説明

縮毛矯正処理方法

【課題】 処理後の毛髪における仕上がり時の感触を良好にでき、また、経日的な感触の低下を抑制できる縮毛矯正処理方法を提供する。
【解決手段】 還元剤およびアルカリ剤が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とで構成される縮毛矯正用剤を用い、前記第1剤を毛髪に塗布する工程と、前記毛髪を洗浄する工程と、洗浄後の前記毛髪に前記第2剤を塗布する工程とを有する縮毛矯正処理方法であって、前記第1剤を塗布した毛髪を洗浄する工程では、前記毛髪に対して、流水による洗浄を行い、その後溜めすすぎを行うことを特徴とする縮毛矯正処理方法により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤およびアルカリ剤が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とで構成される縮毛矯正用剤を用いる縮毛矯正処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、縮毛をストレートに矯正する美容方法として、還元剤およびアルカリ剤が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とで構成される縮毛矯正用剤を使用した縮毛矯正処理方法が知られている。例えば、非特許文献1には、種々のメーカーが発売している縮毛矯正用剤が列挙されており、また、縮毛のタイプ別の矯正処理方法が記載されている。
【0003】
ところで、毛髪には、縮毛矯正によって、根元の折れや毛先部分のハレーション(毛髪が細かくちりちりになる現象)、感触の低下[例えば、硬さが生じたり、経日的な感触低下(ゴワつき、パサつき)が生じるなど]などのトラブルが生じてしまうことがある。
【0004】
よって、前記のようなトラブルを防ぐために様々な検証がなされており、こうした検証結果が美容雑誌などに特集されている(例えば、非特許文献2)。このような文献では、縮毛矯正処理の前に縮毛に施す前処理剤や縮毛矯正用剤の第1剤などの薬剤の選定、これらの薬剤の塗布方法、縮毛の矯正に利用されるアイロンの操作方法について主に言及しており、縮毛矯正処理におけるこれらの工程での改良が、前記のトラブルを回避するに当たって有効であると認知されている。特に縮毛の矯正に利用されるアイロンの操作方法については、処理後の毛髪の仕上がりに与える影響が大きいことから、その使用方法の詳細が美容雑誌に紹介されている。
【0005】
【非特許文献1】marcel,2003年8月,114号,p.26〜31,38〜42
【非特許文献2】marcel,2007年6月,160号,p.10〜15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その一方で、縮毛矯正処理における前記の各工程以外の工程については、前記のようなトラブル回避の観点からは、あまり検討がなされていない。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、処理後の毛髪における仕上がり時の感触を良好にでき、また、経日的な感触の低下を抑制できる縮毛矯正処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成し得た本発明の縮毛矯正処理方法は、還元剤およびアルカリ剤が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とで構成される縮毛矯正用剤を用い、前記第1剤を毛髪に塗布する工程と、前記毛髪を洗浄する工程と、洗浄後の前記毛髪に前記第2剤を塗布する工程とを有する処理方法であって、前記第1剤を塗布した毛髪を洗浄する工程において、前記毛髪に対して、流水による洗浄を行い、その後溜めすすぎを行うことを特徴とする。なお、本発明でいう「溜めすすぎ」とは、毛髪量に対して十分な量の水をはった槽(例えばシャンプー台)の中で毛髪をすすぐことを意味している。
【0009】
縮毛矯正用剤には、例えば、仕上がり時の毛髪の感触を向上させ得るような成分(各種界面活性剤など)を添加することが行われることもあり、このような縮毛矯正用剤を使用することで仕上がり時の毛髪の感触をある程度良好にすることができる。しかし、こうした処理後の毛髪の感触を向上させ得る成分を配合した縮毛矯正用剤を使用していても、仕上がり時の毛髪の感触が低下したり、経日的に毛髪の感触が低下したりすることがある。
【0010】
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ね、第1剤を塗布した毛髪を、まず流水で洗浄して、第1剤を毛髪から除去し、その後更に毛髪を溜めすすぎすることで、前記の問題を解消して、処理後の毛髪について、仕上がり時の感触を良好にし、かつ経日的な感触の低下を抑制することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
なお、本発明法によって前記の効果を確保できるメカニズムについては、必ずしも定かではないが、以下の(a)および(b)のようではないかと本発明者らは考えている。
【0012】
(a)従来の縮毛矯正処理では、縮毛矯正用剤の第1剤を塗布した後の毛髪を、流水によって洗浄することが通常であるが、このような洗浄後の毛髪には、まだ第1剤中の還元剤やアルカリ剤が多く残存しており、これらが仕上がり時の毛髪の感触を低下させたり、更に経日的な毛髪の感触低下を引き起こしたりしていると考えられる。
【0013】
これに対し、本発明法では、流水による洗浄に続いて溜めすすぎを行うことで、第1剤を塗布した毛髪から、還元剤やアルカリ剤をより良好に除去できており、還元剤やアルカリ剤の残留による仕上がり時の毛髪の感触低下および経日的な毛髪の感触低下を抑制できていると推測される。
【0014】
(b)毛髪を「K−S−S−K」(「−S−S−」は毛髪を構成するケラチン繊維中のジスルフィド結合で、「K」はケラチン分子鎖を意味している)で表し、還元剤(メルカプタン)を「R−SH」(「−SH」はメルカプト基を意味している)で表すとき、縮毛矯正用剤の第1剤を使用することで下記(1)式および(2)式の反応が生じる。
【0015】
【化1】

【0016】
還元剤によるケラチン繊維中のジスルフィド結合の開裂が、前記(1)式および(2)式に示すような2段階の求核置換反応で進行し、これにより毛髪を変形させることができるようになる。ここで、前記(2)式中の「K−S−S−R」で示される混合ジスルフィドが毛髪中に残存していると、立体障害によってケラチン鎖間が広がり、更にこの混合ジスルフィドが水を配位するため、毛髪が膨張しやすくなり、その結果、整髪用アイロンによる処理を行った際に不均一な過収縮が生じて、毛髪のダメージが大きくなると考えられる。
【0017】
よって、縮毛矯正処理においては、前記の混合ジスルフィドを効率的に「K−SH」に変えることが、仕上がり時の毛髪の感触向上や経日的な毛髪の感触低下の抑制する上で有効であると考えられる。そのためには、前記(2)式において、平衡反応を右辺側に進めることが好ましい。例えば、前記(2)式の左辺における還元剤「R−SH」と、右辺におけるジチオジグリコール酸「R−S−S−R」との水への溶解性を比較すると、ジチオジグリコール酸の方が高い。よって、縮毛矯正用剤の第1剤を塗布した後の縮毛において、ジチオグリコール酸を水を用いて積極的に除去すれば、前記(2)式の反応が右辺側へ進み、前記混合ジスルフィド量が減少するため、これによる問題を回避できると考えられる。
【0018】
従来の縮毛矯正処理における洗浄方法(第1剤を塗布した後の縮毛を、流水によって洗浄する方法)では、前記(2)式の右辺におけるジチオジグリコール酸を十分に除去できておらず、その結果前記(2)式の左辺における混合ジスルフィドが、特に毛髪の既矯正部に多く残存していると考えられる。
【0019】
これに対し、本発明法では、流水による洗浄に続いて溜めすすぎを行うことで、第1剤を塗布した縮毛から、前記(2)式の右辺におけるジチオジグリコール酸を効率的に除去できていると考えられ、これにより、前記(2)式で示す反応を右辺側に進めて、処理後の毛髪の感触低下の原因となる混合ジスルフィド量の低減を達成できていると推測される。
【0020】
なお、本発明法により処理される毛髪は、所謂「縮毛」であり、この縮毛には、一般に「くせ毛」と称されるもの(縮れたような毛髪やウェーブが混じりあった毛髪、髪全体が波打っている毛髪)の他、「くせ毛」ではないが、おさまりが悪い毛髪も含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、処理後の毛髪における仕上がり時の感触を良好にでき、また、経日的な感触の低下を抑制できる縮毛矯正処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明法は、少なくとも還元剤およびアルカリ剤が配合された第1剤と、少なくとも酸化剤が配合された第2剤とで構成される縮毛矯正用剤を用いる方法であり、前記第1剤を毛髪に塗布する工程(A)、前記毛髪を洗浄する工程(B)、および洗浄後の前記毛髪に前記第2剤を塗布する工程(C)を有している。
【0023】
工程(A)では、縮毛矯正用剤の第1剤を毛髪に塗布し、ある程度の時間放置する。この工程では毛髪が十分に軟化すればよく、第1剤については、処理する毛髪(縮毛)の特徴(くせの強さやダメージ。以下、同じ。)に応じて要求される還元力を有するものを適宜選択すればよい。
【0024】
第1剤の有する還元剤としては、毛髪中のタンパク質であるケラチンを還元する能力のあるものであれば特に制限はなく、例えば、チオグリコール酸やその誘導体およびそれらの塩(アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩など)、システインやその誘導体およびそれらの塩(塩酸塩など)、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩など、メルカプト基を有する種々の還元剤が挙げられる。これらの還元剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
第1剤における還元剤の配合量は、チオグリコール酸換算値で、1〜13質量%程度であることが好ましい。なお、ここでいう第1剤における還元剤の配合量に係る「チオグリコール酸換算値」は、パーマネント・ウェーブ工業組合から発行されている「パーマネント・ウェーブ用剤製造(輸入)承認基準」の「[別添]パーマネント・ウェーブ用剤品質規格」の「1.チオグリコール酸又はその塩類を有効成分とするコールド二溶式パーマネント・ウェーブ用剤」における「(1)第1剤」に記載の「(ウ)酸性煮沸後の還元性物質」に定められている手法によって求められる「酸性煮沸後の還元性物質の含有率(チオグリコール酸として)(%)」である。
【0026】
第1剤におけるアルカリ剤としては、アルカリ能を有するものであれば特に制限はなく、例えば、アンモニア、アミン類、中性塩タイプのアルカリ剤、塩基性アミノ酸などが挙げられる。アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミンなどが挙げられる。また、中性塩タイプのアルカリ剤としては、例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素アンモニウムなどが挙げられる。塩基性アミノ酸としては、例えば、リジン、アルギニンが挙げられる。これらのアルカリ剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。第1剤におけるアルカリ剤の配合量は、0.01〜20質量%であることが好ましい。
【0027】
更に、第1剤には、反応調整剤としてジチオジグリコール酸類[ジチオジグリコール酸や、ジチオジグリコール酸の塩(ジアンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩など)]のが通常配合される。第1剤におけるジチオジグリコール酸類の含有量(配合量)は、0.1〜4質量%であることが好ましい。
【0028】
第1剤は、例えば、クリーム状、ローション状、ゲル状などの形態とすることができる。
【0029】
第1剤は、水を主たる分散媒とする。なお、前記の各種成分の一部は、水に溶解していてもよい。また、分散媒は、その全てが水であってもよく、低級アルコール(エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を含有していてもよい。ただし、分散媒中の有機溶媒量が増大すると、頭皮に刺激を与える虞があることから、分散媒中における有機溶媒の含有量は、例えば、5質量%以下であることが好ましい。また、第1剤における分散媒の配合量は、例えば、40〜98質量%であることが好ましい。
【0030】
更に、第1剤には、前記の各成分以外にも、従来公知の毛髪化粧料などに添加されている油性成分、界面活性剤、キレート剤、香料、抗炎症剤などの各種成分を添加することもできる。
【0031】
縮毛に第1剤を塗布した後の放置時間は、使用する第1剤の還元力や処理する毛髪(縮毛)の特徴に応じて適宜選択すればよいが、通常、5〜30分程度である。また、第1剤を塗布した毛髪に、ストレート形状を付与するためにコーミングなどを行ってから、前記の放置を行うことが好ましい。
【0032】
また、第1剤を塗布する前の毛髪に前処理剤を塗布して前処理を行ってもよい。このような前処理剤としては、例えば、第1剤によるダメージから毛髪を保護するための毛髪保護剤や、第1剤によってダメージを受ける毛髪を補修するための毛髪補修剤などが挙げられる。毛髪に塗布した前処理剤は、第1剤の塗布に先立って洗い流してもよく、洗い流さなくてもよい。例えば、縮毛矯正処理を繰り返し施している毛髪の場合、毛先部分ではダメージ度合いが大きく還元剤が反応しやすいため、こうした部分での還元反応をある程度抑制する目的で、前記の前処理剤を洗い流すことなく第1剤を塗布すると効果的である。
【0033】
次の工程(B)では、第1剤を塗布した毛髪を洗浄する。毛髪を洗浄するに当たっては、まず流水で毛髪を洗い流して毛髪から第1剤を除去した後、溜めすすぎを行う。
【0034】
流水を用いて毛髪から第1剤を除去する方法としては特に制限はなく、常法に従えば良いが、毛髪の根元部分の折れを防止するためにも、特に根元部分に第1剤が残らないように十分に水洗することが好ましい。流水による洗浄の時間は毛髪の長さや量によって多少の変動があるが、1〜2分程度とすることが通常である。また、使用する流水の温度についても常法に従えばよく、例えば、常温(20℃程度)以上45℃以下程度であればよい。
【0035】
続いて、溜めすすぎにより毛髪を洗浄する。溜めすすぎに使用する水の量は、通常、握りこぶし1つ分程度以上の深さがあればよく、使用する槽(シャンプー台など)の形状や大きさにもよるが、例えば、3リットル以上であることが好ましく、4リットル以上であることがより好ましい。
【0036】
また、溜めすすぎの時間は、溜めすすぎによる効果をより確実に確保するには、例えば、1分以上であることが好ましく、2分以上であることがより好ましい。ただし、溜めすすぎの時間を長くしすぎても効果が飽和するので、その時間は、例えば、5分以下とすることが好ましく、3分以下とすることがより好ましい。また、溜めすすぎに使用する水の温度についても常法に従えばよく、例えば、常温(20℃程度)以上45℃以下程度であればよい。
【0037】
なお、(B)工程の溜めすすぎの後は、毛髪を乾燥させてから、次の(C)工程の処理を行うことが好ましい。
【0038】
(C)工程では、毛髪に縮毛矯正用剤の第2剤を塗布し、ある程度の時間放置する。縮毛矯正用剤の第2剤は、少なくとも酸化剤が配合されたものである。
【0039】
酸化剤には、従来公知の縮毛矯正用剤に使用されている酸化剤が使用でき、例えば、過酸化水素、臭素酸ナトリウムなどが挙げられる。第2剤における酸化剤の配合量は、過酸化水素の場合には、例えば、1〜2質量%であることが好ましく、臭素酸ナトリウムの場合には、例えば、好ましくは5〜10質量%であることが好ましい。
【0040】
第2剤は、クリーム状、ローション状、ゲル状などの形態とすることができる。
【0041】
また、第2剤も、第1剤と同様に、水を主たる分散媒とする。分散媒には、水のみを使用してもよく、必要に応じて、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール(炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を、分散媒全量中5質量%以下程度の量で水と併用してもよい。また、第2剤における分散媒の配合量は、例えば、60〜98質量%であることが好ましい。
【0042】
更に、第2剤には、必要に応じて、従来公知の縮毛矯正用剤や、その他の毛髪用化粧料などに添加されている各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば、第1剤に使用可能な添加剤として例示した各種材料やpH調整剤が挙げられる。また、酸化剤に過酸化水素を用いるときは、公知の過酸化水素安定剤も添加することが好ましい。
【0043】
第2剤を毛髪に塗布した後の放置時間については特に制限はないが、通常、5〜15分程度である。また、第2剤を塗布した毛髪に、ストレート形状を付与するためにコーミングなどを行ってから、前記の放置を行うことが好ましい。
【0044】
(C)工程において第2剤を毛髪に塗布し放置した後は、毛髪から第2剤を流水などで洗い流し、通常はその後にヘアコンディショナーのような後処理剤を毛髪に塗布して軽くすすぎ、乾燥させて仕上げる。
【0045】
なお、(B)工程による溜めすすぎの後に毛髪を乾燥させ、その後(C)工程に移る前に、整髪用アイロン(以下、単に「アイロン」という)によって矯正する工程を設けることが好ましい。このようなアイロンによる矯正工程を設けた場合には、従来の縮毛矯正処理方法であれば、仕上がり時の毛髪の感触低下や経日的な毛髪の感触低下が特に起こりやすいが、本発明法であれば、このような問題を良好に回避できる。
【0046】
アイロンを使用する場合には、その表面温度を、60℃以上、より好ましくは80℃以上であって、220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下とすることが望ましい。アイロンによる矯正処理としては、例えば、毛束を取り、根元から前記アイロンで挟み、順次毛先の方向へ処理していく方法が好ましい。また、毛髪を前記アイロンで挟む時間は3秒以下が好ましいなど、様々な処理ポイントが知られている。
【0047】
前記のアイロンとしては、表面を前記の温度に調節でき、フラットな面を有するものであれば特に限定されないが、例えば、「サーマルエフェクトアイロンCR(商品名)」、「サーマルエフェクトアイロンFS(商品名)」,「サーマルエフェクトアイロンGショート(商品名)」(いずれも、株式会社ミルボン製)を用いることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
【0049】
比較例1
4gの人毛毛束を用意し、10質量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥させた。その後、前記の毛束に、縮毛矯正用剤の第1剤[株式会社ミルボン製「リシオラルーチェH(商品名)」の第1剤]5gを塗布し、ストレート形状を保つようにコーミングし、その後20分間放置した。
【0050】
続いて、前記の毛束を洗浄した。洗浄は、流水ですすぐのみとした。
【0051】
次に、前記の毛束を乾燥させた後、この毛束に縮毛矯正用剤の第2剤[株式会社ミルボン製「リシオラルーチェH(商品名)」の第2剤]5gを塗布し、ストレート形状を保つようにコーミングし、その後5分間放置した。それから、毛束を洗い流して第2剤を除去し、乾燥させて仕上げた。
【0052】
比較例2
毛束に縮毛矯正用剤の第1剤を塗布し、流水ですすぐ洗浄を行い、十分に乾燥させた後に、180℃のアイロンによる矯正処理を行い、その後に縮毛矯正用剤の第2剤の塗布を行った以外は、比較例1と同様にして毛束に縮毛矯正処理を施した。
【0053】
実施例1
縮毛矯正用剤の第1剤を塗布した後の毛束を、流水ですすぎ、その後に2分間の溜めすすぎを行うことで洗浄した以外は、比較例1と同様にして毛束に縮毛矯正処理を施した。
【0054】
実施例2
縮毛矯正用剤の第1剤を塗布した後の毛束を、流水ですすぎ、その後に2分間の溜めすすぎを行うことで洗浄した以外は、比較例2と同様にして毛束に縮毛矯正処理を施した。
【0055】
実施例1〜2および比較例1〜2に係る縮毛矯正処理後の各毛束について、下記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
<毛髪のpH挙動測定>
前記の各毛束中の毛髪について、第1剤の塗布前、第1剤塗布後の流水での洗浄後、溜めすすぎ後(実施例1〜2に係る毛束のみ)、および仕上がり時(縮毛矯正処理完了後)のpH挙動を測定した。測定は、それぞれの時点での各毛束から毛髪0.06gを採取し、1cmの長さに切断して30mlのイオン交換水に浸漬し、30分後の前記イオン交換水のpHを測定することにより行った。
【0057】
<毛髪中の水分量>
縮毛矯正処理完了後の各毛束から10mgずつ採取して測定試料とし、これらの測定試料について、温度25℃、相対湿度50%の条件下で1週間調湿した後、三菱化学社製のカールフィッシャー水分計「CA−06型」を用いて水分量の測定を行った。
【0058】
<毛髪のやわらかさ評価>
各縮毛矯正処理完了後の毛束に係る毛髪のやわらかさについては、下記のねじり応力測定と官能評価とによって確認した。ねじり応力測定には、カトーテック社製のトルク感知式ねじり測定装置「KES−YN−1」を用いた。試料毛髪の長さを2cmとし、ねじり回転速度120°/秒、ねじり回転数±3回転の条件でねじり応力を測定した。なお、試料毛髪は、各毛束からランダムに選択したものを用いた。ねじり応力測定により得られる数値が小さいほど、毛髪はやわらかいといえる。
【0059】
毛髪のやわらかさの官能評価は、前記の各縮毛矯正処理後の毛束について、専門のパネラー10名が下記評価基準に従って点数付けし、全パネラーの点数を合計することにより行った。
とてもやわらかい ・・・+2
やわらかい ・・・+1
少しやわらかい ・・・ 0
【0060】
<シャンプー処理後の毛髪の状態評価>
経日的な毛髪の状態の変化を調べるために、縮毛矯正処理完了後の各毛束に対し、シャンプー、トリートメントおよびブロー仕上げを行う一連の操作を1サイクルとして、これを30サイクル行い、その後に前記の毛髪のやわらかさ評価(ねじり応力測定および官能評価)と同じ評価を実施した。すなわち、ここで評価している毛髪の状態は、縮毛矯正処理完了から1か月経過後の状態に相当する。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、縮毛矯正処理時の毛髪のpHは、第1剤塗布後の流水での洗浄後では、第1剤中のアルカリ剤の影響によって第1剤塗布前よりも高くなっているが、溜めすすぎを行った実施例1〜2においては、その溜めすすぎ後のpHが低くなっており、仕上がり時で見ると、溜めすすぎを実施していない比較例1〜2よりも実施例1〜2の方が、pHが低くなっている。これらのことから、第1剤を塗布した後の溜めすすぎによって、第1剤中の残存成分(少なくともアルカリ剤)が、より良好に除去できていると考えられる。
【0063】
また、実施例1〜2における毛束に係る毛髪は、比較例1〜2のものに比べて、水分量が高く、更にねじり応力が小さくやわらかであるといえ、しかも、やわらかさの官能評価での点数も高い。これらのことから、実施例1〜2における毛束に係る毛髪は、比較例1〜2のものに比べて、その状態がより良く、感触がより良好であると評価できる。
【0064】
そして、実施例1〜2における毛束に係る毛髪は、1か月のうちに毛髪が受ける処理を想定したシャンプー処理後においても、毛髪のやわらかさが維持されており、比較例1〜2のものに比べて経日的な感触の低下がより抑制されているといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤およびアルカリ剤が配合された第1剤と酸化剤が配合された第2剤とで構成される縮毛矯正用剤を用い、前記第1剤を毛髪に塗布する工程と、前記毛髪を洗浄する工程と、洗浄後の前記毛髪に前記第2剤を塗布する工程とを有する縮毛矯正処理方法であって、
前記第1剤を塗布した毛髪を洗浄する工程では、前記毛髪に対して、流水による洗浄を行い、その後溜めすすぎを行うことを特徴とする縮毛矯正処理方法。
【請求項2】
第1剤を塗布した毛髪を洗浄する工程と、洗浄後の前記毛髪に第2剤を塗布する工程との間に、毛髪を乾燥する工程と、乾燥後の前記毛髪を整髪用アイロンによって矯正する工程とを有する請求項1に記載の縮毛矯正処理方法。

【公開番号】特開2009−107936(P2009−107936A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278677(P2007−278677)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】