説明

縮合環芳香族化合物及びそれらを用いた有機発光素子

【課題】高効率で高輝度な光出力を有し、かつ耐久性のある有機発光素子を提供する。
【解決手段】陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成され、該有機化合物からなる層に、下記一般式[I]で示される縮合環芳香族化合物が少なくとも1種含有されることを特徴とする、有機発光素子。


(式[I]において、R1乃至R14は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基又はハロゲン原子を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合環芳香族化合物及びそれらを用いた有機発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、陽極と陰極との間に蛍光性有機化合物又は燐光性有機化合物を含む薄膜が挟持されている素子である。また、各電極から電子及び正孔を注入することにより、蛍光性化合物又は燐光性化合物の励起子を生成させ、この励起子が基底状態に戻る際に、有機発光素子は光を放射する。
【0003】
また、有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は、低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、発光デバイスの薄型・軽量化が可能であることが挙げられる。このことから、有機発光素子は広汎な用途への可能性が示唆されている。
【0004】
しかしながら、現状では更なる高輝度の光出力あるいは高変換効率が必要である。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気等による劣化等の耐久性の面で未だ多くの問題がある。さらにはフルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合、色純度の良い青、緑、赤の発光が必要となるが、これらの問題に関してもまだ十分に解決したとは言えない。
【0005】
上述した課題を解決する方法の一つとして、五員環構造を含む比較的大きい縮合環芳香族化合物を有機発光素子の材料として使用することが提案されている。このような縮合環芳香族化合物及びそれらを用いた有機発光素子については、例えば、特許文献1乃至4において開示されているものが挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−330295号公報
【特許文献2】特開2002−170681号公報
【特許文献3】特開2002−110356号公報
【特許文献4】特開平11−176573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、新規な縮合環芳香族化合物を提供することにある。また本発明の他の目的は、高効率で高輝度な光出力を有し、かつ耐久性のある有機発光素子を提供することにある。さらに本発明の他の目的は、製造が容易でかつ比較的安価に作製可能な有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の縮合環芳香族化合物は、下記一般式[I]で示されることを特徴とする。
【0009】
【化1】

(式[I]において、R1乃至R14は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基又はハロゲン原子を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高効率で高輝度な光出力を有し、かつ耐久性のある有機発光素子を提供することができる。即ち、本発明の縮合環芳香族化合物を発光層のホスト又はゲストに用いた有機発光素子は、高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れている。
【0011】
また、本発明によれば、製造が容易でかつ比較的安価に作製可能な有機発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明の縮合環芳香族化合物について説明する。本発明の縮合環芳香族化合物は、下記一般式[I]で示される化合物である。
【0014】
【化2】

【0015】
式[I]において、R1乃至R14は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基又はハロゲン原子を表す。
【0016】
1乃至R14で表されるアルキル基として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、ターシャリーブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0017】
1乃至R14で表されるアラルキル基として、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0018】
1乃至R14で表されるアリール基として、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ナフチル基、フルオランテニル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基等が挙げられる。
【0019】
1乃至R14で表される複素環基として、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ターチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
【0020】
1乃至R14で表される置換アミノ基として、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等が挙げられる。
【0021】
1乃至R14で表されるハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0022】
上記のアラルキル基、アリール基及び複素環基がさらに有してもよい置換基として、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基等の複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基等の置換アミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基等のアルコキシル基、フェノキシル基等のアリールオキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。
【0023】
本発明の縮合環芳香族化合物を製造する方法については特に制限はないが、例えば、以下に示す方法によって製造することができる。
【0024】
【化3】

【0025】
この方法で本発明の縮合環芳香族化合物を製造するときには、中間体2及び中間体5の安定性の観点から、好ましくは、一般式[I]中のR2,R7,R10及びR13に相当する置換基が、置換あるいは無置換のアリール基とする。
【0026】
また、本発明の縮合環芳香族化合物は、主骨格となる縮合環が比較的大きいので、有機発光素子の構成材料、特に、発光材料として用いる場合は、発光材料の濃度消光を抑制するために、立体障害の大きい置換基を有しているのが好ましい。
【0027】
以下、本発明に用いられる有機化合物の具体的な構造式を下記に示す。但し、これらは代表例を例示しただけで、本発明は、これに限定されるものではない。
【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
次に、本発明の有機発光素子について詳細に説明する。
【0037】
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成される。本発明の有機発光素子は、好ましくは、該陽極と該陰極との間に電圧を印加することにより発光することを特徴とする。
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の有機発光素子について詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。図1の有機発光素子10は、基板1上に陽極2、発光層3及び陰極4が順次設けられている。この有機発光素子10は、発光層3が、正孔輸送能、電子輸送能及び発光性の性能を全て有する有機化合物で構成されている場合に有用である。また、正孔輸送能、電子輸送能及び発光性の性能のいずれかの特性を有する有機化合物を混合して構成される場合にも有用である。
【0040】
図2は、本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。図2の有機発光素子20は、基板1上に陽極2、正孔輸送層5、電子輸送層6及び陰極4が順次設けられている。この有機発光素子20は、正孔輸送性及び電子輸送性のいずれかを備える発光性の有機化合物と電子輸送性のみ又は正孔輸送性のみを備える有機化合物とを組み合わせて用いる場合に有用である。また、有機発光素子20は、正孔輸送層5又は電子輸送層6が発光層を兼ねている。
【0041】
図3は、本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。図3の有機発光素子30は、図2の有機発光素子20において、正孔輸送層5と電子輸送層6との間に発光層3を挿入したものである。この有機発光素子30は、キャリア輸送と発光の機能を分離したものでああり、正孔輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した有機化合物を適宜組み合わせて用いることができる。このため、極めて材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の化合物が使用することができるので、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3に各キャリアあるいは励起子を有効に閉じこめて有機発光素子30の発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0042】
図4は、本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。図4の有機発光素子40は、図3の有機発光素子30において、陽極2と正孔輸送層5との間に正孔注入層7を設けたものである。この有機発光素子40は、正孔注入層7を設けたことにより、陽極2と正孔輸送層5との間の密着性又は正孔の注入性が改善されるので、低電圧化に効果的である。
【0043】
図5は、本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。図5の有機発光素子50は、図3の有機発光素子30において、正孔あるいは励起子(エキシトン)を陰極4側に抜けることを阻害する層(正孔/エキシトンブロッキング層8)を、発光層3と電子輸送層6との間に挿入したものである。イオン化ポテンシャルの非常に高い有機化合物を正孔/エキシトンブロッキング層8として用いることにより、有機発光素子50の発光効率が向上する。
【0044】
図6は、本発明の有機発光素子における第六の実施形態を示す断面図である。図6の有機発光素子60は、図4の有機発光素子40において、正孔/エキシトンブロッキング層8を、発光層3と電子輸送層6との間に挿入したものである。イオン化ポテンシャルの非常に高い化合物を正孔ブロッキング層8として用いることにより、有機発光素子60の発光効率が向上する。
【0045】
ただし、図1乃至図6はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の縮合環芳香族化合物を用いた有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層、接着層又は干渉層を設ける、正孔輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される、等の多様な層構成をとることができる。
【0046】
本発明の縮合環芳香族化合物は、従来の化合物に比べ発光性及び耐久性の優れた化合物であり、図1乃至図6のいずれの形態でも使用することができる。
【0047】
本発明の有機発光素子は、有機化合物からなる層に本発明の縮合環芳香族化合物が少なくとも1種類含まれる。ここで有機化合物からなる層とは、具体的には、図1乃至図6で示される発光層3、正孔輸送層5、電子輸送層6、正孔注入層7又は正孔/エキシトンブロッキング層8である。好ましくは、発光層3に本発明の縮合環芳香族化合物が含有される。尚、本発明の有機発光素子においては、本発明の縮合環芳香族化合物は、単一の層にのみ含有されていてもよいし、複数の層に含有されていてもよい。また、本発明の縮合環芳香族化合物は、一つの層につき1種類含有されていてもよいし、2種類以上含有されていてもよい。
【0048】
本発明の有機発光素子は、好ましくは、発光層3がホストとゲストとからなる。ここで本発明の縮合環芳香族化合物は、ホストとして使用されてもよいし、ゲストとして使用されてもよい。ここでゲストとは、有機発光素子の発光領域において、正孔と電子の再結合に応答して光を発する化合物をいい、発光領域を形成する物質(ホスト)に含有させるものである。
【0049】
発光層が、キャリア輸送性のホストとゲストとからなる場合、発光にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・正孔の輸送。
2.ホストの励起子生成。
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達。
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動。
【0050】
それぞれの過程における所望のエネルギー移動や発光は、さまざまな失活過程と競争でおこる。
【0051】
有機発光素子の発光効率を高めるためには、発光中心材料そのものの発光量子収率が大きいことは言うまでもない。しかしながら、ホスト−ホスト間、あるいはホスト−ゲスト間のエネルギー移動が如何に効率的にできるかも大きな問題となる。また、通電による発光劣化は今のところ原因は明らかではないが、少なくとも発光中心材料そのもの、又は、その周辺分子による発光材料の環境変化に関連したものと想定される。
【0052】
そこで本発明の縮合環芳香族化合物を、特に、発光層のゲストとして用いると、素子の発光効率が向上し、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さくなる。
【0053】
本発明の縮合環芳香族化合物をゲストとして用いる場合、その含有量としては、好ましくは、0.1重量%以上30重量%以下であり、濃度消光抑制の観点から、さらに好ましくは、0.1重量%以上15重量%以下である。
【0054】
一方、本発明の縮合環芳香族化合物をホストとして用いる場合、ゲストに特に制限は無く、所望する発光色等によってゲストを適宜用いることができる。また、必要に応じてゲストとなる発光材料の他に、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等を一緒ドープして使用することもできる。
【0055】
このように本発明の縮合環芳香族化合物は、有機化合物からなる層、特に、発光層を構成する材料として使用するものであるが、必要に応じ、発光層以外の層を構成する材料として用いることができる。例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、電子障壁層等を構成する材料として用いることができる。
【0056】
以上より、本発明の有機発光素子は、電子輸送層及び発光層の構成成分として、本発明の縮合環芳香族化合物を使用するものであるが、これまで知られている正孔輸送性化合物、発光性化合物、電子輸送性化合物等を必要に応じて一緒に使用することもできる。
【0057】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0058】
【化12】

【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
陽極材料としては仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム等の金属単体あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金が使用できる。酸化錫、酸化亜鉛、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物も使用できる。ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極材料は、1種を単独で使用してもよく、複数種を併用して使用することもできる。
【0063】
一方、陰極材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体又はこれら金属単体を複数組み合わせた合金が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化の利用も可能である。また、陰極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0064】
本発明の有機発光素子で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が使用できる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールすることも可能である。
【0065】
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層又は封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッソ樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0066】
本発明の有機発光素子において、一般式[I]で示される化合物を含有する層及び他の有機化合物を含有する層は、一般には真空蒸着法あるいは、適当な溶媒に溶解させて塗布法により薄膜を形成する。特に塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0067】
上記結着樹脂としては広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えば、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂は単独又は共重合体ポリマーとして、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0068】
本発明の有機発光素子においては、本発明の縮合環芳香族化合物を含む層を真空蒸着法や溶液塗布法により陽極及び陰極の間に形成する。本発明の縮合環芳香族化合物を含む層の膜厚は、好ましくは、10μm未満、より好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは、0.01μm以上0.5μm以下である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
実施例1[例示化合物No.A−4の合成]
【0071】
【化16】

【0072】
(1)中間体Aの合成
アルゴン置換した反応容器に、アセナフテン52.8g(0.34mol)、二硫化炭素4.5Lを加え、溶液を氷浴で0℃に冷却した。次に、この反応溶液にオキサリルブロマイド75.0g(0.35mol)を加えた後、無水のアルミニウムブロマイド187.5g(0.70mol)をゆっくり加え、1時間攪拌を行った。次に、反応溶液を室温まで戻した後、デカンテーションで二硫化炭素を除去した。次に、氷浴下で10%HCl溶液を3L加え、2時間攪拌した。この後溶液をろ過し、得られた固体についてメタノール、イソプロピルエーテルで順次洗浄することで、茶色の固体を得た。この固体をクロロホルムに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製した後、クロロホルムで再結晶を行うことにより、中間体Aを16.4g(78.8mmol、収率23%)得た。
【0073】
(2)中間体Bの合成
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体A:10.0g(48mmol)
エタノール:150ml
トルエン:15ml
【0074】
次に、この反応溶液に、1,3−ジフェニル−2−プロパノン10.0g(48mmol)を加えた後、6NのKOH水溶液20mlをゆっくり滴下した。次に、反応溶液を80℃のオイルバスで15分間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻し、少量の水を加えてろ過し、得られた結晶を水、メタノール、イソプロピルエーテルで順次洗浄を行った後、減圧乾燥することで、中間体Bを15.8g(41.4mmol、収率86%)得た。
【0075】
(3)中間体Cの合成
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
【0076】
中間体B:8.0g(21mmol)
1,2−ジクロロエタン:160ml
ベンゼンジアゾニウム−2−カルボキシレートハイドライド:4.0g(23mmol)
プロピレンオキシド:5.0g(83mmol)
【0077】
次に、反応溶液を、80℃のオイルバスで1時間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻した後、溶媒を減圧留去することにより、茶色の固体を得た。この固体をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=1/2)で精製した後、クロロホルム/エタノールで再結晶を行うことにより、中間体Cを7.0g(15.6mmol、収率75%)得た。
【0078】
(4)中間体Dの合成
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体C:5.0g(12mmol)
クロロベンゼン:260ml
ベンゼンセレニニックアンハイドライド(純度70%、Aldrich社製):8.5g(23mmol)
【0079】
次に、反応液を135℃のオイルバスで12時間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻した後、溶媒を減圧留去することにより、赤茶色固体を得た。この固体をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン=1/5)で精製することにより、中間体Dを4.9g(10.8mmol、収率90%)得た。
【0080】
(5)中間体Eの合成
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体D:4.0g(7.0mmol)
エタノール:50ml
トルエン:5ml
【0081】
次に、この反応溶液に、1,3−ジフェニル−2−プロパノン2.0g(7.0mmol)を加えた後、6NのKOH水溶液4mlをゆっくり滴下した。次に、反応溶液を80℃のオイルバスで30分間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻し、少量の水を加えてろ過し、得られた結晶を水、メタノール、イソプロピルエーテルで順次洗浄を行った。この後、洗浄した結晶を減圧乾燥することにより、中間体Eを4.0g(5.0mmol、収率71%)得た。
【0082】
(6)例示化合物No.A−4の合成
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体E:2.0g(3.2mmol)
キシレン:30ml
ノルボルナン−2,5―ジエン:0.9g(10mmol)
【0083】
次に、反応溶液を130℃のオイルバスで40時間加熱した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻した後、ろ過を行うことで、茶色の固体を得た。この固体を、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製を行った後、昇華精製を行うことにより、例示化合物No.A−4を1.26g(2.0mmol、収率63%)得た。
【0084】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)によりこの化合物のM+である630.2を確認した。
【0085】
また、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。
【0086】
1H−NMR(CDCl3,500MHz) σ(ppm):7.62−7.52(m,10H),7.51−7.42(m,12H),7.29(m,2H),7.11(s,2H),6.78(d,2H),6.16(d,2H)。
【0087】
実施例2[例示化合物No.B−7の合成]
【0088】
【化17】

【0089】
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体E:2.0g(3.2mmol)
キシレン:30ml
エチニルベンゼン:0.33g(3.2mmol)
【0090】
次に、反応溶液を130℃のオイルバスで8時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻した後、ろ過を行うことで、茶色の固体を得た。この固体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製を行った後、昇華精製を行うことにより、例示化合物No.B−7を1.62g(2.3mmol、収率72%)得た。
【0091】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)によりこの化合物のM+である706.3を確認した。
【0092】
また、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。
【0093】
1H−NMR(CDCl3,500MHz) σ(ppm):7.62−7.52(m,8H),7.51−7.42(m,9H),7.29(m,7H),7.14(m,6H),6.85(d,1H),6.25(d,1H),6.17(m,1H),6.12(s,1H)。
【0094】
実施例3[例示化合物No.B−8の合成]
【0095】
【化18】

【0096】
反応容器に以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体E:2.0g(3.2mmol)
キシレン:30ml
ジフェニルアセチレン:0.57g(3.2mmol)
【0097】
次に、反応溶液を130℃のオイルバスで40時間加熱撹拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻した後、ろ過を行い、茶色の固体を得た。次に、この固体をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製を行った後、昇華精製を行うことにより、例示化合物No.B−8を1.75g(2.2mmol、収率70%)得た。
【0098】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)によりこの化合物のM+である782.3を確認した。
【0099】
また、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。
【0100】
1H−NMR(CDCl3,500MHz) σ(ppm):7.62−7.52(m,6H),7.51−7.42(m,6H),7.29(m,2H),7.11(m,10H),6.84(m,10H),6.17(d,2H),6.11(d,2H)。
実施例4[例示化合物No.C−20の合成]
【0101】
【化19】

【0102】
(1)中間体Fの合成
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体D:4.0g(7.0mmol)
エタノール:50ml
トルエン:5ml
【0103】
次に、1,3−ビス(3,5−ジターシャリーブチルフェニル)プロパン−2−オンを3.0g(7.0mmol)加えた後、6NのKOH水溶液4mlをゆっくり滴下した。次に、反応溶液を80℃のオイルバスで30分間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻し、少量の水を加えてろ過した。次に、得られた結晶を水、メタノール、イソプロピルエーテルで順次洗浄を行った後、減圧乾燥することにより、中間体Fを4.0g(4.9mmol、収率70%)得た。
【0104】
(2)例示化合物No.C−20の合成
反応容器に、以下の試薬、溶媒を仕込んだ。
中間体F:2.0g(2.3mmol)
キシレン:20ml
ノルボルナン−2,5―ジエン:0.9g(10mmol)
【0105】
次に、反応溶液を130℃のオイルバスで40時間加熱した。反応終了後、反応溶液を室温まで戻した後、ろ過を行い、茶色の固体を得た。この固体を、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製を行った後、昇華精製を行うことにより、例示化合物No.C−20を1.28g(1.5mmol、収率66%)得た。
【0106】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)によりこの化合物のM+である854.5を確認した。
【0107】
また、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。
【0108】
1H−NMR(CDCl3,500MHz) σ(ppm):7.61−7.52(m,6H),7.51−7.42(m,8H),7.45(d,4H),7.29(m,2H),7.17(s,2H),6.85(d,2H),6.12(d,2H),1.36(s,36H)。
【0109】
実施例5[有機発光素子の作製]
図3に示す有機発光素子を、以下に示す方法により作製した。
【0110】
まずガラス基板(基板1)上に、陽極2として酸化錫インジウム(ITO)を、スパッタ法にて膜厚120nmで成膜した。次に、この基板をアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いでIPAで煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾンで洗浄した。このようにして処理した基板を透明導電性支持基板として使用した。
【0111】
次に、透明導電性支持基板上に、下記に示される化合物1のクロロホルム溶液をスピンコート法により20nmの膜厚で成膜して正孔輸送層5を形成した。
【0112】
【化20】

【0113】
次に、他の有機層及び電極層を10-5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着して連続製膜して、素子を作製した。
【0114】
具体的には、まず発光層3として、ホストである下記に示す化合物2とゲストである例示化合物No.A−4を、化合物2と例示化合物No.A−4の重量濃度比が98:2となるように共蒸着した。このとき発光層3の膜厚は20nmとした。次に、電子輸送層6として、下記に示す化合物3を膜厚30nmで成膜した。次に、第一の金属電極層として、LiFを膜厚0.5nmで成膜した。最後に、第二の金属電極層として、Alを膜厚150nmで成膜した。上記の第一の金属電極層(LiF膜)及び第二の金属電極層(Al膜)は陰極4として機能する。以上のようにして、有機発光素子を得た。
【0115】
【化21】

【0116】
本実施例の有機発光素子に6.0Vの電圧を印加したところ、緑色の発光が観測された。さらに、この素子に窒素雰囲気下で連続通電を行ったところ、100時間連続して通電しても安定した発光が得られた。
【0117】
実施例6
実施例5において、発光層3のゲストとして、例示化合物No.A−4の代わりに例示化合物No.B−7を使用し、ホストとゲストの重量濃度比が90:10となるようにして発光層3を形成した以外は、実施例5と同様の方法により素子を作製した。
【0118】
本実施例の有機発光素子は6.0Vの印加電圧をかけたところ、黄緑色の発光が観測された。さらに、この素子に窒素雰囲気下で連続通電を行ったところ、100時間連続して通電しても安定した発光が得られた。
【0119】
実施例7
実施例5において、発光層3のゲストとして、例示化合物No.A−4の代わりに例示化合物No.B−8を使用し、ホストとゲストの重量濃度比が85:15となるようにして発光層3を形成した以外は、実施例5と同様の方法により素子を作製した。
【0120】
本実施例の有機発光素子は6.0Vの印加電圧をかけたところ、黄緑色の発光が観測された。さらに、この素子に窒素雰囲気下で連続通電を行ったところ、100時間連続して通電しても安定した発光が得られた。
実施例8
実施例5において、発光層3のゲストとして、例示化合物No.A−4の代わりに例示化合物No.C−20を使用し、ホストとゲストの重量濃度比が90:10となるようにして発光層3を形成した以外は、実施例5と同様の方法により素子を作製した。
【0121】
本実施例の有機発光素子は6.0Vの印加電圧をかけたところ、緑色の発光が観測された。さらに、この素子に窒素雰囲気下で連続通電を行ったところ、100時間連続して通電しても安定した発光が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の有機発光素子における第六の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 正孔輸送層
6 電子輸送層
7 正孔注入層
8 正孔/エキシトンブロッキング層
10,20,30,40,50,60 有機発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]で示されることを特徴とする、縮合環芳香族化合物。
【化1】

(式[I]において、R1乃至R14は、それぞれ水素原子、アルキル基、置換あるいは無置換のアラルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換アミノ基又はハロゲン原子を表す。)
【請求項2】
前記R2,R7,R10及びR13が、置換あるいは無置換のアリール基であることを特徴とする、請求項1記載の縮合環芳香族化合物。
【請求項3】
陽極と陰極と、
該陽極と該陰極との間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成され、
該有機化合物からなる層に、請求項1又は2に記載の縮合環芳香族化合物が少なくとも1種類含まれることを特徴とする、有機発光素子。
【請求項4】
前記縮合環芳香族化合物が発光層に含有されることを特徴とする、請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記発光層がゲストとホストとからなり、前記縮合環芳香族化合物がゲストであることを特徴とする、請求項3又は4記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより発光することを特徴とする、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285450(P2008−285450A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133848(P2007−133848)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】