説明

繊維構造物およびその製造方法

【課題】洗濯耐久性に優れた深色性を有する繊維構造物を安定して供給する。
【解決手段】繊維を形成するポリマー分子鎖に結合した酸素含有官能基および窒素含有官能基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有し、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められるO1S/C1SまたはN1S/C1Sで表される原子数比が、繊維表面から少なくとも0.5μmの深部の値に比べて0.02以上増加している繊維の表面が、屈折率1.8以下の低屈折率樹脂で被覆されていることを特徴とする繊維構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深色性に優れかつ深色の洗濯耐久性に優れた繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル系繊維などの合成繊維は、その優れた機能性ゆえ、広く一般衣料用途、産業資材用途に使用されている。しかし、羊毛、絹などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維に比べ鮮明性、濃色の深みなどの発色性が劣るという欠点を有するものである。かかる低発色性の原因が繊維の屈折率が高いこと、繊維表面が平滑であることなどにあることからこの欠点を改善するために多くの検討がなされている。低屈折樹脂で被覆するものとして、ウレタン系樹脂で被覆する方法(特許文献1)、シリコン系樹脂を主体とする樹脂で被覆するもの(特許文献2)が提案されている。しかしながら、いずれも深色性の洗濯耐久性が十分でないのが実情である。さらにはフッ素系、シリコン系、ウレタン系などの水系樹脂で被覆するもの(特許文献3)が提案されているが、該加工によるものは水堅牢度、洗濯堅牢度が低下するために、水洗を実施することを前提とするという問題を有するものである。
【特許文献1】特開昭56−73175号公報
【特許文献2】特開昭63−264976号公報
【特許文献3】特開2003−3372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、優れた深色性を有し、かつ洗濯による深色性の変動が小さく、染色堅牢度にも優れた繊維構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
(1) 繊維を形成するポリマー分子鎖に結合した酸素含有官能基および窒素含有官能基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有し、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められるO1S/C1SまたはN1S/C1Sで表される原子数比が、繊維表面から少なくとも0.5μmの深部の値に比べて0.02以上増加している繊維の表面が、屈折率1.8以下の低屈折率樹脂で被覆されていることを特徴とする繊維構造物。
(2) 洗濯20回後のL値の変化が、洗濯前のL値に対して+0.5以下であり、かつ変退色が4級以上である上記(1)記載の繊維構造物。
(3) 洗濯20回後の撥水度が3級以上である上記(1)または(2)記載の繊維構造物。
(4) 酸素含有官能基および窒素含有官能基が、非重合性ガスの雰囲気下で、放電処理により形成された官能基である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維構造物。
(5) 非重合性ガスが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア、パーフルオロメタンおよびパーフルオロエタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の非重合性ガスである上記(4)記載の繊維構造物。
(6) 放電処理が、大気圧プラズマ処理または低圧プラズマ処理である上記(4)または(5)記載の繊維構造物。
(7) 酸素含有官能基および窒素含有官能基が、紫外線処理により形成された官能基である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維構造物。
(8) 紫外線が、300nm以下の波長を含む紫外線である上記(7)記載の繊維構造物。
(9) 染色された繊維構造物を、放電処理および/または紫外線処理をした後に、低屈折率樹脂で被覆加工を実施することを特徴とする繊維構造物の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、繊維を形成するポリマー分子鎖に結合した酸素含有官能基および窒素含有官能基により、低屈折率樹脂の被覆が均一でかつ、強固に固着されるため、洗濯耐久性に優れた深色性を有する繊維構造物を安定して供給することができる。本発明の機能性を有する繊維構造物は、特にフォーマルウエアや学生衣料などの一般衣料用途に有効に使用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明者らは、前記課題、すなわち繊維表面に被覆させた低屈折率樹脂の深色性を高め、かつその洗濯耐久性を付与することについて鋭意検討した結果、繊維に放電処理や紫外線処理などの物理的表面処理技術を採用することにより、該繊維表面のポリマー分子鎖に直結した酸素原子と窒素原子を含有する官能基を生成させることにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0007】
本発明の繊維構造物においては、繊維を形成するポリマー分子鎖に結合した酸素含有官能基および窒素含有官能基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有し、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められるO1S/C1SまたはN1S/C1Sで表される原子数比が繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部の値に比べて0.02以上増加している繊維が用いられる。詳細には、繊維構造物表面に対し、X繊照射し、電子分光法による測定で求められるO1S/C1SまたはN1S/C1Sと、スパッタエッチング等を用いて繊維構造物の表面から深さ方向に0.5μm削った後に、同様に、X線照射し、電子分光法による測定で求められるO1S/C1SまたはN1S/C1Sで表される原子数比とを対比したものであり、繊維表面から深さ方向に0.5μm削った後の測定値に対し、削る前の測定値が0.02以上増加している。
【0008】
本発明の繊維構造物に使用される繊維素材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステル系繊維、芳香族ポリエステルに第三成分を共重合した芳香族ポリエステル系繊維、L−乳酸を主成分とするものに代表される脂肪族ポリエステル系繊維、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などの合成繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維、木綿、絹および羊毛などの天然繊維などが挙げられる。本発明では、これらの繊維を単独または2種以上の混合物として使用することができるが、ポリエステル系繊維またはポリアミド系繊維を主成分にした繊維が好ましい。
【0009】
本発明で用いられる繊維は、通常のフラットヤーン以外に、仮撚り加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸および混繊糸等のフィラメントヤーンであってもよく、ステーブルファイバーやトウ、あるいは紡績糸など各種形態の繊維であってもよい。
【0010】
本発明の繊維構造物には、前記繊維を使用してなる編物、織物または不織布などの布帛状物、あるいは紐状物等が含まれる。
【0011】
本発明で用いられる繊維は、繊維を形成するポリマー分子鎖に結合した酸素含有官能基および窒素含有官能基からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有し、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められるO1S/C1SまたはN1S/C1Sで表される原子数比が繊維表面から少なくとも0.5μm以上の深部の値に比べて、0.02以上増加しているものであり、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05〜0.15増加している繊維表面を有するものである。該原子数比の増加が0.02より小さいと目的とする深色性、耐久性が得られない。
【0012】
本発明においては、上記のような原子数比の増加した繊維表面特性を達成するため、すなわち、酸素含有官能基および窒素含有官能基を形成するために、放電処理あるいは紫外線処理を行う。
【0013】
本発明において、放電処理とは、ガスに高電圧を印加することによって発生するプラズマ放電を意味し、かかる放電には大気中で発生させる大気圧プラズマと、真空容器中で発生させる低圧プラズマがある。真空容器中で発生させる方法は、好ましくは20Torr以下、さらに好ましくは0.01〜10Torrの減圧下で高電圧を印加する。
【0014】
本発明において、高電圧を印加する放電周波数は、高周波、低周波あるいはマイクロ波を用いることができ、また、直流も用いることができる。かかる高電圧印加用電源としては、パルス電源が好ましく使用される。本発明では、放電処理ガスの雰囲気に、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア、パーフルオロメタンおよびパーフルオロエタンなどの非重合性ガスを単独あるいは二種以上の混合物を用いることにより、酸素元素を含有する官能基や、窒素元素を含有する官能基を繊維表面に形成させることができる。本発明の効果を阻害しない範囲で、他の非重合性ガスや重合性ガスが混合していてもよい。非重合性ガスの中でも、アルゴン、窒素および一酸化炭素が特に好ましく用いられる。
【0015】
高電圧を印加する処理装置としては、対向した電極を設置する。該電極の形状は、平板状、棒状、ワイヤー状、ロール状およびナイフエッジ状などの形状のものを使用することができ、電極材料としては金属製または金属表面を誘電体で被覆したものを使用することができる。これらの電極を、必要に応じて組み合わせて使用することもできる。高電圧の印加処理は、電極間の放電雰囲気部分に処理物を導入して直接処理方法か、放電部分の活性種を下流に流し、放電雰囲気に直接に曝さないで処理することができる。電極間の距離は、大気圧プラズマでは、好ましくは0.1〜1cmであり、より好ましくは0.2〜0.4cmである。また、低圧プラズマでは、好ましくは0.5〜8cm、より好ましくは1〜4cmである。電極間の距離をこのような範囲にすることにより、一層均一な放電処理が行われる。また、両電極は必要に応じて水などで冷却することが好ましい。
【0016】
本発明において、放電電力としては、放電電力を放電電極の面積で割った値が0.2〜25w/cmの範囲となるよう設定することが好ましい。かかる値が、0.2w/cmより小さいと処理に時間がかかりすぎる傾向があり、25/cmを超えると放電が不安定になったり、熱により被処理物が損傷したりする傾向がある。処理時間は、数秒から数分の範囲で目的とする効果に応じて設定する。
【0017】
本発明で用いられる紫外線処理とは、大気中で取り出せる180〜400nmの波長領域の紫外線を照射する処理をいい、特に繊維分子の結合の一部を切断してラジカルを形成させるには高いエネルギーを必要とするので、エネルギーの高い300nm以下の波長を有するものが好ましく使用できる。かかる観点から、光源としては高圧水銀ランプ、メタルハライドランプおよび低圧水銀ランプなどを使用することができる。これらの中でも、エネルギーレベルの高い183.9nmと253.7nmの波長に強いピークを有する低圧水銀ランプが好ましく使用される。
【0018】
低圧水銀ランプの場合、雰囲気の非重合性ガスとして酸素を含むものを使用すれば、オゾンが発生し、強い酸化作用により酸素元素を有する官能基を効率的に形成させることができる。かかる紫外線の照射強度は、照度が253nmの波長において好ましくは3mW/cm以上であり、より好ましくは10mW/cm以上がよく、また照射時間は数秒から数分であり、照度と時間は目的とする効果に応じて変更することができる。
【0019】
本発明において、放電処理と紫外線処理を組み合わせて使用しても本発明の効果を達成することができる。
【0020】
本発明は、かかる酸素含有官能基と窒素含有官能基が形成された繊維の表面に、屈折率1.8以下の低屈折率樹脂を被覆させるものである。
【0021】
本発明の低屈折率樹脂としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、酸化マグネシウムなどの不活性無機粒子、プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロックまたはランダム共重合ポリエーテルジオールとヘキサメチレンジイソシアネート、またはキシレンジイソシアネートなどからなるウレタン系化合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンのアルキルまたはフェノールエーテル系化合物、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリペンタデカフルオロオウチルアクリレート、ポリテトラフルオロエチレンポリトリフルオロクロロエチレン、ポリトリフルオロエチレンメタクリレートなどのフッ素系化合物、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルエチレエーテルなどのビニルエーテル系化合物、ポリブチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系化合物、ポリターシャリーブチルマタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリn−プロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル系化合物、ポリジメチルシラン、ポリジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコン系化合物などが例示できる。本発明の低屈折率樹脂で被覆加工する際に、トリアジン環含有化合物、イソシアネート系化合物の少なくとも一種を含有して皮膜を形成していることが好ましい。トリアジン環含有化合物としては、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンを使用することができ、イソシアネート系化合物としては、イソシアネート基を亜硫酸ソーダ、メチレエチルケトンオキシムなどのオキシム系化合物などによりブロック化したイソシアネート基を2個以上持つ化合物を使用することができる。更に、本発明の効果を阻害しない範囲で他の化合物、例えば、制電剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機粒子、無機粒子、増摩剤、消臭剤、抗菌剤、難燃剤、防汚剤などを添加することができる。
【0022】
本発明における低屈折率樹脂を繊維表面に被覆させる方法としては、 例えば、(a)低屈折率樹脂の水あるいは溶剤の分散液に繊維を浸積した後、目的の付着量になるようにマングルなどで絞り、好適には100〜130℃の温度で乾燥し、好適には160〜190℃の温度で熱処理する方法、(b)低屈折率樹脂の分散液をスプレーなどで繊維に塗布し、好適には100〜130℃の温度で乾燥し、好適には160〜190℃の温度で熱処理する方法、および(c)繊維を分散液に浸積した状態で、好適には60〜130℃の温度で処理し、繊維表面に浴中吸着させる方法などを使用すればよい。
【0023】
本発明の官能基を有する繊維表面に低屈折率樹脂を被覆させることにより、該剤の深色効果が高まり、該剤の洗濯耐久性を飛躍的に向上できるものである。
【0024】
本発明の繊維構造物は、洗濯20回後のL値の、洗濯前のL値に対する変動が+0.5以下であることが好ましい。L値の変動が0.5以下であることは目視観察した場合に、色の変化として判別しにくいことを意味し、洗濯による退色がほとんどないことを示すものである。かかる変化を汚染用グレースケールで判定した場合、変退色が4級以上であることが好ましい。
【0025】
本発明の繊維構造物の洗濯20回後の撥水度は3級以上であることが好ましい。かかる撥水度は、雨に曝されても水がしみこまない程度の性能を表し、特に学生衣料用途では要望の高い機能である。
【0026】
本発明により、洗濯耐久性に優れた深色性と撥水性を兼ね備えた繊維構造物が得られるものである。
【0027】
本発明の繊維構造物は、フォーマルウエアや学生衣料に好適である。
【実施例】
【0028】
次に、実施例により本発明の繊維構造物についてさらに詳しく説明する。なお、実施例中における各種性能は、下記の方法で評価したものである。
(官能基の原子数比の測定)
(株)島津製作所製ESCA750装置を用いて、励起X線;MgKα1.2線(1253.6ev)、横軸補正;中性炭素の1Sピークを284.6evとして、光電子の検出角度;90度で測定した。
まず、布帛から切り出した試料小片を試料台にセットし、ESCA分析装置に投入して、装置の測定手順に従って繊維表面の分析を行った。次に、アルゴンイオンを使ってスパッタエッチングを行い試料繊維表面から深さ方向に0.5μm削った後、同様の手順で0.5μm深部の分析を行った。表1には、繊維表面と0.5μm深部における原子数比の差を表示した。
(深色性)
ミノルタ製測色機CM−3600dを用いて、光源D65、視野角2°でL値を測定した。数値が小さいほど深色性が優れることを示す。
(深色の変退色)
汚染用グレースケールで(級)判定した。
(摩擦堅牢度)
JIS L 0849に規定される方法で学振型摩擦試験機で乾摩擦と湿摩擦を測定し、汚染用グレースケールで(級)判定した。
(洗濯耐久性)
自動反転渦巻き電気洗濯機に、JIS K 337に規定される弱アルカリ性合成洗剤を0.2%の濃度になるように溶解し、浴比1:50で40±2℃の温度で、強条件で10分間洗濯し、次いで排水し、水洗を5分間する工程を1回としてこれを20回繰り返し後、風乾した。
【0029】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
タテ糸に84dtex、24フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚り加工糸、ヨコ糸に110dtex、36フィラメントのポリエチレンテレフタレート仮撚り加工糸を使用してカシドス織物とし、常法により95℃の温度で精練し、130℃の温度で乾燥し、180℃の温度でヒートセットした。次いで市販の黒色染料で135℃の温度で45分の染色を行い、80℃で還元洗浄し、水洗、乾燥し、170℃の温度でヒートセットし、男子学生詰め襟用の黒色織物とした。該染色織物のL値は15.1であった。得られた織物を以下に示す改質処理方法から、選ばれる表1に記載の条件で処理し、ついで、以下の低屈折率樹脂被覆処理方法で処理し、性能を評価した結果を表1に示した。
<改質処理方法>
(a)低圧プラズマ処理:放電電極に銅チューブをガラスで被覆したものを用い、アース電極にステンレス製ドラムを用い、放電周波数110KHz、放電電力5.5W/cm、真空度0.7Torrのアルゴンガス雰囲気下で、織物を4秒間処理した。
【0030】
(b)低圧プラズマ処理:上記(a)と同一条件で、織物を8秒間処理した。
【0031】
(c)紫外線処理:出力400Wの低圧水銀ランプで照度380mW/cm(253.7nm)で、空気中で織物を10秒間処理した。
<低屈折率樹脂被覆処理方法>
改質処理した黒色織物を、次に示す水系処理剤を使用した処理液に浸積し、処理液の付着量が80重量%になるようにマングルで絞り、110℃の温度で乾燥し、170℃の温度でヒートセットした。
(1)ブライトン339N(アクリル系樹脂、(株)京絹化成製、固形分20%)3.5%
(2)F2(フッ素系撥水撥油剤、(株)京絹化成製、固形分20%)3.5%
(3)サンスタットKT−3500(制電剤、三洋化成(株)製 固形分30%)1.0%
(4)ベッカミンM3(トリメチロールメラミン、大日本インキ化学(株)製、固形分80%)0.2%
(5)ベッカミンアクセレレータACX(触媒、大日本インキ化学(株)製、固形分30%)0.05%
【0032】
【表1】

【0033】
表1から、本発明によるものは、深色性、撥水性、洗濯耐久性に優れ、堅牢度にも問題のない繊維構造物であることが分かる。
【0034】
(実施例4、比較例3〜4)
粒子径が20〜30nmのシリカゾルを1.0重量%含む90dtex、48フィラメントのポリエチレンテレフタレート延伸糸に2000T/mの撚りを入れたものをタテ糸とヨコ糸に使用して梨地ジョーゼットを製織し、常法により液流染色機で120℃の温度で解撚し、130℃で乾燥、180℃でピンテンターセットした。しかる後、絵気流染色機で120℃の温度で25%のアルカリ減量を行い、市販の黒色分散染料で135℃で60分染色し、80℃で還元洗浄、水洗、乾燥して170℃の温度でピンテンターセットした。該ブラックフォーマル用織物のL値は13.1であった。
【0035】
該染色織物を、実施例1の(b)条件で改質処理を行い、次に示す条件で低屈折樹脂被覆加工を行い、性能を評価した結果を表2に示した。
<低屈折率樹脂被覆処理方法>
改質処理した黒色織物を、次に示す処理剤を使用した処理液に浸積し、処理液の付着量が90重量%になるようにマングルで絞り、110℃の温度で乾燥し、170℃の温度でヒートセットした。
(1)ブライトン177(アクリル系樹脂、(株)京絹化成製、固形分20%)1.5%
(2)F470(フッ素系撥水撥油剤、(株)京絹化成製、固形分20%)4.5%
(3)サンスタットKT−3500(制電剤、三洋化成(株)製 固形分30%)0.8%
(4)ベッカミンM3(トリメチロールメラミン、大日本インキ化学(株)製、固形分80%)
0.3%
(5)ベッカミンアクセレレータACX(触媒、大日本インキ化学(株)製、固形分30%)
0.05%
表2から、本発明によるものは、深色性、撥水性、洗濯耐久性に優れ、堅牢度にも問題のない繊維構造物であることが分かる。
【0036】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を形成するポリマー分子鎖に結合した酸素含有官能基および窒素含有官能基から選ばれた少なくとも1種の官能基を有し、X線照射による電子分光法(ESCA)による測定で求められるO1S/C1SまたはN1S/C1Sで表される原子数比が、繊維表面から少なくとも0.5μmの深部の値に比べて0.02以上増加している繊維の表面が、屈折率1.8以下の低屈折率樹脂で被覆されていることを特徴とする繊維構造物。
【請求項2】
洗濯20回後のL値の変化が、洗濯前のL値に対して+0.5以下であり、かつ変退色が4級以上である請求項1記載の繊維構造物。
【請求項3】
洗濯20回後の撥水度が3級以上である請求項1または2記載の繊維構造物。
【請求項4】
酸素含有官能基および窒素含有官能基が、非重合性ガスの雰囲気下で、放電処理により形成された官能基である請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項5】
非重合性ガスが、アルゴン、ヘリウム、酸素、窒素、空気、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア、パーフルオロメタンおよびパーフルオロエタンからなる群から選ばれた少なくとも1種の非重合性ガスである請求項4記載の繊維構造物。
【請求項6】
放電処理が、大気圧プラズマ処理または低圧プラズマ処理である請求項4または5記載の繊維構造物。
【請求項7】
酸素含有官能基および窒素含有官能基が、紫外線処理により形成された官能基である請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造物。
【請求項8】
紫外線が、300nm以下の波長を含む紫外線である請求項7記載の繊維構造物。
【請求項9】
染色された繊維構造物を、放電処理および/または紫外線処理をした後に、低屈折率樹脂で被覆加工を実施することを特徴とする繊維構造物の製造方法。

【公開番号】特開2008−106389(P2008−106389A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289640(P2006−289640)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】