説明

繊維−ポリマー複合材料

本発明は、繊維−ポリマー複合材料心および管状金属導体を有する繊維−ポリマー複合材料で支持された導体である。管状金属導体は心上にある。導体の配置から生じる実質的にすべての機械張力は、繊維−ポリマー複合材料心によって支えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持された架空電力線に関する。具体的には、本発明は繊維−ポリマー複合材料で支持された架空電力線に関する。
【0002】
現在では、鋼心アルミ導体(ACSR)および鋼支持アルミ導体(ACSS)などの裸のアルミニウム導体架空電線は、これらの重量を支える鋼心を用いて構成される。この鋼心を置き換えるために繊維強化ポリマー複合材料が使用されてもよい。
【0003】
繊維強化ポリマー複合材料は、重量および強度に関して利点を提供することができる。一方で、ポリマー複合材料は、疲労耐性、ねじり強度、および表面フレッチング耐性に関しては欠点も有する。架空電線は60年を超える耐用年数をもつべきであるので、鋼心電線に対する代替品の有用性にとっては疲労、ねじり強度、および表面フレッチングの問題を解決することが決定的に重要である。
【0004】
疲労、ねじり、および表面フレッチング耐性に関連する欠点を克服する、繊維−ポリマー複合材料で支持されたアルミ導体架空電線を提供する必要性がある。加えて、繊維強化ポリマー複合材料心は、ASTM B 341/B 341M − 02を満たすに足る力学的性質を示し、かつ大きい伸びおよび高い弾性率をもつべきである。複合材料心は、高い温度耐性および高い破壊靭性ももつべきである。また、引抜成形に先立ってほぐれた連続繊維を特定の微細構造に予備成形することによって、引抜成形工程の複雑さを低減する必要性もある。さらには、鋼心をより軽くより強い合成材料(すなわち、より高い強度対重量比)で置き換えることが望ましい。
【0005】
アルミ導体の繊維−ポリマー複合材料支持体は架空の必要性に対処するに足るべきであるが、当業者であれば、この支持体の、海底光ファイバーケーブルを含む他の用途における有用性も容易に認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の繊維−ポリマー複合材料の微細構造を示す図である。微細構造は、心の長さ方向に整列した軸方向繊維と共に、軸方向繊維の周りに特定の螺旋角で編み上げた拠り合わせ繊維から成る。
【図2】繊維−ポリマー複合材料で支持されたアルミ導体を示す図である。
【0007】
本発明は、(a)繊維−ポリマー複合材料心および(b)管状金属導体を備える、繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体である。この管状金属導体は心上にあり、かつ周囲温度が導体上に氷および雪を堆積させると思われる温度を超える場合のすべての導体作動温度について、導体の頭上懸架配置から生じる実質的にすべての機械的張力が繊維−ポリマー複合材料心によって支えられており、管状金属導体は、結果的に任意の応力を支えるように求められた場合、代わりに、非弾性的に伸びて、かかる応力を繊維−ポリマー複合材料心に支えられるようにする、そのような組成および軟質性である。
【0008】
好ましくは、繊維−ポリマー複合材料心は、炭素繊維およびエポキシ樹脂を含む炭素繊維強化ポリマー組成物である。より好ましくは、炭素繊維は、約70重量パーセントから約90重量パーセントまでの間、より好ましくは、約75重量パーセントおよび約85重量パーセントの間、およびさらにより好ましくは約78重量パーセントおよび約85重量パーセントの間の量で存在すべきである。
【0009】
好ましくは、炭素繊維は、約80GPa以上の弾性係数を有することになろう。より好ましくは、弾性係数は、約120GPa以上となろう。さらに、炭素繊維は、好ましくは約1.5パーセントを超える最大破断伸びを有することになろう。
【0010】
エポキシ樹脂は、単一樹脂または2つ以上の樹脂の混合物であってよい。好ましくは、エポキシ樹脂は、約10重量パーセントおよび約30重量パーセントの間、より好ましくは、約15重量パーセントおよび約25重量パーセントの間、さらにより好ましくは、約15重量パーセントおよび約23重量パーセントの間の量で存在すべきである。好ましくは、エポキシ樹脂は熱硬化性エポキシ樹脂である。より好ましくは、この樹脂は約150℃よりも高いガラス転移温度を有する。
【0011】
さらに、炭素繊維強化ポリマー組成物は、チョップカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、またはその両方を含んでいてもよい。存在する場合、そのカーボンファイバーまたはカーボンナノチューブは、好ましくは約0.5重量パーセントから約10重量パーセントの間、より好ましくは、約1重量パーセントおよび7重量パーセントの間、およびさらにより好ましくは、約1重量パーセントおよび約5重量パーセントの間の量で存在する。
【0012】
炭素繊維強化ポリマー組成物は、硬化剤をさらに含んでいてもよい。存在する硬化剤の量は、組成物を調製するために使用されるエポキシの量および種類に依存するはずである。
【0013】
管状金属導体は、導電性金属から構成されることができる(The tubular metal conductor can be comprised on conductive metal.)。好ましくは、この金属導体は、アルミニウムである。より好ましくは、管状アルミニウム導体は、61パーセントIACS以上の電気伝導度を有する。
【0014】
本発明の代替の実施形態は、引抜成形工程に先立って、連続繊維を特定の微細構造に予備成形することになる。これらの微細構造は、心の長さ方向に整列している軸方向繊維と共に、軸方向繊維の周りに特定の螺旋角で編み上げた拠り合わせ繊維から成る。より大きい螺旋角は通常ねじり強度を増すと考えられている。
【0015】
好ましくは引抜成形工程の間に、チョップカーボンファイバーまたはナノチューブがエポキシ樹脂に加えられる。
【0016】
好ましくは、軸方向繊維の周りに編み上げた拠り合わせ繊維に対する軸方向繊維の比率は、約50%〜約95%の間にある。引張強度およびねじり/曲げ剛性の間でバランスを取るべきであると考えられる。したがって、この比率の増加は引張強度を増加させるが、複合材料心のねじり/曲げ強度を低下させると見こまれるので、この比率を選択するときには注意すべきであると考えられる。
【0017】
好ましくは、編み上げた繊維の螺旋角は、約15度から約55度の範囲内とすべきである。軸方向繊維と拠り合わせ繊維との比率と同様に、引張強度およびねじり/曲げ剛性の間でもバランスを取るべきであると考えられる。したがって、この角度の増加は引張強度を低下させるが、しかし複合材料心のねじり/曲げ強度を増加させるので、螺旋角を選択するときには注意すべきであると考えられる。
【0018】
もう1つの実施形態において、本発明は、(a)繊維−ポリマー複合材料心;(b)心上に収容され、かつすべての導体作動温度について、導体の懸架配置から生じる実質的にすべての機械張力が繊維−ポリマー複合材料心によって支えられており、管状導体は、結果的に任意の応力を支えるように求められた場合、代わりに、非弾性的に伸びて、かかる応力を繊維−ポリマー複合材料心に支えられるようにする、そのような組成および軟質性の管状導体を備える、繊維−ポリマー複合材料で支持された導体である。この管状導体は電力または情報を伝達する。
【0019】
さらにもう1つの実施形態において、本発明は、繊維−ポリマー複合材料心である。この複合材料は、1つまたは複数の編み上げた「マクロワイヤ」(macro-wires)から成る。この「マクロワイヤ」は予備成形工程後に四角形断面を有していても有していなくてもよい。好ましくは、「マクロワイヤ」は、円形型を通して引抜成形された場合、円形断面に一致することになろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)繊維−ポリマー複合材料心
(b)前記心上に収容され、かつ周囲温度が導体上に氷および雪を堆積させる温度を超える場合のすべての導体作動温度について、導体の頭上懸架配置から生じる実質的にすべての機械張力が繊維−ポリマー複合材料心によって支えられており、管状金属導体は、結果的に任意の応力を支えるように求められた場合、代わりに、非弾性的に伸びて、かかる応力を繊維−ポリマー複合材料心に支えられるようにする、そのような組成および軟質性の管状導体
を備える、繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体。
【請求項2】
繊維−ポリマー複合材料心が、微細構造に予備成形された連続繊維を含む、請求項1に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体。
【請求項3】
繊維−ポリマー複合材料心の繊維が、心の長さ方向に軸方向整列をしている、請求項1に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体。
【請求項4】
繊維−ポリマー複合材料心の繊維が、心の長さ方向に軸方向整列をしている第1組の繊維、および第1組の軸方向繊維の周りに編み上げ拠り合わせた第2組の繊維である、請求項1に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体。
【請求項5】
繊維−ポリマー複合材料心が、少なくとも1つの編み上げたマクロ−ワイヤから成る、請求項1に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体。
【請求項6】
管状金属導体が、アルミニウム導体である、請求項1に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体。
【請求項7】
管状アルミニウム導体が、61パーセントIACS以上の電気伝導度を有する、請求項6に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された架空導体。
【請求項8】
(a)繊維−ポリマー複合材料心、
(b)前記心上に収容され、かつすべての導体作動温度について、導体の懸架配置から生じる実質的にすべての機械張力が繊維−ポリマー複合材料心によって支えられており、管状導体は、結果的に任意の応力を支えるように求められた場合、代わりに、非弾性的に伸びて、繊維−ポリマー複合材料心に支えられるようにする、そのような組成および軟質性の管状導体
を備える、繊維−ポリマー複合材料で支持された導体。
【請求項9】
管状導体が、電力を伝達する、請求項8に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された導体。
【請求項10】
管状導体が、情報を伝達する、請求項8に記載の繊維−ポリマー複合材料で支持された導体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−527086(P2011−527086A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516810(P2011−516810)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049237
【国際公開番号】WO2010/002878
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】