説明

織機における情報表示装置

【課題】経糸の経路の調整作業の指針となる経糸の経路に関する数値情報等を表示する上方表示装置を提供する。
【解決手段】
経糸の経路に影響を及ぼす複数の規制部材として少なくとも経糸案内ロール12と、複数枚の綜絖枠にそれぞれ装着されたヘルド15とを備える織機において、前記規制部材の配置に関する位置情報が設定される設定装置17と、前記位置情報に基づき経糸の経路に関する数値情報を演算によって求める演算装置20と、前記演算装置20によって演算された前記数値情報及び/又は前記数値情報に基づく線図を画面上に表示する表示装置21とを含む情報表示装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機、特に、経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材として少なくとも経糸案内ロールと複数枚の綜絖枠にそれぞれ装着されたヘルドとを備え、経糸ビームから引き出された経糸が、前記経糸案内ロールによって織前方向へ向けて転向され、前記複数枚の綜絖枠のうちの対応する綜絖枠のヘルドに通された後に織前へ導かれる織機における情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すとおり、一般的な織機において、経糸101は、経糸101が巻き付けられた経糸ビーム102から送り出され、経糸101を案内する複数のガイドロール103(経糸張力を張力センサ104により検出するテンションロール105も含む。以下同じ。)に巻掛けられて織前106方向に転向させられた後、経糸切れを検出する経糸切れ検出装置としてのドロッパ装置107等を経由し、複数枚配列された綜絖枠108のヘルド109に通されて織前106に至るように案内されている。そして、綜絖枠108(ヘルド109)の上下運動(開口運動)により、複数本の経糸101によって開口が形成され、この開口の内部に緯入れされた緯糸110が筬111により織前106へ筬打ちされて経糸101に織り込まれることにより織布112が形成される。また、このようにして製織された織布112は、服巻ロール113等を経て巻取ロール114に巻き取られる。
【0003】
複数のガイドロール103のうちの最もヘルド109側に位置するガイドロール(以下、「経糸案内ロール」という。図1に示す例では、テンションロール105が「経糸案内ロール」に相当する。)から織前106までの間の経糸101の経路(以下、この経路を本願では単に「経糸の経路」という。)は、製織を開始する前に行われる製織準備段階で、製織条件(例えば、経糸101や緯糸110の種類、経糸101の設定張力等)に応じて調整されるのが一般的である。また、経糸の経路は、経糸101の開口運動により変化するから、必要に応じて閉口時の経糸の経路、開口時の経糸の経路のいずれか又は両方について調整が行われる。
【0004】
そして、その調整は、経糸の経路が前記のテンションロール105やドロッパ装置107、綜絖枠108のヘルド109等、経糸の経路上に存在して経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材と、織前106との位置関係によって定まるものであるため、これら経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材の少なくとも一つの位置を調整することにより行われる。具体的には、テンションロール105の位置を変更したり、ヘルド109に開口運動を行わせるための綜絖枠108の開口量を調整することにより行われる。
【0005】
このような調整に関する従来技術として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1では、経糸の経路に影響を及ぼす部材としての案内ローラを支持する支持アームの高さ位置を調整ねじで調整することにより、経糸の経路の調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−10240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、経糸の経路を調整するため、特許文献1に開示された装置等を用いて作業者が経糸の経路に影響を及ぼす部材の位置を調整した場合、従来においては、その調整の適否は、調整後に実際に試織を行ってみて所望の状態で製織が行われるか否かで判断するしかなく、調整量をどの程度にするかについては作業者の経験や勘に頼っているのが現状である。すなわち、製織に影響する経糸の経路の状態として、例えば、経糸の経路長や開口時における経糸の開口角度が挙げられるが、これらの経路長や開口角度について、前記部材の位置を調整した後に織機を寸動させて経糸が開口した状態としても、目視で把握できる範囲では、その状態が製織に対し適切か否かを作業者が正確に把握することは困難であり、そのため、実際に試織を行ってみて判断するしかないのが現状である。従って、従来の調整作業においては、まず、初期調整を作業者の経験や勘に基づいて行い、その状態で一旦試織を行ってみて更に調整が必要かどうか判断し、必要な場合には再度調整するといった試行錯誤をともなうものとなり、調整作業に時間と手間を要している。
【0008】
なお、製織に影響する経糸の経路の状態としての経糸の経路長について、この経路長は、開口時において最も長くなり、それに伴って経糸の張力が最も高まる状態となる。従って、経糸の経路を調整した結果として開口時における経糸の張力が高くなりすぎると、製織時における経糸の張力が過張力の状態となり、織布の品質の低下を招いたり、場合によっては経糸切れが頻発してしまう。ただし、この経糸の張力状態については、製織準備段階において織機を経糸が開口した状態としても、目視で把握することは困難であり、その適否の判断については、前記のような試織が必要となる。
【0009】
また、開口時における経糸の開口角度について、経糸がスパン糸等の毛羽が発生しやすい糸である場合、最大開口時に各経糸の経路が側方から見て揃っていない状態、すなわち上下にある程度分散してばらけている状態となるように各経糸の経路(最大開口時における経糸の開口角度)を調整することが好ましいとされている。その理由は、開口曲線にドエルを持たせて製織中における最大開口時に経糸の開口状態を維持するように設定されている場合において、各経糸の経路が揃い過ぎていると、各経糸の毛羽同士が絡み、開口不良を招いたり、場合によっては経糸切れを招くおそれがあるからである。ただし、各経糸の分散の度合い(以下、「分散度合い」という。)を大きくしすぎると、綜絖枠ごとの経糸の張力状態に大きな差が生じ、かえって製織に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、この経糸の分散度合いについては、実際には、目視で判別しづらい程度で各経糸の経路を分散させる必要がある。そのため、前記と同様に、製織準備段階において織機を経糸が開口した状態としても、その適否を目視で判断できず、前記のような試織が必要となる。
【0010】
以上のように、経糸の経路の調整を何の指針もなしに作業者の経験や勘にのみ頼って行うのは効率的ではなく、特に、開口時の経糸の経路の調整において、経糸の張力を考慮しつつ、経糸の経路を分散させるのは、経験の浅い作業者にとっては極めて難しい作業といえる。
【0011】
そこで、本発明の課題は、経糸の経路の調整作業の指針となる経糸の経路に関する数値情報等を表示器に表示して、経糸の経路の状態を示す経糸の経路長や開口時における経糸の開口角度等を作業者が正確に把握できるようにし、作業者が経糸の経路の調整作業を容易かつ短時間に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題の下に、本発明は、織機における情報表示装置を以下のように構成した。すなわち、本発明の織機における情報表示装置は、経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材として少なくとも経糸案内ロールと、複数枚の綜絖枠にそれぞれ装着されたヘルドとを備えた織機であって、経糸ビームから引き出された経糸が、前記経糸案内ロールによって織前方向へ向けて転向され、前記複数枚の綜絖枠のうちの対応する綜絖枠のヘルドに通された後、織前へ導かれる織機を前提とし、前記複数の部材の配置に関する位置情報が設定される設定装置と、前記位置情報に基づき経糸の経路に関する数値情報を演算によって求める演算装置と、前記演算装置によって演算された前記数値情報及び/又は前記数値情報に基づく線図を画面上に表示する表示装置とを含むことを特徴としている。
【0013】
ここで、「経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材」とは、上下方向において経糸の位置を規制する部材(以下、「経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材」を「規制部材」ともいう。)であり、前記した経糸案内ロールや、開口装置における綜絖枠のヘルドだけに限らず、例えば、織機に経糸切れ検出装置(ドロッパ装置)が設けられている場合には、経糸切れ検出装置が備える経糸の位置を規制する部材を含み、織機にその他の規制部材が設けられている場合にはそれらも含む概念である。
【0014】
「経糸案内ロール」とは、経糸を案内する複数のガイドロールのうちの最もヘルド側に位置するものをいい、前記複数のガイドロールには、経糸張力を検出するテンションロールも含まれる。
【0015】
「複数の部材の配置」とは、それら部材の水平方向(前後方向)及び鉛直方向(上下方向)に関する位置であり、設定装置には位置情報として所定の基準位置(基準面)から各規制部材までの距離が設定される。なお、各部材の位置とは、部材全体の位置、部材が設けられる装置全体の位置ではなく、例えば、規制部材がヘルドであればヘルドの一部であって経糸が通される部分であるメールの位置、規制部材がドロッパ装置に備わるオーバルチューブであればオーバルチューブと経糸とが接触する部分の位置となる。なお、ヘルドのメールとは、ヘルドに設けられた経糸を通す貫通穴のことである。また、ヘルドのように動作をともなう部材の場合は、位置情報として、任意の複数の主軸回転角度(クランク角度)における位置、例えば経糸の最大開口時、閉口時等に対応する位置を設定してもよいし、特定のクランク角における位置のみを設定するようにしてもよい。
【0016】
また、本件で言う「経糸」は、厳密に言えば「経糸シート」である。経糸ビームから引き出される多数本の経糸は、綜絖枠ごとにシート状に分割され、分割されたシート状の経糸群すなわち経糸シートは対応する綜絖枠のヘルドに通される。ここで、同一の綜絖枠のヘルドに通された経糸シートに含まれる経糸は同じ経路を辿るものであるから、本発明において、経糸の経路とは、経糸シートの経路と同義である。
【0017】
前記演算装置を、前記位置情報に基づき、各綜絖枠における織前からヘルドまでの水平方向の距離と前記織前を通る水平面である織前側基準面から経糸最大開口時における当該ヘルドのメールまでの鉛直方向の距離とから、前記数値情報として、各綜絖枠よりも織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値を各綜絖枠ごとに求めるものとしてもよい。
【0018】
ここで、「各綜絖枠よりも織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値」とは、例えば、各綜絖枠よりも織前側(各経糸の経路を側方から見て当該経糸が通されるヘルドよりも織前側をいう。以下同じ。)において、所定の基準面(水平面)に対し各経糸が為す角度(図5(a)参照)や、ヘルドと平行な仮想の鉛直面に対し各経糸が為す角度等(図8参照)とすることができる。また、綜絖枠と織前との間の特定の位置で上下方向に延在する仮想面と、各経糸とが交差する上下方向の位置とすることもできる(図9参照)。
【0019】
前記演算装置を、前記位置情報に基づき、各綜絖枠におけるヘルドから当該ヘルドに対し反織前側の最も近い位置で経糸の経路を規制する反織前側規制部までの水平方向の距離と前記反織前側規制部を通る水平面である反織前側基準面から経糸最大開口時における当該ヘルドのメールまでの鉛直方向の距離とから、前記数値情報として、各綜絖枠よりも反織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値を各綜絖枠ごとに求めるものとしてもよい。
【0020】
ここで、「反織前側規制部」とは、各綜絖枠よりも反織前側(各経糸の経路を側方から見て当該経糸が通されるヘルドよりも経糸案内ロール側をいう。以下同じ。)において、ヘルドに対し最も近い位置で経糸の経路を規制する規制部材の一部であって、当該規制部材と経糸とが接触する部分のうちの経糸の進行方向における最終接触点をいう。
【0021】
なお、綜絖枠よりも織前側では、織前と規制部材としてのヘルドとの間に他の規制部材が存在することはないが、綜絖枠よりも反織前側では、綜絖枠と規制部材としての経糸案内ロールとの間に他の規制部材、例えば糸規制パイプ、経糸切れ検出装置に備わる規制部材等が設けられる場合がある。例として、綜絖枠と経糸案内ロールとの間に経糸切れ検出装置が設けられ、経糸の開口時において、経糸の経路が経糸切れ検出装置に備わる規制部材の一部によって規制される場合には、その規制部材の一部が反織前側規制部となる。一方、経糸案内ロールとヘルドとの間に他の規制部材が設けられていない場合は、経糸案内ロールの一部が反織前側規制部となる。
【0022】
さらに、経糸の開口時、経糸は、上側開口位置へもたらされるものと、下側開口位置へもたらされるものとに分かれるが、そのいずれか一方の経路のみを規制する規制部材が存在する。例えば、経糸切れ検出装置がドロッパ装置である場合、ドロッパ装置の規制部材であるオーバルチューブは、下側開口位置へもたらされる経糸の経路のみを規制し、上側開口位置へもたらされる経糸の経路は規制しない。したがって、綜絖枠と、経糸案内ロールとの間にドロッパ装置しか存在しないような場合(例えば、図7参照)、下側開口位置にある経糸の反織前側規制部はオーバルチューブの一部となり、上側開口位置にある経糸の反織前側規制部は経糸案内ロールの一部となる。この場合、反織前側規制部は2つ存在し、それら反織前側規制部を通る反織前側基準面も2つ存在することとなる。
【0023】
「各綜絖枠よりも反織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値」とは、例えば、各綜絖枠よりも反織前側において、所定の基準面(水平面)に対し各経糸が為す角度(図5(b)参照)や、ヘルドと平行な仮想の鉛直面に対し各経糸が為す角度等(図8参照)とすることができる。また、綜絖枠と反織前側規制部との間の特定の位置で上下方向に延在する仮想面と、各経糸とが交差する上下方向の位置とすることもできる(図9参照)。
【0024】
前記演算装置を、前記位置情報に基づき、以下の距離に関する情報から、前記数値情報として、各経糸の最大開口時における経糸案内ロールから織前までの経路長を各綜絖枠ごとに求めるものとしてもよい。
・各綜絖枠における織前からヘルドまでの水平方向の距離
・各綜絖枠における前記織前側基準面から経糸最大開口時におけるヘルドのメールまでの鉛直方向の距離
・各綜絖枠におけるヘルドから前記反織前側規制部までの水平方向の距離
・各綜絖枠における前記反織前側基準面から経糸最大開口時におけるヘルドのメールまでの鉛直方向の距離
・前記反織前側規制部から経糸案内ロールにおける経糸規制部までの水平方向の距離
・経糸案内ロールにおける経糸規制部を通る水平面である送出側基準面から前記反織前側規制部(反織前側基準面)までの鉛直方向の距離
【0025】
ここで、「経糸案内ロールにおける経糸規制部」とは、経糸案内ロールと経糸とが接触する部分のうちの経糸の進行方向における最終接触点をいう。
【0026】
なお、前記したとおり、経糸案内ロールとヘルドとの間に他の規制部材が設けられていない場合は、経糸案内ロールの経糸規制部が反織前側規制部となるため、「前記反織前側規制部から経糸案内ロールにおける経糸規制部までの水平方向の距離」、及び「経糸案内ロールにおける経糸規制部を通る水平面である送出側基準面から前記反織前側規制部(反織前側基準面)までの鉛直方向の距離」は零となる。
【0027】
また、織前と経糸案内ロールにおける経糸規制部との鉛直方向における高さ位置が同じであり、ワープライン(織前と経糸案内ロールにおける経糸規制部とを結ぶ線をいう、以下同じ。)が水平の場合には、織前側基準面及び送出側基準面はいずれもワープラインに一致したものとなる(例えば図2参照)。ただし、織機によっては、経糸案内ロールにおける経糸規制部の位置を織前よりも高い位置とし、ワープラインを傾斜させた状態とする場合がある(例えば図7参照)。この場合は、織前側基準面及び送出側基準面はいずれもワープラインとは一致したものとならず、送出側基準面は、織前側基準面よりも鉛直方向において高い位置となる。
【0028】
前記表示装置を、少なくとも2以上の綜絖枠に関する前記数値情報及び/又は前記数値情報に基づく線図を一画面上に同時に表示するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材の配置に関する位置情報に基づき経糸の経路に関する数値情報を求め、求めた前記数値情報を表示装置の画面上に前記数値情報及び/又は前記数値情報に基づく線図として表示するから、作業者は、その表示を参照することにより、従来目視では把握困難であった製織に影響する経糸の経路の状態を数値情報等として正確に把握することができる。これにより、従来は、経糸の経路の状態が製織に対し適切か否かは試織をしなければ判断できなかったのに対し、本発明では、表示装置に表示された数値情報等を指針とすることにより、経糸の経路の状態が製織に対し適切か否かを試織をすることなく判断することができる。また、経糸の経路に影響を及ぼす部材の位置の機械的な調整をした場合、当該部材の配置に関する位置情報を設定し直せば、表示装置の画面上に調整後の経糸の経路の状態が数値情報等として表示されるため、その調整が適正であるか否の初期的な判断が試織なしで可能となり、経糸の経路の調整作業を容易かつ短時間に行えるようになる。
【0030】
また、経糸の経路の状態を数値化して数値情報とすることにより、その数値情報をその状態で行われた製織の評価や発生した問題等と関連づけてデータベース化しておけば、製織準備段階で行われる経糸の経路の調整を、更に容易かつ適正に行うことができるようになる。
【0031】
経糸の経路に関する数値情報として、各綜絖枠よりも織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値を各綜絖枠ごとに求め、これらを表示装置の画面上に数値情報及び/又は数値情報に基づく線図として表示するから、作業者は、その表示を参照することにより、従来目視では把握困難であった各綜絖枠よりも織前側に位置する各経糸の分散度合いを数値情報等として正確に把握することができる。これにより、作業者は、特に、経糸にスパン糸等の毛羽が発生しやすい糸を用いる場合、前記数値情報等を指針として綜絖枠ごとの経糸の張力状態に大きな差を生じさせない程度、すなわち、目視で判別しづらい程度に各経糸の経路を分散させることが可能となり、製織に悪影響を及ぼすことなく、各経糸の経路が揃い過ぎていることに起因する各経糸の毛羽同士の絡み、開口不良及び経糸切れを防止することができる。また、経糸の経路に影響を及ぼす部材の位置の機械的な調整をした場合、当該部材の配置に関する位置情報を設定し直せば、表示装置の画面上に調整後の各経糸の分散度合いが数値情報等として表示されるため、その調整が適正であるか否の初期的な判断が試織なしで可能となり、経糸の分散度合いの調整作業を容易かつ短時間に行えるようになる。
【0032】
経糸の経路に関する数値情報として、各綜絖枠よりも反織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値を各綜絖枠ごとに求め、これらを表示装置の画面上に数値情報及び/又は数値情報に基づく線図として表示するから、作業者は、その表示を参照することにより、従来目視では把握困難であった各綜絖枠よりも反織前側に位置する各経糸の分散度合いを数値情報等として正確に把握することができる。これにより、前記と同様の効果を得ることができる。
【0033】
経糸の経路に関する数値情報として、各経糸の最大開口時における経糸案内ロールから織前までの経路長を各綜絖枠ごとに求め、これらを表示装置の画面上に数値情報及び/又は数値情報に基づく線図として表示するから、作業者は、その表示を参照することにより、従来目視では把握困難であった経糸の経路長を数値情報等として正確に把握することができる。これにより、表示装置に表示された経路長に関する数値情報等を指針として、経糸の経路長が製織に対し適切か否かを試織をすることなく判断することができる。また、経糸の経路に影響を及ぼす部材の位置の機械的な調整をした場合、当該部材の配置に関する位置情報を設定し直せば、表示装置の画面上に調整後の経糸の経路長が数値情報等として表示されるため、その調整が適正であるか否の初期的な判断が試織なしで可能となり、経糸の経路長の調整作業を容易かつ短時間に行えるようになる。
【0034】
少なくとも2以上の綜絖枠に関する数値情報及び/又は数値情報に基づく線図を表示装置の一画面上に同時に表示すれば、各綜絖枠ごとに求められた数値情報等を一目で比較でき、各経糸の経路を容易に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の前提となる織機の概略を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施例の経糸の経路を示す説明図である。
【図3】情報表示装置の構成を示すブロック線図である。
【図4】情報表示装置の表示画面の一例を示す図である。
【図5】図2に示す実施例の経糸の経路の部分拡大図であり、(a)は綜絖枠よりも織前側の経路を示し、(b)は綜絖枠よりも反織前側の経路を示し、(c)は反織前側規制部からテンションロールまでの経路を示す。
【図6】綜絖枠と、ヘルドと、経糸との位置関係を示す正面図であり、(a)は閉口時、(b)は上側開口時、(c)は下側開口時での位置関係を示している。
【図7】本発明の第2の実施例の経糸の経路を示す説明図である。
【図8】本発明の変形例における糸開口角の説明図である。
【図9】本発明の変形例における経糸の分散度合いに関連する数値の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の第1の実施例について、図2〜図6に基づいて説明する。
【0037】
図2は、本発明の情報表示装置10が適用される織機の開口状態での経糸11の経路を示している。本実施例の織機は、経糸11の経路に影響を及ぼす複数の部材、すなわち規制部材として、経糸案内ロールとしてのテンションロール12、経糸切れ検出装置としてのドロッパ装置のオーバルチューブ13(下糸規制パイプとも呼ばれる。)、経糸11の開口時に経糸11が上方へ移動するのを規制する上糸規制パイプ14、及び8枚の図示しない綜絖枠にそれぞれ装着されたヘルド15を有している。なお、図2では、ドロッパ装置を構成する部分のうちオーバルチューブ13のみを記載し、他の部分は省略している。また、ヘルド15は、前後方向におけるヘルド15のメール24の中心(経糸11が屈曲する位置)を通る一点鎖線として示しており、ヘルド15を支持する綜絖枠は省略している。各規制部材は、図示しない調整手段により、それら部材の水平方向(前後方向)や鉛直方向(上下方向)に関して位置調整ができるようになっている。
【0038】
上糸規制パイプ14及びオーバルチューブ13は、綜絖枠すなわちヘルド15とテンションロール12との間に配置されている。上糸規制パイプ14は、綜絖枠よりも反織前側において、ヘルド15に対し最も近い位置で開口時に上側開口位置へもたらされる経糸11を規制する規制部材であり、オーバルチューブ13は、綜絖枠よりも反織前側において、ヘルド15に対し最も近い位置で開口時に下側開口位置へもたらされる経糸11を規制する規制部材である。したがって、本実施例では、本発明にいう反織前側規制部は2つ存在し、上側開口位置にもたらされる経糸11の反織前側規制部は、上糸規制パイプ14の一部であり、下側開口位置にもたらされる経糸11の反織前側規制部は、オーバルチューブ13の一部である。具体的には、上糸規制パイプ14と経糸11とが接触する部分のうちの経糸11の進行方向における最終接触点、及びオーバルチューブ13と経糸11とが接触する部分のうちの経糸11の進行方向における最終接触点の2つの部位が本実施例における反織前側規制部13a,14aである。そして、オーバルチューブ13の反織前側規制部13aを通る水平面と、上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aを通る水平面の2つが本実施例における反織前側基準面となる。
【0039】
そして、本実施例では、本発明でいう経糸の経路に関する数値情報(以下、「経糸経路数値情報」という。)を、8枚ある綜絖枠のそれぞれに対応する各経糸シート(以下、単に「経糸」という。)ごとに求めるものとする。本実施例で求める経糸経路数値情報は、各経糸11が最大開口時において対応する基準面と為す角度(以下、「糸開口角」ともいう。)、及び各経糸の最大開口時におけるテンションロール12から織前16までの経路長(以下、単に「経路長」ともいう。)の2種類である。
【0040】
ここで、糸開口角は、本発明でいう経糸の分散度合いに関連する数値に相当し、最大開口時における各経糸11の上下方向に関する分散度合いに関連する指標となる。本実施例では、綜絖枠すなわちヘルド15よりも織前側においては織前16を通る水平面、つまり本発明にいう織前側基準面を糸開口角の基準面とし、綜絖枠よりも反織前側においては前記2つの反織前側規制部13a,14aを通る水平面、つまり反織前側基準面を糸開口角の基準面としている。また、糸開口角は、図2に示すとおり、綜絖枠の前後及び経糸開口位置の上下に対応して枠前上糸開口角θFTn,枠前下糸開口角θFBn,枠後上糸開口角θRTn,枠後下糸開口角θRBnの4つが存在し、それらは各綜絖枠ごとに求められる。なお、各糸開口角を表す記号に付した添え字nは、8枚ある綜絖枠の「枠No.」を表し、本実施例では、織前16に最も近い綜絖枠から順に1から8までの数字を付している。
【0041】
なお、図2で示した構成以外の織機の構成は、背景技術で説明した図1に示した一般的な織機と共通であるので、説明を省略する。また、本実施例では、織機上に設けられた図示しない入力設定装置が本発明の情報表示装置10の機能を併せ持つものとする。入力設定装置は、例えば、織機に関する各種設定を行うタッチパネル等からなる。ただし、本発明の情報表示装置10は、織機と独立した装置、例えば、本発明の機能を実行するソフトウェアがインストールされたパーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0042】
また、本実施例では、テンションロール12の経糸規制部12a(経糸の進行方向における経糸11とテンションロール12との最終接触点)と織前16とを結ぶワープラインWLが水平な織機を例示しているが、図7に示す実施例で説明するように、ワープラインWLが傾斜している織機についても本発明は適用可能である。
【0043】
次に、図3を参照して本発明の情報表示装置10を説明する。情報表示装置10は、各規制部材の配置に関する位置情報が設定される設定装置17と、規制部材の位置情報に基づき経糸経路数値情報を演算によって求める演算装置20と、演算装置20によって演算された数値情報及び/又は数値情報に基づく線図を画面上に表示する表示装置21とを含む。
【0044】
設定装置17は、各規制部材の位置情報を入力するための入力部18と、入力された位置情報を記憶するメモリ等からなる記憶部19とを備えている。なお、入力部18は、専用のキーボードであってもよいし、後述する表示装置21の表示器23と兼用のタッチパネル式のものあってもよい。この入力部18は、規制部材の位置情報を入力するのに用いられるほか、演算装置20及び表示装置21を操作するためにも用いられる。
【0045】
記憶部19には、規制部材の配置に関する位置情報、すなわち規制部材の水平方向(前後方向)及び鉛直方向(上下方向)に関する位置、具体的には、所定の基準位置(基準面)から各規制部材までの水平方向距離及び鉛直方向距離が設定・記憶される。なお、本実施例では、図2に示すとおり、水平方向の基準位置は織前16の位置としている。また、鉛直方向の基準位置は、織前16を通る水平面すなわち本発明にいう織前側基準面としている。ただし、前記したとおり、本実施例の織機は、ワープラインWLが水平であるから、鉛直方向の基準位置である織前側基準面はワープラインWLと一致する。例えば、オーバルチューブ13の位置情報は、織前16からオーバルチューブ13の反織前側規制部13aまでの水平方向距離cと、ワープラインWLからオーバルチューブ13の反織前側規制部13aまでの鉛直方向距離sとが入力される。なお、他の各規制部材に関して入力される位置情報の詳細については後述する。
【0046】
図3に示すとおり、入力部18から入力された規制部材の位置情報は記憶部19に記憶される。また、記憶部19には、規制部材の位置情報に加え、経糸経路数値情報としての糸開口角及び経路長を求めるための演算式、及びその演算を実行させるための演算実行プログラムが設定・記憶されている。さらに、記憶部19には、演算装置20で演算された経糸経路数値情報を後述する表示装置21の表示器23に所定の態様で表示させるための表示制御プログラムが設定・記憶されている。
【0047】
演算装置20は、入力部18が操作されることにともなって出力される表示指令信号に応じて、記憶部19から演算実行プログラムを読み込み、記憶部19に記憶されている演算式及び規制部材の位置情報に基づいて経糸経路数値情報としての糸開口角及び経路長を演算により算出し、算出した演算結果を表示装置21の後述する表示制御部22へ出力する。
【0048】
表示装置21は、液晶パネル等からなる表示器23と、表示器の表示を制御する表示制御部22とを備えている。表示制御部22は演算装置20から出力された演算結果を受け取ると、記憶部19から表示制御プログラムを読み込み、その表示プログラムにしたがって前記演算結果すなわち経糸経路数値情報を予め設定された表示態様で表示器23に表示する。なお、その表示態様としては、前記演算結果を数値情報として表示する態様、前記演算結果を演算結果に基づく線図として表示する態様及び数値情報と前記線図とを同一画面上に表示する態様の3つの態様が挙げられる。
【0049】
図4は、表示器23における経糸経路数値情報の表示態様の一例を示している。図示の例では、表示器23の画面の上段に経糸経路数値情報が表示される表が配置され、下段に経糸経路数値情報に基づく線図として経糸11を側方から見たときの最大開口時における経糸11の経路を示す線図が配置されている。ただし、図4では、表の欄内に表示されるべき経糸経路数値情報を省略している。以下に、図中の表の欄内に用いられた用語の意味を説明する。
【0050】
最上段の「枠No.」は、織前16に近い側から数えた綜絖枠の番号を示すものであり、各綜絖枠のヘルド15に通された経糸11、すなわち各綜絖枠によって開口運動させられる経糸シートに対応する。図示の例では、「枠No.」の欄の列は1〜20まで用意されており、最大で20枚の綜絖枠を用いる場合まで対応できるようになっている。本実施例の織機は、図2に示すとおり、綜絖枠を8枚備えるので、「枠No.」の列は、1〜8までの欄が用いられることとなる。
【0051】
〔糸開口角の欄について〕
「糸開口角」は、前記したとおり、最大開口時において各経糸11が対応する基準面と為す角度を示す。
「枠前」は、織前16と綜絖枠すなわちヘルド15との間の経糸11に関する糸開口角であることを示す。
「枠後」は、綜絖枠すなわちヘルド15と反織前側規制部13a又は反織前側規制部14aとの間の経糸11に関する糸開口角であることを示す。
「上糸」は、経糸11の開口時に上側開口位置へもたらされる経糸11に関する糸開口角であることを示す。
「下糸」は、経糸11の開口時に下側開口位置へもたらされる経糸11に関する糸開口角であることを示す。
【0052】
〔糸長さの欄について〕
「糸長さ」は、経糸11の経路長を示す。
「上糸最大開口」は、経糸11の最大開口時に上側開口位置(ワープラインよりも上側での開口位置)へもたらされる経糸11に関する経路長であることを示す。
「下糸最大開口」は、経糸11の最大開口時に下側開口位置(ワープラインよりも下側での開口位置)へもたらされる経糸11に関する経路長であることを示す。
「枠前」は、織前16と綜絖枠すなわちヘルド15との間の経糸11に関する経路長であることを示す。
「枠後」は、綜絖枠すなわちヘルド15と反織前側規制部13a又は反織前側規制部14aとの間の経糸11に関する経路長であることを示す。
「全経路」は、織前16からテンションロール12に至る経糸11の経路長であることを示す。
【0053】
次に、設定装置17の入力部18に入力され、設定装置17の記憶部19に設定・記憶される各規制部材の位置情報について、図2を参照しながら詳述する。前記したとおり、本実施例では、規制部材の位置情報として所定の基準位置(基準面)から各規制部材までの水平方向距離及び鉛直方向距離が設定・記憶される。ここで、水平方向の基準位置は織前16の位置であり、鉛直方向の基準位置は織前側基準面である。そして、本実施例では、織前側基準面はワープラインWLと一致する。したがって、設定装置17には、規制部材の位置情報として、水平方向においては織前16から各規制部材までの水平方向距離、鉛直方向においてはワープラインWLから各規制部材までの鉛直方向距離が設定される。以下に、規制部材の種類ごとに、入力される位置情報について説明する。なお、以下の説明で用いるアルファベット記号は、図2中のアルファベット記号に対応している。
【0054】
〔綜絖枠のヘルド〕
〔水平方向〕
綜絖枠のヘルド15に関し、入力される水平方向の位置情報は、
:織前16から織前16に最も近い綜絖枠(以下、「第1枠」ともいう。)までの水平方向距離
p:綜絖枠のピッチ(複数の綜絖枠の並び間隔)
の2つである。織前16から第1枠までの水平方向距離とは、より詳しくは、織前16から第1枠のヘルド15のメール24の中心(経糸が屈曲する位置)までの水平方向距離である。
また、綜絖枠のピッチは、ヘルド15すなわちメール24のピッチでもある。綜絖枠の「枠No.」をnで表せば(ただし、n=1,2,・・・,8)、各綜絖枠のヘルド15の水平方向の位置情報aは、前記2つの数値a,pを用いて次の式で求まる。
=a+(n−1)×p
〔鉛直方向〕
綜絖枠のヘルド15に関し、入力される鉛直方向の位置情報は、
x:織前側基準面(ワープラインWL)から経糸最大開口時における上側開口位置にあるヘルド15のメール24までの鉛直方向距離(絶対値)
y:織前側基準面(ワープラインWL)から経糸最大開口時における下側開口位置にあるヘルド15のメール24までの鉛直方向距離(絶対値)
の2つの数値である。
なお、図は概略的に経糸11の経路を示しているため、各ヘルド15のメール24の鉛直方向の位置を同じ位置としているが、実際には、各綜絖枠の開口量すなわちヘルド15の上下方向の変位量を異ならせるのが一般的である。したがって、各綜絖枠の開口量が異なる場合には、前記位置情報x,yは各綜絖枠ごとに入力され、綜絖枠の「枠No.」をnで表せば、各綜絖枠の鉛直方向の位置情報(x,y)は、織前16に最も近い綜絖枠から順に(x,y),(x,y),・・・,(x,y)となる。ただし、最大開口時における上方への開口量と下方への開口量とが同じである場合(x=yの場合)には、綜絖枠ごとに1つの位置情報としてもよい。
また、位置情報x,yは、メール24に通される経糸11の屈曲位置の鉛直方向の位置を示すものとして入力されるものであるが、前記位置情報x,yを入力するに際し、近似的に織前側基準面からメール24の(穴の)中心までの鉛直方向距離としてもよい。さらに、前記位置情報x,yは、各綜絖枠の閉口位置からの上方への変位量、下方への変位量(以下、「上開口量」、「下開口量」ともいう。)に対応するため、図示しない開口装置における開口量の設定値を用いて前記位置情報x,yを定めるものとしてもよい。開口量の設定値を位置情報x,yとして用いた場合、位置情報x,yは、ワープラインWLからメール24の(穴の)中心までの鉛直方向距離に相当するものとなる。ただし、メール24の穴の寸法は経糸11の径よりも大きいため、メール24に通された経糸11は、開口運動時においてメール24内で上下方向に変位する。したがって、より正確に位置情報x,yを入力したい場合には、経糸11のメール24内での上下方向変位を考慮することが好ましい。これについては、図6を用いて後述する。
【0055】
〔上糸規制パイプ〕
〔水平方向〕
上糸規制パイプ14に関し、入力される水平方向の位置情報は、
b:織前16から上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aまでの水平方向距離
である。
〔鉛直方向〕
上糸規制パイプ14に関し、入力される鉛直方向の位置情報は、
t:織前側基準面(ワープラインWL)から上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aまでの鉛直方向距離
である。
【0056】
〔ドロッパ装置のオーバルチューブ(下糸規制パイプ)〕
〔水平方向〕
オーバルチューブ13に関し、入力される水平方向の位置情報は、
c:織前16からオーバルチューブ13の反織前側規制部13aまでの水平方向距離
である。
〔鉛直方向〕
オーバルチューブ13に関し、入力される鉛直方向の位置情報は、
s:織前側基準面(ワープラインWL)からオーバルチューブ13の反織前側規制部13aまでの鉛直方向距離
である。
【0057】
〔テンションロール(経糸案内ロール)〕
〔水平方向〕
テンションロール12に関し、入力される水平方向の位置情報は、
d:織前16からテンションロール12の経糸規制部12aまでの水平方向距離
である。
なお、この距離dは、基本的に、経糸11が最大開口となった時におけるテンションロール12の水平方向の位置をもとに入力されるものとする。すなわち、一般的な織機では、テンションロール12は開口運動による経糸11の張力変化を抑えるためイージング動作を行う関係上、テンションロール12は水平方向において複数の位置をとり得るが、本実施例では、最大開口時における経糸11の経路の状態を求めるために、最大開口時におけるテンションロール12の経糸規制部12aの位置をもとに距離dが入力されるものとする。ただし、必要に応じて、テンションロール12の中立的な位置、例えば、図示しない駆動モータ等による積極イージングの場合は中間位置をもとに前記距離dが入力されるものとしてもよいし、図示しないばね等による消極イージングの場合は経糸閉口時における経糸の張力とイージングスプリングとが釣り合うテンションロールの位置をもとに前記距離dが入力されるものとしてもよい。
〔鉛直方向〕
テンションロール12の経糸規制部12aの鉛直方向位置は織前側基準面上にあるので、テンションロール12の鉛直方向の位置情報は入力の必要がない。
【0058】
〔綜絖枠のヘルドの位置情報の入力に関する補足説明〕
なお、綜絖枠のヘルド15の位置情報の入力に際しては、経糸11のメール24内での上下方向変位を考慮することが正確な経糸経路数値情報を得る上で好ましい。以下に詳しく説明する。
【0059】
図6(a)は、規制部材としてのヘルド15の正面図である。経糸11が通される貫通穴であるメール24は、ヘルド15のほぼ中央に形成されている。メール24は、ヘルド15の長手方向寸法が経糸11の径よりも大きい長穴状に形成されている。したがって、メール24に通された経糸11は、メール24内で鉛直方向にある程度変位し得る状態となっている。また、ヘルド15は、その上下端においてヘルド支持部材25を介して図示しない綜絖枠に取り付けられている。より詳しくは、ヘルド15の上下端には長穴状の切欠き26が形成されており、この切欠き26において綜絖枠のヘルド支持部材25に掛止されることにより、綜絖枠に支持されている。また、ヘルド支持部材25の長手方向寸法は、切欠き26の長手方向寸法よりもわずかに小さくなっている。このため、ヘルド15は、綜絖枠に対して上下方向にある程度の遊び27をもって支持されている。
【0060】
図6(b)は、上側への開口時におけるメール24に対する経糸11の位置、及びヘルド支持部材25すなわち綜絖枠に対するヘルド15の位置を示している。上側への開口時、経糸11はメール24内で下方へ変位し、メール24の下端でその経路が規制された状態となっている。一方、図6(c)は、下側への開口時におけるメール24に対する経糸11の位置、及びヘルド支持部材25に対するヘルド15の位置を示している。下側への開口時、経糸11はメール24内で上方へ変位し、メール24の上端で経路が規制された状態となっている。また、ヘルド支持部材25は切欠き26の下方に変位した状態となっている。
【0061】
このように、綜絖枠が上側開口位置にあるか、下側開口位置にあるかでメール24に対する経糸11の位置及び綜絖枠に対するヘルド15の位置が変化するため、規制部材としてのヘルド15の鉛直方向の位置情報を入力する場合、これら変化を考慮することが好ましい。
特に、開口量すなわち綜絖枠の変位量でヘルド15の鉛直方向の位置情報を入力する場合、前記したとおり、ヘルド15の鉛直方向の位置情報x,yは、ワープラインWLからメール24の(穴の)中心までの鉛直方向距離に相当するものとなるが、より正確に位置情報を入力したい場合には、経糸11のメール24内での上下方向変位を考慮することが好ましい。
【0062】
例えば、規制部材としてのヘルドの鉛直方向の位置情報として、
x:織前側基準面(ワープラインWL)から経糸最大開口時における上側開口位置にあるヘルド15のメール24までの鉛直方向距離
y:織前側基準面(ワープラインWL)から経糸最大開口時における下側開口位置にあるヘルド15のメール24までの鉛直方向距離
を開口量で入力する場合、予めメール24の長手方向寸法を設定装置17に設定しておき、位置情報xについては、入力された上開口量に対しメール24の長手方向寸法の1/2を減じる補正を施し、位置情報yについては、入力された下開口量に対しメール24の長手方向寸法の1/2を減じる補正を施してもよい。ただし、経糸11のメール24内での上下方向変位に起因する経糸経路数値情報の誤差が小さい場合には、前記補正は省略してよい。
【0063】
さらに、下側開口位置に綜絖枠がある場合、ヘルド15すなわちメール24の位置は、下開口量と比較して綜絖枠に対するヘルド15の遊び27の分だけ上方に変位している。したがって、開口量で位置情報yを入力する場合は、予め綜絖枠に対するヘルド15の遊び量を設定装置17に設定しておき、位置情報yに対し遊び量を減じる補正を施してもよい。ただし、この場合も、綜絖枠に対するヘルド15の遊び27に起因する経糸経路数値情報の誤差が小さい場合には、前記補正は省略してよい。
【0064】
次に、演算装置20によって実行される経糸経路数値情報すなわち糸開口角及び経路長の算出について図5に基づき詳述する。なお、図5では、8枚ある綜絖枠のうち織前16に最も近い綜絖枠、すなわち第1枠のヘルド15が上側開口位置にある状態を代表例として図示している。また、以下で説明する糸開口角及び経路長の算出のために用いられる演算方法はあくまでも一例であって、他の演算でも同様に糸開口角及び経路長を求めることが可能である。
【0065】
〔織前と綜絖枠との間の経糸に関する糸開口角及び経路長〕
図5(a)において、織前16と綜絖枠すなわちヘルド15との間(以下、単に「枠前」ともいう。)の経糸11の糸開口角は、前記したとおり、各経糸11が最大開口時において織前16を通る水平面(織前側基準面)と為す角度である。
今、既知の寸法として、設定装置17に綜絖枠のヘルド15の位置情報
:織前16から第1枠のヘルド15のメール24までの水平方向距離
:織前側基準面(ワープラインWL)から経糸最大開口時における上側開口位置にある第1枠のヘルド15のメール24までの鉛直方向距離
が入力されるものとすると、第1枠に関し、上側開口時(上糸)の枠前における糸開口角(枠前上糸開口角)θFT1及び上側開口時(上糸)の枠前における経路長(上糸枠前糸長さ)LFT1は以下の演算式で算出される。
【0066】
【数1】

【0067】
なお、前記したとおり、各綜絖枠のヘルド15の水平方向の位置情報aは、綜絖枠のピッチpを用いてa=a+(n−1)×pと表せるから、綜絖枠のピッチp及び各綜絖枠のヘルド15の位置情報x,yが入力されれば、第n枠に関し、枠前における糸開口角(枠前上糸開口角θFTn,枠前下糸開口角θFBn)及び経路長(上糸枠前糸長さLFTn,下糸枠前糸長さLFBn)は以下の演算式で算出される。
【0068】
【数2】

【0069】
式2において、aは、本発明でいう「織前からヘルドまでの水平方向の距離」である。また、x,yは、本発明でいう「織前を通る水平面である織前側基準面から経糸最大開口時における当該ヘルドのメールまでの鉛直方向の距離」である。
【0070】
〔綜絖枠と反織前側規制部との間の経糸に関する糸開口角及び経路長〕
図5(b)において、綜絖枠すなわちヘルド15と、上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aとの間(以下、綜絖枠と反織前側規制部との間を単に「枠後」ともいう。)の経糸の糸開口角は、前記したとおり、各経糸11が最大開口時において反織前側規制部14aを通る水平面(反織前側基準面)と為す角度である。
本実施例では、前記したとおり、綜絖枠とテンションロール12との間に規制部材としての上糸規制パイプ14及びオーバルチューブ13が配置されているため、図5(b)に示した上側開口時の場合は、上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aを通る水平面が反織前側基準面となり、図示しない下側開口時の場合は、オーバルチューブ13の反織前側規制部13aを通る水平面が反織前側基準面となる。
今、既知の寸法として、設定装置17に上糸規制パイプ14の位置情報
b:織前16から上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aまでの水平方向距離
t:織前側基準面(ワープラインWL)から上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aまでの鉛直方向距離
が入力されるものとすると、第1枠に関し、上側開口時(上糸)の枠後における糸開口角(枠後上糸開口角)θRT1及び上側開口時(上糸)の枠後における経路長(上糸枠後糸長さ)LRT1は以下の演算式で算出される。
【0071】
【数3】

【0072】
なお、各綜絖枠のヘルド15の水平方向の位置情報aを用いて、第n枠に関し、枠後における糸開口角(枠後上糸開口角θRTn,枠後下糸開口角θRBn)及び経路長(上糸枠後糸長さLRTn,下糸枠後糸長さLRBn)は以下の演算式で算出される。ただし、c,sは、図示しない下側開口位置の経糸11を規制するオーバルチューブ13の位置情報である。
【0073】
【数4】

【0074】
式4において、b−a,c−aは、本発明でいう「ヘルドから当該ヘルドに対し反織前側の最も近い位置で経糸の経路を規制する反織前側規制部までの水平方向の距離」である。また、x−t,y−sは、本発明でいう「反織前側規制部を通る水平面である反織前側基準面から経糸最大開口時における当該ヘルドのメールまでの鉛直方向の距離」である。なお、これら距離を規制部材の位置情報として直接設定装置17に入力してもよい。
【0075】
〔全経路〕
図5(c)において、既知の寸法として、設定装置17にテンションロール12の位置情報
d:織前16からテンションロール12の経糸規制部12aまでの水平方向距離
が入力されるものとすると、テンションロール12の経糸規制部12aから上糸規制パイプ14の反織前側規制部14aまでの経路長LWTは以下の演算式で算出される。
【0076】
【数5】

【0077】
このLWTと、先に算出した、LFT1及びLRT1用いて、第1枠に関し、上側開口時の全経路長LaT1は以下の演算式で算出される。
【0078】
【数6】

【0079】
なお、第n枠に関し、上側開口時の全経路長LaTn及び下側開口時の全経路長LaBnは以下の演算式で算出される。
【0080】
【数7】

【0081】
式5、7において、d−b,d−cは、本発明でいう「反織前側規制部から経糸案内ロールにおける経糸規制部までの水平方向の距離」である。また、t,sは、本発明でいう「経糸案内ロールにおける経糸規制部を通る水平面である送出側基準面から前記反織前側規制部(反織前側基準面)までの鉛直方向の距離」である。なお、これら距離を規制部材の位置情報として直接設定装置17に入力してもよい。また、本実施例では、経糸案内ロールとしてのテンションロール12とヘルド15との間に他の規制部材、すなわち上糸の経路を規制する上糸規制パイプ14及び下糸の経路を規制するオーバルチューブ13が設けられている場合を示しているが、テンションロール12とヘルド15との間に上糸の経路を規制する他の規制部材が設けられていない場合、経路長LWTは零となり、テンションロール12とヘルド15との間に下糸の経路を規制する他の規制部材が設けられていない場合、経路長LWBは零となる。
【0082】
以上の演算により算出された糸開口角及び経路長は、表示装置21の表示制御部22へ出力され、予め設定された表示態様、例えば図4に示した数値情報及び数値情報に基づく線図として表示器23に表示される。作業者は、表示器23に表示された糸開口角及び経路長の数値情報を参照することにより、従来目視では把握困難であった経糸11の経路の状態を正確に把握することができる。また、数値情報に基づく線図を参照すれば、経糸の分散度合いを直感的に把握することができる。なお、数値情報に基づく線図において、経糸の分散度合いをわかりやすくするために経糸11の経路を誇張して図示してもよい。
【0083】
規制部材の位置の機械的な調整をした場合には、調整した規制部材の配置に関する位置情報を入力し直せばよい。例えば、上糸規制パイプ14を鉛直上向きに移動させた場合、すでに入力されている上糸規制パイプ14の鉛直方向の位置情報tに移動量を加算して再入力し、演算装置20に再度演算を実行させればよい。再演算の結果、表示装置21の画面上には調整結果が反映された糸開口角及び経路長が数値情報等として表示されるから、その調整が適正であるか否の初期的な判断が試織なしで可能となり、経糸11の経路の調整作業を容易かつ短時間に行えるようになる。
【0084】
以上の実施例では、ワープラインWLが水平な織機に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限らず、図7に示すような、ワープラインWLが傾斜している織機についても本発明は適用可能である。なお、図7は、図2に示した織機に対し、規制部材としての上糸規制パイプ14を省略し、かつ、テンションロール12の経糸規制部12bの位置を織前16よりも高い位置とし、ワープラインWLを傾斜させた織機を示している。以下では、この図7に示す織機に本発明を適用する第2の実施例について、詳細に説明する。
【0085】
本実施例の織機では、織前側基準面及び送出側基準面はいずれもワープラインWLとは一致したものとならず、送出側基準面は、織前側基準面よりも鉛直方向において高い位置となる。また、綜絖枠よりも反織前側において、テンションロール12は、経糸11の開口時に上側開口位置へもたらされる経糸11をヘルド15に対し最も近い位置で規制する規制部材であり、オーバルチューブ13は、経糸11の開口時に下側開口位置へもたらされる経糸11をヘルド15に対し最も近い位置で規制する規制部材である。したがって、本実施例における反織前側規制部は、テンションロール12と経糸11とが接触する部分のうちの経糸11の進行方向における最終接触点(経糸規制部12b)と、オーバルチューブ12と経糸11とが接触する部分のうちの経糸11の進行方向における最終接触点の2つである。また、本実施例における反織前側基準面は、テンションロール12の経糸規制部(反織前側規制部)12bを通る水平面と、オーバルチューブ13の反織前側規制部13aを通る水平面の2つとなる。なお、テンションロール12の経糸規制部12bを通る反織前側基準面は、送出側基準面でもある。
【0086】
前述の実施例と同じく、経糸経路数値情報として最大開口時における糸開口角及び経路長を各綜絖枠ごとに求める場合、各綜絖枠の水平方向の位置情報aを綜絖枠のピッチpを用いてa=a+(n−1)×pと表せば、第n枠に関し、糸開口角(枠前上糸開口角θFTn,枠前下糸開口角θFBn,枠後上糸開口角θRTn,枠後下糸開口角θRBn)、及び経路長(上糸枠前糸長さLFTn,下糸枠前糸長さLFBn,上糸枠後糸長さLRTn,下糸枠後糸長さLRBn,上側開口時の全経路長LaTn,下側開口時の全経路長LaBn)は、例えば、以下の演算式により算出される。
【0087】
【数8】

【0088】
なお、織前16に対するテンションロール12の経糸規制部12bのオフセット量をuとし、上方へオフセットする場合を正とすれば、上糸規制パイプ14(水平方向距離b,鉛直方向距離t)を省略しない場合を含めて、糸開口角及び経路長は、例えば、以下の演算式により算出される。
【0089】
【数9】

【0090】
式9において、b=d、u=tとすれば、上糸規制パイプ14を省略した図8に示す例の経糸経路数値情報を求める式8となる。
【0091】
以上では、本発明の情報表示装置の具体的な実施例について2つの実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【0092】
〔規制部材の位置情報の基準位置等について〕
前記実施例では、各規制部材の水平方向における位置情報は、織前を基準として設定されるものとしたが、他の特定の基準位置を設定し、その位置からの各規制部材までの距離を設定するようにしてもよい。ただし、その場合は、織前の位置についても、その基準位置から織前までの距離を設定する必要がある。同様に、各規制部材の鉛直方向における位置情報の基準面を織前側基準面以外の水平面、例えば送出側基準面としてもよい。また、綜絖枠のヘルドの位置情報として、例えば、水平方向においては反繊前側規制部から各綜絖枠のヘルドのメールの中心までの距離、鉛直方向においては反織前側基準面から経糸の最大開口時の綜絖枠のヘルドのメールまでの距離等を設定するようにしてもよい。
【0093】
〔経糸の分散度合いに関連する数値としての糸開口角について〕
前記実施例では、経糸の分散度合いに関連する数値として、各経糸が最大開口時において対応する水平な基準面と為す角度、すなわち、枠前では経糸が織前側基準面と為す角度、枠後では経糸が反織前側基準面と為す角度を求めるものとしたが、これに代えて、各経糸が最大開口時において綜絖枠のヘルドの長手方向(鉛直方向)と平行な仮想の鉛直面(以下、「仮想鉛直基準面」という。)と為す角度を求めるものとしてもよい。
【0094】
例えば、図8(a)に示すように、仮想鉛直基準面α(綜絖枠No.n=1,2,…)は、綜絖枠毎にメール24の中心を通るように設定されるものであってもよい。この場合、第n枠の経糸11について、枠前の経糸11と枠後の経糸11とで仮想鉛直基準面は共通となる。
【0095】
また、図8(b)に示すように、仮想鉛直基準面は、すべての綜絖枠に共通のものとし、枠前と枠後とでそれぞれ1つずつ設定されるものであってもよい。この場合、枠前の経糸11のための仮想鉛直基準面βは最も織前に近い綜絖枠(第1枠)と織前16との間に設定され、枠後の経糸11のための仮想鉛直基準面βは最も繊前16から遠い綜絖枠(前記実施例の場合の第8枠)と反織前側規制部14aとの間に設定される。
【0096】
〔経糸の分散度合いに関連する他の数値について〕
経糸の分散度合いに関連する数値として、前記実施例では各経糸11が所定の基準面に対し為す角度を求めるものとしたが、これに代えて、綜絖枠よりも基準位置(織前16、反織前側規制部14a)側に設定された仮想平面(例えば、図8(b)の仮想鉛直基準面β,β)と各経糸11とが交差する位置の、上下方向における高さ位置、すなわち水平な基準面(繊前側基準面)から交差する位置までの距離HFTn,HRTn等を求めるようにしてもよい(図9(a))。ここで、図9(a)では、繊前側基準面はワープラインWLと一致している。
【0097】
なお、この場合の仮想平面は、上下方向に延在するとともに綜絖枠の幅方向に関しては綜絖枠と平行に延在するように設定される。このとき、第n枠の経糸シートに関し、その経糸シートに含まれる複数本の経糸が仮想平面と交差する各位置の高さは、全て同じ高さとなる。したがって、幅方向に関して綜絖枠と平行に延在する平面であれば、図9(a)で示した上下方向に関し鉛直方向に廷在する平面に限らず、図9(b)に示すように、経糸開口を側方から見て、水平面に対し傾斜している平面γ,γを仮想平面とすることもできる。また、図9(b)の場合、図9(a)の場合と同様に水平な基準面からの距離HFTn,HRTnを求めるようにしてもよいが、図に示すように、仮想平面の上下の延在方向に沿った基準面からの距離HFTn’,HRTn’を求めるようにしてもよい。
【0098】
〔求める経糸経路数値情報と開口状態との関係等について〕
求める経糸経路数値情報について、最大開口時のものに限らず、他の特定の主軸回転角度(複数の場合も含む)における経糸経路数値情報を求めるようにしてもよい。ただし、その場合は、その特定の主軸回転角度における必要な各規制部材(経糸の経路に影響を及ぼす部材)の位置情報を記憶部19に設定・記憶させておく必要がある。また、前記実施例では、経糸経路数値情報として、最大開口時における各経糸の糸開口角及び経路長を求めるものとしたが、この両方を求めるものに限らず、いずれか一方のみを求めるものも本発明に含む。
【0099】
〔求められた経糸経路数値情報としての糸開口角に関する表示について〕
前記実施例では、数値情報と数値情報に基づく線図との両方を表示しているが、いずれか一方のみ表示するものであってもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 情報表示装置
11 経糸
12 テンションロール
12a テンションロールにおける経糸規制部
12b テンションロールにおける経糸規制部(反織前側規制部)
13 オーバルチューブ
13a オーバルチューブにおける反織前側規制部
14 上糸規制パイプ
14a 上糸規制パイプにおける反織前側規制部
15 ヘルド
16 織前
17 設定装置
18 入力部
19 記憶部
20 演算装置
21 表示装置
22 表示制御部
23 表示器
24 メール
25 ヘルド支持部材
26 切欠き
27 遊び
101 経糸
102 経糸ビーム
103 ガイドロール
104 張力センサ
105 テンションロール
106 織前
107 ドロッパ装置
108 綜絖枠
109 ヘルド
110 緯糸
111 筬
112 織布
113 服巻ロール
114 巻取ロール
WL ワープライン
θFTn 枠前上糸開口角
θFBn 枠前下糸開口角
θRTn 枠後上糸開口角
θRBn 枠後下糸開口角
FTn 上糸枠前糸長さ
FBn 下糸枠前糸長さ
RTn 上糸枠後糸長さ
RBn 下糸枠後糸長さ
LaTn 上側開口時の全経路長
LaBn 下側開口時の全経路長
WT テンションロール12の経糸規制部から上糸規制パイプ14の反織前側規制部までの経路長
WB テンションロール12の経糸規制部からオーバルチューブ13の反織前側規制部までの経路長
LaTn 上側開口時の糸全経路長
LaBn 下側開口時の糸全経路長
α 仮想鉛直基準面
β 仮想鉛直基準面
β 仮想鉛直基準面
γ 仮想鉛直基準面
γ 仮想鉛直基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸の経路に影響を及ぼす複数の部材として少なくとも経糸案内ロールと、複数枚の綜絖枠にそれぞれ装着されたヘルドとを備え、経糸ビームから引き出された経糸が、前記経糸案内ロールによって織前方向へ向けて転向され、前記複数枚の綜絖枠のうちの対応する綜絖枠のヘルドに通された後、織前へ導かれる織機において、
前記複数の部材の配置に関する位置情報が設定される設定装置と、前記位置情報に基づき経糸の経路に関する数値情報を演算によって求める演算装置と、前記演算装置によって演算された前記数値情報及び/又は前記数値情報に基づく線図を画面上に表示する表示装置とを含むことを特徴とする織機における情報表示装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記位置情報に基づき、各綜絖枠における織前からヘルドまでの水平方向の距離と前記織前を通る水平面である織前側基準面から経糸最大開口時における当該ヘルドのメールまでの鉛直方向の距離とから、前記数値情報として、各綜絖枠よりも織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値を各綜絖枠ごとに求めることを特徴とする請求項1に記載の織機における情報表示装置。
【請求項3】
前記演算装置は、前記位置情報に基づき、各綜絖枠におけるヘルドから当該ヘルドに対し反織前側の最も近い位置で経糸の経路を規制する反織前側規制部までの水平方向の距離と前記反織前側規制部を通る水平面である反織前側基準面から経糸最大開口時における当該ヘルドのメールまでの鉛直方向の距離とから、前記数値情報として、各綜絖枠よりも反織前側に位置する各経糸の分散度合いに関連する数値を各綜絖枠ごとに求めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の織機における情報表示装置。
【請求項4】
前記演算装置は、前記位置情報に基づき、以下の距離に関する情報から、前記数値情報として、各経糸の最大開口時における経糸案内ロールから織前までの経路長を各綜絖枠ごとに求めることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の織機における情報表示装置。
・各綜絖枠における織前からヘルドまでの水平方向の距離
・各綜絖枠における前記織前側基準面から経糸最大開口時におけるヘルドのメールまでの鉛直方向の距離
・各綜絖枠におけるヘルドから前記反織前側規制部までの水平方向の距離
・各綜絖枠における前記反織前側基準面から経糸最大開口時におけるヘルドのメールまでの鉛直方向の距離
・前記反織前側規制部から経糸案内ロールにおける経糸規制部までの水平方向の距離
・経糸案内ロールにおける経糸規制部を通る水平面である送出側基準面から前記反織前側規制部(反織前側基準面)までの鉛直方向の距離
【請求項5】
前記表示装置は、少なくとも2以上の綜絖枠に関する前記数値情報及び/又は前記数値情報に基づく線図を一画面上に同時に表示することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の織機における情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83019(P2013−83019A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224302(P2011−224302)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】