説明

繊維強化プラスチックの成形方法

【課題】中子を用いた成形加工において、外面にシワなど欠陥がなく、外観に優れる繊維強化プラスチックの製造方法を提供する。
【解決手段】流動性を有する多数の粒体4aを可撓性袋体4bに収容した所望形状の中子4を形成すること、繊維により構成されたファブリック3の間に、前記中子4を介在させて成形用金型内部1,2に配置すること、前記成形用金型1,2によるレジンドランスファー成形を行う際、押圧手段をもって、前記中子4の外周面の一部を押圧して変形させ前記中子4内の内圧を高めること、を含む繊維強化プラスチックの成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、繊維により構成されたファブリックに中子を用いてレジントランスファー成形法を行い、繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)の成形体を製造する成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
閉断面を有する繊維強化プラスチックの成形体としては、航空機の胴体や翼のような大型の成形体から、自転車のフレーム、テニスラケット、釣竿やゴルフシャフト等の小型の成形体まで幅広く利用されている。また、開断面を有する繊維強化プラスチックの成型体としては、ヘルメットなどに幅広く利用されている。
【0003】
閉断面を形成するための中子としては、発泡体や粉粒体を包装フィルムで包装を行い所定形状に形成した中子などが用いられている。粉粒体を所望の形状に形成した中子としては、繊維強化プラスチックの製造方法(特許文献1参照)などが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載された発明を本願発明の従来例1として、図5を用いて説明する。
【0005】
図5は、成形用金型108によって閉断面の一種である中空部を有する成形品の製造工程を示している。即ち、中子104に強化繊維が巻き付けられることで作成されたプリフォーム107を中子104と共に成形型108のキャビティ109内に配置する。ここで、フィルムバッグ105の口部には、成形型108に設けられた図示しない空気供給通路と接続可能な図示しない接続具が設けられている。
【0006】
そして、プリフォーム107と中子104とをキャビティ109内に配置する時、封止されていたフィルムバッグ105の口部を開いて、フィルムバッグ105内は図示しない接続具を成形型108に設けられた図示しない空気供給通路に装着することで接続される。なお、図示しない空気供給通路は、図示しないエアコンプレッサと接続されており、エアコンプレッサから吐出された空気は、空気供給通路を介してフィルムバッグ105内に供給されるように構成されている。
【0007】
そして、プリフォーム107を中子104と共にキャビティ109内に配置した後、樹脂注入装置110と注入孔111とを接続する注入管112に設けられた三方弁113によって、樹脂注入装置110と注入孔111とを非接続にする。
【0008】
次に、減圧ポンプ114と排出孔115とを接続する吸引管116に設けられた三方弁117によって、減圧ポンプ114と排出孔115とを接続した状態で減圧ポンプ114を駆動することで、排出孔115を介してキャビティ109内を真空に近い状態にまで減圧する。
【0009】
続いて、キャビティ109内が減圧された状態で、樹脂注入装置110と注入孔111とを接続するとともに樹脂注入装置110から射出された樹脂を注入口111aからキャビティ109内に注入する樹脂含浸工程が行われる。なお、プリフォーム107に含浸させる樹脂には、硬化剤が添加されている。
【0010】
樹脂含浸工程において樹脂注入装置110は、樹脂を一定流量で、なおかつ、徐々に樹脂の注入圧力を上げて最終的に高圧(例えば、5MPa)の注入圧力で送り出す。ここで、注入圧力とは、樹脂注入装置110から送り出される樹脂の圧力を意味し、圧力計118の検出圧力に相当する。
【0011】
キャビティ109内に樹脂が高圧で注入されると、樹脂はプリフォーム7全体に行き渡るように含浸される。この時、中子104は、フィルムバッグ105内に粒子106が充填されて硬くなっているため、樹脂注入時に外側から高圧の圧力が加えられても変形することなく、所定の形状が保たれる。
【0012】
そして、樹脂注入装置110は、樹脂の注入を所定時間行った後、樹脂注入装置110及び減圧ポンプ114の運転を停止する。また、三方弁113,117は、大気開放されて、樹脂の注入が終了する。
【0013】
そして、次に、樹脂硬化工程を実施して、樹脂の硬化を行う。樹脂硬化工程では、樹脂の注入を終了した後、成形型108内に設けられた図示しない加熱手段(例えば、ヒータ)によって樹脂の加熱を開始し、なおかつ、図示しない空気供給手段(例えば、エアコンプレッサ)によってフィルムバッグ105内に空気を供給することでフィルムバッグ105内の加圧を行う。
【0014】
フィルムバッグ105内に空気が供給されると、空気は、図5の点線矢印で示すように粒子106中を通過して均一にフィルムバッグ105内に行き渡り、フィルムバッグ105内は予め設定された圧力に加圧され、樹脂の硬化とフィルムバッグ105内の加圧とが並行して行われる。そして、フィルムバッグ105は、その外周面によってプリフォーム107の内周面を均一に押圧する。
【0015】
なお、フィルムバッグ105内を加圧する際には、事前に実験を行って、用いる樹脂の硬化・固化収縮によって生じる圧力とバランスする圧力を求め、求めた圧力にまでフィルムバッグ105内を加圧する。そして、樹脂の硬化及び固化が進行している時、樹脂の硬化・固化収縮によって生じる圧力とフィルムバッグ105内の圧力とがバランスして樹脂の硬化・固化収縮は抑制されるため、ヒケの発生を抑制あるいはヒケを分散させることができる。そして、プリフォーム107の内周面には樹脂の硬化が完了するまでフィルムバッグ105によって圧力が加えられ続け、樹脂の硬化が完了すると、図示しない加熱手段による樹脂の加熱を終了するとともにフィルムバッグ105内へ空気を供給することを終了する。
【0016】
脱型工程では、成形型108を開き、フィルムバッグ105に設けられた図示しない接続具を図示しない空気供給通路から取り外し、成形型108内から中子104ごとFRP製品を取り出す。その後、中子取り出し工程において、フィルムバッグ105の口部を開いてフィルムバッグ105内に含んでいる空気を抜いた後、口部を介してフィルムバッグ105内に包含されていた粒子を取り出してフィルムバッグ105をしぼませる。そして、フィルムバッグ105をFRP製品から取り出すことで、中子104が取り出された状態のFRP製品が製造される
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−155383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1の発明では、型内に樹脂の注入し、プリフォームに樹脂含浸後、中子に流体又は粒子を供給し、内圧を加えた状態で樹脂を硬化させ、脱型しFRP製品を製造している。
【0019】
繊維又は繊維製品に樹脂を含浸させる際に、樹脂注入圧力により中子を変形させることがなく、粒子で構成される中子を水溶性粘結剤や解体性接着剤などにより粒子を結合させる方法が例示されている。この場合、中子の外形形状に高い精度が必要になり、即ち、製品外形からプリフォーム肉厚分内側オフセットさせ形状が中子形状になり、中子形状の精度が低いと、樹脂含有率の斑が生じ、特に複雑形状の場合には樹脂の流動速度差により樹脂が含浸しない領域を作ると、硬化工程で中子のフィルムバック内を加圧しても欠陥として残ることになる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を達成するために、本願発明の繊維強化プラスチックの成形方法では、流動性を有する多数の粒体を可撓性袋体に収容した所望形状の中子を形成すること、
繊維により構成されたファブリックの間に、前記中子を介在させて成形用金型内部に配置すること、
前記成形用金型によるレジンドランスファー成形を行う際、押圧手段をもって、前記中子の外周面の一部を押圧して変形させ前記中子内の内圧を高めること
を含むことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本願発明では、高い流動性を有する構成にした多数の粒体を可撓性袋体に収容した所望形状に形成した中子を用いている。しかも、成形用金型によるレジントランスファー成形時に、繊維により構成されたファブリックを介して、またはファブリックを介さずに、中子の一部外周面を押圧することで、中子の外周面に窪みを形成して、中子による内圧を強制的に高めている。そして、中子による内圧を高めることで、中子を構成している粒体間に滑りを生じさせ、中子を変形させている。
【0022】
中子を変形させることで、中子を包み込んでいるファブリックと中子との間隔が広くなっていても、中子の変形によってこの間隔を狭めることができる。また、特に、成形用金型の成形面における隅部とファブリックとの間に間隔が広くなっていても、中子の変形によってファブリックをこの間隔を狭める方向に移動させることができる。
【0023】
中子は、高い流動性を有する構成にした多数の粒体を可撓性袋体に収容しているため変形可能であるが、係る構成を採用すると、中子の外周面を押圧して外周面に窪みを形成して中子を変形させても、中子内における内部圧力としては、液体や気体を用いたときのように、通常は全ての部位において同一の圧力状態にはならない。即ち、粒体に対して圧力を加えても、圧力が加えられた部位における圧力よりも小さい圧力が、他の部位において生じることになる。そして、加えられた圧力がある値を超えると、粒体間において滑りが生じることになる。
【0024】
そのため、中子の外周面を押圧したときに、押圧により中子の外周面に窪みが形成された部位において、そこでの内部圧力が大きく上昇しても、この部位から離れた中子の外周面側における部位での圧力上昇は、窪みが形成された部位での内部圧力よりも低くなる。
【0025】
特に、中子内での圧力の伝達性、粒体の流動性は、粒体における粒子表面の粗さ、粒子径が影響する。均一の粒子径である粒体を用いると、中子内で粒体は最密充填されることになり、粒体の流動性が阻害され、圧力の伝達性が損なわれる。従って、中子内での粒子径の分布状況や粒子表面の粗さの分布状況を考慮したり、異なる粒子径の粒体を組み合わせて使用することにより、中子内での粒体の流動性と圧力伝達性が向上する。
【0026】
押圧により窪みが形成された部位から離れた中子内の部位においても、粒体の滑りによって中子の外周表面積が広がるように変形する。これによって、ファブリックを成形用金型の成形面に沿って押圧することができる。
【0027】
中子は、延長展開可能な材質から構成されている包装フィルムで多数の粒体を真空パック包装すると、形成が容易であり、かつ正確な形状に形成可能であるため好ましい。この場合中子の内圧を高めると、各粒体は前後左右方向に滑りを生じて移動することになるが、各粒体を包装している包装フィルムは、延長展開可能な包装フィルムによって、各粒体の移動に伴う中子の外形形状の変形を許容できる。
【0028】
仮に、成形用金型の型締めや、窪みを形成する押圧により粒体の圧力が上昇したとき、包装フィルムは圧力に抗して粒体を保持する強度はないため、粒体が包装フィルムを破る場合がある。成形用金型の隙間が粒子の直径よりも小さければ、粒子が破砕しない限り、成形用金型から漏れ出すことは起きない。
【0029】
中子の外周面の一部を押圧する構成としては、成形用金型の成形面内に出没自在なロッドを用いた構成にすることができる。成形用金型の成形面内に出没自在なロッドを用いた構成としては、例えば、ロッドとしてピストンロッドを用いた構成にしておくことができ、複数部位に押圧部を設置することもできる。
【0030】
本願発明では、中子の外周面を押圧したときに、ファブリックを介して又はファブリックを介さずに中子の一部外周面を押圧することできる。略平面形状部位でファブリックを介して押圧する場合には、ファブリックに凹部が形成される。凸形状部位でファブリックを介して押圧する場合には、ファブリックは平坦になることになる。これら押圧部位である凹部や平坦部、そして押圧部位以外でも、成形品から中子を構成している粒体を排出する排出孔を設けることができる。
【0031】
また、ファブリックを介さずに中子の一部外周面を押圧する場合には、ロッド等の押圧部に相当する孔をファブリックに開けておき、中子に直接加圧することになり、この成形品の孔位置から包装フィルムを破り、粒子を排出することができる。包装フィルムは離型材を塗布など離型処理を行う、又は二重包装とすることにより、粒子が接する包装フィルムも除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】加圧成形時を示す模式図である。(実施例1)
【図2】ファブリックと中子の内部構造を示す模式図である。(実施例1)
【図3】中空部を有する成形品を製造する各段階を示す模式図である。(実施例1)
【図4】他の加圧成形時を示す模式図である。(実施例2)
【図5】樹脂含浸工程と樹脂硬化工程を説明する概略構成図である。(従来例1)
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わる繊維強化プラスチックの成形方法としては、以下で説明する成形用金型、中子等の構成以外であっても、成形用金型による加圧成形中に中子を変形させることができる構成であれば、それらの構成に対しても本願発明を好適に適用することができるものである。
【実施例1】
【0034】
図1に示すように、中子4を内包したファブリック3を成形用金型15の内周面形状と略同じ形状に賦形したプリフォームを、予め加熱した成形用金型15の下型1に形成した凹部1a内に載置されている。
【0035】
ファブリック3は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維等の繊維から1軸や多軸など、さらには繊維方向がランダムな不織布などにて構成しておくことができる。図示例では、ファブリック3における断面形状が環状に形成され、内部に中子4を介在させた形状に構成されている。例えば、二枚のシート状のファブリック間に中子4を包み込むように形成することで、ファブリック3を図示例のように構成することができる。
【0036】
そして、成型用金型の注入孔16から熱硬化性樹脂を注入し、ファブリック3に樹脂を含浸させた後、成型用金型にて加熱硬化を行い、所望の形状の繊維強化プラスチック(FRP)の成形品を製造することができる。
【0037】
繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、フェノール樹脂等を用いることができる。
【0038】
中子4は、粒体4aを包装フィルム4bで包み真空パック包装を行って、所望の外形形状に構成している。中子4を構成する粒体4aとしては、アルミナ、ジルコニア等のセラミック、ガラス、硬質耐熱樹脂、金属、鋳物砂等を粒体物として用いることができる。中子4の形態保持に用いる包装フィルム4bとしては、ナイロン製のフィルム、ポリエチレン製のフィルム、フッ素樹脂フィルム、シリコンゴム等を用いることができる。粒体4aとして、ジルコニア、石英を用いた場合には、これらの物質は、熱伝導率が低いので、中子4の粒体4aとしては好適な材料となる。
【0039】
下型1には、成形用金型15のキャビティ内に出没自在なピストンロッド5aを備えたシリンダ5が設けられている。尚、図1では、ピストンロッド5aを摺動させるためにシリンダ5の圧力室に作動流体を給排する配管の図示は省略している。
【0040】
まず、上型2と下型1とが互いに近接する方向に移動させることで、型締めを行い、下型1の凹部1a内に載置したファブリック3を加圧することができる。樹脂注入時は圧力は高くなく、比較的低圧で樹脂が注入できるように、型と中子の間隔を広くする。樹脂充填後、ピストンロッドにより、または、さらに型締めにより圧力を高める。樹脂充填後、ピストンロッド、型締めの少なくともいずれかにより加圧することになる。樹脂充填後の型加圧を行わない場合には、型締め機としては型の開閉機構があれば良く、高圧プレス機が不要となる。
【0041】
このとき、ピストンロッド5aを成形用金型15のキャビティ内に突出させることで、ファブリック3内に介在させている中子4の外周面における一部部位を押圧する。この押圧により、図1において丸で囲んだ部位Aを拡大した図2に示すように、異なる粒子径での組み合わせを有する粒子構成により粒体4aの流動性が向上し、中子4内の粒体4aは滑りを生じる。
【0042】
特に空隙やボイドが生じ易いファブリック3の内面における四隅にも、凹部1a壁面に沿って形成される縦の部位の内面に沿った領域に、曲がりやシワや空隙やボイドが生じないように、中子4を変形させてファブリック3の内面に密接させることができ、寸法精度の高い成型品を得ることができる。
【0043】
中子4を変形させることで、型締め前に、中子4を包み込んでいる樹脂を含浸したファブリック3と中子4との間に空隙やボイドが形成されていても、空隙やボイドを構成していた空気は、中子による高い内圧により潰れるか、樹脂を含浸したファブリック3を通って成形用金型15から大気中に放出されることになる。空気が樹脂を含浸したファブリック3を通ったときに形成された通路は、空気が通った後では樹脂を含浸したファブリック3によって自然に塞がれることになる。
【0044】
また、成形用金型15の角部において、成形用金型15と樹脂を含浸したファブリック3との間に空隙やボイドが存在していた場合であっても、外周面形状を広げた中子4からの押圧によってファブリック3は空隙やボイド側に移動する。そして、この空隙やボイドを形成していた空気は、高い内圧により潰れるか、成形用金型15から大気中に押し出すことができる。
【0045】
尚、実施例の説明で用いる各図において、包装フィルム4bを分かり易く説明するため、誇張した状態で包装フィルム4bの肉厚を厚く示している。実際には、包装フィルム4bは、1mm厚以下の薄いフィルム状に構成されることができる。ここでは、角パイプ形状の成形品を成形する構成について説明を行っているが、成形品としては、閉断面を有する他の形状に構成することができる。
【0046】
閉断面に近い形状としては、断面形状がC字状の形状等がある。例えば、C字状の断面形状を有する成形品を形成する場合には、中子の一部を上型2又は下型1の成形面に直接当接させた配置構成にすることができる。そして、成形面に当接していない中子の周囲をファブリック3で覆うことにより、C字状の断面形状を有する成形品を成形することができる。このため、本願発明における閉断面としては、角パイプ形状等の形状以外にも、例えば、C字状の断面形状も本願発明における閉断面に包含される。
【0047】
図1に示すように、ピストンロッド5aで中子4の外周面の一部を押圧することによって、ファブリック3の外周面には凹部6が形成されることになる。ピストンロッド5aで中子4の外周面を押圧すると、中子4内の容積としては、粒体4aの容積に突入したピストンロッド5aの容積が強制的に加わった状態になる。その結果として、中子4内の内圧を高めることができる。
【0048】
中子4の内圧が高まることによって、各粒体4aは相互の粒体間で滑りを生じて前後左右方向に移動することになる。しかし、各粒体4aを包装している包装フィルム4bは真空パック包装を行うことができる材質から構成されているので、包装フィルム4bは各粒体4aの移動を実質的に制限せずに延長展開することができる。
【0049】
このように、中子4の内圧を高め、粒体4a間での滑りを生じさせることができるので、中子4を変形させることができ、図2に示すように、中子4とファブリック3との間に空隙やボイドをなくすことができる。
【0050】
しかも、中子4の変形は、空隙やボイドが生じ易い、樹脂を含浸したファブリック3との間での圧力が低い部位において生じるので、空隙やボイドをなくしながら樹脂を含浸したファブリック3の肉厚を所定の肉厚に維持しておくことができる。
このように、所定の肉厚を有し、所望の外周面形状を備えた形状に樹脂を含浸したファブリック3を加圧成形することができる。
【0051】
図3(a)には、成形用金型15による加圧成形が終了した半成形品10aを、成形用金型15から取り出した状態を示している。ピストンロッド5aで押圧したファブリック3の部位には、凹部6が形成されている。
【0052】
図3(b)に示すように、凹部6aに排出用の孔を開けると、この孔から中子4を構成していた粒体4a間に空気が流入し、粒体4a間の結合状態が崩れる。そして、結合状態が崩れた粒体4aを、凹部6aに形成した排出用の孔から外部に排出することができる。そして、図3(c)に示すように、中空部10bを有する成形品10を完成させることができる。
粒体4aを真空パック包装していた包装フィルム4bを、成形品10に対して剥離性がよい材料での構成や、包装フィルム4bを二重に構成しておけば、粒体4aに接する包装フィルム4bも成形品10から取外すことができる。
【0053】
このように、中子4とファブリック3との間に空隙やボイドがない状態で樹脂を含浸したファブリック3に対する加圧成形を施すことができるので、成形品10としては曲がりやシワのない所望の肉厚で所望の外周面形状を有する製品として製造することができる。また、成形用金型を閉めた状態において中子4内の内圧が低い場合であっても、ピストンロッド5aから加えた押圧力によって中子4内の内圧を高めることができるので、成形品10としては所望の肉厚で所望の外周面形状を有する製品に製造することができる。
【0054】
本実施例1を具体的に示す。図1に示すようにジルコニア粒子(直径1mm、3mmの混合)をナイロンフィルムで真空パック包装した中子4 を作製した。炭素繊維平織物3 (三菱レイヨン社製TR3110)を5プライで当該中子4を内包し、成形用金型15の内周面形状と略同形状に、プリフォームした。80℃の成形用金型15の下型1に形成した凹部1a内にプリフォームを載置し、上型2と下型1を完全に型締めを行い、続いてエポキシ樹脂を注入し充填後、ピストンロッド5aで中子4の外周面の一部を3MPaで押圧した。120分後、型開きを行い、成形品を取り出した。ピストンロッド押圧により形成された凹部6(図3(a))に排出用の孔を開け、粒体4aを排出用孔から外部に排出し(図3(b))、中空成形品を得た(図3(c))。この成形品は寸法精度が高く、外面にシワなど欠陥のない外観に優れるものであった。
<実施例2>
【0055】
図4を用いて、本願発明に係わる実施例2の構成について説明する。実施例1では、中子4を押圧するためにピストンロッド5aを用いた構成について説明したが、実施例2では、中子4を押圧するのにピストンロッド5aを用いない構成になっている。他の構成は、実施例1と同様の構成になっており、同様の構成部材については、実施例1で用いた部材符号と同じ部材符号を用いることにより、その部材についての説明を省略する。
【0056】
図4に示すように、下型1の凹部1a内にプリフォームされたファブリック3を収納する。図3(c)で示したように中空部10bを有する成形品10を製造するため、ファブリック3内には中子4が配設されている。
【0057】
樹脂注入後、高い圧力を発生できる型締め機により、上型2と下型1とで加圧成形する。型締めされることにより、異なる粒子径での組み合わせを有する粒子構成により粒体4aの流動性が向上し、中子4を変形させて中子4と樹脂を含浸したファブリック3との間に空隙やボイドを形成させないことができる。そして、成形用金型15の成形面と樹脂を含浸したファブリック3との間に生じ易い空隙やボイドを形成させないことができる。
【0058】
本実施例を具体的に示す。図4に示すように、ピストンロッド5aを用いず、上型2により押圧する以外、実施例1と同様に成形を行った。型開きを行い、成形品を取り出し、成形品の側面に排出用の孔を開け、粒体4aを排出用孔から外部に排出し、中空成形品を得た。この成形品は外面にシワなど欠陥がなく、外観に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本願発明は、中子を用いた成形加工において好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・下型
2・・・上型
3・・・ファブリック
4・・・中子、
4a・・・粒体、
4b・・・包装フィルム、
5a・・・ピストンロッド、
15・・・成形用金型、
16・・・注入孔
104・・・中子
105・・・袋部材としてのフィルムバッグ
106・・・粒子
107・・・プリフォーム
108・・・成形型
109・・・キャビティ
110・・・樹脂注入装置
111・・・注入孔
111a・・・注入口
112・・・注入管
113・・・三方弁
114・・・減圧ポンプ
115・・・排出口
116・・・吸引管
117・・・三方弁
118・・・圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する多数の粒体を可撓性袋体に収容した所望形状の中子を形成すること、
繊維により構成されたファブリックの間に、前記中子を介在させて成形用金型内部に配置すること、
前記成形用金型によるレジンドランスファー成形を行う際、押圧手段をもって、前記中子の外周面の一部を押圧して変形させ前記中子内の内圧を高めること、
を含む繊維強化プラスチックの成形方法。
【請求項2】
前記可撓性袋体を包装フィルムとし、前記包装フィルムで前記粒体を真空パックして前記中子を形成する、請求項1記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
【請求項3】
粒体として、粒子の直径が均一ではない粒体を用いる請求項1又は2記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
【請求項4】
樹脂注入後、型締め加圧を行う請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
【請求項5】
前記成形用金型による圧縮成形後に成形された成形品において、前記中子の外周面の一部を押圧した部位を、前記成形品から前記粒体を排出する排出孔として使用することを含む請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206391(P2012−206391A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73985(P2011−73985)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】