説明

繊維プレスボード

【課題】 軽く、好ましくは曲げ強度も強く、吸水率が低く、通気性に優れ、さらには廃棄処分せずにリサイクル可能な繊維プレスボードを提供する。
【解決手段】 プレスされた繊維プレスボードであって、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維5〜80重量%と、該短繊維を構成するポリエステルの融点より40℃以上低い融点を有する繊維形成性ポリマーと、必要に応じて繊維形成性非弾性ポリエステルとからなり、前者が少なくとも繊維表面に露出した熱接着性繊維95〜20重量%(ただし、マトリックス繊維+熱接着性繊維=100重量%)で構成され、上記熱接着性繊維どうしの接触点および/または上記熱接着性繊維と上記非弾性ポリエステル系捲縮短繊維との接触点の少なくとも一部が熱接着しており、厚さが0.5〜10mm、かつ平均密度が0.1〜0.6g/cmの範囲内である繊維プレスボード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル性、硬さ、柔軟性、ソフト性に優れた繊維プレスボードに関し、特に靴中芯材用および各種人体のプロテクターの芯材などとして好適な繊維プレスボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプレスボードは、古紙パルプと製紙スラッジとを主成分として製造されていたが、このものは一般に密度がおおよそ1.0〜1.2g/cm3と重いうえ、弾性に乏しく曲げ強度が弱いものであった。さらに、このものは、主成分が古紙パルプおよび製紙スラッジであるが故に、吸水率も高く、靴内の湿気を呼び込んで、さらに強度低下を招くという欠点も有していた。そのうえ、歩行動作により加わる繰り返し曲げに対処する必要があり、適宜、補強材料を表裏面に積層したり、プレスボードを厚くするなどしなければならず、製造工程が煩雑になるうえ靴が重くなりがちであった。さらに、このようにすると、歩行時の足の動的変化にフィットした自然な靴の変形が充分に実現できず、歩きにくい靴となってしまう恐れがある。また、その高い吸水率から、中芯が常に湿気を含むこととなるため足が蒸れやすく、衛生面からも好ましくなく、吸湿に伴う中芯の強度低下により靴が型くずれし易いという問題があった。一方、人体用プロテクターとして使用の場合も、同様に汗を吸収し強度の低下を生じたり、非常に重くなるという問題があった。
【0003】
さらに、特許文献1(特開平10−28603号公報)には、古紙パルプと製紙スラッジからなるプレスボード成分中に、パルプおよび製紙スラッジ以外の短繊維素材を含有させることにより、軽量かつ柔軟で、吸水率も低くした、靴の中芯に好適なプレスボードとその製造方法を提供しているが、パルプなどを含むため、吸水時の強度が不十分であり、また単一素材でないためにリサイクルも容易ではない。
【特許文献1】特開平10−28603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレスボードにおいても、運動靴などは軽量化の要求が高くさらに、弾性に富んだ柔軟な素材であって曲げ強度が強く、吸水率も低いものが求められてきた。また、近年の社会的要請に鑑みれば、この種の素材においても、廃棄処分された場合に自然環境に与える影響を少なくすることが求められており、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プレスされた繊維プレスボードであって、
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維5〜80重量%と、該短繊維を構成するポリエステルの融点より40℃以上低い融点を有する繊維形成性ポリマーと、必要に応じて繊維形成性非弾性ポリエステルとからなり、前者が少なくとも繊維表面に露出した熱接着性繊維95〜20重量%(ただし、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維+熱接着性繊維=100重量%)で構成され、
上記熱接着性繊維どうしの接触点および/または上記熱接着性繊維と上記非弾性ポリエステル系捲縮短繊維との接触点の少なくとも一部が熱接着しており、
厚さが0.5〜10mm、
かつ平均密度が0.1〜0.6g/cmの範囲内
であることを特徴とする繊維プレスボードに関する
ここで、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維としては、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル捲縮短繊維が好ましい。
また、本発明の繊維プレスボードは、好ましくは、剛性が1,000gf・cm〜3,000gf・cm、吸水率が2%〜30%、通気性が30cm/m/s〜100cm/m/sであり、特に靴の中芯用として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の繊維プレスボードは、マトリックス繊維を構成する非弾性ポリエステル系捲縮短繊維と熱接着性繊維で構成されている。
【0007】
ここで、本発明の繊維プレスボードを構成する一方成分の非弾性ポリエステル系捲縮短繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはこれらの共重合体からなる捲縮短繊維ないしそれら短繊維の混綿体、または上記ポリマー成分のうちの2種類以上からなる捲縮複合短繊維などを挙げることができる。また、潜在捲縮短繊維、親水性油剤を付与したポリエステル系捲縮短繊維、吸湿加工したポリエステル系捲縮短繊維、ポリマー改質された吸湿、吸水性ポリエステル捲縮短繊維なども用いられる。これらの短繊維のうち、繊維形成性などの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートからなる捲縮短繊維が好ましい。特に、ポリトリメチレンテレフタレートからなる捲縮短繊維、または、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートを主体とした潜在捲縮短繊維が弾性回復率の点などからもっとも好ましい。
【0008】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートとは、主たる繰返し単位がトリメチレンテレフタレートであるポリエステルからなるものである。なお、ここでいう主たるとは、全繰返し単位の90モル%以上、好ましくは95モル%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなるポリエステルをいい、10モル%以下の範囲内で、例えばイソフタル酸、アジピン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどが共重合されていてもよい。
【0009】
かかる非弾性ポリエステル系捲縮短繊維の単繊維繊度は、あまりに細すぎると嵩性や反発性が低下し、カード性も悪化し、逆に太すぎると風合いやタッチが低下する傾向にあるので、0.8〜20デシテックス(dtex)の範囲が適当であり、特に1〜15デシテックスの範囲が好ましい。繊維長は、3〜150mmの範囲が適当であり、特に5〜76mmの範囲が好ましくエアレイド法には短カット長、カード法には長めのカット長が利用できる。
また、捲縮数は、カード通過性や嵩の点から3〜25個/インチ(2.54cm)、特に5〜20個/インチ(2.54cm)の範囲が適当であり、捲縮度は10〜30%の範囲が適当である。
【0010】
なお、上記非弾性ポリエステル系捲縮短繊維の断面形状は、円形、偏平、異形のいずれであってもよく、また断面内に中空部を有する形状であってもよい。また、上記捲縮の形態としては、ヘリックス状、オメガ状などの立体捲縮を有するものは、嵩高性および嵩回復性が向上し、クッション感のある繊維プレスボードが得られるので好ましい。
【0011】
一方、本発明の繊維プレスボードを構成する他方成分の熱接着性繊維は、上記非弾性ポリエステル系捲縮短繊維を構成するポリエステルの融点よりも40℃以上低い融点を有する繊維形成性ポリマーを熱接着性成分とするものであれば、該ポリマー単独からなる繊維であっても、該ポリマーよりも融点が高い繊維形成性ポリマー、好ましくは融点が該熱接着性成分よりも40℃以上高いポリマーとの複合繊維であってもよい。なお、複合繊維の場合にあっては、熱接着性成分が繊維表面の過半を覆っていることが好ましく、また、複合される繊維形成性ポリマーは、耐熱性、熱収縮性、繊維形成性の点からポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどの繊維形成性非弾性ポリエステルが好ましく、芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型などを例示できる。重量割合での複合比率は、熱接着性成分/繊維形成性成分で3/7〜7/3の範囲が適当である。
【0012】
好ましく用いられる熱接着性成分としては、主たる酸成分がテレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸など、主たるグリコール成分がエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコールなどからなる低融点ポリエステルが好ましい。また、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエステルエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどの熱可塑性エラストマー、低融点ポリアミド、ポリエチレン、酸変性ポリエチレンなどの低融点ポリオレフィンなどの熱可塑性エラストマーも、得られる繊維プレスボードの弾性回復性および耐久性などが良好となり好ましい。
【0013】
ここで、具体的なポリエーテルエステルエラストマーとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオールなどから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5,000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および/または1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体などのポリ(アルキレンオキサイド)クリコールの少なくとも1種から構成される三元共重合体が例示できる。
【0014】
なかでも、熱接着性や温度特性、強度の面から、ポリブチレン系テレフタレートをハードセグメントとし、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとするポリエーテルエステルエラストマーが好ましい。
【0015】
この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分がテレフタル酸、主たるジオール成分がテトラメチレングリコール成分であるポリテトラメチレンテレフタレートである。むろん、この酸成分の一部(通常、30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよく、同様にグリコール成分の一部(通常、30モル%以下)はテトラメチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されていてもよい。また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分は、テトラメチレンオキシド単位以外のオキシアルキレン単位で置換されたポリエーテルであってよい。
【0016】
なお、以上のポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、その他各種の改良剤なども必要に応じて配合されていても良い。
【0017】
上記熱接着性成分の融点は、上記のとおり、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維を構成するポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルなどの非弾性ポリエステルの融点より40℃以上低いことことが必要である。また、上記熱接着性成分の融点は、熱接着性繊維が複合繊維の場合には該複合繊維の他方成分の融点よりも40℃以上低いことが好ましい。
【0018】
この融点差が40℃未満になると、熱処理による融着加工時の安定性が低下して生産性が不十分となり、さらには非弾性ポリエステル系捲縮短繊維や熱接着性複合繊維の力学的特性が低下する場合がある。なお、熱接着性成分の融点が明確に観察されない場合には、融点を軟化点で代替する。
【0019】
以上に説明した熱接着性繊維の単繊維繊度は、0.5〜30dtexの範囲が好ましい。単繊維繊度が0.5dtex未満では繊維プレスボード製造工程でのカード紡出性が悪くなり、一方30dtexを超えるとウェブの絡合性が悪く、さらに繊維プレスボードとしての風合いが低下することがある。熱接着性繊維の繊維長は特に限定されるものではないが、上記非弾性ポリエステル系捲縮短繊維と同じく3〜150mmの範囲が適当であり、特に5〜76mmの範囲が好ましい。また、捲縮数は、カード通過性や嵩の点から3〜25個/インチ(2.54cm)、特に5〜20個/インチ(2.54cm)の範囲が適当であり、捲縮度は10〜30%の範囲が適当である。
【0020】
上記ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル捲縮短繊維などの非弾性ポリエステル系捲縮短繊維と熱接着性繊維との構成比率は、前者が5〜80重量%で後者が95〜20重量%の範囲、特に前者が30〜70重量%で後者が70〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0021】
前者の重量割合が5重量%未満の場合には、風合が粗硬なものとなったり、熱処理加工時に収縮が大きくなって表面に皺や凹凸が発生しやすくなる。一方、80重量%を超える場合には、熱接着性繊維の割合が低下して形成される熱固着点の数が少なくなり、繊維プレスボード製品としての強度が低下するだけでなく、圧縮などによる形態安定性も低下する。さらに、強度低下による工程安定性低下や使用時の形態安定性に大きな問題も発生する。
【0022】
繊維プレスボードを作成する方法としては、種々の方法で製造することができる。例えば、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維と熱接着性繊維とを混綿しカードなどで開繊しウェッブ化した後、ウェッブやそれらウェッブを積層し、熱処理し繊維間を融着させその後、カレンダーロール、または平板プレス機で圧縮する方法、ニードルパンチにより繊維絡合を行い、その後、一定の間隙を持たせた熱カレンダーローラーで処理する。また、ストルートと呼ばれる繊維を厚み方向に並べ熱処理したもの、または、さらにプレス加工するなどの方法などがある。
さらには、所定形状を持つモールドに所定量のウェッブを詰め込んで圧縮・加熱成型することにより得られる。
また、エアレイ法と呼ばれる短カット繊維を空気により分散しウェブを形成して、さらに熱処理することで繊維基材を得る方法などもある。
【0023】
本発明は、その厚みが0.5〜10mm、好ましくは1.0〜7mmの繊維プレスボードを対象とする。0.5mm未満では、厚みが薄すぎるためクッション感や形状維持の点で問題がある。一方、厚みが10mmを超える場合は、靴中芯材用として使用した場合、柔軟性が劣り靴の履き心地が非常に悪くなる。また、製造工程での取り扱い性も悪い。さらに、密度コントロールし難くなる。
なお、本発明の繊維プレスボードを、各種人体用プロテクターとして使用する場合、必要に応じ重ね合わせて使用しても良いし、スライスしたのち使用することも可能である。
【0024】
また、本発明の繊維プレスボードの平均密度は、0.1〜0.6g/cm3、好ましくは0.15〜0.50g/cm3である。上記密度が0.1g/cm3未満の場合は、繊維プレスボード強度の低下、隠蔽性、クッション感などの各種用途に必要な特性が得られなくなる。一方、該密度が0.6g/cm3を超える場合は、繊維プレスボードとしての柔軟性が失われるとともに、重量アップの原因ともなる。繊維プレスボードの平均密度を上記範囲に調整するには、ウエブを必要量積層し、熱処理後又は同時に厚み方向にプレスをしたり、または、ニードルパンチを組み合わせる方法や、ストルート製法において、繊維密度をアップするように繊維を縦方向に必要量押し込むことなどで可能である。
【0025】
なお、本発明の繊維プレスボードの剛性は、好ましくは1,000〜3,000gf・cm、さらに好ましくは1,100〜2,500gf・cmである。ここで、剛性は、JIS P8125により測定された値である。
剛性が1,000gf・cm未満では、激しい運動時の形状保持が難しく。一方、3,000gf・cmを超えると、柔軟性が損なわれ、運動を妨げることとなる。
剛性を上記範囲内にするには、使用繊維のデニール、断面形状、ボードの密度および熱接着性繊維の配合量、熱処理温度などで調整することが可能である。
【0026】
また、本発明の繊維プレスボードは、吸水率が2〜30%、好ましくは5〜25%である。ここで、吸水率は、JIS K6911により測定された値である。
吸水率が2%未満では、靴中芯材用として使用した時、運動時汗が中芯材表面にたまりやすく、足がすべるなどの問題が発生する。一方、30%を超えると、汗を保持する能力が高いため、着用時非常に蒸れた感じとなる。
吸水率を上記範囲内にするには、ポリエステル系捲縮短繊維を使用し、密度調整をすることで可能である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定した。
【0028】
繊維プレスボードの平均密度は、繊維プレスボードの目付および厚さから下記式により算出した。
平均密度=繊維プレスボードの目付/繊維プレスボードの厚さ
積層体の硬さ(剛性):JIS P8125、吸水率:JIS K6911に準拠して評価した。さらに、通気性は、フラジール通気性測定器により測定を実施した。
【0029】
[実施例1]
単繊維繊度11.7dtex(10.5デニール)、繊維長64mm、異方冷却によるへリックス状捲縮(捲縮数8個/インチ(2.54cm)、捲縮度20%)を有する中空率32%の中空丸断面ポリトリメチレンテレフタレート短繊維と、見かけの融点が110℃の共重合ポリエチレンテレフタレートを鞘成分とし、通常のポリエチレンテレフタレートを芯成分とする熱接着性複合短繊維〔偏心芯鞘型、複合重量比率50/50、単繊維繊度4.4dtex、繊維長51mm、押し込み捲縮(捲縮数10個/インチ(2.54cm)、捲縮度15%)〕とを重量比率で40/60で混綿し、ローラーカードでウェッブ化して目付450g/m2のウェッブを得、次いで得られたウェッブネット上にのせて温度165℃の熱風を60秒間貫通させ、熱接着性複合短繊維の一部を融着させて短繊維の交叉点の一部が熱融着した繊維構造物を80℃の金属製平板の間に挟みプレスを実施し取り出した後、室温にて冷却した。
得られた繊維プレスボードは、目付約525g/m2、厚み1.5mm、平均密度0.35g/cmを得た。得られた繊維プレスボードの性能を表1に示す。また、手でボードを押した時、クッション感があり、折り曲げ後の回復も良い物であった。
【0030】
[実施例2]
実施例1のポリトリメチテンテレフタレート短繊維の代わりにポリエチレンテレフタレート中空丸断面短繊維(単繊維繊度8.9dtex(8.0デニール)、中空率33%、繊維長64mm、異方冷却によるへリックス状捲縮(捲縮数11個/インチ(2.54cm)、捲縮度25%)以外は実施例1と同様にして繊維プレスボードを得た。得られた繊維プレスボードの性能を表1に示す。また、手でボードを押した時、クッション感があり、折り曲げ後の回復も良い物であった。
【0031】
[比較例1]
原料重量比で古紙パルプ80%、製紙スラッジ20%を多量の水と一緒にパルパーで混練し、このものにさらに水を加えて、最終厚さが1.5mmのプレスボードとなるよう抄紙し、プレス、乾燥工程を経てプレスボードを作成した。性能を表1に示す。
【0032】
[比較例2]
原料重量比で古紙パルプ65%、製紙スラッジ20%、3.3dtのビスコースレーヨン15%を多量の水を加えパルパーで混練し、このものにさらに水を加えて、最終厚さが2mmのプレスボードとなるよう抄紙し、プレス、乾燥工程を経てプレスボードを得た。得られた繊維プレスボードの性能を表1に示す
【0033】
[実施例3]
実施例1と同様のポリトリメチレンテレフタレート短繊維と、融点が152℃のポリエーテルエステルエラストマーを鞘成分とし、ポリブチレンテレフタレートを芯成分とする熱接着性複合短繊維とを重量比率で30/70で混綿し、熱風温度を195℃にした以外は、実施例1と同様にして繊維プレスボードを得た。得られた繊維プレスボードの性能を表1に示す。また、手でボードを押した時、クッション感があり、折り曲げ後の回復も良い物であった。
【0034】
[比較例3]
実施例1の熱接着性繊維の混率を10重量%に変更した例(比較例3)を表1に示す。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の繊維プレスボードは、ポリエステル系捲縮短繊維と、熱接着性繊維とから構成され、熱融着された厚さが0.5〜10mmの繊維プレスボードで軽量かつ柔軟で、吸水も殆どなく、通気性があるので、靴の中芯や各種人体用プロテクターなどのほか、パーテーション用ボードなどの用途に有用である。そのうえ、本発明の繊維プレスボードは、マトリックスとして、ポリエステル系捲縮短繊維で構成されているため、非常にリサイクルし易い素材となっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスされた繊維プレスボードであって、
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維5〜80重量%と、該短繊維を構成するポリエステルの融点より40℃以上低い融点を有する繊維形成性ポリマーと、必要に応じて繊維形成性非弾性ポリエステルとからなり、前者が少なくとも繊維表面に露出した熱接着性繊維95〜20重量%(ただし、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維+熱接着性繊維=100重量%)で構成され、
上記熱接着性繊維どうしの接触点および/または上記熱接着性繊維と上記非弾性ポリエステル系捲縮短繊維との接触点の少なくとも一部が熱接着しており、
厚さが0.5〜10mm、
かつ平均密度が0.1〜0.6g/cmの範囲内
であることを特徴とする繊維プレスボード。
【請求項2】
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維が、ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル捲縮短繊維である、請求項1に記載の繊維プレスボード。
【請求項3】
剛性が1,000gf・cm〜3,000gf・cmである、請求項1または2に記載の繊維プレスボード。
【請求項4】
吸水率が2%〜30%である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維プレスボード。
【請求項5】
通気性が30cm/m/s〜100cm/m/sである、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維プレスボード。
【請求項6】
靴の中芯用である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維プレスボード。

【公開番号】特開2006−241645(P2006−241645A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61075(P2005−61075)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】