説明

繊維束の綾振り装置、繊維束パッケージの製造装置および製造方法

【課題】薄く均一に拡げた状態でボビンに巻取ることが要請される扁平繊維束を、単繊維どうしの絡まりなどの不都合を引き起こすことなく糸道を安定化させ、ひいては該繊維束の巻取パッケージの巻姿を良好なものにして品位向上を実現できる繊維束の綾振り装置と、該綾振り装置を用いた繊維束パッケージの製造装置と製造方法を提供すること。
【解決手段】繊維束を案内するトラバースガイド6と、前記トラバースガイドのトラバース機構とを有し、前記トラバースガイドをトラバース機構によりボビン回転軸方向に往復動させることにより繊維束を綾振りする繊維束の綾振り装置5において、前記トラバースガイドが、糸道を外れる動作をする繊維束を本来の糸道方向に案内する糸ガイド機構を有してなる繊維束の綾振り装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、扁平糸のように、拡幅されて扁平な断面形状を持つテープ状繊維束をボビンに巻取る際に、該繊維束に不要な外力を加えずに、撚り、毛羽立ちなどがない状態で巻き取ることを可能にして、その結果、扁平糸のようなテープ状繊維束を巻き戻す際にも、テープ状の形態を破壊することなく、そのままの形態で、開繊性良く巻き戻すことを可能にする繊維束パッケージを得ることを可能とする綾振り装置と繊維束パッケージの製造装置と製造方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、そのような扁平な断面形状を持つ繊維束を巻き取るための綾振り装置に用いられた際に、単繊維どうしの絡まりなどの不都合を引き起こすことなく糸道を安定化させるのに効果のある特異な糸道ガイドを用いた繊維束の綾振り装置に関する。
【背景技術】
【0003】
炭素繊維やガラス繊維に代表される樹脂補強に用いられる繊維(以下、補強繊維という)の多くは、それら繊維の束(以下、補強繊維束という)にマトリックス樹脂を含浸させて、いわゆるプリプレグとした後、これを所定形状にプリフォームし、加熱硬化させて繊維強化プラスチック成形体として製品化される。
【0004】
近年、この繊維強化プラスチック成形体の軽量化指向に伴い、厚みが薄く、かつ厚さ斑が少ない高品位なプリプレグが要望されてきている。
【0005】
このようなプリプレグを製造する際には、補強繊維束を構成する1本1本の単繊維の高弾性特性をいかんなく発揮させるために、無撚り状態で、薄く広く開繊させる必要がある。
【0006】
このため、プリプレグの原材料となる補強繊維束についても、予め、薄く均一に拡げた状態でボビンに巻取ること、そして、その状態を維持したままでプリプレグの製造工程に提供することが重要な課題となってきている。
【0007】
このような繊維束の扱いを実現するには、特に、繊維束の搬送・案内の際に繊維束に不要な外力を与えないことが重要であり、例えば、鍔付きロールなどで糸道を規制する場合には、繊維束の擦れ・折り畳まれの原因となるので不都合を招くことがあり、必ずしも良くない。そのため、糸道の変動を見越した、すなわち、糸道の変動を許容した、幅広のガイドロールが用いられることが一般的である。
【0008】
しかしながら、一方で糸道の変動は、巻取パッケージの品位低下を引き起こすことになるため、糸道の安定化が重要な課題となってきている。
【0009】
また、ガイドロール上を繊維束が斜めに走る場合も、繊維束の擦れを引き起こして糸品位を悪化させるため、同様に糸道の安定化が重要な課題である。
【0010】
一方、一般的な繊維束の巻取装置では、巻取ボビンの回転軸と平行に往復動するトラバースガイドによって繊維束は巻取ボビン軸方向に綾振りされて、巻取られる。
このような綾振り装置では、糸道の安定化は重要な課題であり、糸道の変動は巻取パッケージの乱れとなり、パッケージ品位の低下を引き起こす。
【0011】
また、繊維束が横方向に引っ張られると、ガイドロール上を繊維束が斜めに走ることとなる。このように、繊維束がガイドロールの周方向に真っ直ぐ走行せず、ガイドロール上を斜めに走ると、繊維束に擦れを生じ繊維束の品位低下を引き起こす。
【0012】
従来、上述のような予め薄く広げた扁平テープ状の補強繊維束を、巻始めから巻終わりまで安定した糸幅(繊維束の幅)で巻取る繊維束巻取装置としては、巻取ボビンの回転軸に平行に往復動するガイドスタンドと、該ガイドスタンドの上部にその回転軸が巻取ボビンの回転軸と直交して配置された一対の上部ガイドローラと、前記ガイドスタンドの下部にその回転軸が巻取ボビンの回転軸と平行に配された一対の下部ガイドローラと、その間に繊維束を軸線方向に90°捻転させるための円錐状ガイドローラとを有する繊維束の巻取装置が、日本国特許出願特開2001−348166号公報(特許文献1)の図2において提案されている。
【0013】
また、揺動ガイドを有する巻取装置としては、巻取ドラムへと細幅帯状体を送る最終の貼り付けローラを、巻取ドラムの外表面に対する法線を揺動中心軸として揺動させることで、細幅帯状体の巻取方向に平行な直線と揺動する前記貼り付けローラの回転軸線とを直交させながら細幅帯状体をドラムに巻き付ける巻取装置等が、日本国特許第3194765号公報(特許文献2)の図5において提案されている。
【0014】
しかし、これら従来の繊維束巻取装置には、以下に説明するような欠点があった。
【0015】
すなわち、特許文献1の図2に開示されている繊維束巻取装置においては、ガイドスタンドの上部に設置された一対の上部ガイドロールにおいて、その一方を中央が凹んだ湾曲周面を持つ鼓形状とし、この湾曲により繊維束を拘束し糸道が本来の糸道からずれることを防止している。しかしながら、鼓形状のガイドロールにより繊維束を拘束することは、テープ状の繊維束の幅方向に力を掛けるということであり、繊維束のつぶれを引き起こし単繊維どうしの絡まりの原因となるほか、巻き取った繊維束の糸幅も狭くなってしまう。また、同公報では、綾振りに伴う下部ガイドローラ上での繊維束の横滑りを抑制するため、下部ガイドローラに鼓状のガイドロールを用いているが、やはり、これも繊維束のつぶれや単繊維どうしの絡まりの原因となり、巻き取った繊維束の糸幅も狭くなってしまう。さらに、円錐状や鼓状のガイドロールは糸幅方向で周速差が生じるため、繊維束にダメージを与え品位の低下につながる。
【0016】
また、特許文献2の図5には、水平方向に揺動可能に支持されたブラケットに細幅帯状体の供給方向に延びたガイドが連結され、また前記ブラケットに軸方向中央が外側に膨出した太鼓状の供給ローラを有したガイドが開示されている。これによりガイドを水平方向に揺動することにより、細幅帯状体の供給方向にガイドを指向させることができ、また太鼓状の供給ローラにより細幅帯状体を略センタリングできると記載されている。
【0017】
しかしながら、繊維束の場合、太鼓状ローラを用いると繊維束の幅が広がるのみで、センタリングは期待できない。また、上記ガイドの揺動はガイドロールの向きを細幅帯状体の供給方向に向けるものであるが、これは上記供給ローラ上での細幅帯状体の位置が決まっているため機能するが、繊維束の場合には、供給ロール上の糸道が安定せず供給ロール上から繊維束が外れてしまい巻取ができないのである。
【0018】
同様に、最終のガイドロールである貼付けローラも鍔を用いて細幅帯状体の走行位置を固定する思想であり、繊維束の巻取には適用できないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2001−348166号公報
【特許文献2】特許第3194765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の第一の目的は、上述したような点に鑑み、薄く均一に拡げた状態でボビンに巻取ることが要請される扁平繊維束を、単繊維どうしの絡まりなどの不都合を引き起こすことなく、糸道を安定化させ、ひいては該繊維束の巻取パッケージの巻姿を良好なものにして品位向上を実現することのできる繊維束の綾振り装置と、該繊維束の綾振り装置を用いて繊維束パッケージを製造する装置と方法を提供することにある。
【0021】
また、特に、本発明の目的は、そのような扁平な繊維束を巻き取るための綾振り装置に用いられた際に、単繊維どうしの絡まりなどの不都合を引き起こすことなく糸道を安定化させるのに効果のある特異な糸道ガイドを実現し、その糸道ガイドを用いた繊維束の綾振り装置、繊維束の巻取装置、さらに繊維束パッケージの製造装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述した目的を達成する本発明の繊維束の綾振り装置は、下記(1)の構成を有する。
(1)繊維束を案内するトラバースガイドと、前記トラバースガイドのトラバース機構とを有し、前記トラバースガイドをトラバース機構によりボビン回転軸方向に往復動させることにより繊維束を綾振りする繊維束の綾振り装置において、前記トラバースガイドが、糸道を外れる動作をする繊維束を本来の糸道方向に案内する糸ガイド機構を有してなることを特徴とする繊維束の綾振り装置である。
【0023】
また、かかる本発明の繊維束の綾振り装置において、下記(2)〜(5)のいずれかの構成を有することが好ましい。
(2)前記糸ガイド機構が、走行する糸を案内する糸道ガイドであって、該糸道ガイドがガイドロールと該ガイドロールを支持する支持部材とからなり、該支持部材は、前記ガイドロールの回転軸に対し直角にねじれた位置に回転軸を有するものであり、糸道の変動に対応して、該支持部材の回転軸を回転中心とする回転により該ガイドロールが糸道に対して傾けられることにより、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる糸道ガイドを有してなることを特徴とする上記(1)記載の繊維束の綾振り装置。
(3)前記支持部材の回転軸が糸道中心と交わるようにされていることを特徴とする上記(2)記載の繊維束の綾振り装置。
(4)前記トラバースガイドは、少なくともボビン回転軸に実質的に直角にねじれた位置にロール回転軸が配された上部ガイドロールとボビン回転軸に実質的に平行にロール回転軸が配された最終のガイドロールからなり、前記糸案内機構が前記上部ガイドロールに設けられていることを特徴とする上記(2)または(3)記載の繊維束の綾振り装置。
(5)前記支持部材の回転軸に対し、前記上部ガイドロールのロール回転軸が糸道下流側に配されていることを特徴とする上記(4)記載の繊維束の綾振り装置。
【0024】
また、上述した目的を達成する本発明の繊維束の綾振り装置は、他の構成として、下記(6)の構成を有する。
(6)繊維束を案内するトラバースガイドと、該トラバースガイドのトラバース機構を有し、前記トラバースガイドをトラバース機構によりボビン回転軸方向に往復動させることにより繊維束を綾振りする繊維束の綾振り装置において、前記トラバースガイドは、少なくとも、前記ボビン回転軸に実質的に直角にねじれた位置にロール回転軸が配された上部ガイドロールと、前記ボビン回転軸に実質的に平行にロール回転軸が配された最終のガイドロールからなり、これらの上部ガイドロールと最終のガイドロールは、それぞれ、該ガイドロールのロール回転軸方向と該ガイドロールに入る糸道方向とが実質的に直角にねじれた位置関係となるように、配置されていることを特徴とする繊維束の綾振り装置。
【0025】
かかる本発明の繊維束の綾振り装置において、下記(7)〜(10)のいずれかの構成を有することが好ましい。
(7)前記最終のガイドロールと繊維束との接触長が15mm以上であることを特徴とする上記(6)記載の繊維束の綾振り装置。
(8)巻取ボビンの回転軸と実質的に平行にロール回転軸が配置されたガイドロールを、前記最終のガイドロールを含めて2つ以上有し、これらガイドロールと繊維束との接触長の合計が25mm以上であることを特徴とする上記(6)または(7)記載の繊維束の綾振り装置。
(9)前記上部ガイドロールが、糸道を外れる動作をする繊維束を本来の糸道方向に案内する糸道ガイド機構を有してなることを特徴とする上記(6)に記載の繊維束の綾振り装置。
(10)前記糸道ガイド機構が、走行する糸を案内する糸道ガイドであって、該糸道ガイドがガイドロールと該ガイドロールを支持する支持部材とからなり、該支持部材は、前記ガイドロールの回転軸に対し直角にねじれた位置に回転軸を有するものであり、糸道の変動に対応して、該支持部材の回転軸を回転中心とする回転により該ガイドロールが糸道に対して傾けられることにより、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる糸道ガイドを有してなることを特徴とする上記(9)記載の繊維束の綾振り装置。
【0026】
上述した目的を達成する本発明の繊維束の巻取装置は、下記(11)の構成を有する。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の繊維束の綾振り装置を備えてなることを特徴とする繊維束の巻取装置。
【0027】
また、上述した目的を達成する本発明の繊維束パッケージの製造装置は、下記(12)の構成を有する。
(12)上記(11)に記載の繊維束の巻取装置を備えてなることを特徴とする繊維束パッケージの製造装置。
【0028】
また、上述した目的を達成する本発明の繊維束パッケージの製造方法は、下記(13)の構成を有する。
(13)上記(12)に記載の繊維束パッケージの製造装置を用いて繊維束パッケージを製造することを特徴とする繊維束パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0029】
上述した本発明の繊維束の綾振り装置によれば、綾振りが安定していて均斉な綾振り巻取りができるものであり、巻姿が一定であって美しく、高次加工工程でも扱いのしやすい繊維束パッケージを製造することを可能とする繊維束の綾振り装置が提供されるものである。
【0030】
また、本発明の繊維束の巻取装置によれば、単繊維どうしの絡まりなどの不都合が引き起こすこともなく糸道が安定化しており、さらに綾振りが安定していて均斉な綾振り巻取りができることから、巻姿が一定であって美しく、高次加工工程で扱いのしやすい繊維束パッケージを製造することができる。
【0031】
本発明の繊維束パッケージの製造装置、製造方法によれば、巻姿が一定であって美しく、高次加工工程でも扱いのしやすい繊維束パッケージを製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の繊維束の綾振り装置に使用される糸道ガイド1の全体構造を示した概略斜視図である。
【図2】(a)、(b)、(c)は、図1に示した糸道ガイドを用いた際に、糸道が変動したときに、繊維束が本来の糸道の方向に自動的に案内されていくメカニズムを説明したものである。
【図3】綾振り装置と巻取装置の全体を示した外観モデル斜視図である。
【図4】(a)は、トラバースガイド部分の概略図、(b)は上部ガイドロールの概略図である。
【図5】(a)、(b)、(c)は、本発明の繊維束の綾振り装置にかかるトラバースガイドの糸ガイド機構の動作を説明した図である。
【図6】図5に示したトラバースガイド部分を巻取ボビンの回転軸方向からみた概略図である。
【図7】(a)は、図5に示したトラバースガイドをボビン回転軸が紙面に平行となる方向からみた概略図であり、(b)は従来技術のトラバースガイドをボビン回転軸が紙面と平行になる方向からみた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面などに基づいて、更に詳しく本発明の繊維束の綾振り装置、該繊維束の綾振り装置に用いられる糸道ガイドなどについて説明する。
【0034】
図1は、本発明の繊維束の綾振り装置に使用される糸道ガイド1の全体構造をモデル的に示した概略モデル斜視図であり、糸道ガイド1は、走行する糸(繊維束)Yを案内する糸道ガイドであって、該糸道ガイド1はガイドロール2と該ガイドロールを支持する支持部材3とからなる。そして、該支持部材3は、ガイドロール2の回転軸方向に対して直角にねじれた位置に回転軸4を有するものであり、糸道(走行している糸の現実の経路)の変動に対応して、該支持部材の回転軸4を回転中心とする回転により該ガイドロール2が糸道に対して傾く挙動をとることにより、糸(繊維束)が、本来の糸道(上流および下流における走行する糸の支持位置で定まる糸道。装置構成上、設定がされた糸道。直線である必要はなく、領域・範囲があってもよい。)の中心方向に自動的に案内されていくように構成されてなるものである。
【0035】
本発明において、ガイドロール2は糸の走行速度に追従して従属回転できる自由回転ロールであるように構成されているのが好ましい。その方が糸に与えるしごき作用などが少なく、糸質に悪影響を与えることが少ないので好ましいのである。
【0036】
また、ガイドロール2の形状は円柱状が好ましい。円錐状や鼓状ロールを用いた場合のようなロール表面での周速差が生じず、糸質に悪影響を与えることが少ないので好ましいのである。
【0037】
上述した糸道ガイドにおいて、支持部材の回転軸4は、本来の糸道と交わるように装置が構成されているのが好ましい。このように構成することによりガイドロール2の傾きが左右で等しくなるため、ガイドロール2の傾動をスムーズに行うことができ、より効果的・適切に糸を本来の糸道の方向に案内することができるからである。
【0038】
また、支持部材の回転軸方向4と、ガイドロール2に入る本来の糸道のなす角をαとし、該支持部材の回転軸方向4とガイドロール2から出る本来の糸道のなす角をβをするとき、αとβとが、α<βの関係を有することが好ましい。この関係を満たすとき、ガイドロールが傾動していない中立位置での経路長よりも、糸道を本来の糸道の方向に案内する方向にガイドロール2を傾けた糸道の方がトータルの経路長が短くなるため、より効果的・適切に糸を本来の糸道の方向に案内することができるからである。また、αは45°以上が好ましい。αが45°より小さいと、ガイドロール2が傾いてもガイドロール入りの糸道とガイドロール2の稜線のなす角の変化が小さく、効果的に繊維束を本来の糸道方向に案内することができないためである。
【0039】
上述した糸道ガイドは、繊維束パッケージの製造装置(巻取装置、引取装置)に用いられて大きな効果を発揮する。正規の設定した糸道に沿って糸が走行することが、繊維束パッケージを所期の設計どおりにきれいに巻き上げることを可能にするからである。
【0040】
従って、上述した糸道ガイドは、特にきれいに巻き上げることがむずかしい、例えば、テープ状、もしくは広幅状態で糸が走行しその形態のままで巻き上げることが要求されるような繊維束パッケージの製造工程に採用すれば、より効果的なものである。
【0041】
そのようなテープ状、もしくは広幅状態で糸が走行し、その形態のままで巻き上げることが要求されるような繊維束パッケージの製造工程の巻取装置部分において、該繊維束の綾振り装置として用いた例を示して、以下に説明する。
【0042】
図3は、該綾振り装置5、巻取装置8の全体を示した外観モデル斜視図であり、綾振り装置5は、繊維束を案内するトラバースガイド6を有している。また、図4(a)は、トラバースガイド6部分の概略図であり、図4(b)は、上部ガイドロール14の概略図である。
【0043】
また、図6はトラバースガイド6を巻取ボビンの回転軸方向から見た図で、図7はトラバースガイドを巻取ボビンの回転軸が紙面と平行となる方向から見た図である。
【0044】
図3において、巻取装置8における繊維束の概略の流れを説明すると、図示していない上流工程から搬送ロールを経て、最終の糸道ガイド12を通過した繊維束は、図の矢印P方向に往復運動するトラバースガイド6により、前記糸道ガイド12を支点とする綾振り運動を与えられて最終的に巻取ボビンに巻取られる。
【0045】
トラバースガイド6部分は、特にその具体的構造が限定されるものではないが、図5に示したように、少なくとも、糸道を外れる動作をする繊維束Yを本来の糸道方向に案内する糸ガイド機構を有していることが重要である。特に、繊維束をパッケージとして巻き上げる直前の段階であり、ここでのトラバースの適切な実施がパッケージの最終巻姿を決定する重要な要素となるからである。
【0046】
本発明にかかる綾振り装置のトラバースガイド6部分の概要図を図4に示す。
【0047】
この例において、該ドラバースガイド6部分は3本のガイドロールからなり、最も上流のガイドロール2部分において前述した糸道ガイドを構成しているものである。
【0048】
図示した3本のロールのうち、真ん中と最下流に位置するガイドロールは、前述した糸道ガイドのように傾動するように構成されている必要は必ずしもなく、むしろ固定されている方が好ましい。本来の糸道を確保することが容易にできるようにするためである。また、それらのロールは、糸の走行に合わせて回転することができる、自由回転ロールであることが好ましい。
【0049】
また、3本のロールのうち真ん中のロールは、テープ状の扁平繊維束を90°ひねる際に、その扁平形態を保つことを補助するためのもので、繊維束の形態が安定していれば、上部ガイドロールと最終のガイドロールの2本で構成しても良い。
【0050】
従って、トラバースガイドの具体的態様として好ましいのは、少なくともボビン回転軸に実質的に直角にねじれた位置にロール回転軸が配された上部ガイドロール14と、ボビン回転軸方向に実質的に平行にロール回転軸が配された最終のガイドロール16からなっていて、かつ、該上部ガイドロール14として、前述した「糸道を外れる動作をする繊維束Yを本来の糸道方向に案内する糸ガイド機構」が構成されているものである。
【0051】
前述した糸道ガイドを、トラバースガイド部に用いる場合、支持部材の回転軸に対し、上部ガイドロールのロール回転軸が糸道下流側に配されていることが好ましい。これは、糸道が本来の糸道からずれた際に、糸自身の張力により上部ガイドロール14を傾動させるモーメントが生じるが、上記のように上部ガイドロール14を構成することによって、上記上部ガイドロール14を傾動させるモーメントがより大きくなり、より効果的・適切に糸を本来の糸道の方向に案内することができるからである。
【0052】
また、図7(a)に示すようにガイドロールの回転軸とガイドロールに入る糸道とが実質的に直角にねじれた位置関係となるように配置されていることが好ましい。図7(b)のようにガイドロールのロール回転軸とガイドロールに入る糸道とが直角の位置関係にない場合、ロール上で繊維束が滑ることとなり、糸品位を損なうためである。
【0053】
ここで、実質的に直角とは、ガイドロールのロール回転軸とガイドロールに入る糸道の成す角度が厳密に90°である必要はなく、実用上90±2°程度の範囲ならば糸品位への影響は十分小さく、この範囲を含むものとする。
【0054】
また、最終のガイドロールと繊維束との接触長Lは15mm以上あることが好ましい。接触長Lを15mm以上とすることで、綾振りにより繊維束が左右に引っ張られてもガイドロール上で繊維束が横滑りすることなく安定して走行することができるからである。
さらに、巻取ボビンの回転軸と実質的に平行にロール回転軸が配置されたガイドロールを、最終のガイドロールを含めて2つ以上有すると、より糸道の安定性が増すので好ましい。その場合、それらのガイドロールと繊維束の接触長の合計が25mm以上であることが好ましい。
【0055】
次に、上述した糸道ガイド、繊維束の綾振り装置の作用を説明する。
【0056】
図2は本発明にかかる糸道ガイドの動作を説明した図である。ここで3本のガイドロールのうち、中央のガイドロール2が本発明にかかる糸道ガイドであり、中央のガイドロール2の前後に上流側ガイドロール10と下流側ガイドロール11が配置されている。
【0057】
一般に繊維束の搬送・案内にガイドロールを用いた場合、繊維束はその経路長が最短となる糸道をとる。よって、ガイドロール上で繊維束の滑りがないとすれば、繊維束はガイドロールの回転軸に対し直角方向に入射する。
【0058】
一方、平行な回転軸を持つロールで構成されたガイドロール群においては、本来の糸道(図2(a)の破線)と本来の糸道からずれた糸道(図2(a)の実線)で繊維束の経路長に差はなく、どちらの糸道も取ることができる。そこで、図の中央のガイドロール2を糸道のずれ(変動)に合わせて傾ける(図2(b))と、繊維束はガイドロール2に直角に入射するため、ずれた糸道は本来の糸道方向に案内される(図2(c))。
【0059】
次に、図3は、本発明の綾振り装置及び該綾振り装置を備えた巻取装置の斜視図であり、図4は、本発明にかかる綾振り装置のトラバースガイド6部分の概要図である。
また、図5は、本発明にかかるトラバースガイドの糸ガイド機構の動作を説明した図である。
【0060】
テープ状もしくは広幅状態の繊維束は、糸道ガイドを経てトラバースガイド6の最も上流に位置する上部ガイドロール14により、そのテープ面もしくは広幅面を把持され拘束される。次に、繊維束は上部ガイドロール14と中間のガイドロール15の間で45°捻転され、さらに中間のガイドロール15と最終のガイドロール16の間で45°捻転され、最終的にそのテープ面もしくは広幅面をボビン回転軸と平行に揃えられ、プレッシャーロール13により面圧を与えられ、ボビンに巻き取られる。
【0061】
ここで、図示していない上流側での糸道のずれは、糸道ガイド12上での糸道のずれを引き起こす。この糸道ガイド12上での糸道のずれにより、上部ガイドロール14に入る糸道もずれる(図5(a))。しかし、この糸道のずれは、糸の屈曲を引き起こし、その結果、糸の屈曲を緩和する方向(図において右回りの方向)に上部ガイドロール14を傾けさせることになる(図5(b))。
【0062】
このようにガイドロール2が傾くことにより、糸はガイドロールに直角になる方向、つまり、本来の糸道方向に案内される(図5(c))。また、この作用は、糸道の変動に応じて、糸自身の張力により自動的に行われ、糸道変動を効果的に抑制できるものとなる。
【0063】
次に、繊維束は、中間のガイドロール15を経て最終のガイドロール16に至る。図7に示すように、最終のガイドロール16上の繊維束はトラバースガイドの往復動に伴い、張力によりトラバースガイドの移動方向と反対の方向に交互に引っ張られる。そのため、ガイドロールによる繊維束の把持力が不十分であると、図7(b)に示すように繊維束はガイドロール上で横滑りを生じ、ガイドロールのロール回転軸とガイドロールに入る糸道を直角に保つことができなくなる。しかし、ガイドロールと繊維束との接触長を十分取ることにより、具体的には接触長を15mm以上とすることにより、ガイドロールと繊維束との摩擦力により糸の横滑りを効果的に抑制でき、図7(a)に示すように、ガイドロールのロール回転軸とガイドロールに入る糸道が直角にねじれた位置関係を保つことができる。なお、この接触長は糸道を安定させる観点からは長いほど好ましいが、装置が大型化してしまうことを考慮すれば50mm以下が好ましい。
【0064】
また、最終のガイドロール16に加え、巻取ボビンの回転軸と実質的に平行にロール回転軸が配置されたガイドロールをもう1本備え、2本組とすることでより糸道を安定化することができ好ましい。また、これらのガイドローラと繊維束の接触長の合計が25mm以上であることが好ましい。しかし、装置が大型化してしまうことを考慮すると、巻取ボビンの回転軸と実質的にロール回転軸が配置されたガイドロールは3本以下が好ましく、また、これらのガイドロールと繊維束の接触長も75mm以下が好ましい。
【0065】
結局、本発明の繊維束の綾振り装置は、繊維束を案内するトラバースガイドと、該トラバースガイドのトラバース機構を有し、前記トラバースガイドをトラバース機構によりボビン回転軸方向に往復動させることにより繊維束を綾振りする繊維束の綾振り装置において、前記トラバースガイドは、少なくとも、前記ボビン回転軸に実質的に直角にねじれた位置にロール回転軸が配された上部ガイドロールと、前記ボビン回転軸に実質的に平行にロール回転軸が配された最終のガイドロールの、少なくとも2つのガイドロールを有していること、かつ、少なくとも、これらの上部ガイドロールと最終のガイドロールは、それぞれにおいて、該ガイドロールのロール回転軸方向と該ガイドロールに入る糸道方向とが実質的に直角にねじれた位置関係となるように、配置されていることが肝要である。
【0066】
もし、中間部においてもガイドロールを用いる場合には、該中間部のガイドロールにおいても、該ガイドロールのロール回転軸方向と該ガイドロールに入る糸道方向とが実質的に直角にねじれた位置関係となるように、配置することがよいものである。
【0067】
上述した本発明の繊維束の綾振り装置において、好ましくは、上部ガイドロールが、糸道を外れる動作をする繊維束を本来の糸道方向に案内する糸道ガイド機構を有してなるものであり、より具体的には、該糸道ガイド機構が、図1や図2で説明をした糸道ガイドを有してなるものである。
【0068】
上述したような、糸自身の張力を利用して実現される糸道変動を効果的に抑制するメカニズムによって、本発明の綾振り装置では綾振り装置の上流側で糸道変動が生じても、また、下流側で綾振り動作に伴い繊維束が左右に引っ張られても、繊維束は本来の設定糸道をたどる走行を実現することとなり、所期のとおりのきれいな巻姿を有する繊維巻取パッケージを巻き取ることに資することになる。
【0069】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明する。
【0070】
なお、本実施例では糸道変動の測定は、繊維束幅の両端位置を測定し中心値を繊維束の中心とし、中心値のずれを変動量とした。
【実施例】
【0071】
実施例1
図2に示したようなガイドロール群を用い、ポリアクリロニトリル系繊維を前駆体繊維とする、テープ状の炭素繊維束(単繊維数12000本、単繊維直径7μm、繊維束幅6mm、繊維束幅と繊維束厚さの比約60、ストランド弾性率230GPa)の搬送・案内を行った。
【0072】
炭素繊維は、図示していない上流側の搬送ロールから供給され、図示していない下流側に設置された巻取装置により巻き取られる。ここで、上流側ガイドロール10、下流側ガイドロール11は外径30mm、ロール幅60mmのフリー回転ロールとし、支持部材をブラケットに固定した。
【0073】
また、ガイドロール2は本発明にかかる糸道ガイドであり、外径30mm、ロール幅60mmのフリー回転ロールとし、ガイドロールの回転軸9に対して直角にねじれた位置に回転軸を配置した軸受を介して支持部材をブラケットに固定した。また、ガイドロール2に入る糸道と支持部材の回転軸4のなす角αを50°、ガイドロールから出る糸道と支持部材の回転軸4のなす角βを80°とした。また、上流側ガイドロール10とガイドロール2の距離を800mm、下流側ガイドロール11とガイドロール2の距離を300mmとした。
【0074】
炭素繊維の搬送・案内を行ったところ、上流側ガイドロール10上での糸道変動が10mmであるのに対し、下流側ガイドロール11上での糸道変動は2mmであった。
【0075】
比較例1
ガイドロール2の支持部材を、軸受を介すことなく直接ブラケットに固定した以外は、実施例1と同様のガイドロール群を用い、繊維束の搬送・案内を行った。
その結果、上流側の糸道変動はそのまま下流側に伝播し、上流側ガイドロール10上での糸道変動が10mmであるのに対し、下流側ガイドロール11上での糸道変動も10mmであった。
【0076】
比較例2
ガイドロール2に入る糸道と支持部材の回転軸4のなす角αを70°、ガイドロール2から出る糸道と支持部材の回転軸4のなす角βを60°とした以外は、実施例1と同様のガイドロールを用い、繊維束の搬送・案内を行った。
【0077】
その結果、繊維束がガイドロール2から外れ、搬送・案内をすることができなかった。
【0078】
実施例2
図3、図4に示す繊維束巻取装置において、ポリアクリロニトリル系繊維を前駆体繊維とする、テープ状の炭素繊維束(単繊維数12000本、単繊維直径7μm、繊維束幅6mm、繊維束幅と繊維束厚さの比約60、ストランド弾性率230GPa)を巻取速度10m/分、綾振り幅250mmで外径80mmのボビン(紙管)に巻き取った。ここで、トラバースガイド6が有しているガイドロールについては、全て外径22mmで長さが40mmフリー回転ローラを用いた。また、上部ガイドロール14において、ガイドロールの回転軸9に対し支持部材の回転軸4を7mm上流側に配置し、中間と最下流のガイドロールの支持部材は、トラバースガイドの本体ブラケット17に固定した。
【0079】
この巻取装置で繊維束の巻取を行ったところ、上部ガイドロール14上での糸道変動10mmに対し、最終のガイドロール16上での糸道変動は1mm以下であった。また、得られた炭素繊維束パッケージは、パッケージ端面の揃ったきれいなパッケージであった。
【0080】
比較例3
ガイドロール2の支持部材を、直接ブラケットに固定した以外は、実施例2と同様の繊維束巻取装置を用いて炭素繊維束の巻取を行ったところ、上部ガイドロール14上での糸道変動10mmに対し、最終のガイドロール上での糸道変動は3mm以上あり、得られた巻取パッケージもパッケージ端面が揃わず、品位の低い巻取パッケージであった。
【0081】
比較例4
ガイドロール2の支持部材の回転軸4に対し、ガイドロールの回転軸9を5mm上流側に配置した以外は、実施例2と同様の繊維束巻取装置を用いて炭素繊維束の巻取を行った。
【0082】
その結果、糸道変動に対し、上部ガイドロール14は本来の糸道方向とは反対側に繊維束を案内する方向に傾き、繊維束が上部ガイドロール14から外れてしまい、巻取ができなかった。
【0083】
実施例3
図3、図6に示す繊維束巻取装置において、ポリアクリロニトリル系繊維を前駆体繊維とする、テープ状の炭素繊維束(単繊維数12000本、単繊維直径7μm、繊維束幅6mm、繊維束幅と繊維束厚さの比約60、ストランド弾性率230GPa)を巻取速度10m/分、張力700g、綾振り幅250mmで外径80mmのボビン(紙管)に巻き取った。ここで、トラバースガイド6が有しているガイドロールについては、全て外径22mmで長さが40mmフリー回転ローラを用いた。また、最終のガイドロール15と繊維束との接触長Lは15mmとした。
【0084】
この巻取装置で繊維束の巻取を行ったところ、トラバースガイドの往復動による、最終のガイドロール15上での糸道変動は1mm以下であった。また、50時間巻取後の最終のガイドロール15への毛羽巻き付き量は0.8mgであった。
【0085】
比較例5
最終のガイドロール15と繊維束の接触長を10mmとした以外は実施例3と同様の繊維束巻取装置を用いて炭素繊維束の巻取を行った。
【0086】
その結果、トラバースガイドの往復動により最終のガイドロール15上で5mm糸道変動が生じた。また、50時間巻取後の最終のガイドロール15への毛羽巻き付き量は2.5mgであった。
【0087】
実施例4
上部ガイドロール14を、ガイドロールの回転軸9に対し支持部材の回転軸4を7mm上流側となるように配置し、下部ガイドロールとして、最終のガイドロール15と最終のガイドロールと平行なガイドロールを備え、これら2つのガイドロールと繊維束の接触長の合計を25mmとなるように配置した。また、上部ガイドロールと下部ガイドロールの間に中間ガイドロールを配置した。なお、中間ガイドロールを繊維束に押し当てると、糸道が斜めになるため、ガイドロールの回転軸がガイドロール入りの糸道と直角になるように、糸道に合わせて中間ガイドロールを傾けた。
【0088】
このトラバースガイドを用い、実施例3と同様の巻取条件で巻取を行った。
その結果、上流側の変動による長周期の糸道変動も、トラバースガイドの往復動に伴う短周期での糸道変動も共に最終のガイドロール上で1mm以下であった。また、50時間巻取後の最終のガイドロール15への毛羽巻き付き量は0.6mgであった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の繊維束の綾振り装置は、繊維産業、特に、例えば扁平糸のように、拡幅されて扁平な断面形状を持つテープ状繊維束を綾振りしながらボビンに巻取るに際して、好適に利用できるものである。
【0090】
繊維産業において、単繊維どうしの絡まりなどの不都合を引き起こすことなく、糸道を安定化させるのに効果があり、広く繊維産業で利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1:糸道ガイド
2:ガイドロール
3:支持部材
4:支持部材の回転軸
5:綾振り装置
6:トラバースガイド
7:パッケージ
8:巻取装置
9:ガイドロールの回転軸
10:上流側ガイドロール
11:下流側ガイドロール
12:糸道ガイド
13:プレッシャーロール
14:上部ガイドロール
15:中間ガイドロール
16:最終ガイドロール
P:トラバース方向
Y:糸条(繊維束)
α:支持部材の回転軸方向4とガイドロール2に入る本来の糸道のなす角
β:支持部材の回転軸方向4とガイドロール2から出る本来の糸道のなす角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を案内するトラバースガイドと、前記トラバースガイドのトラバース機構とを有し、前記トラバースガイドをトラバース機構によりボビン回転軸方向に往復動させることにより繊維束を綾振りする繊維束の綾振り装置において、前記トラバースガイドが、糸道を外れる動作をする繊維束を本来の糸道方向に案内する糸ガイド機構を有してなることを特徴とする繊維束の綾振り装置。
【請求項2】
前記糸ガイド機構が、走行する糸を案内する糸道ガイドであって、該糸道ガイドがガイドロールと該ガイドロールを支持する支持部材とからなり、該支持部材は、前記ガイドロールの回転軸に対し直角にねじれた位置に回転軸を有するものであり、糸道の変動に対応して、該支持部材の回転軸を回転中心とする回転により該ガイドロールが糸道に対して傾けられることにより、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる糸道ガイドを有してなることを特徴とする請求項1記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項3】
前記支持部材の回転軸が糸道中心と交わるようにされていることを特徴とする請求項2記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項4】
前記トラバースガイドは、少なくともボビン回転軸に実質的に直角にねじれた位置にロール回転軸が配された上部ガイドロールとボビン回転軸に実質的に平行にロール回転軸が配された最終のガイドロールからなり、前記糸案内機構が前記上部ガイドロールに設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項5】
前記支持部材の回転軸に対し、前記上部ガイドロールのロール回転軸が糸道下流側に配されていることを特徴とする請求項4記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項6】
繊維束を案内するトラバースガイドと、該トラバースガイドのトラバース機構を有し、前記トラバースガイドをトラバース機構によりボビン回転軸方向に往復動させることにより繊維束を綾振りする繊維束の綾振り装置において、前記トラバースガイドは、少なくとも、前記ボビン回転軸に実質的に直角にねじれた位置にロール回転軸が配された上部ガイドロールと、前記ボビン回転軸に実質的に平行にロール回転軸が配された最終のガイドロールからなり、これらの上部ガイドロールと最終のガイドロールは、それぞれ、該ガイドロールのロール回転軸方向と該ガイドロールに入る糸道方向とが実質的に直角にねじれた位置関係となるように、配置されていることを特徴とする繊維束の綾振り装置。
【請求項7】
前記最終のガイドロールと繊維束との接触長が15mm以上であることを特徴とする請求項6記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項8】
巻取ボビンの回転軸と実質的に平行にロール回転軸が配置されたガイドロールを、前記最終のガイドロールを含めて2つ以上有し、これらガイドロールと繊維束との接触長の合計が25mm以上であることを特徴とする請求項6または7記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項9】
前記上部ガイドロールが、糸道を外れる動作をする繊維束を本来の糸道方向に案内する糸道ガイド機構を有してなることを特徴とする上記(6)に記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項10】
前記糸道ガイド機構が、走行する糸を案内する糸道ガイドであって、該糸道ガイドがガイドロールと該ガイドロールを支持する支持部材とからなり、該支持部材は、前記ガイドロールの回転軸に対し直角にねじれた位置に回転軸を有するものであり、糸道の変動に対応して、該支持部材の回転軸を回転中心とする回転により該ガイドロールが糸道に対して傾けられることにより、繊維束が本来の糸道方向に自動的に案内されるように構成されてなる糸道ガイドを有してなることを特徴とする請求項9記載の繊維束の綾振り装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の繊維束の綾振り装置を備えてなることを特徴とする繊維束の巻取装置。
【請求項12】
請求項11に記載の繊維束の巻取装置を備えてなることを特徴とする繊維束パッケージの製造装置。
【請求項13】
請求項12に記載の繊維束パッケージの製造装置を用いて繊維束パッケージを製造することを特徴とする繊維束パッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173859(P2010−173859A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82463(P2010−82463)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【分割の表示】特願2005−517372(P2005−517372)の分割
【原出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】