繊維機械
【課題】 四つの速度制御パターンを提供し、トラブル処理やスタートアップ処理における作業性の向上と作業の安全性を高めることができる繊維機械を提供する。
【解決手段】 高速モードは、繊維機械における繊維糸を生産する運転モードである。中速モードは、モータ6以降のモータ7、Nで駆動する繊維搬送ローラの搬送速度をモータ6で駆動される繊維搬送ローラの搬送速度にまで低減させる。低速モードは、モータ1〜モータ3でそれぞれ駆動される繊維搬送ローラは、それぞれのSV値(定常時の搬送速度)で駆動され、モータ3の下流側に配されているモータ4〜モータNで駆動する各繊維搬送ローラは、モータ3で駆動する繊維搬送ローラと同速の搬送速度にできる。任意モードを選択すると、全てのモータの回転速度を同じ設定倍率で低減させることができる。
【解決手段】 高速モードは、繊維機械における繊維糸を生産する運転モードである。中速モードは、モータ6以降のモータ7、Nで駆動する繊維搬送ローラの搬送速度をモータ6で駆動される繊維搬送ローラの搬送速度にまで低減させる。低速モードは、モータ1〜モータ3でそれぞれ駆動される繊維搬送ローラは、それぞれのSV値(定常時の搬送速度)で駆動され、モータ3の下流側に配されているモータ4〜モータNで駆動する各繊維搬送ローラは、モータ3で駆動する繊維搬送ローラと同速の搬送速度にできる。任意モードを選択すると、全てのモータの回転速度を同じ設定倍率で低減させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、繊維糸を連続的に製造する繊維機械において、スタートアップ時やトラブル発生時に前記繊維糸を搬送する繊維搬送ロールの搬送速度を制御可能にした繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
紡糸された繊維糸は、例えば、第1次延伸工程、洗浄工程、第2次延伸工程、洗浄工程、乾燥工程、交絡工程、成形工程、梱包工程等の複数の工程を上流側から下流側に向かって連続的に搬送されることで、製品として完成することになる。各工程内においても、また、各工程間を繋ぐ搬送路においても、それぞれ複数の繊維搬送ロールが用いられている。
【0003】
各繊維搬送ロールにおける搬送速度は、製造工程全体において全て一様の搬送速度として構成されておらず、搬送される繊維糸の上流側から下流側に配されるのに従って、繊維搬送ロールにおける搬送速度が加速するように構成されている。
繊維糸の連続製造を開始するスタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、各繊維搬送ロールの搬送速度に対して加減速制御を行う必要がある。
【0004】
例えば、連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、常に各繊維搬送ロールに対する減速制御を一律に行うと、繊維糸の製造効率が低下してしまうことになる。そして、スタートアップ時や減速制御を行った状態から通常の高速制御状態に一気に変更すると、搬送速度の加速段階において各工程間での搬送速度にズレが生じてしまい、糸のたるみや繊維搬送ロールへの繊維糸の巻き付きや、繊維搬送ロール間での繊維糸の切断等のトラブルが発生してしまうことになる。
【0005】
しかしながら、従来の繊維機械においては、連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、作業員は通常の運転速度でのトラブル処理や対応する繊維搬送ローラを減速させてトラブル処理を行っていた。また、スタートアップには、全ての繊維搬送ロールにおける搬送速度を低速状態にして、繊維糸の先通しを行っていた。このような状態でのトラブル処理やスタートアップ処理を行うと、作業時間に長時間を必要とする。また、作業員に対する安全性を確保するためには、様々な安全装置を配設しておかなければならなかった。
【0006】
繊維機械としては、連続乾燥装置(特許文献1参照)やアクリル繊維の製造方法(特許文献2参照)などにおいて、複数の製造工程を示した構成が開示されているが、トラブル処理やスタートアップ処理を行うときに、各繊維搬送ロールの搬送速度に対して加減速制御を行うことについての開示は行われていない。
【0007】
特許文献1に記載された連続乾燥装置では、製造工程において毛羽(糸切れ)の発生を防ぐため、乾燥室に導入する繊維束に撚りを入れ、乾燥中の繊維束の張力が0.01〜0.08g重/dtexの範囲内となるように制御して、連続乾燥させる構成となっている。また、特許文献2に記載されたアクリル繊維の製造方法では、湿式紡糸後の洗浄や延伸工程において安定した工程通過性を実現するため、湿式紡糸後の洗浄工程及び/又は延伸工程の工程水に、界面活性剤2〜1000ppmを添加することによって、繊維切れやローラ巻付きを低減させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/088018号パンフレット
【特許文献2】特開2005−15939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、特許文献1や特許文献2には、スタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときに行う、各繊維搬送ロールの搬送速度に対する加減速制御については開示されていない。
【0010】
本願発明では、スタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときの運転状況に応じた速度制御パターンを提供し、トラブル処理やスタートアップ処理における作業性の向上と作業の安全性を高めることができる繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本願発明では、繊維糸を連続的に搬送する複数の繊維搬送ロールを上流側から下流側に沿って配し、前記繊維糸を連続的に製造する繊維機械において、
前記繊維機械は、全ての前記繊維搬送ロールに対してそれぞれの搬送速度を変更する搬送速度設定手段と前記各繊維搬送ロールに対して回転駆動制御を行う制御手段とを有し、前記各繊維搬送ロールは、定常時の搬送速度において、下流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度が、それよりも上流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度以上となるように構成され、
前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から一つの速度モードを選択的に設定可能に構成され、前記四つの速度モードは、前記各繊維搬送ロールをそれぞれ予め設定した定常時の搬送速度に設定する高速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で予め設定した第一の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第一の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する中速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で前記第一の繊維搬送ロールよりも予め上流側に設定した第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する低速モードと、前記各繊維搬送ロールの搬送速度に対して、全て同じ所定の設定倍率を掛けた搬送速度にそれぞれ一括的に変更する任意モードと、から構成され、
前記所定の設定倍率は、任意に変更可能に構成され、前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から選択した速度モードに対応した制御指令値を出力し、前記制御手段は、前記搬送速度設定手段からの前記制御指令値に応じて前記各繊維搬送ロールに対する回転駆動制御を行うことを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記搬送速度設定手段は、前記低速モード又は前記中速モードと前記任意モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするためのステップ間隔及び一つのステップ間隔において行う第一加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記ステップ間隔は、前記低速モード又は前記中速モードにおける前記制御指令値を100%としたとき、前記任意モードにおける前記制御指令値である前記設定倍率との間において、一回のステップで増減させる設定倍率の制御指令値量として構成され、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段による速度モードの変更によって設定された速度変更前と速度変更後における前記制御指令値の差分を演算し、かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記ステップ間隔と前記第一加減速時間と前記制御指令値の差分とによって、前記速度モードの変更を行うことを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本願発明では、前記搬送速度設定手段は、前記低速モードと前記中速モードと前記高速モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするための加減速を何回かに分けて行うための変化回数、前記変化回数における1回の加減速で行う第二加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段で設定された速度変更前と速度変更後との速度差を演算し、前記速度差を前記変化回数で除して1回の加減速で行う制御指令速度量を演算し、かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記制御指令速度量分の変更を前記第二加減速時間内で行い、前記制御指令速度量分の変更を前記変化回数分行うことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、スタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、四つの速度モードの中から最適な速度制御モードを選択することができるので、繊維搬送ロール間における速度比を保持しつつ、速度モードの変更を行うことができる。これにより、減速制御を行う場合には、糸のたるみによる繊維搬送ロールへの繊維糸の巻き付きを大幅に減らすことができる。
【0015】
また、繊維搬送ロールに繊維糸が巻き付いたトラブルが発生したときには、トラブルが発生している繊維搬送ロールを、現在の運転状態よりも低速状態とした運転状態に移行させることができる。そのため、トラブルが発生している繊維搬送ロールに接近してトラブル処理を行うことができ、作業者への安全性が大幅に向上する。
【0016】
しかも、トラブルが発生している繊維搬送ロールの上流側に配されている第一の繊維搬送ロール又は第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配されている全ての繊維搬送ロールの搬送速度を、第一の繊維搬送ロール又は第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度と同じ搬送速度に減速させることができる。これによって、第一の繊維搬送ロール又は第二の繊維搬送ロールよりも下流側において糸のたるみを防止した状態で、トラブル処理を行うことができる。
【0017】
更に、繊維搬送ロールに対する搬送速度の制御を自動化することができるので、スタートアップ時において、各繊維搬送ロール間での搬送速度比の確認作業を軽減することができ、各繊維搬送ロールへの糸掛け作業に専念することができる。
【0018】
加減速制御としては、低速モード又は中速モードと任意モードとの間において設定速度を変更する制御を行うときには、制御指令値の差分と設定可能に構成したステップ間隔及び一つのステップ間隔において行う第一加減速時間を用いて制御を行うことができる。
【0019】
これにより、最適な状態で速度モードの変更を行うことができ、スタートアップ時の搬送速度制御やトラブル発生時及びトラブル解消後の搬送速度制御を簡単に、しかも、各繊維搬送ロール間での搬送速度比が最適になるように制御することができる。
【0020】
また、加減速制御としては、低速モードと中速モードと高速モードとの間において設定速度を変更する制御を行うときには、変更される搬送速度差が大きくなってしまう可能性が高くなる。そのため、速度変更を変化回数として示した複数の回数に分けて速度変更を行うことができる。
【0021】
このとき、一回の加減速で行う制御指令速度量としては、変更される搬送速度差を変化回数で除した値を制御指令速度量分として演算することができる。そして、第二加減速時間内において、制御指令速度量分の加減速制御を行うことができる。しかも、作業者の要
求に応じて変化回数を設定することができるので、一回で行う制御指令速度量分の大きさを任意に設定することができ、作業の安全性を確保した上で滑らかな速度変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】繊維機械における概略の工程説明図である。(実施例)
【図2】各速度モードの速度設定の概要を示す説明図である。(実施例)
【図3】各速度モード間の移行構成を示す説明図である。(実施例)
【図4】操作パネルでのメニュー画面を示す図である。(実施例)
【図5】速度モード変更による速度変更パターンの選択フローを示す図である。(実施例)
【図6】速度制御パターン1における制御フローを示す図である。(実施例)
【図7】速度制御パターン1における加速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【図8】速度制御パターン1における減速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【図9】速度制御パターン2における制御フローを示す図である。(実施例)
【図10】速度制御パターン2における加速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【図11】速度制御パターン2における減速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明の繊維機械における作業工程としては、以下で説明する作業工程以外であっても、繊維糸を搬送する複数の繊維搬送ロールを有する構成であれば、それらの構成に対して本願発明を好適に適用することができるものである。
【実施例】
【0024】
図1には、繊維機械における複数の作業工程において配されている複数の繊維搬送ロールの配置構成例を示している。尚、本願発明に係わる繊維機械に配される複数の作業工程としては、図1に示す構成に限定されるものではなく、図1に示した複数の作業工程において、工程の変更や工程の削除や追加等、適宜の配置構成で繊維機械を構成しておくことができる。また、各作業工程内における繊維搬送ロールの配置構成についても、図1に示す構成に限定されるものではなく、他の配置構成としておくことができる。
【0025】
図1を用いて、アクリル繊維トウTの製造工程例を説明する。図1(a)に示すように、重合反応釜1から取り出し重合停止剤を添加した重合体の水溶液から水分を取り除き、原液調整部11において溶剤に溶解させて紡糸原液を調製する。紡糸原液を凝固浴槽2に配設された紡糸口金3を通して凝固液中に押出し、多数の繊維群から構成される繊維トウ状に凝固させる。凝固液を出たアクリル繊維トウTは、延伸工程7において延伸処理が施される。その後、所定の速度によって洗浄工程4に導入され、熱水によって繊維表面に付着したり残存したりする溶剤を除去する洗浄が行われる。
【0026】
脱溶剤が終了したアクリル繊維トウTは、続いて延伸工程5、8内に導入される。延伸工程5では、熱水中を通されて4〜5倍程度の延伸が行われる。延伸後のアクリル繊維トウTは、補助洗浄槽6において再び最終洗浄が施され、油剤を付与され、次の熱緩和処理工程9に送られる。尚、図1(a)に示したCは、図1(b)に示したCに接続している。
【0027】
図1(b)に示すように、熱緩和処理工程9から送出されたアクリル繊維トウTは、乾燥ロール10aが並列する乾燥工程10に連続して導入されて乾燥させられる。
このように繊維機械30における各工程及び各工程間には、各種の繊維搬送ロールが複数
配設されており、これらの繊維搬送ロールによって繊維糸の搬送を行っている。これらの各繊維搬送ロールにおける搬送速度としては、繊維糸が流れる上流側から下流側に配設されるのに従って、同速以上の速度に設定されている。
【0028】
そして、スタートアップ時や繊維糸を連続的に製造中に不安定な運転状態が発生したとき、不安定な運転状態が解消したときには、各繊維搬送ロールの搬送速度に対して加減速制御を行って、円滑なスタートアップやトラブル解消を行うことになる。
【0029】
本願発明における円滑なスタートアップやトラブル解消を行うための構成について、以下において説明する。繊維機械30には、図1を用いて説明したように、複数の繊維搬送ロールが配設されており、これらの各繊維搬送ロールの駆動を制御するため、図示せぬ制御手段が設けられている。
【0030】
本願発明の繊維機械30には、各繊維搬送ロールの搬送速度を変更するための速度モードを選択するための図示せぬ搬送速度設定手段が設けられている。制御手段は、搬送速度設定手段からの制御指令値に応じて各繊維搬送ロールの搬送速度を制御することになる。
【0031】
尚、本願発明における繊維搬送ロールは、モータ等によってその搬送速度が制御されている駆動ロールであって、繊維糸の走行に伴って供回り的に回転する従動ロールを示しているものではない。
【0032】
搬送速度設定手段では、四つの速度モードを選択することができる。四つの速度モードとしては、高速モード、中速モード、低速モード及び任意モードの四つのモードがある。高速モードは、繊維機械30に配設された各繊維搬送ロールをそれぞれ予め設定した定常時の搬送速度に設定するモードであり、繊維機械30における繊維糸、即ち、繊維トウを生産する運転モードである。
【0033】
中速モードは、繊維機械30に配設された全ての繊維搬送ロールの中で予め第一の繊維搬送ロールを設定しておき、第一の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての繊維搬送ロールにおける搬送速度を、第一の繊維搬送ロールにおける搬送速度と同じ搬送速度となるように設定するモードである。この中速モードは、スタートアップ時やトラブル処理時に選択される運転モードである。
【0034】
低速モードは、繊維機械30に配設された全ての繊維搬送ロールの中で第一の繊維搬送ロールよりも予め上流側に第二の繊維搬送ロールを設定しておき、第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての繊維搬送ロールにおける搬送速度を、第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度と同じ搬送速度となるように設定するモードである。この低速モードは、スタートアップ時に選択される運転モードである。
【0035】
任意モードは、繊維機械30に配設された前記各繊維搬送ロールの搬送速度に対して、全て同じ所定の設定倍率を掛けた搬送速度にそれぞれ一括的に変更することができるモードである。このときの所定の設定倍率は、任意に変更可能に構成されている。この任意モードは、トラブル処理時に選択される運転モードである。
【0036】
図2を用いて各速度モードに基づく搬送速度がどのように設定されるのかを説明する。図2に記載したモータ1〜モータNは、繊維機械30に配設された全ての繊維搬送ロールを駆動する駆動モータを代表して示しており、繊維糸の搬送方向において上流側に配されるモータから順番に番号が一つずつ増えるようにモータの番号を付与している。モータNは、最下流側に配された繊維搬送ロールを駆動する駆動モータを示している。
【0037】
中速モードでの制御を行うときのために、第一の繊維搬送ロールを駆動するモータとして、モータ6を設定しており、第二の繊維搬送ロールを駆動するモータとして、モータ3を例示している。SV値は、定常時における搬送速度を示しており、各繊維搬送ロールに対してそれぞれ予め設定されている。そのため、例えば、モータ2におけるSV値は、モータ1におけるSV値以上の値として設定されている。同様に、モータ3以降におけるそれぞれのSV値は、それより前に配されているモータのSV値以上の値として設定されている。
【0038】
搬送速度設定手段において高速モードが選択されると、モータ1〜モータNをそれぞれ予め設定されているSV値に設定することができる。搬送速度設定手段において中速モードが選択されると、モータ1〜モータ6はそれぞれ予め設定されているSV値に設定されるが、モータ6の下流側に配されているモータ7及びモータNは、モータ6と同速の搬送速度に低減されることになる。
【0039】
中速モードを選択することによって、例えば、モータ7において発生したトラブルのトラブル処理を、モータ7における搬送速度をモータ6の搬送速度まで低減させた状態で行うことができる。しかも、このとき、モータ7の下流側に配されているモータNも、モータ6と同速の搬送速度に低減されることになるので、モータ6で駆動される繊維搬送ローラからモータNで駆動される繊維搬送ローラまでの間において搬送速度に速度差が生じることがない。
【0040】
そのため、モータ6で駆動される繊維搬送ローラとモータNで駆動される繊維搬送ローラとの間での速度差によって、繊維糸がモータNに巻き付いたり、繊維糸がモータNによる駆動で高速状態で引張られてしまい、モータ7によって駆動される繊維搬送ローラとモータNによって駆動される繊維搬送ローラとの間で切断してしまうのを防止しておくことができる。
【0041】
トラブル等の解消後、中速モードから高速モードに変更されると、モータ7及びモータNは、それぞれのSV値に復帰することができ、繊維機械を通常の定常状態で運転することができる。
【0042】
搬送速度設定手段によって低速モードが選択されると、モータ1〜モータ3はそれぞれ予め設定されているSV値に設定されるが、モータ3の下流側に配されているモータ4〜モータNで駆動される各繊維搬送ローラは、モータ3で駆動される繊維搬送ローラと同速の搬送速度に低減されることになる。
【0043】
低速モードを選択することによって、例えば、モータ5で駆動される繊維搬送ローラにおいて発生したトラブルを、モータ5で駆動される繊維搬送ローラの搬送速度をモータ3で駆動される繊維搬送ローラの搬送速度まで低減させた状態で行うことができる。また、スタートアップ時での繊維糸の先通しを行うことができる。
【0044】
しかも、このとき、モータ4〜モータNでそれぞれ駆動される繊維搬送ローラもモータ3で駆動される繊維搬送ローラと同速の搬送速度に低減されることになるので、モータ3で駆動される繊維搬送ローラからモータNで駆動される繊維搬送ローラまでの間に速度差が生じることがない。そのため、繊維糸がモータNで駆動される繊維搬送ローラに巻き付いたり、繊維糸がモータ5で駆動される繊維搬送ローラの下流側において高速状態で引張られて、モータ5によって駆動される繊維搬送ローラの下流側において切断してしまうなどの二次的なトラブルの発生を防止しておくことができる。
【0045】
トラブル等の解消後、低速モードから中速モードに変更されると、モータ4〜モータ6はそれぞれのSV値に復帰することができ、モータ7で駆動される繊維搬送ローラ及びモータN
で駆動される繊維搬送ローラは、モータ6で駆動される繊維搬送ローラと同速の搬送速度にすることができる。トラブル等の解消後、低速モードから高速モードに変更されると、或いは、低速モードから中速モードに変更された後に更に高速モードに変更されると、モータ4〜モータNをそれぞれのSV値に復帰させることができる。そして、モータ4〜モータNで駆動される各繊維搬送ローラを通常の定常状態で運転させることができる。
【0046】
四つの速度モード間での移行関係は、図3で示す3パターンの関係として構成されている。図3において、点線で示した(1)の関係は、通常の定常状態で繊維機械30を運転するときの関係である。即ち、低速モード、中速モード、高速モード、任意モードの何れかの速度モードと、停止状態との間で行われる速度モードの移行関係を示している。点線で示した(1)の関係では、停止状態への変更及び停止状態から各四つの速度モードへの移行は、予め設定された加減速時間を基に速度変更が実行されることになる。
【0047】
一点鎖線で示した(2)の関係は、低速モード又は中速モードと任意モードとの間で行われる速度モードの移行関係を示している。以下においては、一点鎖線で示した(2)の関係で速度変更の制御を行う場合を、速度制御パターン1として称することにする。実線で示した(3)の関係は、低速モードと中速モードと高速モードとの間で行われる速度モードの移行関係を示している。以下においては、実線で示した(3)の関係で速度変更の制御を行う場合を、速度制御パターン2として称することにする。
【0048】
搬送速度設定手段は、図4に示すようなタッチパネル31を備えており、タッチパネル31はタッチパネル式の入力画面として構成されている。タッチパネル31上には、タッチパネル31における表示画面を切替えるための「操作画面操作部32」が設けられている。また、モータ1〜モータNの回転数を設定する「回転数操作部37」、モータ1〜モータNの回転状態をモニターする「モニター操作部38」、モータ1〜モータNにおける異常を確認する「異常確認操作部39」、タッチパネル31上で行った設定を確定するための「設定操作部40」、メニューを選択表示するための「メニュー操作部41」がそれぞれ設けられている。尚、タッチパネル式の入力表示方式に代えて、押しボタン式等を用いた入力方式と、表示装置とを組み合わせた構成としておくこともできる。
【0049】
また、四つのモードから高速モードを選択する「高速モード操作部33」、中速モードを選択する「中速モード操作部34」、低速モードを選択する「低速モード操作部35」及び任意モードを選択する「任意モード操作部36」が設けられている。
【0050】
「任意モード操作部36」を操作して任意モードを選択したときには、一括的に変更するときの設定倍率を設定倍率表示部42に表示させることができる。設定倍率表示部42に表示される設定倍率は、100倍にした数値、即ち、%で表される数値を表示することができ、表示させる数値は、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを操作することによって表示させることができる。
【0051】
数値変更操作部43aを操作すると、設定倍率を10%増加させることができる。数値変更操作部43bを操作すると、設定倍率を10%減少させることができる。また、数値変更操作部44aを操作すると、設定倍率を1%増加させることができる。数値変更操作部44bを操作すると、設定倍率を1%減少させることができる。
【0052】
尚、数値変更操作部43a、43b,44a、44b におけるスイッチ構成として、連続的に操作すと数値が連続的に増加又は減少し、一回づつ操作したときには一つずつ増加又は減少するように構成としておくこともできる。
【0053】
加減速操作部45は、第一加減速時間及び第二加減速時間を設定するための操作部である
。加減速操作部45を操作した後に、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを操作することによって、加減速操作部45に第一及び第二加減速時間を表示させることができる。
【0054】
第一及び第二加減速時間としては、分単位又は秒単位で設定することができ、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作によって加減速時間を設定することができる。必要に応じて、時間単位の設定も行えるように構成しておくこともできる。
【0055】
分単位での設定は、加減速操作部45を操作した後に、数値変更操作部43aで示される場所を操作することにより、第一及び第二加減速時間を1分ずつ増加させることができ、数値変更操作部43bを操作すると、第一及び第二加減速時間を1分ずつ減少させることができる。また、秒単位での設定は、数値変更操作部44aを操作すると、第一及び第二加減速時間を1秒ずつ増加させることができる。数値変更操作部44bを操作すると、第一及び第二加減速時間を1秒ずつ減少させることができる。
【0056】
ステップ間隔操作部46は、上述した速度制御パターン1での制御を行うため、ステップ間隔を設定する操作部である。ステップ間隔は、制御手段から出力する制御指令値を設定倍率としたときに、低速モード又は中速モードにおいてモータに対する設定倍率を100%とし、選択した任意モードとして設定した設定倍率との間において、一回のステップにおいて増減させる制御指令値の変化量、即ち、制御指令値量として設定されている。
【0057】
ステップ間隔操作部46を操作した後に、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを操作することによって、ステップ間隔操作部46にステップ間隔を表示させて設定することができる。このときの数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作では、数値変更操作部43aを操作すると、ステップ間隔を10ずつ、即ち、10%ずつ増加させることができ、数値変更操作部43bを操作すると、ステップ間隔を10ずつ、即ち、10%ずつ減少させることができる。また、数値変更操作部44aを操作すると、ステップ間隔を1ずつ、即ち、1%ずつ増加させることができる。数値変更操作部44bを操作すると、ステップ間隔を1ずつ、即ち、1%ずつ減少させることができる。
【0058】
即ち、ステップ間隔操作部46を操作してステップ間隔を設定することにより、低速モード又は中速モードにおける100%の設定倍率と、選択した任意モードにおける設定倍率との差を、ステップ間隔として設定した%分で増減させていくことができ、変更後の速度モードにおける設定倍率に変更させることができる。
【0059】
変化回数操作部47は、搬送速度の速度変更を何回かに分けて行えるようにした操作部であって、変化回数を設定するための操作部である。変化回数操作部47を操作して変化回数を設定することで、変更される搬送速度差が大きい場合であっても、速度変更を一回で行わずに、変化回数として記載した複数の回数に分けて速度変更を行うことができる。
【0060】
変化回数としては、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作によって変化回数を設定することができる。このときの数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作では、数値変更操作部43aを操作すると、変化回数を10ずつ増加させることができ、数値変更操作部43bで示される場所を操作すると、変化回数を10ずつ減少させることができる。また、数値変更操作部44aで示される場所を操作すると、変化回数を1ずつ増加させることができる。数値変更操作部44bで示される場所を操作すると、変化回数を1ずつ減少させることができる。
【0061】
そして、変化回数操作部47を操作して変化回数を設定することにより、低速モードと中速モードと高速モード間において速度変更される速度差を、変化回数で除すことによって、1回の加減速で行う制御指令速度量を求めることができる。求めた制御指令速度量分の
変更を前記変化回数分行うことで、変更後の速度モードに変更させることができる。
【0062】
図5には、四つの速度モード間での速度モード変更による速度変更パターンの選択フローを示している。図示せぬ搬送速度設定手段において速度モードの変更が開始されると、図示せぬ制御手段は、ステップS1において現状の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、任意モードであると判断したときには、ステップS2に移行し、任意モードではないと判断したときには、ステップS3に移行する。
【0063】
ステップS2では、速度制御パターン1の制御を開始する。即ち、図3において、一点鎖線で示した(2)の関係で示されている、低速モード又は中速モードと任意モードとの間で行われる速度モードの移行が行われる。ステップS2での制御が行われると、速度モードの変更処理は終了する。
【0064】
ステップS3では、現状の速度モードが、高速モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、高速モードであると判断したときには、ステップS4に移行し、高速モードではないと判断したときには、ステップS6に移行する。
【0065】
ステップS4では、変更先の速度モードが中速モードか低速モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、中速モード又は低速モードであると判断したときには、ステップS5移行し、中速モード又は低速モードではないと判断したときには、ステップS9に移行する。
【0066】
ステップS5では、速度制御パターン2の制御を開始する。即ち、図3において、実線で示した(3)の関係で示されている、低速モードと中速モードと高速モードとの間での速度モードの移行が行われる。ステップS5での制御が行われると、速度モードの変更処理は終了する。
【0067】
ステップS6では、現状の速度モードが、中速モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、中速モードであると判断したときには、ステップS7に移行し、中速モードではないと判断したときには、ステップS10に移行する。
【0068】
ステップS7では、変更先の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、任意モードであると判断したときには、ステップS2に移行し、ステップS2以降の制御を行なう。ステップS7において、変更先の速度モードが、任意モードではないと判断したときには、ステップS8に移行する。
【0069】
ステップS8では、変更先の速度モードが高速モードか低速モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、高速モード又は低速モードであると判断したときには、ステップS5に移行し、ステップS5以降の制御を行なう。ステップS8において、変更先の速度モードが、高速モード又は低速モードではないと判断したときには、ステップS9に移行する。ステップS9では、通常の運転制御を行い、モード変更制御を終了する。
【0070】
ステップS10では、現状の速度モードが、低速モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、低速モードであると判断したときには、ステップS11に移行する。現状のモードとしては、四つの速度モードしかないので、仮にステップS10において、現状の速度モードが、低速モードではないと判断したときには、異常等を知らせる処理を行わせることもできる。
【0071】
ステップS11では、変更先の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、任意モードであると判断したときには、ステップS2に移行し、ステ
ップS2以降の制御を行なう。ステップS11において、変更先の速度モードが、任意モードではないと判断したときには、ステップS12に移行する。
【0072】
ステップS12では、変更先の速度モードが高速モードか中速モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、高速モード又は中速モードであると判断したときには、ステップS5に移行し、ステップS5以降の制御を行なう。ステップS12において、変更先の速度モードが、高速モード又は中速モードではないと判断したときには、ステップS9に移行する。ステップS9では、通常の運転制御を行い、モード変更制御を終了する。
このように、速度モードの変更が行われたときには、図5で示される制御フローが開始される。
【0073】
次に、図6〜図8を用いて、速度制御パターン1について説明する。図6は、速度制御パターン1における制御フローを示しており、図7は、速度制御パターン1における加速時の制御指令値の変化状態を示している。また、図8は、速度制御パターン1における減速時の制御指令値の変化状態を示している。
【0074】
図示せぬ搬送速度設定手段において、速度制御パターン1に基づく速度モードの変更が開始されると、図示せぬ制御手段は、ステップS21において、図4に示したタッチパネル31の加減速操作部45で設定された第一加減速時間TM、ステップ間隔操作部46で設定されたステップ間隔を読み取る。
【0075】
ステップS22では、低速モード又は中速モードにおいて対応するモータのSV値に対して設定する設定倍率を100%としたとき、選択した任意モードとして設定した設定倍率との差を変化率として求める。このとき、搬送速度設定手段から制御手段に出力される制御指令値としては、設定倍率の値が用いられている。
【0076】
ステップS23では、速度モードの変更前の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。速度モードの変更前の速度モードが、任意モードであるときには、ステップS24に移行し、任意モードでないときには、ステップS28に移行する。即ち、速度モードの変更前の速度モードが任意モードであるときには、速度モードの変更によって加速制御が行われ、速度モードの変更前の速度モードが任意モードではないときには、速度モードの変更によって減速制御が行われることになる。
【0077】
ステップS24では、変更後の設定倍率と変更前の設定倍率との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化率で除して、速度モードを変更するときの一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値の変化量、即ち、一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値量を設定する。そして、一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値の変化量を変更前の設定倍率に加えた値を用いて、対応するモータに対する加速制御を行う。
【0078】
ステップS25では、加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する加速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したときには、ステップS26に移行する。
【0079】
ステップS26では、制御指令値に制御指令値の変化量を加えた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS27では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御
指令値になるまで、ステップS25からステップS27の制御を繰り返すことになる。
【0080】
上記の加速制御を、具体的な数値を用いて図7を用いて説明すれば、例えば、任意モードにおける設定倍率を80%としたとき、変更後の設定倍率は、100%となる。変化率としては、100(%)−80(%)=20(%)が演算される。そして、例えば、変更前の繊維搬送ロールにおける搬送速度が、8.0m/minであったものを変更後には搬送速度を10.0m/minまで加速させる制御を行うことができる。
【0081】
この加速制御において、ステップ間隔を1(%)、第一加減速時間TMを2秒としたときには、最初の2秒間では、制御指令値として、変更前における80%の設定倍率にステップ間隔の1%を加えた81%の設定倍率となるように、即ち、8.1 m/minの搬送速度で対応する繊維搬送ロールが回転駆動されるように、対応するモータの回転速度を加速制御する。
【0082】
このとき8.1 m/minの搬送速度まで加速制御する時間は、2秒間である。2秒間で8.1 m/minの搬送速度まで加速制御すると、次に制御指令値である設定倍率を81%の設定倍率に1%のステップ間隔を加えて、82%の設定倍率とする。そして、次の2秒間の間に8.1 m/minの搬送速度が、8.2 m/minの搬送速度まで加速するように、対応する繊維搬送ロールを駆動するモータに対する駆動制御を行なう。これを順次繰り返すことにより、速度モードの変更を開始してから40秒経過した後には、変更後の搬送速度である10.0m/minまで加速させることができる。
【0083】
ステップS28では、変更前の設定倍率と変更後の設定倍率との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化率で除して、速度モードを変更するときの一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値の変化量を設定する。そして、一回のステップにおいて減速させるときの制御指令値の変化量を変更前の設定倍率から減じた値を用いて、対応するモータに対する加速制御を行う。
【0084】
ステップS29では、加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する減速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したときには、ステップS30に移行する。
【0085】
ステップS30では、制御指令値に制御指令値の変化量を減じた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS31では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御指令値になるまで、ステップS29からステップS31の制御を繰り返すことになる。
【0086】
上記の減速制御を、具体的な数値を用いて図8を用いて説明すれば、例えば、変更前の設定倍率を100%とし、変更後の任意モードにおける設定倍率を80%とした場合について説明する。変化率としては、100(%)−80(%)=20(%)が演算される。そして、例えば、変更前の繊維搬送ロールにおける搬送速度が、10.0m/minであったものを変更後には搬送速度を8.0m/minまで減速させる制御を行うことができる。
【0087】
この減速制御において、ステップ間隔を1(%)、第一加減速時間TMを1秒としたときには、最初の1秒間では、制御指令値として、変更前における100%の設定倍率にステップ間隔の1%を減じた99%の設定倍率となるように、即ち、9.9 m/minの搬送速度で対応する繊維搬送ロールが回転駆動されるように、対応するモータの回転速度を減速制御する。
【0088】
このとき9.9 m/minの搬送速度まで加速制御する第一加減速時間TMは、1秒間である。1秒間で9.9 m/minの搬送速度まで減速制御すると、次に制御指令値である設定倍率を99%の設定倍率に1%のステップ間隔を減じて、98%の設定倍率とする。そして、次の第一加減速時間TM である1秒間の間に9.9 m/minの搬送速度が、9.8 m/minの搬送速度まで減速するように、対応する繊維搬送ロールを駆動するモータに対する駆動制御を行なう。これを順次繰り返すことにより、速度モードの変更を開始してから20秒経過した後には、変更後の搬送速度である8.0m/minまで減速させることができる。
【0089】
図7、図8において、一つのステップ間隔において、加減速制御を行わない休止期間を設けているが、この休止期間は、必要に応じて適宜設定することができる。例えば、休止時間をゼロ時間として設定しておくこともできる。また、設定した第一加減速時間TMの長さに対応させて休止時間を設定しておくこともできる。
【0090】
次に、図9〜図11を用いて、速度制御パターン2について説明する。図9は、速度制御パターン2における制御フローを示しており、図10は、速度制御パターン2における加速時の制御指令値の変化状態を示している。また、図8は、速度制御パターン2における減速時の制御指令値の変化状態を示している。
【0091】
図示せぬ搬送速度設定手段において、速度制御パターン2に基づく速度モードの変更が開始されると、図示せぬ制御手段は、ステップS41において、図4に示したタッチパネル31の加減速操作部45で設定された第二加減速時間TM、変化回数操作部47で設定された変化回数を読み取る。
【0092】
ステップS42では、加速制御を行うのか減速制御を行うのか否かの判断を行う。即ち、制御対象となる繊維搬送ロールの搬送速度として、変更前のモータに対して出力される制御指令値と、変更後の当該モータに対して出力される変更後の制御指令値との大小関係を判断する。
【0093】
変更前のモータに対して出力される制御指令値が変更後の制御指令値よりも小さいときには、加速制御が行われることになる。逆に、変更前のモータに対して出力される制御指令値が変更後の制御指令値よりも大きいときには、減速制御が行われることになる。
ステップS42において、加速制御が行われると判断したときには、ステップS43に移行し、減速制御が行われると判断したときには、ステップS47に移行する。
【0094】
ステップS43では、変更後の制御指令値と変更前の制御指令値との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化回数で除して、変化回数1回分で行う制御指令値の変化量を設定する。そして、制御指令値の変化量を変更前の制御指令値に加えた値を用いて、対応するモータに対する加速制御を行う。
【0095】
ステップS44では、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する加速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したときには、ステップS45に移行する。
【0096】
ステップS45では、制御指令値に制御指令値の変化量を加えた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS46では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御指令値になるまで、ステップS44からステップS46の制御を繰り返すことになる。
【0097】
上記の加速制御を、具体的な数値を用いて図10を用いて説明する。例えば、中速モードにおける搬送速度が20.0m/minであった状態を高速モードでの搬送速度30.0m/minまで加速させる場合について説明する。このとき、変化回数操作部47で設定された変化回数が「3」として設定され、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが2秒として設定されているものとする。尚、このとき制御指令値としては、搬送速度が用いられることになる。
【0098】
速度モードを変更した後の搬送速度30.0m/minは、変更前の搬送速度20.0m/minよりも高速であるので、この場合には、加速制御が行われることになる。そして、制御指令値の差として、30.0(m/min)−20.0(m/min)=10.0(m/min)が演算される。また制御指令値の変化量として、10.0(m/min)/3=3.3(m/min/回数)が演算される。
【0099】
この加速制御において、最初の第二加減速時間TM である2秒間では、制御指令値として、変更前における搬送速度20.0m/min に制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を加えた23.3 m/minが出力される。第二加減速時間TM の2秒間で23.3 m/minの搬送速度まで加速制御すると、次の回における制御指令値として、23.3 m/minに制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を加えた26.6 m/minを設定して、この26.6 m/minの制御指令値で第二加減速時間TMの間での加速制御を行う。これをもう一度繰り返すことにより、速度モードの変更制御を開始してから6秒経過した後には、変更後の搬送速度である30.0m/minまで加速させることができる。
【0100】
ステップS47では、変更前の制御指令値と変更後の制御指令値との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化回数で除して、変化回数1回分で行う制御指令値の変化を設定する。そして、制御指令値の変化量を変更前の制御指令値から減じた値を用いて、対応するモータに対する減速制御を行う。
【0101】
ステップS48では、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する減速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したときには、ステップS49に移行する。
【0102】
ステップS49では、制御指令値から制御指令値の変化量を減じた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS50では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御指令値になるまで、ステップS47からステップS50の制御を繰り返すことになる。
【0103】
上記の減速制御を、具体的な数値を用いて図11を用いて説明する。例えば、高速モードにおける搬送速度が30.0m/minであった状態を中速モードでの搬送速度20.0m/minまで減速させる場合について説明する。このとき、変化回数操作部47で設定された変化回数が「3」として設定され、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが1秒として設定されているものとする。尚、このとき制御指令値としては、搬送速度が用いられることになる。
【0104】
速度モードを変更した後の搬送速度20.0m/minは、変更前の搬送速度30.0m/minよりも低速であるので、この場合には、減速制御が行われることになる。そして、制御指令値の差として、30.0(m/min)−20.0(m/min)=10.0(m/min)が演算される。また制御指令値の変化量として、10.0(m/min)/3=3.3(m/min/回数)が演算される。
【0105】
この減速制御において、最初の第二加減速時間TM である1秒間では、制御指令値として、変更前における搬送速度30.0m/min に制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を減じた26.6 m/minが出力される。第二加減速時間TM の1秒間で26.6 m/minの搬送速度まで加速制御すると、次の回における制御指令値として、26.6 m/minに制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を減じた23.3 m/minを設定して、この23.3 m/minの制御指令値で減速制御を行う。これをもう一度繰り返すことにより、速度モードの変更制御を開始してから3秒経過した後には、変更後の搬送速度である20.0m/minまで減速させることができる。
【0106】
図10、図11において、一回で行う加減速制御において、速度の加減を行わない休止期間を設けているが、この休止期間は、必要に応じて適宜設定することができる。例えば、休止時間をゼロ時間として設定しておくこともできる。また、設定した第二加減速時間TMの長さに対応させて休止時間を設定しておくこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本願発明は、複数の搬送駆動ローラを用いて連続生産を行う製造ラインにおいて、搬送駆動ローラのステップアップ時やトラブル発生時やトラブル解消時に搬送駆動ローラの駆動を加減速制御する場合に、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
2・・・凝固浴槽、
4・・・洗浄工程、
5・・・延伸工程、
7・・・延伸工程、
8・・・延伸工程、
9・・・熱緩和処理工程、
10・・・乾燥工程、
30・・・繊維機械、
31・・・タッチパネル、
33・・・高速モード操作部、
34・・・中速モード操作部、
35・・・低速モード操作部、
36・・・任意モード操作部、
42・・・設定倍率表示部、
45・・・加減速操作部、
46・・・ステップ間隔操作部、
47・・・変化回数操作部、
T・・・アクリル繊維トウ。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、繊維糸を連続的に製造する繊維機械において、スタートアップ時やトラブル発生時に前記繊維糸を搬送する繊維搬送ロールの搬送速度を制御可能にした繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
紡糸された繊維糸は、例えば、第1次延伸工程、洗浄工程、第2次延伸工程、洗浄工程、乾燥工程、交絡工程、成形工程、梱包工程等の複数の工程を上流側から下流側に向かって連続的に搬送されることで、製品として完成することになる。各工程内においても、また、各工程間を繋ぐ搬送路においても、それぞれ複数の繊維搬送ロールが用いられている。
【0003】
各繊維搬送ロールにおける搬送速度は、製造工程全体において全て一様の搬送速度として構成されておらず、搬送される繊維糸の上流側から下流側に配されるのに従って、繊維搬送ロールにおける搬送速度が加速するように構成されている。
繊維糸の連続製造を開始するスタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、各繊維搬送ロールの搬送速度に対して加減速制御を行う必要がある。
【0004】
例えば、連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、常に各繊維搬送ロールに対する減速制御を一律に行うと、繊維糸の製造効率が低下してしまうことになる。そして、スタートアップ時や減速制御を行った状態から通常の高速制御状態に一気に変更すると、搬送速度の加速段階において各工程間での搬送速度にズレが生じてしまい、糸のたるみや繊維搬送ロールへの繊維糸の巻き付きや、繊維搬送ロール間での繊維糸の切断等のトラブルが発生してしまうことになる。
【0005】
しかしながら、従来の繊維機械においては、連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、作業員は通常の運転速度でのトラブル処理や対応する繊維搬送ローラを減速させてトラブル処理を行っていた。また、スタートアップには、全ての繊維搬送ロールにおける搬送速度を低速状態にして、繊維糸の先通しを行っていた。このような状態でのトラブル処理やスタートアップ処理を行うと、作業時間に長時間を必要とする。また、作業員に対する安全性を確保するためには、様々な安全装置を配設しておかなければならなかった。
【0006】
繊維機械としては、連続乾燥装置(特許文献1参照)やアクリル繊維の製造方法(特許文献2参照)などにおいて、複数の製造工程を示した構成が開示されているが、トラブル処理やスタートアップ処理を行うときに、各繊維搬送ロールの搬送速度に対して加減速制御を行うことについての開示は行われていない。
【0007】
特許文献1に記載された連続乾燥装置では、製造工程において毛羽(糸切れ)の発生を防ぐため、乾燥室に導入する繊維束に撚りを入れ、乾燥中の繊維束の張力が0.01〜0.08g重/dtexの範囲内となるように制御して、連続乾燥させる構成となっている。また、特許文献2に記載されたアクリル繊維の製造方法では、湿式紡糸後の洗浄や延伸工程において安定した工程通過性を実現するため、湿式紡糸後の洗浄工程及び/又は延伸工程の工程水に、界面活性剤2〜1000ppmを添加することによって、繊維切れやローラ巻付きを低減させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2004/088018号パンフレット
【特許文献2】特開2005−15939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、特許文献1や特許文献2には、スタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときに行う、各繊維搬送ロールの搬送速度に対する加減速制御については開示されていない。
【0010】
本願発明では、スタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときの運転状況に応じた速度制御パターンを提供し、トラブル処理やスタートアップ処理における作業性の向上と作業の安全性を高めることができる繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本願発明では、繊維糸を連続的に搬送する複数の繊維搬送ロールを上流側から下流側に沿って配し、前記繊維糸を連続的に製造する繊維機械において、
前記繊維機械は、全ての前記繊維搬送ロールに対してそれぞれの搬送速度を変更する搬送速度設定手段と前記各繊維搬送ロールに対して回転駆動制御を行う制御手段とを有し、前記各繊維搬送ロールは、定常時の搬送速度において、下流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度が、それよりも上流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度以上となるように構成され、
前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から一つの速度モードを選択的に設定可能に構成され、前記四つの速度モードは、前記各繊維搬送ロールをそれぞれ予め設定した定常時の搬送速度に設定する高速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で予め設定した第一の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第一の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する中速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で前記第一の繊維搬送ロールよりも予め上流側に設定した第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する低速モードと、前記各繊維搬送ロールの搬送速度に対して、全て同じ所定の設定倍率を掛けた搬送速度にそれぞれ一括的に変更する任意モードと、から構成され、
前記所定の設定倍率は、任意に変更可能に構成され、前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から選択した速度モードに対応した制御指令値を出力し、前記制御手段は、前記搬送速度設定手段からの前記制御指令値に応じて前記各繊維搬送ロールに対する回転駆動制御を行うことを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記搬送速度設定手段は、前記低速モード又は前記中速モードと前記任意モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするためのステップ間隔及び一つのステップ間隔において行う第一加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記ステップ間隔は、前記低速モード又は前記中速モードにおける前記制御指令値を100%としたとき、前記任意モードにおける前記制御指令値である前記設定倍率との間において、一回のステップで増減させる設定倍率の制御指令値量として構成され、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段による速度モードの変更によって設定された速度変更前と速度変更後における前記制御指令値の差分を演算し、かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記ステップ間隔と前記第一加減速時間と前記制御指令値の差分とによって、前記速度モードの変更を行うことを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本願発明では、前記搬送速度設定手段は、前記低速モードと前記中速モードと前記高速モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするための加減速を何回かに分けて行うための変化回数、前記変化回数における1回の加減速で行う第二加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段で設定された速度変更前と速度変更後との速度差を演算し、前記速度差を前記変化回数で除して1回の加減速で行う制御指令速度量を演算し、かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記制御指令速度量分の変更を前記第二加減速時間内で行い、前記制御指令速度量分の変更を前記変化回数分行うことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、スタートアップ時や連続製造中に不安定な運転状態が発生したときには、四つの速度モードの中から最適な速度制御モードを選択することができるので、繊維搬送ロール間における速度比を保持しつつ、速度モードの変更を行うことができる。これにより、減速制御を行う場合には、糸のたるみによる繊維搬送ロールへの繊維糸の巻き付きを大幅に減らすことができる。
【0015】
また、繊維搬送ロールに繊維糸が巻き付いたトラブルが発生したときには、トラブルが発生している繊維搬送ロールを、現在の運転状態よりも低速状態とした運転状態に移行させることができる。そのため、トラブルが発生している繊維搬送ロールに接近してトラブル処理を行うことができ、作業者への安全性が大幅に向上する。
【0016】
しかも、トラブルが発生している繊維搬送ロールの上流側に配されている第一の繊維搬送ロール又は第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配されている全ての繊維搬送ロールの搬送速度を、第一の繊維搬送ロール又は第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度と同じ搬送速度に減速させることができる。これによって、第一の繊維搬送ロール又は第二の繊維搬送ロールよりも下流側において糸のたるみを防止した状態で、トラブル処理を行うことができる。
【0017】
更に、繊維搬送ロールに対する搬送速度の制御を自動化することができるので、スタートアップ時において、各繊維搬送ロール間での搬送速度比の確認作業を軽減することができ、各繊維搬送ロールへの糸掛け作業に専念することができる。
【0018】
加減速制御としては、低速モード又は中速モードと任意モードとの間において設定速度を変更する制御を行うときには、制御指令値の差分と設定可能に構成したステップ間隔及び一つのステップ間隔において行う第一加減速時間を用いて制御を行うことができる。
【0019】
これにより、最適な状態で速度モードの変更を行うことができ、スタートアップ時の搬送速度制御やトラブル発生時及びトラブル解消後の搬送速度制御を簡単に、しかも、各繊維搬送ロール間での搬送速度比が最適になるように制御することができる。
【0020】
また、加減速制御としては、低速モードと中速モードと高速モードとの間において設定速度を変更する制御を行うときには、変更される搬送速度差が大きくなってしまう可能性が高くなる。そのため、速度変更を変化回数として示した複数の回数に分けて速度変更を行うことができる。
【0021】
このとき、一回の加減速で行う制御指令速度量としては、変更される搬送速度差を変化回数で除した値を制御指令速度量分として演算することができる。そして、第二加減速時間内において、制御指令速度量分の加減速制御を行うことができる。しかも、作業者の要
求に応じて変化回数を設定することができるので、一回で行う制御指令速度量分の大きさを任意に設定することができ、作業の安全性を確保した上で滑らかな速度変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】繊維機械における概略の工程説明図である。(実施例)
【図2】各速度モードの速度設定の概要を示す説明図である。(実施例)
【図3】各速度モード間の移行構成を示す説明図である。(実施例)
【図4】操作パネルでのメニュー画面を示す図である。(実施例)
【図5】速度モード変更による速度変更パターンの選択フローを示す図である。(実施例)
【図6】速度制御パターン1における制御フローを示す図である。(実施例)
【図7】速度制御パターン1における加速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【図8】速度制御パターン1における減速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【図9】速度制御パターン2における制御フローを示す図である。(実施例)
【図10】速度制御パターン2における加速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【図11】速度制御パターン2における減速時の指令値変化を示す図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明の繊維機械における作業工程としては、以下で説明する作業工程以外であっても、繊維糸を搬送する複数の繊維搬送ロールを有する構成であれば、それらの構成に対して本願発明を好適に適用することができるものである。
【実施例】
【0024】
図1には、繊維機械における複数の作業工程において配されている複数の繊維搬送ロールの配置構成例を示している。尚、本願発明に係わる繊維機械に配される複数の作業工程としては、図1に示す構成に限定されるものではなく、図1に示した複数の作業工程において、工程の変更や工程の削除や追加等、適宜の配置構成で繊維機械を構成しておくことができる。また、各作業工程内における繊維搬送ロールの配置構成についても、図1に示す構成に限定されるものではなく、他の配置構成としておくことができる。
【0025】
図1を用いて、アクリル繊維トウTの製造工程例を説明する。図1(a)に示すように、重合反応釜1から取り出し重合停止剤を添加した重合体の水溶液から水分を取り除き、原液調整部11において溶剤に溶解させて紡糸原液を調製する。紡糸原液を凝固浴槽2に配設された紡糸口金3を通して凝固液中に押出し、多数の繊維群から構成される繊維トウ状に凝固させる。凝固液を出たアクリル繊維トウTは、延伸工程7において延伸処理が施される。その後、所定の速度によって洗浄工程4に導入され、熱水によって繊維表面に付着したり残存したりする溶剤を除去する洗浄が行われる。
【0026】
脱溶剤が終了したアクリル繊維トウTは、続いて延伸工程5、8内に導入される。延伸工程5では、熱水中を通されて4〜5倍程度の延伸が行われる。延伸後のアクリル繊維トウTは、補助洗浄槽6において再び最終洗浄が施され、油剤を付与され、次の熱緩和処理工程9に送られる。尚、図1(a)に示したCは、図1(b)に示したCに接続している。
【0027】
図1(b)に示すように、熱緩和処理工程9から送出されたアクリル繊維トウTは、乾燥ロール10aが並列する乾燥工程10に連続して導入されて乾燥させられる。
このように繊維機械30における各工程及び各工程間には、各種の繊維搬送ロールが複数
配設されており、これらの繊維搬送ロールによって繊維糸の搬送を行っている。これらの各繊維搬送ロールにおける搬送速度としては、繊維糸が流れる上流側から下流側に配設されるのに従って、同速以上の速度に設定されている。
【0028】
そして、スタートアップ時や繊維糸を連続的に製造中に不安定な運転状態が発生したとき、不安定な運転状態が解消したときには、各繊維搬送ロールの搬送速度に対して加減速制御を行って、円滑なスタートアップやトラブル解消を行うことになる。
【0029】
本願発明における円滑なスタートアップやトラブル解消を行うための構成について、以下において説明する。繊維機械30には、図1を用いて説明したように、複数の繊維搬送ロールが配設されており、これらの各繊維搬送ロールの駆動を制御するため、図示せぬ制御手段が設けられている。
【0030】
本願発明の繊維機械30には、各繊維搬送ロールの搬送速度を変更するための速度モードを選択するための図示せぬ搬送速度設定手段が設けられている。制御手段は、搬送速度設定手段からの制御指令値に応じて各繊維搬送ロールの搬送速度を制御することになる。
【0031】
尚、本願発明における繊維搬送ロールは、モータ等によってその搬送速度が制御されている駆動ロールであって、繊維糸の走行に伴って供回り的に回転する従動ロールを示しているものではない。
【0032】
搬送速度設定手段では、四つの速度モードを選択することができる。四つの速度モードとしては、高速モード、中速モード、低速モード及び任意モードの四つのモードがある。高速モードは、繊維機械30に配設された各繊維搬送ロールをそれぞれ予め設定した定常時の搬送速度に設定するモードであり、繊維機械30における繊維糸、即ち、繊維トウを生産する運転モードである。
【0033】
中速モードは、繊維機械30に配設された全ての繊維搬送ロールの中で予め第一の繊維搬送ロールを設定しておき、第一の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての繊維搬送ロールにおける搬送速度を、第一の繊維搬送ロールにおける搬送速度と同じ搬送速度となるように設定するモードである。この中速モードは、スタートアップ時やトラブル処理時に選択される運転モードである。
【0034】
低速モードは、繊維機械30に配設された全ての繊維搬送ロールの中で第一の繊維搬送ロールよりも予め上流側に第二の繊維搬送ロールを設定しておき、第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての繊維搬送ロールにおける搬送速度を、第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度と同じ搬送速度となるように設定するモードである。この低速モードは、スタートアップ時に選択される運転モードである。
【0035】
任意モードは、繊維機械30に配設された前記各繊維搬送ロールの搬送速度に対して、全て同じ所定の設定倍率を掛けた搬送速度にそれぞれ一括的に変更することができるモードである。このときの所定の設定倍率は、任意に変更可能に構成されている。この任意モードは、トラブル処理時に選択される運転モードである。
【0036】
図2を用いて各速度モードに基づく搬送速度がどのように設定されるのかを説明する。図2に記載したモータ1〜モータNは、繊維機械30に配設された全ての繊維搬送ロールを駆動する駆動モータを代表して示しており、繊維糸の搬送方向において上流側に配されるモータから順番に番号が一つずつ増えるようにモータの番号を付与している。モータNは、最下流側に配された繊維搬送ロールを駆動する駆動モータを示している。
【0037】
中速モードでの制御を行うときのために、第一の繊維搬送ロールを駆動するモータとして、モータ6を設定しており、第二の繊維搬送ロールを駆動するモータとして、モータ3を例示している。SV値は、定常時における搬送速度を示しており、各繊維搬送ロールに対してそれぞれ予め設定されている。そのため、例えば、モータ2におけるSV値は、モータ1におけるSV値以上の値として設定されている。同様に、モータ3以降におけるそれぞれのSV値は、それより前に配されているモータのSV値以上の値として設定されている。
【0038】
搬送速度設定手段において高速モードが選択されると、モータ1〜モータNをそれぞれ予め設定されているSV値に設定することができる。搬送速度設定手段において中速モードが選択されると、モータ1〜モータ6はそれぞれ予め設定されているSV値に設定されるが、モータ6の下流側に配されているモータ7及びモータNは、モータ6と同速の搬送速度に低減されることになる。
【0039】
中速モードを選択することによって、例えば、モータ7において発生したトラブルのトラブル処理を、モータ7における搬送速度をモータ6の搬送速度まで低減させた状態で行うことができる。しかも、このとき、モータ7の下流側に配されているモータNも、モータ6と同速の搬送速度に低減されることになるので、モータ6で駆動される繊維搬送ローラからモータNで駆動される繊維搬送ローラまでの間において搬送速度に速度差が生じることがない。
【0040】
そのため、モータ6で駆動される繊維搬送ローラとモータNで駆動される繊維搬送ローラとの間での速度差によって、繊維糸がモータNに巻き付いたり、繊維糸がモータNによる駆動で高速状態で引張られてしまい、モータ7によって駆動される繊維搬送ローラとモータNによって駆動される繊維搬送ローラとの間で切断してしまうのを防止しておくことができる。
【0041】
トラブル等の解消後、中速モードから高速モードに変更されると、モータ7及びモータNは、それぞれのSV値に復帰することができ、繊維機械を通常の定常状態で運転することができる。
【0042】
搬送速度設定手段によって低速モードが選択されると、モータ1〜モータ3はそれぞれ予め設定されているSV値に設定されるが、モータ3の下流側に配されているモータ4〜モータNで駆動される各繊維搬送ローラは、モータ3で駆動される繊維搬送ローラと同速の搬送速度に低減されることになる。
【0043】
低速モードを選択することによって、例えば、モータ5で駆動される繊維搬送ローラにおいて発生したトラブルを、モータ5で駆動される繊維搬送ローラの搬送速度をモータ3で駆動される繊維搬送ローラの搬送速度まで低減させた状態で行うことができる。また、スタートアップ時での繊維糸の先通しを行うことができる。
【0044】
しかも、このとき、モータ4〜モータNでそれぞれ駆動される繊維搬送ローラもモータ3で駆動される繊維搬送ローラと同速の搬送速度に低減されることになるので、モータ3で駆動される繊維搬送ローラからモータNで駆動される繊維搬送ローラまでの間に速度差が生じることがない。そのため、繊維糸がモータNで駆動される繊維搬送ローラに巻き付いたり、繊維糸がモータ5で駆動される繊維搬送ローラの下流側において高速状態で引張られて、モータ5によって駆動される繊維搬送ローラの下流側において切断してしまうなどの二次的なトラブルの発生を防止しておくことができる。
【0045】
トラブル等の解消後、低速モードから中速モードに変更されると、モータ4〜モータ6はそれぞれのSV値に復帰することができ、モータ7で駆動される繊維搬送ローラ及びモータN
で駆動される繊維搬送ローラは、モータ6で駆動される繊維搬送ローラと同速の搬送速度にすることができる。トラブル等の解消後、低速モードから高速モードに変更されると、或いは、低速モードから中速モードに変更された後に更に高速モードに変更されると、モータ4〜モータNをそれぞれのSV値に復帰させることができる。そして、モータ4〜モータNで駆動される各繊維搬送ローラを通常の定常状態で運転させることができる。
【0046】
四つの速度モード間での移行関係は、図3で示す3パターンの関係として構成されている。図3において、点線で示した(1)の関係は、通常の定常状態で繊維機械30を運転するときの関係である。即ち、低速モード、中速モード、高速モード、任意モードの何れかの速度モードと、停止状態との間で行われる速度モードの移行関係を示している。点線で示した(1)の関係では、停止状態への変更及び停止状態から各四つの速度モードへの移行は、予め設定された加減速時間を基に速度変更が実行されることになる。
【0047】
一点鎖線で示した(2)の関係は、低速モード又は中速モードと任意モードとの間で行われる速度モードの移行関係を示している。以下においては、一点鎖線で示した(2)の関係で速度変更の制御を行う場合を、速度制御パターン1として称することにする。実線で示した(3)の関係は、低速モードと中速モードと高速モードとの間で行われる速度モードの移行関係を示している。以下においては、実線で示した(3)の関係で速度変更の制御を行う場合を、速度制御パターン2として称することにする。
【0048】
搬送速度設定手段は、図4に示すようなタッチパネル31を備えており、タッチパネル31はタッチパネル式の入力画面として構成されている。タッチパネル31上には、タッチパネル31における表示画面を切替えるための「操作画面操作部32」が設けられている。また、モータ1〜モータNの回転数を設定する「回転数操作部37」、モータ1〜モータNの回転状態をモニターする「モニター操作部38」、モータ1〜モータNにおける異常を確認する「異常確認操作部39」、タッチパネル31上で行った設定を確定するための「設定操作部40」、メニューを選択表示するための「メニュー操作部41」がそれぞれ設けられている。尚、タッチパネル式の入力表示方式に代えて、押しボタン式等を用いた入力方式と、表示装置とを組み合わせた構成としておくこともできる。
【0049】
また、四つのモードから高速モードを選択する「高速モード操作部33」、中速モードを選択する「中速モード操作部34」、低速モードを選択する「低速モード操作部35」及び任意モードを選択する「任意モード操作部36」が設けられている。
【0050】
「任意モード操作部36」を操作して任意モードを選択したときには、一括的に変更するときの設定倍率を設定倍率表示部42に表示させることができる。設定倍率表示部42に表示される設定倍率は、100倍にした数値、即ち、%で表される数値を表示することができ、表示させる数値は、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを操作することによって表示させることができる。
【0051】
数値変更操作部43aを操作すると、設定倍率を10%増加させることができる。数値変更操作部43bを操作すると、設定倍率を10%減少させることができる。また、数値変更操作部44aを操作すると、設定倍率を1%増加させることができる。数値変更操作部44bを操作すると、設定倍率を1%減少させることができる。
【0052】
尚、数値変更操作部43a、43b,44a、44b におけるスイッチ構成として、連続的に操作すと数値が連続的に増加又は減少し、一回づつ操作したときには一つずつ増加又は減少するように構成としておくこともできる。
【0053】
加減速操作部45は、第一加減速時間及び第二加減速時間を設定するための操作部である
。加減速操作部45を操作した後に、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを操作することによって、加減速操作部45に第一及び第二加減速時間を表示させることができる。
【0054】
第一及び第二加減速時間としては、分単位又は秒単位で設定することができ、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作によって加減速時間を設定することができる。必要に応じて、時間単位の設定も行えるように構成しておくこともできる。
【0055】
分単位での設定は、加減速操作部45を操作した後に、数値変更操作部43aで示される場所を操作することにより、第一及び第二加減速時間を1分ずつ増加させることができ、数値変更操作部43bを操作すると、第一及び第二加減速時間を1分ずつ減少させることができる。また、秒単位での設定は、数値変更操作部44aを操作すると、第一及び第二加減速時間を1秒ずつ増加させることができる。数値変更操作部44bを操作すると、第一及び第二加減速時間を1秒ずつ減少させることができる。
【0056】
ステップ間隔操作部46は、上述した速度制御パターン1での制御を行うため、ステップ間隔を設定する操作部である。ステップ間隔は、制御手段から出力する制御指令値を設定倍率としたときに、低速モード又は中速モードにおいてモータに対する設定倍率を100%とし、選択した任意モードとして設定した設定倍率との間において、一回のステップにおいて増減させる制御指令値の変化量、即ち、制御指令値量として設定されている。
【0057】
ステップ間隔操作部46を操作した後に、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを操作することによって、ステップ間隔操作部46にステップ間隔を表示させて設定することができる。このときの数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作では、数値変更操作部43aを操作すると、ステップ間隔を10ずつ、即ち、10%ずつ増加させることができ、数値変更操作部43bを操作すると、ステップ間隔を10ずつ、即ち、10%ずつ減少させることができる。また、数値変更操作部44aを操作すると、ステップ間隔を1ずつ、即ち、1%ずつ増加させることができる。数値変更操作部44bを操作すると、ステップ間隔を1ずつ、即ち、1%ずつ減少させることができる。
【0058】
即ち、ステップ間隔操作部46を操作してステップ間隔を設定することにより、低速モード又は中速モードにおける100%の設定倍率と、選択した任意モードにおける設定倍率との差を、ステップ間隔として設定した%分で増減させていくことができ、変更後の速度モードにおける設定倍率に変更させることができる。
【0059】
変化回数操作部47は、搬送速度の速度変更を何回かに分けて行えるようにした操作部であって、変化回数を設定するための操作部である。変化回数操作部47を操作して変化回数を設定することで、変更される搬送速度差が大きい場合であっても、速度変更を一回で行わずに、変化回数として記載した複数の回数に分けて速度変更を行うことができる。
【0060】
変化回数としては、数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作によって変化回数を設定することができる。このときの数値変更操作部43a、43b,44a、44bを用いた操作では、数値変更操作部43aを操作すると、変化回数を10ずつ増加させることができ、数値変更操作部43bで示される場所を操作すると、変化回数を10ずつ減少させることができる。また、数値変更操作部44aで示される場所を操作すると、変化回数を1ずつ増加させることができる。数値変更操作部44bで示される場所を操作すると、変化回数を1ずつ減少させることができる。
【0061】
そして、変化回数操作部47を操作して変化回数を設定することにより、低速モードと中速モードと高速モード間において速度変更される速度差を、変化回数で除すことによって、1回の加減速で行う制御指令速度量を求めることができる。求めた制御指令速度量分の
変更を前記変化回数分行うことで、変更後の速度モードに変更させることができる。
【0062】
図5には、四つの速度モード間での速度モード変更による速度変更パターンの選択フローを示している。図示せぬ搬送速度設定手段において速度モードの変更が開始されると、図示せぬ制御手段は、ステップS1において現状の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、任意モードであると判断したときには、ステップS2に移行し、任意モードではないと判断したときには、ステップS3に移行する。
【0063】
ステップS2では、速度制御パターン1の制御を開始する。即ち、図3において、一点鎖線で示した(2)の関係で示されている、低速モード又は中速モードと任意モードとの間で行われる速度モードの移行が行われる。ステップS2での制御が行われると、速度モードの変更処理は終了する。
【0064】
ステップS3では、現状の速度モードが、高速モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、高速モードであると判断したときには、ステップS4に移行し、高速モードではないと判断したときには、ステップS6に移行する。
【0065】
ステップS4では、変更先の速度モードが中速モードか低速モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、中速モード又は低速モードであると判断したときには、ステップS5移行し、中速モード又は低速モードではないと判断したときには、ステップS9に移行する。
【0066】
ステップS5では、速度制御パターン2の制御を開始する。即ち、図3において、実線で示した(3)の関係で示されている、低速モードと中速モードと高速モードとの間での速度モードの移行が行われる。ステップS5での制御が行われると、速度モードの変更処理は終了する。
【0067】
ステップS6では、現状の速度モードが、中速モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、中速モードであると判断したときには、ステップS7に移行し、中速モードではないと判断したときには、ステップS10に移行する。
【0068】
ステップS7では、変更先の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、任意モードであると判断したときには、ステップS2に移行し、ステップS2以降の制御を行なう。ステップS7において、変更先の速度モードが、任意モードではないと判断したときには、ステップS8に移行する。
【0069】
ステップS8では、変更先の速度モードが高速モードか低速モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、高速モード又は低速モードであると判断したときには、ステップS5に移行し、ステップS5以降の制御を行なう。ステップS8において、変更先の速度モードが、高速モード又は低速モードではないと判断したときには、ステップS9に移行する。ステップS9では、通常の運転制御を行い、モード変更制御を終了する。
【0070】
ステップS10では、現状の速度モードが、低速モードであるか否かの判断を行う。現状の速度モードが、低速モードであると判断したときには、ステップS11に移行する。現状のモードとしては、四つの速度モードしかないので、仮にステップS10において、現状の速度モードが、低速モードではないと判断したときには、異常等を知らせる処理を行わせることもできる。
【0071】
ステップS11では、変更先の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、任意モードであると判断したときには、ステップS2に移行し、ステ
ップS2以降の制御を行なう。ステップS11において、変更先の速度モードが、任意モードではないと判断したときには、ステップS12に移行する。
【0072】
ステップS12では、変更先の速度モードが高速モードか中速モードであるか否かの判断を行う。変更先の速度モードが、高速モード又は中速モードであると判断したときには、ステップS5に移行し、ステップS5以降の制御を行なう。ステップS12において、変更先の速度モードが、高速モード又は中速モードではないと判断したときには、ステップS9に移行する。ステップS9では、通常の運転制御を行い、モード変更制御を終了する。
このように、速度モードの変更が行われたときには、図5で示される制御フローが開始される。
【0073】
次に、図6〜図8を用いて、速度制御パターン1について説明する。図6は、速度制御パターン1における制御フローを示しており、図7は、速度制御パターン1における加速時の制御指令値の変化状態を示している。また、図8は、速度制御パターン1における減速時の制御指令値の変化状態を示している。
【0074】
図示せぬ搬送速度設定手段において、速度制御パターン1に基づく速度モードの変更が開始されると、図示せぬ制御手段は、ステップS21において、図4に示したタッチパネル31の加減速操作部45で設定された第一加減速時間TM、ステップ間隔操作部46で設定されたステップ間隔を読み取る。
【0075】
ステップS22では、低速モード又は中速モードにおいて対応するモータのSV値に対して設定する設定倍率を100%としたとき、選択した任意モードとして設定した設定倍率との差を変化率として求める。このとき、搬送速度設定手段から制御手段に出力される制御指令値としては、設定倍率の値が用いられている。
【0076】
ステップS23では、速度モードの変更前の速度モードが、任意モードであるか否かの判断を行う。速度モードの変更前の速度モードが、任意モードであるときには、ステップS24に移行し、任意モードでないときには、ステップS28に移行する。即ち、速度モードの変更前の速度モードが任意モードであるときには、速度モードの変更によって加速制御が行われ、速度モードの変更前の速度モードが任意モードではないときには、速度モードの変更によって減速制御が行われることになる。
【0077】
ステップS24では、変更後の設定倍率と変更前の設定倍率との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化率で除して、速度モードを変更するときの一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値の変化量、即ち、一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値量を設定する。そして、一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値の変化量を変更前の設定倍率に加えた値を用いて、対応するモータに対する加速制御を行う。
【0078】
ステップS25では、加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する加速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したときには、ステップS26に移行する。
【0079】
ステップS26では、制御指令値に制御指令値の変化量を加えた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS27では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御
指令値になるまで、ステップS25からステップS27の制御を繰り返すことになる。
【0080】
上記の加速制御を、具体的な数値を用いて図7を用いて説明すれば、例えば、任意モードにおける設定倍率を80%としたとき、変更後の設定倍率は、100%となる。変化率としては、100(%)−80(%)=20(%)が演算される。そして、例えば、変更前の繊維搬送ロールにおける搬送速度が、8.0m/minであったものを変更後には搬送速度を10.0m/minまで加速させる制御を行うことができる。
【0081】
この加速制御において、ステップ間隔を1(%)、第一加減速時間TMを2秒としたときには、最初の2秒間では、制御指令値として、変更前における80%の設定倍率にステップ間隔の1%を加えた81%の設定倍率となるように、即ち、8.1 m/minの搬送速度で対応する繊維搬送ロールが回転駆動されるように、対応するモータの回転速度を加速制御する。
【0082】
このとき8.1 m/minの搬送速度まで加速制御する時間は、2秒間である。2秒間で8.1 m/minの搬送速度まで加速制御すると、次に制御指令値である設定倍率を81%の設定倍率に1%のステップ間隔を加えて、82%の設定倍率とする。そして、次の2秒間の間に8.1 m/minの搬送速度が、8.2 m/minの搬送速度まで加速するように、対応する繊維搬送ロールを駆動するモータに対する駆動制御を行なう。これを順次繰り返すことにより、速度モードの変更を開始してから40秒経過した後には、変更後の搬送速度である10.0m/minまで加速させることができる。
【0083】
ステップS28では、変更前の設定倍率と変更後の設定倍率との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化率で除して、速度モードを変更するときの一回のステップにおいて加速させるときの制御指令値の変化量を設定する。そして、一回のステップにおいて減速させるときの制御指令値の変化量を変更前の設定倍率から減じた値を用いて、対応するモータに対する加速制御を行う。
【0084】
ステップS29では、加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する減速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第一加減速時間TMが経過したときには、ステップS30に移行する。
【0085】
ステップS30では、制御指令値に制御指令値の変化量を減じた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS31では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御指令値になるまで、ステップS29からステップS31の制御を繰り返すことになる。
【0086】
上記の減速制御を、具体的な数値を用いて図8を用いて説明すれば、例えば、変更前の設定倍率を100%とし、変更後の任意モードにおける設定倍率を80%とした場合について説明する。変化率としては、100(%)−80(%)=20(%)が演算される。そして、例えば、変更前の繊維搬送ロールにおける搬送速度が、10.0m/minであったものを変更後には搬送速度を8.0m/minまで減速させる制御を行うことができる。
【0087】
この減速制御において、ステップ間隔を1(%)、第一加減速時間TMを1秒としたときには、最初の1秒間では、制御指令値として、変更前における100%の設定倍率にステップ間隔の1%を減じた99%の設定倍率となるように、即ち、9.9 m/minの搬送速度で対応する繊維搬送ロールが回転駆動されるように、対応するモータの回転速度を減速制御する。
【0088】
このとき9.9 m/minの搬送速度まで加速制御する第一加減速時間TMは、1秒間である。1秒間で9.9 m/minの搬送速度まで減速制御すると、次に制御指令値である設定倍率を99%の設定倍率に1%のステップ間隔を減じて、98%の設定倍率とする。そして、次の第一加減速時間TM である1秒間の間に9.9 m/minの搬送速度が、9.8 m/minの搬送速度まで減速するように、対応する繊維搬送ロールを駆動するモータに対する駆動制御を行なう。これを順次繰り返すことにより、速度モードの変更を開始してから20秒経過した後には、変更後の搬送速度である8.0m/minまで減速させることができる。
【0089】
図7、図8において、一つのステップ間隔において、加減速制御を行わない休止期間を設けているが、この休止期間は、必要に応じて適宜設定することができる。例えば、休止時間をゼロ時間として設定しておくこともできる。また、設定した第一加減速時間TMの長さに対応させて休止時間を設定しておくこともできる。
【0090】
次に、図9〜図11を用いて、速度制御パターン2について説明する。図9は、速度制御パターン2における制御フローを示しており、図10は、速度制御パターン2における加速時の制御指令値の変化状態を示している。また、図8は、速度制御パターン2における減速時の制御指令値の変化状態を示している。
【0091】
図示せぬ搬送速度設定手段において、速度制御パターン2に基づく速度モードの変更が開始されると、図示せぬ制御手段は、ステップS41において、図4に示したタッチパネル31の加減速操作部45で設定された第二加減速時間TM、変化回数操作部47で設定された変化回数を読み取る。
【0092】
ステップS42では、加速制御を行うのか減速制御を行うのか否かの判断を行う。即ち、制御対象となる繊維搬送ロールの搬送速度として、変更前のモータに対して出力される制御指令値と、変更後の当該モータに対して出力される変更後の制御指令値との大小関係を判断する。
【0093】
変更前のモータに対して出力される制御指令値が変更後の制御指令値よりも小さいときには、加速制御が行われることになる。逆に、変更前のモータに対して出力される制御指令値が変更後の制御指令値よりも大きいときには、減速制御が行われることになる。
ステップS42において、加速制御が行われると判断したときには、ステップS43に移行し、減速制御が行われると判断したときには、ステップS47に移行する。
【0094】
ステップS43では、変更後の制御指令値と変更前の制御指令値との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化回数で除して、変化回数1回分で行う制御指令値の変化量を設定する。そして、制御指令値の変化量を変更前の制御指令値に加えた値を用いて、対応するモータに対する加速制御を行う。
【0095】
ステップS44では、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する加速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したときには、ステップS45に移行する。
【0096】
ステップS45では、制御指令値に制御指令値の変化量を加えた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS46では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御指令値になるまで、ステップS44からステップS46の制御を繰り返すことになる。
【0097】
上記の加速制御を、具体的な数値を用いて図10を用いて説明する。例えば、中速モードにおける搬送速度が20.0m/minであった状態を高速モードでの搬送速度30.0m/minまで加速させる場合について説明する。このとき、変化回数操作部47で設定された変化回数が「3」として設定され、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが2秒として設定されているものとする。尚、このとき制御指令値としては、搬送速度が用いられることになる。
【0098】
速度モードを変更した後の搬送速度30.0m/minは、変更前の搬送速度20.0m/minよりも高速であるので、この場合には、加速制御が行われることになる。そして、制御指令値の差として、30.0(m/min)−20.0(m/min)=10.0(m/min)が演算される。また制御指令値の変化量として、10.0(m/min)/3=3.3(m/min/回数)が演算される。
【0099】
この加速制御において、最初の第二加減速時間TM である2秒間では、制御指令値として、変更前における搬送速度20.0m/min に制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を加えた23.3 m/minが出力される。第二加減速時間TM の2秒間で23.3 m/minの搬送速度まで加速制御すると、次の回における制御指令値として、23.3 m/minに制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を加えた26.6 m/minを設定して、この26.6 m/minの制御指令値で第二加減速時間TMの間での加速制御を行う。これをもう一度繰り返すことにより、速度モードの変更制御を開始してから6秒経過した後には、変更後の搬送速度である30.0m/minまで加速させることができる。
【0100】
ステップS47では、変更前の制御指令値と変更後の制御指令値との差分を演算し、指令値の差として求める。また、この指令値の差を前記変化回数で除して、変化回数1回分で行う制御指令値の変化を設定する。そして、制御指令値の変化量を変更前の制御指令値から減じた値を用いて、対応するモータに対する減速制御を行う。
【0101】
ステップS48では、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したか否かの判断を行う。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過するまで、対応するモータに対する減速制御を行い続ける。加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが経過したときには、ステップS49に移行する。
【0102】
ステップS49では、制御指令値から制御指令値の変化量を減じた値を新たな制御指令値として設定し、新たな制御指令値に基づいて対応するモータに対する加速制御を行う。
ステップS50では、制御指令値が変更後の制御指令値になったか否かの判断を行う。制御指令値が変更後の制御指令値になったときには、速度モードの変更処理を終了する。制御指令値が変更後の制御指令値になっていなかったときには、制御指令値が変更後の制御指令値になるまで、ステップS47からステップS50の制御を繰り返すことになる。
【0103】
上記の減速制御を、具体的な数値を用いて図11を用いて説明する。例えば、高速モードにおける搬送速度が30.0m/minであった状態を中速モードでの搬送速度20.0m/minまで減速させる場合について説明する。このとき、変化回数操作部47で設定された変化回数が「3」として設定され、加減速操作部45で設定された第二加減速時間TMが1秒として設定されているものとする。尚、このとき制御指令値としては、搬送速度が用いられることになる。
【0104】
速度モードを変更した後の搬送速度20.0m/minは、変更前の搬送速度30.0m/minよりも低速であるので、この場合には、減速制御が行われることになる。そして、制御指令値の差として、30.0(m/min)−20.0(m/min)=10.0(m/min)が演算される。また制御指令値の変化量として、10.0(m/min)/3=3.3(m/min/回数)が演算される。
【0105】
この減速制御において、最初の第二加減速時間TM である1秒間では、制御指令値として、変更前における搬送速度30.0m/min に制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を減じた26.6 m/minが出力される。第二加減速時間TM の1秒間で26.6 m/minの搬送速度まで加速制御すると、次の回における制御指令値として、26.6 m/minに制御指令値の変化量3.3(m/min/回数)×1を減じた23.3 m/minを設定して、この23.3 m/minの制御指令値で減速制御を行う。これをもう一度繰り返すことにより、速度モードの変更制御を開始してから3秒経過した後には、変更後の搬送速度である20.0m/minまで減速させることができる。
【0106】
図10、図11において、一回で行う加減速制御において、速度の加減を行わない休止期間を設けているが、この休止期間は、必要に応じて適宜設定することができる。例えば、休止時間をゼロ時間として設定しておくこともできる。また、設定した第二加減速時間TMの長さに対応させて休止時間を設定しておくこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本願発明は、複数の搬送駆動ローラを用いて連続生産を行う製造ラインにおいて、搬送駆動ローラのステップアップ時やトラブル発生時やトラブル解消時に搬送駆動ローラの駆動を加減速制御する場合に、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
2・・・凝固浴槽、
4・・・洗浄工程、
5・・・延伸工程、
7・・・延伸工程、
8・・・延伸工程、
9・・・熱緩和処理工程、
10・・・乾燥工程、
30・・・繊維機械、
31・・・タッチパネル、
33・・・高速モード操作部、
34・・・中速モード操作部、
35・・・低速モード操作部、
36・・・任意モード操作部、
42・・・設定倍率表示部、
45・・・加減速操作部、
46・・・ステップ間隔操作部、
47・・・変化回数操作部、
T・・・アクリル繊維トウ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維糸を連続的に搬送する複数の繊維搬送ロールを上流側から下流側に沿って配し、前記繊維糸を連続的に製造する繊維機械において、
前記繊維機械は、全ての前記繊維搬送ロールに対してそれぞれの搬送速度を変更する搬送速度設定手段と前記各繊維搬送ロールに対して回転駆動制御を行う制御手段とを有し、
前記各繊維搬送ロールは、定常時の搬送速度において、下流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度が、それよりも上流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度以上となるように構成され、
前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から一つの速度モードを選択的に設定可能に構成され、
前記四つの速度モードは、前記各繊維搬送ロールをそれぞれ予め設定した定常時の搬送速度に設定する高速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で予め設定した第一の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第一の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する中速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で前記第一の繊維搬送ロールよりも予め上流側に設定した第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する低速モードと、前記各繊維搬送ロールの搬送速度に対して、全て同じ所定の設定倍率を掛けた搬送速度にそれぞれ一括的に変更する任意モードと、から構成され、
前記所定の設定倍率は、任意に変更可能に構成され、
前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から選択した速度モードに対応した制御指令値を出力し、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段からの前記制御指令値に応じて前記各繊維搬送ロールに対する回転駆動制御を行うことを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
前記搬送速度設定手段は、前記低速モード又は前記中速モードと前記任意モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするためのステップ間隔及び一つのステップ間隔において行う第一加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記ステップ間隔は、前記低速モード又は前記中速モードにおける前記制御指令値を100%としたとき、前記任意モードにおける前記制御指令値である前記設定倍率との間において、一回のステップで増減させる設定倍率の制御指令値量として構成され、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段による速度モードの変更によって設定された速度変更前と速度変更後における前記制御指令値の差分を演算し、
かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記ステップ間隔と前記第一加減速時間と前記制御指令値の差分とによって、前記速度モードの変更を行うことを特徴とする請求項1記載の繊維機械。
【請求項3】
前記搬送速度設定手段は、前記低速モードと前記中速モードと前記高速モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするための加減速を何回かに分けて行うための変化回数、前記変化回数における1回の加減速で行う第二加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段で設定された速度変更前と速度変更後との速度差を演算し、前記速度差を前記変化回数で除して1回の加減速で行う制御指令速度量を演算し、
かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記制御指令速度量分の変更を前記第二加減速時間内で行い、前記制御指令速度量分の変更を前記変化回数分行うことを特徴とする請求項1記載の繊維機械。
【請求項1】
繊維糸を連続的に搬送する複数の繊維搬送ロールを上流側から下流側に沿って配し、前記繊維糸を連続的に製造する繊維機械において、
前記繊維機械は、全ての前記繊維搬送ロールに対してそれぞれの搬送速度を変更する搬送速度設定手段と前記各繊維搬送ロールに対して回転駆動制御を行う制御手段とを有し、
前記各繊維搬送ロールは、定常時の搬送速度において、下流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度が、それよりも上流側に配される前記繊維搬送ロールの搬送速度以上となるように構成され、
前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から一つの速度モードを選択的に設定可能に構成され、
前記四つの速度モードは、前記各繊維搬送ロールをそれぞれ予め設定した定常時の搬送速度に設定する高速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で予め設定した第一の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第一の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する中速モードと、前記全ての繊維搬送ロールの中で前記第一の繊維搬送ロールよりも予め上流側に設定した第二の繊維搬送ロールよりも下流側に配される全ての前記繊維搬送ロールの搬送速度を、前記第二の繊維搬送ロールにおける搬送速度に設定する低速モードと、前記各繊維搬送ロールの搬送速度に対して、全て同じ所定の設定倍率を掛けた搬送速度にそれぞれ一括的に変更する任意モードと、から構成され、
前記所定の設定倍率は、任意に変更可能に構成され、
前記搬送速度設定手段は、四つの速度モードの中から選択した速度モードに対応した制御指令値を出力し、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段からの前記制御指令値に応じて前記各繊維搬送ロールに対する回転駆動制御を行うことを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
前記搬送速度設定手段は、前記低速モード又は前記中速モードと前記任意モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするためのステップ間隔及び一つのステップ間隔において行う第一加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記ステップ間隔は、前記低速モード又は前記中速モードにおける前記制御指令値を100%としたとき、前記任意モードにおける前記制御指令値である前記設定倍率との間において、一回のステップで増減させる設定倍率の制御指令値量として構成され、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段による速度モードの変更によって設定された速度変更前と速度変更後における前記制御指令値の差分を演算し、
かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記ステップ間隔と前記第一加減速時間と前記制御指令値の差分とによって、前記速度モードの変更を行うことを特徴とする請求項1記載の繊維機械。
【請求項3】
前記搬送速度設定手段は、前記低速モードと前記中速モードと前記高速モードとの間で設定速度の変更を行うため、変更後の最終速度にするための加減速を何回かに分けて行うための変化回数、前記変化回数における1回の加減速で行う第二加減速時間をそれぞれ設定可能に構成されてなり、
前記制御手段は、前記搬送速度設定手段で設定された速度変更前と速度変更後との速度差を演算し、前記速度差を前記変化回数で除して1回の加減速で行う制御指令速度量を演算し、
かつ、変更後の前記速度モードに変更される前記繊維搬送ロールに対して、前記制御指令速度量分の変更を前記第二加減速時間内で行い、前記制御指令速度量分の変更を前記変化回数分行うことを特徴とする請求項1記載の繊維機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−71937(P2012−71937A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217574(P2010−217574)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】
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