説明

繊維含有製品を製造する方法およびシステム

本発明は、繊維材料を製造する方法およびシステムに関する。前記方法において、ウェブが形成されるように、繊維懸濁液がワイヤ上に供給され、形成されたウェブは、乾燥される。さらに、前記方法において、ウェブ形成後、ウェブは、ウェブの乾燥物含有量が所定の制限値を超えるまで、いかなる場合であっても少なくともプレス部まで、少なくとも部分的に前記ロングワイヤとの接触を連続的に継続される。繊維材料をウェブ形成機において製造するシステムは、ワイヤが少なくともウェブ形成部から実質的にプレス部まで連続して走行するように、ワイヤをウェブ形成機に位置付けるための締結手段を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維含有製品を製造する方法に関する。また、本発明は、繊維含有製品を製造するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的高いナノ繊維化セルロース(NFC)含有量を有する繊維含有シートは、格別興味深い性質を有することが明らかになっている。一片の表面の該一片の体積に対する相対的比率は、該一片がより小さくなる場合に、増加するので、ナノ粒子の性質は、巨視的な一片の性質と大きく異なる。ナノ繊維化セルロースによって達成されることができ、かつ産業界から関心を持たれている性質は、例えば、特に高い引張強さ、非常に低い空隙率、および部分的透光性である。とりわけ、これらの性質は、ナノ繊維化セルロースを、需要の多い原材料とするものであり、ナノ繊維化セルロースを含む製品は、幅広い工業的用途を有したであろう。
【0003】
現在のところ、紙または板紙のような繊維製品の原材料としてのナノ繊維化セルロースの応用は、実際のところ、様々な課題によって依然として限定されている。ナノ繊維化セルロースは、たとえ低コンシステンシであっても、ゲル状物質であり、高いナノ繊維化セルロース含有量を有する繊維材料から水を除去することは、時間がかかる場合が多い。さらに、ナノ繊維化セルロースの小粒子がすき網に特に強く付着するので、ナノ繊維化セルロースは、使用されるワイヤに容易にくっつき、それは、ナノ繊維化セルロースを含む繊維製品の製造工程において、粒子の強い付着により、ウェブをワイヤから剥離させることが相対的に大きな力を必要とするという問題を発生させることがある。ぬれたナノ繊維化セルロースが相対的に低い内部強度を有するという理由でワイヤへの付着によって生じる問題は、顕著なものとなる場合が多いので、ウェブをワイヤから剥離させるために要する力がぬれた繊維懸濁液の内部強度よりも大きくなることがある。特に、パルプ懸濁液中のナノ繊維化セルロース含有量が比較的高い場合、ウェブの内部湿潤強度は、ウェブとワイヤとの間の力に関連して低くなりやすく、無傷のウェブをワイヤから剥離させることが特に問題となる。
【0004】
先行技術の抄紙工程において、ウェブは、通常、ウェブがまだ低い乾燥物含有量を有しているごく初期の段階において、ワイヤから剥離されるので、ウェブ形成機における、パルプ懸濁液へのナノ繊維化セルロースの添加は、ウェブ形成機の格別に低い運転速度をもたらすことがあり、それは、ひいては、運転されるべきグレードの費用効率を実質的に減少させることがある。さらに、ナノ繊維化セルロースを含むウェブの脱水は通常の場合よりも遅いことがあるので、この問題は、顕著なものとなることがある。
【0005】
上述の問題に加えて、ナノ繊維化セルロースの使用におけるさらなる問題は、製造において一般的に使用されている現在のワイヤが、小さな粒子にとって、通常比較的目が粗く、そのようなワイヤが使用されるとき、ナノ繊維化セルロースの保持の程度が非常に低いレベルに留まることがあるという事実であるかもしれない。
【0006】
実験室条件下では、パルプをワイヤから剥離させる前述の問題、およびワイヤの密度の問題は、とりわけ、特に小さなメッシュのワイヤ、たとえば、その密度が200メッシュであってもよい、いわゆる細目ワイヤを使用することによって解決されている。このようにして、通常、十分に高い程度のナノ繊維化セルロースの保持が達成される。高いナノ繊維化セルロース含有量を有する繊維シートを細目ワイヤ上に先ず製造することに加えて、該繊維シートは、実験室条件下では、細目ワイヤ上で該シートの乾燥物含有量が増加するまで乾燥もされている。ナノ繊維化セルロースを実質的に含有するシートの乾燥強度は、該シートの湿潤強度よりもかなり高く、そのため十分な程度まで乾燥されたシートは、通常、何の問題もなく、ロングワイヤから剥離させることができる。
【0007】
繊維ウェブが乾燥されたとき、繊維ウェブは、収縮する傾向を有する。通常、ウェブのような製品は、ウェブの長手方向において、きつく締められるので、通常、乾燥収縮の問題は、ウェブの幅方向において現れる。これらの問題は、従来の繊維製品の製造、および実質的にナノ繊維化セルロースを含有する繊維製品の製造の両方において、発生することがある。乾燥収縮は、ウェブが乾燥されたときに起るので、ウェブが、ウェブが形成されるすき網に通常よりも長く接触するように、運転することにより、当該問題を克服することができる可能性がある。
【0008】
大規模な場合において、たとえば製紙工場において、前述のこれらの問題に対する現実的な解決法はなかった。したがって、種々のウェブ形成機または類似の機械における製造工程で、繊維製品がより良い手法によって製造され得る解決法の必要性があったであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、繊維製品が十分に長い時間ウェブが形成されるすき網に接触するような方法において、低い乾燥物含有量によって引き起こされる前述の問題に対する解決法を見出すことである。有利な実施形態に従って、本発明の目的は、ナノ繊維化セルロースを含有する繊維ウェブを、ウェブのような繊維製品の製造におけるワイヤから剥離させる問題を、ウェブが該ワイヤから剥離されるより前にウェブを十分な程度まで乾燥させることによって緩和することである。別の有利な実施形態において、本発明の目的は、幅方向におけるウェブの乾燥収縮を低減および/または制御することである。
【0010】
本発明に従う解決法において、ウェブのワイヤからの剥離は、ウェブの乾燥物含有量が所定の制限値に到達した段階で行われることができる。有利な実施形態において、このことは、ウェブの内部強度が、ウェブとワイヤとの間の実効的な力よりも大きくなったときに達成される。このようにして、ウェブは、ワイヤから剥離されたときに、無傷であることができる。有利な実施形態に従って、ウェブを破損させることなく、依然として、ウェブがワイヤから剥離され得るような方法で、相当量のナノ繊維化セルロースが製品に含まれることができる。別の有利な実施形態に従って、ウェブの乾燥物含有量が、ウェブの幅方向における乾燥収縮が所望の程度まで減少した量であるときに、ウェブをウェブ形成ワイヤから剥離させることができる。
【0011】
本発明の実施形態に従って、ウェブの形成から少なくともプレス部まで、たとえば少なくともプレスの第1のプレスニップを越える位置まで、好適にはウェブ形成機の乾燥部まで、ウェブは少なくとも1つのワイヤ上に支持される。この場合、ウェブは、実質的かつ連続的に、ウェブ形成から少なくとも上述の場所までずっと、同一の少なくとも1つのワイヤによって支持される。一実施形態において、製造されるべきウェブは、実質的に少なくともプレス部の中間まで、少なくとも1つの同一のワイヤによって支持される。一実施形態に従って、ウェブは、ウェブの形成から乾燥部における第1の乾燥グループを越える位置まで、好適には実質的に乾燥部の中間まで、同一のワイヤによって支持される。一実施形態において、ウェブは、乾燥部全体を越える位置まで、たとえばウェブが、ウェブ形成機の第1のカレンダ、被覆ユニット、または機械ロールに近接する位置まで、同一のワイヤによって支持される。
【0012】
一実施形態において、ウェブは、1つだけのロングワイヤによって支持される、すなわちウェブの一方側だけにおいて支持される。ロングワイヤが使用される有利な実施形態において、ロングワイヤのメッシュサイズは、ナノ繊維化セルロースを含有する繊維材料の保持力を改善することが可能であるように、有利に選択される。本発明の一実施形態において、ウェブは、抄紙において慣用されるワイヤよりも密度が高いワイヤ、いわゆる細目ワイヤによって支持される。一実施形態の例において、これらの細目ワイヤは、ウェブの両側に設けられる。
【0013】
本発明の一実施形態において、ウェブと接触しているロングワイヤは、ロングワイヤよりも粗目であってもよい別個のワイヤによって支持される。この場合、好適には、ロングワイヤは、パルプと通常のワイヤとの間に配置される。これらのいわゆるノーマルワイヤのうちの幾つかは、ロングワイヤが走行する経路全体に沿って配置されることができる、または、たとえば乾燥部だけに配置されることができる。有利な実施形態において、ウェブは、両側をロングワイヤによって少なくとも乾燥部までずっと支持され、ノーマルワイヤは、まったく適用されない、または乾燥部だけにおいて適用される。
【0014】
本発明に従う繊維製品を製造する方法は、請求項1において提示される事項によって主に特徴付けられる。本発明に従う繊維製品を製造するシステムは、請求項6において提示される事項によって主に特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一例に従うワイヤ解決策を有するウェブ形成機の実施形態を示す側面図である。
【図2】図1に示された実施形態に従うワイヤ解決策の有利な詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本願において、繊維材料を含むウェブを製造するための機械をウェブ形成機と呼ぶ。そのような機械は、たとえば抄紙機、板紙機、または別の類似の機械であってもよい。
【0018】
ウェブは、連続するウェブの形で流れる平面的な製品であり、その基本的構造が、少なくとも部分的に繊維から形成された網目である、または繊維の一部であるものを言う。少なくとも繊維のうちの幾つかは、セルロースを含む。また、ウェブは、各種量の、充填剤、界面活性剤、および添加剤等の他の物質を含んでもよい。さらに、通常、製造工程において、水が使用される。製造工程の最終的な製品は、たとえば紙、板紙、薄い木材プラスチック複合材、または類似の製品であってもよい。
【0019】
本願において、細目ワイヤは、少なくとも130、140、または150のメッシュ数を有する、高密度のワイヤを言う。細目ワイヤは、たとえば、少なくとも180、少なくとも200、または少なくとも220のメッシュ数を有するワイヤのように、より高密度であってもよい。本願において、ノーマルワイヤは、ウェブ形成機において通常使用される、先行技術の湿潤ワイヤ、または乾燥ワイヤを言う。メッシュ数は、ワイヤのようなフィルタにおける、1インチあたりのフィラメントの数を示す。
【0020】
本願において、ロングワイヤは、実質的にウェブ形成部(ワイヤ部)から少なくともプレス部まで、好適にはプレス部における第1のプレスニップまで延びる、ワイヤを言う。
【0021】
ノーマルワイヤ9は、慣用のワイヤを言い、湿潤ワイヤおよび乾燥ワイヤの両方を含む。ノーマルワイヤ9は、本願において、第2ワイヤ9とも言われる。
【0022】
ナノ繊維化セルロース(NFC)は、シングルミクロフィブリルが互いに分離した繊維材料を言う。ナノ繊維化セルロース粒子は、通常、1μm以下の長さを有し、それらの直径は、通常、1μmより小さく、約2nm〜200nmである。ナノ繊維化セルロース粒子の大きさは、ナノ繊維化セルロースの製造方法に依存する。従来のセルロースの粉砕とは違って、ナノ繊維化セルロースの製造においては、セルロース繊維を破砕することを目的とする。その外見において、通常、ナノ繊維化セルロースは、透明なゲル状物質である。
【0023】
図1は、本発明の有利な実施形態を示す。図2は、図1の実施形態に従うワイヤ解決策の有利な詳細を示す。図1および図2は、ウェブ形成機1、ヘッドボックス2、ウェブ形成部(ワイヤ部)3、プレス部4、乾燥部5、カレンダ6、リールアップ7、ロングワイヤ8、ノーマルワイヤ9、およびウェブ10を示す。
【0024】
本発明に従う解決策において、1つ以上のノーマルワイヤ9が設けられてもよいが、本発明に従う解決策は、ノーマルワイヤ9をまったく備えないことも可能である。ノーマルワイヤ9は、特に機械の少なくとも1つのロングワイヤが存在する部分から、除かれることができる。本発明の有利な一例において、ロングワイヤ8は、好適には、細目ワイヤである。本発明の有利な一例に従って、ノーマルワイヤ9は、ウェブ形成機において、ノーマルワイヤが、少なくとも部分的に、ロングワイヤ8とウェブ形成機のロールとの間に配置されるように、ロングワイヤ8と実質的に同じ位置において使用されることができる。このようにして、ノーマルワイヤ9は、1または複数のロングワイヤ8の摩耗を防止してもよい。このことは、ロングワイヤ8が比較的高価なワイヤであることがあり、ロングワイヤ8よりもノーマルワイヤ9を交換する方が高価でない場合が多いので、有利である。
【0025】
通常、ウェブ10は、ヘッドボックス2からウェブ形成部3に供給される。本発明に従う機械において、少なくとも1つのロングワイヤ8があり、通常、適切なロングワイヤの数は、ウェブ10形成機1の種類に依存する。通常、ロングワイヤ8の数は、ウェブ形成機1の種類に依存して、正確に1、または正確に2である。ロングワイヤ8は、ウェブ形成部3において、ノーマルワイヤ9(a)によって支持されることができる。この場合、ノーマルワイヤ9(a)は、ロングワイヤ8の摩耗を遅くすることができる。
【0026】
ウェブ形成部3から、ウェブ10は、少なくとも1つのロングワイヤ8に支持されて、通常、乾燥工程におけるプレス4部に搬送され、そこでは、ロングワイヤ8は、プレス部のノーマルワイヤ9b,9cによって支持されることができ、その場合、ノーマルワイヤ9b,9cは、ロングワイヤ8の摩耗を遅らせることができる。プレス部において、ノーマルワイヤ9b,9cのうちの1つまたは両方は、それらがロングワイヤ8によって置き換えられた場合には、本発明に従う解決策から排除されることもできる。有利な実施形態において、ロングワイヤ8は、ウェブ形成部3からプレス部4の第1のプレスニップを越える位置までウェブ10を支持するために配置され、その後、ロングワイヤ8は、再び、ウェブ形成部に導かれる。別の有利な実施形態に従って、ロングワイヤ8は、プレス部4における第2のプレスニップおよび/または第3のプレスニップを越える位置までウェブを支持するために配置され、その後、ウェブは、ロングワイヤ8から剥離され、次いで、ロングワイヤ8は、ウェブ形成部3に導かれる。
【0027】
プレス部4から、ウェブ10は、さらに乾燥部5に有利に導かれる。有利な実施形態において、ウェブ10は、少なくとも1つの同一のロングワイヤ8に支持されて、ウェブ形成部3から乾燥部5に導かれる。有利な実施形態において、ロングワイヤは、ウェブ10が、ウェブ形成部3から乾燥部5における、第1の乾燥グループ、第2の乾燥グループ、第3の乾燥グループ、第4の乾燥グループ、または第5の乾燥グループのような、所望の乾燥グループまでずっと同一のロングワイヤ8に接触するように、配置される。ウェブ10は、次いで、ロングワイヤ8から剥離され、その後、工程を進められ、ウェブは、従来の抄紙のように、たとえばノーマルワイヤ9と接触することができる。乾燥部5は、ロングワイヤ8に加えて、1つ以上のノーマルワイヤ9d〜9gを備えてもよい。ノーマルワイヤ9のうちの少なくとも幾つかは、ウェブ形成機1の乾燥部5におけるロングワイヤ8と実質的に同一の位置に設けられてもよく、ロングワイヤ8とウェブ形成機1の1つ以上のロールとの間に配置されてもよく、ノーマルワイヤ9は、ロングワイヤ8の摩耗を遅らせてもよい。
【0028】
1つのロングワイヤ8が設けられてもよく、その場合、該ロングワイヤ8は、ウェブ10の一方側に配置されてもよく、あるいは、たとえば、第1のロングワイヤがウェブ10の一方側に配置され、他方のロングワイヤがウェブ10の他方側に配置されるように、2つのロングワイヤ8が設けられてもよい。2つのロングワイヤが設けられる場合、ノーマルワイヤ9は、たとえば、必要に応じて、1つのロングワイヤに関連して設けられてもよく、あるいは両方のロングワイヤ8に関連して設けられてもよい。場合によっては、両方のロングワイヤ8に関連させてノーマルワイヤ9を配置することが、たとえばロングワイヤ8の摩耗を防止するために好適であってもよい。2つのロングワイヤ8が機械にある場合、すなわち、好適には、ウェブの各側に1つのロングワイヤ8がある場合、ロングワイヤ8からのウェブの剥離は、実質的に同じ時刻または実質的に異なる時刻において行われてもよく、すなわち、ウェブ10は、先ずロングワイヤ8から剥離され、次いで、他方のロングワイヤ8から剥離されるように、1つずつ行われてもよい。多くの場合において、工程の機能性を考慮して可能でありさえすれば、1つだけのロングワイヤ8を使用することが、コストを最小化するために、より好適である。しかしながら、場合によっては、ウェブの乾燥長さの少なくとも一部で2つのロングワイヤ8を使用することが必要となる。この種の状況は、たとえば、いわゆるギャップフォーマに関連して発生してもよい。
【0029】
ロングワイヤ8は、少なくともウェブ10形成部3からウェブ10のプレス部4まで、たとえばプレス部の中間まで、または乾燥部5までずっと、ウェブ10がロングワイヤ8に連続して接触するように、ウェブ形成機1において、有利に配置される。ウェブ形成機1が、ロングワイヤ8に接触しているノーマルワイヤ9を備える場合、好適には、ロングワイヤ8は、ロングワイヤ8が少なくとも1つのノーマルワイヤ9とウェブ10との間のウェブ10の少なくとも一方の側にあるように、配置される。ロングワイヤ8およびウェブ10は、好適には、ウェブ10がロングワイヤ8から剥離させられるために十分に乾燥するまで、互いに接触させられる。所望のウェブの乾燥物含有量は、たとえばワイヤから剥離されたときにウェブが無傷であるように、および/または、ウェブの幅方向における乾燥収縮を防止し得るように、決定されることができる。その後で、ウェブ10は、必要に応じて、ノーマルワイヤ9によって支持されることができる。
【0030】
可能なノーマルワイヤの数および位置は、前述の幾つかの有利な実施形態からさらに大幅に変化してもよい。本質的な態様は、少なくともウェブ形成部3からプレス部4まで、より好適には乾燥部まで、または、たとえば可能な第1のカレンダもしくは機械ロールまでずっと、ロングワイヤが、連続的な方式で、ウェブ10を支持するように、ロングワイヤ8が、ウェブ形成機1に配置されるということである。通常、カレンダ6を介してロングワイヤ8を挿入することは、所望の最終結果にとって必要ではなく、所望の最終結果を考慮して、カレンダ6を介して、ロングワイヤを搬送しないことが好適であってもよい。
【0031】
好適には、ロングワイヤ8は、ロングワイヤ8またはその一部を、ロングワイヤの各周の間に、クリーニングするためのクリーニング部材を備える。実際には、このことは、たとえばロングワイヤ8をクリーニングするための、ジェットのような、先行技術における適切なクリーニング部材を搭載することによって実装されることができる。好適には、このロングワイヤ8の各位置のクリーニングは、ウェブ10がロングワイヤ8から剥離された後、当該位置が、再び、ウェブ形成機のウェブ形成部(ワイヤ部)にウェブ10が供給される位置となる前に、常に行われる。
【0032】
ウェブ10の効率的な乾燥を保障するために、ウェブ形成部3および/またはプレス部4に乾燥を促進するための幾つかの別個の手段または装置を提供することが有利であることが多い。これらは、たとえばサクションボックスおよび/またはサクションロールのような、先行技術の手段または装置であってもよい。特に、2つのワイヤが重ねられている場合、そのような装置を通常の場合よりも多く提供する、および/または、これらの装置が通常の場合よりもより効率的である必要がある。
【0033】
ウェブ10は、ウェブ10の乾燥物含有量が十分になった段階で、ロングワイヤ8から剥離されることができる。乾燥物含有量は、たとえば少なくとも8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、または14重量%である場合に十分であるとしてもよいが、たとえば、ワイヤの構造のために、有利に、少なくとも15重量%、18重量%、20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、または少なくとも60重量%であってもよい。適切な乾燥物含有量は、とりわけ、ウェブを乾燥させるための装置、および特にウェブと接触するワイヤの性質によって影響される。
【0034】
一例において、本発明の結果、パルプ懸濁液におけるナノ繊維化セルロース含有量を高く設定することができ、たとえば最終的な製品における所望の性質を達成することが可能になる。したがって、本発明に従うロングワイヤ解決策を適用することにより、ウェブ10の乾燥物の少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%がナノ繊維化セルロースからなるように、パルプにおいて比較的大量のナノ繊維化セルロースを含ませることも可能になる。必要であれば、たとえば最終的な製品の性質によって必要とされる場合には、ウェブ10の乾燥物の少なくとも80重量%、または、さらに少なくとも90重量%がナノ繊維化セルロースからなるように、さらに多くのナノ繊維化セルロースを含ませることが可能である。場合によっては、ウェブにおけるナノ繊維化セルロース含有量が増加した場合、ウェブのワイヤからの剥離が増加前よりもより困難になるので、本発明の解決法は、より有用になる。本発明に従う解決策により、機械の技術的特性がナノ繊維化セルロースの量の増加を妨害する状況を、部分的または全体的に、防止することが可能であってもよい。
【0035】
解決策の一例に従って、ウェブを相当の力によってワイヤに支持することは、当該支持が、十分に長い時間継続する、またはさらに実質的にウェブの乾燥経路全体に沿って継続する場合、幅方向におけるウェブの乾燥収縮を防止してもよい。特に、この場合、本発明は、いわゆるノーマル繊維ウェブの製造においても有用であってもよく、とりわけ幅方向における乾燥収縮を制御するために有用であってもよい。ナノ繊維化セルロースを含有するウェブの製造において、ナノ繊維化セルロースの添加が、ウェブの乾燥収縮、特に幅方向における乾燥収縮を増大させる影響を及ぼす場合が多いことが明らかになっているという点において、さらなる利点が達成される。先行技術の解決策が用いられる場合、幅方向における前述した種類の乾燥収縮は、したがって、10%を超えることさえある。乾燥収縮の大部分は乾燥の最後に発生することが多く、その場合、ウェブをロングワイヤ8上に維持することが、特にウェブ形成部から実質的に乾燥部の最後まで維持するときに、実質的に乾燥収縮を防止してもよい。
【0036】
本発明は、ナノ繊維化セルロースを含有するパルプに対して特に重要であるが、本発明は、ナノ繊維化セルロースを含有しない繊維パルプに関連して適用することもできる。このようにして、たとえばプレス部におけるウェブの破損を実質的に軽減することが可能であってもよい。さらに、幅方向におけるウェブの収縮の制御が容易にされてもよい。本発明は、種々のウェブ形成機での適用に適しており、先に提示された例は、本発明を限定するものではない。したがって、本発明は、図1および図2、ならびに前述の記載において提示された例だけに限定されず、本発明は、以下の請求項において提示される事項によって特徴付けられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙、板紙、または類似の繊維材料を製造する方法であって、
ウェブ(10)が形成されるように、パルプ懸濁液が第1のワイヤ(8)上に供給され、
形成されたウェブ(10)は、乾燥される方法において、
さらに、前記ウェブ(10)の形成後、前記ウェブ(10)は、ウェブ形成部(3)からプレス部における第1のプレスニップまで連続して同一のワイヤ(8)との接触が継続されることを特徴とする、紙、板紙、または類似の繊維材料を製造する方法。
【請求項2】
ナノ繊維化セルロースがウェブに含まれ、ウェブにおけるナノ繊維化セルロース含有量が、乾燥物含有量で計算して、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、または少なくとも40重量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウェブにおけるナノ繊維化セルロース含有量は、乾燥物含有量で計算して、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1のワイヤ(8)は、その経路上の少なくとも一部で、少なくとも一方側を、第2のワイヤ(9)によって支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法において、使用される前記第2のワイヤ(9)は、そのメッシュサイズが第1のワイヤ(8)のメッシュサイズよりも大きい、および/または、第1のワイヤ(8)よりも短い全長を有することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ウェブは、ウェブの乾燥物含有量が少なくとも10重量%、12重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、または少なくとも50重量%になるまで連続して第1のワイヤとの接触が継続されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
紙、板紙、または類似の繊維材料を製造するシステムであって、前記システムは、ウェブ形成機(1)を含み、前記ウェブ形成機は、少なくとも
第1のワイヤ(8)と、
ウェブ(10)の形成のために、パルプ懸濁液を、前記第1のワイヤ(8)上に供給する手段を備えるウェブ形成部(3)と、
ウェブの水分含有量を減少させるための手段を備えるプレス部(4)とを含むシステムにおいて、
前記第1のワイヤ(8)は、少なくともウェブ形成部(3)からプレス部(4)まで連続して走行するように、前記ウェブ形成機(1)に配置され、前記ワイヤ(8)は、形成されるべきウェブを、ウェブ形成部(3)から少なくともプレス部の第1のプレスニップまで連続して支持することを特徴とする、紙、板紙、または類似の繊維材料を製造するシステム。
【請求項8】
前記システムは、少なくとも乾燥部(5)を含み、乾燥部は、ウェブの水分含有量を実質的に温度の効果によって減少させるための手段を備え、第1のワイヤ(8)は、第1のワイヤ(8)が少なくともウェブ形成部(3)から乾燥部(5)まで連続的に走行するように、ウェブ形成機(1)に配置されることを特徴とする請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記乾燥部(5)は、第1の乾燥群、第2の乾燥群、および第3の乾燥群を含み、第1のワイヤ(8)は、第1のワイヤがウェブ形成部(3)から少なくとも乾燥部(5)の第2の乾燥群または第3の乾燥群まで連続的に走行するように、配置されることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは、第1のワイヤ(8)だけでなく第2のワイヤ(9)も含み、第2のワイヤ(9)は、第2のワイヤ(9)が幾つかの段階でロングワイヤ(8)に接触するように、第1のワイヤ(8)を支持すべくウェブ形成機(1)に配置されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、第3のワイヤをさらに含み、第3のワイヤは、ウェブ形成機(1)に配置され、第3のワイヤも、少なくともウェブ形成部(3)からプレス部(4)まで連続的に走行し、かつ形成されるべきウェブをウェブ形成部(3)から少なくともプレス部における第1のプレスニップまで連続的に支持するようにウェブ形成機(1)に配置されることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−516553(P2013−516553A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546475(P2012−546475)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/FI2010/051052
【国際公開番号】WO2011/080386
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(509335384)ウーペーエム−キュンメネ コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】UPM−Kymmene Corporation
【Fターム(参考)】