、それにより、針を延長するために従動子部材を遠位方向に移動させる。しかし、針トリガが終了(即ち、完全に押下された)位置に達すると、ピンは、傾斜表面の底面縁部を越えて延び、それにより、従動子部材に対する力が解放され、従動子部材は近位方向に急速に戻ることができる。それは、針トリガを完全に押下された状態に維持している間に行われる。したがって、針は、まず完全に延ばされ、次いで、針トリガが第1の終了(即ち、完全に押下された)位置に達したとき、自動的に急速に戻る。針は、従動子部材のばね付勢により急速に戻る。針トリガが解放されると、ピンは、スロット256を介して開始位置へと上方に戻る。図17は、このサイクル中のピンの例示的な経路を示す。図18及び図19は、アーム・トリガ及び針トリガを開始位置に戻すように付勢するためのばね機構258又は260を示す。
【0073】
所望の場合、針トリガと従動子部材の間の関係は、針が、第1の速度で第1の終了位置から後退し、次いで、より速い速度で第2の終了位置から後退するように構成することができる。それは、従動子部材上に(図9に示すものなど)切断部分を提供することにより達成することができる。ゆっくりした速度の後に速い速度で針を後退させることは、針が、縫合糸の端部を最初はゆっくりと引き、次いでより速く引くように、縫合糸に「初期張力」を与えるので有利である。最初のゆっくりした引っ張りにより、縫合糸の端部を、組織を通して引き抜かれる前によりよく位置合わせすることができる。
【0074】
図21を次に参照すると、押出しクランプ180の好ましい一実施例が示されている。クランプは、ハンドル部分100と細長い本体との間の遷移を提供する。クランプは、作動ロッド及び針を受け入れるための中心管腔182を含む。クランプはまた、針付勢ばね154を配置するための凹部を含む。
【0075】
他の代替の実施例では、図22に示すように、針トリガ106aには、医師の親指又は指を受け入れるように構成されたループ部分が設けられている。ループ部分は、医師が、針トリガを起こすために付勢ばね力に頼らずに針トリガを上方向に引くことができ有利である。この実施例では、医師が針の移動を十分に制御できるようになる。
【0076】
他の代替の実施例では、アーム解放ボタンのない縫合装置を提供することができる。正確には、アーム・トリガを、最初の押下により、固定された位置にアーム・トリガを移動させるように構成することができる。アーム・トリガを再度押すことにより、アーム・トリガが解放され上昇して元に戻る。当技術分野で知られたタイプの任意の解放機構を、この目的のために使用することができる。
【0077】
代替の他の実施例では、第1及び第2の従動子部材を移動させるために、ハンドル部分に沿って第1及び第2のサム・ホイールを提供することが企図される。サム・ホイールと従動子部材の間の相互作用は、当技術分野で知られたタイプのラック・ピニオン・システムを使用することが好ましい。この実施例では、医師は縫合糸アーム及び針の位置をさらに十分に制御できるようになる。
【0078】
図23〜図27は、縫合装置300の代替の実施例を示しており、解放ボタン108は、近位端から軸線方向に延びるのではなく、主ハウジング102の側部に沿って設けられている。縫合装置300は、概ね、前に説明した細長い本体32及び導入器ヘッド20、及び、さらに以下で説明するハンドル部分100’を有している。
【0079】
図23で示すように、ハンドル部分100’は、前に述べた主ハウジング102、アーム・トリガ104、及び針トリガ106、さらにアーム解放ボタン108’を有している。アーム・トリガ、針トリガ、及びアーム解放ボタン108’は、トリガが作動される順番を示すためのマーキングを含むことが好ましく、例えばアーム・トリガ104には「1」がラベル付けされ、針トリガ106には「2」がラベル付けされ、またアーム解放ボタン108’には「3」がラベル付けされる。
【0080】
図24で示されるように、アーム・トリガ及び針トリガは、医師により押下されるとトリガが回転するように、ピン110周りで主ハウジング102に枢動可能に結合されることが好ましい。アーム・トリガ104が押下されると、それは、主ハウジング102中に摺動可能に受け入れられた第1の従動子部材140’と係合する。図25及び図26でより具体的に示す第1の従動子部材140’は、近位端304及び遠位端306を有する細長い本体302を有し、スロット308が、細長い本体を通り、その上部側に沿って長手方向に延びている。近位端304で、細長い本体302は、部分的に円形の横断面を有し、スロットの近位端310が、押下されたときアーム・トリガ104を受け入れる。細長い本体302の中間部分では、針トリガ106を、押下されたとき部分的に受け入れるスロットの中間部分312が設けられている。細長い本体302の遠位部分では、針トリガ106を、押下されたとき部分的に受け入れ、また第2の従動子部材150も受け入れるスロットの遠位部分314が設けられ、それを以下でさらに説明する。スロット部分312及び310に隣接する細長い本体の両側部に沿って、以下でさらに説明する、アーム・ロックアウト・ワイヤ330を受け入れるための長手方向溝316が設けられている。アーム・トリガ104に係合するために、前述のものなどの傾斜斜面142’がスロットの部分310内に設けられている。
【0081】
上記の諸実施例でも説明されている駆動ワイヤ・タブ156は、穴158を通るピンによるなど、第1の従動子部材140’の遠位端に固定されることが好ましい。タブ156は、押出しクランプ180の中心管腔182を通して延びる作動ロッド58に固定されている。
【0082】
図27は、第1の従動子部材140’を取り外したハンドル100’を示している。下方向に延びる脚336が、針トリガ106の下側表面から延びている。第1の従動子部材140’がその最初の構成にあるとき、図26に示す第1の従動子部材上の棚338は脚336の下に位置し、針トリガ106が押下されるのを阻止する。第1の従動子部材140’が近位方向に移動されたとき、棚338はまた、近位方向に移動して、針トリガ106の下方向移動を可能にする。こうすることにより、アーム・トリガ104の押下によるアームの展開後まで、針トリガ106の作動が阻止される。
【0083】
針トリガ106は、押下されたとき、第2の従動子部材150のカム駆動される表面152に係合し、前述のように、第2の従動子部材150に針付勢ばね154を圧縮させる。第2の従動子部材150は、スロット308の遠位部分314に設けられ、第1の従動子部材に対して摺動することができる。第1の従動子部材140’の近位には、アームばね14があり、またアームばね14の近位には、アーム解放ボタン108’と係合する傾斜表面322を有する第3の従動子部材320がある。第3の従動子部材は、以下で説明するアーム・ロックアウト・ワイヤ330を受け入れるために、その両側部に長手方向溝324を有する。細長い部材108A’は、アームばね144の下の第3の従動子部材320から遠位方向に延びる。
【0084】
図24で示すように、アーム・ロックアウト・ワイヤ330は、第2の従動子部材150の一方の側部から近位方向に延び、第1の従動子部材140’の細長い本体302の一方の側部上の長手方向溝316を通り、第3の従動子部材320の一方の側部上の長手方向溝324を通り、第3の従動子部材の近位端を回って、ハウジングの反対側の側部上の溝324及び316を通って戻り、第2の従動子部材150と接続している。第2の従動子部材150が遠位方向に移動したとき、アーム・ロックアウト・ワイヤ330もまた遠位方向に移動し、アーム解放ボタン108’の下に配置される。こうすることにより、針が作動されている間は、第2の従動子部材がその最初の位置に戻るまで、アーム解放ボタン108’の押下が阻止される。
【0085】
図23で示すように、ハンドル部分100’の主ハウジングは、針を手動で後退させるために、前述した安全開口部又は窓112を含む。主ハウジングはまた、アームを手動で後退させるための安全開口部又は窓113を含む。開口部112は、第2の従動子部材150中の開口部332と協動して、ピンを開口部中に挿入し第2の従動子部材をその最初の構成に手動で戻すことができる。開口部113は、同様の目的で、第1の従動子部材140’中の開口部334と協動する。
【0086】
図23〜図27に示す縫合アセンブリ300の動作は、アセンブリを適切に配置した後、「1」にラベル付けされたアーム・トリガ104を押下することにより、まず開始される。アーム・トリガ104を押下することにより、第1の従動子部材140’をハウジング102内で近位方向に移動させ、アームばね144を圧縮し、また作動ロッド58を移動させて、前述のアーム24、24’を展開させる。アーム・トリガ104は、前に図7の実施例で述べたものなど、それが下方位置で固定又はロックされるまで押下できることが好ましい。
【0087】
次に、「2」にラベル付けされた針トリガ106を押下することにより、第2の従動子部材150を第1の従動子部材140’のスロット内で遠位方向に摺動させ、針付勢ばね154を圧縮し、針70及び70’を細長い本体32から外側に開くようにする。針トリガ106は、上記の図16に関して述べたものなどのように構成することができる。より具体的には、針トリガ106は、最初は第2の従動子部材150の傾斜表面に沿って乗るピン208、210を有し、それにより、従動子部材を遠位方向に移動させて針を延ばす。針トリガ106が終了(即ち、完全に押下された)位置に達すると、ピンは、傾斜表面底部の縁部を越えて延び、それにより、従動子部材に対する力を解放させて、従動子部材を近位方向に急速に戻すようにする。それは、針トリガを完全に押下された状態に維持している間に行われる。したがって、針は、まず完全に延ばされ、次いで、針トリガが第1の終了位置(即ち、完全に押下された位置)に達したとき、自動的に急速に戻る。
【0088】
図23〜図27の実施例では、第2の従動子部材150がその元の構成に急速に戻った後、針トリガは、その押下された構成のまま留まってもよいが、或いは、自動的にその最初の構成に戻ってもよい。針トリガ106が、自動的にその最初の構成に戻らない場合、操作者は、ピンが再度傾斜表面の上に乗るまで針トリガを第2の従動子部材の本体に沿って上方向に単に引っ張り、ピン208、210間の間隙を広げるだけでよい。
【0089】
アーム24、24’を後退させるためには、操作者は、「3」にラベル付けされたアーム解放ボタン108’を押下する。それにより、第3の従動子部材320を遠位方向に移動させ、また細長い部材108a’をアーム・トリガ104のコーナ部分に接触させて、アーム・トリガを遠位方向に押し付け、第1の従動子部材140’から解放されるようにする。
【0090】
上記で論じた方法及び装置のいくつかの変形形態及び変更形態は、当業者にとって自然に考え付くものであることを理解されたい。この開示の範囲は、本発明の例示又は前述の記述により限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】例示の使用環境における縫合装置及び関連のアセンブリの一実施例を示す図である。
【図2】患者の大腿部など、例示の使用環境における縫合装置の拡大された横断面図である。
【図3】改良されたハンドル部分を用いて形成された縫合装置の斜視図である。
【図3A】図3の縫合装置のハンドル部分の一部を形成するアーム・トリガの斜視図である。
【図3B】図3の縫合装置のハンドル部分の一部を形成する針トリガの斜視図である。
【図4】アーム・トリガ及び針トリガが非押下位置にある、ハンドル部分の側面部分断面図である。
【図5】縫合糸アームを展開状態で固定するためにアーム・トリガが完全に押下された、ハンドル部分の側面部分断面図である。
【図6】縫合糸アームにより保持された縫合糸端部に係合するように針を延ばすために、アーム・トリガと針トリガが共に完全に押下された、ハンドル部分の側面部分断面図である。
【図6A】ハンドル部分における針トリガと第2の従動子部材との間の関係を示す側面図である。
【図6B】第2の従動子部材の斜視図である。
【図7】コーナ部分がカム駆動する表面を備えるアーム・トリガの好ましいコーナ部分を示す斜視図である。
【図8】アーム・トリガを解放し、それにより縫合糸アームを後退させるための解放ボタンの好ましい実施例を示す側面図である。
【図9】アーム・トリガの解放を容易にするために、一部が切断されたアーム・トリガのコーナ部分の代替実施例を示す側面図である。
【図10】コーナ部分がカム駆動する表面を有するアーム・トリガの好ましいコーナ部分を示す他の斜視図である。
【図11A】図3の縫合装置の遠位端部分の拡大された斜視図である。
【図11B】一対の縫合糸アームが部分的に展開された、図11Aの遠位端部分の斜視図である。
【図11C】一対の縫合糸アームが部分的に展開された、図11Aの遠位端部分の背面斜視図である。
【図12A】アイレットを有する平坦化された遠位部分を有する縫合糸端部の斜視図である。
【図12B】アイレットを有する平坦化された遠位部分をそれぞれが有する縫合糸の遠位及び近位端の斜視図である。
【図13】遠位端部分が動脈壁を通して挿入された、図3の縫合装置の横断面図である。
【図14】遠位端部分が動脈壁を通って挿入され、また一対の縫合糸アームが部分的に展開された、図3の縫合装置の横断面図である。
【図15】一対の縫合糸アームが完全に展開され、また一対の針が縫合糸アームに係合している、図3の縫合装置の横断面図である。
【図16】カム駆動する表面が、間隙をその間に有する一対の対向するピンにより提供される、針トリガの代替の実施例を示す斜視図である。
【図17】針の展開及び自動的な後退中における、図6のカム駆動する表面の例示的な経路を示す図である。
【図18】トリガを非押下位置へと付勢するために圧縮ばねが提供されたアーム・トリガ及び針トリガの代替の構成を示す側面図である。
【図19】圧縮ばねを異なる場所に有するアーム・トリガ及び針トリガの他の代替の構成を示す側面図である。
【図20】従動子部材が、傾斜面と、対向するピンを開始位置に戻すようにガイドするための戻りスロットとを有する、図16の針トリガと係合するように構成された従動子部材の代替の実施例を示す斜視図である。
【図21】細長い本体をハンドル部分に固定するための押出しクランプの好ましい一実施例を示す斜視図である。
【図22】針トリガがループ部分を含む、改良されたハンドル部分を有する縫合装置の代替の実施例を示す斜視図である。
【図23】縫合装置の他の実施例を示す斜視図である。
【図24】ハンドルのハウジングの一部が取り外された、図23の縫合装置のハンドルの側面図である。
【図25】図24のハウジングから取り外された第1の従動子の斜視図である。
【図26】上から見た図25の第1の従動子部材の斜視図である。
【図27】第1の従動子が取り外された、図23の縫合装置のハンドルの斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い本体と、
前記細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームであって、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有するアームと、
遠位端を有し、前記細長い本体に対して移動するように取り付けられた針と、
前記細長い本体に取り付けられたハンドルであって、カム駆動する表面を有する作動子及びカム駆動される表面を有する従動子を有し、前記従動子が前記針を移動するように接続され、また前記カム駆動する表面及びカム駆動される表面が、前記作動子の移動に応じて相互作用をして前記従動子を駆動し、前記針を移動するハンドルと
を有する縫合装置。
【請求項2】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して少なくとも約35°で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して少なくとも約40°で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して約41°で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して35°〜45°の間で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して39°〜43°の間で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して40°〜42°の間で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記カム駆動する表面が湾曲している、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ハンドルが第2の作動子を有し、該第2の作動子が、前記アームを移動するための第2の作動子の移動に応じて相互作用する、第2のカム駆動する表面及び第2のカム駆動される表面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記作動子が、前記ハンドルの長手方向軸線に対し、概ね直交する軸線回りに回転する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記細長い本体が、ガイド・ワイヤを受け入れるためのポートを含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第2の針及び第2のアームを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記細長い本体が可撓性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記作動子を、指を用いて手動で後退させるための前記作動子上の指ループを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
細長い本体と、
前記細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームであって、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有するアームと、
遠位端を有し、前記細長い本体に対して移動するように取り付けられた針であって、前記針の前記遠位端が可動である針と、
前記細長い本体に取り付けられたハンドルであって、従動子の移動量と等しく前記針を移動させるように接続された作動子及び前記従動子を有するハンドルとを有し、
前記針を直接見ることなく前記針の前記移動量を監視できるように、前記従動子の移動量がユーザに視認できる縫合装置。
【請求項16】
前記ハンドルが透明な材料から構成されたハウジング部分を有し、前記従動子が前記透明な材料を通してユーザに視認できる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記針が前記作動子の移動に応じて開始位置から終了位置まで移動し、また前記ハンドルが、前記針が前記終了位置にあるときの前記従動子の位置を少なくとも示す標識を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記標識が、さらに、前記針が前記開始位置にあるときの前記従動子の位置を示す、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
細長い本体と、
前記細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームであって、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有するアームと、
遠位端を有し、前記細長い本体に対して移動するように取り付けられた針と、
前記細長い本体に取り付けられたハンドルであって、カム駆動する表面を有する作動子及びカム駆動される表面を有する従動子を有し、前記従動子の遠位方向への移動が前記針を遠位方向に駆動し、また前記従動子の近位方向への移動が前記針を近位方向に駆動し、前記従動子が近位方向にばねで付勢され、前記作動子が移動範囲を有し、また、前記カム駆動する表面及びカム駆動される表面が相互作用して、前記従動子を、前記移動範囲の少なくとも実質的な部分の間で遠位方向に駆動するハンドルと
を有する縫合装置。
【請求項20】
前記作動子が第1の終了位置を有し、前記カム駆動される表面及びカム駆動する表面の前記相互作用が前記第1の終了位置で解放されて、前記ばねによる付勢が前記従動子を近位方向に駆動し、それにより、前記作動子を前記第1の終了位置から後退させることなく自動的に前記針を近位方向に後退させる、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記作動子が、前記ばねによる付勢がさらに前記針を後退させる第2の終了位置を有し、前記作動子及び前記従動子が、前記第1の終了位置に達した後の速度よりも前記第2の終了位置に達した後の速度の方が前記従動子を大幅に速く近位方向に駆動するように相対的に構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記作動子が、前記針がその移動範囲の遠位端にある終了位置を有し、前記作動子の前記終了位置からの後退に応じて、前記従動子の前記ばねによる付勢が前記針を近位方向に後退させる、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記従動子の前記ばねによる付勢が前記針を後退させることができなかった場合、前記従動子及び前記針を手動で後退させるための従動子後退部材を有する、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
開口部に縫合糸を適用する方法であって、
前記開口部中に細長い本体を挿入する工程と、
前記開口部の遠位側で、前記細長い本体から、縫合糸部分を保持する少なくとも1つのアームを延ばす工程と、
前記細長い本体から少なくとも1つの針を前進させて、前記開口部の近位側から前記開口部に隣接する組織を通り、前記少なくとも1つのアームにより保持された前記縫合糸部分と係合させる工程と、
前記少なくとも1つの針を遠位から近位方向に後退させて、前記縫合糸部分を前記開口部を通して近位方向に引っ張る工程とを有し、
前記針が、作動子を第1の位置から第2の位置へと移動させることによって前進させられ、またその第1の位置に後退させるように付勢されている方法。
【請求項25】
前記針を前進させるために前記作動子が押下される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記作動子をその第1の位置に戻るように解放することにより、前記針が後退する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
さらに前記作動子を押下することにより、前記針が自動的に後退する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記針が、その第1の位置に戻るようにばねにより付勢される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
開口部に縫合糸を適用する方法であって、
複数の作動子を有するハンドルに接続された細長い本体を前記開口部中に挿入する工程と、
少なくとも1つのアームを第1の位置から第2の位置に延ばすために第1の作動子を押下する工程であって、その第2の位置にある前記アームが、前記開口部の遠位側における前記細長い本体から延びており、前記少なくとも1つのアームが縫合糸部分を保持する工程と、
第2の作動子を押下して細長い本体から少なくとも1つの針を前進させて、前記開口部の近位側から前記開口部に隣接する組織を通り、前記少なくとも1つのアームにより保持された前記縫合糸部分と係合させる工程と、
前記少なくとも1つの針を、遠位から近位方向に後退させ、前記縫合糸部分を前記開口部を通して近位方向に引っ張る工程と、
前記アームをその第1の位置に後退させる工程と
を有する方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのアームをその第2の位置からその第1の位置に戻すために第3の作動子を押下する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記針を、前記第2の作動子をその最初の位置に戻すことによって後退させる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記針が、その最初の位置に戻るようにばねにより付勢される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
針を前進させる方法であって、
押下することができる作動子を設ける工程と、
角度が付けられた表面を有する従動子を設ける工程であって、前記従動子が前記針と接続され、前記角度が付けられた表面が前記作動子の表面と係合可能である工程と、
前記針を前進させるために前記作動子を押下する工程であって、前記針によって移動する距離が、前記角度が付けられた表面の前記角度に比例する工程と
を有する方法。
【請求項34】
体における切開部を閉鎖する方法であって、
ハンドル部分及び細長い本体を有する縫合装置を提供する工程であって、前記細長い本体が、血管壁を通して挿入できるサイズの遠位端部分を有し、前記縫合装置が、縫合糸の端部を保持するための2つの展開可能な縫合糸アーム、及び前記縫合糸の前記端部を前記アームから掴むための2つの延長可能な針を有する工程と、
前記細長い本体を前記血管壁中の切開部を通り前進させる工程と、
前記血管内で前記縫合糸アームを展開するために、前記ハンドル部分上の第1の作動子を押下する工程と、
前記血管壁を通して前記針を延ばすために、前記ハンドル部分上の第2の作動子を押下して、前記縫合糸の前記端部を前記縫合糸アームから掴む工程と、
前記針を引き抜くために、また前記血管壁を通して前記縫合糸の端部を引っ張るために、前記第2の作動子を解放する工程と、
前記縫合糸アームを後退させるために前記第1の作動子を解放する工程と、
前記体から前記縫合装置を引き抜く工程と、
前記切開部を閉鎖するために前記縫合糸の前記端部を結紮する工程と
を含む方法。
【請求項35】
前記第1の作動子が、前記押下された位置に解放可能に固定可能である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第1の従動子部材が作動ロッドにより前記縫合糸アームに結合され、前記第1の作動子を押下することにより、前記第1の従動子部材を前記ハンドル部分内で長手方向に移動させて前記アームを展開する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
第2の従動子部材が前記針に結合され、前記第1の作動子を押下することにより、前記第2の従動子部材を前記ハンドル部分内で長手方向に移動させて前記針を延長させる、請求項34に記載の方法。
【請求項1】
細長い本体と、
前記細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームであって、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有するアームと、
遠位端を有し、前記細長い本体に対して移動するように取り付けられた針と、
前記細長い本体に取り付けられたハンドルであって、カム駆動する表面を有する作動子及びカム駆動される表面を有する従動子を有し、前記従動子が前記針を移動するように接続され、また前記カム駆動する表面及びカム駆動される表面が、前記作動子の移動に応じて相互作用をして前記従動子を駆動し、前記針を移動するハンドルと
を有する縫合装置。
【請求項2】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して少なくとも約35°で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して少なくとも約40°で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して約41°で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して35°〜45°の間で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して39°〜43°の間で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ハンドルが長手方向軸線を有し、前記カム駆動される表面の少なくとも一部分が、前記軸線に対して40°〜42°の間で傾斜している、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記カム駆動する表面が湾曲している、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ハンドルが第2の作動子を有し、該第2の作動子が、前記アームを移動するための第2の作動子の移動に応じて相互作用する、第2のカム駆動する表面及び第2のカム駆動される表面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記作動子が、前記ハンドルの長手方向軸線に対し、概ね直交する軸線回りに回転する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記細長い本体が、ガイド・ワイヤを受け入れるためのポートを含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
第2の針及び第2のアームを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記細長い本体が可撓性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記作動子を、指を用いて手動で後退させるための前記作動子上の指ループを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
細長い本体と、
前記細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームであって、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有するアームと、
遠位端を有し、前記細長い本体に対して移動するように取り付けられた針であって、前記針の前記遠位端が可動である針と、
前記細長い本体に取り付けられたハンドルであって、従動子の移動量と等しく前記針を移動させるように接続された作動子及び前記従動子を有するハンドルとを有し、
前記針を直接見ることなく前記針の前記移動量を監視できるように、前記従動子の移動量がユーザに視認できる縫合装置。
【請求項16】
前記ハンドルが透明な材料から構成されたハウジング部分を有し、前記従動子が前記透明な材料を通してユーザに視認できる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記針が前記作動子の移動に応じて開始位置から終了位置まで移動し、また前記ハンドルが、前記針が前記終了位置にあるときの前記従動子の位置を少なくとも示す標識を含む、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記標識が、さらに、前記針が前記開始位置にあるときの前記従動子の位置を示す、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
細長い本体と、
前記細長い本体に対して移動するように取り付けられたアームであって、縫合糸の端部分を取り付けるための縫合糸取付け部分を有するアームと、
遠位端を有し、前記細長い本体に対して移動するように取り付けられた針と、
前記細長い本体に取り付けられたハンドルであって、カム駆動する表面を有する作動子及びカム駆動される表面を有する従動子を有し、前記従動子の遠位方向への移動が前記針を遠位方向に駆動し、また前記従動子の近位方向への移動が前記針を近位方向に駆動し、前記従動子が近位方向にばねで付勢され、前記作動子が移動範囲を有し、また、前記カム駆動する表面及びカム駆動される表面が相互作用して、前記従動子を、前記移動範囲の少なくとも実質的な部分の間で遠位方向に駆動するハンドルと
を有する縫合装置。
【請求項20】
前記作動子が第1の終了位置を有し、前記カム駆動される表面及びカム駆動する表面の前記相互作用が前記第1の終了位置で解放されて、前記ばねによる付勢が前記従動子を近位方向に駆動し、それにより、前記作動子を前記第1の終了位置から後退させることなく自動的に前記針を近位方向に後退させる、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記作動子が、前記ばねによる付勢がさらに前記針を後退させる第2の終了位置を有し、前記作動子及び前記従動子が、前記第1の終了位置に達した後の速度よりも前記第2の終了位置に達した後の速度の方が前記従動子を大幅に速く近位方向に駆動するように相対的に構成されている、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記作動子が、前記針がその移動範囲の遠位端にある終了位置を有し、前記作動子の前記終了位置からの後退に応じて、前記従動子の前記ばねによる付勢が前記針を近位方向に後退させる、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記従動子の前記ばねによる付勢が前記針を後退させることができなかった場合、前記従動子及び前記針を手動で後退させるための従動子後退部材を有する、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
開口部に縫合糸を適用する方法であって、
前記開口部中に細長い本体を挿入する工程と、
前記開口部の遠位側で、前記細長い本体から、縫合糸部分を保持する少なくとも1つのアームを延ばす工程と、
前記細長い本体から少なくとも1つの針を前進させて、前記開口部の近位側から前記開口部に隣接する組織を通り、前記少なくとも1つのアームにより保持された前記縫合糸部分と係合させる工程と、
前記少なくとも1つの針を遠位から近位方向に後退させて、前記縫合糸部分を前記開口部を通して近位方向に引っ張る工程とを有し、
前記針が、作動子を第1の位置から第2の位置へと移動させることによって前進させられ、またその第1の位置に後退させるように付勢されている方法。
【請求項25】
前記針を前進させるために前記作動子が押下される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記作動子をその第1の位置に戻るように解放することにより、前記針が後退する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
さらに前記作動子を押下することにより、前記針が自動的に後退する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記針が、その第1の位置に戻るようにばねにより付勢される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
開口部に縫合糸を適用する方法であって、
複数の作動子を有するハンドルに接続された細長い本体を前記開口部中に挿入する工程と、
少なくとも1つのアームを第1の位置から第2の位置に延ばすために第1の作動子を押下する工程であって、その第2の位置にある前記アームが、前記開口部の遠位側における前記細長い本体から延びており、前記少なくとも1つのアームが縫合糸部分を保持する工程と、
第2の作動子を押下して細長い本体から少なくとも1つの針を前進させて、前記開口部の近位側から前記開口部に隣接する組織を通り、前記少なくとも1つのアームにより保持された前記縫合糸部分と係合させる工程と、
前記少なくとも1つの針を、遠位から近位方向に後退させ、前記縫合糸部分を前記開口部を通して近位方向に引っ張る工程と、
前記アームをその第1の位置に後退させる工程と
を有する方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのアームをその第2の位置からその第1の位置に戻すために第3の作動子を押下する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記針を、前記第2の作動子をその最初の位置に戻すことによって後退させる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記針が、その最初の位置に戻るようにばねにより付勢される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
針を前進させる方法であって、
押下することができる作動子を設ける工程と、
角度が付けられた表面を有する従動子を設ける工程であって、前記従動子が前記針と接続され、前記角度が付けられた表面が前記作動子の表面と係合可能である工程と、
前記針を前進させるために前記作動子を押下する工程であって、前記針によって移動する距離が、前記角度が付けられた表面の前記角度に比例する工程と
を有する方法。
【請求項34】
体における切開部を閉鎖する方法であって、
ハンドル部分及び細長い本体を有する縫合装置を提供する工程であって、前記細長い本体が、血管壁を通して挿入できるサイズの遠位端部分を有し、前記縫合装置が、縫合糸の端部を保持するための2つの展開可能な縫合糸アーム、及び前記縫合糸の前記端部を前記アームから掴むための2つの延長可能な針を有する工程と、
前記細長い本体を前記血管壁中の切開部を通り前進させる工程と、
前記血管内で前記縫合糸アームを展開するために、前記ハンドル部分上の第1の作動子を押下する工程と、
前記血管壁を通して前記針を延ばすために、前記ハンドル部分上の第2の作動子を押下して、前記縫合糸の前記端部を前記縫合糸アームから掴む工程と、
前記針を引き抜くために、また前記血管壁を通して前記縫合糸の端部を引っ張るために、前記第2の作動子を解放する工程と、
前記縫合糸アームを後退させるために前記第1の作動子を解放する工程と、
前記体から前記縫合装置を引き抜く工程と、
前記切開部を閉鎖するために前記縫合糸の前記端部を結紮する工程と
を含む方法。
【請求項35】
前記第1の作動子が、前記押下された位置に解放可能に固定可能である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
第1の従動子部材が作動ロッドにより前記縫合糸アームに結合され、前記第1の作動子を押下することにより、前記第1の従動子部材を前記ハンドル部分内で長手方向に移動させて前記アームを展開する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
第2の従動子部材が前記針に結合され、前記第1の作動子を押下することにより、前記第2の従動子部材を前記ハンドル部分内で長手方向に移動させて前記針を延長させる、請求項34に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公表番号】特表2008−514305(P2008−514305A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533759(P2007−533759)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/034801
【国際公開番号】WO2006/037039
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(599032305)スーチュラ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/034801
【国際公開番号】WO2006/037039
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(599032305)スーチュラ,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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