説明

繊維用加工剤、ならびにそれを用いた繊維製品

【課題】夏場の太陽熱、あるいは溶鉱炉のような熱遮蔽を必要とする衣料、ユニフォームなどの繊維製品に於て、熱を効率的に遮蔽すると共に、人体から発するムレ感を効率的に吸放湿することにより、衣服内の環境を、より快適な状態にすることを目的にした加工剤の提供、ならびに該加工剤での繊維製品の加工。
【解決手段】太陽熱を遮蔽する効果の高い酸化セリウムなどと、吸放湿性の高い樹脂バインダーを組み合わせた加工剤でもって、繊維製品に強固に加工剤を付着・固着させることにより、夏場の着用快適性を向上せしめる。その際、さらにオイル物質で包摂した、負の水和熱を示す、所謂、溶解吸熱性を有する化合物ならびに、銀ナノコロイドなどを併用使用する事により着用快適性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツ衣料、シャツ、ブラウス、サマースーツ、パンツ、帽子、肌着、ソックスなどの衣料、消防服や溶鉱炉などの特殊ウエア、および 布団、シーツなどの寝装繊維製品、さらには、カーペット、マット、カーテンなどのインテリア繊維製品、カーシート、カーマットなどの自動車・車両内装繊維製品、テント、シェルター、フォローなど太陽熱を嫌う産業資材用途などを対象に、熱遮蔽効果、吸放湿効果、清涼効果、抗菌防臭効果などの優れた機能性を有する繊維加工剤ならびに該加工剤で加工した繊維製品を提供しょうとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維製品の清涼加工は重要な課題であり、業界でも該課題をクリアすべく、いろいろ技術検討がなされている。この清涼というキーワードに対し、機能性的には各種の方向から検討がなされている。具体的には、ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコール化合物の溶解吸熱(水和熱:負)を利用した加工(特許文献1〜5)、各種紫外線吸収剤(カット剤)を活用した加工(特許文献6〜8)、熱遮蔽性化合物を利用した加工(特許文献9〜12)、吸放湿加工、吸放湿ポリマーによる加工(特許文献13〜16)、などが挙げられるが、いずれも満足できるレベルのものではなく、業界では、さらなる性能の向上を望んでいるのが実状である。
【0003】
【特許文献1】特開平05−279938号公報
【特許文献2】特開平08−158186号公報
【特許文献3】特開平09−095864号公報
【特許文献4】特開2000−34679号公報
【特許文献5】特開2004−115964号公報
【特許文献6】特開平05−117508号公報
【特許文献7】特開平10−226518号公報
【特許文献8】特開2001−139926号公報
【特許文献9】特開平05−247723号公報
【特許文献10】特開平08−092842号公報
【特許文献11】特開2005−325481号公報
【特許文献12】特表2005−538016号公報
【特許文献13】特開平09−241925号公報
【特許文献14】特開平11−279842号公報
【特許文献15】特開2000−226766号公報
【特許文献16】特開2002−371470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衣料などの繊維製品を着用した際、夏場の高温多湿条件下では、ムレなどにより非常に不快感を覚えるが、この大きな要因は、夏場の太陽熱、高温状態での人体温の上昇、人体からの発汗(不感蒸泄)などが挙げられる。これらの不快要因が重なり、人間は非常に不快感を覚え、この状況の改善を強く要望するものである。本発明では、かかる不快状態を回避した着用時に快適な状況を作る衣料にすべく、清涼加工剤の開発ならびに、該加工剤で繊維製品を加工することにより、着用時の快適性を向上させることを課題とする。また、衣料以外のインテリアや寝具類、カーシート類、シェルターなどの産業資材類などにおいても、衣料と同様に快適な環境状況の創造が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、かかる課題をクリアするために、次のような手段を取るものである。すなわち、太陽などの熱遮蔽効果がある無機系化合物(A)と、該無機系化合物(A)を繊維表面に強固に付着・固着せしめるための樹脂バインダーなどの化合物(B)からなる加工剤を繊維に加工せしめるものである。その際、(B)の樹脂バインダー的な化合物に吸放湿性のある有機、無機化合物を用いるとさらに、本発明の目的を達成しやすくなる。また、キシリトール、エリスリトール、ソルビトールなどの糖アルコール類(C)を前記(A)、(B)に包摂させると(C)単独使用に比べ、相乗効果を発揮すると共に、洗濯耐久性も向上する傾向にある。さらには、銀ナノコロイド、ナノ粒子径の酸化亜鉛、銀ゼオライト、キトサン、ジンクピリチオンなどの抗菌剤の少なくとも1種(D)を併用使用すると、特に衣料などの場合に、着用時における人体汗に基づく抗菌防臭性能が付加される結果、より着用快適性を高めることになり、この点も本発明のポイントの一つである。
【発明の効果】
【0006】
前述の解決手段を採用することにより、夏場の太陽熱の遮蔽効果、人体からの発汗に基づく不感蒸泄(ムレ感の主原因)の処理、さらには、人体温の上昇を抑えるため、溶解吸熱(負の水和熱)性を有する化合物の併用・包摂、ナノ微粒子径の抗菌防臭剤の併用使用により、衣料の場合は着用快適性の向上を、インテリアや寝具、産業資材類の場合は、快適な環境状況作りに寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の効果を最大に発揮させるための具体的な内容について説明する。本発明における太陽熱を遮蔽する効果のある無機化合物(A)としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが挙げられるが、その中でも特に酸化セリウムが太陽などの熱遮蔽効果が高く、好ましい化合物と言える。また、太陽熱などの熱を遮蔽する効果のある無機化合物(A)は、カルシウム、マグネシウムの炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩酸塩などの無機化合物もしくは、シリカ、タルク、マイカの少なくとも1種でドープされていると、さらに熱遮蔽効果が著しく高まり、本発明の目的、課題をより達成することが出来る。その際のドープ材の比率としては、酸化セリウムや酸化亜鉛などの熱遮蔽剤が100に対し、0.1〜50、好ましくは、3〜20が良い。また、この酸化セリウムなどに酸化亜鉛や、酸化チタン、酸化アルミニウムを併用使用、あるいは、酸化亜鉛にγ−酸化アルミニウムなどを併用使用すると、各々単独使用した場合よりも効果が高まり、所謂、相乗効果が見受けられ、この点も本発明の大きな特徴の一つと言える。その際の配合割合は、酸化セリウムあるいは、酸化亜鉛が1に対し、他の無機化合物の使用量は0.1〜1.0の範囲が相乗効果が出やすい範囲である。なお、該無機化合物は通常の無機化合物スラリーと同様に、スラリー化をして、使用する方が作業性は良く、現実的である。
【0008】
次に、前述の無機化合物類を繊維表面に強固に付着・固着せしめるための化合物(B)について説明する。化合物(B)としては、シリコン・アクリル共重合物、エポキシシリコン樹脂、エポキシシリコン・ウレタン併用化合物もしくは、共重合物、アクリル・ウレタン併用化合物もしくは、共重合物が挙げられるが、中では特にアクリル・シリコン共重合物が、本発明の目的を達成するために好ましい化合物と言える。
【0009】
また、化合物(B)として、前述の樹脂バインダー的な化合物とは異なり、吸放湿性のある有機化合物、無機化合物の使用が、より効果的である。具体的には、有機化合物としては、ポリエチレンオキサイドあるいは、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドの共重合物、あるいは、それ以外の親水性基、例えば水酸基、カルボキシル基などを有する化合物を、通常よりも多く反応せしめることにより吸放湿性能を付与せしめたポリウレタン樹脂、または、ウレタンプレポリマー樹脂、さらには、吸放湿性を有するアクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルフォン酸(AMPS)などの吸放湿性能を有するモノマー単独、あるいは、それらにアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールを付加した各種ビニルモノマーなどを共重合した吸放湿性ポリマーが挙げられる。一方、吸放湿性のある無機化合物としては、シリカ化合物が挙げられるが、この場合は、前述の樹脂バインダーあるいは、吸放湿性能を有する有機化合物との併用使用が好ましい。
【0010】
本発明では、前述の化合物(A)、(B)を併用使用するが、その際の配合割合としては、(A):(B)が5:95〜95:5の範囲内が良く、中でも30:70〜70:30の範囲が本発明の目的を達成するためにより好ましい範囲と言える。この配合割合において、(A)化合物の配合割合がこの範囲を下回ると太陽熱の遮蔽効果が乏しくなり、一方、この範囲よりも(A)の配合割合が多くなると、特に衣料などに加工した場合、本発明に言う効果の洗濯耐久性が著しく低下してしまい、実用性の乏しいものになる。
【0011】
次に、本発明において、より清涼性を高めるために、化合物(C)を併用使用するが、化合物(C)は、水に溶解した際に吸熱反応(負の水和熱)を示す化合物を意味し、具体的には、キシリトール、エリスリトール、ソルビット化合物などを言う。これらの化合物(C)は水溶性なので、油溶性のオイル物質でくるんだエマルジョン系にして用いた方が、性能の洗濯耐久性が向上するので好ましい。この化合物(C)の配合割合としては、化合物(B)の10〜60%の範囲が好ましい。
【0012】
次に、本発明において、化合物(D)を併用使用するが、この化合物(D)は、具体的には、銀ナノコロイド、ナノ微粒子径の酸化亜鉛、銀ゼオライト、キトサン、ジンクピリチオンなどの抗菌防臭性を有する化合物を意味するが、これらの化合物を併用使用する意味は、前述したように、衣料などにして着用した際に、人体からの発汗した分泌物が衣料に付着して、一般常在菌により、分解されアンモニア臭、酢酸臭、イソ吉相酸臭、などの不快な臭気発生の基になり、着用快適性を損なうことになるので、それを予め防ぐ目的で前述の抗菌防臭剤を併用使用するものである。なお、その際の併用使用量としては、化合物(B)使用量の3〜50%の範囲が好ましい。
【0013】
本発明において、これらの加工剤を繊維布帛類に付与する手段としては、特に限定されるものではなく、通常のパッド−キュア法、パッド−スプレー法、浸漬法−キュア法、コーティング法など、いずれの方法でも良い。
【0014】
なお、本発明において、太陽熱などの熱遮蔽性データは次の方法で取った。
試験する繊維布帛類を切り取り温度センサーに巻き付けた後、自然太陽光を照射させて、そ
の温度上昇を測定する。測定は、常に未加工品と同時に行い、未加工品の上昇温度が45℃以上の時点での、未加工品対比の最大の温度差と最小の温度差を測定する。
サンプルサイズ:4cm×4cm
測定条件:自然太陽光照射状態で未加工布の上昇温度が45℃以上を示す。
測定時間:60分間
【0015】
また、本発明において、抗菌性能のデータ取りは、JIS L−1092の
静菌活性値測定法に基づいて行った。抗菌性能は、静菌活性値が2.2以上で効果ありと判
定される。
【0016】
本発明における清涼感(接触冷感)はQmax値の測定で行った。
測定装置:精密迅速物性測定装置 KES−F7サーモラボ2型
測定条件:20℃、65%RH
【0017】
本発明における洗濯耐久性のデータ取りは、JIS L−0217 103法に基づいて行った。
以下 実施例でもって、さらに本発明について説明する。
【実施例1】
【0018】
(熱遮蔽加工剤の調整)
酸化セリウム30%のスラリー状水性組成物98部に、乳化分散剤としてポリカルボン酸型
高分子界面活性剤2部を添加し、総量100部の加工剤を得た。
(繊維処理)
上述の加工剤4部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラソルブGH−S1(40%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部を水93部に均一に混合して加工液とした。木綿100%平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であった。
(比較例1)
実施例1の酸化セリウムの代わりに、酸化カルシウムを用いて実施例1と同じ加工剤を調整し、同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−0.5℃〜0℃であり、遮蔽効果はほとんどなかった。
(比較例2)
実施例1の酸化セリウムの代わりに、酸化マグネシウムを用いて実施例1と同じ加工剤を調整し、同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−0.4℃〜0℃であり、遮蔽効果はほとんどなかった。
【実施例2】
【0019】
(熱遮蔽加工剤の調整)
重量割合にして、酸化セリウム100に対し、炭酸カルシウム10をドープした化合物30%のスラリー状水性組成物98部に、乳化分散剤としてポリカルボン酸型高分子界面活性剤2部を添加し、総量100部の加工剤を得た。
(繊維処理)
上述の加工剤4部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラソルブGH−S1(40%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部を水93部に均一に混合して加工液とした。木綿100%平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−6.5℃〜−5.7℃であった。このものは、実施例1で示した酸化セリウム単独で、酸化カルシウムをドープしないもので−4.5〜−4.0℃であったのに対し、熱遮蔽効果は高く、明らかに炭酸カルシウムのドープ効果が見受けられる。
(比較例3)
実施例2のドープ剤である炭酸カルシウムの代わりに、炭酸銅を用いて実施例2と同じ加工剤を調整し、同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−4.7℃〜−4.3℃であり、遮蔽効果の向上性は小さかった。
(比較例4)
実施例2の酸化セリウムの代わりに、酸化鉄を用いて実施例2と同じ加工剤を調整し、同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−4.6℃〜−4.2℃であり、遮蔽効果の向上性はあまり無かった。
【実施例3】
【0020】
(熱遮蔽加工剤の調整)
カルシウムをドープした(ドープ比率は酸化セリウム:カルシウム=100:4)酸化セリウム30%のスラリー状水性組成物98部に、乳化分散剤としてポリカルボン酸型高分子界面活性剤2部を添加し、総量100部の加工剤を得た。
(繊維処理)
上述の加工剤4部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラソルブGH−S1)3部を水93部に均一に混合して加工液とした。木綿100%平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−5.3℃〜−4.8℃であり、実施例1と比較して相乗効果が見受けられた。
【実施例4】
【0021】
(熱遮蔽加工剤の調整)
酸化セリウム20%に酸化チタン(アナターゼ型二酸化チタン)10%を混合し、配合割合
を1:0.5とした。この混合物のスラリー状水性組成物98部に、乳化分散剤としてポリ
カルボン酸型高分子界面活性剤2部を添加し、総量100部の加工剤を得た。
(繊維処理)
上述の加工剤4部、吸放湿性を有する親水性ウレタン樹脂バインダー(パラレジンPU−X100(40%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部、水93部に均一に混合して加工液とした。木綿100%平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−5.5℃〜−5.0℃であり、相乗効果が見受けられた。
(比較例5)
酸化セリウム10.0%に酸化マグネシウム20.0%を混合し、固形配合割合を1.0:2.0とした。この混合物を用いて実施例2と同じ加工剤を調整し、同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であり、実施例1、4と比較して相乗効果は見受けられず、配合による効果は無かった。
(比較例6)
酸化セリウム29.7%に酸化マグネシウム0.3%を混合し、固形配合割合を1:0.01とした。この混合物を用いて実施例2と同じ加工剤を調整し、同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃であり、実施例1、4と比較して向上しなかった。
【実施例5】
【0022】
(熱遮蔽加工剤の調整)
酸化セリウム(A)30.7%のスラリー状水性組成物98部に、乳化分散剤としてポリカ
ルボン酸型高分子界面活性剤2部を添加し、総量100部の加工剤を得た。この加工剤の酸化セリウム分は30%となる。
(繊維処理)
上述の酸化セリウム(A)加工剤(酸化セリウム分30%)5部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂(B)加工剤(樹脂成分40%)4部を水91部に均一に混合して加工液とした。この加工液の(A):(B)の固形配合割合は、約50:50となる。木綿35%、ポリエステル系合成繊維65%からなる平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、加工初期が未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃、洗濯10回後が未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃で、良好な洗濯耐久性があった。また、本加工織物の20℃×65%RH下から30℃×80%RHでの24時間後の吸湿性は5.2%で、またこの状態から20℃×65%RH・24時間後の放湿性は4.8%で、吸放湿性も兼ね備えていた。
(比較例7)
実施例5の酸化セリウム(A)加工剤(酸化セリウム分30%)5部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂(B)加工剤(樹脂成分40%)0.1部を水94.9部に均一に混合して加工液とした。この加工液の(A):(B)の固形配合割合は、約97.4:2.6となる。この加工液にて実施例5と同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、加工初期が未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃、洗濯10回後が未加工布対比−1.0℃〜−0.5℃で、洗濯耐久性が実施例5よりも低下した。
(比較例8)
【0023】
実施例5の酸化セリウム(A)加工剤(酸化セリウム分30%)0.16部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂(B)加工剤(樹脂成分40%)12部を水96部に均一に混合して加工液とした。この加工液の(A):(B)の固形配合割合は、1:100となる。この加工液にて実施例5と同じ条件で繊維処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、加工初期が未加工布対比−0.5℃〜0℃、洗濯10回後が未加工布対比−0.5℃〜0℃で、太陽熱の遮蔽効果は無かった。
【実施例6】
【0024】
(繊維処理)
実施例5の酸化セリウム(A)加工剤(酸化セリウム分30%)5部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂(B)加工剤(樹脂成分40%)4部、キシリトール(C)の40%水溶液2部を水84部に均一に混合して加工液とした。この加工液の(B):(C)の固形配合割合は、100:50となる。ポリエステル系合成繊維100%からなる平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、加工初期が未加工布対比−5.4℃〜−4.9℃、洗濯10回後が未加工布対比−5.1℃〜−4.7℃で、実施例3と比較して、遮蔽効果の向上と良好な洗濯耐久性があった。また、この加工布の接触冷感(
Qmax値)は0.651と大きく、清涼効果の高い物になった。
(比較例9)
実施例6に用いたポリエステル100%からなる平織物を一切加工することなく、その状態で接触冷感(Qmax値)を測定したところ、0.443と本実施例に比べ低く、清涼感は無かった。
【実施例7】
【0025】
(ナノ粒子径酸化亜鉛加工剤の調整)
ナノ粒子径の酸化亜鉛(D)20.5%のスラリー状水性組成物98部に、乳化分散剤としてポリカルボン酸型高分子界面活性剤2部を添加し、総量100部の加工剤を得た。この加工剤のナノ粒子径酸化亜鉛分は20%となる。
(繊維処理)
実施例5の酸化セリウム(A)加工剤(酸化セリウム分30%)4部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂(B)加工剤(樹脂成分40%)5部、ナノ粒子径の酸化亜鉛(D)加工剤(ナノ粒子径酸化亜鉛分20%)4部を水82部に均一に混合して加工液とした。この加工液の(B):(D)の固形配合割合は、100:20となる。レーヨン35%、ポリエステル系合成繊維65%からなる平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、加工初期が未加工布対比−4.5℃〜−4.1℃、洗濯10回後が未加工布対比−4.5℃〜−4.0℃で、実施例3と比較して、遮蔽効果の向上と良好な洗濯耐久性があった。またこの加工布の抗菌性は、加工初期、洗濯10回後ともに静菌活性値が4.2以上で抗菌効果があった。
【実施例8】
【0026】
(コーティング加工)
酸化セリウム(A)12部と吸放湿性を有するポリウレタン樹脂(B)加工剤(樹脂成分40%)60部を水24部に均一に混合した後、増粘剤4部を添加してホモミキサー攪拌で均一に混合して総量100部のコーティング液を得た。このコーティング液の(A):(B)の固形配合割合は、約33:67となる。このコーティング液を、ポリエステル系合成繊維100%からなる平織物にナイフコーティング(厚み0.1mm)を行い、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、加工初期が未加工布対比−5.5℃〜−5.0℃、洗濯10回後が未加工布対比−5.5℃〜−5.0℃で、良好な遮蔽効果と洗濯耐久性があった。
【実施例9】
【0027】
(熱遮蔽加工剤の調整)
重量割合にして、酸化亜鉛100に対し、γ−酸化アルミニウム100の割合に混合した30%のスラリー状水性組成物98部に、乳化分散剤としてポリカルボン酸型高分子界面活性剤2部を添加し、総量100部の加工剤を得た。
(繊維処理)
後は実施例1と同様に繊維処理をした。具体的には、上述の加工剤4部、ならびにシリコン・アクリル樹脂バインダー(パラソルブGH−S1(40%):大原パラヂウム化学(株)社製)3部を水93部に均一に混合して加工液とした。木綿100%平織物を、この加工液に浸漬し、マングルで絞り100%にてパディング処理後、100℃で3分間乾燥、160℃で1分間熱処理をした。この加工布の太陽熱の遮蔽効果は、未加工布対比−5.5℃〜−5.1℃であった。
(比較例10)
実施例9中の酸化亜鉛とγ−酸化アルミニウムの混合物の変わりに酸化亜鉛100%の化合物を用いたもので、後は実施例9と同様に加工をした。このものの熱遮蔽効果は−4.0〜−3.6℃であった。このことから、熱遮蔽効果のある無機酸化物の配合により、相乗効果のあることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽などの熱遮蔽効果を有する無機化合物(A)と、繊維表面に該(A)を堅牢に付着せしめる化合物(B)からなる繊維用加工剤ならびに、該加工剤で加工された繊維製品。
【請求項2】
(A)の太陽などの熱遮蔽をする無機化合物が、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム化合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の繊維用加工剤、ならびに 該加工剤で加工された繊維製品。
【請求項3】
(A)の太陽などの熱遮蔽する無機化合物が、カルシウム、マグネシウム、シリカ化合物もしくは、タルク、マイカの少なくとも1種でドープされていることを特徴とする請求項1、2に記載の繊維用加工剤、ならびに 該加工剤で加工された繊維製品。
【請求項4】
繊維表面に(A)を堅牢に付着せしめる化合物(B)が、シリコン・アクリル共重合物、エポキシシリコン・ウレタンの併用化合物、アクリル・ウレタン併用化合物の少なくとも1種、および/または、吸放湿性を有する有機化合物、無機化合物の少なくとも1種を混合してなることを特徴とする請求項1〜2に記載の繊維用加工剤、ならびに 該加工剤で加工された繊維製品。
【請求項5】
(A)と(B)の比率が5:95 〜 95:5であることを特徴とする請求項1〜3に記載の繊維用加工剤、ならびに 該加工剤で加工された繊維製品。
【請求項6】
(B)の吸放湿性を有する有機化合物、無機化合物が、親水性ウレタン系化合物、アクリル酸、メタクリル酸、AMPSなどをグラフト重合したポリアミド系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、あるいは、シリカ化合物の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4に記載の加工剤、ならびに 該加工剤で加工した繊維製品。
【請求項7】
(C)として、キシリトール、エリスリトール、ソルビット化合物の少なくとも1種、および/または、(D)として、銀ナノコロイド、銀ゼオライト、ナノ粒子径の酸化亜鉛、キトサン、ジンクピリチオンの少なくとも1種を併用することを特徴とする請求項1〜5に記載の繊維用加工剤、ならびに 該加工剤で加工された繊維製品。
【請求項8】
加工方法がパッド−キュア法、コーティング法、スプレー−キュア法、浸漬−キュア法、印捺−キュア法のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6に記載の繊維製品。

【公開番号】特開2008−81876(P2008−81876A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262365(P2006−262365)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(391034938)大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】