説明

繊維機械

【課題】各糸処理ユニットにおいて異常が発生した箇所を直感的に判り易く表示することができる繊維機械を提供する。
【解決手段】精紡機が備える複数の紡績ユニットのそれぞれは、当該紡績ユニットの全体的な構成を示した全体図81を表示するオペレーションパネル80を備えている。オペレーションパネル80は、当該紡績ユニットに異常がある場合に、全体図81のうち前記異常の発生箇所と対応する箇所を特定表示することが可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の糸処理ユニットを備えた繊維機械に関する。詳細には、前記糸処理ユニットに発生した異常を通知するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダや精紡機などの繊維機械に関して、装置に異常が発生した場合に、オペレータに対して当該異常の発生箇所を通知するための構成が各種提案されている。
【0003】
例えば特許文献1は、自動ワインダに用いられるボビン搬送装置において、故障が発生した箇所を表示するための構成を開示する。特許文献1が開示する故障表示装置は、ボビン搬送装置の模式図を描いたパネルの適宜の箇所に発光ダイオードを配置し、故障発生箇所に対応する発光ダイオードを点灯させることにより当該故障発生箇所を表示する構成になっている。
【特許文献1】特開昭60−67374号公報
【0004】
ところで、例えば自動ワインダの場合は複数のワインダユニットを、精紡機の場合は複数の紡績ユニットを備えている。このように、一般的な繊維機械は複数の糸処理ユニットを備えている。通常このような繊維機械においては、複数配置された糸処理ユニットのうち何れかに異常が発生すると、異常の発生したユニットのランプを点灯させる等の方法によって、処置が必要なユニットをオペレータに通知している。これにより、オペレータは異常が発生したユニットの位置を知り、当該異常発生ユニットの設置箇所まで徒歩にて移動して適宜の復旧作業を行う。しかし、当該ユニットの具体的にどの部分に処置が必要であるかは、オペレータの経験によって判断されていた。このため、異常の発生箇所とは異なる箇所に処置を施したり、必要以上の工数をかけたりすることがあった。
【0005】
なお、各糸処理ユニットが7セグメントディスプレイ等を備え、これにエラーコードを数字、英字等で表示することで、当該ユニットで発生した異常の内容をオペレータに通知する構成も知られている。しかし、この構成では、エラーコードと異常箇所(異常内容)との対応をオペレータが知らなければ適切な処置を迅速に行うことができない。また、エラーコードを熟知している場合であっても、具体的にユニットのどの部分に異常が発生したのか直感的に判りにくいという問題があった。このため、エラーコードが示す内容の確認に手間取ったり、見当違いの箇所を点検したりするという問題があり、効率が悪いうえにオペレータにとって負担であった。
【0006】
この点に関して、特許文献2は、中央制御装置に接続されたモニタに、問題発生要因をビジュアルに表示する自動ワインダを開示する。この構成によれば、オペレータは、上記のエラーコードによる表示と比べてより直感的に異常の内容を知ることができる。特許文献2は、これにより、仮に経験に乏しいオペレータであっても処置すべき箇所と内容が容易にわかるため、迅速に保全作業を行えるとする。
【特許文献2】特開平11−107075号公報
【0007】
一方、特許文献3は、パネルを各ユニットの前面に設け、当該各パネルには、異常の発生要因を模式的に描いた単独画像が複数表示されているワインダユニットを開示する。この特許文献3のワインダユニットは、異常の発生時には、当該異常に対応する単独画像を発光させることで異常発生箇所を通知する構成になっている。この特許文献3の構成によれば、アイコン状の画像によって異常の内容が示されるため、オペレータがエラーコードを熟知しておく必要が無い。
【特許文献3】独国特許出願公開第102006045237号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献2のような構成の場合、ユニットに異常が発生すると、オペレータは異常発生箇所等の情報を得るために中央制御装置のところまでいったん移動し、モニタの表示を確認して用紙にプリントアウトなどを行った後、作業を行うために当該ユニットのところまで更に移動する必要があった。
【0009】
また、特許文献2は、ミス発生回数の多いユニットをモニタに複数表示可能な構成であるが、このように保全作業が必要なユニットが複数存在する場合、オペレータは中央制御装置とユニットとの間を何度も往復してモニタの表示を確認する必要がある。また、用紙にプリントアウトした場合であっても、複数人で作業を行う場合は、前記用紙を持っていない者には異常の発生箇所が判らないため、一斉に作業に取り掛かることができないという問題もあった。
【0010】
この点に関しては、上記特許文献3は、パネルが各ユニットに設けられているので、わざわざ中央制御装置のモニタを見るために移動したり、プリントアウトした紙を確認する、といった必要がなく、その場で異常の内容を知ることができる。
【0011】
しかし、上記特許文献3における単独画像はあくまでエラーコードによる表示の代替と言うべきものであって、単独画像の表示と異常の発生箇所との対応関係は必ずしも直感的に判り易いものではない。即ち、単独画像として模式的に異常の内容が描かれているとはいえ、当該単独画像を見て直ちに異常発生箇所を知ることができるわけではなく、単独画像と異常発生箇所との対応関係を予め知っておかねばならないことに変わりはない。また、例えば単独画像の図柄の内容によっては、その図柄を見ても異常の内容を正確に理解できない場合も考えられる。このため、結局は、経験の浅いオペレータでは迅速に的確な対応を行うことができなかった。
【0012】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、各糸処理ユニットにおいて異常が発生した箇所を直感的に判り易く表示することができる繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の観点によれば、複数の糸処理ユニットを備え、以下のように構成された繊維機械が提供される。即ち、この繊維機械において、それぞれの前記糸処理ユニットは、当該糸処理ユニットの全体的な構成を示した全体図を表示する全体図表示部を備える。前記全体図表示部は、当該糸処理ユニットに異常がある場合に、前記全体図のうち前記異常の発生箇所と対応する箇所を特定表示することが可能に構成されている。
【0015】
これにより、オペレータは直感的に異常の発生箇所を把握することができる。従って、経験の浅いオペレータであっても容易に対応することができる。また、糸処理ユニット自体が全体図表示部を備えているので、オペレータが全体図表示部の特定表示を確認した後、その場で異常を復旧する作業に取り掛かることができる。
【0016】
前記の繊維機械においては、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記繊維機械は、前記糸処理ユニットを制御する制御部を更に備える。前記制御部は、前記糸処理ユニットから信号を受信して、当該信号に基づいて異常が発生しているか否かを判断する判断部と、異常発生箇所を特定する特定部と、を備える。また、前記制御部は、前記判断部の判断と、前記特定部の特定と、に基づいて前記全体図表示部に異常の発生箇所を特定表示する。
【0017】
これにより、制御部によって異常の有無を判断して異常発生箇所の特定を行い、異常の発生箇所を全体図表示部に適切に特定表示することができる。
【0018】
前記の繊維機械においては、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、前記全体図表示部は、前記全体図の近傍に配置された複数の発光部を備え、前記制御部が前記複数の発光部のうち特定の発光部の発光状態を変化させることで、前記全体図のうち当該発光部に対応する箇所を特定表示することが可能である。
【0019】
これにより、簡単な構成で異常の発生箇所を特定表示することができる。
【0020】
前記の繊維機械においては、以下のように構成することもできる。即ち、前記全体図表示部は、前記全体図に配置された複数の発光部を備え、前記制御部が前記複数の発光部のうち特定の発光部の発光状態を変化させることで、前記全体図のうち当該発光部に対応する箇所を特定表示することが可能である。
【0021】
これにより、より直感的に異常の発生箇所を把握することができる。
【0022】
前記の繊維機械においては、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、前記繊維機械は、前記制御部から異常に関する情報を受け取ることにより、当該異常が発生している各糸処理ユニットの異常の発生状況を分析する分析部を備える。
【0023】
これにより、各糸処理ユニットの異常に関する情報を分析部によって分析することができるので、例えば、異常の発生率を求めたり、異常の発生率が高い糸処理ユニットを抽出したりすることができる。従って、糸処理ユニットの管理が容易になるとともに、それぞれの糸処理ユニットに対して迅速に適切な処理を行うことができる。
【0024】
前記の繊維機械においては、前記全体図表示部は、前記全体図のうち少なくとも3つの領域を識別可能に特定表示することが可能であることが好ましい。
【0025】
これにより、オペレータが異常の発生箇所をある程度区分された領域で把握できるので、異常の発生箇所の特定が容易になり、素早く異常の復旧作業に取り掛かることができる。
【0026】
前記の繊維機械において、前記糸処理ユニットが、ドラフト部と、紡績部と、巻取部と、を備えた紡績ユニットである場合には、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、前記全体図表示部は、前記全体図のうち、前記ドラフト部と、前記紡績部と、前記巻取部と、に対応する少なくとも3つの領域を識別可能に特定表示することが可能である。
【0027】
これにより、紡績ユニットにおいて異常が発生した際に、当該紡績ユニットの異常発生箇所を適切に表示することができる。
【0028】
前記の繊維機械においては、それぞれの前記糸処理ユニットは、前記全体図のうち前記異常の発生箇所と対応する箇所を特定表示するための構成とは別に、当該糸処理ユニットに異常が発生したことを表示する異常発生表示部を備えていることが好ましい。
【0029】
これにより、異常発生表示部の表示によって、複数配置された糸処理ユニットの中から問題が発生した糸処理ユニットを直ちに把握して、問題発生箇所の把握と保全作業を行うことができる。即ち、問題発生から保全作業開始までに掛かる時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る繊維機械としての精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。図1は本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示した正面図である。また、図2は、紡績機における制御信号等の流れを示すブロック図である。
【0031】
図1に示す繊維機械としての精紡機1は、並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2と、機台制御装置(分析部)60と、糸継台車3と、ブロアボックス4と、原動機ボックス5と、を備えている。また、精紡機1は図略の自動玉揚装置を備えている。
【0032】
機台制御装置60は、精紡機1が備える各構成を集中的に管理するためのものであって、モニタ(表示部)61と入力キー62とを備える。図2に示すように、機台制御装置60は、精紡機1が備える各構成との間で情報の送受信を行うことができるように構成されている。
【0033】
モニタ61には、例えば、各紡績ユニット2の生産効率をグラフで表示したり、問題の発生した紡績ユニット2を表示したりすることができるほか、精紡機1全体の統計的な情報を表示することもできる。また、オペレータが入力キー62を用いて適宜の操作を行うことにより、特定の紡績ユニット2に対して設定の変更を行ったり、或いは全ての紡績ユニット2の設定を一括して変更したりすることができる(なお、この設定変更は、機台制御装置60から後述のユニット制御部73に対して設定データを送信することで行う)。また、機台制御装置60は、紡績ユニット2以外にも、例えば糸継台車3や図略の自動玉揚装置などの制御及び管理を行うことができるように構成されている。
【0034】
図2に示すように、精紡機1は、各紡績ユニット2を制御するための複数のユニット制御部73を備えている。本実施形態においてユニット制御部73は、4台の紡績ユニット2を制御及び管理するように構成されており、機台制御装置60からの制御信号、及び各紡績ユニット2が備える各種センサなどが検知した信号等に基づいて、各紡績ユニット2を制御する。また、ユニット制御部73は、各紡績ユニット2に関する情報を機台制御装置60に対して送信することができるように構成されている。
【0035】
各紡績ユニット2は、図1に示すようにスライバ15からパッケージ45を形成するためのものであって、上流から下流へ向かって順に、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸送り装置11と、糸弛み取り装置12と、巻取装置13と、を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は精紡機1の筐体6の上端近傍に設けられており、このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で送られ、後述のヤーンクリアラ52を通過した後、巻取装置13によって巻き取られてパッケージ45が形成される。また、各紡績ユニット2は、装置正面側の適宜の位置にオペレーションパネル80を備えている。
【0036】
前記糸継台車3は、紡績ユニット2が並べられる方向に走行可能な構成となっている。そして、糸切断時(後述)には、糸継ぎが必要な紡績ユニット2の位置まで走行し、紡績装置9側の上糸と、巻取装置13側の下糸とを糸継ぎすることができるように構成されている。
【0037】
次に、図3を参照して各紡績ユニット2の詳細な構成について説明する。図3は精紡機1の縦断面図である。
【0038】
ドラフト装置(ドラフト部)7は、スライバ15を延伸して繊維束8にするためのものである。このドラフト装置7は図3に示すように、バックローラ16、サードローラ17、エプロンベルト18を装架したミドルローラ19、及びフロントローラ20の4つのローラを備えている。また、ドラフト装置7はスライバ切れを検出するためのスライバ切れセンサ59を備えており、当該スライバ切れセンサ59が検出するスライバ切れ信号はユニット制御部73に送信されるように構成されている。
【0039】
次に、紡績部の構成について説明する。紡績部は、紡績装置9と、糸送り装置11と、糸弛み取り装置12と、を主に備える。
【0040】
紡績装置9の詳細な構成は図示しないが、本実施形態では、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与え、紡績糸10を生成する空気式のものを採用している。
【0041】
糸送り装置11は、精紡機1の筐体6に支持されたデリベリローラ39と、デリベリローラ39に接触して設けられたニップローラ40と、を備える。この構成で、紡績装置9から排出された紡績糸10をデリベリローラ39とニップローラ40との間に挟んだ状態で、前記デリベリローラ39を図示しない電動モータで回転駆動することにより、紡績糸10を巻取装置13側へ送るようになっている。
【0042】
精紡機1の筐体6の前面側であって前記糸送り装置11よりも若干下流側の位置には、ヤーンクリアラ52が設けられている。そして、紡績装置9で紡出された紡績糸10は、巻取装置13で巻き取られる前に前記ヤーンクリアラ52を通過するように構成されている。ヤーンクリアラ52は走行する紡績糸10の太さ及び速度を監視し、紡績糸10の糸欠点を検出した場合に、糸欠点検出信号をユニット制御部73へ送信するように構成されている。また、ヤーンクリアラ52の近傍には、糸欠点検出時に紡績糸10を切断するためのカッタ57が設けられている。
【0043】
糸弛み取り装置12は、紡績装置9と巻取装置13との間(紡績装置9と後述のスプライサ43との間)の紡績糸10の弛みを除去し、適切な張力を付与できるように構成されている。具体的には、前記糸弛み取り装置12は、弛み取りローラ21と、糸掛け部材22と、上流側ガイド23と、エアシリンダ24と、電動モータ25と、下流側ガイド26と、を備えている。以下、糸弛み取り装置12の構成について説明する。
【0044】
弛み取りローラ21は、電動モータ25により回転駆動されて、紡績糸10をその外周に巻き付けることにより貯留できるように構成されている。
【0045】
糸掛け部材22は、前記弛み取りローラ21の回転軸まわりに回転可能に配置され、当該弛み取りローラ21と一体的に回転できるように構成されている。糸掛け部材22は、紡績糸10の糸道に係合可能に構成されており、糸掛け部材22に紡績糸10が係合した状態で弛み取りローラ21と一体回転することで、当該弛み取りローラ21の外周に糸を巻き付けることができる。また、糸掛け部材22と弛み取りローラ21との間には、例えば摩擦抵抗を用いた一種のトルクリミッタが設けられている。これにより、糸掛け部材22に所定以上の回転トルクが加わると、当該糸掛け部材22が前記弛み取りローラ21とは独立して回転できるように構成されている。
【0046】
上流側ガイド23は弛み取りローラ21のやや上流側に配置されるとともに、前記エアシリンダ24によって進出位置及び退避位置との間で移動可能に構成されている。上流側ガイド23を前記退避位置まで移動させると、紡績糸10の糸道と前記糸掛け部材22とが係合可能となり、弛み取りローラ21の外周に糸を巻き付けることができる。また、弛み取りローラ21を作動させないときには、上流側ガイド23を前記進出位置まで移動させ、紡績糸10の糸道と糸掛け部材22とが係合しないようにしておく。また、下流側ガイド26は、前記弛み取りローラ21の下流側に設けられている。
【0047】
また、糸弛み取り装置12は、弛み取りローラ21又は糸掛け部材22に紡績糸10が絡み付いてしまったことを検出するための、図略の糸絡み付き検出手段を備えている。前記糸絡み付き検出手段が検出した糸絡み付き信号は、ユニット制御部73へ送信されるように構成されている。
【0048】
以上の構成で、弛み取りローラ21と糸掛け部材22が一体回転している状態で上流側ガイド23を退避位置に移動させると、紡績糸10が糸掛け部材22と係合する。このとき、紡績糸10の張力が所定の張力より低ければ、糸掛け部材22は弛み取りローラ21と一体回転することによって、紡績糸10を弛み取りローラ21の外周に巻き付けるように機能する。また、紡績糸10の張力が所定の張力以上であれば、糸掛け部材22は弛み取りローラ21とは独立して回転し、弛み取りローラ21に貯留された紡績糸10を徐々に解舒するように機能する。このようにして、糸弛み取り装置12は、紡績糸10の張力が低くなり弛みが発生しそうになると弛み取りローラ21の外周に紡績糸10を巻き付けて弛みを防止し、紡績糸10の張力が高くなると弛み取りローラ21の外周に貯留された紡績糸10を引き出して糸張力の増大を抑えるように働く。
【0049】
次に、巻取装置(巻取部)13について説明する。巻取装置13は、支軸70まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備え、このクレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するボビンを回転可能に支持できるようになっている。また巻取装置13は、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。
【0050】
前記巻取ドラム72は、前記ボビンやそれに紡績糸10を巻回して形成されるパッケージ45の外周面に接触して駆動できるように構成されている。トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。このトラバースガイド76は、複数の紡績ユニット2に跨って水平に配置されるトラバースロッド77に固定されている。この構成で、トラバースロッド77を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取ることができる。
【0051】
次に、糸継台車3について説明する。糸継台車3は、図1及び図3に示すように、スプライサ(糸継装置)43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、下糸検出センサ58と、を備えている。糸継台車3は、精紡機1の筐体6に設けられたレール41上を走行するように設けられている。この構成で、ある紡績ユニット2で糸切れや糸切断が発生すると、糸継台車3は当該紡績ユニット2まで走行して停止し、糸継動作を行うように構成されている。
【0052】
以下、糸継台車3による糸継動作について具体的に説明する。前述のように、ヤーンクリアラ52が紡績糸10の糸欠点を検出すると、糸欠点検出信号がユニット制御部73へ送信される。前記ユニット制御部73は、上記糸欠点検出信号を受信すると、直ちにカッタ57で糸を切断し、更にドラフト装置7、紡績装置9、巻取装置13等を停止し、糸継台車3を当該紡績ユニット2の前まで走行させる。
【0053】
続いて、ユニット制御部73は、当該紡績ユニット2のドラフト装置7及び紡績装置9等を再び駆動させるとともに、糸継台車3が備えたサクションパイプ44及びサクションマウス46による糸端の捕捉を開始させる。サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績装置9から排出される上糸の糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。これと前後して、サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取装置13に回転自在に支持されたパッケージ45からの下糸の糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ43へ案内する。
【0054】
このとき、サクションパイプ44による上糸の案内動作が終了したにも拘わらずヤーンクリアラ52が糸を検出しない場合は、上糸の捕捉が失敗したと判断されて、上記の上糸捕捉動作を繰り返す。また、サクションマウス46による下糸の案内動作が終了したにも拘わらず下糸検出センサ58が糸を検出しない場合は、下糸の捕捉が失敗したと判断されて、上記の下糸捕捉動作を繰り返す。
【0055】
上糸と下糸がスプライサ43に案内されると、案内された糸端同士の糸継ぎがスプライサ43によって行われる。スプライサ43の詳しい構成については説明しないが、例えば圧縮空気流などの流体によって糸端同士を撚り合わせる方法により糸継ぎを行う構成とすることができる。糸継ぎが終了すると、巻取装置13による巻取りを再開させる。
【0056】
次に、オペレーションパネル80の構成について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る精紡機1が備える紡績ユニット2において、当該紡績ユニット2の前面に配置されているオペレーションパネル(全体図表示部)80の平面図である。図に示すように、オペレーションパネル80は、全体図81と、異常表示ランプ821,822,823と、7セグメントディスプレイ83と、保全コールランプ(異常発生表示部)84と、操作スイッチ85と、を主に備えている。
【0057】
図4に示すように、オペレーションパネル80には、紡績ユニット2の側面の簡略的な全体図81が描かれている。従って、オペレーションパネル80は、全体図表示部であるということができる。なお、この全体図81は、図3の縦断面図に相当するものである。
【0058】
また、全体図81の側方近傍には、発光ダイオードよりなる3つの異常表示ランプ821,822,823が縦一列に並んで配置されている。前記異常表示ランプ821,822,823は、それぞれが前記全体図81のなかの特定の領域に対応している。
【0059】
また、前記全体図81は、その側方近傍に配置されている前記異常表示ランプ821,822,823が当該全体図81のどこからどこまでの領域に対応しているのかを直感的に識別できるようにするため、縦方向に3つの領域に分割されて描かれている。この全体図81の3つの領域は、実際の紡績ユニット2の構成に対応している。具体的には、ドラフト部対応図811はドラフト装置(ドラフト部)7に対応している。紡績部対応図812は、紡績部(紡績装置9、糸送り装置11、糸弛み取り装置12など)に対応している。巻取部対応図813は、巻取装置(巻取部)13に対応している。そして、ドラフト部対応図811の横にはドラフト部異常表示ランプ821が、紡績部対応図812の横には紡績部異常表示ランプ822が、巻取部対応図813の横には巻取部異常表示ランプ823が、それぞれ配置されている。
【0060】
以上の構成で、紡績ユニット2において異常があると、前記異常表示ランプ821,822,823のうち、当該異常の発生箇所に対応する異常表示ランプを点灯させることにより、オペレータに当該異常の発生箇所を通知することができる。以下、具体例を挙げて説明する。
【0061】
例えば、スライバ切れの異常が発生すると、当該異常はドラフト装置7に発生しているので、ドラフト部対応図811の横に配置されているドラフト部異常表示ランプ821を点灯させる。オペレータは、点灯している異常表示ランプの横に描かれたドラフト部対応図811が全体図81のなかでどの位置にあるかを見ることで、紡績ユニット2のどの箇所に異常が発生しているのかを直感的に把握することができる。
【0062】
また例えば、糸継時にサクションパイプ44が上糸を捕捉できなかった場合、当該上糸の捕捉を失敗した箇所は紡績装置9のすぐ下流の位置である。また例えば、糸弛み取り装置12に糸が絡まるという異常が発生することもある。上記の場合は何れも紡績部において異常が発生しているので、紡績部対応図812の横に配置されている紡績部異常表示ランプ822を点灯させる。オペレータは、点灯している異常表示ランプの横に描かれた紡績部対応図812が全体図81のなかでどの位置にあるかを見ることで、紡績ユニット2のどの箇所に異常が発生しているのかを直感的に把握することができる。
【0063】
また例えば、糸継時にサクションマウス46が下糸を捕捉できなかった場合、当該下糸の捕捉を失敗した箇所は巻取装置13であるので、巻取部対応図813の横に配置されている巻取部異常表示ランプ823を点灯させる。オペレータは、点灯している異常表示ランプの横に描かれた巻取部対応図813が全体図81のなかでどの位置にあるかを見ることで、紡績ユニット2のどの箇所に異常が発生しているかを直感的に把握することができる。
【0064】
以上のように、全体図81のすぐ横に異常表示ランプ821〜823が配置され、異常発生箇所に対応する異常表示ランプを点灯させることで、全体図81のなかで異常発生箇所に対応する部分を特定して表示することができるように構成されている。これにより、紡績ユニット2のなかでどこに異常が発生しているかを直感的に把握することができるので、異常発生時にはオペレータが紡績ユニットの保全作業に直ちに取り掛かることができる。
【0065】
また、上記以外の箇所で異常が発生した場合や異常発生箇所を特定できない場合等に点灯するための、異常発生箇所特定不可ランプ824が備えられている。
【0066】
7セグメントディスプレイ83は、異常発生時のエラーコードなどを表示するためのものである。即ち、本実施形態の精紡機1では仮にエラーコード等を知らなくても前記全体図81及び異常表示ランプ821〜823を用いた表示によって直感的に異常発生箇所を把握できるが、7セグメントディスプレイ83によるエラーコード表示を併用することで、紡績ユニット2で発生した異常の内容をより詳細にオペレータに通知できる。
【0067】
保全コールランプ84は紡績ユニット2においてオペレータの介入が必要な異常が発生した際に(当該異常の種類とは関係なく)点灯させるためのものであり、遠方のオペレータにも点灯状態が視認できるように、前記異常表示ランプ821〜823と比べて明るく目立つように構成されている。オペレータはこの保全コールランプ84の点灯を目視で確認することで異常の発生を知り、当該点灯している保全コールランプ84を目指して異常が発生した紡績ユニット2まで移動する。
【0068】
また、オペレーションパネル80は複数の操作スイッチ85を備えている。オペレータはこの操作スイッチ85を適宜操作することで、紡績ユニット2の緊急停止などの操作を行うことができる。更に、複数の操作スイッチ85を、全体図81、異常表示ランプ821〜823及び保全コールランプ84とは別に設けたことで、全体図81、異常表示ランプ821〜823及び保全コールランプ84をオペレータが操作することがなく、汚れの付着がない。よって、全体図81等の視認性を良好に維持することが可能である。
【0069】
次に、実際に異常表示ランプ821〜823を点灯させる処理について説明する。
【0070】
図2で示すように、それぞれのユニット制御部73は、異常判断部(判断部)731と、異常特定部(特定部)732と、を備え、4台の紡績ユニット2からの信号を受信して監視している。前記信号には各紡績ユニット2等が備える各種センサからの信号が含まれており、例えば、前述のスライバ切れセンサ59や下糸検出センサ58等からの信号を監視している。そして、ユニット制御部73が前記信号を受信すると、異常判断部731は、当該信号に基づいて当該信号の送信元である紡績ユニット2に異常が発生しているか否かを判断する。
【0071】
例えば、スライバ切れや糸弛み取り装置への糸の絡み付きを検出したときは、ユニット制御部73の異常判断部731は即座に異常発生と判断する。また、例えば糸継時に糸端捕捉の失敗を検出した場合には、ユニット制御部73は、糸端の捕捉動作を所定回数だけ再試行するように制御を行う。そして、異常判断部731は、当該所定回数の捕捉動作を繰り返しても糸端を捕捉できない場合に異常発生と判断する。
【0072】
ユニット制御部73の異常判断部731が紡績ユニット2において異常ありと判断した場合には、更に当該紡績ユニット2のどの部分に異常が発生しているのかを異常特定部732によって特定する。そして、ユニット制御部73は、上記判断結果及び特定結果に基づいて、異常発生箇所に対応する異常表示ランプを点灯させるとともに、当該紡績ユニット2の運転停止など、適宜の処理を行う。またこれと前後して、ユニット制御部73は、当該紡績ユニット2が備える保全コールランプ84を点灯させる。
【0073】
なお、ユニット制御部73は、異常に関する情報(例えば、異常発生箇所などの情報)を機台制御装置60に対して送信するように構成されている。機台制御装置60においては、異常の発生した紡績ユニット2の位置や、当該紡績ユニット2における異常発生率など、必要に応じて各種の情報をモニタ61で確認することができる。
【0074】
また、上記のように異常発生時にリアルタイムでオペレーションパネル80に表示を行う構成に代え、あるいはこれに加えて、機台制御装置60において問題のある紡績ユニット2を抽出して、抽出した各紡績ユニット2のオペレーションパネル80に問題発生箇所を表示するように構成することができる。以下、この構成について説明する。
【0075】
まず、オペレータが機台制御装置60において適宜の操作を行い、所望の条件を指定して問題のある紡績ユニット2を抽出する。この条件指定としては、例えば、異常の発生率が所定の異常発生率よりも高い紡績ユニット2を抽出する、というように指定することができる。以下、異常の発生率が高い紡績ユニット2を抽出するように条件指定が行われた場合について説明する。
【0076】
オペレータによる前記条件指定操作が行われると、機台制御装置60は、ユニット制御部73から各紡績ユニット2に関する情報を通信により取得し、当該情報に基づいて各紡績ユニット2の異常発生率を算出して、所定の異常発生率よりも異常発生率が高い紡績ユニット2を抽出(リストアップ)する。
【0077】
次に、機台制御装置60は、抽出した各紡績ユニット2に発生した異常の種類を分析し、当該紡績ユニット2において異常が頻発している箇所を判定する。
【0078】
続いて、機台制御装置60は、抽出された各紡績ユニット2を管理しているユニット制御部73に対して、保全コール要求を送信する。前記保全コール要求を受けた各ユニット制御部73は、機台制御装置60にて抽出された紡績ユニット2の保全コールランプ84を点灯させて、異常発生率が高いため保全作業が必要であることをオペレータに通知する。これとともに、ユニット制御部73は、異常発生率の高い紡績ユニット2が備える異常表示ランプ821〜823のうち、異常が頻発している箇所に対応する異常表示ランプを点灯させる。これにより、オペレータは、当該紡績ユニット2において保全作業が必要な箇所を直感的に把握することができる。
【0079】
なお、当然のことながら、異常が頻発している箇所は各紡績ユニット2で異なる場合がある。例えば、異常発生率が高い紡績ユニット2が複数抽出された場合であっても、或る紡績ユニット2は紡績部に異常が頻発しており、他の或る紡績ユニット2は巻取部に異常が頻発しているということがある。本実施形態では、各紡績ユニット2のオペレーションパネル80において適切な異常表示ランプ821〜823を点灯させることで、それぞれの紡績ユニット2の異常発生箇所を個別に表示することができるので、オペレータはそれぞれの紡績ユニット2に対して適切な処置を施すことができる。このような構成は、保全作業の対象となる紡績ユニット2が多数存在する場合や、多人数で一斉に作業を行う場合に特に有効である。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態の精紡機1は、複数の紡績ユニット2を備え、以下のように構成されている。即ち、この精紡機1において、それぞれの紡績ユニット2は、当該紡績ユニット2の全体的な構成を示した全体図81を表示するオペレーションパネル80を備えている。オペレーションパネル80は、当該紡績ユニット2に異常がある場合に、全体図81のうち前記異常の発生箇所と対応する箇所を特定表示することが可能に構成されている。
【0081】
これにより、オペレータは直感的に異常の発生箇所を把握することができる。従って、経験の浅いオペレータであっても容易に対応することができる。また、紡績ユニット2自体がオペレーションパネル80を備えているので、オペレータがオペレーションパネル80の特定表示を確認した後、その場で異常を復旧する作業に取り掛かることができる。
【0082】
また、本実施形態の精紡機1は、前記紡績ユニット2を制御するユニット制御部73を備えている。ユニット制御部73は、紡績ユニット2から信号を受信して、当該信号に基づいて異常が発生しているか否かを判断する異常判断部731と、異常発生箇所を特定する異常特定部732と、を備える。また、ユニット制御部73は、異常判断部731の判断と、異常特定部732の特定と、に基づいてオペレーションパネル80に異常の発生箇所を特定表示する。
【0083】
これにより、ユニット制御部73によって異常の有無を判断して異常発生箇所の特定を行い、異常の発生箇所をオペレーションパネル80に適切に特定表示することができる。
【0084】
また、本実施形態の精紡機1において、オペレーションパネル80は、全体図81の近傍に配置された複数の異常表示ランプ821,822,823を備える。そして、ユニット制御部73が前記複数の異常表示ランプのうち特定の異常表示ランプを点灯させることで、全体図81のうち当該異常表示ランプに対応する箇所を特定表示することが可能である。
【0085】
これにより、簡単な構成で異常の発生箇所を特定表示することができる。
【0086】
また、本実施形態の精紡機1は、ユニット制御部73から異常に関する情報を受け取ることにより、当該異常が発生している各紡績ユニット2の異常の発生状況を分析する機台制御装置60を備えている。
【0087】
これにより、各紡績ユニット2の異常に関する情報を機台制御装置60によって分析することができるので、異常の発生率を求めたり、異常の発生率が高い糸処理ユニットを抽出したりすることができる。従って、紡績ユニット2の管理が容易になるとともに、それぞれの紡績ユニット2に対して迅速に適切な処理を行うことができる。
【0088】
また、本実施形態の精紡機1においては、オペレーションパネル80は、全体図81の3つの領域を識別可能に特定表示することが可能であるように構成されている。
【0089】
これにより、オペレータが異常の発生箇所をある程度区分された領域で把握できるので、異常の発生箇所の特定が容易になり、素早く異常の復旧作業に取り掛かることができる。
【0090】
また、本実施形態の精紡機1においては、紡績ユニット2は、ドラフト装置7と、紡績部(紡績装置9、糸送り装置11、糸弛み取り装置12など)と、巻取装置13と、を備えている。そして、オペレーションパネル80は、全体図81のうち、ドラフト部対応図811と、紡績部対応図812と、巻取部対応図813と、の3つ領域を識別可能に特定表示することが可能である。
【0091】
これにより、紡績ユニット2において異常が発生した際に、当該紡績ユニット2の異常発生箇所を適切に表示することができる。
【0092】
また、本実施形態の精紡機1においては、それぞれの紡績ユニット2は、当該紡績ユニット2に異常が発生したことを表示する保全コールランプ84を、異常表示ランプ821,822,823とは別に備えている。
【0093】
これにより、保全コールランプ84の表示によって、複数配置された紡績ユニット2の中から問題が発生した紡績ユニット2を直ちに把握して、問題発生箇所の把握と保全作業を行うことができる。即ち、問題発生から保全作業開始までに掛かる時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。
【0094】
次に、上記実施形態におけるオペレーションパネル80の変形例について、図5を参照して説明する。図5は、この変形例に係る精紡機の紡績ユニットが備えたオペレーションパネルの平面図である。なお、上記実施形態と同一又は類似の構成については図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0095】
このオペレーションパネル90には、紡績ユニット2の側面の簡略的な全体図91が描かれている。従って、オペレーションパネル90は、全体図表示部であるということができる。なお、この全体図91も、図3の縦断面図に相当するものである。
【0096】
全体図91は透明又は半透明なプレートに描かれており、裏面からの光を透過させることができるように構成されている。そして、全体図91の裏側(前記プレートの紙面奥側)には、異常表示ランプ921〜924が配置されている。具体的には、ドラフト装置7に対応する位置の裏側には、ドラフト部異常表示ランプ921が配置されている。紡績装置9と糸送り装置11との間の箇所に対応する位置の裏側には、上糸捕捉失敗異常表示ランプ922が配置されている。糸弛み取り装置12に対応する位置の裏側には、糸弛み取り装置異常表示ランプ923が配置されている。また、巻取装置13に対応する位置の裏側には、巻取部異常表示ランプ924が配置されている。
【0097】
以上の構成で、異常発生時には、異常発生箇所に対応する異常表示ランプ921〜924の何れかを点灯させることで、全体図91の異常発生箇所に対応する箇所を発光させることができる。即ち、前記実施形態におけるオペレーションパネル80では全体図81の横に配置された異常表示ランプを点灯させるだけであったが、本変形例におけるオペレーションパネル90では全体図91のなかで異常発生箇所に対応する領域そのものを直接的に発光させるので、より直感的かつ具体的に特定して表示することができる。
【0098】
また、前記実施形態におけるオペレーションパネル80では全体図81のなかで3つの領域を識別可能な構成としたが、この変形例におけるオペレーションパネル90では、上記のように全体図91のなかで4つの領域を識別可能な構成としている(即ち、4つの異常表示ランプが全体図91に配置されている)。このように、より詳細に異常発生箇所を表示可能とすることで、オペレータによる保全作業が更にスムーズなものとなる。
【0099】
以上に説明したように、この変形例の精紡機1において、オペレーションパネル90は、全体図91に配置された複数の異常表示ランプ921,922,923,924を備える。そして、ユニット制御部73が前記複数の異常表示ランプのうち特定の異常表示ランプを点灯させることで、全体図91のうち当該異常表示ランプに対応する箇所を特定表示することが可能である。
【0100】
これにより、より直感的に異常の発生箇所を把握することができる。
【0101】
以上に本発明の好適な実施の形態及びその変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0102】
全体図81,91は紡績ユニット2の側面図に限らず、例えば正面図でも良い。また、簡略図に限らず、例えば写真でも良い。
【0103】
上記の説明では異常の種類を例示して説明したが、これらに限らず、紡績ユニット2で発生する異常のうち検出可能なものであれば本発明の構成を用いて異常発生箇所を表示することができる。
【0104】
オペレーションパネル80では異常表示ランプを3つ、変形例のオペレーションパネル90では異常表示ランプを4つとしたが、異常表示ランプを増やして更に細かく異常発生位置を表示可能な構成としても良いことは勿論である。
【0105】
また、異常箇所が複数存在する場合には、対応する複数の異常表示ランプを同時に点灯しても良い。
【0106】
変形例のオペレーションパネル90においては、全体図91の裏側に配置された異常表示ランプの光を透過させる構成としたが、これに限らない。例えば、全体図を不透明なパネルで構成するとともに、当該パネルの所定箇所に挿通孔を形成し、パネルの裏側から前記挿通孔を通して異常表示ランプの一部を露出させる構成とすることができる。このように構成しても、全体図に異常表示ランプを配置して、異常発生箇所を発光させるという同様の効果を発揮することができる。
【0107】
また、異常表示ランプを点灯することで異常発生箇所を通知する構成としたが、例えば正常時には点灯しておき異常発生時には異常発生箇所に対応する異常表示ランプを消灯する構成としても良い。また例えば、異常表示ランプを点滅させることで異常発生箇所を通知する構成としても良い。
【0108】
機台制御装置60で紡績ユニット2を抽出する条件は、異常発生率の高い紡績ユニット2に限らない。例えば、所定の生産効率よりも生産効率の低い紡績ユニット2を抽出するように条件指定することもできる。この場合は、抽出された各紡績ユニット2のオペレーションパネル80に、当該紡績ユニット2において異常が頻発している箇所を特定表示することで、当該紡績ユニット2の効率を下げている要因をオペレータが直感的に把握することができる。また例えば、部品の交換時期がきた紡績ユニット2を抽出するように条件指定することもできる。この場合は、抽出された各紡績ユニット2のオペレーションパネル80に、交換すべき部品が配置されている箇所を特定表示することで、当該紡績ユニット2で交換が必要な部品をオペレータが直感的に把握することができる。
【0109】
上記の実施形態では機台制御装置60を原動機ボックス5とは独立した構成としたが、例えば、機台制御装置60と原動機ボックス5とを一体化した構成としても良い。
【0110】
ユニット制御部73は、上記のように4台の紡績ユニット2を制御する構成に代えて、例えば各紡績ユニット2につき1つずつユニット制御部を設けても良い。また、ユニット制御部73を省略し、機台制御装置60と各紡績ユニット2が直接通信を行う構成に変更することもできる。
【0111】
糸継台車3や自動玉揚装置は省略することができる。また、糸継台車3を省略した場合には、各紡績ユニット2が糸継装置を備える構成に変更しても良い。
【0112】
本発明の構成は精紡機に限らず、例えば複数のワインダユニットを備えた自動ワインダなど、複数の糸処理ユニットを備えた他の繊維機械に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示した正面図。
【図2】紡績機における制御信号等の流れを示すブロック図。
【図3】精紡機の縦断面図。
【図4】オペレーションパネルの正面図。
【図5】変形例に係るオペレーションパネルの正面図。
【符号の説明】
【0114】
1 精紡機(繊維機械)
2 紡績ユニット(糸処理ユニット)
7 ドラフト装置
9 紡績装置
13 巻取装置
60 機台制御装置(分析部)
73 ユニット制御部(制御部)
731 異常判断部(判断部)
732 異常特定部(特定部)
80 オペレーションパネル(全体図表示部)
81 全体図
821,822,823 異常表示ランプ(発光部)
84 保全コールランプ(異常発生表示部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸処理ユニットを備えた繊維機械であって、
それぞれの前記糸処理ユニットは、当該糸処理ユニットの全体的な構成を示した全体図を表示する全体図表示部を備え、
前記全体図表示部は、当該糸処理ユニットに異常がある場合に、前記全体図のうち前記異常の発生箇所と対応する箇所を特定表示することが可能に構成されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記糸処理ユニットを制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記糸処理ユニットから信号を受信して、当該信号に基づいて異常が発生しているか否かを判断する判断部と、異常発生箇所を特定する特定部と、を備え、
前記制御部は、前記判断部の判断と、前記特定部の特定と、に基づいて前記全体図表示部に異常の発生箇所を特定表示することを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
請求項2に記載の繊維機械であって、
前記全体図表示部は、前記全体図の近傍に配置された複数の発光部を備え、
前記制御部が前記複数の発光部のうち特定の発光部の発光状態を変化させることで、前記全体図のうち当該発光部に対応する箇所を特定表示することが可能に構成されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
請求項2に記載の繊維機械であって、
前記全体図表示部は、前記全体図に配置された複数の発光部を備え、
前記制御部が前記複数の発光部のうち特定の発光部の発光状態を変化させることで、前記全体図のうち当該発光部に対応する箇所を特定表示することが可能に構成されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記制御部から異常に関する情報を受け取ることにより、当該異常が発生している各糸処理ユニットの異常の発生状況を分析する分析部を備えていることを特徴とする繊維機械。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記全体図表示部は、前記全体図のうち少なくとも3つの領域を識別可能に特定表示することが可能であることを特徴とする繊維機械。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維機械であって、
前記糸処理ユニットは、ドラフト部と、紡績部と、巻取部と、を備えた紡績ユニットであり、
前記全体図表示部は、前記全体図のうち、前記ドラフト部と、前記紡績部と、前記巻取部と、に対応する少なくとも3つの領域を識別可能に特定表示することが可能であることを特徴とする繊維機械。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
それぞれの前記糸処理ユニットは、前記全体図のうち前記異常の発生箇所と対応する箇所を特定表示するための構成とは別に、当該糸処理ユニットに異常が発生したことを表示する異常発生表示部を備えていることを特徴とする繊維機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−70301(P2010−70301A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238393(P2008−238393)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】