説明

繊維布帛処理用液体組成物、機能性繊維布帛およびその製造方法

【課題】 ゲストとしてヨウ素やヨードホールを有するCDやCD誘導体を、繊維布帛に強固に固着することによって、洗濯を繰り返した場合でも高い制菌性、消臭性が持続し、風合い(柔軟性、ドレープ性)にも優れる機能性繊維布帛を提供する。
【解決手段】 シクロデキストリン−ヨウ素包接体を少なくとも含むシクロデキストリン類である成分(X)と、特定の2官能性単量体である成分(A)と、特定の官能基を有する単量体である成分(B)と、特定の官能基を含む単量体(C1)、および/または、特定の官能基を有する水溶性ポリマー(C2)である成分(C)とを含み、pHが7以下である繊維布帛処理用液体組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維布帛処理用液体組成物、該繊維布帛処理用液体組成物を用いて得られる機能性繊維布帛およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリン(以下、CDと略記する)は、馬鈴薯やトウモロコシ澱粉から酵素反応等によって得られる、複数のブドウ糖分子が環状に連なったオリゴ糖であり、天然に存在している。CDは、その環状構造の内部に疎水性の分子を取り込んで包接化合物を形成する性質(包接能)がある。すなわち、ある特定物質をゲストとして吸着・捕獲して包接体を形成し、さらにその吸着・捕獲した特定物質を放出・除去する性質を持つ。CDは、環状構造の大きさや包接能の大きさという観点から区別すると、6量体であるα−CD(内径:0.45nm)、7量体であるβ−CD(内径:0.70nm)、8量体であるγ−CD(内径:0.85nm)などの種類がある。
また、CDの水酸基を化学修飾したCD誘導体として、様々なものが提案されている。
【0003】
CDやCD誘導体は、上述のような包接能を有することから、例えば、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、イソ吉草酸等の悪臭物質をゲストとして吸着・捕獲できる。そのため、CDやCD誘導体を特定の物品に含有させることにより、その物品に消臭機能を付与することが期待されている。
このような物品の好適な例として、繊維布帛が挙げられる。繊維布帛は、繊維や糸の織り込み等の状態にもよるが、通常、広い表面積を持つものが多く、CDやCD誘導体を広い表面全体に存在させることができる。よって、このようにCDやCD誘導体が付与された繊維布帛は、対象とする悪臭物質などを効率よく吸着・捕獲でき、食品や化粧品など種々の業界での応用展開が期待できる。また、その際、CDやCD誘導体が繊維布帛に耐久性(耐洗濯性等)のある状態で固着されていれば、悪臭物質を吸着させた後、水洗や洗濯等により悪臭物質のみを再度放出し、除去することができ、消臭・防臭性能を復活させることも可能である。
【0004】
このような背景下、繊維布帛にCD誘導体を耐久性(耐洗濯性等)のある状態で固着する方法として、特許文献1および2には、繊維布帛に、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリン等のCD誘導体を、共有結合により固着する方法が記載されている。これは、繊維布帛として親水性であるセルロース系の繊維布帛を用い、CD誘導体として、水溶性かつ反応性であるものを用いることにより、該セルロース系繊維布帛の表面のOH基とCD誘導体の反応基とを共有結合させ、多少は耐久性のある固着を実現したものである。
【0005】
疎水性の繊維布帛に特定の機能を付与する技術としては、例えば、合成繊維布帛であるポリエステル繊維布帛に吸水性・吸湿性を付与するために、アクリル系モノマーをはじめとする各種のモノマーを合成繊維布帛上で重合させる方法が知られている。
さらに、アクリル系モノマーを合成繊維布帛上で重合させるだけでなく、特定の機能を有する物質をこれらのモノマーに添加して重合させることで、物質の有する機能を合成繊維布帛に付与する技術も開示されている。
例えば、特許文献3では、絹フィブロン水溶液を添加したアクリル系モノマーを、合成繊維布帛上で重合させることで、絹のような柔軟性やドレープ性等の風合いを実現している。また、特許文献4には、コラーゲンや抗菌剤(第四級アンモニウム塩型界面活性剤、キトサンなど)の水溶液、分散液を添加したアクリル系モノマーを、合成繊維布帛上で重合させることで、耐久性のある抗菌性を付与することが記載されている。さらに、特許文献5には、塩型カルボキシル基と架橋構造を有するアクリル系重合体からなる微粒子を添加したアクリル系モノマーを、合成繊維布帛上で重合させることで、耐久性のある顕著な吸放湿性を得ている。
【0006】
一方、CDやCD誘導体とゲストとなる特定の物質とを組み合わせた包接体を使用することにより、特定の優れた機能を発現させることも検討されている。
ゲストとなる物質としては、次亜塩素酸に匹敵する優れた抗菌性を有するとともに、人体に対して比較的安全であり、従来より消毒剤などとして広く使用されているヨウ素がある。例えば、特許文献6および7には、界面活性剤や重合体を担体としたヨウ素の複合体であるヨードホールをゲストとして有するヨードホール−CD包接体は、ヨウ素と同様な抗菌性および抗菌スペクトルを有しながらヨウ素特有の臭いが抑制され、取り扱いも容易であることから、これを熱可塑性樹脂に配合して、抗菌性を備えた樹脂組成物を得ることが記載されている。
【特許文献1】特開平08−067702号公報
【特許文献2】特開2002−065839号公報
【特許文献3】特開平06−158545号公報
【特許文献4】特開平07−300770号公報
【特許文献5】特開2002−038375号公報
【特許文献6】特開平09‐151106号公報
【特許文献7】特開平10‐245403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景下、ゲストとしてヨウ素やヨードホールを有するCDやCD誘導体を、繊維布帛に含有させることで、これらに起因する特性を備えた機能性繊維布帛が得られると考えられる。
しかしながら、従来、このようなものを、繊維布帛に強固に固着する方法は見出されていなかった。
すなわち、特許文献1および2に記載された固着方法は、対象となる繊維布帛がセルロース系である場合には多少有効であるものの、十分とは言えないし、合成繊維布帛に適用することは困難である。これは、合成繊維は一般に疎水性であり、セルロース系繊維布帛のように表面にOH基が存在しないか、存在したとしても微量であるため、親水性のCDやCD誘導体を固着させようとしても固着しにくいためである。また、たとえ固着したとしても、その度合いは水洗や洗濯等により容易に流出してしまう程度である。そのため、ある程度の量を繊維布帛に固着するには、固着処理を何度も施す必要が生じると考えられる。
また、特許文献3ないし5には、疎水性の合成繊維布帛に特定の成分を固着させることは記載されているものの、その付着量はせいぜい数質量%で不十分であるし、CDやCD誘導体を固着させることについては全く記載されていない。さらに、たとえこの技術を利用したとしても、CDやCD誘導体を合成繊維に十分に固着させることはできない。
【0008】
また、特許文献6および7には、ヨードホール−CD包接体を熱可塑性樹脂に配合することについては記載されているものの、これらを繊維布帛に十分に固着して、洗濯などに対する耐久性を備えた繊維布帛を得ることについては、一切記載されていなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ゲストとしてヨウ素やヨードホールを有するCDやCD誘導体を、繊維布帛に強固に固着することによって、洗濯を繰り返した場合でも高い制菌性、消臭性が持続し、風合い(柔軟性、ドレープ性)にも優れる機能性繊維布帛とその製造方法、さらにこのような機能性繊維布帛を製造するための繊維布帛処理用液体組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の繊維布帛処理用液体組成物は、CD−ヨウ素包接体を少なくとも含むCD類である成分(X)と、特定の一般式で示される2官能性単量体である成分(A)と、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する単量体である成分(B)と、少なくとも1個のアジリジン基を含む単量体(C1)、および/または、カルボジイミド基、エチレンイミン基、オキサゾリン基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する水溶性ポリマー(C2)である成分(C)とを含み、pHが7以下であることを特徴とする。
前記繊維布帛処理用液体組成物は、溶媒として、水および/または炭素数1〜3の脂肪族低級アルコールを含有することが好ましい。
本発明の機能性繊維布帛は、繊維布帛上で、前記繊維布帛処理用液体組成物を重合させてなることを特徴とし、このようなものとして、前記成分(X)および前記成分(A)〜(C)が繊維の表面および内部に導入されているものも含まれる。
また、本発明の機能性繊維布帛によれば、社団法人繊維評価技術協議会の制菌基準を達成することもできる。
本発明の機能性繊維布帛の製造方法は、前記繊維布帛処理用液体組成物を繊維布帛に接触させる接液工程と、繊維布帛上で該繊維布帛処理用液体組成物を重合させる重合工程とを有する。
前記重合工程で、繊維布帛に成分(X)、および成分(A)〜(C)がグラフト重合することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制菌性、消臭性を備えた成分が繊維布帛に強固に固着し、洗濯を繰り返した場合でも高い制菌性、消臭性が持続し、風合い(柔軟性、ドレープ性)にも優れる機能性繊維布帛を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
[繊維布帛処理用液体組成物]
本発明の繊維布帛処理用液体組成物(以下、液体組成物という。)は、(1)ヨウ素を包接するCD、(2)ヨウ素を包接するCD誘導体、(2)ヨードホールを包接するCD、(4)ヨードホールを包接するCD誘導体、のうちの1種以上を含むCD類を、成分(X)として含有する。本発明においては、これら(1)〜(4)をいずれも「CD−ヨウ素包接体」という。
【0013】
CD−ヨウ素包接体とは、CDまたはCD誘導体をホストとし、ヨウ素やヨードホールをゲストとして、包接体を形成したものであり、ヨウ素に特有の不快臭や着色性などの欠点が解消されているにもかかわらず、ヨウ素やヨードホールに由来する強い制菌作用と、広い制菌スペクトル(細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、真菌、ウィルス(一般ウィルス、HBV、HIV)とを維持している。また、CD−ヨウ素包接体は、ヨウ素が徐放されたCDに由来する、アンモニアやメチルメルカプタン、硫化水素等の酸性・塩基性の双方の悪臭物質を吸着・捕獲する消臭性を有するとともに、ヨウ素、ヨードホールの酸化力に由来する消臭性をも有する。
ここでヨードホールとは、界面活性剤や重合体を担体としたヨウ素の複合体であり、分子ヨウ素と同様に、バクテリア、ウィルス、カビ、胞子菌、プロトゾア、イースト菌等の微生物を殺菌するのみならず、ある種の寄生虫類、線虫類等に対しても駆除能力を有することが知られている。また、ヨードホールは、微生物の耐性が形成されないという利点や、古典的なハロゲン系抗菌剤に比して、安全性が高く、取り扱いも容易であり、人や動物に対する刺激も少ないという利点を有している。
【0014】
CDは、天然にも存在するが、一般には、デンプンに耐アルカリ性菌の1種であるバチルスの酵素を作用させることにより製造される。また、CDは、円錐台形の形状を有しており、狭い方の口にグルコース単位の1級水酸基が位置し、広い方の口に2級水酸基が位置していて、水になじみやすい構造となっているとともに、両方の水酸基で挟まれているCDの壁が水をはじく疎水性の壁となっている。
CDとしては、α型、β型、γ型のものがあり、これらを1種単独で使用しても2種以上を併用してもよいが、ヨウ素やヨードホールをゲストとして包接するには、その包接能の大きさからβ型が好ましい。β−CD−ヨウ素包接体(BCDI)としては、有効ヨウ素量が5%、10%、20%のものが市販されており、これらを使用することができる。
【0015】
CD誘導体としては、分岐−CD、修飾−CD、CDポリマー等が挙げられるが、これらのCD誘導体の中では、CDの水酸基の位置に化学修飾基を導入した修飾−CDが好ましい。
化学修飾基としては、−COCH等のアシル基、−NHCOR基(Rはアルキル基)等のアシルアミノ基、−CONHR等のアミド基、−OCH、−OC等のアルコキシル基、−NH、−NHCH等のアミノ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子、−OCH−CH−COOH等のカルボキシルエーテル基、ニコチンアミド基、イミダゾリル基、−OCH−CH−SO−Na基、−OSO−Na基等が挙げられる。
CDの水酸基には、1級水酸基と2級水酸基との2種類があり、一般に1級水酸基の位置の方が修飾基を導入しやすく、この位置に修飾基を導入したものが好適に使用されるが、2級水酸基の位置に修飾基を導入したものも既に知られており、これも修飾−CDとして使用できる。
【0016】
これらの修飾-CDの中では、重合剤として作用する後述の成分(A)〜(C)の二重結合部分と強固に結合するとともに、疎水性の合成繊維布帛との結合性にも優れることから、親水性・親油性の双方の物性を持ち併せるメチル化したCDが好ましい。メチル化したCDは、CDと水酸化ナトリウムと塩化メチルの存在下(アルカリサイド)で、塩化ナトリウムを脱塩することで合成できる。ヨウ素やヨードホールをゲストとして包接体を形成しているメチル化−β−CD−ヨウ素包接体(MCDI)として、有効ヨウ素量が6%のものが市販されており、これも好適に使用することができる。
【0017】
以上の観点から、本発明の液体組成物の成分(X)に好適に使用されるCD−ヨウ素包接体としては、親水性・親油性の双方の物性を有し、疎水性の合成繊維布帛に強固に結合可能であるとともに成分(A)〜(C)との結合性にも優れ、ヨウ素やヨードホールを安定に包接しやすいメチル化−β−CD−ヨウ素包接体(MCDI)が挙げられる。
【0018】
本発明の液体組成物においては、成分(X)としてCD類を含有するが、CD類には、上述のCD−ヨウ素包接体以外に、ヨウ素やヨードホールを包接していないCDやCD誘導体を含んでいてもよい。
このようなものとしては、ヨウ素やヨードホールをゲストとして元々有していないCDおよびCD誘導体や、ヨウ素やヨードホールを放出してしまったCDおよびCD誘導体が挙げられる。これらはアンモニアやメチルメルカプタン、硫化水素等の酸性・塩基性の双方の悪臭物質を吸着・捕獲する高い消臭性を有する。よって、CD−ヨウ素包接体とともにこれらを併用することにより、一層優れた消臭性を繊維布帛に付与することができる。また、この際、使用されるCDやCD誘導体に、特定の悪臭物質の消臭性など、特定の機能を集中して付与したい場合には、α型、β型、γ型のうち、これらの機能に最も優れた型のCDおよびCD誘導体を1種選択して、CD−ヨウ素包接体と併用することが好ましい。
なお、市販のBCDIやMCDIには、通常、ヨウ素やヨードホールをゲスト分子として元々有していないCDおよびCD誘導体や、ヨウ素やヨードホールを放出してしまったCDおよびCD誘導体が含まれる。よって、これら市販のものを成分(X)として使用した場合には、包接体を形成していないCDやCD誘導体を別途添加しなくても、上述の併用による効果が発現する。
【0019】
本発明の液体組成物には、成分(A)として、下記一般式(1)で示される2官能性単量体を含有する。
【化1】

(但し、式(1)中、Rは下記(2),(3),(4),(5)のうちいずれかを表す。Zは水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはa+bが0〜50の範囲にある正の整数を表し、xおよびyはx+yが0〜30の範囲にある0または正の整数を表す。また、a+b+x+yは10以上である。)
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(ここで、nは1〜6の整数を示す。)
【0020】
成分(A)は上記一般式(1)で示される2官能性単量体であれば特に限定されないが、その具体例としては、下記一般式(6)〜(9)で表される化合物等が挙げられる。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0021】
また、液体組成物に含まれる成分(B)としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する単量体であれば特に限定されないが、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、クルトン酸、ビニルスルホン酸、2−アリロキシ2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、下記一般式(10)〜(12)で表される化合物等が挙げられる。
【化10】

(ただし、式(10)中、cおよびdは、c+dが5以上となる0または正の整数を示す。)
【化11】

(ただし、式(11)中、eは5以上の整数を示す。)
【化12】

【0022】
また、液体組成物には、少なくとも1個のアジリジン基を含有する単量体(C1)か、カルボジイミド基、エチレンイミン基、オキサゾリン基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する水溶性ポリマー(C2)か、これらの少なくとも一方が成分(C)として含まれる。
少なくとも1個のアジリジン基を含有する単量体(C1)としては、1個のアジリジン基を含む単量体もしくは2個以上のアジリジン基を含む多官能性単量体であれば特に限定されない。その具体例としては、下記一般式(13)〜(17)で表される化合物等が挙げられる。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【0023】
カルボジイミド基、エチレンイミン基、オキサゾリン基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する水性ポリマー(C2)としては、日清紡(株)製V−02−L2(カルボジイミド当量:385、固形分40質量%、ノニオン性)、日本触媒(株)製ケミタイトPZ33、日本触媒(株)製エポクロスWS−500などが挙げられる。
また、成分(C)として、特にカルボジイミド基を有する水性ポリマーを使用すると、洗濯を繰り返した場合でも特に高い制菌性、消臭性が持続する。すなわち、洗濯耐久性のある制菌性、消臭性を繊維布帛に付与できるため好ましい。
【0024】
本発明の液体組成物は、制菌性、消臭性を発現する成分(X)と、この成分(X)を強固に繊維布帛に固着させる機能を果たす成分(A)〜(C)と、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを添加してpHを7以下に制御することにより得られる。
ここでpHが7を超え、液体組成物がアルカリ性となると、成分(X)中のCD‐ヨウ素包接体のヨウ素やヨードホールがイオン化して溶出し、繊維布帛に十分な制菌性、消臭性を付与できない場合があるうえ、ヨウ素特有の臭いや着色が発生する場合もある。よって、pH調整剤として、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、マレイン酸、イタコン酸、クルトン酸、ビニルスルホン酸等の酸類を適宜添加して、pHを7以下、より好ましくは2〜7とする。
【0025】
溶媒としては、水やアルコール類、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒が使用でき、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、生体への影響が小さいことから、水性溶媒を用いることが好ましく、特に水および/または炭素数1〜3の脂肪族低級アルコールを用いることが好ましい。炭素数1〜3の脂肪族低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用できる。
【0026】
また、液体組成物には、成分(X)、成分(A)〜(C)、溶媒、pH調整剤の他、各種添加剤を添加しても良い。また、メラミン系樹脂、グリオキサール系樹脂、エポキシ系樹脂等の反応性樹脂やイミン系架橋剤等の架橋剤を添加し、成分(X)および成分(A)〜(C)の重合に際し、これらを架橋させても良い。さらに、過酸化カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、ターシャリーブチルパーオキシド等の重合開始剤を添加しても良い。
本発明の液体組成物は、成分(X)を、例えば水および/または炭素数1〜3の脂肪族低級アルコールなどの水性溶媒に加え、さらに、成分(A)〜(C)と必要に応じた各種添加剤とを添加する方法などにより調製できる。
【0027】
液体組成物中における各成分の濃度、比率には特に制限はなく、処理する繊維布帛の種類等に応じて適宜設定できるが、成分(X)の濃度は0.1〜30.0質量%程度が好適である。成分(X)の濃度が0.1質量%未満では、繊維布帛に成分(X)を定着(重合)させるのに長時間を要する。一方、30.0質量%を超えると、液体組成物の粘性が増大し、繊維布帛への成分(X)の定着(重合)が不均一になる恐れがあると共に、風合いに支障を来たす可能性もある。
繊維処理液中の成分(A)の濃度は特に限定されないが、1〜20質量%程度が好ましい。また、成分(A)、(B)、(C)の配合比も特に限定されないが、1:0.01〜1:0.01〜1が好ましい。
【0028】
[機能性繊維布帛およびその製造方法]
本発明の機能性繊維布帛は、上述した成分(X)および成分(A)〜(C)を含有し、pHが7以下に制御された液体組成物を、繊維布帛上で重合処理させてなるものであり、成分(X)および成分(A)〜(C)が繊維布帛を構成している繊維の表面および内部に導入され、固着しているものである。本発明の機能性繊維布帛には、具体的に、(i)繊維布帛に成分(X)、および成分(A)〜(C)がグラフト重合されたものと、(ii)繊維布帛上で、成分(X)、および成分(A)〜(C)のホモポリマーおよび/またはこれらの複数種が共重合したコポリマーが生成したものと、(iii)一部の成分が繊維布帛にグラフト重合し、残りの成分が繊維布帛上でホモポリマーおよび/またはコポリマーを生成したものが含まれる。これらの中でも特に、(i)繊維布帛に成分(X)、および成分(A)〜(C)がグラフト重合されたものが好ましい。
【0029】
基材となる繊維布帛の構成繊維としては特に限定されず、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリトリメチレンテレフタレート、レーヨン等の合成繊維、綿などの天然繊維あるいはこれらから選択される複数種からなる混紡繊維や複合繊維等が挙げられるが、本発明は、特に、ナイロン等のポリアミド繊維やポリエステル繊維、あるいはこれらの繊維を含む混紡繊維(例えば、ポリエステル/綿からなる混紡繊維、ポリエステル/麻からなる混紡繊維、ポリエステル/レーヨンからなる混紡繊維、麻/レーヨンからなる混紡繊維など)や複合繊維からなる疎水性の高い繊維布帛に対して、顕著な効果を奏す。
繊維布帛の形態も特に限定されず、織物、編物、不織布等が挙げられる。また、精練、染色、SR加工、防炎加工、帯電防止加工などが施されたものであっても良い。また、衣類、肌着等の縫製品、帽子、キャップ、パジャマ、寝巻き、マスク、エプロン、寝具(シーツ、カバー、布団側等)、クッション、敷物、カーシート、シートカバー、各種フィルタなどの製品に加工したものであってもよいし、加工する前のものであってもよい。
【0030】
本発明の機能性繊維布帛は、制菌性、消臭性を有する成分(X)と、この成分(X)を強固に繊維布帛に固着させる機能を果たす成分(A)〜(C)とを含有する液体組成物を、繊維布帛上で重合させてなるものなので、消臭性とともに優れた制菌性を発現する。
ここで「制菌」と「抗菌」との違いについて記載する。「抗菌」について「抗菌剤の科学」工業調査会1996によれば、「生活環境に生息する菌を対象として一時的ではなくその効果は数週間から数年、時には数十年持続し殺菌レベルとしては制菌、殺菌以下であり、長期にわたり生活環境の微生物学的衛生さを保つこととされており、制菌≧抗菌なる関係が成り立つ」とされている。また、社団法人繊維評価技術協議会(以下、繊技協という。)によれば、「抗菌とは殺菌、滅菌、除菌、消毒などすべてを含む極めてあいまいな用語であり、消費者・流通に誤解を与えやすく、薬事用語とされる可能性もある。一方、制菌とは繊維上の特定した菌の増殖を抑制するものとして、菌も黄色ぶどう球菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、MRSAを指定しており、客観的な評価と統一基準を設けて抗菌とは一線を画す」とされている。
【0031】
本発明の機能性繊維布帛によれば、繊技協による制菌基準を達成することも可能である。すなわち、繊技協では、繊技協が定める制菌性能(JIS L−1902に準拠した制菌性評価による)、その耐久性(耐洗濯性)、安全性などの厳しい認証基準に合格した繊維製品に対して、品質を保証するSEKマークを付与しており、具体的には赤マークと橙マークがある(参照:制菌加工繊維製品認証基準)。繊維布帛上で、成分(X)と、成分(A)〜(C)とを含有する液体組成物を重合させることにより、これら赤マークまた橙マークのいずれかが付与される、高い制菌性、その耐久性、さらには安全性を発現する繊維布帛を得ることもできる。
【0032】
本発明の機能性繊維布帛の製造方法は、成分(X)および、成分(A)〜(C)を含む液体組成物を繊維布帛に接触させる接液工程と、繊維布帛上で成分(X)および、成分(A)〜(C)を含む該液体組成物を重合させる重合工程とを有するものである。
【0033】
繊維布帛に液体組成物を接触させる方法としては特に限定されないが、浸漬処理法やパディング法等が挙げられる。例えば、パディング法では、繊維布帛に液体組成物を接触させた後、必要に応じて繊維布帛を絞り、液体組成物の付着量を調整する。さらに、必要に応じて50〜130℃程度で加熱乾燥(乾熱処理)する。なお、乾熱処理だけでは重合反応は進行しにくい。
【0034】
以上の処理を行った後、重合を行う。成分(X)及び成分(A)〜(C)を含む液体組成物の重合は、液体組成物が付着した繊維布帛に対して、湿熱処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、マイクロ波照射処理等の処理を施すことによって行うことができる。湿熱処理を採用する場合には、例えば、水蒸気を満たした90〜140℃程度の雰囲気中にて1〜90分間程度処理すれば良い。また、電子線照射処理、紫外線照射処理、マイクロ波照射処理を採用する場合には、接液工程の前にあらかじめ電子線、紫外線、マイクロ波を照射しておいても良いし、接液工程の後に照射を行っても良い。また、電子線照射処理、紫外線照射処理、マイクロ波照射処理を採用する場合には、重合反応の際に周囲の雰囲気を窒素等により置換すると、発生したラジカルの消失を防ぎ、重合成分の有効利用率の向上を図ることができるので好ましい。
【0035】
このように重合を行うことにより、(i)繊維布帛に成分(X)、および成分(A)〜(C)がグラフト重合された機能性繊維布帛、(ii)繊維布帛上で、成分(X)、および成分(A)〜(C)のホモポリマーおよび/またはこれらの複数種が共重合したコポリマーが生成した機能性繊維布帛、(iii)一部の成分が繊維布帛にグラフト重合し、残りの成分が繊維布帛上でホモポリマーおよび/またはコポリマーを生成した機能性繊維布帛のうちの少なくとも1種が製造できる。これらの中でも特に、重合工程が繊維布帛に成分(X)、および成分(A)〜(C)をグラフト重合させる工程であって、(i)繊維布帛に成分(X)、および成分(A)〜(C)がグラフト重合された機能性繊維布帛が得られる場合が好ましい。
【0036】
以上説明したような機能性繊維布帛は、ヨウ素やヨードホールに由来する特有の臭いや着色などの欠点が抑制されているにもかかわらず、高い制菌性を維持し、さらに消臭性をも有する成分(X)が、成分(A)〜(C)とともに繊維布帛上で重合したものである。よって、単に成分(X)が付着することにより導入された繊維布帛とは異なり、柔軟性やドレープ性等の風合いを確保しつつ成分(X)が強固に繊維布帛に固着し、優れた制菌性や消臭性を発現する。また、このように成分(X)が繊維布帛に強固に固着しているので、成分(X)を導入する処理を何度も行わなくてもよいし、水洗や洗濯を繰り返しても制菌性、消臭性は衰え難い。また、水洗や洗濯により、一旦吸着・捕獲した悪臭物質を放出して消臭性を回復することもできる。
したがって、この機能性繊維布帛は様々な用途に使用できるが、特に、病院・介護用の衣類や寝具類、肌着、手袋、靴下、キャップ、パジャマ、マスク、エプロンなどの皮膚に直接触れる繊維製品、カーシート、クッション、敷物、シートカバー、各種フィルタ等への展開が期待できる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
各例では繊維布帛を作製し、その制菌性と消臭性を、洗濯前(初期)と洗濯後において評価した。また、得られた繊維布帛について、ヨウ素特有の臭いと着色、さらには風合いも評価した。評価項目、評価方法などについて次に説明する。
【0038】
(1)制菌加工試験法(制菌性評価)
黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌、MRSA(メチシリン耐性黄色ぶどう球菌)について、JIS L−1902の方法に従って試験し、制菌性評価した。数値が0以上であれば制菌性を備えていることを示し、その数値が高いほど制菌性が優れる。
なお、この評価を下記2)の洗濯試験の前後に行った。
また、ここで用いた評価菌株は、MRSA IID1677、Staphylococcus aureus ATCC 6538P、Klebsiella pneumoniae ATCC 4352 、Escherichia coli IFO 3301 およびPseudomonase areuginosa IFO 3080である。
(2)洗濯試験
洗濯法A:繊技協の標準配合洗剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルファオレィンスルホン酸ナトリウム)を使用し、繊技協規定の家庭洗濯10回繰り返す。これを洗濯法Aとする。
洗濯法B:繊技協の標準配合洗剤を使用し、繊技協規定の高温加速洗濯法により洗濯を50回繰り返す。これを洗濯法Bとする。
(3)橙マークおよび赤マークについて
各例で得られた繊維布帛が、上記洗濯法Aで洗濯した前後において0以上(上記(1)の試験で得られた数値)の制菌性を有していれば、その繊維布帛の制菌性とその耐久性はSEKマークにおける橙マークのレベルである。また、各例で得られた繊維布帛が、上記洗濯法Bで洗濯した前後において0を超えた(上記(1)の試験で得られた数値)制菌性を有していれば、その繊維布帛の制菌性とその耐久性はSEKマークにおける赤マークのレベルである。なお、ここで詳細は略するが、本実施例で得られた繊維布帛は、いずれも赤マーク、橙マークレベルの安全性を備えていた。
【0039】
(4)消臭性試験法(消臭性評価)
悪臭ガスとして、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素を採用した。消臭率の測定は、500mlのポリ容器内に200cmの布帛試験片を吊るし、密閉状態でポリ容器内に悪臭ガスを発生させた後、常温で30分間放置後、ポリ容器内の悪臭ガス濃度をガス検知管にて測定し、空試験(布帛試験片を使用しない対照試験)との比較から下記式にて消臭率を算出した。なお、悪臭ガス濃度は、アンモニアおよびメチルメルカプタンは200ppm、硫化水素は20ppmとした。また、この評価を上記1)の洗濯試験の前後に行った。
消臭率(%)=〔(空試験でのガス濃度−布帛入りポリ容器のガス濃度)/空試験でのガス濃度〕×100
また、洗濯法は、1)の洗濯法AおよびBを採用した。
【0040】
4)ヨウ素由来の臭いと着色
臭いについては、繊維布帛を作製した時点で、臭気判定士が官能評価した。
×:臭いあり
△:僅かに臭いあり
〇:無臭
着色については、目視により評価した。なお評価対象の各繊維布帛は白色である。
×:着色あり
△:僅かに着色あり
〇:着色なし
【0041】
(実施例1)
生地質量が110g/mのポリエステル仮撚加工糸を用いたポンジ織物に対して、常法にてリラックス、精練、プレセット、アルカリ減量加工、乾燥を順次行った。この合成繊維布帛(白色)を基材として用い、機能性処理を行った。
すなわち、表1に示す組成の液体組成物にpH調整剤として酢酸を添加してpHを5に調整し、これをパディング法にて合成繊維布帛に付与した。絞り率は60質量%とした。その後、110℃98%RHのスチームで5分間処理する湿熱処理を施し、重合を行った。重合反応終了後、洗浄、仕上げセットを行った。得られた繊維布帛について評価を行った。結果を表2〜3に示す。
【0042】
(実施例2)
液体組成物の組成を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして繊維布帛を得て評価した。なお、液体組成物は、酢酸の添加によりpHを5に調整した。結果を表2〜3に示す。
【0043】
(実施例3)
液体組成物の組成を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして繊維布帛を得て評価した。なお、液体組成物は、酢酸の添加によりpHを5に調整した。結果を表2〜3に示す。
【0044】
(比較例1)
実施例1と同じ合成繊維布帛を基材として用い、機能性処理を行った。
すなわち、表1に示す組成の液体組成物を調製した。この際、pH調整剤は添加しなかったので、液体組成物のpHは9であった。以降の操作を実施例1と同様に行い、得られた繊維布帛について評価を行った。結果を表2〜3に示す。
【0045】
(比較例2〜4)
液体組成物の組成を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして繊維布帛を得て評価した。なお、各液体組成物は、酢酸の添加によりpHを5に調整した。結果を表2〜3に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
(実施例4)
生地質量が100g/mのナイロンタフタに対して、常法にて精練、セットを順次行った。この繊維布帛(白色)を基材として用い、機能性処理を行った。
すなわち、表4に示す組成の液体組成物に酢酸を添加してpHを6に調整し、これをパディング法にて合成繊維布帛に付与した。絞り率は50質量%とした。その後、105℃98%RHのスチームで5分間処理する湿熱処理を施し、重合を行った。重合反応終了後、洗浄、乾燥、仕上げセットを行った。得られた繊維布帛について評価を行った。結果を表5〜6に示す。
【0050】
(実施例5)
実施例4と同じ繊維布帛を基材として用い、表4に示す組成の液体組成物に変更した以外は実施例4と同様にして機能性処理を行った。なお、液体組成物は、酢酸の添加によりpHを6に調整した。結果を表5〜6に示す。
【0051】
(実施例6)
実施例4と同じ繊維布帛を基材として用い、表4に示す組成の液体組成物に変更した以外は実施例4と同様にして機能性処理を行った。なお、液体組成物は、酢酸の添加によりpHを6に調整した。結果を表5〜6に示す。
【0052】
(比較例5)
液体組成物の組成を表4に示すものに変更した以外は、実施例4と同様にして繊維布帛を得て評価した。なお、液体組成物には、pH調整剤は添加しなかったので、そのpHは9であった。結果を表5〜6に示す。
【0053】
(比較例6)
液体組成物の組成を表4に示すものに変更した以外は、実施例4と同様にして繊維布帛を得て評価した。なお、液体組成物には、pH調整剤は添加しなかったので、そのpHは9であった。結果を表5〜6に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
(結果)
液体組成物として、成分(X)および成分(A)〜(C)を含有し、pHが7以下とされたものを使用した各実施例では、表に示すように、制菌性、消臭性が優れ、その優れた効果は洗濯後にもあまり低下せず、耐久性を備えていた。特に制菌性とその耐久性は、繊技協の橙マーク・赤マークの基準をクリアする高いレベルであるので、病院や介護用の衣類、肌着や寝具類にも展開が可能である。また、これらの実施例で得られた繊維布帛は、柔軟性やドレープ性等の風合いも良好であった。さらに、これらの繊維布帛は、ヨウ素特有の臭いや着色も抑制されているので、不快感がなく、淡色、白色の繊維布帛への応用も可能である。
これに対して比較例1、5、6では、液体組成物のpHが9であるので、繊維布帛に十分な制菌性、消臭性を付与できず、その耐久性も低いうえ、ヨウ素特有の臭いや着色が認められた。また、成分(C)を含まない液体組成物を使用した比較例2では、繊維布帛に十分な制菌性、消臭性を付与できず、また、洗濯によるこれらの低下の度合い(耐久性)は非常に低かった。また、液体組成物としして、成分(A)〜(C)を含まないものを使用した比較例3および4では、成分(X)が繊維布帛に導入されていることが、初期には消臭性などがあることから確認されたものの、初期の制菌性・消臭性が低いうえ、洗濯法A(10回洗濯)の後にはこれらの性能が著しく減少し、洗濯によってほとんどの成分(X)は脱離していることが示唆された。
以上の結果から、成分(X)と成分(A)〜(C)とをともに含む液体組成物を使用し、これらを繊維布帛上で重合させることによって、成分(X)が繊維の表面に単に付着するのでなく十分に固着し、優れた効果が発現することが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン−ヨウ素包接体を少なくとも含むシクロデキストリン類である成分(X)と、
下記一般式(1)で示される2官能性単量体である成分(A)と、
水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する単量体である成分(B)と、
少なくとも1個のアジリジン基を含む単量体(C1)、および/または、カルボジイミド基、エチレンイミン基、オキサゾリン基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する水溶性ポリマー(C2)である成分(C)とを含み、
pHが7以下であることを特徴とする繊維布帛処理用液体組成物。
【化1】

(但し、式(1)中、Rは下記(2),(3),(4),(5)のうちいずれかを表す。Zは水素原子またはメチル基を表す。aおよびbはa+bが0〜50の範囲にある正の整数を表し、xおよびyはx+yが0〜30の範囲にある0または正の整数を表す。また、a+b+x+yは10以上である。)
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(ここで、nは1〜6の整数を示す。)
【請求項2】
溶媒として、水および/または炭素数1〜3の脂肪族低級アルコールを含有することを特徴とする請求項1に記載の繊維布帛処理用液体組成物。
【請求項3】
繊維布帛上で、請求項1または2に記載の繊維布帛処理用液体組成物を重合させてなることを特徴とする機能性繊維布帛。
【請求項4】
成分(X)および成分(A)〜(C)が繊維の表面および内部に導入されていることを特徴とする請求項3に記載の機能性繊維布帛。
【請求項5】
社団法人繊維評価技術協議会の制菌基準を達成していることを特徴とする請求項3または4に記載の機能性繊維布帛。
【請求項6】
請求項1または2に記載の繊維布帛処理用液体組成物を繊維布帛に接触させる接液工程と、前記繊維布帛上で前記繊維布帛処理用液体組成物を重合させる重合工程とを有することを特徴とする機能性繊維布帛の製造方法。
【請求項7】
前記重合工程で、繊維布帛に成分(X)、および成分(A)〜(C)がグラフト重合することを特徴とする請求項6に記載の機能性繊維布帛の製造方法。

【公開番号】特開2006−45686(P2006−45686A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223993(P2004−223993)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】