説明

繊維強化型樹脂ケース、その製造方法及び電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置

【課題】モジュール化の際の圧力で割れや変形が発生せず、耐吸湿性に優れた樹脂ケース及びその製造方法、並びに該樹脂ケースを用いた中空構造を有する電子部品収納用パッケージ装置を提供する。
【解決手段】繊維織布と樹脂組成物からなる繊維強化型樹脂ケース2であって、前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填材を含み、前記(D)無機充填材の含有量が、全樹脂組成物中80質量%以上、90質量%未満である繊維強化型樹脂ケース、及び該繊維強化型樹脂ケースの製造方法であって、前記樹脂組成物をシート状にし、繊維織布と貼り合せた後、加熱圧縮成形してなることを特徴とする繊維強化型樹脂ケースの製造方法、並びに前記繊維強化型樹脂ケースを使用してなる電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化型樹脂ケース、その製造方法及び電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置に関する。さらに詳しくは、弾性表面波(SAW)デバイス等の電子部品を収納するための中空樹脂パッケージ装置を与える繊維強化型樹脂ケース、その製造方法及び前記繊維強化型樹脂ケースを用いてなる電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波装置は、電磁波を利用する電気機器や電子機器の信号フィルタとして多方面の需要があり広範囲に利用されている。
一般に弾性表面波装置は、リードピンをハーメチックシールした金属ステム内に弾性表面波素子をマウントし、リードピンと弾性表面波素子の端子とをワイヤボンディングにて電気的に接続した後、金属シェルを電気抵抗溶接して金属ステムに取着した金属製パッケージが汎用的である。
このような金属製パッケージでは、弾性表面波装置の重量増を招くとともに、金属ステムと金属シェルとを溶接する作業も困難という問題がある。このため、現在では、弾性表面波装置の小型軽量化及び製造作業の合理化を目的として、リードフレームを用いたプラスチックパッケージが多く用いられるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、弾性波素子上の空洞となるべき領域に、溶剤によって溶解する半田レジストや加熱によって溶解するワックス類からなる溶解用樹脂を形成し、溶解用樹脂上に上部板を形成した後、溶解用樹脂を除去することにより中空構造を形成する方法(従来例1)が開示されている。特許文献2には、電気的構造素子を包囲するフレーム構造体を形成し、電気的構造素子上が空洞になるように、フレーム構造体上に補助フィルムを貼り、その上に樹脂層を形成し、フレーム構造体の屋根部分以外を除去することにより中空構造を形成する方法(従来例2)が開示されている。特許文献3には、弾性波素子を形成した圧電基板上に樹脂フィルムを貼り、弾性波素子が複数設けられた圧電基板の機能部分上部の樹脂フィルムを開口し、ついで樹脂フィルム上に回路基板を対向させて密着し中空構造を形成する方法(従来例3)が開示されている。特許文献4には、弾性波素子を複数設けた基板上に感光性樹脂を形成し、弾性波素子の機能部分上の感光性樹脂を開口し、その上に配線基板集合体の基板を実装し、ダイシングで個々に分割することにより中空構造を形成する方法(従来例4)が開示されている。
【0004】
上記の従来例1から4の方法で形成された弾性波素子パッケージでは、いずれもモジュール化の際に加わる圧力に対し耐えられず、中空構造の天井部が凹んでしまうという課題があった。この課題を解決する方法として、中空構造の天井部の厚さを厚くする方法が考えられる。
しかしながら、樹脂を用いて形成した中空構造の天井部上にさらに樹脂を形成すると、重量増を招いたり、歩留まりが低下するという課題が生じる。
このため強度の高いエポキシ樹脂成形体で樹脂ケースを作成しようとする試みが為されているが、軽量化のため樹脂ケースの厚さを薄くしていくと脆く割れやすくなり、取扱性が悪くなる。また、強度を上げるためエポキシ樹脂成形材料にガラス短繊維を混合することも検討されているが、樹脂ケースの厚さが1mmよりも薄い場合には流動性を阻害して成形性が悪くなってしまう。さらに金属パッケージに比較して樹脂ケースでは耐吸湿性に劣るという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3291046号公報
【特許文献2】特表2003−523082号公報
【特許文献3】特許3196693号公報
【特許文献4】特許3225906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、樹脂ケースの厚さを1mm以下とした場合でも、モジュール化の際の圧力で割れや変形が発生せず、耐吸湿性に優れた繊維強化型樹脂ケースおよびその製造方法、並びに該樹脂ケースを用いた中空構造を有する電子部品収納用パッケージ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定の耐熱性樹脂と特定の充填材とを併用する樹脂組成物と繊維織布を重ねて加熱圧縮成形することにより、優れた特性を有する繊維強化型樹脂ケースを得ることができることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1 繊維織布と樹脂組成物からなる繊維強化型樹脂ケースであって、前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填材を含み、前記(D)無機充填材の含有量が、全樹脂組成物中80質量%以上、90質量%未満であることを特徴とする繊維強化型樹脂ケース、
2 前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする上記1記載の繊維強化型樹脂ケース、
3 上記1または2記載の繊維強化型樹脂ケースの製造方法であって、樹脂組成物をシート状にし、繊維織布と貼り合せた後、加熱圧縮成形してなることを特徴とする繊維強化型樹脂ケースの製造方法、
4 上記1または2記載の繊維強化型樹脂ケースを使用したことを特徴とする電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、モジュール化の際の圧力で割れや変形が発生せず、耐吸湿性に優れた繊維強化型樹脂ケースおよびその製造方法、並びに該繊維強化型樹脂ケースを用いた中空構造を有する電子部品パッケージ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置及び各部品を示す断面概略図である。
【図2】本発明の繊維強化型樹脂ケースの集合体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置1の断面を図示したものである。繊維強化型樹脂ケース2と基板4により中空パッケージが構成されており、繊維強化型樹脂ケース樹脂ケース2を用いて基板4に実装した素子部品6を封入することにより中空樹脂パッケージ装置1が得られる。
【0011】
素子部は半導体素子、SAW素子等の素子部品6とバンプ7から構成され、例えばAg等を主成分とする導電性接着剤8によって基板4に配置された端子5と電気的に接続されると共に固定されている。また、繊維強化型樹脂ケース2は基板4と、接着剤層3を介して接合されている。
【0012】
本発明の電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置1は、必ずしも図1に示すような単数の素子部品6を収容するものに限定されず、複数の素子部品6を収容するものであってもよい。図1に示すような本発明の中空樹脂パッケージ装置1は、収容する素子部品6の形状や個数に応じて、適宜、形状や大きさ等を変更することができる。
【0013】
本発明では、繊維織布と特定の樹脂組成物からなる繊維強化型樹脂ケースを使用する必要があり、繊維織布としては、例えばガラスクロス、バサルト等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維等の有機繊維基材が挙げられる。
【0014】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物であり、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填材を必須成分とし、該エポキシ樹脂組成物の溶融粘度は、測定温度175℃、荷重98Nにおいて、3Pa・s〜15Pa・sが好ましく、溶融粘度が3Pa・sより大きいものでは繊維織布に充填し易く、溶融粘度が15Pa・sより小さいと樹脂の流動によりカスレやバリが大きくなることがなく好ましい。
上記(A)成分のエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であればよく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するような多官能のエポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0015】
前記エポキシ樹脂は、軟化点が50〜120℃でエポキシ当量が140〜250、好ましくは150〜200の範囲を有するものが好ましい。軟化点が50℃より高いエポキシ樹脂を用いた場合、硬化物のガラス転移温度が低下せず、成形時にバリやボイドが発生し難くなり、軟化点が120℃より低い樹脂を用いた場合には、粘度が高くなりすぎず繊維織布への含浸性や成形性が悪くなり難い。ここで、上記軟化点の測定法はJISK7147、エポキシ当量はJISK7236に準拠して測定した。
【0016】
さらに、前記エポキシ樹脂は下記化学式(1)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂が特に好ましい。具体的には、ジャパンエポキシレジン社製の「YX−4000」(エポキシ当量185)、「YX−4000K」(エポキシ当量185)、「YX−4000H」(エポキシ当量193)、「YX−4000HK」(エポキシ当量193)、「YL−6121H」(エポキシ当量172)等が好ましく使用される。ビフェニル型エポキシ樹脂の採用によって無機充填材を高充填しても溶融粘度を最適範囲に維持することができ、さらに耐熱性に優れる繊維強化型樹脂ケースを得ることが出来る。
【化1】

(式中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1〜5のアルキル基を表す。)
【0017】
(B)成分のエポキシ樹脂用硬化剤としてはフェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等、公知のものが挙げられる。特に、本発明では連続成形性の観点からフェノール樹脂が好適に用いられる。
この場合、フェノール樹脂としては、1分子中にフェノール性水酸基を少なくとも2個以上有するフェノール樹脂を使用する。このような硬化剤として具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、パラキシリレン変性ノボラック樹脂、メタキシリレン変性ノボラック樹脂、オルソキシリレン変性ノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール型樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニル骨格含有アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型樹脂及びその重合体等のフェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂などが例示され、いずれのフェノール樹脂も使用可能である。
なお、これらのフェノール樹脂系硬化剤は、軟化点が60〜150℃、特に70〜130℃であるものが好ましい。また、水酸基当量としては90〜250のものが好ましい。硬化剤の配合量は特に制限されないが、エポキシ樹脂を硬化する有効量であり、好ましくはエポキシ樹脂中に含まれるエポキシ基1モルに対して、硬化剤中に含まれる反応性官能基(例えばフェノール性水酸基)とのモル比が0.5〜1.5、特に0.8〜1.2であることが好ましい。
【0018】
(C)成分の硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と前記のエポキシ樹脂用硬化剤の硬化反応を促進するものであれば、分子構造、分子量などは特に限定されるものではない。なお、この硬化促進剤としては、本発明の効果を失わない範囲で、2種類以上の硬化促進剤を併用することができる。
ここで用いることができる硬化促進剤としては、例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7)、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニルホスフィン)、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタンなどの有機ホスフィン化合物、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
これら硬化促進剤の配合割合は、それぞれの触媒活性が異なるため一概にその好適量は決められないが、樹脂組成物全体に対し、0.1〜5質量%の範囲で加えることが好ましい。これは、0.1質量%以上では硬化性能が良好で、一方、5質量%以下では耐湿信頼性を維持できる傾向があるためである。
【0019】
(D)成分の無機充填材としては、硬化物の熱膨張係数、耐吸水性、弾性率などの特性を改善、向上させる目的で配合されるものであり、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素などの粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維などが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
流動性、成形性、金型磨耗性などの観点から、最大粒径が55μm以下で平均粒径が13μm以下の溶融球状シリカが特に好ましい。最大粒径が55μm以下か、あるいは平均粒径が13μm以下であると、繊維織布内部への充填が容易等、成形性が良好である。ここで用いることができる溶融球状シリカとしては、例えば、「S430−5」(商品名、マイクロン社製)、「MSR−8030」(商品名、龍森社製)、「FB−875FC」、「FB−60DC」(商品名、電気化学工業社製)が挙げられる。
該無機充填材の配合量は、組成物全体の80質量%以上、90質量%未満、好ましくは
質量%以上、90質量%未満の範囲である。配合量が80質量%未満では、充分な強度や耐吸湿性が得られず、逆に配合量が90質量%以上であると、組成物の流動性が低下し、成形性が不良となって実用化が困難になる。
【0020】
本発明で用いるエポキシ樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、この種の組成物に一般に配合される、カーボンブラック、コバルトブルーなどの着色剤、エポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤、アルキルチタネートなどの表面処理剤、合成ワックス、天然ワックスなどの離型剤、ハロゲントラップ剤、シリコーンオイルやシリコーンゴムなどの低応力化剤などを必要に応じて配合することができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物を繊維強化型樹脂ケース用材料として調製するにあたっては、上記各成分をミキサーなどによって十分に混合(ドライブレンド)した後、熱ロールやニーダなどにより溶融混練し、冷却後粉砕するようにすればよい。
前記樹脂組成物を離型フィルムで挟持して熱ロール又は熱盤上で80℃〜120℃程度で加熱溶融した後、5〜50MPa程度で加圧することによって所定の厚さのシート状にすることができる。
【0022】
次いで、繊維織布の両面にシート状にした前記樹脂組成物を重ね合わせた後、再度樹脂を加熱溶融させて熱ロール又は熱盤上で加熱圧縮して一体化させることによりプリプレグを作成する。これらプリプレグの作成工程は同時に行ってもよい。
その後、前記プリプレグを、予め金型温度130℃〜200℃程度、好ましくは150〜180℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めを行い、該プリプレグを賦型させ、型内圧力0.1〜20MPa程度、好ましくは5〜10MPaの成形圧力を1〜3分間保持することによって、該プリプレグを硬化させ、その後成形品を取り出して繊維強化型樹脂ケースを得る方法が用いられる。成形時間とは、型を閉じて前記の型内圧力を保持している時間であり、1〜3分が好適である。
【0023】
本発明の繊維強化型樹脂ケースの厚みは、中空構造を維持することができると共に、気密性を維持することができる厚みであれば特に必ずしも制限されるものではないが、0.05mm〜1.0mmが好適に使用される。厚さが0.05mm以上では、ケースの強度が良好で、モジュール化の際の圧力で割れや変形が発生する虞がない。また、1.0mm以下では電子部品の寸法が大きくならず好ましい。
また、本発明の繊維強化型樹脂ケースは金属蒸着、スパッター、金属メッキ等により皮膜を形成して電磁波シールド性を付与することも出来る。
【0024】
次に、前記繊維強化型樹脂ケースを用いた電子部品の製造方法について説明する。
電子部品を実装した基板の所定の位置に、予め前記繊維強化型樹脂ケースの基板との接合部に接着剤を配し、さらに0.5MPa以下の圧力で加熱加圧処理を行い、接着剤を硬化させることにより中空構造を有する電子部品を得ることができる。
使用する接着剤としては、上記の繊維強化型樹脂ケースと基板とを確実に結合させることができれば必ずしも制限されるものではない。例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂等がある。具体的には、京セラケミカル社製のエポキシ樹脂系接着剤、製品名「TAF880」等が好適に使用できる。
【0025】
このように、繊維強化型樹脂ケースを用いた電子部品の製造方法によれば、気密に封止された電子部品を容易に製造することができるため、特にSAWデバイスのようなパッケージに好適に用いることができる。なお、電子部品を多数個配列し一度に集合体として生産する方法が生産性が良好で好ましく、上記繊維強化型樹脂ケースの成形において、使用する成形用金型を繊維強化型樹脂ケースを多数個得られる形状とすることができる。図2に繊維強化型樹脂ケース集合体10の一例を示した。図2の(a)は繊維強化型樹脂ケース集合体10の平面図であり、長さL、幅M、高さtで複数個の繊維強化型樹脂ケースが得られる。(b)は(a)のA部の拡大平面図、(c)は(b)図のC−C断面図である。上記繊維強化型樹脂ケース集合体を使用し、中空パッケージ集合体を得た後、ダイシング等により個片に切り分けることができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
エポキシ樹脂の「YX−4000HK」(ジャパンエポキシレジン社製 商品名、エポキシ当量193 軟化点104〜110℃)8質量部、硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂の「BRG−557」(昭和高分子社製 商品名、水酸基当量105 軟化点82〜88℃)4質量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(「2P4MHZ−PW」、四国化成工業(株)製、融点192℃〜197℃)0.28質量部、無機充填材として溶融球状シリカ粉末(最大粒径55μm 平均粒径13μm)86.5質量部、難燃剤として環状フェノキシホスファゼン化合物の「SPE−100」(大塚化学社製、商品名)0.5質量部、カーボンブラック「CB−30」(三菱化学(株)製)、「シリコーンオイルSF−8421」(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)0.2質量部、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(「サイラエースS−510」、チッソ(株)社製)、常温で混合し、次いで、70〜100℃で加熱混練した。冷却後、適当な大きさに粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示した。
次いで、得られた樹脂組成物をポリエステル製離型フィルム(藤森工業製)で挟み80℃の熱盤間に10MPaの圧力で2分間加熱加圧成形し、シート状のエポキシ樹脂組成物とした。
【0027】
厚さ0.1mmの「ガラスクロスAS2116」(製品名、旭化成エレクトロニクス社製)に前記シート状エポキシ樹脂組成物を積層し、離型フィルムに挟持し、100℃、10MPaで一体に加熱加圧してシート状のガラスクロスとエポキシ樹脂の複合材料を作成した。
図2に示した繊維強化型樹脂ケースの集合体が得られる金型を使用し、熱盤温度180℃のプレスで、10MPaの圧力を加えて1分間圧縮成形し、図中のサイズ:L=21.55mm、M=22.85mm、t=0.6mmの繊維強化型樹脂ケースの集合体を成形した。
成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0028】
実施例2
樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0029】
実施例3
樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0030】
実施例4
無機充填材として最大粒径25μm、平均粒径8μmの溶融球状シリカ粉末(マイクロン社製)と微細シリカ(アドマテック社製)を使用し、樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースに関する作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0031】
実施例5
無機充填材として最大粒径25μm、平均粒径8μmの溶融球状シリカ粉末(マイクロン社製)を使用し、樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0032】
実施例6
繊維織布を厚さ0.11mmのポリアリレート繊維布「XT0235」(製品名、クラレ社製)を使用し、樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0033】
比較例1
繊維織布を使用せず、樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0034】
比較例2
樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【0035】
比較例3
樹脂組成を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして、得られた樹脂組成物のゲルタイム、粘度、流動性、曲げ強度、吸水率について評価した結果を表1に示し、成形後の繊維強化型樹脂ケースの作業性、外観、集中荷重強度、耐吸湿性について評価した結果を表2に示した。
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
なお、使用した材料の内容は下記の通りである。
ガラス繊維織布:「AS2116」(旭化成エレクトニクス社製)
ポリアリレート織布:「XT−0235」(クラレ社製)
エポキシ樹脂:「YX−4000HK」(ジャパンエポキシレジン社製)
硬化剤:「BRG−557」(昭和高分子社製)
硬化促進剤:「2P4MHZ−PW」(四国化成社製)
無機充填材(球状シリカ25):最大粒径25μm(マイクロン社製)
無機充填材(球状シリカ55):最大粒径55μm(マイクロン社製)
無機充填材(微細シリカ):(アドマテックス社製)
難燃剤:「ホスファゼン」(大塚化学社製)
カーボンブラック:「CB−30」(三菱化学社製)
シリコーンオイル:「SF−8421」(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)
シランカップリング剤:「S−510」(チッソ社製)
【0038】
樹脂組成物の評価方法は下記の通りである。
[ゲルタイム]
175℃の熱板上におけるゲル化時間を測定した。
[粘度]
島津フローテスター「CFT−500型」((株)島津製作所製)により、175℃、荷重98Nにおける溶融粘度を測定した。
[流動性]
EMMI−1−66(Epoxy Molding Materials Institute)に準じたスパイラルフロー金型を用い、樹脂組成物を175℃に加熱したスパイラルフロー金型にトランスファー注入し硬化させて、120秒間の流動した長さを測定した。
【0039】
[曲げ強度]
エポキシ樹脂組成物を175℃、120秒の条件で加熱圧縮成形し、その後、175℃で8時間の加熱処理を行った成形品を長さ80mm以上、幅10mm、厚さ4mmの大きさに加工したものをサンプルとし、「オートグラフAG−D1000」((株)島津製作所製、商品名)を用いて曲げ強度を測定した。
[吸水率]
樹脂組成物を175℃、120秒間の条件でトランスファー成形し、次いで175℃、8時間の後硬化を行って直径50mm、厚さ3mmの円板状の硬化物を得、これを127℃、253kPaの飽和水蒸気中に24時間放置して、放置後の増加した質量を求めた。
繊維強化型樹脂ケースの評価方法は下記の通りである。
[外観]
成形後の繊維強化型樹脂ケースを目視で観察し、外観に割れ、カケ、ボイド、未充填などの異常があれば×、異常がなければ○とした。
【0040】
[作業性]
成形時の取り扱い性について評価し、成形時における溶融、割れ、カケ等がなく取り扱いに問題がなければ○、溶融、割れ、カケ等により取り扱い性に問題がある場合を×とした。
[集中荷重強度]
繊維強化型樹脂ケースの中央部に、1mm角の角棒を速度0.3mm/分で押し込み、ケースが破壊する強度を「プッシュプルスケール」((株)イマダ製、商品名)にて測定した。10N以上の強度があれば○、10N未満では×とした。
[透湿度]
JIS Z0208 防湿梱包材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠して、φ25mm、高さ50mmのガラス製透湿カップに乾燥剤として塩化カルシウムをいれ、試験サンプルをエポキシ樹脂にて接着して、温度85℃、相対湿度85%、の恒温恒室槽中で24時間保持した後、該試験サンプルを通過する水蒸気の量を測定した。
10g/m2・24Hr以下を○、10g/m2・24Hrを超えるものを×とした。
【符号の説明】
【0041】
1:電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置
2:繊維強化型樹脂ケース
3:接着剤層
4:基板
5:端子
6:素子部品
7:バンプ
8:導電性接着剤
10:繊維強化型樹脂ケース集合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維織布と樹脂組成物からなる繊維強化型樹脂ケースであって、前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂用硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)無機充填材を含み、前記(D)無機充填材の含有量が、全樹脂組成物中80質量%以上、90質量%未満であることを特徴とする繊維強化型樹脂ケース。
【請求項2】
前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の繊維強化型樹脂ケース。
【請求項3】
請求項1または2記載の繊維強化型樹脂ケースの製造方法であって、樹脂組成物をシート状にし、繊維織布と貼り合せた後、加熱圧縮成形してなることを特徴とする繊維強化型樹脂ケースの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の繊維強化型樹脂ケースを使用したことを特徴とする電子部品収納用中空樹脂パッケージ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−96940(P2011−96940A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251180(P2009−251180)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)