説明

繊維束供給装置

【課題】一のボビンに巻かれた繊維束が解舒されて残量が少なくなった場合に、他のボビンに巻かれた繊維束の解舒を開始して、該繊維束を連続的に供給できる技術を提供する。
【解決手段】繊維束Fが巻かれたボビンBをそれぞれ支持する複数のボビンホルダ軸と、前記ボビンホルダ軸を同心円上に配置して該同心円の中心軸Cを中心として回動するターンテーブル323と、を備えた繊維束供給装置32であって、前記ボビンホルダ軸は、少なくとも第一ボビンB1を支持する第一ボビンホルダ軸321と第二ボビンB2を支持する第二ボビンホルダ軸322で構成され、前記第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fが解舒されて残量が少なくなった場合は、前記ターンテーブル323を回動させ、該第一ボビンB1の繊維束Fと前記第二ボビンB2の繊維束Fとを継ぎ合わせることで、該第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fの解舒を開始する、とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維束供給装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ライナーの外周面に繊維束を巻き付けていくフィラメントワインディング装置が知られている。フィラメントワインディング装置には、繊維束が巻かれたボビンを複数個配置した繊維束供給部が備えられている(例えば特許文献1参照)。フィラメントワインディング装置は、繊維束供給部に配置された各ボビンから繊維束を解舒し、該繊維束をライナーの外周面に巻き付ける。
【0003】
しかし、従来のフィラメントワインディング装置においては、繊維束供給部に配置された一のボビンが空ボビンになった場合、繊維束を巻き付ける動作を停止させて該ボビンを交換する必要があった。そのため、繊維束を巻き付ける動作を頻繁に停止させる必要が生じ、生産性が悪化するという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−23481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、一のボビンに巻かれた繊維束が解舒されて残量が少なくなった場合に、他のボビンに巻かれた繊維束の解舒を開始して、該繊維束を連続的に供給できる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、第一の発明は、
繊維束が巻かれたボビンをそれぞれ支持する複数のボビンホルダ軸と、
前記ボビンホルダ軸を同心円上に配置して該同心円の中心軸を中心として回動するターンテーブルと、を備えた繊維束供給装置であって、
前記ボビンホルダ軸は、少なくとも第一ボビンを支持する第一ボビンホルダ軸と第二ボビンを支持する第二ボビンホルダ軸で構成され、
前記第一ボビンに巻かれた繊維束が解舒されて残量が少なくなった場合は、前記ターンテーブルを回動させ、該第一ボビンの繊維束と前記第二ボビンの繊維束とを継ぎ合わせることで、該第二ボビンに巻かれた繊維束の解舒を開始する、とした。
【0008】
第二の発明は、第一の発明に係る繊維束供給装置において、
前記ターンテーブルに取り付けられて該ターンテーブルとともに回動する第一繊維束ガイド及び第二繊維束ガイドを具備し、
前記第一繊維束ガイドは、前記ターンテーブルが回動を開始した際に前記第一ボビンから解舒された繊維束を案内して所定の軌道に拘束し、
前記第二繊維束ガイドは、前記ターンテーブルが回動を完了した際に前記第二ボビンに巻かれた繊維束の端部を前記第一ボビンから解舒された繊維束に重ね合わせる、とした。
【0009】
第三の発明は、第一又は第二の発明に係る繊維束供給装置において、
前記第一ボビンの繊維束と前記第二ボビンの繊維束を継ぎ合わせる継ぎ合わせ装置を具備し、
前記継ぎ合わせ装置は、前記第一ボビンの繊維束と前記第二ボビンの繊維束の重なり合う部分を接合する、とした。
【0010】
第四の発明は、第一から第三のいずれかの発明に係る繊維束供給装置において、
前記第一ボビンから解舒された繊維束を切断する切断装置を具備し、
前記切断装置は、繊維束の重なり合う部分を全て接合すると必要十分な接合強度となるように前記第一ボビンから解舒された繊維束を切断する、とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
第一の発明によれば、第一ボビンに巻かれた繊維束が解舒されて残量が少なくなった場合に、第二ボビンに巻かれた繊維束の解舒を開始して、該繊維束を連続的に供給できる。これにより、繊維束を連続して供給することが可能となる。
【0013】
第二の発明によれば、第一ボビンから解舒されて所定の軌道に拘束された繊維束に対し、第二ボビンに巻かれた繊維束の端部を重ね合わせることができる。これにより、第一ボビンの繊維束と第二ボビンの繊維束を継ぎ合わせることが可能となる。
【0014】
第三の発明によれば、第一ボビンの繊維束と第二ボビンの繊維束の重なり合う部分を接合できる。これにより、第一ボビンの繊維束と第二ボビンの繊維束を確実に継ぎ合わせることが可能となる。
【0015】
第四の発明によれば、第一ボビンの繊維束と第二ボビンの繊維束の接合部分について必要十分な接合強度とすることができる。これにより、接合部分に必要とされる接合強度を確保するとともに、接合に必要とされる所要時間を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】フィラメントワインディング装置100の全体構成を示す図。
【図2】繊維束供給装置32の構成を示す図。
【図3】第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fが解舒されている状態を示す図。
【図4】ターンテーブル323が回動を開始した状態を示す図。
【図5】ターンテーブル323が回動を完了した状態を示す図。
【図6】継ぎ合わせ装置326が繊維束Fの重なり合う部分を接合している状態を示す図。
【図7】切断装置327が第一ボビンB1から解舒された繊維束Fを切断している状態を示す図。
【図8】ターンテーブル323が逆方向への回動を完了した状態を示す図。
【図9】第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fが解舒されている状態を示す図。
【図10】第一ボビンホルダ軸321に新たなボビンBを取り付けた状態を示す図。
【図11】繊維束Fを所定の軌道に拘束した状態を示す図。
【図12】第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fを重ね合わせた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る繊維束供給装置32は、フィラメントワインディング装置100を構成する繊維束供給部30に設けられている。従って、最初にフィラメントワインディング装置100(以降「FW装置100」)の全体構成について簡単に説明する。
【0018】
図1は、FW装置100の全体構成を示す図である。図中に示す矢印Dは、ライナー1の移送方向を示している。また、ライナー1の移送方向と平行な方向をFW装置100の前後方向とし、ライナー1が移送される一方向を前側、他方向を後側と定義する。なお、FW装置100は、ライナー1を前後方向に往復動させるため、該ライナー1の移送方向に応じて前側及び後側が定まる。
【0019】
FW装置100は、ライナー1の外周面に繊維束Fを巻き付けていく装置である。FW装置100は、主にライナー移送部10と、ヘリカル巻き部20と、繊維束供給部30と、で構成される。
【0020】
ライナー移送部10は、ライナー1を回転させながら移送する。詳細には、ライナー移送部10は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送する。ライナー移送部10は、主に基台11と、ライナー支持フレーム12と、回転軸13と、で構成される。
【0021】
基台11は、FW装置100の前後方向に延設されたレール上に載置されている。基台11には、一対のライナー支持フレーム12と回転軸13が設けられている。そして、回転軸13に取り付けられたライナー1は、図示しない動力機構によって一方向に回転される。
【0022】
このような構成により、ライナー移送部10は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送することを可能としている。
【0023】
ヘリカル巻き部20は、ライナー1の外周面に繊維束Fを巻き付ける。詳細には、ヘリカル巻き部20は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう。ヘリカル巻き部20は、主に基台21と、ヘリカルヘッド22と、で構成される。
【0024】
基台21には、ヘリカルヘッド22が設けられている。ヘリカルヘッド22には、繊維束Fを案内する複数のガイド23が設けられている。そして、各ガイド23によって案内された繊維束Fは、回転しながら通過するライナー1の外周面に巻き付けられる。
【0025】
このような構成により、ヘリカル巻き部20は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して所定の値となる、いわゆるヘリカル巻きを行なうことを可能としている。
【0026】
繊維束供給部30は、ヘリカル巻き部20に繊維束Fを供給する。詳細には、繊維束供給部30は、ヘリカル巻き部20を構成するヘリカルヘッド22の各ガイド23に対して繊維束Fを供給する。繊維束供給部30は、主にラック31と、繊維束供給装置32と、で構成される。
【0027】
ラック31には、複数の繊維束供給装置32が設けられている。繊維束供給装置32は、繊維束Fが巻かれたボビンBを支持している。そして、各ボビンBに巻かれた繊維束Fは、図示しない案内部材を介して対応するそれぞれのガイド23に送られる。
【0028】
このような構成により、繊維束供給部30は、ヘリカル巻き部20を構成するヘリカルヘッド22の各ガイド23に対して繊維束Fを供給することを可能としている。
【0029】
次に、繊維束供給装置32の構成について詳細に説明する。
【0030】
図2は、繊維束供給装置32の構成を示す図である。ここでは、ボビンBを支持するボビンホルダ軸321・322が二つ備えられた二軸式繊維束供給装置を用いて説明する。但し、三軸式繊維束供給装置や四軸式繊維束供給装置等であったとしても、本発明の目的及び効果に差異はなく、本発明の技術的範囲に属する。
【0031】
繊維束供給装置32は、一のボビンBに巻かれた繊維束Fが解舒されて残量が少なくなった場合に、他のボビンBに巻かれた繊維束Fの解舒を開始して、該繊維束Fを連続的に供給する装置である。繊維束供給装置32は、主に第一ボビンホルダ軸321と、第二ボビンホルダ軸322と、ターンテーブル323と、第一繊維束ガイド324と、第二繊維束ガイド325と、で構成される。なお、第一ボビンホルダ軸321によって支持されたボビンBを第一ボビンB1、第二ボビンホルダ軸322によって支持されたボビンBを第二ボビンB2と定義する。
【0032】
第一ボビンホルダ軸321は、第一ボビンB1を回転自在に支持する部材である。第一ボビンB1は、繊維束Fが引っ張られることによって回転し、該繊維束Fを解舒する。なお、第一ボビンホルダ軸321が解舒位置P1にある場合に、第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fが解舒される(図3中黒矢印参照)。そして、上述したように、第一ボビンB1から解舒された繊維束Fは、ヘリカルヘッド22の対応するガイド23に供給される。
【0033】
第二ボビンホルダ軸322は、第二ボビンB2を回転自在に支持する部材である。第二ボビンB2は、繊維束Fが引っ張られることによって回転し、該繊維束Fを解舒する。なお、第二ボビンホルダ軸322が解舒位置P1にある場合に、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fが解舒される(図9中黒矢印参照)。そして、上述したように、第二ボビンB2から解舒された繊維束Fは、ヘリカルヘッド22の対応するガイド23に供給される。
【0034】
なお、第一ボビンホルダ軸321及び第二ボビンホルダ軸322は、説明の便宜上、定められた区別であり、互いに同様の構成である。
【0035】
ターンテーブル323は、第一ボビンホルダ軸321と第二ボビンホルダ軸322を同心円上に配置して、該同心円の中心軸Cを中心として回動する部材である。ターンテーブル323は、中心軸Cを中心として略180度回動することにより、解舒位置P1にある第一ボビンホルダ軸321と待機位置P2にある第二ボビンホルダ軸322の互いの位置を交替させる(図5参照)。なお、第二ボビンホルダ軸322が解舒位置P1あり、第一ボビンホルダ軸321が待機位置P2にある場合は、解舒位置P1にある第二ボビンホルダ軸322と待機位置P2にある第一ボビンホルダ軸321の互いの位置を交替させる。
【0036】
第一繊維束ガイド324は、ターンテーブル323に取り付けられて該ターンテーブル323とともに回動する部材である。第一繊維束ガイド324は、ターンテーブル323が回動を開始した際に第一ボビンB1から解舒された繊維束Fを案内して所定の軌道に拘束する(図4、図11参照)。なお、第一ボビンホルダ軸321が待機位置P2にあって、解舒位置P1にある第二ボビンホルダ軸322と交替する場合は、第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fの端部を第二ボビンB2から解舒された繊維束Fに重ね合わせる。具体的な構成については後述する。
【0037】
第二繊維束ガイド325は、ターンテーブル323に取り付けられて該ターンテーブル323とともに回動する部材である。第二繊維束ガイド325は、ターンテーブル323が回動を完了した際に第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fの端部を第一ボビンB1から解舒された繊維束Fに重ね合わせる(図5、図12参照)。なお、第二ボビンホルダ軸322が解舒位置P1にあって、待機位置P2にある第一ボビンホルダ軸321と交替する場合は、第二ボビンB2から解舒された繊維束Fを案内して所定の軌道に拘束する。具体的な構成については後述する。
【0038】
なお、第一繊維束ガイド324及び第二繊維束ガイド325は、説明の便宜上、定められた区別であり、互いに同様の構成である。
【0039】
次に、繊維束供給装置32のボビン交換時における動作態様について説明する。
【0040】
図3から図10は、繊維束供給装置32のボビン交換時における動作態様を示す図である。なお、図中に示す黒矢印は、第一ボビンB1と第二ボビンB2の回転方向及び繊維束Fの送り出し方向を示している。また、図中に示す白矢印は、ターンテーブル323の回動方向を示している。ここでは、第一ボビンホルダ軸321が解舒位置P1にあり、第二ボビンホルダ軸322が待機位置P2にある場合を想定して説明する。
【0041】
図3は、第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fが解舒されている状態を示す図である。図3に示すように、第一ボビンB1は、繊維束Fが引っ張られることによって回転し、該繊維束Fを解舒する。第一ボビンB1は、時々刻々と繊維束Fが解舒されていくため、該第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fの残量は次第に少なくなっていく。そのため、第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fが全て解舒されて空ボビンとなる前に第二ボビンB2と交換する必要が生じる。
【0042】
図4は、ターンテーブル323が回動を開始した状態を示す図である。図4に示すように、第一繊維束ガイド324は、ターンテーブル323が回動を開始した際に第一ボビンB1から解舒された繊維束Fを押し上げる。このとき、第一繊維束ガイド324は、第一ボビンB1から解舒された繊維束Fを案内して所定の軌道に拘束する。
【0043】
具体的に説明すると、図11に示すように、第一繊維束ガイド324は、繊維束Fの送り方向に沿って徐々に狭まる案内壁324aを備える。案内壁324aは、繊維束Fを押し上げる際に、該繊維束Fを底壁324bまで導く。すると、第一ボビンB1から解舒された繊維束Fは、案内壁324aと底壁324bに案内されて端部に設けられた繊維束通路324cから送り出されることとなる。こうして、第一繊維束ガイド324は、第一ボビンB1の軸方向にトラバース(図中T参照)される繊維束Fを所定の軌道に拘束するのである。
【0044】
図5は、ターンテーブル323が回動を完了した状態を示す図である。図5に示すように、第二繊維束ガイド325は、ターンテーブル323が回動を完了した際に第一ボビンB1から解舒された繊維束Fに接触する。このとき、第二繊維束ガイド325は、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fの端部を第一ボビンB1から解舒された繊維束Fに重ね合わせる。
【0045】
具体的に説明すると、図12に示すように、第二繊維束ガイド325は、繊維束Fの最端部分を保持する保持具325dを備える。保持具325dは、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fを底壁325bに沿わせた状態で保持する。すると、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fは、ターンテーブル323の回動によって第一ボビンB1から解舒された繊維束Fに沿うように案内されることとなる。こうして、第二繊維束ガイド325は、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fの端部を第一ボビンB1から解舒された繊維束Fに重ね合わせるのである。
【0046】
このような構成により、本繊維束供給装置32は、第一ボビンB1から解舒されて所定の軌道に拘束された繊維束Fに対し、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fの端部を重ね合わせることができる。これにより、第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fを継ぎ合わせることが可能となる。
【0047】
図6は、継ぎ合わせ装置326が繊維束Fの重なり合う部分を接合している状態を示す図である。図6に示すように、継ぎ合わせ装置326は、該継ぎ合わせ装置326と第二繊維束ガイド325によって繊維束Fの重なり合う部分を挟持する。そして、継ぎ合わせ装置326は、繊維束Fの重なり合う部分に対して熱を加え、これらを接合する。
【0048】
具体的に説明すると、継ぎ合わせ装置326は、電流が流れることによって赤熱するヒータ部326aを備えている。ヒータ部326aは、繊維束Fの重なり合う部分に対して熱を加え、互いの繊維束Fを熱硬化させて接合する。これにより、継ぎ合わせ装置326は、簡素な構成でありながら、第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fを確実に継ぎ合わせることを可能としている。
【0049】
その他の構成として、継ぎ合わせ装置326は、繊維束Fの重なり合う部分を押圧し、これらを接合するとしても良い。また、継ぎ合わせ装置326は、繊維束Fの重なり合う部分を縫い合わせて、これらを接合するとしても良い。これにより、継ぎ合わせ装置326は、簡素な構成でありながら、第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fを確実に継ぎ合わせることが可能となる。なお、例えば、繊維束F同士を交絡するなど、他の方法によっても接合することが可能である。
【0050】
このような構成により、本繊維束供給装置32は、第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fの重なり合う部分を接合できる。これにより、第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fを確実に継ぎ合わせることが可能となる。
【0051】
更に、本繊維束供給装置32は、第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fを接合しながら送り出すため、接合部分の長さや接合パターンを容易に変更できる。そのため、繊維束Fの重なり合う部分を間欠的に接合することによって、接合部分の柔軟性を確保することも可能となる。
【0052】
図7は、切断装置327が第一ボビンB1から解舒された繊維束Fを切断している状態を示す図である。図7に示すように、切断装置327は、第一ボビンB1から解舒された繊維束Fを第一ボビンB1と第二ボビンB2の間で切断する。
【0053】
具体的に説明すると、切断装置327は、繊維束Fを切断するカッター327aを備えている。カッター327aは、第一ボビンB1から解舒されて該第一ボビンB1と第二ボビンB2の間に架け渡された繊維束Fを切断する。なお、繊維束Fを切断する時期は、接合部分に必要とされる接合強度に基づいて定められる。つまり、切断装置327は、繊維束Fの重なり合う部分を全て接合すると繊維束Fに引張り荷重が掛かった際にも分離せず、また、必要以上に接合部分の長さを確保することがないように繊維束Fを切断する。
【0054】
このような構成により、本繊維束供給装置32は、第一ボビンB1の繊維束Fと第二ボビンB2の繊維束Fの接合部分について必要十分な接合強度とすることができる。これにより、接合部分に必要とされる接合強度を確保するとともに、接合に必要とされる所要時間を低減することが可能となる。
【0055】
図8は、ターンテーブル323が逆方向への回動を完了した状態を示す図である。図8に示すように、第二繊維束ガイド325は、ターンテーブル323とともに逆方向へ回動するため、第二ボビンB2の繊維束Fから離間する。
【0056】
図9は、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fが解舒されている状態を示す図である。図9に示すように、第二ボビンB2は、繊維束Fが引っ張られることによって回転し、該繊維束Fを解舒する。第二ボビンB2は、時々刻々と繊維束Fが解舒されていくため、該第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fの残量は次第に少なくなっていく。そのため、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fが全て解舒されて空ボビンとなる前に第一ボビンホルダ軸321に新たなボビンB(第一ボビンB1)を装着して交換する必要が生じる。
【0057】
図10は、第一ボビンホルダ軸321に新たなボビンB(第一ボビンB1)を取り付けた状態を示す図である。図10に示すように、第一ボビンホルダ軸321に新たなボビンB(第一ボビンB1)を装着することによって、該ボビンB(第一ボビンB1)を待機させておくことができる。こうすることで、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fが解舒されて残量が少なくなった場合に、新たなボビンB(第一ボビンB1)に巻かれた繊維束Fの解舒を開始して、該繊維束Fを連続的に供給することが可能となる。
【0058】
以上のように、本発明の実施形態に係る繊維束供給装置32によれば、第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fが解舒されて残量が少なくなった場合に、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fの解舒を開始して、該繊維束Fを連続的に供給できる。また、第二ボビンB2に巻かれた繊維束Fが解舒されて残量が少なくなった場合に、第一ボビンB1に巻かれた繊維束Fの解舒を開始して、該繊維束Fを連続的に供給できる。これにより、繊維束Fを連続して供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 ライナー
10 ライナー移送部
11 基台
12 ライナー支持フレーム
13 回転軸
20 ヘリカル巻き部
21 基台
22 ヘリカルヘッド
23 ガイド
30 繊維束供給部
31 ラック
32 繊維束供給装置
321 第一ボビンホルダ軸
322 第二ボビンホルダ軸
323 ターンテーブル
324 第一繊維束ガイド
325 第二繊維束ガイド
B ボビン
B1 第一ボビン
B2 第二ボビン
C 回転軸
F 繊維束
P1 解舒位置
P2 待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束が巻かれたボビンをそれぞれ支持する複数のボビンホルダ軸と、
前記ボビンホルダ軸を同心円上に配置して該同心円の中心軸を中心として回動するターンテーブルと、を備えた繊維束供給装置であって、
前記ボビンホルダ軸は、少なくとも第一ボビンを支持する第一ボビンホルダ軸と第二ボビンを支持する第二ボビンホルダ軸で構成され、
前記第一ボビンに巻かれた繊維束が解舒されて残量が少なくなった場合は、前記ターンテーブルを回動させ、該第一ボビンの繊維束と前記第二ボビンの繊維束とを継ぎ合わせることで、該第二ボビンに巻かれた繊維束の解舒を開始する、ことを特徴とする繊維束供給装置。
【請求項2】
前記ターンテーブルに取り付けられて該ターンテーブルとともに回動する第一繊維束ガイド及び第二繊維束ガイドを具備し、
前記第一繊維束ガイドは、前記ターンテーブルが回動を開始した際に前記第一ボビンから解舒された繊維束を案内して所定の軌道に拘束し、
前記第二繊維束ガイドは、前記ターンテーブルが回動を完了した際に前記第二ボビンに巻かれた繊維束の端部を前記第一ボビンから解舒された繊維束に重ね合わせる、ことを特徴とする請求項1に記載の繊維束供給装置。
【請求項3】
前記第一ボビンの繊維束と前記第二ボビンの繊維束を継ぎ合わせる継ぎ合わせ装置を具備し、
前記継ぎ合わせ装置は、前記第一ボビンの繊維束と前記第二ボビンの繊維束の重なり合う部分を接合する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の繊維束供給装置。
【請求項4】
前記第一ボビンから解舒された繊維束を切断する切断装置を具備し、
前記切断装置は、繊維束の重なり合う部分を全て接合すると必要十分な接合強度となるように前記第一ボビンから解舒された繊維束を切断する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の繊維束供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−63823(P2013−63823A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203683(P2011−203683)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】