説明

繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物、繊維積層体の製造方法及び合成皮革

【課題】 表皮層の剥離強度、耐屈曲性及び加工風合いに優れた繊維積層体を得ることができる繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を提供する。
【解決手段】
有機ポリイソシアネート、イソシアネート基との反応性を有する活性水素を少なくとも2個以上含有する非晶性ポリカーボネートポリオール、親水基成分、ポリシロキサン成分及び界面活性剤成分とを含有している繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物、繊維積層体の製造方法及び合成皮革に関し、より詳細には、剥離強度、加工風合い及び耐屈曲性に優れた表皮層を形成し得る繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物、これを用いた繊維積層体の製造方法及び合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の繊維積層体、例えば合成皮革は、有機溶剤系ポリウレタン樹脂を離型紙上に塗布し乾燥させて表皮層を形成した後、その表皮層上にポリウレタン樹脂の有機溶媒溶液に架橋剤を配合した接着剤を塗布して接着剤層を形成し、乾燥させた後、繊維基材と貼り合せるドライラミネート法により製造されている。
【0003】
しかし近年、地球環境、安全、衛生などの観点から、各種の分野で有機溶剤系ポリウレタン樹脂から水系ポリウレタン樹脂への転換が図られ、繊維積層体の分野に於いても有機溶剤系ポリウレタン樹脂からの水系ポリウレタン樹脂を用いた代替技術が検討されている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0004】
しかし、水系ウレタン樹脂を用いた場合、未だ満足すべき物性を有した合成皮革は得られていない。例えば、従来の水系ポリウレタンをそのまま表皮層に用いた場合、造膜性が不良となり、表皮層の剥離強度、耐屈曲性及び加工風合いの点では、有機溶剤系ポリウレタン樹脂には及ばない結果となっている。
【特許文献1】特開平6−81275号公報
【特許文献2】特開2000−108289号公報
【特許文献3】特開2002−88662号公報
【特許文献4】特開2003−119677号公報
【特許文献5】特開2003−129385号公報
【特許文献6】特開2000−290881号公報
【特許文献7】特開2002−115184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を解決するために為されたものであり、本発明の目的は、表皮層の剥離強度、耐屈曲性及び加工風合いの点で、有機溶剤系ポリウレタン樹脂に匹敵し又はこれを上回る性能を発揮し得る繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物、繊維積層体の製造方法及び合成皮革を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物は、(A成分)有機ポリイソシアネートと、(B成分)イソシアネート基との反応性を有する活性水素を少なくとも2個以上含有するポリオール成分と、(C成分)親水基成分と、(E成分)界面活性剤成分とを含有している繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体であって、前記(B成分)ポリオール成分は、非晶性ポリカーボネートポリオールを含有していることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記(B成分)ポリオール成分である非晶性ポリカーボネートポリオールは、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、並びに1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネートから選択されるものであることが好ましい。
【0008】
また、上記繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物は、(D成分)ポリシロキサン成分を更に含有していてもよい。
【0009】
前記(D成分)ポリシロキサン成分は、ジメチルシリコーンオイル及び/又は側鎖にイソシアネート基との反応性のある複数のヒドロキシル基を有するシリコーンポリオールであることが好ましい。
【0010】
上記繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物には、最終的に(F成分)水系架橋剤が更に配合されて使用される。
【0011】
前記(F成分)水系架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、ブロックドイソシアネート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びこれらの組み合わせから選択されるものを使用することができる。
【0012】
本発明の繊維積層体の製造方法は、離型紙に上記の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、次に水系ポリウレタン樹脂の発泡コーティング層を形成し、更に接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により繊維積層体を得ることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の繊維積層体の製造方法は、離型紙に上記の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、次に接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、水系ポリウレタン樹脂を発泡コーティング加工した繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により繊維積層体を得ることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の繊維積層体の製造方法は、離型紙に上記の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、次に接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により繊維積層体を得ることを特徴とする。
【0015】
本発明の合成皮革は、上記水系樹脂水分散体組成物を用いたドライラミネート法により製造されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を使用すれば、有機溶剤を全く含まない水系ポリウレタン樹脂を用いながらも、溶剤系樹脂レベルの非常に優れた耐屈曲性を発現し、かつタックがなく、優れたソフト風合いを有する繊維積層体及び合成皮革が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に於ける繊維積層体とは、繊維基材上にポリウレタン樹脂からなる表皮層が密着状態で形成された状態のものをいい、本発明に於ける表皮層とは、繊維積層体の表面に形成される層をいい、繊維積層体に強度を付与するとともに意匠性を向上させるための着色、光沢調整、凹凸模様などを施したポリウレタン樹脂からなる層のことをいう。表皮層は、繊維積層体の表面強度・意匠性向上のために数層から構成される場合も含む。
【0018】
また、本発明における繊維基材とは、一般に用いられる繊維基材であれば特に制限はなく、公知のものを使用することができる。繊維基材としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル等の合成繊維及びこれらの改良繊維、羊毛、絹、木綿、麻等の天然繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維等、並びにこれらの混用繊維からなる織編布、不織布等の繊維シート状物を例示することができる。更に、これら繊維シート状物に有機溶剤系、水性又は無溶剤系のポリウレタン樹脂がコーティング加工(発泡コーティングも含む)又は含浸加工されてマイクロポーラスを形成したものも挙げられ、本発明においては特に好ましいのはマイクロポーラスを有する繊維シート状物である。本発明におけるマイクロポーラスとは、付着した樹脂中に均一な多数の孔が分散している状態を示すものである。なお、繊維の太さ及び形状は特に限定されず、極細繊維を用いてもよい。
【0019】
本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物の調製に使用される(A成分)有機ポリイソシアネートとして、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加MDI(H12MDI)などの有機ポリイソシアネート化合物が挙げられるが、無黄変性を要求される場合には、HMDIなどの脂肪族イソシアネート、IPDI、H12MDIなどの脂環族イソシアネート、XDI、TMXDIなどの芳脂環族イソシアネートが好ましい。
【0020】
また、本発明に於ける(B成分)のイソシアネート基との反応性を有する活性水素を少なくとも2個以上含有するポリオール成分には、必須成分として非晶性ポリカーボネートポリオールが用いられる。非晶性ポリカーボネートポリオールとしては、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネートポリオール、が挙げられ、これらは旭化成ケミカルズ(株)製のPCDL T−5651、T−5652、T−5650J、T−4671、T−4672、やクラレ(株)製のクラレポリオールC−590、C−1050、C−1050R,C−1090,C−2050、C−2050R,C−2070、C−2070R、C−2090、C−2090R、C−3090、C−3090R、C−4090、C−4090R、C−5090、C−5090R、などが挙げられる。非晶性ポリカーボネートポリオールを使用することにより、低温での表皮物性、具体的には皮膜の耐屈曲性が向上するという利点が得られる。
【0021】
その他に、(B成分)として、発明で得られる効果を損なわない範囲において、1,6−ヘキサンジオールのカーボネートポリオールや、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールを使用することができる。
【0022】
ポリエーテルポリオールとしては、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのトリオール類や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミンなどのアルカノールアミン類などを出発物質とするものが挙げられる。また、四官能アルコール成分として、ペンタエリスリトールを出発物質とするものが挙げられる。これら多価アルコールを出発物質として、塩基性触媒の存在下、アルキレンオキサイドを重付加することによりポリエーテルポリオールが合成される。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0023】
上記で示したポリエステルポリオールを構成する二塩基酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のような芳香族二塩基酸が挙げられる。ポリエステルポリオールを構成する二価アルコール成分としては、エチレングルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、などのような脂肪族グリコール及びシクロヘキサンジオール等の脂環式グリコールやビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のような芳香族グリコール等が挙げられる。これら二塩基酸成分と二価アルコール成分を縮合反応してポリエステルポリオールが得られる。
【0024】
(B成分)ポリオール成分と、(A成分)有機ポリイソシアネート成分と、その他の成分とを公知の方法により、30〜130℃、30分〜50時間反応させることにより、ウレタンプレポリマーが得られる。
【0025】
本発明に於ける(C成分)親水基成分としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基及びその塩を有する化合物、分子内に少なくとも1個の活性水素原子を有しかつエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、エチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基を含有するノニオン性の化合物等が挙げられる。
【0026】
カルボキシル基を含有する化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボン酸含有化合物及びこれらの誘導体並びにそれらの塩に加え、これらを使用して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。更に、アラニン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン等のアミノ酸類、コハク酸、アジピン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水トリメリット酸等のカルボン酸類も挙げられる。
【0027】
また、スルホン酸基含有化合物としては、例えば、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸含有化合物及びこれらの誘導体、並びにこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリアミドポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0028】
これらのカルボキシル基又はスルホン酸基は、中和して塩にすることにより、最終的に得られるポリウレタン樹脂を水分散性にすることができる。この場合の中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類、アンモニア等の揮発性塩基等が挙げられる。中和は、ウレタン化反応前、反応中、又は反応後の何れにおいても行うことができる。
【0029】
ノニオン性基含有化合物としては、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30重量%以上含有し、分子中に少なくとも1個以上の活性水素を含有する分子量300〜20,000の化合物が好ましく、例えば、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそのモノアルキルエーテル等のノニオン性基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0030】
上記性ポリウレタン樹脂に親水性基を導入するに際しては、上記化合物をそれぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて使用してもよい。
【0031】
上記(C成分)親水基成分の含有量は、親水性基がカルボキシル基、スルホン酸基等のイオン性基の場合は、最終的に得られるポリウレタン樹脂固形分100重量部当り少なくとも0.005〜0.2当量であることが好ましく、0.01〜0.1当量であることがより好ましい。ノニオン性基含有化合物を使用する場合は、最終的に得られるポリウレタン樹脂固形分100重量部当り少なくとも該化合物を1〜30重量部とし、特に5〜20重量部使用したものであることが好ましい。
【0032】
本発明に於ける(D成分)ポリシロキサン成分としては、ジメチルシロキサン、ジメチルシロキサンの側鎖に又は末端にOH基を有するポリシロキサンを例示することができる。好ましい(D成分)ポリシロキサン成分は、ポリシロキサンの側鎖にヒドロキシル基を複数個有するシリコーンポリオール、ジメチルシリコーンオイルである。(D成分)ポリシロキサン成分は、乳化物の形で使用することができる。(D成分)ポリシロキサン成分を配合することにより、耐熱性が向上し、タッチ感も向上するという利点が得られる。
【0033】
本発明に於ける(E成分)界面活性剤成分として、アニオン性界面活性剤であるスルホコハク酸ナトリウム、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物のスルファミン酸塩を例示することができる。
【0034】
本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物に於いては、鎖伸張剤を添加してもよい。鎖伸張剤として、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール及びオキシアルキレン誘導体を使用することができる。また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、3−メチル−1,5パンタンジール、プロピレングリコールなどの低分子量の鎖伸張剤を本発明の効果を損なわない範囲内で使用することができる。
【0035】
本発明に於ける(F成分)水系架橋剤としては、エポキシ系、カルボジイミド系、オキサゾリジン系、ブロツクイソシアネート系、イソシアネート系等の各種架橋剤を使用することができる。エポキシ系、カルボジイミド系及びオキサゾリジン系の各種架橋剤をカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を含有する本発明の組成物に使用する場合、ポリウレタン樹脂が有するカルボキシル基に対して、各種架橋性官能基のモル比が好ましくは100:1〜100:120の範囲となるように、更に好ましくはモル比100:3〜100:80の範囲となるように配合するのが好ましい。ブロツクイソシアネート系架橋剤やイソシアネート系架橋剤の場合には、ポリウレタン樹脂固形分:架橋剤固形分=100:0.1〜100:50の範囲が好ましく、更には100:1〜100:30の範囲が好ましい。
【0036】
なお、ウレタンプレポリマーの合成においては、イソシアネート基と不活性で、かつ、生成するウレタンプレポリマーを溶解し得る溶剤を用いてもよい。これらの溶剤として、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。反応で使用したこれら親水性有機溶剤は最終的に除去するのが好ましい。
【0037】
更に、本発明に用いられるポリウレタン水分散体に副資材として、酸化防止剤、UV剤、耐光剤、発泡剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、他の水性樹脂、各種フィラー等を、性能を損なわない限り添加することが出来る。
【0038】
本発明の繊維積層体は、特に限定されないが、離型紙に本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成した後、水系ポリウレタン樹脂を用いて発泡コーティング層を形成し、更に接着剤を塗布した後、水分を揮発させ、直ちに繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により製造することができる。
【0039】
また、本発明の繊維積層体は、離型紙に本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、直ちに水系ポリウレタン樹脂を発泡コーティング加工した繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により製造することもできる。
【0040】
更に、本発明の繊維積層体は、離型紙に本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、直ちに繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により製造することもできる。
【0041】
上記繊維積層体の具体例としては合成皮革を挙げることができる。本発明の製造方法により得られる合成皮革は、鞄、靴、袋物、車両、家具、衣料、サンダル、雑貨などに使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、本発明は下記の具体的な実施例にのみ制限されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に明示しない限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0043】
<A>皮層用ポリウレタン樹脂水分散体の合成
(実施例A−1)
クラレポリオールC−2090(クラレ(株)製;3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;MW=2000、水酸基価(OHV)=56.1mgKOH/g)216.2部、トリメチロールプロパン3.7部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール7.1部、イソホロンジイソシアネート66.0部、メチルエチルケトン145.6部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は3.40(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸8.5部、トリエチルアミン6.4部、メチルエチルケトン88.2部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.20(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))6.5部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン3.4部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、更にエラスフィニッシュS−65(ジメチルシリコーンオイルエマルジョン;第一工業製薬(株)製)を57部を配合して固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体A−1を得た。
【0044】
(実施例A−2)
PCDL T−5652(旭化成ケミカルズ(株)製;1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;MW=2000、OHV=56.1mgKOH/g)203.9部、トリメチロールプロパン4.0部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール7.6部、イソホロンジイソシアネート44.8部、ヘキサメチレンジイソシアネート17.0部、メチルエチルケトン137.8部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は3.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸9.1部、トリエチルアミン6.8部、メチルエチルケトン83.5部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.00(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))6.2部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン3.0部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、更にエラスフィニッシュS−65(ジメチルシリコーンオイルエマルジョン;第一工業製薬(株)製)を70.6部を配合して、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体A−2を得た。
【0045】
(実施例A−3)
PCDL T−4672(旭化成ケミカルズ(株)製;1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;MW=2000、OHV=56.1mgKOH/g)290.1部、トリメチロールプロパン5.7部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール10.3部、シリコンフルイドLO−31(旭化成ワッカーシリコ―ン(株);シリコーンポリオール;MW=3197、OHV=35.1mgKOH/g)、水添MDI68.2部、ヘキサメチレンジイソシアネート50.5部、メチルエチルケトン222.1部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸21.3部、トリエチルアミン15.2部、メチルエチルケトン42.4部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.5(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))10.1部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン6.0部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体A−3を得た。
【0046】
(実施例A−4)
クラレポリオールC−2090(クラレ(株)製;3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;MW=2000、OHV=56.1mgKOH/g)108.1部、PCDL T−6002(旭化成ケミカルズ(株)製;1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;MW=2000、OHV=56.1mgKOH/g)108.1部、トリメチロールプロパン4.2部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール7.6部、イソホロンジイソシアネート87.8部、メチルエチルケトン148.0部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は5.60(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸15.0部、トリエチルアミン10.2部、メチルエチルケトン60.9部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.70(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))6.8部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン2.7部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体A−4を得た。
【0047】
(実施例A−5)
PCDL T−4672(旭化成ケミカルズ(株)製;1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;MW=2000、OHV=56.1mgKOH/g)145.0部、PolyTHF−2000(BASF(株)製;ポリテトラメチレングリコール;Mw=2000、OHV=56.1mgKOH/g)145.0部、トリメチロールプロパン5.7部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール10.3部、シリコンフルイドLO−31(旭化成ワッカーシリコ―ン(株);シリコーンポリオール;Mw=3197、OHV=35.1mgKOH/g)、ピュアMDIを88.2部、HMDIを30.5部、メチルエチルケトン222.1部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸21.3部、トリエチルアミン15.2部、メチルエチルケトン42.4部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.5(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))10.1部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン6.0部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体A−5を得た。
【0048】
(実施例A−6)
PCDL T−4672(旭化成ケミカルズ(株)製,1,4−ブタンジオール及び1,6−へキサンジオールのカーボネート,MW=2000,OHV=56.1mgKOH/g)220部、トリメチロールプロパン5部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール8部、イソホロンジイソシアネート92部、X−22−176D(信越化学工業(株),シリコーンポリオール、OHV=23.2mgKOH/g)24部、メチルエチルケトン175部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離のイソシアネート基の含有量(固形分換算)は、4.3%であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸16部、トリエチルアミン10部、メチルエチルケトン80部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離のイソシアネート基含有量(固形分換算)は、1.4%であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))7部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン4部を溶解した水溶液を添加し、遊離のイソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体A−6を得た。
【0049】
(比較例a−1)
PCDL T−6002(旭化成ケミカルズ(株)製;1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;Mw=2000、OHV=56.1mgKOH/g)203.9部、トリメチロールプロパン4.0部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール7.6部、イソホロンジイソシアネート44.8部、ヘキサメチレンジイソシアネート17.0部、メチルエチルケトン137.8部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は3.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸9.1部、トリエチルアミン6.8部、メチルエチルケトン83.5部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.00(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))6.2部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン3.0部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、更にエラスフィニッシュS−65(ジメチルシリコーンオイルエマルジョン;第一工業製薬(株)製)を47部を配合して、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体a−1を得た。
【0050】
(比較例a−2)
PCDL T−6002(旭化成ケミカルズ(株)製;1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;Mw=2000,OHV=56.1mgKOH/g)290.1部、トリメチロールプロパン5.7部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール10.3部、シリコンフルイドLO−31(旭化成ワッカーシリコ―ン(株);シリコーンポリオール;Mw=3197、OHV=35.1mgKOH/g)、水添MDI67.7部、ヘキサメチレンジイソシアネート51.0部、メチルエチルケトン222.1部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸21.3部、トリエチルアミン15.2部、メチルエチルケトン42.4部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.5(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))10.1部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン6.0部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体a−2を得た。
【0051】
(比較例a−3)
PolyTHF2000(BASF(株)製;ポリテトラメチレングリコール;MW=2000、OHV=56.1mgKOH/g)203.9部、トリメチロールプロパン4.0部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール7.6部、イソホロンジイソシアネート44.8部、ヘキサメチレンジイソシアネート17.0部、メチルエチルケトン137.8部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は3.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸9.1部、トリエチルアミン6.8部、メチルエチルケトン83.5部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.00(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、ハイテノールNF−13(アニオン系界面活性剤;第一工業製薬(株))6.2部添加し、十分に撹拌した後、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン3.0部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、更にエラスフィニッシュS−65(ジメチルシリコーンオイルエマルジョン;第一工業製薬(株)製)を47部を配合して、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体a−3を得た。
【0052】
(比較例a−4)
PCDL T−6002(旭化成ケミカルズ(株)製;1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;Mw=2000、OHV=56.1mgKOH/g)290.1部、トリメチロールプロパン5.7部、3−メチル−1,5−ペンタンジオール10.3部、シリコンフルイドLO−31(旭化成ワッカーシリコ―ン(株);シリコーンポリオール;Mw=3197、OHV=35.1mgKOH/g)、水添MDI67.7部、ヘキサメチレンジイソシアネート51.0部、メチルエチルケトン222.1部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸21.3部、トリエチルアミン15.2部、メチルエチルケトン42.4部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.5(%)であった。このプレポリマーを35℃まで冷却し、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン6.0部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分30%のポリウレタン樹脂水分散体a−4を得た(界面活性剤を使用しない)。
【0053】
<接着層用ポリウレタン樹脂水分散体の合成>
(合成例B)
クラレポリオールC−2090(クラレ(株)製;Mw=2000、OHV=56.1mgKOH/g)300部、イソホロンジイソシアネート49.5部、メチルエチルケトン105部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸12.0部、トリエチルアミン6.3部、メチルエチルケトン75.7部を添加し、70〜75℃で反応させ、遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)が消失するまで反応を継続した。撹拌下において水で希釈したあと、メチルエチルケトンを留去し、固形分40%の分子末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂水分散体Bを得た。
【0054】
<発泡層用ポリウレタン樹脂水分散体の合成>
(合成例C−1)
ポリテトラメチレングリコール(BASF(株)製;Mw=1000,OHV=112.2mgKOH/g)313.7部、トリメチロールプロパン4.4部、水添MDI(住化バイエルウレタン(株)製;ディスモジュールW)39.1部、HMDI(旭化成(株);デユラネート50MS)50.1部、メチルエチルケトン104部、ジオクチル錫ジラウレート0.02部を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.80(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸2.0部、トリエチルアミン1.5部、メチルエチルケトン94.5部を添加し、70〜75℃で180分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.50(%)であった。更にこのプレポリマーに、ノイゲンEA−157(第一工業製薬(株):非イオン界面活性剤)22.4部を添加した後、撹拌下において水で希釈し、更にジプロピレントリアミン5.8部を添加し、20分間撹拌した。遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分60%のポリウレタン樹脂水分散体C−1(カルボキシル基含有)を得た。
【0055】
(合成例C−2)
ラベカーブ106((株)製;1,6−ヘキサンジオールのカーボネイト;Mw=2000、OHV=56.1mgKOH/g)300部、イソホロンジイソシアネート83.3部、メチルエチルケトン114部、を添加し、70〜75℃で90分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は4.90(%)であった。次に、系の温度を50℃とし、ジメチロールプロピオン酸20.1部、トリエチルアミン1.5部、メチルエチルケトン85.2部を添加し、70〜75℃で60分間反応させた。このときの遊離イソシアネート基含有量(固形分換算)は1.60(%)であった。このプレポリマーを40℃まで冷却した後、ノイゲンEA−157(第一工業製薬(株)製:非イオン界面活性剤)27.0部添加し、希釈水を添加し、更にジプロピレントリアミン6.6部を溶解した水溶液を添加し、遊離イソシアネート基(%)の消失を確認した後、メチルエチルケトンを留去し、固形分60%のポリウレタン樹脂水分散体C−2(カルボキシル基含有)を得た。
【0056】
<表皮層の作成>
(塗工液の調製…表皮層X1〜X5、X10)
表1に示すように、本発明に係るポリウレタン樹脂水分散体A−1〜A−6を使用して塗工液を調製した。同様に、比較のためのポリウレタン樹脂水分散体a−1〜4を使用して表1に示す組成の塗工液を調製した。
【0057】
【表1】

【0058】
(表皮層X1〜X5、X10、及び表皮層x6〜x9の作成)
上記の塗工液をそれぞれ、離型紙上にウェットの膜厚200μmで塗布した。続けて80℃×2分間で乾燥処理した後、更に130℃×2分熱処理し、表皮層X1〜X5、X10、及び表皮層x6〜x9を得た。ただし、表皮層x−9は表面に割れが発生したため不適合とみなし、以降の試験は実施しなかった。
【0059】
<繊維積層体の作成>
(繊維積層体W1〜W10、W33、W34、繊維積層体w11〜w16)
本発明に係る繊維積層体W1〜W10、W33、W34、及び比較のための繊維積層体w11〜w16を作成した。まず、表2及び表3に示す組成からなる2種類の塗工液をハンドミキサーで3分間機械撹拌し機械発泡させて発泡倍率2.0倍の発泡塗工液Z−1及びZ−2を得た。この発泡塗工液を、離型紙上に形成した上述の表皮層X1〜X5、X10、及び表皮層x6〜x8の上にコータでコーティング(ウェット膜厚1mm)し、90℃×4分間ピンテンターで乾燥した後、150℃×3分キュア処理し、発泡層を形成した(表4及び表5)。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
これとは別に、接着層形成層として、上記のポリウレタン樹脂水分散体B100部に、アクアネート210(日本ポリウレタン工業(株)製;水分散性ポリイソシアネート)5部及びF−2915B(第一工業製薬(株);会合型増粘剤)0.5部を添加し、接着剤塗工液Yを調整した。
【0063】
この接着剤塗工液Yを、先に上記で形成した発泡層の上に、塗布厚160μm(ウェット)で塗布した(表4及び表5)。続いて90℃×3分間乾燥処理を行い、次に目付け100(g/cm2)のポリエステル不織布を、120℃×圧力2.0kg/cm2の条件下で貼り合わせ、更に40℃×48時間熟成した。次に、離型紙を剥離し、本発明に係る繊維積層体W1〜W10、W33、W34、及び比較のための繊維積層体w11〜w16を得た。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
(繊維積層体W17〜W21、W35、繊維積層体w22〜w24)
本発明に係る繊維積層体W17〜W21、W35、及び比較のための繊維積層体w22〜w24を作成した。まず、表6に示す組成からなる塗工液をハンドミキサーで3分間機械撹拌を行うことにより機械発泡させて発泡倍率2.0倍の発泡塗工液Z−3を得た。次に、この発泡塗工液を目付け100(g/cm2)のポリエステル不織布にコータでコーティング(ウェット膜厚1mm)し、90℃×4分間ピンテンターで乾燥した後、150℃×3分キュア処理し、発泡させたものを基材Iとした。
【0067】
【表6】

【0068】
これとは別に、ポリウレタン樹脂水分散体B100部に、アクアネート210(日本ポリウレタン工業(株)製;水分散性ポリイソシアネート)5部及びF−2915B(第一工業製薬(株);会合型増粘剤)0.5部添加し、接着剤塗工液Yを調整した。
【0069】
この接着剤塗工液Yを、先に上記で形成した表皮層X1〜X5、X10、及びx6〜x8の上に、塗布厚160μm(ウェット)で塗布した。続いて乾燥処理90℃×3分を行った後、基材Iの発泡層側と、120℃×圧力2.0kg/cm2の条件下で貼り合わせ、更に40℃×48時間熟成し、離型紙を剥離して、本発明に係る繊維積層体W17〜W21、W35、及び比較のための繊維積層体w22〜w24を得た(表7)。
【0070】
【表7】

【0071】
(繊維積層体W25〜W29、W36、繊維積層体w30〜w32)
ポリウレタン樹脂水分散体B100部に、アクアネート210(日本ポリウレタン工業(株)製;水分散性ポリイソシアネート)5部及びF−2915B(第一工業製薬(株);会合型増粘剤)0.5部添加し、接着剤塗工液Yを調整した。
【0072】
先に離型紙上に形成した表皮層X1〜X5、X10、及びx6〜x8の上に、接着剤塗工液Yを塗布厚160μm(ウェット)で塗布した。続いて乾燥処理90℃×3分を行った後、目付け100(g/cm2)の未処理のポリエステル不織布に対して、120℃×圧力2.0kg/cm2の条件下で貼り合わせ、更に40℃×48時間熟成し、離型紙から剥離し、本発明に係る繊維積層体W25〜W29、W36、及び比較のための繊維積層体w30〜w32を得た(表8)。
【0073】
【表8】

【0074】
<繊維積層体の評価及び評価基準>
上記で作成した繊維積層体につき、剥離試験、耐屈曲性試験及び加工布風合いの評価を行った。その結果を表9〜表12に示した。評価内容及び評価基準は、以下のとおりである。
【0075】
(1)剥離試験(剥離強度及び剥離部分の評価)
剥離強度は、2.5cm幅のホットメルトテープを試料表面(表皮面)に置いてアイロンで加熱してホットメルトテープを接着し、テープ幅に沿って試料を切断し、試料の一部を剥離し、基材とテープをチャックで挟んでオートグラフで剥離強度を測定した。また、剥離部分の評価は、剥離強度試験後の剥離部分を観察することにより行った。
【0076】
(2)耐屈曲性試験
JIS K 6545に準拠し、低温・高温兼用型フレキシオメータIT−LFT(インテック(株)製)を用いて、(A)常温で5万回、(B)−10℃で2万回、屈曲性試験を実施し、試験後の状態を目視で確認した。評価基準は以下のとおりである。
【0077】
○…外観上変化なし
△…若干、損傷が認められる
×…損傷がかなり激しい。
【0078】
(3)加工布風合いの評価
加工布の風合いを触感により評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0079】
○…柔らかい
△…少し硬さが残る
×…硬い。
【0080】
【表9】

【0081】
【表10】

【0082】
【表11】

【0083】
【表12】

【0084】
<評価結果>
本発明に係る繊維積層体は、何れの評価項目でも良好な結果を示した。これに対して比較のための繊維積層体は、剥離試験では本発明に係る繊維積層体と同等の結果を示したが、屈曲性試験及び加工布風合いの点では、本発明に係る繊維積層体には及ばない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いると、表皮層の剥離強度及び加工風合い優れた耐屈曲性を発現する繊維積層体が得られるので、合成皮革を使用する鞄、靴、袋物、車両、家具、衣料、サンダル、雑貨などの分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A成分)有機ポリイソシアネートと、
(B成分)イソシアネート基との反応性を有する活性水素を少なくとも2個以上含有するポリオール成分と、
(C成分)親水基成分と、
(E成分)界面活性剤成分と
を含有している繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体であって、
前記(B成分)ポリオール成分は、非晶性ポリカーボネートポリオールを含有していることを特徴とする繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物。
【請求項2】
前記(B成分)ポリオール成分である非晶性ポリカーボネートポリオールが、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、並びに1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールのカーボネートから選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物。
【請求項3】
(D成分)ポリシロキサン成分
を更に含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物。
【請求項4】
前記(D成分)ポリシロキサン成分が、ジメチルシリコーンオイル及び/又は側鎖にイソシアネート基との反応性のある複数のヒドロキシル基を有するシリコーンポリオールであることを特徴とする請求項3に記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物。
【請求項5】
(F成分)水系架橋剤を更に含有する請求項1乃至4の何れかに記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物。
【請求項6】
前記(F成分)水系架橋剤が、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、ブロックドイソシアネート系架橋剤、イソシアネート系架橋剤及びこれらの組み合わせから選択されるものである請求項5記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物。
【請求項7】
離型紙に請求項1乃至6の何れかに記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、次に水系ポリウレタン樹脂の発泡コーティング層を形成し、更に接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により繊維積層体を得る繊維積層体の製造方法。
【請求項8】
離型紙に請求項1乃至6の何れかに記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、次に接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、水系ポリウレタン樹脂を発泡コーティング加工した繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により繊維積層体を得る繊維積層体の製造方法。
【請求項9】
離型紙に請求項1乃至6の何れかに記載の繊維積層体表皮層用ポリウレタン樹脂水分散体組成物を用いて表皮層を形成し、次に接着剤を塗布し、水分を揮発させた後、繊維基材を貼り合わせて接着するドライラミネート法により繊維積層体を得る繊維積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れかの繊維積層体の製造方法により得られる合成皮革。

【公開番号】特開2007−119749(P2007−119749A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260538(P2006−260538)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】