説明

繊維にグラフトするために表面を改質したカプセル

本発明は中空又は中実の複合カプセルを任意の種類の天然、人工又は合成の、有機又は無機担体に共有結合によりグラフトする方法であって、そのカプセルを、随意に担体との親和性を高めまた官能化するように化学的、物理的又は物理化学的に改質し、次いでカプセル及び/又は担体の活性化後にグラフトする方法に関する。本発明はまた、上述のように改質したカプセル、カプセルをグラフトした担体特に繊維及び生地、そしてグラフト化された担体特に繊維及び生地の、いわゆる「機能性」物品を生産するための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空又は中実の複合カプセルを任意の種類の天然、人工又は合成の、有機又は無機担体に共有結合によりグラフトする方法であって、そのカプセルを、随意に担体との親和性を高めまた官能化するように化学的、物理的又は物理化学的に改質し、次いでカプセル及び/又は担体の活性化後にグラフトする方法に関する。
【0002】
本発明はまた、上述のように改質したカプセル、カプセルをグラフトした担体特に繊維及び生地、そしてグラフト化された担体特に繊維及び生地の、いわゆる「機能性」物品を生産するための使用に関する。
【0003】
本発明は特に、随意に1つ又は複数の有効成分を含んでなる高分子膜複合カプセルを任意の種類の担体特に繊維たとえば生地用繊維、ガラス繊維、紙、木材及び他の繊維にグラフトする方法に関する。本発明はまた、担体にグラフトすることが可能な改質複合カプセル、カプセルをグラフトした担体、及びグラフト化担体を用いて得られる物品に関する。
【背景技術】
【0004】
今日、繊維産業はいわゆる「機能性」衣類の分野で躍進している。機能性衣類は主に生地用の天然、人工又は合成繊維を素材とするが、そうした繊維は、種々の有効成分を含んでなり、かつ衣類がたとえば熱を蓄えもしくは放散すること、香料、湿気及び治療薬をかなり急速に放出すること、又は繊維と接触するようになる種々の有機もしくは無機化合物を閉じ込めもしくは保持することなどを可能にする。
【0005】
一般に、上述の有効成分はマイクロカプセル化して、マイクロカプセルを様々なやり方で、たとえば封入、コーティング、又はイオン結合によって、繊維に固定化するか又は結び付ける。その種のマイクロカプセルはたとえば体温及び/又は外部環境に対して敏感な場合があり、そのため種々の分子の放出に影響を及ぼす。
【0006】
封入による固定化の方法では、カプセルを直接繊維の内部に入れる。この方法の長所はカプセルが半永久的に繊維内部に固定化されることである。しかし、短所もあり、この方法は押出法により低温で成形した合成繊維にしか応用できない。また、カプセル化有効成分は利用が容易でない、又はカプセル膜を通り抜け、そして繊維を通り抜けてその表面へと拡散させるのが困難である。
【0007】
そのため今日では、任意の種類の繊維特に天然繊維へのカプセルのグラフトには一般にコーティング技術が使用される。カプセルを架橋ポリマー中に分散させ、そのポリマーで繊維をコーティングする。この場合にも、カプセルは半永久的にグラフトされるし、困難なくその方法を実施できる。しかし、このように内部にカプセルを分散させた架橋ポリマーでコーティングした繊維は風合いがよくない。
【0008】
さらに前述の場合には、カプセル化有効成分は利用が容易でない、又はカプセル膜を通り抜け、そしてニス被膜を通り抜けて拡散させるのが困難である。
【0009】
カプセルをイオン結合によって繊維に固定化するという方法もある。この方法は繊維には一般に表面電位があるという事実を利用する。カプセルを、膜の外表面にカチオン又はアニオン性官能基を持つように合成して、イオン結合によって繊維に固定化する。この場合にも、方法の実施がごく簡単にできるという長所がある。大きな難点は耐濡れ性である。数回洗っただけで、ほぼすべてのカプセルが繊維表面から消えうせてしまう。
【0010】
最新の技術では、染料を生地用繊維にグラフトするための公知の方法、すなわち共有結合でグラフトするという方法を用いる。すなわち、たとえば国際公開WO 01/06054号パンフレットは高分子カプセルに含有される有効成分を開示しているが、カプセルは表面に、結合剤を介した繊維との共有結合を可能にする反応性基を持つ。
【0011】
しかし、この技術の説明はかなり大まかであり、また実施例も有効成分を含有するカプセルをグラフトする対象が綿繊維に限られており、カプセルは、メチオール基を持つ樹脂によって形成される「架橋」を介して綿繊維に結合される。
【0012】
これらの実施例では、共有結合はルイス酸型触媒の存在下に水分子の脱離により2つのヒドロキシ(-OH)基の間に形成される。
【0013】
この方法は副生成物として水が生成することや触媒の使用が必須であることなど短所も多い。さらに、メチオール基を持つ樹脂は尿素型樹脂である。メチオール基は、繊維上での良好なカプセル分布に有害となるカプセル凝集体を形成するなど、高分子カプセルと不必要に相互反応しかねない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本出願人は今や、中空又は中実の複合カプセルを繊維特に生地用繊維にグラフトする方法であって、カプセルを、カプセルと共有結合可能な官能基を直接もしくは潜在的に又は前処理後に有する任意の種類の担体にグラフトするのに好適な方法を発見した。
【0015】
本発明は従って、随意に有効成分を含有する中空又は中実の高分子カプセルを任意の種類の担体特に繊維、それも生地用繊維に、共有結合によりグラフトする方法であって、公知の方法に見られる短所が何もない方法に関する。
【0016】
本発明の方法は、とりわけ「機能性」生地用繊維の、特に熱を蓄えもしくは放散すること、香料、湿気及び治療薬をかなり急速に放出すること、又は繊維と接触するようになる種々の有機もしくは無機化合物を閉じ込めもしくは保持することを可能にする繊維に対する需要に対処することを可能にしながら、公知技術に見られる短所が何もない。
【0017】
こうして、随意に有効成分を少なくとも1つ含有する中空又は中実の高分子カプセルを天然、人工又は合成の、有機又は無機担体に、既存の固定化技術よりも強固にグラフトする方法を提供することが本発明の第1の目的である。
【0018】
また、随意に脂溶性又は水溶性の有効成分を少なくとも1つ含有する中空の複合高分子カプセルを天然、人工又は合成の、有機又は無機担体に、強い化学結合により確実にグラフトする方法を提供することも本発明の1つの目的である。
【0019】
本発明の別の目的は、随意に脂溶性又は水溶性の有効成分を少なくとも1つ含有する中空又は中実の複合高分子カプセルを天然、人工又は合成の、有機又は無機担体に、担体の固有の性質を維持しながらグラフトする方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、随意に脂溶性又は水溶性の有効成分を少なくとも1つ含有する中空又は中実の複合高分子カプセルを天然、人工又は合成の、有機又は無機担体に、担体の性質特に風合いを実質的に維持しながらグラフトする方法を提供することである。
【0021】
従って、随意に脂溶性又は水溶性の有効成分を少なくとも1つ含有する中空又は中実の複合高分子カプセルを天然、人工又は合成の、有機又は無機担体特に天然、人工又は合成の、有機又は無機繊維に、担体又は繊維に被覆剤を用いずにグラフトする方法を提供することも本発明の目的である。
【0022】
本発明のさらなる目的は、随意に脂溶性又は水溶性の有効成分を少なくとも1つ含有する中空又は中実の複合高分子カプセルを、天然、人工又は合成の、有機又は無機担体特に繊維にグラフトする方法であって、カプセルの担体又は繊維へのグラフトは一様にかつ制御下に行われる方法を提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は以下の説明を読み進めば明らかになろう。今や、これらの目的は本発明のグラフト方法を使用すれば、完全に又は部分的に達成できることが判明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の意義の範囲内で、用語「担体」は任意の支持体であって、カプセルと共有結合可能な官能基を、直接もしくは潜在的に又は前処理後にもしくは活性化後に有する支持体をいう。
【0025】
官能基又は反応性基の例は以下で説明するが、化学分野では公知の、他の基と共有結合型の安定した化学結合を形成可能な任意の種類の化学的反応性基を含む。この種の基の非限定的な例はヒドロキシ基、チオール基、エポキシ基、カルボキシ基、ハロゲン基、アミノ基、アミド基、オキソ基、チオキソ基、シアノ基、エチレン不飽和基又はアセチレン不飽和基などである。
【0026】
基は担体上に直接又は潜在的な形で存在していてよく、当業者に知られた1つ又は複数の化学的、物理的又は物理化学的処理(活性化工程)により活性化されてもよい。本発明の担体はまた、反応性基を有さなくてもよく、反応性基が不十分な量であってもよい。そうした場合には、担体上に反応性基を生成又は増加させるように、前処理たとえば本技術分野で公知のプラズマ又はコロナ処理(これらに限られない)を行う。
【0027】
本発明の意義の範囲内で好適である担体は有利には、木材、紙、石材及び鉱物一般、ガラス、植物、皮革、皮膚、ポリマー及びプラスチック材料一般などであるが、それらに限らない。これらの担体を2種類以上含んでなる複合担体もまた本発明に包摂される。
【0028】
本発明の方法に使用可能な担体は未加工の形を含めて任意の形を、特にフィルム、被膜、塗料、ニス、シート、プレート、繊維、糸などの形を、とってもよい。
【0029】
本発明の方法に特に好適な担体は、繊維特に生地用繊維、木質繊維、ガラス繊維、炭素繊維、特に生地用繊維の形状である担体である。
【0030】
「繊維」は、断面に比べて長さがはるかに大きい、およそ数百倍〜一千倍以上大きい任意の物体をいう。繊維の断面は円形、ギザギザ付きもしくは波付き又は豆型、さらには多裂型特に三裂又は五裂型、X字型、帯状、中空、四角形、三角形、楕円形など任意の形状でよい。
【0031】
「無機繊維」はガラス繊維、炭素繊維などのような鉱物性繊維をいう。「有機繊維」は逆に、鉱物性以外の任意の繊維をいう。
【0032】
天然繊維はその名のとおり自然界に天然に存在する、そのままの又は機械的及び/又は物理的処理後の繊維である。この分類には、たとえば綿、亜麻、木、麻、ラミー、ジュートなどの植物性繊維と毛、絹、アンゴラなどの動物性繊維が含まれる。
【0033】
人工繊維は天然繊維を原料として製造するが、1つ又は複数の化学処理により、特に機械的及び/又は物理化学的性質を改善させてある。このようにセルロース系繊維はセルロースの再生又は改質によって得られ、ビスコース、アセテート、トリアセテートなどの繊維がその例である。
【0034】
合成繊維は化学合成で得られる繊維を含み、また一般に1つ又は複数の単成分又は多成分(たとえばコア-シース型)ポリマー及び/又はコポリマーを、一般には所望の直径の繊維に押し出す及び/又は引き出すことで成形される。合成繊維の例はポリエステル、ポリアミド(周知の例はナイロン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどである。
【0035】
繊維はその長さにより基本的に特徴付けられ、短いもの(綿など)もあれば、長いもの(毛)もあり、絹などのように糸の形で存在するものもある。生地用繊維は太さを直径ではなく番手で表すのが普通である。最も一般的な番手の単位はテックス(tex)であり、またその補助単位たとえばデシテックス(dtex)又はミリテックス(mtex)である。1テックスの繊維は長さ1メートルあたりの重さが1ミリグラムの繊維である(1 tex = 1 mg・m-1)。
【0036】
本発明は従って、中空又は中実の高分子複合カプセルを任意の種類の担体特に繊維、とりわけ上述のような生地用繊維にグラフトする方法に関する。
【0037】
「複合カプセル」は高分子部分と「有効成分」(又は「有効成分又は物質」)部分とによって形成される任意の種類の個別粒子をいう。「中空複合カプセル」は、随意に1つ又は複数の有効成分を含有する1つ又は複数のコアを包む連続した固体高分子膜によって形成される粒子(すなわちカプセル化生成物)をいう。「中実複合カプセル」は、中に1つ又は複数の有効成分を分散させた連続した高分子材料によって形成される粒子をいう。複合カプセルは貯留体として機能し、有効成分の隔離又は保持もしくは放出を可能にする。これの粒子は一般に大きさが数ナノメートル〜数ミリメートルである。
【0038】
上述のカプセルは一般に膜によって形成される。膜の役割は、カプセル化生成物の従来型用途では、一方では有効成分を外部環境から隔離し、他方では有効成分の保持の改善、さらにはカプセル化有効成分の即時の、長期間にわたる、遅延された及び/又は制御された、ベクター化及び/又は放出を可能にすることである。有効成分はまた、膜を通過した又は膜中に拡散したカプセル外の分子を「捕集」する場合もある。
【0039】
用語「カプセル化生成物」は、生成物が、外部環境からの隔離を目的に、固体もしくは液体又は更には気体の状態で、単独で又は配合剤と共に、中空体又は連続媒質(カプセル)の中に入っていることを意味する。
【0040】
カプセルを製造する方法はいろいろあり、単純もしくは複合コアセルベーションによる又は担体物質の融合もしくはゲル化(スプレー被覆)によるカプセル合成がその一例である。他に、乳化又は分散又は懸濁重合、固体粒子合成、ベシクル合成、又は流動床によるもしくは空気流動床中での被覆法によるカプセル合成などを利用する技術がある。
【0041】
別の方法では分散媒質中での界面重縮合法を利用するが、これはP.W. Morgan et al., J. Polym. Sci, 40, (1959), 299-327などで開示されているシートフィルム合成技術である。この技術はすでにカプセル合成に適用されている(R. Arshady, J. Microencap., 6(1), (1989), 1-10 & 13-28) 。
【0042】
複合カプセルは上述のような製造方法による任意の種類のものが好適であるが、カプセル表面は、化学的、物理的又は物理化学的処理後に、直接又は1つもしくは複数の他の反応性基を介して、繊維表面に存在する少なくとも1つの反応性基に結合可能な反応性基を少なくとも1つ持つ、又は持つ場合があるものとする。
【0043】
カプセル膜を構成する高分子は既存の高分子、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン又は植物由来もしくは海産物由来の天然高分子より選択するのが有利である。
【0044】
たとえば分散媒質中での界面重縮合法でカプセルを製造すると、本発明による繊維へのグラフトに特に好適なカプセルが得られる結果となる。実際、この方法で製造するカプセルは特に、カプセル膜を構成する高分子の性質の点でも、従って繊維表面に存在する反応性基と共有結合を形成可能な反応性基の点でも、きわめて多様性に富むという利点がある。
【0045】
実際、分散媒質中での界面重縮合法により、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリ(エーテルウレタン)、ポリ(エーテルウレタンウレア)などの膜を持つカプセルを得ることが可能である。これらの各高分子はその高分子から形成される膜が繊維との共有結合の形成に必要な反応性基を少なくとも1つ持つことを確実にする。
【0046】
分散媒質中での界面重縮合法で得られる複合カプセルは機械的強度が本発明の範囲内で見込まれる用途に特に好適である。この方法で得られるカプセルの膜はまた、気孔率の点でもそうした用途に最適である。
【0047】
分散媒質中での界面重縮合法で得られるカプセルの別の利点は、生体適合性カプセルすなわち生物学的に許容され人間、動物、植物及び生体一般に対して毒性でないカプセルを得ることが可能な点である。このことは、複合カプセルをグラフトした繊維が生きた組織たとえば人間の皮膚と接触するような布や衣類の製造に使用される場合にアレルギー又は毒性の問題を回避するために特に意義深い。この種の生体適合性複合カプセルはフランス国特許出願FR-A-2 837 724号明細書で詳しく開示されている。
【0048】
また、分散媒質中の界面重縮合法でカプセルを合成すると、使用する分散体のタイプに応じてほぼすべての親油性又は疎油性有効成分のカプセル化が可能になる。従って膜の気孔率及びカプセル化有効成分の配合に応じて、放出性カプセル(有効成分が膜の破壊により放出される)、分散性カプセル(有効成分が膜全体に分散する)、及び相変化性カプセル(有効成分の相変化によりエネルギーを熱の形で蓄積及び放出することが可能)を得ることが可能である。
【0049】
また、錯形成性有効成分たとえばクラウンエーテルを含有するカプセルを界面重縮合法で製造しうることも最近判明した。この種の「捕集性」カプセル及びその製造方法はフランス国特許出願FR-A-2 838 655号明細書で詳しく開示されている。
【0050】
以上開示した諸々の利点、それに高度に柔軟な操作条件や豊富な原料選択肢からして、分散媒質中の界面重縮合法で得られる複合カプセルを本発明のグラフト化方法に用いるのが好ましい。もちろん他の任意の種類のカプセルもまた好適であるが、カプセルの膜表面の反応性基の存在に関する前述の条件下で、反応性基は当初から存在してもよいし、1つ又は複数の化学的、物理的又は物理化学的処理によって出現又は生成させてもよい。
【0051】
繊維にグラフトしうるカプセルの直径は非常に様々であってよく、一般に数ナノメートル〜数ミリメートルである。しかし、繊維の質たとえば特に風合いを維持する意味でも、本発明の方法に使用するカプセルは直径が好ましくは約0.05μm〜約100μm、有利には約0.1μm〜約10μm、特に好ましくは約0.5μm〜約5μm、特に好ましくは約1μmである。
【0052】
なおカプセル径は繊維径に合わせて調整しなければならない。太い繊維は比較的かさばるカプセルを担持することができるが、細い繊維たとえばマイクロ繊維には直径1μm未満の、又は直径1μmをずっと下回る、カプセルをグラフトするのが好ましい。
【0053】
たとえば約1μm径のカプセルなら、繊維の番手は有利には約1dtex〜約7dtex、すなわち繊維の性質に応じて約10μm〜30μm径である。マイクロ繊維の場合にはカプセル径は1μm未満が好ましいであろう。
【0054】
カプセル径や繊維径がどうであれ、またカプセルや繊維の性質がどうであれ、グラフト方法はカプセルと繊維の間の共有結合を常に伴う。
【0055】
こうして、本発明は中空又は中実の複合カプセルを担体にグラフトするための、次の工程を含む方法に関する:
a)随意に、担体の性質に応じて表面の親油/親水性を適合させてカプセルを製造する;
b)カプセルの表面を官能化する;
c)官能化カプセル及び/又は担体を、担体及び/又は官能化カプセルの表面に存在する反応性基とそれぞれ共有結合を形成可能な反応性基をグラフトすることにより、活性化する;
d)官能化し、随意に活性化したカプセルを、随意に活性化した担体と接触させ、カプセルと担体の間に共有結合を形成させる;及び
e)共有結合によってグラフトした複合カプセルを含んでなる担体を回収し洗浄する。
【0056】
当然ながら、工程a)及びb)は順序を逆にして工程b)の後に工程a)を行ってもよい。従って、カプセル表面を官能化し、次いで随意に担体の親水/親油性に適合させてカプセル表面の親水/親油性を改質することが可能である。
【0057】
本発明の意義の範囲内で、用語「適合させる」はカプセル膜の親油/親水性を改質して担体の親油/親水性と実質的に同じにすることを意味する。この操作の狙いはカプセルを担体と適合させることであり、またカプセル凝集体の形成の抑制さらには防止を可能にすることである。言い換えれば、担体上におけるカプセルの実質的に一様で制御された分布を実現することが可能である。
【0058】
たとえばポリアミドカプセルを綿繊維にグラフトする場合には、カプセルを改質して綿の親水性と実質的に同じ親水性をカプセルに付与するのが有利であろう。この改質はたとえば親水性の官能基たとえばヒドロキシ(-OH)基をカプセル膜の表面にグラフトすることにより行ってもよい。
【0059】
カプセル表面の親油/親水性の改質を可能にする技術上周知の他の任意の手段もまた、本発明の方法の範囲内で、好適である。非限定的な例として、イオン処理又はポリ(エチレングリコール)もしくはポリ(プロピレングリコール)基のグラフトによる親水性の強化が可能であり、ヒドロキシ基のアルキル化又はオレフィン、芳香族及びその他の基のグラフトによる親油性の強化も可能である。
【0060】
工程b)のカプセル表面の官能化は、カプセル表面の反応性基の「一様化」及び/又は反応性基の利用率の改善及び/又は個数の増加からなる。
【0061】
「一様化」は、実質的に同一のカプセルの表面で反応性基が得られることを可能にするための化学的、物理的又は物理化学的処理を意味する。
【0062】
たとえば逆相界面重縮合でポリアミド膜カプセルを合成すると、膜表面にアミン、アンモニウム、カルボン酸、カルボキシラート及び塩化アシル型の、利用可能な反応性基が存在する結果となる。次の図(図中Rは二価の基)に示すように、ジアミン型化合物の作用はカルボン酸官能基を持つ基のアミン官能基への変換を可能にし、またpH値の調整はアンモニウム官能基のアミン官能基への変換を可能にする。
【化1】

【0063】
こうして、カプセル表面はアミン型反応性基だけとなり、活性化分子による担体へのグラフトという後続反応の最適化と制御の改善とが可能になる。実際、全て同一の官能基に対して、カプセルと活性化基の間の共有結合形成のためにただ1種類の反応が行なわれる。また、(前掲の図に示すように)アミン型反応性基は数も多くなるため、共有結合の数を多くすることも可能である。
【0064】
しかし、官能化後の官能基はみな同一である必要はないが、たとえば活性化基との、好ましくは速い不可逆反応である単一の化学反応によって、共有結合の形成に関与しうることが好ましい。
【0065】
以上示したように、官能化の方法はたとえばpH調整でもよいし、及び/又は一般に少なくとも2つの反応性基を持つ化合物のグラフトでもよい。この2つの反応性基のうち1つはカプセル表面に存在する反応性基との共有結合を可能にし、もう1つはこの工程では変化しないが、活性化基を介した担体との共有結合の形成に用いることができる。
【0066】
前述の官能化処理に関係する化学的、物理的又は物理化学的処理は技術上周知の任意の種類のものであり、たとえば共有結合、pH調整などによるグラフト方法である。
【0067】
少なくとも2つの反応性基を持ちかつ逆相界面重縮合で得られるポリアミド膜カプセルの場合に特に一段と好適である化合物の非限定的な例はジアミン、トリアミン、テトラアミン及びポリアミン一般、特にポリ(オキシアルキレン)アミンを含めたα,ω-ジアミンである。
【0068】
何らの制限も導入するつもりはないが、上述のアミンは本発明の好ましい実施形態によればエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリス-アミノ-エチルアミン、線状ポリ(エチレン)イミン、分岐ポリ(エチレン)イミン及びポリ(オキシアルキレン)アミン、特にHunstmanがJeffamine(登録商標)の商品名で販売しているアミン具体的にはED、EDR、D及びTシリーズの商品特にJeffamine(登録商標) EDR-148及びJeffamine(登録商標) D-230又はJeffamine(登録商標) T-403より選択される。
【0069】
これらのアミンはみなカプセル膜表面の一様な官能化を可能にし、本発明の方法の工程b)に由来するカプセルはこの場合は実質的に同一の-NH2官能基を持つ。
【0070】
上述の要領で官能化したカプセル、特にアミン基によって官能化したカプセル、特に逆相界面重縮合で得られアミン基によって官能化したポリアミド膜カプセルは、本発明の不可欠な部分を構成する。
【0071】
本発明の方法の特に有利な実施形態によれば、工程a)及びb)は単一工程で同時に行うことができる。前述の親油/親水性適合は、カプセル膜表面の反応性基に関する前述の一様化処理に使用する化合物を用いて行うこともできる。
【0072】
有利な実施形態によれば、本発明はこうして中空又は中実の複合カプセルを担体にグラフトするための、次の工程を含む方法に関する:
a')担体の性質に応じてカプセルの親油/親水性を適合させ、また同時にカプセル表面を官能化する;
b')官能化カプセル及び/又は担体を、担体及び/又は官能化カプセルの表面に存在する反応性基とそれぞれ共有結合を形成可能な反応性基をグラフトすることにより、活性化する;
c')随意に活性化したカプセルを随意に活性化した担体と接触させ、カプセルの反応性基と担体の反応性基の間に共有結合を形成させる;及び
d')共有結合によりグラフトした複合カプセルを含んでなる担体を回収し洗浄する。
【0073】
特にポリ(オキシアルキレン)アミン類の化合物を逆相界面重縮合で得られたポリアミド複合カプセルの表面にグラフトすると、カプセルに綿繊維と適合する親水性が付与されるだけでなく、カプセル表面の反応性基の、この場合にはアミノ基(-NH2)の、一様な官能化も可能になる。
【0074】
次式で示されるJeffamine(登録商標) D-230又はJeffamine(登録商標) EDR-148を逆相界面重縮合で得られた中空のポリアミド複合カプセルにグラフトすると完全に満足な結果が得られた。
【化2】

【0075】
上述の要領で官能化したカプセルもまた本発明の一部を構成する。一例として、図1は式H2N-R-NH2(式中Rは官能化化合物の残基である)で示されるアミンによって官能化したポリアミドカプセルを図式的に示している。図2は、官能化化合物がJeffamine(登録商標) EDR-148である場合の図1の官能化カプセルの略図である。
【0076】
本発明の方法の工程c)(又はb'))は、官能化処理後の、また随意にその親油/親水性をカプセルによるグラフト化の対象となる担体の親油/親水性に適合させた後の、カプセル表面を活性化する工程である。変法によれば、担体自体の表面で又は担体表面とカプセル表面で同時に、活性化を行うことができる。
【0077】
この活性化工程で、カプセル及び/又は担体表面の官能基は化学的、物理的又は物理化学的処理により置換及び/又は改質されて、カプセル及び/又は担体表面に、担体及び/又はカプセル表面に存在する反応性基とそれぞれ共有結合を形成可能な反応性基が認められるようになる。この共有結合形成反応は好ましくは全体的で不可逆な大きい反応速度を有し、有利には触媒の作用を必要としない。
【0078】
共有結合形成反応はまた、大気圧で、かつ-10℃〜100℃の温度好ましくは周囲温度近くで行う反応であるのが有利である。
【0079】
従って、全体的で比較的速い不可逆反応により担体と、有利には繊維好ましくは生地用繊維と、共有結合可能な反応性基を表面に持つカプセルを提供するのが好ましい。これについては、互いに反応して共有結合を形成可能な官能基に関する有機化学の古典を参照するのが有利である。
【0080】
本発明で開示する共有結合は本技術分野及び有機化学の分野で周知の任意の種類の共有結合でよいが、特にJ. March, “Advanced Organic Chemistry,” 3rd edition, pp.3-9に説明がある。
【0081】
次表は本発明の範囲内に包摂される共有結合の非限定的な例である。これらの共有結合は反応性基Aと反応性基Bの相互作用に由来するが、こうした反応性基A及びBは担体表面又はカプセル表面のいずれに存在してもよい。
【0082】
【表1】

【0083】
たとえば、カプセル及び/又は担体表面に存在する官能基に、担体及び/又はカプセル表面に存在する反応性基とそれぞれ共有結合を形成可能な少なくとも1つの反応性基を持つ化合物(活性化基)をグラフトすることによって、官能化カプセル及び/又は担体を活性化してもよく、その反応は好ましくは全体的で不可逆であって反応速度が比較的大きい。
【0084】
官能化カプセル及び/又は担体の活性化を可能にする化合物は、少なくとも2つの反応性基を含んでなる技術上周知の任意の種類の化合物でもよく、この2つの反応性基のうち1つはカプセル表面に存在する官能基と反応性であり、もう1つは担体表面に存在する官能基と反応性である。これらの化合物はオリゴマーでもよいし、さらにはポリマーでもよい。
【0085】
有利な実施形態によれば、官能化カプセル及び/又は担体の活性化を可能にする化合物は2つ、3つ又はさらに多数の反応性基を持つが、それらは担体及び/又はカプセル表面に存在する基とそれぞれ反応性である。従ってたとえばカプセル活性化工程後のカプセルは、担体と反応可能な基の数が、担体と反応可能な基が1つしかない活性化化合物で通常見られる反応性基の数の2倍、3倍又はさらに多数倍に等しくなる。
【0086】
非限定的な例として、官能化カプセル表面と担体の間に共有結合を形成可能な有機化合物(活性化基)は次表に示すものから選択してもよい。
【0087】
【表2】

【0088】
本発明の範囲内で使用するのが有利となりうる他の活性化基(又は化合物)は、たとえば通常は生地用繊維染色の分野で使用されているものであり、技術上周知である。
【0089】
前述の要領で活性化した、特にアミン基によって官能化したカプセル、特に逆相界面重縮合で得られ、アミン基によって官能化し、前述の活性化化合物を使用して活性化したポリアミド膜カプセルは、本発明の不可欠な部分を構成する。
【0090】
活性化カプセルの特に好ましい例は随意に少なくとも1つの有効成分を含有する中空又は中実ポリアミド複合カプセルであり、アミン(-NH2)基によって官能化し、また塩素(-Cl)基を持つように活性化してある。図3はそうしたカプセルの略図であり、図中のRとR'はそれぞれ下記官能化及び活性化化合物の残基であり、nは1、2又は3に等しい整数である。
2N-R-NH2(官能化化合物) Cl-R’-(Cl)n(活性化化合物)
【0091】
上述のようなまた図3に示すような好ましい官能化及び活性化カプセルは、官能化化合物がエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリス-アミノ-エチルアミン、線状ポリ(エチレン)イミン、分岐ポリ(エチレン)イミン及びポリ(オキシアルキレン)アミンより選択される、より好ましくはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン及びポリ(オキシアルキレン)アミン、特にHunstmanが販売しているJeffamine(登録商標)の商品名のアミンより選択される、さらにより好ましくはED、EDR、D及びTシリーズの商品特にJeffamine(登録商標) EDR-148及びJeffamine(登録商標) D-230又はJeffamine(登録商標) T-403より選択される、官能化及び活性化カプセルである。
【0092】
上述のようなまた図3に示すような好ましい官能化及び活性化カプセルは、活性化化合物がα-ブロモ-アクリル酸、アジピン酸、2,4,6-トリクロロトリアジン及びジクロロキノキサリンより選択される、また好ましくは2,4,6-トリクロロトリアジンである、官能化及び活性化カプセルである。
【0093】
特に好ましいポリアミド複合カプセルは図4に示すような、Jeffamine(登録商標) EDR-148で官能化し、2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化したカプセルである。このカプセルは特に綿繊維へのグラフトに申し分なく好適である。1つには綿繊維と実質的に変わらない親水性(Jeffamine(登録商標)の寄与)のためであり、また1つには綿繊維(セルロース)のヒドロキシ基との全体的かつ不可逆で、反応速度の比較的大きい反応による共有結合の形成を可能にする反応性塩素基 (Jeffamine(登録商標)1分子に対して2原子)のためである。
【0094】
官能化及び活性化カプセルと担体特に繊維の間に共有結合を形成するこの反応は、担体特に繊維へのカプセルの実際のグラフトに対応する。
【0095】
前述のように、特に反応性基が直接利用できない及び/又は担体の表面で保護された形態で存在する場合には、グラフトを行う前に担体を前処理する必要があると判明する場合もあろう。この前処理は一般に、担体表面に存在する反応性基を「露出させる」又はこの種の反応性基が存在しないもしくは十分でない場合には1つ又は複数の化学的、物理的又は物理化学的処理によってそうした反応性基を出現又は生成させる工程からなる。
【0096】
担体の前処理は技術上周知であり、非限定的な例としてプラズマもしくはコロナ処理又は他の種類の処理からなる。天然、合成又は人工繊維の場合特に生地用繊維の場合には、これらの処理は一般に生地の染色及び色付けの分野で行われる前処理と類似し、また場合によって同じである。
【0097】
前処理については、詳しくは繊維染色に関する著作物を参照してもよい。従って、担体が生地用繊維である場合には、毛焼き、糊抜き、精練、漂白、洗浄、炭化、叩解、毛洗、固着などより選択される1つ又は複数の処理にかけてもよい。
【0098】
一例として、綿繊維は一般に糊抜き、精練、漂白の3手順からなる前処理にかけてからグラフトする。繊維の性質に応じて現在繊維業界で使用されている、採用可能な他の前処理例を次表に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
もちろん、特に担体表面の反応性基を露出させるために又は選択した活性化化合物の反応性基の利用率を高めるために使用する場合、他の前処理もまた可能である。担体表面の反応性基は、担体の性質及び/又は由来、天然、人工又は合成のいずれかであるかに応じて、任意の種類であってよい。
【0101】
反応性化学基の性質を説明するための一例として、綿繊維は、表面に、随意の処理後に、遊離ヒドロキシ基を持つセルロース繊維である。毛繊維は表面に少なくとも1つの、複数の、又はすべてのアミノ酸官能基を、すなわちカルボン酸、アミン、チオール、フェノール及びアミド官能基などを持つ。
【0102】
反応性化学基は当然、合成繊維の表面にも存在し、その例はポリアミド繊維の場合にはアミン基やカルボン酸基であり、またポリエステル繊維の場合にはアルコール基やカルボン酸基である。ガラス繊維もまたシラノール(Si-OH)基などのような反応性基を持つ。
【0103】
繊維表面のこれらの化学基はこうして前述のような官能化及び活性化カプセルの表面に存在する反応性基と共有結合を形成しうるが、この共有結合形成反応は有利には前述のような特徴を有する。
【0104】
こうして官能化及び活性化カプセルの担体へのグラフトは技術上周知の従来法で、たとえば生地用繊維の場合には繊維や生地の染色に使用されるものと類似の又は同一の方法たとえば浸漬法又はパッド法で行う。後述のように、グラフト化反応を、繊維に行ってもよく、繊維を加工した生地に直接行ってもよく、また一般には前述のような担体に直接行ってもよく、前述のような担体を含めた完成品に行ってもよい。
【0105】
本発明のグラフト方法の変法によれば、担体を、随意の前処理後に、たとえば前述のような、官能化カプセルを活性化するための1つ又は複数の活性化基によって活性化してもよい。この場合には、実際のグラフト反応すなわちカプセルと担体の間の結合の形成は官能化カプセルと活性化担体との間で行われる。
【0106】
実際のグラフト反応は官能化及び活性化カプセルと活性化担体との間でも行われるものと見込まれよう。別の変法によれば、実際のグラフト反応は親油/親水性を予め適合させておいた非官能化及び非活性化カプセルと活性化カプセルの間でも可能である。しかしながら、最後のこの変法は本発明の好ましい実施形態ではない。
【0107】
図5は2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化されており、官能化カプセル有利には表面に遊離アミン官能基を主に持つカプセルたとえば図1又は図2に示すような官能化カプセルのグラフトが可能である、綿繊維の略図である。
【0108】
グラフトのための反応条件は使用担体及びカプセルの種類次第である。反応は水性、水-有機又は有機媒質中で、たとえば水中又はシクロヘキサン中で、好適なpH範囲内で行うことができる。
【0109】
反応はまた、カプセルと担体の間の親和性をますます高めるために、すなわちカプセルと担体の間の接触を促進するために、電解質及び/又は界面活性剤の存在下に行うのも有利である。炭酸ナトリウム(Na2CO3)などの無機塩はたとえばポリアミドカプセルを綿繊維にグラフトするときに電解質として使用してもよい。Hypermer(登録商標) 1083又はTween(登録商標) 20などの界面活性剤もまた、特にJeffamine(登録商標)で官能化し2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化した中空又は中実ポリアミド複合カプセルを綿繊維にグラフトする場合に有効であると判明している。
【0110】
本発明はまた官能化及び活性化複合カプセルをグラフトした担体に関する。特にJeffamine(登録商標) EDR-148で官能化し2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化した中空又は中実ポリアミド複合カプセルをグラフトした綿繊維は、本発明の実施形態として特に好ましい。
【0111】
変法では、本発明はまた、カプセルの親油/親水性を随意に予め担体の親油/親水性に適合させてある官能化複合カプセルをグラフトした活性化担体に関する。
【0112】
図6はグラフト化した綿繊維である。このグラフト化綿繊維は、図2に示すような官能化カプセルを図5に示すような活性化綿繊維にグラフトすることにより、又は図4に示すような官能化及び活性化カプセルを前処理しただけの綿繊維すなわち表面に遊離ヒドロキシ基を持つ綿繊維にグラフトすることにより、得ることができる。
【0113】
こうして得られる繊維はその表面に複合カプセルを共有結合でグラフトして含む。この種の結合はこうして、薬品抵抗性や機械的強度を、特に長時間及び繰り返しの洗浄への耐性を確保する。
【0114】
共有結合によるこの種のグラフトはまた、繊維業界で行われているような繊維加工を可能にする。このように、グラフト化繊維を平行化し撚り合わせて撚糸とし、次いで製織又は編成により組織化して2次元の担体すなわち布としてもよい。繊維はまた直接交絡させて不織布タイプの素材としてもよい。
【0115】
繊維業界で周知の常法によれば、布は従来の後処理前に、他の仕上げ段階特に染色(浸染及び/又は捺染)段階を経る。捺染は一般に回転する円筒を用いて又は場合によりインクジェット法で行う。染色は通常、ジガー染色機を用いて又はパッド法で行う。
【0116】
この点に関しては、従来の繊維染色方法と本発明のカプセルのグラフト方法の類似性もあって、従来の仕上げ及び製作手順の後で又はその最中にカプセルを繊維にグラフトする、すなわち糸に、又は布、既成品及び他の生地素材に、直接グラフトすることも見込まれるであろう。糸、布、既製品及び他の繊維系生地素材にカプセルをグラフトするというこの種の代替方法もまた本発明の範囲内に包摂される。
【0117】
糸又は布にカプセルをグラフトする方法は繊維にカプセルをグラフトする方法と同じであり、やはりカプセルと糸及び/又は布を構成する繊維との間に1つ又は複数の共有結合が形成される結果となる。カプセルを布にグラフトする利点の1つとして、繊維から加工されない生地素材にカプセルをグラフトすることが可能になる。こうして、本発明の方法により複合カプセルを、天然、人工又は合成皮革などのような生地素材にグラフトすることも可能となる。
【0118】
このようにして複合カプセルをグラフトした布や他の生地素材は繊維業界の従来の布とまったく同様の状態を示し、従って次の製作段階に入ることができる。この手順は布又は他の生地素材を生地製品たとえば衣類、縁飾り、手袋、靴下、タイツ、スカーフ、ケープ及びキャンバス製品(テント、キャノピー)、又はカーペット、ラグ、壁紙、寝具、ガスマスクコンテナ、軍用布帛/生地、医療用パッチ、包帯、織布製の人工装具などのような既製品に仕立てる作業からなる。
【0119】
本明細書で見込まれる種々の担体特に繊維、糸、布、生地素材及び既製品だけでなく皮革、木材、紙、ガラス、高分子プラスチック材料、被膜、塗料、ニスなどを含めた担体に本発明の方法に従って共有結合により複合カプセルをグラフトしたものは、担体の性質、カプセルの高分子の化学的性質及び随意にカプセル中に存在する有効成分のタイプに応じて、特に有利な特性を有する物品を製造するために広範囲の分野において全くもって有用である。
【0120】
たとえば担体が生地用繊維又は糸、生地、布などである場合に、本発明の方法は生地に新たな付加的な用途を付与する、機能性生地の生産を可能にする。
【0121】
可能な用途は、まずはグラフトカプセル自体の、すなわちカプセル化した有効成分を有さない状態での機械的及び/又は物理化学的性質に関連するであろう。従って、この種の、特に繊維、糸、布及び生地用素材にグラフトした中空又は中実のカプセルは、接着性又は剥離性、すべり止め生地などの製造に特に有用である。
【0122】
他の用途分野はカプセルの高分子の化学的性質に関連する。特に、カプセルが生体適合性である場合には(フランス国特許出願FR-A-2 837 724号明細書を参照)、人間又は動物の治療への応用が見込まれる。
【0123】
さらに、カプセルは1つ又は複数の脂溶性又は水溶性有効成分をそのコアに含有してもよい。そうした有効成分は即時に、遅延されて、自由に又は長期間にわたり放出されてもよいし、まったく放出されずカプセル内部に留まってもよい。その種のカプセルはこうして、種々の用途分野たとえば工業、家庭用品、医療、準医療、化粧品、民生及び軍事などの分野で付加価値を持つ特定かつ固有の性質を、グラフト化した種々の担体に付与する。
【0124】
当然ながら、本発明の方法で見込まれる、1つ又は複数の有効成分を含有するカプセルは「再充填」される場合もある。この用語は、当初存在していた有効成分が、いったんカプセル外に拡散した後に、又は化学的、物理的又は物理化学的手段により(たとえば洗浄により)グラフト化担体からなくなった後に、カプセル内に再び導入されうることを意味する。従って、カプセルへの有効成分の「再充填」を目的として、有効成分の浸漬、含浸又はスプレー処理による担体の処理も見込まれる。
【0125】
また、1つ又は複数の有効成分を放出しうるカプセルをグラフトした繊維、糸、布及び他の生地素材などの担体と、有効成分が放出されることなくカプセル内部でその作用を生み出すようなカプセルをグラフトした担体とは区別する必要がある。
【0126】
最初の事例では、有効成分の放出は、カプセル膜の機械的破壊(せん断)により、カプセル膜の化学的破壊(消化、光化学的分解)により、又は拡散により、実現することができる。
【0127】
こうして、カプセルから放出されうる有効成分の性質次第で、グラフト化繊維を含んでなる担体たとえば繊維、糸、布、既製品及び他の生地素材はたとえば次のようなものとして使用できる:消毒作用のある生地、殺菌性生地、香水を染み込ませた生地、心身を爽快にする生地、保湿剤、減量剤、脱毛用生地、紫外線遮断剤、防ダニ生地、殺虫剤、抗ストレス用生地、抗疲労用生地、すべり止め剤又は接着剤を含んでなる生地、洗濯添加剤たとえば静電気防止剤、柔軟剤、漂白剤又は他の酵素などを含んでなる生地。
【0128】
これらの非限定的な例は単に例示目的で羅列しているが、数多くの用途分野が考えられる。特に本発明に従ってグラフト化した繊維は医療及び準医療分野で鎮痛用生地、静脈強壮剤、血管保護剤、抗炎症剤などとして使用される糸、布、既製品及び他の生地素材の製造にも使用できる。
【0129】
非放出性の有効成分を含んでなる複合カプセルをグラフトした繊維、糸、布、既製品及び他の生地素材の場合もまた、考えられる用途は多岐多様であり、とりわけ準医療・医療分野などに関連する常磁性、消毒性、抗拒絶反応性、抗凝血性の生地素材としての用途が含まれる。
【0130】
工業分野又は民生及び軍事用防護の分野では、化学兵器からの防御のための生地及び汚染物質たとえば重金属又は放射性元素を固定化可能な生地などの用途が含まれる。
【0131】
また、たとえばグラフトされたカプセルのコアにメチルホスホン酸などの難燃剤を組み入れることによる難燃性生地の製造も見込まれる。他の用途分野も期待されるが、それらもまた本発明の範囲に包摂される。
【0132】
当然、異なる有効成分を同じカプセルに入れることによりもしくは性質の異なる複合カプセルを繊維、糸、布、既製品及び生地素材にグラフトすることにより、又はグラフトされるカプセルの性質に応じて異なる繊維を混ぜ合わせることにより、この種の用途分野を組み合わせてもよい。上述の技術を2つ又は3つ組み合わせることも可能である。
【0133】
本発明の方法で見込まれる担体はまた複合担体でもよい。この種の担体にはたとえば接着剤を含有するカプセルをグラフトして、担体を強化するようにしてもよい。応力下で長期使用する間に良好な結合を得ること、たとえばコンクリート、セメント、プラスチック材料、木材及び他の材料のミクロ亀裂を阻止するのがその目的である。
【0134】
以下、特定の実施形態により本発明をさらに詳しく説明する。以下の実施例はもっぱら例示が目的であり、本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0135】
〔逆相界面重縮合によるポリアミド複合カプセルの合成〕
フランス国特許出願FR-A-2 837 724号及びFR-A-2 838 655号の各明細書又はR. Arshady, J. Microencap., 6(1) (1989), 1-10 & 13-28で開示されている方法に従い、次の特定条件下で、カプセルを合成する。
【0136】
工程a): 分散体
シクロヘキサン85mlと10g/l Hypermer(登録商標)をWaring-Blendorホモジナイザーに入れ、次いで水70ml、0.5Mヘキメチレンジアミン及び1M炭酸水素ナトリウムを加えて、18,000rpmで5分間撹拌した。
【0137】
次にこの分散体を1Lビーカーに移し、氷水を入れた超音波槽の中に置いた。分散体を、ポリテトラフルオロエチレン製水平翼を使用して100rpmで撹拌しながら、5分間超音波処理した。
【0138】
工程b): 界面重縮合(水20%、シクロヘキサン80%)
超音波槽内における反応の開始
シクロヘキサン200ml、10g/l Hypermer(登録商標) 1083、0.15M二塩化テレフタロイル(TDC)及び15%トリメシン酸三塩化物(mesoyl trichloride, MTC)(パーセンテージはTDC及びMTCモノマーの酸塩化物官能基(COCl)総数に対するMTCのCOClの百分率)を超音波槽内の分散体に滴下した。滴下時には終始、超音波処理を行い、またビーカー内を100rpmで撹拌し続け、合成中に十分な均質化が行われるようにする。この操作は約30分間続行する。
【0139】
Sovirel反応容器内での反応の進行
25℃にセットしたSovirel反応容器に反応媒質を移し、合成終了まで(24時間)200rpmで撹拌し続けた。
【0140】
工程c): カプセルの洗浄
反応終了後、カプセルを2,500rpmで5分間遠心分離にかけ、反応媒質からカプセルを分離した。第1段階の洗浄では10g/l Hypermer(登録商標) 1083添加クロロホルム200mlで沈殿を処理し、得られた分散体を200rpmで15分間撹拌し、次いで2,500rpmで5分間遠心分離にかける。
【0141】
第2段階では、10g/l Hypermer(登録商標) 1083添加シクロヘキサン500mlで沈殿を処理し、得られた分散体を200rpmで15分間撹拌し、次いで2,500rpmで5分間遠心分離にかける。この第2段階の洗浄は3回繰り返す。
【0142】
カプセルの保存を目的に、10g/l Hypermer(登録商標) 1083添加シクロヘキサン200mlに塩基を溶かし、この分散体を200rpmで5分間撹拌する。カプセルはこの溶液に入れて保存することができる。
【0143】
およそ1μm径のカプセルが得られるが、その膜はポリアミド高分子であり、そのコアには有効成分ではなく水が入っている。
【0144】
〔膜の改質〕
エチレンジアミンのグラフトによる膜の官能化
カプセル(遠心分離ペレット、約70ml)を10g/l Hypermer(登録商標) 1083添加シクロヘキサン200mlに溶かす。これを25℃にセットしたSovirel反応容器に入れ、次にシクロヘキサン、10g/l Hypermer(登録商標) 1083及び0.5Mエチレンジアミン(EDA)溶液の混合液70mlを加える。200rpmで1時間撹拌した後、反応を停止させる。反応媒質を遠心分離にかける。次に、前記の方法(工程c):カプセルの洗浄)に従ってカプセルを洗浄する。
【0145】
他の官能化カプセルもこの要領で、ただしエチレンジアミンの代わりにトリエチレンテトラアミン、トリス-アミノエチルアミン及びJeffamine(登録商標)-EDR 148を使用して、調製した。
【0146】
トリクロロトリアジンのグラフトによる官能化カプセルの活性化
前記の要領で得られた官能化カプセル(遠心分離ペレット)を10g/l Hypermer(登録商標) 1083添加シクロヘキサン200mlに溶かす。
【0147】
この混合物全体を25℃にセットしたSovirel反応容器に入れ、シクロヘキサン、10g/l Hypermer(登録商標) 1083及び0.5M 2,4,6-トリクロロトリアジン溶液の混合液70mlを加える。200rpmで45分間撹拌する。反応を停止させてから、反応媒質を遠心分離にかけ、前記の方法(工程c):カプセルの洗浄)に従ってカプセルを洗浄する。
【0148】
こうして、トリクロロトリアジン分子を共有結合でグラフトしたポリアミド膜カプセルが逆相界面重縮合により得られる。これらのカプセルはその表面に、綿繊維のセルロースのヒドロキシ官能基と共有結合を形成可能な反応性塩素基を持つ。
【0149】
〔綿布の前処理〕
工程1: 糊抜き
水600ml + 20%洗剤を入れたビーカーに綿布試料を入れる。この溶液を60℃に加熱し、1時間撹拌する。試料を取り出し、水洗いする。
【0150】
工程2: 精練
糊抜きした綿布試料を2.5M水酸化ナトリウム溶液に漬ける。溶液を95℃に加熱し、1時間撹拌する。試料を取り出し、水洗いする。
【0151】
工程3: 漂白
糊抜き、精練後の綿布試料を塩素定量濃度で48度(48 chlorometric degrees)の次亜塩素酸ナトリウムの0.5ml/l溶液に漬け、この溶液を60℃に加熱し、30分間撹拌する。試料を取り出し、水洗いする。
【0152】
〔綿試料へのカプセルのグラフト〕
工程1: カプセルの調製
カプセルのグラフトはたとえば “Basic principles of textile coloration” (A.D. Broadbent著; Society of Dyers and Colourists編)(2001)で開示されている綿繊維染色などに準じた方法で行う。
【0153】
10g/l Hypermer(登録商標) 1083添加シクロヘキサン中に保存してあるカプセルを2,500rpmで5分間遠心分離にかけ、カプセルを有機媒質から分離する。
【0154】
ペレットを回収し、5% Tween(登録商標) 20 (v/v)を添加したpH 5の水600ml(バッファー液: フタル酸水素カリウム及び水酸化ナトリウム)に分散させる。得られた分散体を500rpmで15分間撹拌する。Tween(登録商標) 20はシクロヘキサンの除去を可能にする。分散体を2,500rpmで5分間遠心分離にかける。これら3つの操作を3回繰り返してシクロヘキサンが微量も残らないようにする。
【0155】
ペレットを回収し、水600ml (pH 5)に分散させる。分散体を500rpmで15分間撹拌する。分散体を再び2,500rpmで5分間遠心分離にかける。これら2つの操作を3回繰り返してTween(登録商標) 20が微量も残らないようにする。最後に、マイクロカプセルを水600ml (pH 5)中に回収する。
【0156】
工程2: グラフト
プログラム可能なNuance TS型 Ahiba(登録商標)サンプル染色機を使用する。そのドラムには12個のボトル(グラフト浴を入れるオートクレーブ)が取り付けてある。この染色機は通常、吸尽法による染色に使用される。
【0157】
工程1で得られる体積V(ml)のマイクロカプセル分散体を綿布試料入りボトルに移し入れる。浴比Rbathは浴の体積(Vbath=移し入れたV、単位: ml)に対する綿布質量(Mfabric、単位: g)の比である:
【数1】

【0158】
本実施例のグラフト浴は1:15とする。綿布へのマイクロカプセル吸着を促すために30g/lのNa2CO3を加える。染色機の浴温度の上昇は3℃/分にプログラムする。綿繊維にマイクロカプセルをグラフトするための最終温度は50℃とする。グラフト浴はこの温度で15分間撹拌(10rpm)し続ける。
【0159】
この吸着工程の終了後、ボトルを染色機から取り外す。水酸化ナトリウム(NaOH)を加えてpH値を高め、カプセル表面の反応性基(2,4,6-トリクロロトリアジンの塩素原子)と綿繊維のヒドロキシ基の間に化学反応が起こるようにする。
【0160】
ボトルを染色機に再び装着し、浴温度を50℃にする。pHは約10.5〜11である。反応は約45〜90分間行う。
【0161】
反応終了後、綿布を回収し、中性になるまで水洗いする。すなわち綿布の表面はpH7近辺である。この最終工程により、綿布に固定化されていない粒子を除去することができる。
【0162】
〔グラフトの制御〕
この操作のために、走査型電子顕微鏡で撮影した写真を観察して繊維表面にグラフトされたカプセルの有無を調べた。
−図7は綿繊維であり、逆相界面重縮合で合成し、エチレンジアミンで官能化し、2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化したポリアミド複合カプセルがグラフトされている。
−図8は綿繊維であり、逆相界面重縮合で合成し、ポリ(オキシアルキレン)アミンのJeffamine(登録商標) D-230で官能化し、2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化したポリアミド複合カプセルがグラフトされている。
【0163】
得られた繊維を比較すると、一方ではどちらの場合にも繊維表面にカプセル凝集体が存在しないことがわかり、また他方では親水性官能化アミンのほうが繊維表面にグラフトされたカプセル数の点でグラフトに有利であることがわかる。
【0164】
こうして、本発明の方法は中空又は中実の複合カプセルを、任意の種類の担体特に有機又は無機繊維(ガラス、炭素、天然、人工又は合成の生地用繊維)に、制御して一様にグラフトすることを可能にする。
【0165】
実際、このグラフト方法は一方では担体表面にグラフトする速度の制御を、他方では担体表面へのカプセルの一様な、又は少なくとも公知の共有結合によるグラフト特に生地用繊維へのカプセルのグラフト方法の場合よりも一様な分布を、それぞれ可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】式H2N-R-NH2で示されるアミンによって官能化したポリアミドカプセルの略図。
【図2】官能化化合物がJeffamine(登録商標) EDR-148である場合の図1の官能化カプセルの略図。
【図3】アミン(-NH2)基によって官能化し、また塩素(-Cl)基を持つように活性化したカプセルの略図。
【図4】Jeffamine(登録商標) EDR-148で官能化し、2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化したカプセルの略図。
【図5】2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化されており、官能化カプセルのグラフトが可能である、綿繊維の略図。
【図6】グラフト化した綿繊維の略図。
【図7】逆相界面重縮合で合成し、エチレンジアミンで官能化し、2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化したポリアミド複合カプセルがグラフトされている綿繊維の走査型電子顕微鏡写真。
【図8】逆相界面重縮合で合成し、ポリ(オキシアルキレン)アミンのJeffamine(登録商標) D-230で官能化し、2,4,6-トリクロロトリアジンで活性化したポリアミド複合カプセルがグラフトされている綿繊維の走査型電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空又は中実の複合カプセルを担体にグラフトするための、次の工程を含む方法:
a)随意に、該担体の性質に応じてカプセル膜の親油/親水性を適合させて該カプセルを製造する;
b)該カプセル膜を官能化する;
c)官能化カプセル及び/又は担体を、担体及び/又は官能化カプセルの表面に存在する反応性基とそれぞれ共有結合を形成可能な反応性基をグラフトすることにより、活性化する;
d)官能化し、随意に活性化したカプセルを、随意に活性化した担体と接触させ、該カプセルと該担体の間に共有結合を形成させる;及び
e)共有結合によってグラフトした複合カプセルを含んでなる担体を回収し洗浄する。
【請求項2】
工程c)はカプセルの活性化に対応する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)は担体の活性化に対応する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カプセルは、好ましくは界面重縮合で、有利には逆相中の界面重縮合で製造される、中空又は中実の複合カプセルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
カプセルは中空又は中実のポリアミド複合カプセルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
担体は繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
担体は生地用繊維である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
担体は綿生地用繊維である請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
担体は表面に遊離ヒドロキシ基を持つ綿生地用繊維である請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
官能化工程b)は少なくとも2つの反応性基を持つ官能化化合物をグラフトすることによって行われ、反応性基のうち1つはカプセル表面に存在する反応性基との共有結合を可能にし、もう1つはこの工程では変化しないが、反応性活性化基との共有結合の形成に用いることができる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
官能化化合物はジアミン、トリアミン、テトラアミン及びポリアミン一般、特にポリ(オキシアルキレン)アミンを含めたα,ω-ジアミンより選択される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
官能化化合物はエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリス-アミノ-エチルアミン、線状ポリ(エチレン)イミン、分岐ポリ(エチレン)イミン及びポリ(オキシアルキレン)アミンより、好ましくはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン及び式
【化1】

で示されるポリ(オキシアルキレン)アミンより、選択される請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
次の工程を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法:
a')担体の性質に応じてカプセルの親油/親水性を適合させ、また同時に該カプセル表面を官能化する;
b')官能化カプセル及び/又は担体を、担体及び/又は官能化カプセルの表面に存在する反応性基とそれぞれ共有結合を形成可能な反応性基をグラフトすることにより、活性化する;
c')随意に活性化したカプセルを随意に活性化した担体と接触させ、該カプセルの反応性基と該担体の反応性基の間に共有結合を形成させる;及び
d')共有結合によってグラフトした複合カプセルを含んでなる担体を回収し洗浄する。
【請求項14】
官能化工程はpH調整により及び/又は少なくとも2つの反応性基を持つ化合物のグラフトにより行われ、反応性基のうち1つはカプセル表面に存在する反応性基との共有結合を可能にし、もう1つはこの工程では変化しないが、活性化基を介した担体との共有結合の形成に用いることができる請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
活性化工程は化学的、物理的又は物理化学的処理によってカプセル表面を置換及び/又は改質することからなり、反応性基へと官能化される基は担体に存在する反応性基と共有結合を形成可能である請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
活性化工程は、活性化化合物の、有利にはα-ブロモ-アクリル酸、アジピン酸、2,4,6-トリクロロトリアジン及びジクロロキノキサリンより選択される活性化化合物の、好ましくは2,4,6-トリクロロトリアジンである活性化化合物のグラフトに対応する請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
カプセルのグラフトに先立って担体を1つ又は複数の化学的、物理的又は物理化学的処理にかける請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
カプセルのグラフトに先立って担体をプラズマ処理、コロナ処理などより選択される1つ又は複数の処理にかける請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
担体が生地用繊維である場合に、カプセルのグラフトに先立って、該担体を毛焼き、糊抜き、精練、漂白、洗浄、炭化、叩解、毛洗、固着などより選択される1つ又は複数の前処理にかける請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
カプセルを担体にグラフトする工程は無機塩の存在下に行われる請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
担体とカプセルの間のグラフト化反応は、カルボン酸基とヒドロキシ基、ハロゲン化アシル基とアミン基、ハロゲン化物基とヒドロキシ基、イソシアナート基とアミン基又はイソシアナート基とヒドロキシ基の間の、好ましくはハロゲン化物基とヒドロキシ基の間の反応である請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
カプセルは糸、布、既製品及び他の生地素材に直接グラフトされる請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ポリアミド複合カプセル、好ましくは逆相中の界面重縮合によって得られるポリアミド複合カプセルであって、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及び式
【化2】

で示されるポリ(オキシアルキレン)アミンより選択される官能化化合物に由来するアミン基によって官能化されているポリアミド複合カプセル。
【請求項24】
ポリアミド複合カプセル、好ましくは逆相中の界面重縮合によって得られるポリアミド複合カプセルであって、次のジアミンによって官能化されているポリアミド複合カプセル。
【化3】

【請求項25】
ポリアミド複合カプセル、好ましくは逆相中の界面重縮合によって得られるポリアミド複合カプセルであって、α-ブロモ-アクリル酸、アジピン酸、2,4,6-トリクロロトリアジン及びジクロロキノキサリンより選択される活性化化合物の、好ましくは2,4,6-トリクロロトリアジンのグラフトによって活性化されているポリアミド複合カプセル。
【請求項26】
次のジアミンによって官能化され、2,4,6-トリクロロトリアジンによって活性化されている請求項25に記載のカプセル。
【化4】

【請求項27】
請求項1〜22のいずれか1項の方法によって得られるグラフト化された担体。
【請求項28】
請求項23〜26のいずれか1項に記載の少なくとも1つの複合カプセルを共有結合によってグラフトした担体。
【請求項29】
被膜、塗料、ニス、フィルム、シート、プレート、皮革、石材及び繊維より選択される有機、無機、天然、人工又は合成の担体である請求項27又は請求項28に記載の担体。
【請求項30】
請求項1〜22のいずれか1項の方法によって得られる繊維、好ましくは綿繊維。
【請求項31】
請求項23〜26のいずれか1項に記載の少なくとも1つのカプセルをグラフトした繊維、好ましくは綿繊維。
【請求項32】
請求項27〜29のいずれか1項に記載の担体の、機能性物品の製造への使用。
【請求項33】
担体は繊維、糸、布、生地素材又は既製品である、請求項32に記載の、機能性生地の製造への使用。
【請求項34】
請求項1〜22のいずれか1項の方法によって得られる、共有結合によって担体へグラフトされたカプセルを含んでなる物品。
【請求項35】
生地物品である請求項34に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−527654(P2009−527654A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554817(P2008−554817)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000299
【国際公開番号】WO2007/096513
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(501089863)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス) (173)
【Fターム(参考)】