繊維生産のプロセス
繊維を生産するプロセスが提供される。前記プロセスは、紡糸溶液の表面上に複数の気泡を形成する工程と、前記溶液と、前記溶液から間隔を空けて配置された対電極との間に電圧を付加して、噴流を前記気泡から前記対電極へと伸長させる工程とを含み、前記プロセスは、前記気泡を安定させるための界面活性剤で前記溶液が処理される点において、特徴付けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様なポリマー、ポリマーブレンド、セラミックプレカーサー混合物および金属プレカーサー混合物からの極細繊維の生産に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー溶液からの極細繊維は、しばしばナノ繊維と呼ばれ、多様な用途(例えば、濾材、細胞組織工学骨格構造およびデバイス、繊維強化複合材料、センサー、電池および燃料電池用の電極、触媒担体材料、ワイピングクロス、吸収パッド、術後癒着防止剤、スマートテキスタイルならびに人工カシミヤおよび合成皮革)において、有用である。
【0003】
繊維の静電紡糸については、米国特許第692,631号において最初の記載がある。原則的に、ポリマー溶液または融液の液滴が、高電場に配置される。十分に強い電界(典型的には0.5〜4kV/cm)が付加された際、前記液滴内の誘導電荷間の反発が前記液体の表面張力と競合し、その静電力が、前記流体の表面張力に打ち勝ち、ポリマー溶液または融液の噴流が、前記液滴から噴出される。静電気的に不安定な状態に起因して、前記噴流は高速かつ無秩序に泡立たされ、その結果、溶媒が高速蒸発し、ポリマー繊維が伸長および薄肉化して残される。その後、形成された繊維は、典型的には不織ウェブの形態で対電極上に収集される。前記収集された繊維は通常は極めて均一であり、繊維径は数ミクロンから5nmまで低くすることができる。
【0004】
エレクトロスピニングを通じて大量のナノ繊維を製造する際の技術的障壁として、低い生産率と、ほとんどのポリマーが溶液から紡糸されるという事実がある。針スピナレットを用いた溶液ベースのエレクトロスピニングでは、平均して、溶液スループット率は、1針および1時間当たりで1mlのオーダーである。50〜100nmの径の繊維は典型的には、ポリマー型および分子量に応じて、0.5〜10wt%の比較的低い濃度の溶液から紡糸されることが多い。すなわち、先端周囲のポリマー濃度を1g/mlと想定すると、針ベースのエレクトロスピニングプロセスの典型的な固体スループット率は、1針当たりおよび1時間当たりで0.005g〜0.01gの繊維量である。この計算を適用すると、平面密度が80g/m2のナノ繊維ウェブを速度5m2/sで生産するには、最低でも40000本の針が必要になることになる。このような多数の針が必要であることに加えて、異なる針間の電界干渉によっても、当該針間の最低分離距離が制限され、さらに、針ベースのスピナレットを連続的に動作させるには、ポリマー堆積物によって前記スピナレットが塞がれるため、前記針を頻繁に洗浄する必要もある。
【0005】
前記エレクトロスピニングプロセスは、研究所のスケールでみるとコスト効率は比較的良いものの、単針設定での繊維スループットが低いため、工業生産向けの量での生産においては、ほとんどの日用品用途(例えば、濾過テキスタイルおよび吸収性テキスタイル)に用いるには、コストが法外に高くなってしまう。生産率を上げることにより、コストを劇的に下げることができ、これにより、エレクトロスピニングによるナノ繊維の適用範囲を広げ、新技術の開発への扉を開くことができる。
【0006】
Formhalsは、1934年に既に複数のはめ歯歯車源を用いることによりエレクトロスピニング生産率を上げることを試みている(米国特許第1,975,504号)。その後の設計において、Formhalsは、複数の針設定を用いた(米国特許第2,109,333号)。それ以降、これは、研究室においてエレクトロスピニング生産率を上げるための最初の明確なアプローチとなった。前記複数の針を用いたアプローチは容易に見えるかもしれないが、システムが複雑でありまた針が詰まる可能性が高いため、不便であることが多い。より最近になって、異なるアプローチが提案されている。Renekerら(PCT WO 00/22207)は、繊維形成溶液を環状カラム内に送り、前記カラム内にガスを強制的に送って、環状フィルムを形成した後、前記フィルムを破壊して、繊維形成材料の多数のストランドを形成するというナノ繊維生産プロセスについて、記載している。
【0007】
Kim(PCT WO 2003/004735)は、ガス流れを通じて紡糸溶液を制御するための、複雑な複数のノズルブロックシステムを設計した。
【0008】
A.L.Yarin、E.Zussman(Polymer 45(2004)2977〜2980)によって提案されている複数のナノ繊維の上方無針エレクトロスピニングでは、2層システムが用いられており、下側層が強磁性懸濁液となり、上側層がポリマー溶液となっている。前記システムに永久磁場が付加されると、ポリマー溶液の層間界面および自由層を通じて、前記磁性流体が垂直方向に押し上げられてスパイクする。この状態で前記システムに強い電界が付加されると、前記スパイク先端から複数のエレクトロスピニング噴流が発生し、その結果、繊維生産率が高くなる。前記噴流パッキング密度を複数の針設定と比較した場合、計算上では生産量が12倍になった。また、前記無針プロセスでは、針が詰まる可能性も回避する。前記システムのあり得る欠点としては、前記磁性懸濁液と前記ポリマー溶液との間の適合性の問題と、前記流体からの繊維の汚染の危険性とがある。
【0009】
融液エレクトロスピニングの複数の針ノズルパックのための特殊な設計が、ChunおよびParkによって提案された(PCT WO 2004/016839)。しかし、ポリマー融液化コンポーネントが追加された点を除いては、この設計は、上記した複数の針による設計と大差無い。
【0010】
Karlesら(PCT WO 2004/080681)は、より高いスループット紡糸と、形成繊維のための特殊な対電極とのための多様な設計を記載しているが、前記複数の針およびスパイク型のヘアブラシ型紡糸源のいずれも、Formhalsが1930年に既に記載している前記針およびはめ歯歯車源と大差無い。
【0011】
自身の2003年の設計を改善して、KimおよびParkが、オーバーフロー除去ノズルブロックおよびさらなる気流ノズルを備えた上方紡糸ノズルブロックを設計した(PCT WO 2005/090653)。この設計において、前記紡糸ノズルは、3本の同心状の管からなる。内側管が紡糸溶液を供給し、非紡糸溶液がオーバーフローした際に中間管が余分な非紡糸溶液を除去する機能を果たし、外側管が紡糸噴流周囲にガスポケットを生成して、隣接噴流間の静電気的反発効果を低減する。この設計は、エレクトロスピニングによるナノ繊維ウェブからの連続ヤーンの形成について記載する後続特許(PCT WO 2005/073442)において、採用された。
【0012】
Andradyらは、回転管からなるシステムを設計した(PCT WO 2005/100654)。この回転管を通じて、前記紡糸溶液が前記管の表面上のいくつかの噴流出口へとポンピングされる。その後、前記エレクトロスピニングによる繊維が、別の回転管上に収集される。この別の回転管は、内側紡糸管の外側周囲に配置される。このような構成および前記システムを通じたガス流れに関連するさらなる複雑性にもかかわらず、紡糸溶液のポンピング速度はおよそ1.5ml/hであり、これは、単一噴流設定において用いられる典型的な流速である1.0ml/hと比較して、それほど高速ではない。前記システムは、スループットエレクトロスピニングを増加させるものとして請求されているものの、むしろ、繊維収集のための研究室スケールでの回転ドラム方法の特殊なケースを具現化している。
【0013】
その後、AndradyおよびEnsorが、別のプロセスを設計した。このプロセスでは、2〜100個の針状出口を一方側に設けた単一の箱状コンテナ内にポリマー溶液をポンピングする(PCT WO 2006/043968)。この設計は、NanoStaticsによって用いられているものと極めて類似している(www.NanoStatics.com)。どちらの場合においても、高い繊維スループットが達成されているが、針下側の流体デッドボリュームが大きく、そのため、各針における流速制御性が低くなっている。その結果、最終繊維ウェブ中に、液滴および撥ね返りポリマー破片が残り得る。
【0014】
Beetzらによる最近の設計(PCT WO 2006/047453)は、流体の高圧噴霧および同時エレクトロスプレーまたはエレクトロスピニングの組み合わせからなる。本質的には、紡糸流体に高電圧を付加しつつ、前記流体を高圧下で小径(<1mm)管を通じて強制移動させる。
【0015】
Dosunmuらによる多孔性管状表面上の複数の噴流(Nanotechnology 17(2006)、1123〜1127)では、帯電されかつ多孔性ポリエチレン管の壁を通じた気圧によって押し出されたポリマー溶液の使用についての記載がある。複数の噴流が多孔性表面上に形成され、エレクトロスピニングによりナノ繊維として形成される。前記管のからの生産率は、典型的な単一の噴流よりもおよそ250倍高速である。さらなる研究が必要であるが、初期計算によれば、可能な生産率は、多孔性管の長さ1メートル当たり4.2g/分のオーダーである。この方法は極めて有望にみえるものの、粘度および伝導性などの溶液パラメータによっては、特定のポリマー紡糸性が限定される場合がある。
【0016】
現時点において最も有効なハイスループットエレクトロスピニングシステムは、NanoSpiderとして公知である(http://www.Nanospider.cz/)。このプロセスにおいて、繊維形成ポリマー溶液を皿内に配置し、前記紡糸溶液を通じて伝導性シリンダをゆっくりと回転させて、溶液の薄肉層を前記シリンダの表面上に形成する。十分に高い電圧が、前記紡糸シリンダと前記シリンダから10〜20cm上方に配置された対電極との間に付加されると、数百本の噴流が前記シリンダ表面から生成され、ターゲット上にエレクトロスピンされる。NanoSpiderの研究室スケールでの構成は、ポリマーに応じて、約1g/分の生産性を有する。
【0017】
日本国特許第3918179において、プロセスについての記載がある。上記プロセスにおいて、多孔性膜または薄肉管を通じて圧縮空気をポリマー溶液内に吹き込むことにより、前記溶液表面上に気泡を連続的に生成する。高電圧が、前記ポリマー溶液と対電極プレートとの間に付加される。前記電圧が十分に高い場合、エレクトロスピニング噴流が前記ポリマー溶液中の気泡上に形成され、形成された繊維が前記対電極上に収集される。この開示のプロセスの場合、前記ポリマー溶液中の気泡を大量に形成し、その後急速に爆発させる必要がある。任意の溶融性ポリマーが使用可能でありかつ多様な有機溶媒を含む任意の適切な溶媒が使用可能であると記載されているものの、ほとんどの有機溶媒は容易には泡形態をとらないことは周知である。そのため、このような有機溶液中に形成された気泡は、極めて短寿命である。その上、同特許は有機溶液への一般的適用性を主張しているものの、記載の例では、ポリマー溶液の紡糸を水、2−プロパノールおよびアセトン中のみでしか行っていない。その上、同特許は、常に爆発する気泡によって生成されたスピン溶液の液滴が前記対電極上に既に形成された繊維上に撥ねかかりまた前記繊維を破壊する可能性があるため、泡から適切な距離を空けて前記対電極を配置することが必要であるとも述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、前記した問題のうちいくつかを少なくとも部分的に軽減する、繊維を生産するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、繊維を生産するプロセスが提供される。前記プロセスは、複数の気泡を紡糸溶液の表面上に形成する工程と、前記溶液と、前記溶液から間隔を空けて配置された対電極との間に電圧を付加して、噴流を前記気泡から前記対電極へと伸長させる工程とを含み、前記溶液は、前記気泡を安定させるように処理される点において特徴付けられる。
【0020】
本発明のさらなる特徴によれば、前記溶液は、界面活性剤で処理されるべきである。前記界面活性剤は、水性溶液の場合、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および双性イオン(zitterionic)界面活性剤から選択され、前記界面活性剤は、有機溶液の場合、シリコーン界面活性剤を含むべきである。
【0021】
本発明のさらに別の特徴は、前記溶液中での気泡形成速度を制御して、前記対電極から所定の距離において前記気泡を維持する。あるいは、前記気泡は、オーバーフローを備えるコンテナ中で形成される。前記オーバーフローを通じて、所定の高さを越える気泡が引き抜かれる。前記コンテナ中の前記溶液の量は、所定のレベルで維持されるべきである。
【0022】
本発明のさらに別の特徴によれば、前記界面活性剤により、気泡寿命を延ばしかつ気泡形成効率を向上させる。前記界面活性剤により、気泡構造および均一性をさらに向上させる。
【0023】
本発明のさらなる特徴によれば、前記噴流によって形成された繊維は、前記対電極から連続的に引き抜かれて、さらなる処理が施される。前記対電極は、複数の間隔を空けて配置された移動導体を含む。
【0024】
本発明の一態様によれば、圧力下でガスを前記溶液内に導入することにより、前記気泡が形成される。
【0025】
本発明のこの態様によるさらなる特徴によれば、気泡の生産に必要な圧力よりも実質的に高い圧力で、前記ガスを前記溶液内に導入する。前記ガスの導入率は、前記対電極からの所定の距離において前記気泡を維持するように、制御される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明について、ひとえに例示目的のために、図面を参照しながら説明する。
【0027】
【図1】繊維を生産するための装置の概略図である。
【図2a】図1中の装置を用いて形成された繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2b】図1中の装置を用いて形成された繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3】気泡から噴出するエレクトロスピニング噴流の画像である。
【図4a】8wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図4b】8wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図4c】8wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図5a】10wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図5b】10wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図5c】10wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図6a】12wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図6b】12wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図6c】12wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(図面を参照した詳細な説明)
【0029】
本発明のプロセスは、紡糸溶液の表面上に気泡を形成する工程と、前記気泡の前記表面の上方において前記溶液から間隔を空けて配置された対電極との間に高電圧を付加することにより、前記気泡の前記表面から噴流を噴出させる工程とを含む。前記噴流は、前記対電極へと移動するにつれて、公知の様式で繊維に発展する。重要なことに、前記溶液は、前記気泡を安定させるように、適切な界面活性剤で処理される。
【0030】
界面活性剤は、表面張力を低減させかつ気泡安定性を促進させる作用を持つことが、周知である。界面活性剤は、当該溶液の特性に応じて広範囲で選択され、多様な界面活性剤から選択することができる。しかし、界面活性剤を選択する際の主要な要素は、当該溶液中に形成された気泡を安定させることにより前記気泡の寿命を延ばす当該界面活性剤の能力である。よって、前記気泡をできるだけ長期間安定させることで気泡壁破裂周期をできるだけ短くすると、好適である。
【0031】
泡安定化界面活性剤を追加することで気泡寿命を延ばすことにより、気泡が安定していない場合よりも、より安定した噴流を各気泡表面上に形成することができ、繊維に発展させることができる。気泡寿命を延ばし、それに関連して噴流を安定させることによっても、より均一な繊維を形成することができる。
【0032】
また、気泡が爆発するたびに、前記気泡壁の爆発を通じて、小液滴が形成される。先行技術において開示されているように、既に形成された繊維(特に、前記対電極上に形成されたウェブ上に)これらの液滴が落下した場合、これらの液滴は再度溶融し、そのため、これらの繊維を破壊する。前記溶液が界面活性剤によって安定されない場合、気泡壁が頻繁に破壊され、その結果、このような撥ね返った液滴が大量に形成される。
【0033】
泡安定化界面活性剤を添加すると、気泡寿命が延び、これにより、気泡壁破裂の頻度が低下する。これは、ポリマー溶液の液滴が撥ね返る量が低減し、得られる繊維の品質が向上することを意味する。
【0034】
適切な界面活性剤を選択する際に考慮されるさらなる要素として、気泡形成効率、気泡構造、および気泡均一性を向上させる液滴の能力がある。同様の条件下であっても、小気泡上でよりも大気泡上での方が噴流形成量が大きくなることが分かっているため、気泡構造は重要である。泡安定化界面活性剤を含まない溶液中では、大気泡の寿命はやはり小気泡の寿命よりも短くなる。
【0035】
一般的に、水性溶液の場合はアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および双性イオン(zitterionic)界面活性剤を使用することができ、有機溶液の場合はシリコーン界面活性剤を使用することができる。界面活性剤と同様の機能を果たす最近利用可能になった特殊なナノ粒子およびポリマーを用いることも、可能である。本明細書中、「界面活性剤」という用語は、その最も広範囲の意味を持ち、かつ、気泡安定化機能を持つ製品および他の任意の物質を含むべきである。所望であれば、界面活性剤の任意の適切な混合物を用いることも可能である。
【0036】
前記溶液中に泡を形成するための任意の適切な方法を用いることができ、例えば、ガス圧力下で溶液中にガスを吹き込む方法、ペンタンなどの揮発性液体を溶液中で膨張させるかまたはベーキングパウダーなどの粒状物質の溶液中で熱分解させることにより、前記溶液を攪拌する方法などを用いることができる。ほとんどの場合において、最も実際的かつ制御が容易な気泡形成方法は、溶液を通じてガスを吹き込む方法である。
【0037】
このような場合に界面活性剤を用いるとさらに有利である理由として、安定していない溶液中での気泡形成には高いガス流速が必要であり、そのため、気泡壁破裂の振幅が増加し、その結果、既に形成された繊維への撥ね返りの危険性が高まる点がある。
【0038】
用いられるノズルの種類およびガス圧力を調節すれば、上述した利点を有するより大きな気泡を形成することも可能である。
【0039】
溶液内にガスを導入する際の圧力は好適には、気泡生産に必要な圧力を実質的に越えなければよく、これにより、気泡安定性がさらに確保される。圧力が高いほど、気泡形成および爆発も高速になる。
【0040】
気泡安定化界面活性剤を含まないポリマー溶液中に気泡が吹き込まれた場合、気泡は短寿命化し、そのため、前記溶液中にガスを高速で吹き込むことによって新規気泡を常に生成する必要が出てくる。加えて、前記気泡生成が薄肉管を通じて前記溶液中にガスを吹き込むことにより行われた場合、前記気泡は、前記管の開口部の真上の前記溶液表面上の小領域内に主に集まる。気泡がこのような溶液中に多孔性膜を通じて吹き込まれた場合、気泡は前記膜の直接上の前記溶液表面上に主に形成され、そのため、前記溶液表面全体上に気泡を効率良く形成するためには、前記膜領域を拡大する必要が出てくる。
【0041】
これらの不利点は、安定剤を使用することにより、解消することができる。前記ポリマー溶液が実際に適切な界面活性剤を含む場合、気泡は、形成後より長期間にわたって持続する。すなわち、前記溶液中に吹き込まれる気泡形成ガスが、より効率良く使用される。すなわち、使用量も比例して低減し、(前記ガスが特殊ガスである場合に特に)入力材料コストの節約にも繋がる。同様に、前記ガスが圧縮空気である場合、使用量も比例して低減し、その結果、前記圧縮空気の生成に必要なエネルギーのコストの節約にも繋がる。加えて、このような溶液中で気泡が長寿命化すると、前記気泡は拡散する傾向となり、これにより、前記溶液表面の大きな領域が自動的に被覆され、その結果、繊維形成のために利用可能な領域をより良く利用することが可能になる。それと同時に、大きな気泡生産表面が不要となるため、前記溶液中へのガス導入方法も簡単になる。
【0042】
適切な界面活性剤および気泡形成手段を考える際、溶液上の均一な気泡または泡表面の生成も、考慮すべきである。表面の均一性が高いほど、得られる繊維の一貫性も高まる。気泡形成に用いる装置も、気泡または泡の表面から対電極への距離を所定の距離または距離範囲に制御する手段を提供すべきである。これを行うための簡単な方法は、オーバーフローを備えた溶液を保持するコンテナまたは槽を提供することである。前記オーバーフローを通じて、余分な気泡が引き抜かれ、分解され、その後前記溶液へと戻される。これは、槽外周において槽上部から間隔を空けた位置に溝部を設けることによって容易に達成可能であり、これにより、余分な泡を前記上部から前記溝部内へと流してリサイクルすることができる。
【0043】
より複雑な装置は、前記槽中の泡の高さを測定するためのデバイスの使用と、前記泡高さを所定のレベルで維持するための、例えば溶液中へのガス導入速度の制御による気泡形成の制御とを含み得る。
【0044】
任意の適切な対電極を用いることができる。前記対電極は好適には、前記対電極から前記繊維を連続的に除去することが可能なように構成され、PCT/IB2007/003177中に記載された、複数の間隔を空けて配置された移動伝導性ストリップを有する種類のものであり得る。しかし、繊維を対電極上で直接収集する必要は無い。
【0045】
以下の例は、上述した本発明の態様を例示する機能を果たす。
【0046】
例1
濃度6wt%の溶液を、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のポリアクリロニトリル(PAN)(Mw=210000g/mol)で作製した。薄肉プラスチック管状ノズルを用いて前記溶液中に圧縮空気を150〜3000ml/分の速度で吹き込むことにより、前記溶液の発泡性について試験した。形成された個々の気泡の寿命は、1秒よりもずっと短く、安定した気泡は得ることができなかった。次に、工業原料(JSYK 580(L580))からのシリコーン界面活性剤を濃度244g/lで前記溶液に添加し、前記発泡性試験を再度行った。その結果、前記槽の表面全体を被覆する安定した泡を生成することができ、個々の気泡の寿命は10〜80秒であった。
【0047】
図1を参照すると、前記界面活性剤を含む紡糸溶液(1)を細長槽(2)内に注入した。この細長槽(2)は、表面積が36cm2であり、かつ、有孔管(4)を有する。この有孔管(4)は、細長槽(2)の長さ方向にわたって中央に延び、標準的空気圧縮機(図示せず)からの空気供給を受け取る。対電極(6)は、前記槽のから13cm上方に配置した。
【0048】
その後、空気(7)を管(4)を通じて送り、流速を規制して、溶液(1)の表面上に安定した泡(8)を得た。次に、46kVDCの高電圧を溶液(1)と対電極(6)との間に付加した。
【0049】
泡(8)を形成する気泡の表面から複数のエレクトロスピニング噴流が噴出し、繊維が高速形成された。
【0050】
SEM分析によれば、前記6wt%溶液により、いくつかのビードを含みかつ平均径が1.18μmである繊維が得られた(図2aを参照)。8wt%のPAN溶液を244g/lの同一シリコーン界面活性剤と共に用いて、前記プロセスを再度行った。SEM分析によれば、形成された繊維はビード形成も無くより均一であり、平均繊維径は1.29μmであった(図2bを参照)。図3は、これらの条件下で形成された単一の気泡を示し、前記気泡の表面から複数の噴流が噴出している。
【0051】
同一条件下では、界面活性剤を用いないと、わずかな量の繊維しか形成することができない。これらの繊維は、爆発気泡として形成された撥ね返り液滴からの電場誘起エレクトロスピニングによって主に形成される。気泡壁の爆発時の液滴形成の性質は予測することが不可能であるため、液滴サイズの対応する変動、これらの液滴から形成される繊維の径も形態も、再現不可能である。
【0052】
例2
異なる濃度の界面活性剤ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と共に、溶液をポリビニルアルコール(PVOH)(Mw=72000g/mol、>98%加水分解)で蒸留水中で異なる濃度で以下のように調製した。
【表1】
【0053】
槽(2)と対電極(6)との間の距離を10cmに設定して、図1に示す装置を用いた。前記ポリマーおよび界面活性剤を含む前記溶液を前記槽に注入し、エアフローをオンに切り換えて、安定した泡が得られるように規制した。前記槽中の溶液と前記対電極との間に高電圧を付加し、前記電圧を、前記特定の溶液において噴流を開始させるために必要な電圧よりも若干高い電圧に調節した。この電圧は、25kV〜35kVであった。複数のエレクトロスピニング噴流が前記気泡の表面から噴出し、繊維が高速形成された。
【0054】
得られた繊維ウェブをSEM分析にかけたところ、前記界面活性剤濃度が増加し、前記気泡もより安定しているため、前記得られた繊維の品質が向上していることが明確に分かった。このような分析を行うため、前記対電極をアルミホイルシートで被覆し、その上に前記繊維を形成した。その後、前記シートのサンプルを分離し、SEM分析にかけた。
【0055】
図4a〜図4cは、前記8wt%溶液の結果を示す。図4a(0.1xCMC界面活性剤)において、初期に形成された一部の繊維が大きなポリマー撥ね返りによって破壊され、その後形成された繊維が溶媒蒸気によって部分的に溶解していることが、観察される。図4b(0.5xCMC界面活性剤)において、繊維がより乾燥している様子が分かるが、それでも、大きな撥ね返りに起因して前記繊維のうちの多くが破壊されている。図4c(1.0xCMC界面活性剤)において、ほとんどの繊維が乾燥し、撥ね返りも顕著に低減していることから、有意な向上が観察される。
【0056】
図5a〜図5cは、10wt%溶液についての同様の結果を示す。図5a(0.1xCMC界面活性剤)において、大きなポリマー撥ね返りによってほとんどの繊維が破壊されていることが観察される。図5b(0.5xCMC界面活性剤)において、繊維はより乾燥しているものの、多くの繊維がビード欠陥を示し、欠陥と繊維との間の体積比も高い。図5c(1.0xCMC界面活性剤)において、ほとんどの繊維が乾燥し、ビード欠陥と通常繊維との間の体積比も向上しているため、図5b中の結果と比較して改善が見られる。
【0057】
図6a〜図6cは、12wt%溶液の結果を示す。図6a(0.1xCMC界面活性剤)において、湿潤噴流が前記対電極上に堆積して、前記対電極の下側の繊維を破壊している部分において、暗線が観察される。図6b(0.5xCMC界面活性剤)において、乾燥した繊維の比は改善されているものの、それでも、一部不規則な繊維形態が観察される。図6c(1.0xCMC界面活性剤)において、ほとんどの繊維が乾燥し、繊維均一性も増加しているため、さらなる改善が観察される。
【0058】
これらの試験から、前記溶液中の気泡を安定化させることにより、繊維品質において劇的な効果が得られることが明らかである。撥ね返り低減に付随して繊維損傷を低減するだけでなく、繊維品質も向上する。
【0059】
繊維を生産するプロセスの実施形態(特に、使用される紡糸溶液および界面活性剤の種類に関するもの)と、気泡形成方法の実施形態と、繊維形成を行うための条件の実施形態とについては、本発明の範囲内にある実施形態が他にも多数存在することが、理解されることであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様なポリマー、ポリマーブレンド、セラミックプレカーサー混合物および金属プレカーサー混合物からの極細繊維の生産に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー溶液からの極細繊維は、しばしばナノ繊維と呼ばれ、多様な用途(例えば、濾材、細胞組織工学骨格構造およびデバイス、繊維強化複合材料、センサー、電池および燃料電池用の電極、触媒担体材料、ワイピングクロス、吸収パッド、術後癒着防止剤、スマートテキスタイルならびに人工カシミヤおよび合成皮革)において、有用である。
【0003】
繊維の静電紡糸については、米国特許第692,631号において最初の記載がある。原則的に、ポリマー溶液または融液の液滴が、高電場に配置される。十分に強い電界(典型的には0.5〜4kV/cm)が付加された際、前記液滴内の誘導電荷間の反発が前記液体の表面張力と競合し、その静電力が、前記流体の表面張力に打ち勝ち、ポリマー溶液または融液の噴流が、前記液滴から噴出される。静電気的に不安定な状態に起因して、前記噴流は高速かつ無秩序に泡立たされ、その結果、溶媒が高速蒸発し、ポリマー繊維が伸長および薄肉化して残される。その後、形成された繊維は、典型的には不織ウェブの形態で対電極上に収集される。前記収集された繊維は通常は極めて均一であり、繊維径は数ミクロンから5nmまで低くすることができる。
【0004】
エレクトロスピニングを通じて大量のナノ繊維を製造する際の技術的障壁として、低い生産率と、ほとんどのポリマーが溶液から紡糸されるという事実がある。針スピナレットを用いた溶液ベースのエレクトロスピニングでは、平均して、溶液スループット率は、1針および1時間当たりで1mlのオーダーである。50〜100nmの径の繊維は典型的には、ポリマー型および分子量に応じて、0.5〜10wt%の比較的低い濃度の溶液から紡糸されることが多い。すなわち、先端周囲のポリマー濃度を1g/mlと想定すると、針ベースのエレクトロスピニングプロセスの典型的な固体スループット率は、1針当たりおよび1時間当たりで0.005g〜0.01gの繊維量である。この計算を適用すると、平面密度が80g/m2のナノ繊維ウェブを速度5m2/sで生産するには、最低でも40000本の針が必要になることになる。このような多数の針が必要であることに加えて、異なる針間の電界干渉によっても、当該針間の最低分離距離が制限され、さらに、針ベースのスピナレットを連続的に動作させるには、ポリマー堆積物によって前記スピナレットが塞がれるため、前記針を頻繁に洗浄する必要もある。
【0005】
前記エレクトロスピニングプロセスは、研究所のスケールでみるとコスト効率は比較的良いものの、単針設定での繊維スループットが低いため、工業生産向けの量での生産においては、ほとんどの日用品用途(例えば、濾過テキスタイルおよび吸収性テキスタイル)に用いるには、コストが法外に高くなってしまう。生産率を上げることにより、コストを劇的に下げることができ、これにより、エレクトロスピニングによるナノ繊維の適用範囲を広げ、新技術の開発への扉を開くことができる。
【0006】
Formhalsは、1934年に既に複数のはめ歯歯車源を用いることによりエレクトロスピニング生産率を上げることを試みている(米国特許第1,975,504号)。その後の設計において、Formhalsは、複数の針設定を用いた(米国特許第2,109,333号)。それ以降、これは、研究室においてエレクトロスピニング生産率を上げるための最初の明確なアプローチとなった。前記複数の針を用いたアプローチは容易に見えるかもしれないが、システムが複雑でありまた針が詰まる可能性が高いため、不便であることが多い。より最近になって、異なるアプローチが提案されている。Renekerら(PCT WO 00/22207)は、繊維形成溶液を環状カラム内に送り、前記カラム内にガスを強制的に送って、環状フィルムを形成した後、前記フィルムを破壊して、繊維形成材料の多数のストランドを形成するというナノ繊維生産プロセスについて、記載している。
【0007】
Kim(PCT WO 2003/004735)は、ガス流れを通じて紡糸溶液を制御するための、複雑な複数のノズルブロックシステムを設計した。
【0008】
A.L.Yarin、E.Zussman(Polymer 45(2004)2977〜2980)によって提案されている複数のナノ繊維の上方無針エレクトロスピニングでは、2層システムが用いられており、下側層が強磁性懸濁液となり、上側層がポリマー溶液となっている。前記システムに永久磁場が付加されると、ポリマー溶液の層間界面および自由層を通じて、前記磁性流体が垂直方向に押し上げられてスパイクする。この状態で前記システムに強い電界が付加されると、前記スパイク先端から複数のエレクトロスピニング噴流が発生し、その結果、繊維生産率が高くなる。前記噴流パッキング密度を複数の針設定と比較した場合、計算上では生産量が12倍になった。また、前記無針プロセスでは、針が詰まる可能性も回避する。前記システムのあり得る欠点としては、前記磁性懸濁液と前記ポリマー溶液との間の適合性の問題と、前記流体からの繊維の汚染の危険性とがある。
【0009】
融液エレクトロスピニングの複数の針ノズルパックのための特殊な設計が、ChunおよびParkによって提案された(PCT WO 2004/016839)。しかし、ポリマー融液化コンポーネントが追加された点を除いては、この設計は、上記した複数の針による設計と大差無い。
【0010】
Karlesら(PCT WO 2004/080681)は、より高いスループット紡糸と、形成繊維のための特殊な対電極とのための多様な設計を記載しているが、前記複数の針およびスパイク型のヘアブラシ型紡糸源のいずれも、Formhalsが1930年に既に記載している前記針およびはめ歯歯車源と大差無い。
【0011】
自身の2003年の設計を改善して、KimおよびParkが、オーバーフロー除去ノズルブロックおよびさらなる気流ノズルを備えた上方紡糸ノズルブロックを設計した(PCT WO 2005/090653)。この設計において、前記紡糸ノズルは、3本の同心状の管からなる。内側管が紡糸溶液を供給し、非紡糸溶液がオーバーフローした際に中間管が余分な非紡糸溶液を除去する機能を果たし、外側管が紡糸噴流周囲にガスポケットを生成して、隣接噴流間の静電気的反発効果を低減する。この設計は、エレクトロスピニングによるナノ繊維ウェブからの連続ヤーンの形成について記載する後続特許(PCT WO 2005/073442)において、採用された。
【0012】
Andradyらは、回転管からなるシステムを設計した(PCT WO 2005/100654)。この回転管を通じて、前記紡糸溶液が前記管の表面上のいくつかの噴流出口へとポンピングされる。その後、前記エレクトロスピニングによる繊維が、別の回転管上に収集される。この別の回転管は、内側紡糸管の外側周囲に配置される。このような構成および前記システムを通じたガス流れに関連するさらなる複雑性にもかかわらず、紡糸溶液のポンピング速度はおよそ1.5ml/hであり、これは、単一噴流設定において用いられる典型的な流速である1.0ml/hと比較して、それほど高速ではない。前記システムは、スループットエレクトロスピニングを増加させるものとして請求されているものの、むしろ、繊維収集のための研究室スケールでの回転ドラム方法の特殊なケースを具現化している。
【0013】
その後、AndradyおよびEnsorが、別のプロセスを設計した。このプロセスでは、2〜100個の針状出口を一方側に設けた単一の箱状コンテナ内にポリマー溶液をポンピングする(PCT WO 2006/043968)。この設計は、NanoStaticsによって用いられているものと極めて類似している(www.NanoStatics.com)。どちらの場合においても、高い繊維スループットが達成されているが、針下側の流体デッドボリュームが大きく、そのため、各針における流速制御性が低くなっている。その結果、最終繊維ウェブ中に、液滴および撥ね返りポリマー破片が残り得る。
【0014】
Beetzらによる最近の設計(PCT WO 2006/047453)は、流体の高圧噴霧および同時エレクトロスプレーまたはエレクトロスピニングの組み合わせからなる。本質的には、紡糸流体に高電圧を付加しつつ、前記流体を高圧下で小径(<1mm)管を通じて強制移動させる。
【0015】
Dosunmuらによる多孔性管状表面上の複数の噴流(Nanotechnology 17(2006)、1123〜1127)では、帯電されかつ多孔性ポリエチレン管の壁を通じた気圧によって押し出されたポリマー溶液の使用についての記載がある。複数の噴流が多孔性表面上に形成され、エレクトロスピニングによりナノ繊維として形成される。前記管のからの生産率は、典型的な単一の噴流よりもおよそ250倍高速である。さらなる研究が必要であるが、初期計算によれば、可能な生産率は、多孔性管の長さ1メートル当たり4.2g/分のオーダーである。この方法は極めて有望にみえるものの、粘度および伝導性などの溶液パラメータによっては、特定のポリマー紡糸性が限定される場合がある。
【0016】
現時点において最も有効なハイスループットエレクトロスピニングシステムは、NanoSpiderとして公知である(http://www.Nanospider.cz/)。このプロセスにおいて、繊維形成ポリマー溶液を皿内に配置し、前記紡糸溶液を通じて伝導性シリンダをゆっくりと回転させて、溶液の薄肉層を前記シリンダの表面上に形成する。十分に高い電圧が、前記紡糸シリンダと前記シリンダから10〜20cm上方に配置された対電極との間に付加されると、数百本の噴流が前記シリンダ表面から生成され、ターゲット上にエレクトロスピンされる。NanoSpiderの研究室スケールでの構成は、ポリマーに応じて、約1g/分の生産性を有する。
【0017】
日本国特許第3918179において、プロセスについての記載がある。上記プロセスにおいて、多孔性膜または薄肉管を通じて圧縮空気をポリマー溶液内に吹き込むことにより、前記溶液表面上に気泡を連続的に生成する。高電圧が、前記ポリマー溶液と対電極プレートとの間に付加される。前記電圧が十分に高い場合、エレクトロスピニング噴流が前記ポリマー溶液中の気泡上に形成され、形成された繊維が前記対電極上に収集される。この開示のプロセスの場合、前記ポリマー溶液中の気泡を大量に形成し、その後急速に爆発させる必要がある。任意の溶融性ポリマーが使用可能でありかつ多様な有機溶媒を含む任意の適切な溶媒が使用可能であると記載されているものの、ほとんどの有機溶媒は容易には泡形態をとらないことは周知である。そのため、このような有機溶液中に形成された気泡は、極めて短寿命である。その上、同特許は有機溶液への一般的適用性を主張しているものの、記載の例では、ポリマー溶液の紡糸を水、2−プロパノールおよびアセトン中のみでしか行っていない。その上、同特許は、常に爆発する気泡によって生成されたスピン溶液の液滴が前記対電極上に既に形成された繊維上に撥ねかかりまた前記繊維を破壊する可能性があるため、泡から適切な距離を空けて前記対電極を配置することが必要であるとも述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、前記した問題のうちいくつかを少なくとも部分的に軽減する、繊維を生産するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、繊維を生産するプロセスが提供される。前記プロセスは、複数の気泡を紡糸溶液の表面上に形成する工程と、前記溶液と、前記溶液から間隔を空けて配置された対電極との間に電圧を付加して、噴流を前記気泡から前記対電極へと伸長させる工程とを含み、前記溶液は、前記気泡を安定させるように処理される点において特徴付けられる。
【0020】
本発明のさらなる特徴によれば、前記溶液は、界面活性剤で処理されるべきである。前記界面活性剤は、水性溶液の場合、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および双性イオン(zitterionic)界面活性剤から選択され、前記界面活性剤は、有機溶液の場合、シリコーン界面活性剤を含むべきである。
【0021】
本発明のさらに別の特徴は、前記溶液中での気泡形成速度を制御して、前記対電極から所定の距離において前記気泡を維持する。あるいは、前記気泡は、オーバーフローを備えるコンテナ中で形成される。前記オーバーフローを通じて、所定の高さを越える気泡が引き抜かれる。前記コンテナ中の前記溶液の量は、所定のレベルで維持されるべきである。
【0022】
本発明のさらに別の特徴によれば、前記界面活性剤により、気泡寿命を延ばしかつ気泡形成効率を向上させる。前記界面活性剤により、気泡構造および均一性をさらに向上させる。
【0023】
本発明のさらなる特徴によれば、前記噴流によって形成された繊維は、前記対電極から連続的に引き抜かれて、さらなる処理が施される。前記対電極は、複数の間隔を空けて配置された移動導体を含む。
【0024】
本発明の一態様によれば、圧力下でガスを前記溶液内に導入することにより、前記気泡が形成される。
【0025】
本発明のこの態様によるさらなる特徴によれば、気泡の生産に必要な圧力よりも実質的に高い圧力で、前記ガスを前記溶液内に導入する。前記ガスの導入率は、前記対電極からの所定の距離において前記気泡を維持するように、制御される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明について、ひとえに例示目的のために、図面を参照しながら説明する。
【0027】
【図1】繊維を生産するための装置の概略図である。
【図2a】図1中の装置を用いて形成された繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図2b】図1中の装置を用いて形成された繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図3】気泡から噴出するエレクトロスピニング噴流の画像である。
【図4a】8wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図4b】8wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図4c】8wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図5a】10wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図5b】10wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図5c】10wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図6a】12wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図6b】12wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【図6c】12wt%のポリビニルアルコール溶液と、界面活性剤としての濃度0.1、0.5および1xCMCのラウリル硫酸ナトリウムとを用いて生産された繊維のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(図面を参照した詳細な説明)
【0029】
本発明のプロセスは、紡糸溶液の表面上に気泡を形成する工程と、前記気泡の前記表面の上方において前記溶液から間隔を空けて配置された対電極との間に高電圧を付加することにより、前記気泡の前記表面から噴流を噴出させる工程とを含む。前記噴流は、前記対電極へと移動するにつれて、公知の様式で繊維に発展する。重要なことに、前記溶液は、前記気泡を安定させるように、適切な界面活性剤で処理される。
【0030】
界面活性剤は、表面張力を低減させかつ気泡安定性を促進させる作用を持つことが、周知である。界面活性剤は、当該溶液の特性に応じて広範囲で選択され、多様な界面活性剤から選択することができる。しかし、界面活性剤を選択する際の主要な要素は、当該溶液中に形成された気泡を安定させることにより前記気泡の寿命を延ばす当該界面活性剤の能力である。よって、前記気泡をできるだけ長期間安定させることで気泡壁破裂周期をできるだけ短くすると、好適である。
【0031】
泡安定化界面活性剤を追加することで気泡寿命を延ばすことにより、気泡が安定していない場合よりも、より安定した噴流を各気泡表面上に形成することができ、繊維に発展させることができる。気泡寿命を延ばし、それに関連して噴流を安定させることによっても、より均一な繊維を形成することができる。
【0032】
また、気泡が爆発するたびに、前記気泡壁の爆発を通じて、小液滴が形成される。先行技術において開示されているように、既に形成された繊維(特に、前記対電極上に形成されたウェブ上に)これらの液滴が落下した場合、これらの液滴は再度溶融し、そのため、これらの繊維を破壊する。前記溶液が界面活性剤によって安定されない場合、気泡壁が頻繁に破壊され、その結果、このような撥ね返った液滴が大量に形成される。
【0033】
泡安定化界面活性剤を添加すると、気泡寿命が延び、これにより、気泡壁破裂の頻度が低下する。これは、ポリマー溶液の液滴が撥ね返る量が低減し、得られる繊維の品質が向上することを意味する。
【0034】
適切な界面活性剤を選択する際に考慮されるさらなる要素として、気泡形成効率、気泡構造、および気泡均一性を向上させる液滴の能力がある。同様の条件下であっても、小気泡上でよりも大気泡上での方が噴流形成量が大きくなることが分かっているため、気泡構造は重要である。泡安定化界面活性剤を含まない溶液中では、大気泡の寿命はやはり小気泡の寿命よりも短くなる。
【0035】
一般的に、水性溶液の場合はアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および双性イオン(zitterionic)界面活性剤を使用することができ、有機溶液の場合はシリコーン界面活性剤を使用することができる。界面活性剤と同様の機能を果たす最近利用可能になった特殊なナノ粒子およびポリマーを用いることも、可能である。本明細書中、「界面活性剤」という用語は、その最も広範囲の意味を持ち、かつ、気泡安定化機能を持つ製品および他の任意の物質を含むべきである。所望であれば、界面活性剤の任意の適切な混合物を用いることも可能である。
【0036】
前記溶液中に泡を形成するための任意の適切な方法を用いることができ、例えば、ガス圧力下で溶液中にガスを吹き込む方法、ペンタンなどの揮発性液体を溶液中で膨張させるかまたはベーキングパウダーなどの粒状物質の溶液中で熱分解させることにより、前記溶液を攪拌する方法などを用いることができる。ほとんどの場合において、最も実際的かつ制御が容易な気泡形成方法は、溶液を通じてガスを吹き込む方法である。
【0037】
このような場合に界面活性剤を用いるとさらに有利である理由として、安定していない溶液中での気泡形成には高いガス流速が必要であり、そのため、気泡壁破裂の振幅が増加し、その結果、既に形成された繊維への撥ね返りの危険性が高まる点がある。
【0038】
用いられるノズルの種類およびガス圧力を調節すれば、上述した利点を有するより大きな気泡を形成することも可能である。
【0039】
溶液内にガスを導入する際の圧力は好適には、気泡生産に必要な圧力を実質的に越えなければよく、これにより、気泡安定性がさらに確保される。圧力が高いほど、気泡形成および爆発も高速になる。
【0040】
気泡安定化界面活性剤を含まないポリマー溶液中に気泡が吹き込まれた場合、気泡は短寿命化し、そのため、前記溶液中にガスを高速で吹き込むことによって新規気泡を常に生成する必要が出てくる。加えて、前記気泡生成が薄肉管を通じて前記溶液中にガスを吹き込むことにより行われた場合、前記気泡は、前記管の開口部の真上の前記溶液表面上の小領域内に主に集まる。気泡がこのような溶液中に多孔性膜を通じて吹き込まれた場合、気泡は前記膜の直接上の前記溶液表面上に主に形成され、そのため、前記溶液表面全体上に気泡を効率良く形成するためには、前記膜領域を拡大する必要が出てくる。
【0041】
これらの不利点は、安定剤を使用することにより、解消することができる。前記ポリマー溶液が実際に適切な界面活性剤を含む場合、気泡は、形成後より長期間にわたって持続する。すなわち、前記溶液中に吹き込まれる気泡形成ガスが、より効率良く使用される。すなわち、使用量も比例して低減し、(前記ガスが特殊ガスである場合に特に)入力材料コストの節約にも繋がる。同様に、前記ガスが圧縮空気である場合、使用量も比例して低減し、その結果、前記圧縮空気の生成に必要なエネルギーのコストの節約にも繋がる。加えて、このような溶液中で気泡が長寿命化すると、前記気泡は拡散する傾向となり、これにより、前記溶液表面の大きな領域が自動的に被覆され、その結果、繊維形成のために利用可能な領域をより良く利用することが可能になる。それと同時に、大きな気泡生産表面が不要となるため、前記溶液中へのガス導入方法も簡単になる。
【0042】
適切な界面活性剤および気泡形成手段を考える際、溶液上の均一な気泡または泡表面の生成も、考慮すべきである。表面の均一性が高いほど、得られる繊維の一貫性も高まる。気泡形成に用いる装置も、気泡または泡の表面から対電極への距離を所定の距離または距離範囲に制御する手段を提供すべきである。これを行うための簡単な方法は、オーバーフローを備えた溶液を保持するコンテナまたは槽を提供することである。前記オーバーフローを通じて、余分な気泡が引き抜かれ、分解され、その後前記溶液へと戻される。これは、槽外周において槽上部から間隔を空けた位置に溝部を設けることによって容易に達成可能であり、これにより、余分な泡を前記上部から前記溝部内へと流してリサイクルすることができる。
【0043】
より複雑な装置は、前記槽中の泡の高さを測定するためのデバイスの使用と、前記泡高さを所定のレベルで維持するための、例えば溶液中へのガス導入速度の制御による気泡形成の制御とを含み得る。
【0044】
任意の適切な対電極を用いることができる。前記対電極は好適には、前記対電極から前記繊維を連続的に除去することが可能なように構成され、PCT/IB2007/003177中に記載された、複数の間隔を空けて配置された移動伝導性ストリップを有する種類のものであり得る。しかし、繊維を対電極上で直接収集する必要は無い。
【0045】
以下の例は、上述した本発明の態様を例示する機能を果たす。
【0046】
例1
濃度6wt%の溶液を、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のポリアクリロニトリル(PAN)(Mw=210000g/mol)で作製した。薄肉プラスチック管状ノズルを用いて前記溶液中に圧縮空気を150〜3000ml/分の速度で吹き込むことにより、前記溶液の発泡性について試験した。形成された個々の気泡の寿命は、1秒よりもずっと短く、安定した気泡は得ることができなかった。次に、工業原料(JSYK 580(L580))からのシリコーン界面活性剤を濃度244g/lで前記溶液に添加し、前記発泡性試験を再度行った。その結果、前記槽の表面全体を被覆する安定した泡を生成することができ、個々の気泡の寿命は10〜80秒であった。
【0047】
図1を参照すると、前記界面活性剤を含む紡糸溶液(1)を細長槽(2)内に注入した。この細長槽(2)は、表面積が36cm2であり、かつ、有孔管(4)を有する。この有孔管(4)は、細長槽(2)の長さ方向にわたって中央に延び、標準的空気圧縮機(図示せず)からの空気供給を受け取る。対電極(6)は、前記槽のから13cm上方に配置した。
【0048】
その後、空気(7)を管(4)を通じて送り、流速を規制して、溶液(1)の表面上に安定した泡(8)を得た。次に、46kVDCの高電圧を溶液(1)と対電極(6)との間に付加した。
【0049】
泡(8)を形成する気泡の表面から複数のエレクトロスピニング噴流が噴出し、繊維が高速形成された。
【0050】
SEM分析によれば、前記6wt%溶液により、いくつかのビードを含みかつ平均径が1.18μmである繊維が得られた(図2aを参照)。8wt%のPAN溶液を244g/lの同一シリコーン界面活性剤と共に用いて、前記プロセスを再度行った。SEM分析によれば、形成された繊維はビード形成も無くより均一であり、平均繊維径は1.29μmであった(図2bを参照)。図3は、これらの条件下で形成された単一の気泡を示し、前記気泡の表面から複数の噴流が噴出している。
【0051】
同一条件下では、界面活性剤を用いないと、わずかな量の繊維しか形成することができない。これらの繊維は、爆発気泡として形成された撥ね返り液滴からの電場誘起エレクトロスピニングによって主に形成される。気泡壁の爆発時の液滴形成の性質は予測することが不可能であるため、液滴サイズの対応する変動、これらの液滴から形成される繊維の径も形態も、再現不可能である。
【0052】
例2
異なる濃度の界面活性剤ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と共に、溶液をポリビニルアルコール(PVOH)(Mw=72000g/mol、>98%加水分解)で蒸留水中で異なる濃度で以下のように調製した。
【表1】
【0053】
槽(2)と対電極(6)との間の距離を10cmに設定して、図1に示す装置を用いた。前記ポリマーおよび界面活性剤を含む前記溶液を前記槽に注入し、エアフローをオンに切り換えて、安定した泡が得られるように規制した。前記槽中の溶液と前記対電極との間に高電圧を付加し、前記電圧を、前記特定の溶液において噴流を開始させるために必要な電圧よりも若干高い電圧に調節した。この電圧は、25kV〜35kVであった。複数のエレクトロスピニング噴流が前記気泡の表面から噴出し、繊維が高速形成された。
【0054】
得られた繊維ウェブをSEM分析にかけたところ、前記界面活性剤濃度が増加し、前記気泡もより安定しているため、前記得られた繊維の品質が向上していることが明確に分かった。このような分析を行うため、前記対電極をアルミホイルシートで被覆し、その上に前記繊維を形成した。その後、前記シートのサンプルを分離し、SEM分析にかけた。
【0055】
図4a〜図4cは、前記8wt%溶液の結果を示す。図4a(0.1xCMC界面活性剤)において、初期に形成された一部の繊維が大きなポリマー撥ね返りによって破壊され、その後形成された繊維が溶媒蒸気によって部分的に溶解していることが、観察される。図4b(0.5xCMC界面活性剤)において、繊維がより乾燥している様子が分かるが、それでも、大きな撥ね返りに起因して前記繊維のうちの多くが破壊されている。図4c(1.0xCMC界面活性剤)において、ほとんどの繊維が乾燥し、撥ね返りも顕著に低減していることから、有意な向上が観察される。
【0056】
図5a〜図5cは、10wt%溶液についての同様の結果を示す。図5a(0.1xCMC界面活性剤)において、大きなポリマー撥ね返りによってほとんどの繊維が破壊されていることが観察される。図5b(0.5xCMC界面活性剤)において、繊維はより乾燥しているものの、多くの繊維がビード欠陥を示し、欠陥と繊維との間の体積比も高い。図5c(1.0xCMC界面活性剤)において、ほとんどの繊維が乾燥し、ビード欠陥と通常繊維との間の体積比も向上しているため、図5b中の結果と比較して改善が見られる。
【0057】
図6a〜図6cは、12wt%溶液の結果を示す。図6a(0.1xCMC界面活性剤)において、湿潤噴流が前記対電極上に堆積して、前記対電極の下側の繊維を破壊している部分において、暗線が観察される。図6b(0.5xCMC界面活性剤)において、乾燥した繊維の比は改善されているものの、それでも、一部不規則な繊維形態が観察される。図6c(1.0xCMC界面活性剤)において、ほとんどの繊維が乾燥し、繊維均一性も増加しているため、さらなる改善が観察される。
【0058】
これらの試験から、前記溶液中の気泡を安定化させることにより、繊維品質において劇的な効果が得られることが明らかである。撥ね返り低減に付随して繊維損傷を低減するだけでなく、繊維品質も向上する。
【0059】
繊維を生産するプロセスの実施形態(特に、使用される紡糸溶液および界面活性剤の種類に関するもの)と、気泡形成方法の実施形態と、繊維形成を行うための条件の実施形態とについては、本発明の範囲内にある実施形態が他にも多数存在することが、理解されることであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を生産するプロセスであって、
複数の気泡を紡糸溶液の表面上に形成する工程と、
前記溶液と、前記溶液から間隔を空けて配置された対電極との間に電圧を付加して、噴流を前記気泡から前記対電極へと伸長させる工程と、
を含み、
前記溶液は、前記気泡を安定させるように処理される、
点において特徴付けられる、プロセス。
【請求項2】
前記溶液は、界面活性剤で処理される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記界面活性剤は、水性溶液の場合は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および双性イオン界面活性剤から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記界面活性剤は、有機溶液の場合は、シリコーン界面活性剤を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記界面活性剤は気泡寿命を向上させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記界面活性剤は気泡形成効率を向上させる、請求項2〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記界面活性剤は、気泡構造および均一性を向上させる、請求項2〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記気泡は、前記対電極から所定の距離において維持される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記溶液中での気泡形成速度は、前記対電極からの所定の距離において前記気泡を維持するように制御される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記気泡は、オーバーフローを備えたコンテナ中に形成され、前記オーバーフローを通じて、所定の高さを越えた気泡が引き抜かれる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記コンテナ中の前記溶液の量は、所定のレベルに維持される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記噴流によって形成された繊維は、前記対電極から連続的に引き抜かれて、さらなる処理が施される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記対電極は、複数の間隔を空けて配置された移動導体を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記気泡は、圧力下でガスを前記溶液中に導入することにより形成される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ガスは、気泡を生産するために必要な圧力よりも実質的に高くない圧力で前記溶液中に導入される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ガスを前記溶液中に導入する速度は、前記対電極からの所定の距離において前記気泡を維持するように制御される、請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項1】
繊維を生産するプロセスであって、
複数の気泡を紡糸溶液の表面上に形成する工程と、
前記溶液と、前記溶液から間隔を空けて配置された対電極との間に電圧を付加して、噴流を前記気泡から前記対電極へと伸長させる工程と、
を含み、
前記溶液は、前記気泡を安定させるように処理される、
点において特徴付けられる、プロセス。
【請求項2】
前記溶液は、界面活性剤で処理される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記界面活性剤は、水性溶液の場合は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、および双性イオン界面活性剤から選択される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記界面活性剤は、有機溶液の場合は、シリコーン界面活性剤を含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記界面活性剤は気泡寿命を向上させる、請求項2〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記界面活性剤は気泡形成効率を向上させる、請求項2〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記界面活性剤は、気泡構造および均一性を向上させる、請求項2〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記気泡は、前記対電極から所定の距離において維持される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記溶液中での気泡形成速度は、前記対電極からの所定の距離において前記気泡を維持するように制御される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記気泡は、オーバーフローを備えたコンテナ中に形成され、前記オーバーフローを通じて、所定の高さを越えた気泡が引き抜かれる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
前記コンテナ中の前記溶液の量は、所定のレベルに維持される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記噴流によって形成された繊維は、前記対電極から連続的に引き抜かれて、さらなる処理が施される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記対電極は、複数の間隔を空けて配置された移動導体を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記気泡は、圧力下でガスを前記溶液中に導入することにより形成される、前記請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ガスは、気泡を生産するために必要な圧力よりも実質的に高くない圧力で前記溶液中に導入される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記ガスを前記溶液中に導入する速度は、前記対電極からの所定の距離において前記気泡を維持するように制御される、請求項14または15に記載のプロセス。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【公表番号】特表2011−518259(P2011−518259A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503610(P2010−503610)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000935
【国際公開番号】WO2008/125971
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509286569)ステレンボッシュ ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000935
【国際公開番号】WO2008/125971
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509286569)ステレンボッシュ ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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