説明

繊維性環状補強材を含む金属部品を製作する方法

複合材料の巻線を含むことによって軸対称の環状金属部品を補強すること。本発明によれば、部品のための金属ブランク(11)が調製され、それの同軸の内面の中に広がり、かつ内側から外側に向かって減少する軸方向広がりから成る垂直断面を有するキャビティ(14)が、中に形成され、補強糸(21)が、キャビティ内に巻き付けられ、前記キャビティは、閉鎖され、組立体が、熱間等静圧圧縮プロセスにかけられ、ブランクは、最終部品を得るように機械加工される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属マトリックスに埋め込まれる複合材料の巻線の形の、同軸の繊維性環状補強材を含む環状部分を有する金属部品に関する。より詳細には、本発明は、改善された強度から利益を得るこのような部品の製作に関する。また、本発明は、このような同軸の環状補強材を含む金属部品も提供する。
【背景技術】
【0002】
金属の塊に、たとえばセラミックファイバーなどの複合材料の繊維を組み込むことによって、非常に大きな接線方向の圧縮強度や引張強度を確かに有すると同時に、環状金属部品の重量を低減することが知られている。例示として、セラミックは、たとえばチタンなどの、金属よりも大きな圧縮強度や引張強度を有する炭化珪素の糸であることができる。
【0003】
このような部品を得るために、部品に対してブランクの内側に金属被覆セラミックの糸を巻き付けることができる。たとえば、仏国特許第2886290号明細書は、巻線用マンドレルとして働くブランクの一部に直接巻線を作ることを提案している。それは、完全に従来の「外部」巻線である。より正確には、その部分は、2つの肩部を備えている。半径方向内側肩部は、巻線のための側方支承面を形成する。隣接する円筒形部分は、巻線が作られる基部面を形成する。垂直断面に関しては、巻線は、形状が長方形である。巻き付けの後に、ブランクは、それに当てがわれる付加的な金属部分、特に、巻線と接触するほぞを有する外側リングおよび側方カバーを有する。次いで、組立体は、巻線がほぞによって圧縮されるように、カバーが特に変形される間に熱間等静圧圧縮のステップを受ける。熱間等静圧圧縮の操作は、それ自体知られており、すなわち、これは、ボックスに上述の組立体を配置することと、1000bar程度の高圧に、かつ1000℃程度の温度に数時間組立体をさらすことから成る。この操作の後に、次に単一のブロックの形の部品が、所望の形状および寸法を有するように機械加工される。一般に、仕上がり部品には一様な金属マトリックスに埋め込まれる巻き付けられた複合インサートが設けられるように、ブランクのさまざまな部分およびセラミック糸のシースは、同じ金属で作られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】仏国特許第2886290号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻線によって補強されるゾーンは、通常、垂直断面が長方形である。部品の重量を低減し、接線方向にその引張/圧縮強度を増加させるために、もっぱら金属で作られる部分によって取り囲まれる補強ゾーンは、できるだけ大きな体積を占めることが望ましい。
【0006】
長方形の垂直断面のインサートによるこの配置は、部品に加えられる力の方向によって必ずしも完全に満足のいくものでない場合がある。繊維の強度は、引張にも圧縮にも接線方向には優れているが、力が繊維を横切って延在する方向に加えられる場合には、純金属の強度よりも小さい。例として、このことは、このように製作される環状部品が特に航空機ターボジェット用のタービンディスクなどのブレードに装着される回転部品である場合に、特に充てはまる。横方向力を受ける他の部品は、着陸装置機構においてアクチュエータに接続される「回転スリーブ」である。
【0007】
長方形垂直断面の巻線を有する部品の場合、破壊は補強ゾーンの外側部分に起こり得る。
【0008】
本発明は、巻きを含む周囲とゾーンとの間で側方に前記外側半径方向領域に純金属の「段階的な」ゾーンを確立するという考えに基づいている。本発明によれば、このことにより、少なくとも軸対称の部品の半径方向に外側のゾーンにおいて半径方向外側に行くほど減少する軸方向広がりから成る垂直断面を有するように、巻線の形成がもたらされる。
【0009】
たとえば、少なくとも半径方向に一番外の部分において台形や三角形である垂直断面の巻き付け部分は、問題の必要条件を満たすのに適している。また、純金属の割合が部品の外側に行くほど半径方向に増加し、他のものが同様のままである限りは、半波形状を考えることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
次いで、上述した「外部」巻線は想像することが困難であるので、他の問題点は、部品の作り方である。また、本発明は、「内部」巻線と呼ばれるこのような巻線の新規なアプローチも提案する。
【0011】
より正確には、本発明は、複合材料の巻線の形で中に同軸の環状補強材を含むことによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法であって:
前記部品のための環状金属ブランクを調製するステップと、
前記ブランクの同軸の内面の中へ広がり、かつその高さの少なくとも一部に関して半径方向外側に行くほど減少する軸方向広がりから成る垂直断面をもつキャビティを作り、または仕上げるステップと、
巻線で中に空間のすべてを実質的に満たすように前記キャビティに補強糸を巻き付けるステップと、
金属製壁部で前記キャビティを閉鎖するステップと、
組立体を熱間等静圧圧縮プロセスにかけるステップと、
前記部品の最終形状を得るように前記ブランクを機械加工するステップとに存するステップによって特徴付けられる方法を提案する。
【0012】
「垂直断面」という用語は、考慮中の軸対称の部品の軸線、より正確には、上の定義によるブランクの軸線を含む平面で断面を示すのに使用される。
【0013】
有利な特徴によれば、補強糸は、金属に収められるセラミックコアによって構成される。
【0014】
このように得られた巻線の形状、すなわち本質的にセラミック繊維を含むゾーンの形状により、前記ゾーンの外側に向かって半径方向に、かつそれのどちら側にも純金属(たとえばチタン)のより大きな塊を確保しておくことができ、それによって、本質的に半径方向の力は、この力を接線方向に方向付けられる力にますます変化させる方向に、繊維の中に「徐々に」伝達できるようになる。
【0015】
それらの金属シースを介して一定の巻きを共に接合する溶接部によって形成されている巻線を安定させることができる。
【0016】
いわゆる「内部」巻線を行うために、補強糸の巻線は、キャビティの底部に糸の端部を固締することによって開始され、巻線は、ブランクの回転速度に対して制御される速度で糸を供給しながら、ブランクをその軸線の周りに回転させることによって継続される。
【0017】
糸は、その回転方向に前記ブランクに力を加えるような速度で供給されることが有利である。
【0018】
同軸の巻線によって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法を示す以下の説明に照らして、本発明はよりよく理解され、本発明の他の利点はより明確に明らかになることができ、この方法は、単に例示として与えられ、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】補強糸を巻き付けることによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法における1ステップの垂直断面図である。
【図2】補強糸を巻き付けることによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法における1ステップの垂直断面図である。
【図3A】補強糸を巻き付けることによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法における1ステップの垂直断面図である。
【図3B】図3Aの段階を示す斜視部分図である。
【図4】補強糸を巻き付けることによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法における1ステップの垂直断面図である。
【図5】補強糸を巻き付けることによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法における1ステップの垂直断面図である。
【図6】補強糸を巻き付けることによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法における1ステップの垂直断面図である。
【図7】上記のように得られた部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、ロータディスクなどの環状部品を、それ自体環状で軸対称の形状のたとえばチタンで作られ、かつ図1に示される長方形の垂直断面を有する金属ブランク11から製作できるようにする方法が以下に説明される。ブランクの回転軸は、Xと参照される。
【0021】
当然、この断面は、最終部品として得ることが望まれる形状に応じて異なる形状を有することができる。
【0022】
ブランクは、同軸の内面12を有し、その面は、この例では円筒形である。
【0023】
その考え方は、最終部品を軽量化すると共に、また機械的強度の増加を最終部品に与えることである。
【0024】
このようなブランクが調製された後に、次のステップ(図2)は、たとえば機械加工によってブランクの塊に開いたキャビティ14を形成することにあり、そのキャビティは、前記同軸の内面12の中へ広がっている。例示として、ブランクは、軸線の周りに回転させられることができ、切削工具は、前記ブランクのアクセス可能な中央部分を通して挿入され得る。材料は、ブランクの前記同軸の内面の中へ広がる環状キャビティが得られるまで、除去される。また、既に中空であるブランクから開始することもでき、この場合、機械加工操作は、単に、所望の形状および寸法を有するようにキャビティを完了することにあり得ることを観察されたい。
【0025】
重要な特徴によれば、キャビティ14は、その高さの少なくとも一部に関して半径方向外側に行くほど減少する軸方向広がりから成る垂直断面を有する。示された例では、キャビティは、(垂直断面に関して、かつ内側から外側に向かって半径方向に)台形形状16が拡張した長方形形状15を有している。キャビティの第2の部分は、形状が三角形であることができ、または、(軸線Xに平行な)その軸方向広がりが、内側から外側の方へ行くほど減少する任意の他の形状を有することができる。
【0026】
これにより、長方形である垂直断面をキャビティが有した場合に得られるであろうものと比べて、破線を用いて標示される側方ゾーン17および18に純金属の確保がもたらされる。
【0027】
次の操作は、その場で補強糸21を、ここでは金属で被覆されたセラミック糸(炭化珪素)を巻き付けることにある。金属は、チタン、すなわちブランクを構成するものと同じ金属である。図3Aに示されるように、この操作は、キャビティに開口を介して糸を挿入することによって行われ、キャビティの全空間が接触している巻き25の巻線で満たされるまで、キャビティの円筒形底部23から開始する糸を据え付けて、隣接する巻きに、次いで連続する巻き層になることにある。
【0028】
巻き付けの目的については、次のように進むことができる。糸は、(層を形成するために)軸線Xに平行に制御される方法で、かつ(次の連続する層を作るために)半径方向内側に移動可能な堅い筒状のガイド27を介して供給される。ガイド27は、図3Aおよび図3Bに示されるように指摘され、すなわち、その端部27Aは、巻きが巻き付けられる円周方向に対して小さな角度のところにある。
【0029】
糸21の巻き付けは、それの軸線方向端部の近くで、キャビティの円筒形底部壁23に糸の1つの端部を(溶接によって)固締することによって、かつブランク11をその軸線Xの周りに回転させることによって開始され、糸は、ブランクの回転速度に対して制御される速度で供給される。例示として、糸21が送り出される速度は、その速度が、常に巻線巻き付け速度に実質的に等しく、ブランクの回転速度および巻き付けられている巻き層の直径を有するように、連続的に調整され得る。
【0030】
また、糸がその回転方向にブランクに力を加えるように供給される速度を得るための用意が行われ得る。たとえば、糸21は、モータ駆動回転ホイール(図示せず)を有する駆動システムによってガイド27の内側に押されることができ、このモータ駆動回転ホイールは、前記糸がガイド27からのその出口で、およびこれが巻き付け時にその位置を取る箇所で僅かに圧縮されるように、長手方向のスリップに適応することができる。ブランク11が自由に回転するように取り付けられること、および巻き付け時にブランクを回転駆動する働きをするのは糸自体に加えられる力であることを予見することさえできる。
【0031】
巻線の膨張を回避するために、巻きは、巻きのうちのいくつかの金属シースを共に接合するように溶接点または溶接線を使って巻き付ける時に所与の間隔で安定化される。
【0032】
知られている方法では、溶接は、真空中で、またはアルゴンの不活性雰囲気中で、電気アーク溶接または誘導溶接であることができる。仏国特許第2886290号明細書に説明されているような溶接プロセスを使用することができる。
【0033】
図4の次の操作は、巻線25で満たされているキャビティ14を閉鎖することにある。たとえば、金属の円筒形環状壁30、ここではチタン壁が、キャビティの開口と位置を合わせて、適切な場所に設置される。この壁は、熱間等静圧圧縮が加えられると、巻線自体を同時に圧縮しながら半径方向外側に変形することによってキャビティの中に貫入することができるように、開口と同じ軸方向広がりを有する。円筒形環状壁30は、その直径がブランクの中央開口の直径よりも僅かに大きいように寸法取りされることができ、環状壁は、適切な場所に設置される前に、(たとえば、液体窒素に浸漬されることによって)低温に冷却される。したがって、熱間等静圧圧縮操作の開始の前でさえ、環状壁30は、キャビティに係合し、巻線を圧縮し始める。
【0034】
前記キャビティを閉鎖するステップは、これを排気するステップと、溶接された金属箔32でこれを密封閉鎖するステップとを含むことが有利である。この金属箔は、熱間等静圧圧縮操作の前にキャビティの開口のどちら側にも溶接される。
【0035】
その後に、熱間等静圧圧縮操作そのものが、図4に示されるように改質されるたとえばブランクを配置することによって、圧力を1000barに、かつ温度を約1000℃に上昇させながら数時間の間ボックス内で行われる。
【0036】
結果は、図5に示されている。環状壁30は、これと共に金属箔32を取るとキャビティ内に係合していることが分かる。次に、組立体は、高強度のセラミック糸巻線によって占められるその体積の大部分からなる単一のブロックを形成し、この高強度のセラミック糸巻線は、巻き付け時に使用された糸の金属シースを溶融することから生じる金属マトリックスに埋め込まれる。
【0037】
次いで、一連の機械加工操作(図6)が、所望の部品の(図6では一点鎖線で示される)輪郭35を画定するように、熱間等静圧圧縮操作によって変形されるようにブランクを変える目的で行われる。図7に示されるように最終部品36は、破壊を助長することになる剛性の不連続性を局部的に制限しながら、部品の機械抗折強度が増大できるようになる全く金属性の外側側方ゾーン(17a、18a)を含む。これらの「段階的な」ゾーンは、巻線を有するゾーンの強度が最適化される円周方向の引張/圧縮に力を変換するように、力が繊維補強材(巻線)の中にせん断によって徐々に進入するようになる効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料の巻線の形で中に同軸の環状補強材を含むことによって補強される軸対称の環状金属部品を製作する方法にして、
前記部品のための環状金属ブランク(11)を調製するステップと、
前記ブランクの同軸の内面の中へ広がり、かつその高さの少なくとも一部に関して半径方向外側に行くほど減少する軸方向広がりから成る垂直断面をもつキャビティ(14)を作り、または仕上げるステップと、
巻線で中の空間のすべてを実質的に満たすように前記キャビティに補強糸(21)を巻き付けるステップと
を含む方法であって、
前記キャビティの開口と位置を合わせて金属の円筒状壁(30)を適切な場所に設置することによって前記キャビティを閉鎖するステップと、次いで、
組立体を熱間等静圧圧縮プロセスにかけるステップと、
前記部品の最終形状を得るように前記ブランクを機械加工するステップとをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記補強糸(21)が、セラミックなどの複合材料のコアで作られ、金属に収められ、形成されている巻線が、それらの金属シースを介して一定の巻きを共に接合する溶接部によって安定化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補強糸の巻き付けが、キャビティの底部(23)にそれの1つの端部を固定することによって開始され、巻き付けが、ブランクの回転速度に対して制御された速度で糸を供給しながら、前記ブランクをその軸線(X)の周りに回転させることによって継続されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
糸(21)が、その回転方向に前記ブランクに力を加えるような速度で供給されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記開いたキャビティが、少なくとも半径方向にそれの最も外側の部分に、少なくとも一部分三角形または台形(16)である断面をこれが有するように、形成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記キャビティを閉鎖するステップが、これを排気するステップと、熱間等静圧圧縮操作を行う前に前記キャビティの開口のどちら側にも溶接される金属箔(32)でこれを密封閉鎖するステップとを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−530190(P2012−530190A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515544(P2012−515544)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051179
【国際公開番号】WO2010/146293
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511305472)
【Fターム(参考)】